説明

ストレスによる悪影響からの生命システム防御

【課題】ストレスの身体に有害な影響から、細胞、組織および器官を防御する方法を提供すること。
【解決手段】局所的にまたは体系的に適用される、時間に応じて変化する場、すなわち、磁場、電場および電磁場を利用することにより、ストレスの身体に有害な影響から、細胞、組織および器官を防御することが達せられる。本発明によれば、損傷を癒すというよりも、細胞の死滅を防ぐことが提供される。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
以下に述べる本発明は、虚血、無酸素症、低酸素症(十分な酸素の欠乏)、再潅流障害や他の環境ストレスによる生命システムへの悪影響から生命システムを防御する手法(装置と方法)全般に関する。より具体的には、本発明は、方法と、電気的、電子的、電磁的な装置・システム・設備と、そして人、動物、その他細胞からなる生命システムへの効果とに関する。本発明は、細胞に対する酸素の入手性が制約されるなど、細胞にストレスを与える全ての条件に起因した生体の細胞に及ぼす障害を抑えるものである。本発明の方法は、化学療法などに使用される有毒化学薬品、電離放射線(紫外光、ガンマ線、ベータ線など)、アテローム性動脈硬化症、血管形成術後の再狭窄症、そして処置を必要とする人もしくは対象動物の神経障害などに起因する障害に対処するために使用される。本発明は、虚血、再潅流障害、アテローム性動脈硬化、電離放射線や有毒化学薬品などに起因する心身に有害な効果を抑制するため、細胞で使用されている内因性の(細胞膜内に生長する)防御機構を活性化する目的で、一定の電気的、磁気的、もしくは放射電磁的な場を適用することを含んでいる。
【背景技術】
【0002】
(従来技術)
心筋梗塞が発生すると、心筋の再潅流を達成するための多くの介在物が得られるにも拘わらず、機能し得る心筋層の喪失が引続いて起こる。この機能し得る心筋の喪失は、それに続く過酷な心臓機能不全につながることがあり、重大な医療問題を意味する1(番号を記した引例は、本明細書の末尾に記載)。過酷な心臓機能不全が生じないときでも、更なる心筋の救済は、心筋梗塞後のより完全なより活動的生活を可能にするために極めて好ましいことである。同様に、脳への虚血(例えば鼓動)の後、早急な回復、もしくは障害の拡大抑制は、より優れた神経学的結果につながる。
【0003】
虚血、低酸素もしくは無酸素により、細胞内に多くの変化が引起される2。これらの細胞機能の変化は、蛋白質の変性を生むことで知られる代謝もしくは低酸素ストレスの形態を表す。同様な細胞内の蛋白質変性の増加は、熱衝撃反応の始まりにつながると報告されており、これは熱衝撃蛋白質と呼ばれ3、最近ではストレス蛋白質とも呼ばれる蛋白質の合成を増加させる。この熱衝撃反応は、今日までに検査された温度上昇後の全ての生物体で発生することが知られている。このストレスへの反応は、まとめて熱衝撃蛋白質(HSP)として知られる各種分子量の蛋白質群の合成が増加することにある。例えば、HSP70はその群の一員で、その分子量は70キロダルトンである。その誘導体は、HSP70iもしくはHSP72と呼ばれることもある。本明細書において、HSP70というときには、この誘導体を意味するものとする。初めは温度の上昇した後に発見されたものの、現在ではこの熱衝撃反応は多くの細胞へのストレスに対する典型的な反応であることが知られている。これらの中には、虚血、無酸素症、低酸素症、再潅流障害、低血糖症、低浸透圧症、ブドウ糖欠乏、及び毒素もしくは電離放射線への曝露や感染などの原因によるストレスが含まれるが、これらに限定されるものではない。
【0004】
ストレスに反応して、細胞はHSPとして知られる蛋白質郡を合成する。このHSPは、障害を受けた細胞を修復して支援し、更なる危害から守ってその細胞の生き残りを助ける。それらは又、蛋白質を包み、移動する助けをする。HSPは、その包み込みと、酵素及び他の蛋白質が早期にそして正確に集合することを確実にする。この反応は、細胞内の最も重要な部分を保護することによってストレス期間中に対処するための細胞活動の過渡的再編成を起こさせ、そのストレスからの回復する期間においてそれが通常活動を再開できるようにする。この自己保全のための細胞膜内のプロセスを提供する細胞の能力は、多くの心筋救済方法を探求する研究者の注目を浴びた。特に、「交差防御」の現象が調査された。
【0005】
「交差防御」又は「交差耐性」とは、1つのストレス(例えば無酸素)の有害影響に対する防御のために、他のストレス(例えば熱)の非致命的な応用を行なうことを意味する用語である。この技術は、虚血によって引き起された傷害に対して、心筋細胞を守る手段として応用されてきた4。幾つかの研究では、実験動物の高温処置が、動物生体内5及び取り出された潅流心臓モデル6での冠状動脈閉塞及び再潅流の後の心筋救済に大幅な改善をもたらすことを示している。
【0006】
上記HSPの防御本性は、緩やかな温度衝撃(42℃)が、その後の通常致命的な温度衝撃(45℃)に対抗する抗力を細胞に与えることの観察により証明されている7。このHSPの合成と消滅とは、それぞれ温度耐性の発生と減退とに先行して起こる。この事実は、これらの蛋白質が、温度耐性の発生に関与する証拠であると見られている。
【0007】
心筋細胞は、低酸素症や代謝性のストレスに反応して、HSP70の発生を増加させ、これは虚血/再潅流の間にHSPの防御機能を強化させる8。上記HSPの防御機能は、クリー氏とその共同研究者によって確認されている。彼らは、24時間前に42℃で15分間熱処置されたねずみから取り出された潅流心臓が、30分間の低流虚血とその後の再潅流の後において、熱処置されていない動物からの心臓に比較してより優れた収縮性のある回復を示すことを発見した。全身あるいは全臓器での熱ストレスが、虚血に対して観察された防御を受け持つHSP発生を増加させること以外にも、多くの細胞変化を起こさせることは明らかである。それにも拘わらず、最近の研究によれば、全身の熱衝撃の後に存在するHSPと特にHSP70の量は、得られる心筋の防御度に直接比例していることを示している9。HSP70が虚血障害に対する交差防御となる更なる直接の証拠が、最近、筋組織から生じた細胞の筋を使用して得られている。事前に緩やかな熱衝撃を受けた筋組織から生じた細胞が、生体外での模擬虚血条件(低酸素、ブドウ糖欠乏、低浸透圧、もしくは模擬虚血で、これらの細胞は、事前に熱衝撃を受けていない細胞よりもより優れた生存能力を有した)に提供されることで、それが見出された10
【0008】
ここにおいて、ストレスを加え、その結果ストレス蛋白質を発生させることは、他のタイプのストレスからの交差防御を保証するとは限らない点を強調しておかねばならない。この交差防御が起こらないときには、それは特異細胞防御と呼ばれる。特異細胞防御の1つの例は、ヒーズ氏ほかによって証明されており11、彼らは、ねずみの心臓細胞が、致命的温度以下の熱ストレスに対して機能上そして区分上明確な熱衝撃(もしくはストレス)蛋白質群(例えば、HSP70、HSP90、HSP60やHSP27など)を選択的に合成し蓄積することによって反応したことを示した。
【0009】
これらの幾つかは、他の環境ストレスに対する熱耐性及び抵抗力の発生に関与していた。この熱衝撃蛋白質群の内の何が無酸素防御に重要で、何が熱耐性に重要であるかは明確ではない。ヒーズ氏ほかは、HSP70iが熱ストレスに対しても低酸素ストレスに対しても高レベルの防御力を提供できることを見出した。しかしながら、HSP90bとHSP60は、熱ストレスに対して防御することはできるが、低酸素に対しては防御能力がない。この特異細胞防御は、ジョニディス氏ほかによっても証明されており12、彼らは、熱衝撃蛋白質の誘発(高熱による)は、虚血後の腎臓管障害を阻止しなかったことを示している。
【0010】
1986年以降、カリフォルニア大学サンディエゴ校のウォルフガング・ディルマン氏とそのグループは、虚血に関連して発生する多くの障害から細胞を防御するHSPの役割を立証する研究を行なってきた。最近このグループは、印象的なHSPの役割の証拠を発表した13。このレポートによれば、HSP70が過剰発生した遺伝子移植のねずみから採取の心臓に虚血障害を加えると、通常の心臓に対して40−50%少ない障害で済んでいる。彼らは又、遣伝子移植のねずみを模擬鼓動する脳虚血の実験室モデルに供すると、同様な防御効果が現れると報告している。
【0011】
ここで、HSPの防御機能を人に応用するときには、2つの実施化戦略の可能性があるように見られる。(注:臓器や全身の温度を上げることは、現実的手段とは思われない)。第1は、心臓バイパス手術など外科的手段が必要と診断された、臓器の虚血障害が高リスクにある患者に対して、目標臓器に選択的にHSPを投与する遺伝子療法であろう。勿論ここでの問題は、副作用なく十分なHSPを投与できるか否かにある。第2には、内因性HSP遺伝子を誘発する薬品を開発する薬理学的手段を採用することであろう。しかしながら、HSPは、通常むしろ毒性物質によって誘発されるものであることから、この挑戦は、細胞に毒作用を及ぼすことなくその遺伝子を選択的に発生させる薬剤を開発することを意味する。
【0012】
電流が蛋白質合成を変調させる能力は、既に1987年にはマックレオド氏ほかによって示されている14。しかしながらこの研究では、合成される蛋白質の種類が特定されておらず、熱衝撃蛋白質誘発の証左は何らなされていない。1987年と1988年に、グッドマン氏とヘンダーソン氏は、極めて低い周波数磁場が、蛋白質合成に有効な変化を及ぼし得ることを示した15、16。しかしながら、ポリペプチド合成パターンは、熱衝撃を受けたものに見られるものとは異っている、と彼らは報告している。低周波数磁場に反応して蛋白質合成パターンの変化は発生したが、この変化のごく一部のみが細胞を熱衝撃に晒したときに予想されるものと重複しているに過ぎない、と彼らは述べている。熱衝撃を受けた細胞と磁場に晒した細胞の中には、同様な(もしくは同一の)蛋白質グループがあるものの、解明されたポリペプチドの全体パターンと数とは、この2つの異なる刺激の間に差があることを彼らは見出した。このように、上述の蛋白質合成に関する文献はいずれも、電気的なもしくは磁気的な場により、有効な防御ストレス蛋白質が生み出されることを何ら指摘するものではない。1988年に、ブランク氏とグッドマン氏は、シアラ(Sciara)の唾液腺中の電磁場によって誘発された蛋白質合成の分析について報告している17。彼らは、熱衝撃(HS)と電磁(EM)刺激に起因する蛋白質合成の変化には、ある程度類似性があると報告している。しかしながら、彼らは、蛋白質合成に対するHSとEM刺激との効果には、重大な相違があると指摘している。彼らは、電磁(EM)場が20−50kDの分子量領域の蛋白質の合成を増加させることを見出したが、50−90kD分子量の領域では、ポリペプチドの合成が一般に減少していることを発見した。
【0013】
上述のように(9参照)、熱衝撃によって誘発される心筋の防御力の程度は、刺激やストレスで誘発されるHSP70(70kDポリペプチド)の量に直接比例している。しかし、ブランク氏とグッドマン氏は、HSP70の合成は、EM場によって減少するか、もしくはある信号条件下で無視できるほどの(2%)上昇が見られるだけであると報告している。彼らは、熱衝撃によれば、はるかに大きな(50%)HSP70の増加があることを見出している。このように、ブランク氏とグッドマン氏のデータでは、虚血や再潅流による心筋障害に対抗する細胞膜内生長蛋白質に対し、時間によって変化する磁場は何の影響も及ぼさないか、もしくは減少させるものであることを示しており、彼らの教示内容は本発明とは異なるものである。本願発明者は、特定の場が、虚血/再潅流障害に対抗できることを発見した。虚血/再潅流障害に対して防御するその場のメカニズムが、熱衝撃蛋白質にのみ関連するものか否かは分らない。それは、細胞機能に対する誘発効果と他の効果との組合わせであるかも知れない。
【0014】
米国特許第5,441,495号においてリボフ氏ほかは、鼓動罹病者に対する電磁治療について述べている。彼らが教示するこの技術は、高価、複雑で、非熟練者にとって自己管理できるものではない。この方法は、サイクロトロン共振として知られる特別の相互作用を使用している。特定の詳細に規定された周波数のみが使用可能である。精巧なセンサによって測定された電流を含む特別のコイルによって、地球の磁場が相殺されねばならない。新たなDC場が発生されねばならず、このDC場は、患者の大脳組織を通って予め定められた軸に対して特別に調節されねばならない。提案されているAC磁場((−)0.1mGのオーダ)は、本発明に要求される最小値よりもはるかに小さい。この磁場は、処置されるべき組織全体を通して厳密に均一としなければならない。これは、指示された磁場を加えるために必要となる装置の複雑さと経費の大幅な増加を生む。加えて、コイル中の電流の波形は、DC成分を含んでいなければならない。
【0015】
サイクロトロン共振に必要なこれらの条件は、緻密なものであり、セットアップに時間がかかる。本発明においては、これらの条件は全て不要となる。上記装置が、心臓発作の危険性を持つ人々の家で入手可能となるほど十分廉価になることはあり得ない。そして自己管理の処置様式として利用できるようになることもない。
【0016】
多くの特許と先行技術が、治療を促進させるためにサイクロトロン共振を教示している。これらの幾つかを以下に述べる。こられは全て上記のような欠点を有している。その1つは、米国特許第5,330,410号で、ここでは成長因子を刺激するためにサイクロトロン共振を使用している。ここにおいても、それは障害を防ぐためではなく、回復と治療のための方法である。米国特許第5,518,496号では、マックレオド氏ほかは、生物組織の成長調整用に複雑な共振技術を使用するための特別のコイルを提案している。このコイルは、治療を助けるために、毎日、何週間にも亘って使用できるように設計されている。米国特許第5,224,922号でクルツ氏は、再生効果を生み出すよう、サイクロトロン共振におけると同様に時間によって変化する場とDC場とを結合させている。
【0017】
(関連技術の記述)
数多くの特許や他の先行技術が、骨や他の組織の治癒は、非常に特別なパルス波形を備える電磁場を脈動させることを利用することにより、強化され得ることを示している。例えば、キャドッシらによる米国特許第4,683,873号では、生命体組織、特に骨折を、磁場パルスを用いることにより治療する方法を示す。磁場パルスは、正セグメントと、続いてピーク値が第1の部分の正方向ピークより小さい負セグメントとが構成する、年代順の3つのセグメントからなる波形を有する。上記正部分の存続時間は、1ミリ秒と3ミリ秒の間でなくてはならない。キャドッシは、特定のパルス状況が得られないならば、有益な治癒とはならない、と示している。さらに彼は、治療は1日当り8時間から14時間施されなければならない、と示しているが、一方、本発明では、単に20分以下の曝露が利用されるだけである。さらに特にこの先行技術が取り扱う治療は損傷を防御するのではない。結局、これらの装置は自己管理し得ず、あらゆる家庭で利用可能とするには高価過ぎる。
【0018】
キャドッシらは、ねずみ18の心筋梗塞の治療において、上述と同じ適切に規定されたパルス波形を利用する。非常に大きい、脈うつ磁場が、(18時間30ガウスのピークを続けるような)非常に長時間利用されなければならない、と彼らは示す。この治療は恒常的閉塞においてのみ役立つのであり、再潅流損傷を防御するのには役立たない、と示されている。
【0019】
米国特許第5,131,904号、第5,453,073号及び第5,387,176号において、マーコルは、関節炎症状、罹病器官及びスポーツ型傷害を、1から30へルツの周波数の特定矩形パルス波形を利用して癒すことを、提案している。ここでの磁場は、ほぼ12.5ガウス程度であり、18の治療法が利用された。
【0020】
米国特許第5,269,746号では、ヤコブソンは、サインカーブ波形が哺乳動物の癲癇とパーキンソン氏病の治療に利用可能である、と示している。彼は、5.3から9.8ヘルツと197から247ヘルツの、特定周波数を提案している。米国特許第5,366,435号にて、ウイルス性疾患や遺伝性疾患が同様の電磁場にて治療され得る、と示している。さらにヤコブソンは、0.35から0.7ミリガウスの強さの磁場を利用して、患者は精一杯の時間曝露されなければならない、と提案する。
【0021】
米国特許第5,338,286号では、アボットが、パルス振動する電磁場にて適切なスペクトル抑制を行うことにより骨部成長刺激が得られる、と示している。上述の先行技術のように、これは、場の治癒特性を向上させるための、パルス波形や持続期間における洗練されたバリエーションを利用する。アボットは、損傷防御の問題には触れていない。
【0022】
米国特許第5,348,945号では、バーベリアン、タイテル及びゴウアが(多くの参考文献を引用しつつ)ストレスの下での細胞又は組織内部にて死滅を防止する方法を示している。その方法は、HSP70を、細胞又は組織の生存率を高めるのに効果がある量だけ、細胞又は組織に接触させる工程を含む。その方法は、アテローム性動脈硬化症、血管形成術後の再狭窄症、及び治療を必要とする人間や動物の被術者内の神経損傷における、防止活動において用いられてもよい。製薬上受け入れ可能な処方における治療上有効なHSP70の量を含む、製薬配合もまた、開示されている。
【0023】
蛋白質合成援助に関する電磁気刺激についての上記出版物にて得られた結論では、(防御ストレス蛋白質を生成し導入する手段を発達させることについて、非常に多くの興味が持たれていたし凄まじい注力が傾けられてきたとはいえ、)1999年以来何年もの間、ストレス蛋白質の刺激が、虚血/再潅流に対抗して防御を与えるのに有益であると、誰も気づかなかつたのは何故か、を説明している。HSPに関する治療上の適用例での多くの活動が、2つの記事19,20にまとめられている。HSPの生成と適用のみを扱う、新しい会社が作られた。セル・ストレス・アンド・シャベローンと題され、HSPの研究と適用に完全に特化している新しい雑誌が、現在出版されている。HSPの適用範囲のひろがりには、著しいものがある。免疫性モジュレータ、現存腫瘍を持つ患者の治癒、特定のガンからの防御、HSPを基礎にしたワクチン、さらに、心臓発作により引き起こされる虚血の治療としての、利用を含む。
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0024】
上記に挙げられたストレスの身体に有害な影響から、細胞、組織及び器官を防御することが、本発明の目的である。局所的に又は体系的に適用される、時間に応じて変化する場、即ち、磁場、電場及び電磁場を利用することにより、このことは達せられる。上記著者のうち誰も、さらに私の知る限り私以前に誰も、内発的な生物学的防御メカニズムを刺激しよって虚血、無酸素、低酸素、代謝ストレス、有毒薬品、電離放射線及び他のストレスなどの悪影響に対し、交差防御を行うように細胞にストレスを与えるような場の利用や、そのような場を利用する単純で非高価な自己管理による方法を発見していない。本発明での本質的な目的は、損傷を癒すというよりも、細胞の死滅を防ぐことにある。
【0025】
したがって、ストレス蛋白質の分野での相当な活動にもかかわらず、さらにストレス蛋白質を生物学システムの中に導入する非毒性方法の活発な探索にもかかわらず、私の単純で非高価な方法を開発した者はいないのである。その方法は、虚血/再潅流・損傷に対し交差防御を与える、前述のタイプの、時間に応じて変化する場を利用する。
【0026】
上記のように、生命体組織を治癒する目的で電磁場、電場又は磁場の利用を提案する意義ある量の先行技術が存在する。これらのうちの全てにおいて、刺激は既に生じてしまった損傷を治癒する(例えば、折れた骨の治癒、創傷の治癒及び炎症治療)ために用いられる。このうち誰も、単純で非高価な器具により生成される短時間持続の電磁場曝露を用いることで、虚血/再潅流のようなストレスにより大抵引き起こされる生命体組織への損傷を、如何に防ぎ得るかを示していない。
【0027】
(発明の目的)
a)虚血発生による損傷を抑え、あらゆる家庭、職場及び病室にていつでも利用可能であり、心臓発作や動悸の第1の兆候において、どの個人も利用し得、自己管理し得る、単純で非高価な方法及び装置を、作成すること。
【0028】
b)家庭や職場から離れて利用するため携帯可能な、単純で非高価な方法及び装置を、作成すること。
【0029】
c)心筋梗塞又は発作の危険を備えるどんな人でも装着でき、心臓発作や動悸の兆候の第1のサインにて活動しうる、単純で非高価な虚血発生による損傷を抑える方法及び装置を、作成すること。
【0030】
d)虚血発作に先んじそれを予想して用いられる、単純で非高価な虚血発生(例えば、アンギナ発作)による損傷を抑える方法及び装置を、作成すること。
【0031】
e)外科処置の間や又は身体器官にストレスを与え得るどんな処置においても、血液供給の減少から生殖器官を防御するために、手術前処置として医師が利用し得る、単純で非高価な方法及び装置を、作成すること。
【0032】
f)ストレス下にある細胞にて死滅を防止する、単純で非高価な方法及び装置を、作成すること。その方法は、その細胞の生存率を効果的に高めるのに適切な大きさと時間持続を備える磁場を用いることにより、熱ショック蛋白質を誘導する工程を、含む。
【0033】
g)ストレス下にある、動脈組織のような、組織にて死滅を防止する、単純で非高価な方法及び装置を、作成すること。その方法は、その組織の中に存する細胞の生存率を効果的に高めるのに適切な大きさと時間持続を備える磁場を用いることにより、熱ショック蛋白質を誘導する工程を、含む。組織は、生体内で又は生体外で、治療することができる。とりわけ、これらの方法は、移植のための器官を保存するのに有益である。
【0034】
h)相応の治療を必要とする人や動物の被術者において、アテローム性動脈硬化症を防止する、単純で非高価な方法及び装置を、作成すること。その方法は、その被術者内に存する動脈プラクの壊死を減ずるのに適切な大きさと時間持続を備える磁場を用いることにより、被術者内の熱ショック蛋白質を誘導する工程を、含む。
【0035】
i)相応の治療を必要とする人や動物の被術者において、血管形成術後の動脈再狭窄を防止する、単純で非高価な方法及び装置を、作成すること。その方法は、再狭窄を防止するのに適切な強度と持続を備える磁場を、相応の治療を必要とする被術者内に存する動脈組織に対し、処理する工程を、含む。
【0036】
j)相応の治療を必要とする人や動物の被術者において、神経損傷を防止する、単純で非高価な方法及び装置を、作成すること。その方法は、ストレス下にある神経細胞の生存率を効果的に高めるのに適切な大きさと持続を備える磁場を用いる工程を、含む。
【0037】
k)特に電離放射線が悪性組織を治癒するのに利用される場合、電離放射線の影響から正常な組織を防御する、単純で非高価な方法及び装置を、作成すること。
【0038】
l)有毒薬品、特に、悪性組織を治癒する化学療法にて利用されるものから、正常な組織を防御する、単純で非高価な方法及び装置を、作成すること。
【課題を解決するための手段】
【0039】
本発明は、生体外で、ストレスの下にある組織において損傷または死滅を防止する方法を提供し、この方法は、
40mG以上の場を曝露するように、時間的に変化する磁場、電場、または電磁場を生体外で該組織に与え、該組織内の細胞の生存率を高める工程を含む。
【0040】
1つの実施態様では、上記組織は哺乳類の組織である。
【0041】
別の実施態様では、上記組織は、動脈組織または神経組織である。
【0042】
本発明は、ストレスの下にある、人間組織以外の組織において損傷または死滅を防止する方法を提供し、この方法は、
40mG以上の場を曝露するように、時間的に変化する磁場、電場、または電磁場を該組織に与え、該組織内の細胞の生存率を高める工程を含む。
【0043】
1つの実施態様では、上記組織は哺乳類の組織である。
【0044】
別の実施態様では、上記組織は、動脈組織または神経組織である。
【発明を実施するための最良の形態】
【0045】
(発明の詳細な説明)
私は、虚血、低酸素症、無酸素症又は他のストレスの、有害な健康への影響が、時間により変化する場(time-varying field)を、冒された臓器に短時間(20分のオーダで)適用することにより、大きく抑制できることを発見した。私は、ここでは、「場(field)」は、時間により変化する電場(time-varying electric field)、時間により変化する磁場(time-varying magnetic field)、及び/又は放射電磁場を意味するように用いる。私は、この照射は、虚血事故、又は事故を引き起こす他のストレスに2時間又はそれ以上の時間先立って、開始できることを発見した。加えて、虚血の影響の抑制は、たとえ虚血又は無酸素症のストレスが開始した後に場が適用された場合であっても、起きることを見出した。好ましくは、虚血事故が始まった後、及び再潅流(reperfusion)が起きる前に、できる限り迅速に、場を適用すべきである。これは、本出願に述べられた方法の目的が、主に、虚血及び続いて起きる再灌流による損傷を治癒するよりも、むしろ阻止することだからである。時間により変動する磁場が適用された場合、その大きさは、4から10μTの範囲であることが好ましい。4μTより小さい場合、磁場の効力は急速に落ちる。例えば、2μT以下で60Hzのシルソイドを適用した場合、有益な効果は生まれなかった。10μTより大きいニードルパワー(needle power)が消費される。好ましい周波数は、30Hz以上である。50又は60Hzの電力線周波数は、非常に有用である。なぜなら、それらは、非常に有用な結果を生じ、その場は、通常の安価な構成で発生できるからである。6000Hz以上の周波数は、全く効果的である。場は、取り扱われる臓器を横切って均一でなくてもよいことを私が発見したことを明記しておくことは重要である。振幅の主な条件は、防禦しようとする組織のどこにおいても4μTより大きいことが好ましい。場の振幅の不均一に対する大きな許容の発見は、重要な経済的利益を有する。なぜならば、安価に製造でき、患者により容易に自己管理できる(ダブルコイルよりもシングルコイルのような)簡単な装置が使用できるからである。100μT以上の場は効果的である。非シヌソイド波形も使用できるが、特に利益をもたらすものではない。好ましいパルスのパルス反復速度は、30Hzより大きい速度である。もし、電場が直接適用された場合、好ましい周波数範囲は、15から100Hzである。(臓器に影響する位置での)電場の大きさは、場の周波数が15から100Hzの範囲である場合は、1mV/cmより大きいことが好ましい。これ以上の周波数に対しては、最小の場が、より大きいことが必要である(周波数の増加に従って増加する)。電磁波、無線周波数(RF)、又はマイクロ波が防禦される臓器(例えば心臓)に照射された場合、最小の場強度は、約10から50mW/cm2であることが好ましく、30から100Hzの範囲の周波数で変調される大きさであることが好ましい。パルス変調波は、シヌソイドの振幅変調波のように効果的ではない。周波数変調されたPFエネルギは、虚血の損傷に対する防禦において、同じように有効ではない。測定可能な温度上昇は必要でなく、又は望まれない。私の発明は、電磁場の熱の影響を用いるものではない。上述したすべての場の中で、振幅と波形が、約10秒より短いタイムスケールでは変動しない。このように、照射時間が20分又はより長いオーダであっても、この照射中に、場のパラメータ(振幅、波形、周波数等)は変化しても良いが、約10秒又はそれ以上の間隔で一定でなければならない。例えば、rms(root mean square)振動は、いずれの10秒の間においても、約10%より大きく変化してはならない。もし、場のパラメータが、1秒以下のオーダ変化した場合、有益な影響は起きないか、又は大きく低減される。もし、場のパラメータが、1秒のタイムスケールで、ランダムな形で変化するのを許容すれば、有益な影響は減少するであろう。
【0046】
私は、1回の、(20分のオーダで)短い照射を、DC場を加えないで時間により変動する磁場に使用することにより、損傷を防ぎ、電磁場治療法の必要性を避けられることを発見した。最初の20分の処置が終わった1、2時間後に、20分の再刺激を行うことにより、より長時間の大きな保護をえることができる。私は、また、永久的な閉塞がない場合であっても、ずっと短時間(1時間より短時間)の、単純な波形(シヌソイド)の、小さな場(10-1Gのオーダ)が、虚血/再灌流による損傷を防ぐために使用できることを発見した。電力周波数が50又は60Hz(例えば、ヨーロッパ又は米国)の場合、50又は60Hzのシヌゾイドの発生は、全くありふれたことなので、本発明の単純な波形は、大きな経済的利益を与える。弱くて低い周波数場を短時間使用できるという私の発明は、必要な電力はもっと少なく、装置を安価かつより少ない費用で小型にできることを意味する。
【0047】
私は、無酸素症や他のストレスによる損傷を防ぐには、パルスは必要ではなく、磁場は、マルコルにより示されるより、約1000倍小さいことが好ましいことを発見した。私は、また、40mGより大きい場の、1回の短時間(1時間よりり短い)照射が有用で、かつ15から10000Hzの周波数範囲が、臓器の損傷を防止するのに非常に効果的であることを発見した。
【0048】
動物、植物、及びバクテリアを含む細胞各臓器の細胞が、本発明にかかる方法で取り扱うことができる。細胞は、生体外又は生体内で取り扱われる。同様に、動物及び植物の組織を含む各臓器の組織も、生体外又は生体内のいずれかで、本発明の方法により取り扱うことができる。本発明を行うためには、動物の細胞及び組織が好ましく、哺乳類(例えば、犬、猫、人間)の細胞及び組織が、特に好ましい。ここで使用される「動物」の用語は、犬、猫、牛、豚、及び馬のような獣医学の対象をいう。
【0049】
ストレスが加わる細胞及び組織は、死滅と戦うために、磁場を用いて処置される。例えば、培養されている細胞(例えば、蛋白質や他の材料を細胞から作る目的で)や、培養されている組織(例えば、移植前の心臓、肺、肝臓又は腎臓のような完全な臓器)が、本発明の実施のための「ストレス下」と考えることができる。例えば、臓器が、シヌソイドの時間により変動する磁場の中に、適当な照射時間の間配置され、熱衝撃(heat shock)蛋白質が臓器中に製造され、それらが人体から取り出された時に存在した血液、栄養、及び他の必要な物質の欠乏に対して、より抵抗が大きくなるようにする。磁場は、臓器を公知の保存溶液中に配置するとともに使用され、このような目的のために、当業者に知られた手続により使用される。そのような溶液や手続は、米国特許4,920,044号の「臓器保存用の細胞内のフラッシュ(flush)溶液」に、米国特許4,879,283号の「臓器保存用溶液」に、米国特許4,873,230号の「臓器保存用合成物」に、及び米国特許4,798,824号の「臓器保存用潅水」に記載されている。出願人は、それらの記載を解釈し、ここで引用した全ての他の特許は、ここに参考文献として添付する。
【0050】
ストレス下の生体内の組織は、また、電気化学的に誘導されたHSP70及び他のストレス蛋白質により取り扱われる。例えば、動脈の及び心筋の組織は、組織中の細胞の生存性を増大するバイパス手術の後に、時間により変動する磁場を適用して処置されても良い。心臓の虚血は、それらの組織中の細胞の生存性を拡大する心筋梗塞の時の直後又は前に、時間により変動する磁場を適用して処置される。腎臓は、磁場を適用することにより、抗生物質ゲンタマイシン(Gentamicin)のような毒性の物質からの損傷から防禦することができる。動脈組織は、レーザ血管形成やアセレクトミ(atherectomy)の間、時間により変動する磁場が適用され、そのような手続により生じるそれらの組織の損傷が低減される。生体内でストレス下にある神経組織(即ち、末梢神経及び中枢神経)も、また、本発明の方法で処置される。例えば、もし、神経の軸索の非常に多くの部分が切断された側の末端であるとき、末梢神経は、逆行性の変性にさらされ、変性は神経細胞又は体の死により最高点に達する。もし、変性が細胞に死によって最高点に達しない場合、神経が再生するための機会が存在する。このように、その強度と継続時間が、HSPの防禦が最大となるように設計された磁場が、そのような神経組織に適用され、抹消神経の切断から来る細胞の死滅と戦う。
【0051】
神経組織は、また、生体内での無酸素ストレスにさらされても良い。例えば、無酸素ストレスは、打撲、又は血液の組織を奪うことにより神経組織を損なう破裂動脈瘤によりもたらされる。中枢神経組織が損傷を受けた場合、一般に、損傷は、血管に関する分水界(watershed)パターンで起きる。損傷を受けた供給管に最も近い組織は、最も激しく損傷を受ける。損傷を受けた供給管から最も離れ、他の管から供給を受ける組織は、最も損傷が少ない。これらの両極端の間の組織は、中間の損傷を示す。苦しめられた対象の影響を受けた領域は、磁場にさらされ、この型のストレスにさらされている細胞中の死滅と戦う。
【0052】
上述のように、本発明は、血管形成の後の再狭窄と戦うために用いることができる。血管形成は、閉塞された又は塞がれた動脈を広げる手続である。一般的な、トランスルミナルバルーン血管形成(transluminal balloon angioplasty)では、ふくらむ膨張バルーンを先端部に備えたカテーテルが、部分的に塞がれた動脈を再形成するために用いられる。バルーンは、しぼんだ状態で動脈の制限された部分に挿入されて、膨張し、膨張したバルーンにより塞がれた管腔が再形成され、血液のより良い通路ができる。塞いでいた材料は、位置が変えられることも、除去されることもなく、壁に向かって押しつけられる。壁は、以前に塞いでいた材料に適合するように伸ばされる。管腔が再形成された後、膨らんだバルーンはしぼめられて除去される。しかしながら、もし、血管が、元の形状に戻った場合、形成された閉塞の位置は、再閉塞される。この現象は、「再狭窄」として知られる。例えば、米国特許4,838,269号、4,794,928号(それらの記載は、参考文献として添付する)を参照のこと。再狭窄を防止する処置(即ち、血管形成中と、血管形成後、再狭窄の発生前の双方の間)に必要な問題は、時間により変動する磁場を、再形成された脈管の管腔に適用することにより処置される。
【0053】
私は、80μT、60Hzの磁場を20分間照射することにより、1時間後に行われる電離放射線(例えば、紫外線、X線、又はガンマ線)に対する細胞の防禦が補強される。紫外線照射によりストレスにされられた皮膚組織は、本発明の方法により処理することができる。私の磁場は、通常の組織中と同様に、悪性の組織中でもストレス蛋白質を誘発しない。このように、かかる場は、電離放射線が腫瘍細胞を殺すのに用いられる場合、腫瘍周辺の通常の組織を防禦するのに有用である。腫瘍及び周辺組織は、最初に磁場にさらされると、その結果、電離放射線の致死の傷害に対して、他と異なった感度を有する。このように、周辺の通常の組織に多くの損傷を与えることなく、腫瘍組織を殺すことができる。紫外線照射によるストレス下の皮膚組織を防禦するために、紫外線にさらされた後に磁場が用いられ、その組織の回復と治癒とを高めることができる。焼損や日焼けの増加を防止するために、例えば、太陽光線や他の紫外線源にさらされる前に、磁場を適用することもできる。組織は、また、癌の化学療法ような、化学療法処置によるストレス下におかれても良い。私の磁場は、悪性の組織の中では、弱いストレス応答しか誘発しない。このように、私の磁場の適用により、癌組織は、化学療法の有毒な影響に対して防禦されず、一方、通常の組織は防禦される。このような場合、磁場は、化学療法処理に先立って、又は後に、保護作用及び治癒作用の双方として適用できる。
【0054】
私の磁場により誘発されるストレス蛋白質の組成は、熱衝撃により誘発されるストレス蛋白質と、全く同一であるため、昇温のみで生じるより多くの保護を得るために、昇温がその後に続く磁場との組み合わせを用いると有利である。もし、最初に磁場が適用され、それから、熱衝撃に対する反応を誘起するために十分に小さい昇温が必要とされた場合、この熱衝撃は、数時間後に30分以内で適用される。例えば、20分間の4μT、60Hzの場の照射に続いては、全ての熱衝撃反応を誘発するためには、組織温度は、20から30分間で単に41℃に昇温すれば良い。磁場を予め照射しない場合、温度は43℃以上に昇温しなければならない。このように、予め磁場を照射することにより、周囲の組織への温度勾配がより小さくなるという実質的な利点を提供する。これは、収束された熱源のいずれかのタイプの使用を試す場合に、非常に有用である。この例としては、収束された超音波ビームや、組織の非常に集中した領域にエネルギを収束するのに使用される磁気共鳴イメージング装置がある。たとえ、広くて収束されない領域に、熱衝撃反応を誘発したい場合であっても、最初に、私の磁場を用いる領域を「敏感にして」、それから熱を加えることは、それでも有用である。磁場と上昇した温度との相互的な効果は、生物学上、非常に意味があり、結果として、細胞毒の状態にさらされるのに対して細胞を防禦することとなる。
【0055】
皮膚組織が、身体の一の部分から取られ、他の部分に移植された場合、もし、皮膚組織片を取り出す前に、我々の磁場を適用すると、移植の成功の可能性は大きく増加する。これは、移植部分で、切除後と、血管再生(revascularisation)前に発生する虚血から皮膚組織を防禦するために、磁場が、ストレス反応を誘発するからである。
【0056】
磁場は、他の治療上の薬と同時に、又は組み合わせて適用してもよい。例えば、急性の損傷からの細胞の防禦を補助するとして知られている他の薬と組み合わせても良い。そのような薬品は、ビタミンC及びEのような抗酸化体(anti−oxidant)又はフリーラディカル殺菌剤(free radical scavengers)、及び反応性酸素分子の製造を通して損傷が起きる場合には超酸化物ディスムターゼ(superoxide dismutase)を含む。磁場は、熱衝撃蛋白質で引き起こされるとして知られた刺激に応答して細胞を感作するとして知られたインドメタシン(indomethacin)のような、非ステロイド性の抗炎症性の薬と組み合わせても良い。細胞損傷のメカニズムが、細胞外のカルシウムの流入を含む場合、他の薬は、デキシトロルファン(dextrorphan)やMK−801のような過剰のカルシウムイオンの流入を低減する(例えば、脳組織中のように)他の薬であっても良い。損傷のメカニズムが、心筋梗塞の場合、他の薬は、組織プラスミノゲン活性剤(tissue plasminogen activator)(TPA)及びストレプトキナーゼ(streptokinase)のような、心筋への血流の障害物を除去する薬であっても良い。
【0057】
(発明の実施可能性)
私は、数多くの観測と処置により私の発明の実施可能性を確認してきた。観測結果の1つは、細胞を60Hzの磁場にさらすことによる防御効果であり、これは、試験管内の細胞が無酸素状態にある場合の、有害な影響の多くを防止する。哺乳類の細胞培養菌の生存率は、磁場にさらしその後無酸素状態に置いた後に測定した。これは以下のように行った。
【0058】
a.各実験では、略24時間前にL929細胞(25cm2のフラスコ当たり1×106個)を培地に植えた3つのフラスコを使用した。1つのフラスコを、対照標準物として元の培養器の中に保存した。他の2つを、ヘルムホルツコイル暴露装置の中に置き、各フラスコを各コイル群の中に配置した。1つのフラスコを、60Hz、10μTの磁場に1時間さらした。もう1つのコイルシステムはオンにしなかった。
【0059】
b.上記2つのフラスコを、どのコイルも起動せずにさらに3時間曝露装置内に保存した。その後、これらのフラスコを培養器に移して、対照用フラスコとともにさらに1.5時間保存した。
【0060】
c.フラスコを培養器から取り出して(これは、EMF曝露開始から5.5時間後に行われる。)、細胞培地を注ぎ出した。無酸素状態に置くための上記2つのフラスコ用に、細胞を、5mlのリン酸緩衝液生理食塩水で一度洗浄し、無酸素状態用にデザインされた、バランスのとれた5mlの塩水(HBSS)(後に組成物を挙げる。)で一度洗浄し、最後にHBSSをもう一度与えた。対照用細胞は、もとの培地内に置いたままにした。
【0061】
d.無酸素状態に置くための2つのフラスコ用に、各フラスコに対しアルゴンを3m流して空気を移動させた。続いて、各フラスコの蓋を堅く密閉し、フラスコを細胞培養器に戻して4時間無酸素状態に置いた。
【0062】
e.4時間の無酸素状態の後、フラスコを培養器から取り出して、HBSSすなわち培地を注ぎ出した。細胞をトリプシン処理してフラスコの成長表面から除去し、生き残った細胞数を、トリパン(trypan)ブルー生体染色を用いて数えた。各フラスコから50個の生きた細胞をピペットを用いて取り出し、5mlの完全細胞培地(MEM+5%ドナーウシ血清)を有する、60mmのプラスチック培養ディッシュ内に移した。こうしたディッシュを各フラスコから5つ用意した。
【0063】
HBSSは、以下の材料を含む。1.3mMのCaCl2、5.0mMのKCl、0.3mMのKH2PO4、0.5mMのMgCl2、0.4mMのMgSO4、69mMのNaCl、4.0mMのNaHCO3、0.3mMのNa2HPO4
【0064】
f.細胞が定着し結合し増殖してコロニーを形成できるように、ディッシュを、CO2が注入された細胞培地内に配置してほぼ11日保存した。次に、培地を各ディッシュから取り除いて、無水メタノールを用いてディッシュを固定した。細胞を0.5%メチレンブルーで染色し、特別な差異を与える位相差顕微鏡を用いて、20個の以上の細胞からなる染色されたコロニー数を数え上げた。
【0065】
【表1】

【0066】
表1からわかるように、4時間の無酸素状態でディッシュ内に配置された場合、コロニーのほぼ40%だけが生き残る。しかしながら、前以って1時間磁場にさらされたディッシュにおいては、生存率は80%近くあった。この実験の結果は明らかに、交差防御が起こったことを示す。このように、時間的に変わる磁場にさらすことが生体細胞における無酸素に対する防御に寄与することが初めて示されたと私は考える。
【0067】
2番目の一連の実験では、ほぼ94時間培養したひよこの胎児を、8μT、60Hzの磁場に40分さらした。40分後に、胎児をプラスチック冷凍バッグの中に入れてほぼ1分間バッグにアルゴンを流すことにより、胎児を無酸素状態に置いた。続いてバッグを密閉した。ほぼ80分後に、胎児の心臓を目で観察した。その結果を表2に示す。前以って磁場にさらすことで、無酸素の影響がかなり抑制されているのがわかる。6000Hz以上の別の高周波数で且つ磁場にさらす時間を20分以内にした場合も、同様の結果を得ることができる。
【0068】
【表2】

【0069】
別の一連の実験では、有益な効果をもたらす磁場の強さの閾値を測定した。これらの実験では、前以って94時間培養された胎児を、20分の間、0から8μTの間の強さの範囲で60Hzの磁場にさらした。胎児をほぼ90分間無酸素状態におき、その結果、対照標準物の約40%が生き残った。この結果は、本願の一部である図面の中の図1に示されている。図1は、無酸素状態に置かれたひよこの胎児の生存率に対する、60Hzの磁場の2乗平均振幅を変化させた場合の影響を示す。対照標準物の値はほぼ37.5%であった。2乗平均振幅が約4μT以上の磁場に対してのみ、(対照標準物と比べて)生存率の大きな改善が見られた。4μTを超えると、曝露されたグループの生存率は、対照標準物の2倍近くである。図1からわかるように、4μT以下になると、磁場の効果は急速に低下し始める。2μT以下では、有益な効果は観察されない。生存率は、対照標準グループと等しかった。6000Hzでも非常によく似た結果が得られた。
【0070】
虚血の治療では時間が非常に重要である。内因性防御反応機構を刺激するのが早いほど、それらの防御行動は、より効果的になる。例えば、カドミウム(考慮すべき典型的な毒薬)やアミノ酸類似体を使用する場合、大きなストレス反応を刺激するためには数時間かかる。これは、本方法の効力と実用性に重大な制限を与える。電磁場を使用することは、高熱による治療や、カドミウムやアミノ酸類似体の注入など薬による治療よりもずっと有益である。
【0071】
耐熱性及び交差防御に関する上述の研究において、病気から守るために、治療は常に病気の発症(例えば虚血や体温の致命的な上昇)に先んじて行われた。治療を虚血が始まった後に行うことができれば、これは実際上非常に重要である。虚血が始まった後に電磁場を発生させることの効力を確かめるために、以下の手順を行った。一連の実験では、前以ってほぼ94時間培養させたひよこの胎児を8μT、60Hzの磁場に20分間さらした。1つのグループでは、無酸素状態の開始と同時に磁場にさらした。別のグループでは、無酸素状態開始から20分後に磁場にさらした。結果を表3に示す。無酸素状態開始から間もなく磁場にさらした場合でさえ、生存率に大きな改善が観察されたのがわかる。このことは、磁場を発生させる装置が家、オフィスなどで利用できれば、心臓病や心臓発作の兆候がある人が、後述する実施形態を利用して場を自分で使用できることを意味する。一般的に使用するためにはもちろん、装置は、その使用が簡単であるだけでなく、心臓病や心臓発作の危険のある人々の大部分が利用できるように非常に安価にすべきである。私の発明は、これらの条件を満足する。
【0072】
【表3】

【0073】
(装置の好適な実施形態の説明)
私の方法を実行するための防御装置は、最も簡単な形態において、10〜30000Hzの範囲で作動する周期的な信号発生器と、信号発生器からの電流が流れるコイルとを有する。コイルに電流が流れることにより、自然の生体防御機構を誘導するのに必要な、時間的に変化する磁場が発生する。信号発生器、コイルともに、多くのものが適用できる。以下に、これらの要素のいくつかの適用例を示す。
【0074】
信号発生器
例1:交流を電源とし、変圧器を連結した、商用周波発生器
交流電源が利用できる場合は、防御用信号発生器を簡単な変圧器として用いることができる。変圧器には、所望の電流レベルでコイルを直接的に駆動するのに適した電圧及び抵抗を得るための2次巻線を設けてもよい。このタイプの発生器は、非常に経済的であり、また、場発生コイルに連結するための適当な手段を備えた、交流/交流プラグ接続式の変圧器のみを有する。
【0075】
例2:交流を電源とし、変圧器を連結した、周期信号発生器
交流源を用いて、防御用信号発生器により、送電線用の場以外の形状と周波数を有するELF周期信号を発生させることができる。この場合、信号発生器は一般的に、直流源と、所定のELF周期信号を作成する回路と、周期信号を場発生回路につなぐ回路とを有する。
【0076】
安全上の理由で、変圧器を連結した直流源が一般的に薦められる。このタイプの直流源は、適当な種類の変圧器と、半波又は全波整流器と、コンデンサと、電圧調整器(例えばカリフォルニア州サンタクララのナショナル・コンダクター社により製作されたLM78XXの1つ)とを用いた標準的な方法により容易に作られる。
【0077】
先に述べたように、適切な周期信号には、正弦波、三角波、方形波、パルス列、及び適当な範囲内の周波数を有する他の周期信号を含まれる。正弦波、三角波、及び方形波発生器は、相互連結した適切な演算増幅器又は特殊波形を発生させる集積回路(例えばフロリダ州メルボルンのハリス・セミコンダクターにより製作されたICL8038)のいずれかを用いて設計できる。代わりに、マイクロプロセッサ又はマイクロコントローラと適当なソフトウェア制御装置を用いて、任意のタイプの信号を発生させてもよい。第1の方法がより経済的なのに対し、第2の方法は、より複雑な曝露パターンの発生、例えば周期的な防御場の再発生が容易である。
【0078】
場発生コイルを適切な電流レベルで駆動するのを可能にするためには、一般的には別の回路が必要である。この回路の配列は、使用される周期信号のタイプ、及びコイルのデザイン・構成に依存する。周期信号がパルス直流信号である場合、トランジスタ電流増幅器を用いてもよい。周期信号が交流信号である場合、音声電力増幅器がより適切である。適切な音声電力増幅器は、別個の要素、すなわちトランジスタ又は演算増幅器を用いて作成できる。代わりに、市販の電力増幅用の集積回路(例えばカリフォルニア州サンタクララのナショナル・セミコンダクターにより製造されたLM383、LM384、又はLM386)を用いてもよい。
【0079】
例3:バッテリ駆動される周期信号の生成
携帯性が重要な特徴となるため、信号発生器は、バッテリ駆動される装置として簡単に設計される。この場合、信号発生器は、選抜きの周期信号を生成する回路と、上記周期信号を場生成コイルに結合する回路よりなる。これらの構成要素は、共に前述した例と同じ手法で実現される。バッテリ駆動される信号発生器は、常時個別に身に着けることのできる保護装置を構成する適切なコイルと共に用いられる。信号発生器を小さな容器に取り付けることは、この適用にとて有益なことである。これは、表面実装部品、及び、薄い高容量バッテリ、例えば、セル方式の携帯無線電話において使用されているタイプのバッテリを用いることで達成される。上記装置は、例えば、ベルトにより着用され、ポケットに入れられ、又は、首に巻きつけられたチェーンにつるすことのできる装置に組み込まれる。上記コイルへの取り付けは、物理的に対の電線接続を介して行われる。
【0080】
場生成コイル
一般的に、EMFを生成するコイルは、電気が流れたとき、筋肉、臓器、又は、発明において規定した電磁場を扱う他の生物学上の入口の内に適当な磁場が発生するように上記方法において配列及び接続された、例えば電線のような、1又はそれ以上の導電性金属の多巻きコイルにより構成される。上記コイルは、意図した適用により選択される幾つかの方法により形成することができる。幾つかの例を以下に示す。
【0081】
例1:二重コイル構成
2つのコイルが互いに平行に配置され、かつ、該2つのコイルの半径と同じ距離(半径の規則)だけ離され、付加的な場が生じる方向にコイル内で搬送される電流を伴う場合、実質的に均一な磁場がコイル間の領域に生成される。この二重コイルの形式は、ヘルムホルツコイルと呼ばれ、身体の大きな領域の適切で均一な照射を可能にする。例えば、目標が頭の場合、コイルは、患者により身に着けられる帽子の互いに反対側に配置される。図2において、参照番号1は、人の患者の頭に付ける帽子である。導電性電線の多巻きコイル2は、帽子の一方の側に設けられ、補足的なヘルムホルツコイル3が反対側に設けられている。上記コイルの対は、前後の他、帽子を横切るその他の所望の軸上に設けられてもよい。目標が心臓の場合、コイルは、患者の頭からかぶり、サイドストラップにより彼/彼女の胴に固定することができるベストの前後に設けられる。図3において、ベスト4は、人の患者の胸及び背中を覆い着用されるように図示されており、開口部5は、患者の頭を通り抜けるように設けられている。ヘルムホルツコイル2及び3は、ベストの前後面に示されている。バンドは、コイルが前後に置かれるように、周知の方法により、胴の周りに巻きつけられる。図4は、患者の胴に巻きつき、マジックテープ(登録商標)7及び8により固定するベスト6の別の形態を表す。この方法において、コイルは患者の胴を横切るどんな軸上にも設けることができる。同様のバンドは、頭にも用いることができるが、患者の楽のため、顔の周りには開口部が必要である。帽子のサイズなど、半径の規則の適用が禁止される場合、異なる距離、好ましくは可能な限り半径の規則に近い距離が使用される。
【0082】
例2:一重コイル
一対のコイルの使用は、注文領域への比較的均一な照射を可能にするため、有利である。しかし、一重のコイルでも、適切に配置されるならば用いることができる。例えば、クッションや枕内にコイルを設けることができる。図5は、就寝中、患者の頭が置かれるクッション又は枕10内に設けられた一重のコイル9を示す。上記クッション又は枕10は、患者の頭がその上にあるとき、頭領域は所望する保護効果を生じる適切な場を受けるような寸法である。一重のコイルの実施の形態の一例は、通常のサイズのクッション内に組み込まれた寸法26”×20”の多巻き矩形コイルからなる。この“クッション”アプリケータは、最も患者の邪魔にならずに治療を行うことができる。堅いクッションが用いられれば、頭の中心は、コイルの面から平均して7”の位置に配置される。このコイルにより生成される磁場は、完全な環に沿って微小な電極からの全ての寄与を加算することにより計算される。このコイルからの照射レベルの範囲を特定する目的で、私は、頭の敏感な領域は、コイルの面上5”の面上であって、コイルを直接覆う中心の位置に置かれる22”×16”×4”の平行六面体により包まれた体積の中に置かれるべきであると仮定する。この体積内の磁場は、最大及び最小の場の±45%内で変化する。例えば、コイルの面上の軸場が20mGの場合、詳述した体積内の場変量は、およそ4mGから13mGの値を取る。
【0083】
一重、二重、又は、その他のコイルのアプリケータは、布を用いるあらゆる商品の一部、例えば、導電性塗料を用いたトレースとして設けることができる。このアプローチと共に、磁場は、適切な位置に設けられたトレースを用いることで身体のどの部分に対しても印加することができる。ボディスーツは、この目的にあった便利な衣服である。図6aにおいて、ボディースーツ又は衣類は、スーツに対して導電性トレースを添付した形態のコイル11と共に示されている。図6bは、スーツの背部に設ける第2のコイル12を示す。コイルは、患者の胴を横切るあらゆる軸の上のどの高さに設けられても良い。保護されるべき臓器が頭の中にある場合、縁あり/縁無しの帽子のどのようなタイプのものでも用いることができる。
【0084】
二重のコイルバンドアプリケータ、又は、一重のコイルアプリケータは、外科の手続き前にあらゆる筋肉/臓器の前処置に効果的に用いることができる。
【0085】
複雑さを増した器械の装置
危うい状況を検出するための監視機能を有する装置が、ハイリスクな患者のために設計される。この装置は、常時身に着けられ、必要時に迅速に作動される。活動化させる状況は、臨床データを用いて決定すべきである。この装置は、酸素の欠乏を特徴とする心臓発作、脳卒中、又は、他の類似する状況を引き起こす危険のある患者に対して特に有益である。監視ユニットと保護信号発生器との間の送信は、一般的な手法を用いる無線リンクを経由して行われる。生物学的な活性度を監視する多くの市販の有用な代替装置が存在する。これらの幾つかは、腕時計の形で身に着けられる。提案された監視機能を有する保護装置の器具は、監視モジュールへの信号発信機、及び、保護信号生成モジュールへの信号受信機の集積化を要求する。適切な発信機/受信機モジュールは、商業的に入手可能である。
【0086】
(引用文の脚注)
1.米国心臓協会(American Heart Association)による論文,1990年、“Heart Fact”、米国連合国立センター(American Association National Center)、ダラス(Dallas),pp.1.
2.ボンベントゥル(Bonventre)JVによる論文,1988年、“Mediators of ischemic renal injury”、Ann Rev Med 39, pp.531〜pp.544.
3.アナンサン(Ananthan)J及びゴールドバーグ(Goldberg)ALによる論文,1986年、“Abnormal proteins serve as eukaryotic stress signals and trigger the activation of heart shocks genes”、サイエンス(Science),pp.232,pp.522,pp.544.
4.メストリル(Mestril)R及びディラム(Dillmann)WHによる論文,1995年、“Heart shock proteins and protection against myocardial ischemia”、J Mol Cardiol 27,pp.45〜pp.52.
5.ドネリィ(Donnelly)TJ、シバーズ(Sievers)RE、ビッセン(Vissern)FLJ、ウェルチ(Welch)WJ及びウォルフ(Wolfe)CLによる論文,1992年、“Heart shock protein induction in rat hearts”、Circulation 85,pp.769〜pp.778.
6.ウォーカー(Walker)DM、パシーニ(Pasini)E、カクコゴル(Kucukogolu)S、リン(Lin)JJC及びフェラミスコ(Feramisco)JRによる論文,1983年、“Heart stress limits infract size in the isolated perfused rabbit hears”、Cardiovasc Res 27,pp.962〜pp.967.
7.リー(Li)GC及びマック(Mak)JYによる論文,1985年、“Induction of heart shock protein synthesis in murine tumors during the development of thermotolerance”、Cancer Res 45,pp.3816〜pp.3824.
8.イワキ(Iwaki)K、チ(Chi)SH、ディラム(Dillmann)WH及びメストリル(Mestril)Rによる論文,1993年、“Induction of HSP70 in cultured rat neonatal cardiomyocytes by hypoxia and metabolic stress”、Circulation 87,pp.2023〜pp.2032.
9.ハッター(Hutter)MM、シバーズ(Sievers)RE及びウォルフ(Wolfe)CLによる論文,1994年、“Heart shock protein induction in rat hearts:a direct correlation between the amount of heart shock protein induced and the degree of myocardial protection”、Circulation vol.89,pp.355〜pp.360.
10.メストリル(Mestril)RM、チ(Chi)SH、セイエン(Sayen)MR、オーレイリー(0'Reilly)K及びディラム(Dillmann)WHによる論文,1994年、“Expression of inducible stress protein in rat heart myogenic calls confers protection against simulated ischemia induced injury”,Clin Inves 93,pp.759〜pp.769.
11.ヘッド(Heads)RJ、イェロン(Yellon)DM、ラッチマン(Latchman)DS,1995年、“Differential cytoprotection against heart stress or hypoxia following expression of specific protein genes in myogenic cells”、J Mol Cardio 27,pp.1669〜pp.1678.
12.ジョアニィズ(Joannidis)M、カントレィ(Cantley)LG、スポークス(Spokes)K、メディナ(Medina)R、パルマン(Pullman)J、ローズン(Rosen)及びイプスタイン(Epstein)FHによる論文,1995年、“Induction of heart shock proteins does not prevent renal tubular injury following ischemia”、Kindney Int 47(6),pp.1752〜pp.1759.
13.マーバー(Marber)M、メストリル(Mestril)R、チ(Chi)SH、セイエン(Sayen)MR等による論文,1995年、“Overexpression of the rat inducible 70-kD heart stress protein in a transgenic mouse increases the resistance of the heart to ischemic injury”、J Clin Invest,pp.1446〜pp.1456.
14.マクレオド(McLeod)KJ、リー(Lee)RC、エーリッヒ(Ehrlich)HPによる論文,1987年、“Frequency dependence of electric field modulation of fibroblast protein synthesis”、サイエンス(Sience)6月12日号,236(4807),pp.1465〜pp.1469.
15.グッドマン(Goodman)R及びヘンダーソン(Henderson)Aによる論文,1987年、“Patterns of transcription and translation in cells exposed to EM field”再掲、“Mechanistic Approach to interaction of Electric and Electromagnetic Fields with living Systems”,エド・マーティン・ブランク(Ed Martin Blank)及びユージ・ピンドル(Eugene Pindl),プレナム(Plenum)出版社,1987年、pp.217〜pp230.
16.グッドマン(Goodman)R及びヘンダーソン(Henderson)Aによる論文,1988年、“Exposur of salivary glands cells to low frequency electromagnetic field alters polypeptide synthesis”、Proc Natl Acad Sci USA 6月号,85(11),pp.3928〜pp.3932.
17.ブランク(Blank)M,グッドマン(Goodman)Rによる論文,1988年、“An electrochemical model for the stimulation of biosynthesis by external electric fields”、Bioelectrochem and Bioenerg 19,pp.569〜pp.580.
18.エジントン(Edginton)SMによる論文,1995年、“Therapeutic application of Heart Shock Proteins”、Biotechnology 13,pp.1442〜pp.1444.
19.セドラック(Sedlak)BJによる論文,1996年、“Heart shock proteins finding a broad range of clinical use and applications”、Genetic Eng.News,2月号,pp.6.
20.アルバーティン(Albertini)A,ノエラ(Noera)G、ピエランジェリ(Pierangeli)A、ズッチーニ(Zucchini)P及びカドッシィ(Cadossi)Rによる論文,1991年、“Effect of Low-frequency pulsed electromagnetic field on experimental myocardial infarcts in rat”、electromagnetics in Biology and Medicine,サンフランシスコ出版社,CT Brighton and SR Pollak,pp.187〜pp.189.
21.リー(Lee)BS、チェン(Chen)J、アンジェリィズ(Angelidis)C、ジュリビッチ(Jurivich)DA、モリモト(Morimoto)RIによる論文,1995年、“Pharmacological modulation of heart chock factor 1 by anti-inflammatory drugs in protection against stress-induced celluar damage”、Proc.Nttl.Acad.Sci.USA 8月号 1,92(16),7202-11.
【0087】
(結び)
上記記述的資料が与えられたことにより、当業者は本発明の変形例を思いつくであろう。それゆえ、本発明の範囲は、添付する請求の範囲の記載に基づいて特定されるべきである。
【0088】
したがって、本発明によれば、以下が提供される:
1.組織内に内因性熱衝撃プロテインHSP70反応を生じさせるストレスの下で上記組織において死滅を防止する方法であって、
上記組織内の細胞の生存率を高めるために有効な程度、時間的に変化する磁場を上記組織に与える方法。
2.組織内において内因性熱衝撃プロテインHSP70反応を生じさせるストレスの下で上記組織において死滅を防止する方法であって、
上記組織内の細胞の生存率を高めるために有効な程度、時間的に変化する電場を上記組織に与える方法。
3.組織内において内因性熱衝撃プロテインHSP70反応を生じさせるストレスの下で上記組織において死滅を防止する方法であって、
上記組織内の細胞の生存率を高めるために有効な程度、時間的に変化する電磁場を上記組織に与える方法。
4.上記組織が哺乳類の組織である項1、2、または3の方法。
5.上記組織が動脈組織である項1、2、または3の方法。
6.上記組織が神経組織である項1、2、または3の方法。
7.上記組織が生体外に保持され、上記組織に与える工程が生体外で行われる項1の方法。
8.上記組織が生体外に保持され、上記組織に与える工程が生体外で行われる項2の方法。
9.上記組織が生体外に保持され、上記組織に与える工程が生体外で行われる項3の方法。
10.人間又は動物のアテローム性動脈硬化を防止する方法であって、
人間又は動物の有する動脈血小板の壊死を減少するために有効な量の熱衝撃プロテインHSP70を時間的に変化する磁場により人間又は動物に与える方法。
11.人間又は動物のアテローム性動脈硬化を防止する方法であって、
人間又は動物の有する動脈血小板の壊死を減少するために有効な量の熱衝撃プロテインHSP70を時間的に変化する電場により人間又は動物に与える方法。
12.人間又は動物のアテローム性動脈硬化を防止する方法であって、
人間又は動物の有する動脈血小板の壊死を減少するために有効な量の熱衝撃プロテインHSP70を時間的に変化する電磁場により人間又は動物に与える方法。
13.人間又は動物の血管形成後の動脈再狭窄を防止する方法であって、
人間又は動物の動脈組織に、時間的に変化する磁場を、上記再狭窄を防止する程度与える方法。
14.人間又は動物のアテローム性動脈硬化を防止する方法であって、
人間又は動物の有する動脈血小板の壊死を減少するために有効な量の熱衝撃プロテインHSP70を時間的に変化する磁場により人間又は動物に与える方法。
15.人間又は動物のアテローム性動脈硬化を防止する方法であって、
人間又は動物の有する動脈血小板の壊死を減少するために有効な量の熱衝撃プロテインHSP70を時間的に変化する電場により人間又は動物に与える方法。
16.人間又は動物のアテローム性動脈硬化を防止する方法であって、
人間又は動物の有する動脈血小板の壊死を減少するために有効な量の熱衝撃プロテインHSP70を時間的に変化する電磁場により人間又は動物に与える方法。
17.組織内に内因性熱衝撃プロテインHSP70反応を生じさせるストレスの下で上記組織において死滅を防止する方法であって、
上記組織内の細胞の生存率を高めるために有効な程度、時間的に変化する磁場を上記組織に与える方法。
18.組織内に内因性熱衝撃プロテインHSP70反応を生じさせるストレスの下で上記組織において死滅を防止する方法であって、
上記組織内の細胞の生存率を高めるために有効な程度、時間的に変化する電場を上記組織に与える方法。
19.組織内に内因性熱衝撃プロテインHSP70反応を生じさせるストレスの下で上記組織において死滅を防止する方法であって、
上記組織内の細胞の生存率を高めるために有効な程度、時間的に変化する電磁場を上記組織に与える方法。
20.ストレスを受ける組織細胞の熱衝撃プロテインHSP70反応を補う方法であって、
組織内のHSP70濃度を上げるために有効な程度、時間的に変化する磁場を上記組織に与えて上記組織細胞の生存を高める方法。
21.ストレスを受ける組織細胞の熱衝撃プロテインHSP70反応を補う方法であって、
組織内のHSP70濃度を上げるために有効な程度、時間的に変化する電場を上記組織に与えて上記組織細胞の生存を高める方法。
22.ストレスを受ける組織細胞の熱衝撃プロテインHSP70反応を補う方法であって、
組織内のHSP70濃度を上げるために有効な程度、時間的に変化する電磁場を上記組織に与えて上記組織細胞の生存を高める方法。
23.生きた細胞における健康上の悪影響を抑制する方法であって、
上記悪影響の原因が始まる2時間以内に、時間的に変化する磁場を上記細胞に20分間与える方法。
24.生きた細胞における健康上の悪影響を抑制する方法であって、
上記悪影響の原因が始まる2時間以内に、時間的に変化する電場を上記細胞に20分間与える方法。
25.生きた細胞における健康上の悪影響を抑制する方法であって、
上記悪影響の原因が始まる2時間以内に、時間的に変化する電磁場を上記細胞に約20分間与える方法。
26.上記健康に悪影響を与える原因が化学療法で使用される一つ又は複数の有毒化合物、電離放射線、アテローム性動脈硬化、血管形成後の再狭窄、神経障害、虚血、無酸素症、低酸素症、再灌流、またはその他の環境ストレスである項23、24、または25の方法。
27.最初の時間が終了してから1から2時間後、上記場をさらに与えることにより再度刺激を与える項23、24、または25の方法。
【図面の簡単な説明】
【0089】
【図1】幼胚へあてる60ヘルツ磁場の振幅の二乗平均を変動させる影響を示す。
【図2】患者が被るキャップの対向する側面にある場生成コイルを示す。
【図3】患者が着用するベストの前面と後面にある場生成コイルを示す。
【図4】ベルクロストラップにより安全なものにされた、別の形態のベストを示す。
【図5】ピロー即ちパッド内部の、簡単な場生成コイルを示す。
【図6a】電気伝導性ストリップの形態で場生成コイルを備える体衣の正面図を示す。
【図6b】図5のコイルを体衣の背面に示す。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
生体外で、ストレスの下にある組織において損傷または死滅を防止する方法であって、
40mG以上の場を曝露するように、時間的に変化する磁場、電場、または電磁場を生体外で該組織に与え、該組織内の細胞の生存率を高める工程を含む、方法。
【請求項2】
前記組織が哺乳類の組織である請求項1に記載の方法。
【請求項3】
前記組織が動脈組織または神経組織である請求項1に記載の方法。
【請求項4】
ストレスの下にある、人間組織以外の組織において損傷または死滅を防止する方法であって、
40mG以上の場を曝露するように、時間的に変化する磁場、電場、または電磁場を該組織に与え、該組織内の細胞の生存率を高める工程を含む、方法。
【請求項5】
前記組織が哺乳類の組織である請求項4に記載の方法。
【請求項6】
前記組織が動脈組織または神経組織である請求項4に記載の方法。

【図1】
image rotate

【図2】
image rotate

【図3】
image rotate

【図4】
image rotate

【図5】
image rotate

【図6a】
image rotate

【図6b】
image rotate


【公開番号】特開2008−93453(P2008−93453A)
【公開日】平成20年4月24日(2008.4.24)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2007−279447(P2007−279447)
【出願日】平成19年10月26日(2007.10.26)
【分割の表示】特願平10−537722の分割
【原出願日】平成10年2月26日(1998.2.26)
【出願人】(399128150)ザ・キャソリック・ユニバーシティ・オブ・アメリカ (4)
【氏名又は名称原語表記】THE CATHOLIC UNIVERSITY OF AMERICA
【Fターム(参考)】