説明

ストレス蛋白質とその使用

【課題】本発明の課題は、ストレス蛋白質および個体(ヒト、その他の哺乳類、またはその他の脊椎動物)の免疫応答を調節する方法を提供することである。さらに詳しくは、本発明の課題は、個体の免疫応答の誘導または強化をもたらす免疫療法または免疫予防法における上記ストレス蛋白質の使用ならびに自家細胞に対する個体の応答の低下をもたらす免疫療法剤としての使用を提供することである。
【解決手段】(a)熱ショックタンパク質(hsp)、(b)前記hspと少なくとも40%同一であるタンパク質、又は(c)前記hspもしくは前記タンパク質の一部と、(d)抗原とを融合させる、体液性応答および/またはT細胞応答を刺激することができる融合タンパク質の製造方法。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ストレス蛋白質および個体(ヒト、その他の哺乳類、またはその他の脊椎動物)の免疫応答を調節する方法に関する。さらに詳しくは、本発明は、個体の免疫応答の誘導または強化をもたらす免疫療法または免疫予防法における上記ストレス蛋白質の使用ならびに自家細胞に対する個体の応答の低下をもたらす免疫療法剤としての使用に関する。
【背景技術】
【0002】
ストレス蛋白質の機能は完全には解明されていないが、一部のものはある種の細胞蛋白質およびウイルス蛋白質の集合と構造安定化に関与すると思われ、それらが高濃度で存在すると悪条件曝露時にさらに安定化作用を示すかもしれない(非特許文献1、非特許文献2、非特許文献3、非特許文献4)。食作用を示す宿主細胞は異種生物の生存を阻む環境を作り出すが、ストレス蛋白質産生能力がマクロファージ中の病原性細菌の生存に関与していることが示唆されている(非特許文献5)。
【0003】
ミコバクテリウム チュバクローシス(Mycobacterium tuberculosis)とミコバクテリウム レプラ(Mycobacterium leprae)はそれぞれ結核とらいの病原体である。これらの疾患は現在2〜3千万人の患者があって、長年世界的に重大な健康上の問題となっている(非特許文献6、非特許文献7)。これらの疾患をより効果的に診断し予防する手段を開発するためには、ミコバクテリウム病原体の感染に対する免疫応答を理解することが重要である。
【0004】
感染または死滅ミコバクテリウム接種に対する抗体およびT細胞の応答がヒトおよび動物において研究されている。ヒト結核患者やらい患者は少なくとも12種類のミコバクテリウム蛋白質に対する血清抗体を産生する。これらの蛋白質の一部は、特徴がよくわかっているネズミモノクローナル抗体によっても認識される。ミコバクテリウム溶菌物で免疫したマウスは主に6種類のミコバクテリウム チュバクローシス蛋白質抗原と6種類のミコバクテリウム レプラ蛋白質抗原に対する抗体を産生する(非特許文献8、非特許文献9)。これら12種類のミコバクテリウム抗原をコードする遺伝子がクローン化されており、これらのクローンから製造した組替え蛋白質を用いて、ミコバクテリウム感染に対するヒトTリンパ球の応答が調べられている(特許文献10、特許文献11、特許文献12)。
【0005】
ミコバクテリウム疾患に対する防御には細胞性免疫が関与している(非特許文献13、非特許文献14)。患者または死滅ミコバクテリウムで免疫した志願者からクローン化したTリンパ球について、上記組替えミコバクテリウム蛋白質を認識する能力を有するかどうかが試験されている。リンパ球増殖測定を行なうと、モノクローナル抗体で同定された抗原のほとんどはマウスおよびヒトにおけるミコバクテリウム免疫やワクチン接種に対するT細胞応答に関与していることがわかる。限界希釈分析を行なうと、ミコバクテリウム チュバクローシスで免疫したマウスのミコバクテリウム反応性CD4+Tリンパ球のうちの20%は単一の蛋白質である65kDa抗原を認識することがわかる(非特許文献15)。
【非特許文献1】Neidhardt, F.D. および R.A. Van Bogelen、「Escherichia coli and Salmonrlla typhimurium」、Cellular and Molecular Biology(Neidhardt, F.D., Ingraham, J.L., Low, K.B., Magasanik, B. Schaechter, M. および Umbarger, H.E. )編、(Am. Soc. Microbiol., Washington, D.C. )、pp. 1334-1345 (1987)
【非特許文献2】Pelham, H.R.B.、Cell, 46:959-961 (1986)
【非特許文献3】Takano, T. およびT. Kakefuda、Nature, 239:34-37 (1972)
【非特許文献4】Georgopoulos, C.ら、New Biology, 239:38-41 (1972)
【非特許文献5】Christman, M.F.ら、Cell, 41:753-762 (1985)
【非特許文献6】Joint International Union Against Tuberculosis and world Health Organization Study Group、Tubercle, 63:157-169 (1982)
【非特許文献7】Bloom, B. および T. Godal、Rev. Infect Dis. 5:765-780 (1983)
【非特許文献8】Engers, H.D.、Infect. Immun., 48:603-605 (1985)
【非特許文献9】Engers, H.D.、Infect. Immun., 51:718-720 (1986)
【非特許文献10】Husson, R.N. および R.A. Young 、Proc. Natl. Acad. Sci., USA, 84:1679-1683 (1987)
【非特許文献11】Young, R.A. ら、Nature, 316:450-452 (1985)
【非特許文献12】Britton, W.J. ら、Lepr. Rev., 57, Supple. 2, 67-75 (1986)
【非特許文献13】Joint International Union Against Tuberculosis and world Health Organization Study Group、Tubercle, 63:157-169 (1982) ;
【非特許文献14】Hahn, H. および S.H.E. Kaufman、Rev. Infect. Dis., 3:1221-1250 (1981)
【非特許文献15】Kaufman, S.H.E. ら.、Eur J. Immunol., 17:351-357 (1987)
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
本発明の課題は、ストレス蛋白質および個体(ヒト、その他の哺乳類、またはその他の脊椎動物)の免疫応答を調節する方法を提供することである。さらに詳しくは、本発明の課題は、個体の免疫応答の誘導または強化をもたらす免疫療法または免疫予防法における上記ストレス蛋白質の使用ならびに自家細胞に対する個体の応答の低下をもたらす免疫療法剤としての使用を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0007】
即ち、本発明の要旨は、
〔1〕(a)熱ショックタンパク質(hsp)、(b)前記hspと少なくとも40%同一であるタンパク質、又は(c)前記hspもしくは前記タンパク質の一部と、(d)抗原とを融合させる、体液性応答および/またはT細胞応答を刺激することができる融合タンパク質の製造方法
に関する。
【発明の効果】
【0008】
本発明により、ストレス蛋白質および個体(ヒト、その他の哺乳類、またはその他の脊椎動物)の免疫応答を調節する方法が提供される。さらに詳しくは、本発明により、個体の免疫応答の誘導または強化をもたらす免疫療法または免疫予防法における上記ストレス蛋白質の使用ならびに自家細胞に対する個体の応答の低下をもたらす免疫療法剤としての使用が提供される。
【発明を実施するための最良の形態】
【0009】
発明の概要
本発明は、ストレス蛋白質および個体(ヒト、その他の哺乳類、またはその他の脊椎動物)の免疫応答を調節する方法に関する。さらに詳しくは、本発明は、個体の免疫応答の誘導または強化をもたらす免疫療法または免疫予防法における上記ストレス蛋白質の使用ならびに自家細胞に対する個体の応答の低下をもたらす免疫療法剤としての使用に関する。個体の免疫応答を誘導または強化させる態様においては、誘導または強化された応答は、病原体やガン細胞に由来する抗原などに対する応答であってもよいし、免疫低下個体(an immune compromised individual)などの場合における個体の免疫状態のアップレギュレーション(upregulation)であってもよい。免疫予防法においては、個体における病原体の影響を予防または軽減させる目的または個体におけるガン細胞の影響を予防または低下させる目的でストレス蛋白質を投与するが、該病原体は疾患を引き起こすウイルス、微生物、寄生虫、またはその他の生物または物質(たとえば毒素やトキソイド)であってもよい。本発明の方法によってストレス蛋白質を含む病原体(たとえば細菌、寄生虫、真菌)の悪影響を予防または軽減させるにあたり、その病原体の単数または複数のストレス蛋白質またはその他のストレス蛋白質を含むワクチンを投与することによって、その病原体の単数または複数のストレス蛋白質に対する個体の免疫応答を誘導または強化させる。ストレス蛋白質は単独で投与してもよいし、コンジュゲートの1構成要素または成分として(たとえば融合蛋白質ができるような融合パートナーへの結合などの化学的手段または組替え手段によって別の抗原に結合させて)投与してもよいし、抗原に対する望ましい免疫応答を強化または達成するためのアジュバントまたは担体分子として投与してもよい。本発明はまた、ストレス蛋白質を抗原に融合させた融合蛋白質など、ストレス蛋白質を他成分に結合させたものから成る組成物に関する。ストレス蛋白質を含有するウイルス病原体や含有しないウイルス病原体の悪影響の予防または軽減ならびに本発明の方法によるガン細胞の悪影響の予防または軽減は、個体の免疫監視系を強化することによって実現される。免疫応答の強化は、ストレス蛋白質(たとえば細菌のストレス蛋白質)による刺激によって免疫細胞を調節することによって実現することができる。
【0010】
自己免疫疾患の治療に使用されるものなど個体の免疫応答を低下させる態様においては、自己免疫応答に関与することが知られているストレス蛋白質を投与して、その個体にストレス蛋白質耐性を付与することで、個体の免疫応答を低下させる。あるいは、ストレス蛋白質に応答する免疫細胞の応答能力を阻害することによって、自己免疫疾患で起きることが知られている対ストレス蛋白質免疫応答を軽減させる。
【0011】
本発明のストレス蛋白質の選択された1つは、本発明の方法に従って個体に投与することができ、病原体(たとえば細菌、その他のストレス蛋白質産生性感染性物体)によるその後の感染に対する防御またはガン細胞の悪影響の軽減または予防をもたらす免疫応答を引き起こす。あるいは、1つのストレス蛋白質を選び、それに対する免疫耐性を誘導する目的で、一般に経時的に個体に投与することができる。たとえば、1つのストレス蛋白質は、リューマチ性関節炎などの自己免疫疾患に対する免疫耐性を誘導する目的で経時的に頻回投与することができる。
【0012】
本発明の実施形態の例としては、例えば
〔1〕望まれる免疫応答の対象となる蛋白質に融合したストレス蛋白質を含有する融合蛋白質、
〔2〕該ストレス蛋白質が熱ショック蛋白質であり、かつ該蛋白質がヒト免疫不全ウイルス蛋白質である、前記〔1〕記載の融合蛋白質、
〔3〕該熱ショック蛋白質がhsp70であり、かつ該ヒト免疫不全ウイルス蛋白質がp24蛋白質である、前記〔2〕記載の融合蛋白質、
〔4〕投与された個体に免疫応答を誘導するストレス蛋白質の全部もしくは一部、またはこのストレス蛋白質のアミノ酸配列と充分な相同性を有するアミノ酸配列を持つ蛋白質であってそれを投与された個体に免疫応答を誘導することができる蛋白質の全部もしくは一部を含有するワクチン、
〔5〕該ストレス蛋白質が、ミコバクテリウムのストレス蛋白質である、またはこのミコバクテリウムストレス蛋白質のアミノ酸配列と充分な相同性を有するアミノ酸配列を持つ蛋白質であってそれを投与された個体に免疫応答を誘導する蛋白質である、前記〔4〕記載のワクチン、
〔6〕個体における病原体への免疫応答を強化するために使用するワクチンであって、応答の強化が望まれる病原体のストレス蛋白質の全部もしくは一部を含有するワクチン、
〔7〕該ストレス蛋白質が、ミコバクテリウムのストレス蛋白質、細菌のストレス蛋白質、カビのストレス蛋白質、ウイルスのストレス蛋白質および寄生虫のストレス蛋白質からなる群より選択されるものである、前記〔6〕記載のワクチン、
〔8〕個体における免疫応答を発生させまたは強化する目的で使用する、選択されたストレス蛋白質の全部もしくは一部を含有する組成物であって、該ストレス蛋白質が望まれる免疫応答を誘発するのに充分な量で含まれる組成物、
〔9〕病原体によるその後の感染に対し個体を免疫するために使用するストレス蛋白質を含有する組成物であって、該ストレス蛋白質がこのストレス蛋白質への免疫応答を起こさせるのに充分な量で含まれる組成物、
〔10〕該ストレス蛋白質が、病原体のストレス蛋白質である前記〔9〕記載の組成物、
〔11〕ストレス蛋白質の全部もしくは一部、または該ストレス蛋白質のアミノ酸配列と充分な相同性を有するアミノ酸配列を持つ蛋白質の全部もしくは一部を含有する組成物であって、望まれる耐性の誘導に適した条件下で蛋白質に対する個体の免疫耐性を誘導する目的で使用する組成物、
〔12〕該蛋白質が、リューマチ性関節炎と関連する蛋白質である前記〔11〕記載の組成物、
〔13〕個体における免疫応答の誘導に使用するワクチンであって、望まれる免疫応答の対象となる物質もしくは個体の免疫応答を誘導するのに充分な該物質の一部に結合した、ストレス蛋白質の全部もしくは一部または該ストレス蛋白質のアミノ酸配列と充分な相同性を有するアミノ酸配列を持つ蛋白質の全部もしくは一部を含有するワクチン、
〔14〕該ストレス蛋白質が、ミコバクテリウムストレス蛋白質またはこのミコバクテリウムストレス蛋白質のアミノ酸配列と充分に相同性を有するアミノ酸配列を持つ蛋白質であってそれを投与された個体に免疫応答を誘導するものである前記〔13〕記載のワクチン、
〔15〕望まれる免疫応答の対象である該物質が、蛋白質、ペプチド、オリゴサッカライド、脂質、炭水化物、有機分子およびこれらの組み合わせからなる群より選択されるものである前記〔13〕記載のワクチン、
〔16〕個体に免疫応答を誘導するために使用されるワクチンであって、望まれる免疫応答の対象となる物質もしくは個体の免疫応答を誘導するのに充分な該物質の一部に融合したストレス蛋白質の全部もしくは一部または該ストレス蛋白質のアミノ酸配列と充分な相同性を有するアミノ酸配列を持つ蛋白質の全部もしくは一部を含む組換え融合蛋白質を含有するワクチン、
〔17〕該ストレス蛋白質が、ミコバクテリウムストレス蛋白質もしくはこのミコバクテリウムストレス蛋白質のアミノ酸配列と充分な相同性を有するアミノ酸配列を有する蛋白質であって投与された個体に免疫応答を誘導するものである、前記〔16〕記載のワクチン、
〔18〕該蛋白質が、HIVgag蛋白質またはHIVpol蛋白質である前記〔17〕記載のワクチン、
〔19〕免疫耐性誘導剤として使用するための組成物であって、望まれる免疫応答の対象である物質に結合したストレス蛋白質を含有する組成物、
〔20〕個体の免疫応答を強化する目的で使用されるワクチンであって、望まれる免疫応答の対象となる物質もしくは個体の免疫応答を強化するのに充分な該物質の一部に結合したストレス蛋白質の全部もしくは一部を含有するワクチン、
〔21〕該ストレス蛋白質が、ミコバクテリウムストレス蛋白質、細菌ストレス蛋白質、カビのストレス蛋白質、ウイルスのストレス蛋白質および寄生虫のストレス蛋白質からなる群より選択されるものである前記〔20〕記載のワクチン、
〔22〕個体の免疫応答を発生または強化するためのストレス蛋白質を含有する組成物であって、該ストレス蛋白質が望まれる免疫応答を誘導するのに充分な量で含まれ、かつ、該ストレス蛋白質が望まれる免疫応答の対象となる物質もしくは個体の免疫応答を発生もしくは強化するのに充分な該物質の一部に結合しているものである組成物、
〔23〕病原体によるその後の感染に対して個体を免疫するために使用するストレス蛋白質を含有する組成物であって、該ストレス蛋白質が病原体によるその後の感染に対して個体を防御するのに充分な免疫応答を起こすのに充分な量で含まれており、かつ該ストレス蛋白質が望まれる免疫応答の対象となる物質もしくは個体に免疫応答を起こさせるのに充分な該物質の一部に結合しているものである組成物、
〔24〕個体の免疫応答を誘導するために使用するワクチンであって、ストレス蛋白質の全部もしくは一部またはこのストレス蛋白質のアミノ酸配列と充分な相同性を有するアミノ酸配列を持つ蛋白質の全部もしくは一部、および望まれる免疫応答の対象となる物質もしくは個体の免疫応答を誘導するのに充分な該物質の一部を含有するワクチン、
〔25〕該ストレス蛋白質が、ミコバクテリウムのストレス蛋白質である、またはこのミコバクテリウムのストレス蛋白質のアミノ酸配列と充分な相同性を有するアミノ酸配列を持つ蛋白質であってそれを投与された個体の免疫応答を誘導するものである、前記〔24〕記載のワクチン、
〔26〕望まれる免疫応答の対象となる該物質が、蛋白質、ペプチド、オリゴサッカライド、脂質、炭水化物、有機分子およびそれらの組み合わせからなる群より選択されるものである、前記〔24〕記載のワクチン、
〔27〕ストレス蛋白質および望まれる免疫応答の対象となる物質を含有する、免疫耐性誘導剤として使用するための組成物、
〔28〕個体の免疫応答を強化するために使用するワクチンであって、ストレス蛋白質の全部もしくは一部及び望まれる免疫応答の対象となる物質または個体の免疫応答を強化するのに充分なこの物質の一部のいずれかを含有するワクチン、
〔29〕該ストレス蛋白質がミコバクテリウムのストレス蛋白質、細菌のストレス蛋白質、カビのストレス蛋白質、ウイルスのストレス蛋白質および寄生虫のストレス蛋白質からなる群より選択されるものである、前記〔28〕記載のワクチン、
〔30〕ストレス蛋白質並びに望まれる免疫応答の対象となる物質もしくは個体の免疫応答を発生もしくは強化させるのに充分なこの物質の一部を含有する組成物であって、該ストレス蛋白質が望まれる免疫応答を誘発するのに充分な量で含まれ、個体の免疫応答を発生もしくは強化させる目的で使用される組成物、
〔31〕病原体によるその後の感染に対し個体を免疫化するために使用される、ストレス蛋白質および望まれる免疫応答の対象となる物質または個体の免疫応答を発生もしくは強化するのに充分なこの物質の一部を含有する組成物であって、該ストレス蛋白質が病原体によるその後の感染に対し個体を防御するのに充分な免疫応答を発生させるのに充分な量で含まれている組成物、
〔32〕投与された個体への免疫応答誘導剤として使用される組成物であって、ストレス蛋白質の全部もしくは一部またはこのストレス蛋白質のアミノ酸配列と充分な相同性を有するアミノ酸配列を持つ蛋白質の全部もしくは一部であってそれを投与された個体に免疫応答を誘導することができるものを含有する組成物、
〔33〕投与された個体における免疫応答誘導剤として使用される組成物であって、望まれる免疫応答の対象となる物質もしくは個体に免疫応答を誘導するのに充分なこの物質の一部に結合した、ストレス蛋白質の全部もしくは一部またはこのストレス蛋白質のアミノ酸配列と充分な相同性を有するアミノ酸配列を持つ蛋白質の全部もしくは一部を含有する組成物、
〔34〕投与された個体における免疫応答誘導剤として使用される組成物であって、a)ストレス蛋白質の全部もしくは一部またはこのストレス蛋白質のアミノ酸配列と充分な相同性を有するアミノ酸配列を持つ蛋白質の全部もしくは一部およびb)望まれる免疫応答の対象となる物質もしくは個体に免疫応答を誘導するのに充分なこの物質の一部を含む組換え融合蛋白質を含有する組成物、
〔35〕ストレス蛋白質を含有する、免疫耐性誘導剤として使用するための組成物、
〔36〕自己免疫疾患の治療に使用するための組成物であって、ストレス蛋白質の全部もしくは一部またはこのストレス蛋白質のアミノ酸配列と充分な相同性を有するアミノ酸配列を持つ蛋白質の全部もしくは一部であり投与された個体に免疫耐性を誘導するものを含有する組成物、並びに
〔37〕リューマチ性関節炎を治療するための前記〔36〕記載の組成物
が挙げられる。
【0013】
発明の詳細な説明
細胞は、特定のストレス蛋白質の合成を増大させることによって様々なストレス刺激に応答する。ストレス刺激に対する細胞応答で最も研究が進んでいるものは、細胞による熱ショック蛋白質(hsp)の合成であるが、この合成は温度を急に上げることによって誘導される。熱ショック蛋白質の多くはその他のストレスによっても誘導されるので、それらもストレス蛋白質と呼ばれることが多い。ストレス蛋白質およびその関連物質は蛋白質複合体の集合と離散を助けるようである。細菌では、主要ストレス蛋白質のhsp70とhsp60が、ストレスを受けたことのない細胞中で中程度のレベルで見られるが、ストレスを受けた細胞中では非常に高い濃度で蓄積する。たとえば、hsp70とhsp60は通常、全エシェリキア コリ・蛋白質の1〜3%を占めるが、ストレス負荷条件下では約25%まで蓄積する。真核生物のhsp70およびhsp60蛋白質はこれほど極端なレベルまで蓄積することはない。それらの蓄積レベルは、生物と細胞タイプによって、検出不可能レベルから中程度レベルまでの幅がある。
【0014】
本発明は、ストレス蛋白質がTリンパ球への提示に関与する主要抗原の1つであって、広範囲の感染症における共通の免疫標的となりうるという知見に基づくものである。ストレス蛋白質に対する免疫応答は生体による免疫監視に関与しており、様々に異なるタイプのT細胞が高度に保存されたストレス蛋白質決定基を認識することが示されている。以下に説明するいくつかの知見から、ストレスを受けた自家細胞ならびに細胞内病原体に感染した細胞を認識し、その除去を助けることによって、自己反応性T細胞が感染やその他の病原体侵入現象に対する最初の防御を行なう免疫監視モデルの可能性が示唆される。該病原体としてはウイルス、微生物、その他の生物、毒素やトキソイドなどの物質、および細胞形質転換を引き起こす物質などが例示されるが、これらに限定されない。このモデルに拘束されるつもりはないが、何故原核細胞や真核細胞が、自然界で見られる最も高度に保存された豊富な蛋白質の1群(ストレス蛋白質と呼ばれるもの)の合成を増大させることによって、高温などの様々な傷害性刺激に対して応答するのかの説明を可能にする一つの手段として、このモデルは提案される。
【0015】
結核桿菌およびらい桿菌(ミコバクテリウム チュバクローシスとミコバクテリウム レプラ)に対する免疫応答に関与する抗原の研究で、以下にさらに詳細に説明するように様々なストレス蛋白質が免疫応答の主要標的となっているという知見がまず得られた。
【0016】
さらに調べたところ、広範囲の感染症においてストレス蛋白質が共通の免疫標的となっている可能性が明らかになった。配列分析によって、原生寄生動物のプラスモディウム ファルシパルム[ビアンコら(Bianco, A.E. et al. )、Proc. Natl. Acad. Sci., USA, 83:8713-8717 (1986)]とスキストソマ マンソニ[ヘッドストロムら(Hedstrom, R. et al. )、J. Exp. Med., 165:1430-1435 (1987)]およびマラリア寄生虫ブルギア マライ[セルキルクら(Selkirk, M.E. et al.)、J. Cell Biochem., 12D:290 (1988)]の主要抗原の中に70kDaの熱ショック蛋白質ホモログが存在することが判明している。同様に、GroELホモロクがサルモネラ ティフィムリウムおよびコクシエラ[ボドキンとウイリアムス(Vodkin, M.H. and J.C. Williams)、J. Bacteriol, 170:1227 (1988) ]ならびにボルデテラ ペルトゥシス[デルギディスら(Del Giudice, G., et al. )、J. of Imm., 150:2025-2032 (1993)]に対する免疫応答に関与する抗原の中に見つかっている。様々なヒト病原体における主要免疫標的としてストレス蛋白質が存在することは、ストレス応答が感染の共通要素であるかもしれないこと、およびストレス蛋白質はサブユニットワクチンの候補の1つと考えるべきであるという説を支持するものである。すべての生物は、蛋白質の1群である熱ショック蛋白質(hsp)の合成を誘導することによって熱に応答する。この応答は、これまで知られている遺伝子系としては最も高度に保存されているものであり、今日まで調べられた範囲の微生物、植物、および動物を含むあらゆる生物に見られることが示されている。この応答の特徴の多くは全生物に共通であり、hspはこれまで知られている最も高度に保存されているものの1つである。たとえば、hsp90ファミリーとhsp70ファミリーの蛋白質は極めて多様な生物に広く存在する。各ファミリーに属する蛋白質は、たとえ上記のような多様な生物においても、アミノ酸レベルで約50%の一致度を示し、同一でない残基においても多くの類似性を示す。熱によって誘導される蛋白質のうちのいくつかのものは様々なその他のストレスによっても誘導される。hsp類または近縁/類似蛋白質が常温で全生物に存在し、正常な細胞代謝において重要な機能を有することが示されている。リンドクイストとクライグ(Lindquist, S. and E.A. Craig、Ann. Rev. Genet., 22:631-677 (1988) 。ストレス応答は原核生物と真核生物に共通であり、ストレス蛋白質は配列が最も高度に保存されているものの1つであるため、ある病原体に由来する抗原が別の病原体に対して免疫化をもたらしうると考えるのが妥当である。実際、ライフサイクルの早い段階で異種ストレス蛋白質にさらされると、様々な感染性物体に対してある程度の免疫が誘導される。そうなると、この事実は、多くの病原体に関して、感染個体の一部のものだけが実際に臨床的に発症するという知見を説明することができる。
【0017】
ストレス蛋白質とミコバクテリウム感染に対する免疫応答との間に見られている関係について、また、ストレス蛋白質が多くの病原体感染において免疫標的となっているという知見および根拠情報について、また、形質転換細胞における免疫標的としてのストレス蛋白質の役割について、また、保存されたストレス蛋白質決定基に対する免疫応答がリューマチ性関節炎ならびにアジュバント関節炎の自己免疫病態に重要な役目を果たしているかもしれないという事実の認識について、および免疫監視におけるストレス蛋白質の役目について、ならびに自己反応性T細胞が感染および細胞形質転換に対する最初の防御をもたらす免疫監視に関するモデルについて以下に説明する。
【0018】
ミコバクテリウムのストレス蛋白質は免疫応答の標的となる
ストレス蛋白質とミコバクテリウム感染に対する免疫応答との間におもしろい関係が見られている。ストレス蛋白質と感染と免疫の関係を理解するためには、ストレス蛋白質決定基と免疫応答機構に関してさらに詳細に説明する必要がある。
【0019】
ミコバクテリウム チュバクローシスとミコバクテリウム レプラの蛋白質が液性免疫応答と細胞性免疫応答に関与していることに鑑み、また、ミコバクテリウム細胞中でこれらの蛋白質が果たしている機能を解明するために、ミコバクテリウム チュバクローシス抗原とミコバクテリウム レプラ抗原のうちのいくつかをコードするDNAの配列を決定した。結果を実施例1で説明するが、これらのミコバクテリウム蛋白質抗原の多くのものは既知のストレス誘導蛋白質と顕著な配列類似性を示すことがわかる。調べたミコバクテリウム レプラの蛋白質抗原のうちの3種とミコバクテリウム チュバクローシスの蛋白質抗原のうちの2種は既知ストレス蛋白質と顕著な配列類似性を示すことがわかった。実施例1で説明する理由により、上記ミコバクテリウム レプラ抗原のうちの2種とミコバクテリウム チュバクローシス抗原のうちの2種はエシェリキア コリDnaK蛋白質およびGroEL蛋白質のホモログであると結論付けられる。
【0020】
マウスでは、ミコバクテリウム溶菌物による免疫化により、少なくとも6種のミコバクテリウム チュバクローシスの蛋白質抗原とほぼ同数のミコバクテリウム レプラの蛋白質抗原に対する抗体応答が惹起される。これらの蛋白質に特異的なモノクローナル抗体を用いて、ミコバクテリウム チュバクローシスとミコバクテリウム レプラのλgtllDNA発現ライブラリーからクローンが単離されている。これらのDNAクローンの配列から、ミコバクテリウムのhsp70(通称70kDa抗原)とhsp60(通称65kDa抗原、GroEL)は、ミコバクテリウム チュバクローシスとミコバクテリウム レプラの両者に対するネズミ抗体応答の主要標的となっていることが証明された。さらに2つのhsp、すなわち小型hspファミリーに属する18kDaのhspと12kDaのgroESホモログがミコバクテリウム レプラ抗原およびミコバクテリウム チュバクローシス抗原の中に見つかった。ヤングら(Young, D.B., et al. )、Proc. Natl. Acad. Sci., USA, 85:4267-4270 (1988);シンニックら(Shinnick, T.M., et al.)、Nuc. Acids Res., 17:1254 (1989) 。
【0021】
ミコバクテリウムのストレス蛋白質はネズミ抗体応答とT細胞応答の両者の免疫優性標的である。10施設から得られた結果をまとめた1つの研究で、24種類のネズミモノクローナル抗体の集団が6種のミコバクテリウム レプラの蛋白質を認識したが、これらの抗体のうちの7種はミコバクテリウム レプラhsp60中の6種の決定基に対するものである。エンゲルスら(Engers, H.D., et al.)、Infect. Immun., 48:603-605 (1985) ;メーラら(Mehra, V., et al. )、Proc. Natl. Acad. Sci., USA, 83:7013-7017 (1986)。同様の研究で、ミコバクテリウム チュバクローシスに対する33種のモノクローナル抗体のうちの3種がミコバクテリウム チュバクローシスのhsp60蛋白質を認識した。エンゲルスら(Engers, H.D., et al.)、Infect. Immun., 51:718-720 (1986) 。最後に、限界希釈分析を行なうと、ミコバクテリウム チュバクローシスで免疫したマウスのミコバクテリウム反応性CD4+Tリンパ球のうちの20%はこの抗原を認識することがわかる。カウフマンら(Kaufmann, S.H., et al.)、Eur. J. Immunol., 17:351-357 (1987) 。
【0022】
ミコバクテリウムのストレス蛋白質に対するヒトの免疫応答を厳密に定量分析した報告例は未だないが、ミコバクテリウムのストレス蛋白質はヒト抗体およびTリンパ球によって認識され、これらの蛋白質はヒト細胞性免疫応答の主要標的であることを示す証拠もある。エムリッチら(Emmrich, F., et al. )、J. Exp. Med., 163:1024-1029 (1985);ムスタファら(Mustafa, A.S., et al. )、Nature (London), 31963 -66 (1986) ;オフツングら(Oftung, F., et al.)、J. Immunol., 138:927-931 (1987) ;ラムら(Lamb, J.R., et al.)、EMBO J., 6:1245-1249 (1987) 。ミコバクテリウム感染を有する患者またはミコバクテリウムで免疫した志願者から採取したTリンパ球がクローン化され、ミコバクテリウムのストレス蛋白質を認識する能力を有するかどうか試験されている。これらの研究のいずれにおいても、ヒトT細胞クローンの一部が1つ以上のミコバクテリウムのストレス蛋白質を認識することが示された。
【0023】
ストレス蛋白質は病原体感染における免疫標的である
ストレス蛋白質がミコバクテリウム感染に対する免疫応答の重要な標的であるという知見および主要ストレス蛋白質がその他の生物においても保存され豊富に存在するという知見から、ストレス蛋白質は多くの病原体感染において免疫標的となっている蓋然性の高いことが示唆された。実際、このことは現在では明白な事実となっている。様々な感染性物体に由来する抗原がストレス蛋白質ファミリーに属するものとして同定されている。細菌感染において抗体によって認識される主要ストレス蛋白質抗原はhsp60である。ほとんどの細菌種が共有することが古くから知られている免疫優性蛋白質抗原の1つであるいわゆる「共通抗原」は、hsp60であることが判明している。シンニックら(Shinnick, T.M., et al.)、Infect. Immun., 56:446 (1988) ;トーレら(Thole, J.E.R., et al. )、Microbial Pathogenesis, 4:71-83 (1988)。ストレス蛋白質は、ほとんどの主要なヒト寄生虫感染における免疫標的としても同定されている。ビアンコら(Bianco, A.E., et al.)、Proc. Natl. Acad. Sci. USA, 83:8713 (1986) ;ネネら(Nene, V., et al.)、Mol. Biochem. Parasitol., 21:179 (1986) ;アルデシャーら(Ardeshir, F., et al.)、EMBO J., 6:493 (1987) ;ヘッドストロムら(Hedstrom, R., et al.)、J. Exp. Med., 165:1430 (1987) ;セルキルクら(Selkirk, M.E., et al. )、J. Cell Biochem., 12D:290 (1988);エングマンら(Engman, D.M., et al.)、J. Cell Ciochem., 12D:Supplement, 290 (1988);スミスら(Smith, D.F., et al. )、J. Cell Biochem., 12D:296 (1988)。hsp70に対する抗体は、マラリア、トリパノゾーマ症、リーシュマニア症、スキストソーマ症、およびフィラリア症の患者の血清中で見つかっている。hsp90はトリパノゾーマ症における抗体の標的でもあり、小型hspファミリーの1メンバーがスキストソミア症患者の一部で認められている。
【0024】
ストレス蛋白質と相同な蛋白質がウイルスでも見つかっている。最近、植物ウイルスの1種であるビート萎黄病クロステロウイルスのRNAゲノムによってコードされる蛋白質がhsp70と相同であることが示された。アギラノフスキーら(Agranovsky, A.A., et al.)、J. Mol. Biol., 217:603-610 (1991) 。また、イン・ビトロでの様々なウイルスによる感染の後で真核細胞中にストレス蛋白質誘導が起きる。コリンズとハイタワー(Collins, P.L., and Hightower, L.E.)、J. Virol., 44:703-707 (1982);ネビンス(Nevins, J.R.)、Cell, 29:913-939 (1982) ;ギャリーら(Garry, R.F. et al.)、Virology, 129:391-332 (1988);カンドジアンとターラー(Khandjian, E.W. and Turler, H.)、Mol. Cell Biol., 3:1-8 (1983) ;ラタングエら(LaThangue, N.B., et al. )、EMBO J., 3:267-277 (1984) ;ジンダルとヤング(Jindal, S. and Young, R.J.)、J. Viral, 66:5357-5362 (1992) 。これらの新規抗原を認識するCTLは、おそらくはかなりの量の成熟ウイルスが集合する前に感染細胞を死滅させることによって、また、リンホカインであるγインターフェロンを分泌することによって、ウイルスの拡散を制限しうる。ペストカ(Pestka, S.)、Methods Enzymol., Interferons, Part A., Vol. 79 Academic Press, New York, pp. 667 (1981)。この説を支持する証拠が出てきている。コガら(Koga et al. )(1989)は、一次ネズミマクロファージにCMVが感染すると、ミコバクテリウム チュバクローシスhsp60の直線状エピトープに特異的なMHC−I制限CD8+CTLに対する標的としての感受性を獲得することを示している。コガら(Koga et al. ) (1989) 。感染マクロファージ上でこれらのCTLによって認識されるエピトープは確定されていないが、自家hsp60エピトープとの交差反応が見られていると考えたい。実際、同グループは、相同的なhsp60がマクロファージ中に構成的に存在し、γインターフェロン刺激によってアップレギュレーションを受けることを示している。
【0025】
形質転換細胞における免疫標的としてのストレス蛋白質
ストレス蛋白質は少なくとも一部の形質転換細胞中で高レベルで産生されると思われる。ベンサウデとモランゲ(Bensaude, O. and Morange, M.)、EMBO J., 2:173-177 (1983) 。86kDaのネズミ腫瘍抗原が酵母およびショウジョウバエのhsp90ファミリーの代表的なものと相同であることがわかっている。ウルリッヒ(Ullrich, S.J. )、Proc. Natl. Acad. Sci., USA, 83:3121-3125 (1986)。マウスをこの精製蛋白質で免疫すると、培養腫瘍細胞を接種された実験動物のうちの95%で腫瘍成長阻害が起きた。上記防御を受けたマウスはすべて、熱ショックを受けたマウス胚細胞の溶解物に由来するネズミhsp90を沈殿させる能力のある抗hsp90血清抗体を高力価で保持していた。形質転換のストレスを受けた自家細胞を認識する能力を有するT細胞は発生期腫瘍細胞の除去に寄与しうるので、この場合も自己反応性リンパ球が何らかの役目を果たしていることが示唆される。
【0026】
ストレス蛋白質と自己免疫プロセス
リューマチ性関節炎は、自己免疫プロセスの関与が考えられる滑膜中の慢性増殖性および炎症性反応を特徴とする。ラットのアジュバント関節炎は多くの点でヒトのリューマチ性関節炎と類似しており、ヒトの疾患の実験動物モデルとして使用されている。ピアソン(Pearson, C.M. )、Arthritis Rheum., 7:80-86 (1964)。フロインドの完全アジュバントと混合した死滅ミコバクテリウム チュバクローシスを単回皮内注射すると、ラットにアジュバント関節炎を誘導することができる。Tリンパ球が関与する自己免疫プロセスが上記疾患の発生の原因と思われる。ホロシッツら(Holoshitz, J., et al. )、Science, 219:56-58 (1983) 。関節炎ラットのリンパ節から単離してミコバクテリウム チュバクローシスパルス化同系抗原提示細胞の刺激によってイン・ビトロで増殖させたT細胞系を照射ラットに移植すると、一過性にこの疾患を引き起こしうる。これらの実験では、汚染を起こすミコバクテリウム チュバクローシスの移植を排除するよう注意を払ったので、この結果から、この疾患の臨床的影響は、自己抗原がミコバクテリウム チュバクローシスと共有されている自己免疫反応によるものであることが強く示唆される。
【0027】
関節炎を引き起こすT細胞によって認識されるラット抗原およびミコバクテリウム チュバクローシス抗原が数年来探索されている。滑膜中に存在する複数の蛋白質が交差反応性ラット抗原であるとの説が提案されているが、後にこれらの蛋白質の精製方法の改良に伴い、否定された。バン・エデンら(van Eden, W., et al.)、Proc. Natl. Acad. Sci., USA, 82:5117-5120 (1985);ホロシッツら(Holoshitz, J. et al.)、Science, 219:56-58 (1983) 。関節炎を引き起こすT細胞によって認識されるミコバクテリウム チュバクローシス抗原が65kDaの蛋白質であることが最近示されたが[バン・エデンら(van Eden W., et al. )、Nature, 331:171 (1988)]、現在ではhsp60であることが示されている(実施例1参照)。65kDaの切断組替え蛋白質とペプチドを組み合わせたものを用いて、hsp60のアミノ酸数9のエピトープが増殖測定で関節炎を引き起こすT細胞クローンの最小刺激配列として同定されている。関節炎を引き起こすT細胞の一部はミコバクテリウムhsp60を認識することが明白であるので、ラットの自己抗原もhsp60である可能性が高い。
【0028】
上記アジュバント関節炎モデルで得られた結果を踏まえ、ヒトリューマチ性関節炎患者由来のTリンパ球もミコバクテリウム抗原を認識するかどうかが調べられている。これらの研究者らは、リューマチ性関節炎患者がミコバクテリウムチュバクローシス抗原を認識するT細胞を保持することだけでなく、これらのT細胞が多様な表現型を有することをも見いだした。滑膜滲出物と末梢血の両者に由来する未クローン化T細胞(主にCD4+)ではミコバクテリウム抽出物に対してかなりの増殖応答が見られているが、応答の程度は一般に滑膜滲出物における方が高い。アブラハムソンら(Abrahamson, T.G., et al.)、Scand. J. Immunol., 7:81-90 (1978);ホロシッツら(Holoshitz, J. et al.)、Lancet ii, 305-306 (1986) 。ホロシッツら(Holoshitz et al.)は、ミコバクテリウム チュバクローシス抗原に応答するヒトリューマチ様滑液( rheumatoid synovia) から単離した5つのT細胞クローンのうちの4つがγ/δT細胞受容体を有するCD4- CD8-細胞であることを見いだした。ホロシッツら(Holoshitz, J., et al. )、Nature, 339:226-229 (1989)。γ/δT細胞は免疫における役目が解明されていないので、この知見は興味深い。γ/δクローンのうちの1つについて、精製ミコバクテリウムhsp60に応答する能力があるかどうかを調べたところ、増殖測定で陽性判定となった。ストレス蛋白質は保存性があるので、これらのT細胞は自己反応性を示す可能性がある。ラム(Lamb)らは、滑膜滲出物由来のポリクローナルT細胞はミコバクテリウムhsp60とhsp70の両者を認識することを示した。ラムら(Lamb, J.R., et al.)、Intl. Immunol., 印刷中、(1989)。ミコバクテリウムストレス蛋白質を認識するT細胞集団は、エシェリキア コリのhsp60とhsp70、および最も興味深いことに熱ショックを与えたマクロファージから精製したヒトhsp70に対して応答することが示された。したがって、おそらくは細菌感染(必ずしもミコバクテリウムでなくてもよい)がきっかけとなって、保存ストレス蛋白質決定基に対する免疫応答が起き、これがリューマチ性関節炎ならびにアジュバント関節炎における自己免疫病態に重要な役目を果たしているのかもしれない。
【0029】
ストレス蛋白質と免疫監視
今では、様々に異なるタイプのT細胞が高度に保存されたストレス蛋白質決定基を認識することが示されている。細胞が、高度保存ストレス蛋白質のレベルを増大させることによってストレスに応答する能力、自己ストレス蛋白質決定基を認識する能力を有する健常個体において多様な表現型のT細胞が存在すること、およびストレス応答が病原性感染および細胞形質転換によって誘導されるという知見はいずれも、ストレスを受けた自家細胞ならびに細胞内病原体で感染された細胞を認識し、それらの除去を助けることによって、自己反応性T細胞が感染や形質転換に対する最初の防御をもたらすという免疫監視のモデルを示唆するものである。保存ストレス蛋白質決定基を認識するリンパ球のプールは、皮膚上および腸内で天然微生物叢ができる際に誘導され、細菌およびウイルス、ならびにその他の通常の生活中で遭遇するストレス刺激などの病原体による刺激を頻繁に受けることによって維持されているのかもしれない。このモデルは、免疫系がストレス蛋白質中の保存エピトープの存在を利用して抗原的に多様な病原体および細胞変化に対して迅速に応答し、新規抗原に対する免疫の形成を待たなくても初期防御を行い得るという点で、魅力的である。
【0030】
保存ストレス蛋白質決定基を認識するリンパ球は、正常細胞とストレス細胞を識別する能力を有するものでなければならない。多くのストレス蛋白質は、正常細胞中ではストレス細胞中より低レベルではあるものの構成的に発現されるので、自己反応性の可能性が常に存在する。正常細胞は、表面上でストレス蛋白質決定基の刺激レベルより以下のレベルでしか発現しないので破壊を免れるのかもしれない。また、ストレス蛋白質はストレス負荷時だけプロセシングされ、提示される可能性があり、多くのストレス蛋白質の細胞内位置がストレス負荷の間に変化することと関係があるかもしれない。最後に、免疫調節ネットワークは正常条件下での自己反応性T細胞の活性化を妨げるのかもしれない。このシステムに必要な調節的抑制機構が、おそらく細菌またはウイルス感染によって引き起こされるストレス負荷の際に壊れることがあり、その結果、自己免疫疾患が発症する。リューマチ性関節炎はこのような疾患であるかもしれない。
【0031】
免疫応答の調節
ストレス蛋白質と感染に対する宿主の免疫応答との関係はまだ正確にはとらえられていない。細胞は各種のストレスに曝されると、ある特定のストレス蛋白質群の合成を選択的に増加させることによって応答する。DnaKおよびGroELの産物を含むある種のストレス蛋白質は、正常な増殖条件下における細胞の主要な構成成分であり、ストレスに曝される間に誘導されてさらに高レベルになる。リンドクイスト(Lindquist, S.), Annu. Rev. Biochem., 55: 1151-1191(1986); ネイダートおよびヴァンボゲレン(Neidhardt, F.C., and R.A. VanBogelen), In Escherichia coli and Salmonella Typhimurium, Cellular and Molecular Biology,[ネイダート、イングラム、ロウ、マガサニク、シャエヒター、ウムバーガー編 (eds., Neidhardt, F.C., Ingraham, J. L. Low, K.B. Magasanik, B. Schaechter, M. and Umbarger, H.E.)]Am. Soc. Microbiol., Washington, D.C., pp.1134-1345(1987) 。現在、ストレス関連蛋白質が、免疫応答の標的であることが示されている。ヤング(Young, D.) ら、Proc. Natl. Acad. Sci. USA, 85:4267-4270(1988)。本件の場合のように、このように豊富に存在するタンパク質の中に免疫優性抗原が見つかるであろうと期待するのは妥当なことである。
【0032】
本発明の方法により、ストレス蛋白質に対する個体の応答を変えることにより、ヒト、他の哺乳動物または脊椎動物などの個体における免疫応答を調節することが可能である。特に、病原体( 例えば細菌、ウイルス、寄生虫または他の生物または毒素やトキソイドなどの物質)や癌細胞に対する個体の応答の増強または誘導、あるいは個体の免疫状態( たとえば免疫が低下している個体またはHIV感染個体において)のアップレギュレーション(upregulation) の増強または誘導が可能であり、またある種の関節炎において起こるような個体の自己免疫応答の軽減などが可能となる。さらに、本発明の方法によるストレス蛋白質の投与により、その後の病原体感染から防御される。本明細書で示すように、ストレス蛋白質は、高度に保存されたアミノ酸配列の領域を含んでおり、細菌感染や他の感染において主要な免疫優性抗原であることが示されている。従って、各種の病原体に対する強力な免疫応答を誘導するために、ストレス蛋白質が使用できるだろうと期待することは妥当なことである。病原体に対する免疫応答を誘導または増強するために投与されるストレス蛋白質は、それに対して免疫応答を誘発しようとする病原体のストレス蛋白質またはその他のストレス蛋白質であっても良く、その蛋白質の一部で望む免疫応答を刺激するのに十分な大きさのものであっても良く、あるいは投与される個体中で望まれる応答( ストレス蛋白質に対して起こるものと実質的に同様の免疫応答) を誘発することのできるストレス蛋白質のアミノ酸配列と充分に相同的なアミノ酸配列を有しているという点でストレス蛋白質と機能的に同等な蛋白質またはアミノ酸配列であっても良い。「ストレス蛋白質のアミノ酸配列と充分に相同的なアミノ酸配列を有している」という言葉は、一般的にその蛋白質またはポリペプチドのアミノ酸配列の少なくとも40%がストレス蛋白質のそれと一致していることを意味する。機能的同等物のアミノ酸配列は、ストレス蛋白質のアミノ酸配列と約50%の一致を示す場合がある。
【0033】
癌細胞に対する免疫療法、個体の全般的免疫状態のアップレギュレーションおよび個人または動物における免疫耐性の誘導のために、病原体感染に対する個体(例えば、ヒト、他の哺乳動物または脊椎動物)の免疫応答の増強または誘導の目的で、いずれのストレス蛋白質またはこれらの機能的同等物も本発明で使用することができる。
【0034】
本発明のストレス蛋白質は、個体(例えば、ヒト、他の哺乳動物または脊椎動物)の免疫応答を調節するために各種の方法で投与できる。一つの態様においては、ストレス蛋白質またはストレス蛋白質の一部であって望む免疫応答を刺激するに十分な大きさのものを含むワクチンとして、ストレス蛋白質は投与される。この態様では、ワクチンは、例えば細菌ストレス蛋白質のように、それに対する免疫応答が望まれる特定の病原体の特定のストレス蛋白質を含む「特定のワクチン」であっても良い。この場合、病原体のストレス蛋白質は宿主のそれとは異なっているので、病原体のストレス蛋白質に特異的な免疫予防的応答を誘導することが可能である。ブランダー(Blander, S.J.) ら、J. Clin. Invest., 91:717-723(1993)。これは、病原体のストレス蛋白質または他の蛋白質であって病原体のストレス蛋白質に対する免疫応答を刺激するに充分なほどストレス蛋白質の配列と類似したアミノ酸配列をもつものの全部または一部( 例えば、免疫応答に対して、望む刺激作用を示すのに充分なアミノ酸配列) を含むワクチンを投与することによって行うことができる。また、ストレス蛋白質を含まない病原体の場合( 例えば、ある種のウイルス) または新生物形成(neoplasia) の状態に有る場合には、ストレス蛋白質または各種のT細胞により認識されることが示されているような高度に保存されたストレス蛋白質決定基を、免疫応答のアップレギュレーションを達成するために一種の「一般的(general)」ワクチンとして、投与することができる。このようなワクチンの投与により、本来備わっている免疫監視系が増強される。例えば、細菌ストレス蛋白質または他のストレス蛋白質を含むワクチンを投与して免疫系を強化し、これによりストレス蛋白質を含まない病原体に対する免疫応答を起こすことができる。また、このタイプの「一般的」ワクチンは、癌に対する個体の免疫応答を増強したり、例えば免疫が低下した個体( 例えば、化学療法を受けている個体またはHIV感染者)などにおいて、個体の免疫状態を全般的にアップレギュレーションするために使用できる。この態様のいずれの場合も(特定のワクチンでも一般的ワクチンでも)、ストレス蛋白質配列に対する免疫応答は増大し、病原体、病状または免疫障害は軽減(減少、防止または消失)するであろう。
【0035】
もう一つの態様では、処置される個体に局所熱あるいはストレス反応を誘発する他の物質や状態の変化を適用することによって、免疫監視系を増強するためにストレス蛋白質を利用することができる。(これは、ストレス蛋白質含有病原体に対する免疫応答を増強するために投与される前述の特定のワクチンと共に使用することもでき、また自己のストレス蛋白質を持たない病原体、癌に対する免疫応答を増強するために、また個体の免疫状態をアップレギュレートするために投与される前述の一般的ワクチンと共に使用することもできる。)例えば、多くのタイプの癌細胞において、ストレス蛋白質が高いレベルで産生されることが知られている。従って、ここに記述する本発明の態様を用いる免疫監視系の強化は、癌細胞の破壊の促進および/または癌細胞の増殖の進行と定着の防止のために使用することができる。
【0036】
本発明の方法は、個体の個体自体の細胞に対する応答(例えば、自己免疫疾患におけるように)を修飾または調節するためにも使用することができる。本発明は、少なくとも2つの方法によって免疫療法学的に使用される。第一は、熱ショック蛋白質(例えばhsp70およびhsp60)のようなストレス蛋白質は、自己免疫疾患に関与することが知られている。従って、個体の免疫応答を減弱することが可能であり、その結果個体はこの蛋白質に対してより高い耐性を持つようになる。第二は、ある環境下において、ある種の自己免疫疾患における免疫応答の一成分がストレス蛋白質であり得るということが知られていることから、通常はストレス蛋白質と相互作用する免疫細胞の能力を選択的に抑制または妨害することが可能である。このことは、例えば、特異的T細胞受容体に結合してこの細胞自体または細胞機能を無くすモノクローナル抗体を投与することによって実施することができる。また、免疫細胞を減弱させるのではなく、ストレス応答を起こす細胞の能力を低下させ得る薬物を投与することにより、細胞内におけるストレス応答を減弱することができる。例えば、熱ショック遺伝子を刺激するために必要とされる熱ショック転写因子を標的とするかまたはこれに特異的な薬物を投与することができる。転写因子の機能は無くなるかまたは低下し、その結果、ストレス応答を起こす細胞の能力が低下する。
【0037】
本発明の別の態様においては、ストレス蛋白質は、2つの成分(two moieties)から成るワクチンとして投与される。すなわち1種のストレス蛋白質と、それに対する免疫応答が望まれる他の物質(以後抗原と呼ぶ、例えば蛋白質、ペプチド、炭水化物、脂質、有機分子)である。この2つの成分は、単一の単位となるように結合させる。結合は、化学的な方法( 例えば、ストレス蛋白質と第2 成分との共有結合による) または実施例2に示すように、組換え技術によって達成することができる。結合物を作るために組換え技術が用いられる場合には、一つの分子内にストレス蛋白質と抗原を含む組換え融合蛋白質が得られる。これにより、ワクチン生産工程において、単一の組換え分子を生産して精製することができる。この態様では、ストレス蛋白質が、アジュバンドフリー担体として働くことが認められており、これはストレス蛋白質の融合相手の物質に対する、強力な液性およびT細胞性応答を刺激する。投与された個体において、その物質に対する免疫反応が望まれる物質または、このような物質の一部分で免疫応答の惹起に充分なものであれば、どのようなものでもストレス蛋白質と結合させることがきる。このような物質には、蛋白質、ペプチド、オリゴ糖、脂質、炭水化物、有機分子またはこれらの組み合わせが含まれるが、これらに限定されない。バリオス(Barrios, C) ら、Eur. J. Immun. 22:1365-1372(1992) 。このようなワクチンの有効性を示す最近のデータは、ミコバクテリウムhsp70 蛋白質は、他の蛋白質と結合するとアジュバンドフリー担体として働くことを示している。ルソー(Lussow, A.R.)ら、Eur. J. Immun., 21:2297-2302(1991)。アジュバントを用いることなく投与した、ミコバクテリアhsp70 と結合したいくつかのペプチドに対する液性免疫応答は、フロインドの完全アジュバントとともに投与した同じペプチドに対する抗体応答と非常によく似ていた。ルソー(Lussow, A.R.)ら、Eur. J. Immun., 21:2297-2302(1991)。バリオス(Barrios, C.) ら、Eur. J. Immun. 22: 1365-1372(1992)。本発明は、ストレス蛋白質と抗原が融合した融合蛋白質のような、他の成分と結合したストレス蛋白質を含む組成物にも関連する。
【0038】
実施例3で示すように、HIV p24 gag遺伝子はストレス蛋白質融合ベクターpKS70にサブクローニングされ(図6)、T7 RNA ポリメラーゼプロモーター、ポリリンカーおよびミコバクテリウムチュバクロシス hsp70遺伝子を含んでいる。得られたベクターpKS72(図6)を、イー・コリ(E.coli)においてp24−hsp70融合蛋白を生産するために使用した。アジュバントフリーの精製p24−hsp70融合蛋白質をBalb/cマウスに注射したところ、抗p24抗体の力価は、p24−hsp70融合蛋白質を注射したマウスにおいてp24単独あるいはhsp70単独を注射したマウスよりも、2.7倍高かった。p24とアジュバントであるミョウバンを注射したマウスも、p24に対する抗体応答を示した。最後に、p24−hsp70融合蛋白質を注射したマウスおよびp24単独を注射したマウスにおいて、明らかなT細胞応答がみられた。
【0039】
本発明の別の態様においては、ストレス蛋白質またはそのストレス蛋白質の一部であって免疫応答を刺激するに充分な大きさのものまたは同等物を、アジュバントとして、免疫応答を惹起したい別の物質(抗原と呼ぶ)と共に投与する。ストレス蛋白質は、アジュバントとして、投与した個体においてその物質に対する免疫応答を誘導することが望まれる物質または、このような物質の一部分であって免疫応答を誘導するのに充分なものであれば、どのようなものとでも使用できる。この様な物質には、蛋白質、ペプチド、オリゴ糖、脂質、炭水化物、有機分子またはこれらの組み合わせが含まれる。
【0040】
ワクチンの中に含まれる、ストレス蛋白質、ストレス蛋白質の部分、ストレス蛋白質の機能的同等物およびストレス蛋白質が融合または結合する物質は、既知の技術によって製造または得ることができる。例えば、ストレス蛋白質またはストレス蛋白質の部分は、ストレス蛋白質が発現している自然界の資源から得る(分離)することができ、また望むストレス蛋白質またはストレス蛋白質の部分をコードする遺伝子をクローニングし発現させることによって産生することができ、または化学的または機械的に合成することができる。
【0041】
ワクチンまたはアジュバントとして、ストレス蛋白質または、蛋白質またはオリゴ糖などのストレス蛋白質に結合した物質に対する特異的な細胞性免疫または液性免疫を起こすための、本発明のストレス蛋白質の有効用量は、ストレス蛋白質を投与する個体により決まり、注射1回につき0.1から1000μg hspの範囲である。ルソー(Lussow, A.R.)ら、Eur. J. Immun., 21:2297-2302(1991)。バリオス(Barrios, C.) ら、Eur. J. Immun. 22: 1365-1372(1992)。各個体に対するストレス蛋白質の適切な用量は、例えば、投与する特定のストレス蛋白質、ストレス蛋白質を投与する個体のタイプ、個体の年令とサイズ、治療または予防しようとする状態、その状態の重症度などを考慮して決定する。当該分野の熟練者は、単なるルーチンの実験により個体に投与すべき適当用量を決定することができるであろう。
【0042】
本発明のワクチンの有効量を投与するには各種の送達システムを使用することができる。導入方法には例えば、皮内、筋肉内、腹腔内、静脈内、皮下、鼻内、硬膜外、および経口経路が含まれる。他の便利な投与経路(ボーラス投与による注入、時間をかけた頻回注射による注入、上皮または口腔粘膜、直腸および小腸粘膜などの上皮層または粘膜皮膚層を介する吸収)または時間をかけで複数回注射する方法も使用できる。
【0043】
本発明は以下の実施例によりさらに説明されるが、これらに限定されるものではない。
【実施例】
【0044】
実施例1
ミコバクテリウムストレス蛋白質抗原の分離と特徴分析(characterization)
組換えDNAクローン ネズミモノクローナル抗体を用いるエム.チュバクローシスおよびエム.レプラのλgtllゲノムDNAクローンの分離と特徴分析が記述されている。フッソン(Husson, R.N.)およびヤング(Young, R.A.) 、Proc. Natl. Acad. Sci., USA 84: 1679-1683(1987);ヤング(Young, R.A.) ら、Nature(London)316:450-452(1985) 。これらのクローンからDNAを分離し、標準的な方法によって処理した。デービス(Davis, R.W.)、Advanced Bacterial Genetics: A Manual for Genetic Engineering (Cold Spring Harbor Lab., Cold Spring Harbor, NY) 、(1980)。
【0045】
DNA配列分析 ベクターM13mp18またはM13mp19(New England Biolabs)へ、供給者の指示に従ってDNAをサブクローンニングした。ジデオキシヌクレオチド鎖- 終止反応(termination reactions) および生成した配列のゲル電気泳動が記載された。デービス(Davis, R.W.)、Advanced Bacterial Genetics: A Manual for Genetic Engineering (Cold Spring Harbor Lab., Cold Spring Harbor, NY) ,(1980)。DNAの両方の鎖についてDNAの配列を決定した。UWGCGを用いた配列のコンピュータ分析はデヴェロー(Devereux, J.) ら、Nucleic Acids Res., 12: 387-395(1984) が記載するように実施した。
【0046】
イミュノブロット分析 エシャリキア・コリのTG1株を、下記のプラスミドを用いて標準的な方法で形質転換し(マニアティス(Maniatis, T.) ら、Molecular Cloning, A Laboratory Manual (Cold Spring Harbor Lab., Cold Spring Harbor, NY)(1982)、アンピシリン耐性により選択した。イー.コリGroEL遺伝子を含むpBR325由来のプラスミドであるpND5(ヤンキンス(Jenkins, A.J.) ら、Mol. Gen. Genet., 202: 446-454(1986)); pUC8( ビク(Vic, J.) ら, Gene, 19:259-268 (1982) ); λgtllクローンY3178のための挿入DNAを持つ、EcoRI部位で連結されたpUC8(エム.レプラ65−kDa抗原、ヤング(Young, R.A.)ら、Nature (London)316:450-452(1985)) 。
【0047】
ルリア−バータニ(LB)培地において一晩培養したイー・コリ株培養を遠心分離にかけ等張リン酸緩衝化食塩水に、600nmで吸光度が2になる細胞密度で再懸濁した。2%(wt/vol)NaDodSO4 を含む、同容量のサンプル緩衝液を加え、沸騰した湯浴上で2分間加熱したあと、12%(wt/vol)ポリアクリルアミドゲル上において、NaDodSo4の存在下で、サンプルを電気泳動にかけた。電気泳動により蛋白質をニトロセルロース膜に移してブロットを調製し、ペルオキシダーゼ結合第二抗体を用いて、モノクローナル抗体の結合を記述されるように試験した。ヤング(Young, D.B.) ら、Infect. Immun., 55: 1421-1425(1987) 。
【0048】
エム.チュバクローシス蛋白質およびエム.レプラ蛋白質それぞれ6種が、ミコバクテリウム病原体に対する免疫応答に関与している(表1)。これらのミコバクテリウム抗原のいくつかについて正常細胞機能の手掛かりを得る為に、λgtllライブラリーをプローブするためのモノクローナル抗体(フッソン(Husson, R.N.) およびヤング(Young, R.A.) , Proc. Natl. Acad. Sci., USA, 84: 1679-1683(1987);ヤング(Young, R.A.) ら、Nature, (London)316:450-452(1985))を用いて単離したこれらの蛋白質をコードするDNAクローンを配列分析にかけた。解明された配列はGenBank配列データベースに提出してある。
【0049】
ミコバクテリウム71−kDa抗原 エム.チュバクローシスの71−kDa抗原は、感染時にヒトT細胞により認識される(表1)。
【0050】
【表1】

【0051】
エム.チュバクローシスの71−kDa抗原についてのアミノ酸配列情報を得る為に、λgtllクローンY3271の挿入DNA(フッソン(Husson, R.N.)ら、Proc. Natl. Acad. Sci, USA, 84: 1679-1683(1987))の配列分析を行った。このクローンは、イー・コリのdnaK遺伝子産物の対応断片と40%一致するアミノ酸配列を含む71−kDa抗原のカルボキシル末端の3分の1を含むベータ−ガラクトシダーゼ融合蛋白質を産生する。(バッドウェル(Bardwell J.C.)ら、Proc. Natl. Sci. USA, 81:848-852(1984))(図1)。図1Aは、ミコバクテリリウムとイー・コリの70−kDaポリペプチドの間の配列類似の度合いを示す。ミコバクテリウム71−kDa遺伝子から見て、転写方向の下流にある配列は、イー・コリdnaJ遺伝子産物と相同性を有する356アミノ酸からなる蛋白質を発現すると予測され(未発表データ)、イー・コリdnaK−dnaJオペロン構造が、エム.チュバクローシスに保存されていることを示し、ミコバクテリウム71−kDa抗原がイー・コリdnaK遺伝子産物のホモログであるとする結論と一致する。dnaK遺伝子の産物は、原核動物および真核動物において高度に保存されている70−kDa熱ショック蛋白質ファミリーのメンバーである(バードウェル(Bardwell J.C.)ら、Proc. Natl. Acad. Sci. USA, 81: 848-852 (1984); リンドクウイスト(Lindquist, S.), Annu. Rev. Biochem., 55: 1151-1191(1986) 。
【0052】
エム.レプラの70−kDa抗原は、エム.チュバクローシスの70−kDa抗原に対するモノクローナル抗体と交差反応する。エム.チュバクローシスとエム.レプラ( これらの抗原は) は共に、ストレス蛋白質の70−kDa熱ショック蛋白質ファミリーのメンバーである。
【0053】
ミコバクテリウム65−kDa抗原
ミコバクテリウムチュバクローシスとエム.レプラのの65−kDa抗原は、ミコバクテリウム感染に対するヒトT−細胞の応答に関与する(表1)。これらの蛋白質をコードする遺伝子が単離(フッソン(Husson, R.N.) およびヤング(Young, R.A.), Proc. Natl. Acad. Sci., USA. 84: 1679-1683(1987); ヤング(Young, R.A.) ら、Nature, (London)316: 450-452(1985)) および配列分析( シンニック(Shinnick, T.M., J. Bacteriol., 169: 1080-1088(1987); メーラム (Mehram, V.) ら、Proc. Natl. Acad. Sci., USA, 83: 7013-7017(1986)) され、エム.チュバクローシス(配列番号:4)とエム.レプラ(配列番号:3)の65−kDa抗原のアミノ酸配列が95%一致していることが明らかになった。これらの蛋白質の配列は、GenBankデータベースにある蛋白質と有意な配列類似性は示さなかった。
【0054】
これらの蛋白質の同定は、ミコバクテリウム65−kDa抗原に対する一部のモノクローナル抗体が、60kDaのイー・コリ蛋白質と交差反応をするという観察に基づいている。プラスミドpND5により形質転換されたイー・コリ細胞(サンガー(Sanger, F.) ら、Proc. Natl. Acad. Sci., USA 74: 5463-5467 (1977)) は、イー・コリgroE遺伝子を含んでおり、大量の60−kDa蛋白質を蓄積することがことが示されている。ミコバクテリウム65−kDa蛋白質の配列を、イー・コリgroElについて決定された蛋白配列と比較することにより(ウールフォード、ティリー、ゲオグポーラスおよびアール.エイチ(C. Woolford, K.Tilly, C. Georgopoulous, and R.H.、未発表データ) 、図1Bに示すような配列類似性の程度が明らかにされた。
【0055】
65−kDa GroEL蛋白質は、イー・コリの主要なストレス蛋白質である。リンドクイスト(Lindquist, S.), Annual. Rev. Biochem., 55:1151-1191(1986); Nature, 333: 330-334 (1988)。ミコバクテリウム65−kDa蛋白質がストレスに応答して蓄積することを示す証拠も幾つかある。すなわち、亜鉛欠乏培地で培養されたミコバクテリウムボヴィスBCG(bacillus Calmette-Guerin) 培養菌は、この蛋白質に非常に富んでいる( デ ブルイン(De Bruyn, J.)ら、Infect. Immun. 55: 245-252(1987)) 。このことにより、エム.チュバクローシスおよびエム.レプラの65−kDa蛋白はイー・コリGroEL蛋白質のホモログであることが推定される。
【0056】
その他のミコバクテリウムの抗原
エム.チュバクローシス19−kDa抗原およびエム.レプラ18−kDa抗原に応答するTリンパ球が、それぞれ結核およびらい病に罹患したヒトにおいて観察されている(表1)。これらの抗原をコードするDNAの配列が、λgtllクローンのY3148(フッソンとヤング(Husson, R.N. and Young, R.A.), Proc. Natl. Acad. Sci., USA 84; 1679-1683 (1987)) およびY3179(ヤング(Young, R.A.)ら、Nature, (London)316:450-452(1985))からそれぞれ配列が決定された。DNAから予測されたエム.チュバクローシスの19−kDa蛋白質の配列は、GenBankデータベースの蛋白質と有意な配列の類似性を示さなかった。
【0057】
しかし、エム.レプラ18−kDa蛋白質の配列は、植物熱ショック蛋白質の主要クラスの代表蛋白質である大豆17−kDa熱ショック蛋白質と類似していた(シュオフルとヴァン ボゲレン(Schoffl, F. and Van Bogelen, R.A.) 、In:Escherichia coli and Salmonella typhimurium, Cellular and Molecular Biology, Am. Soc. Microbiol., Washington, D.C.(1987) 。
【0058】
実施例2
アジュバントフリー担体として免疫化に使用するためのストレス蛋白質融合ワクチンの構築
組換え融合ベクター
イー・コリにおいて使用するための一連のストレス蛋白質融合ベクターを構築し、図5に示した。これらのベクターは、エム.ボビスBCGのhsp70遺伝子またはエム.ボビスBCGのhsp60遺伝子に融合したT7RNAポリメラーゼプロモーターを含んでいる。このベクターは、複数のクローニング部位を持つポリリンカーも含んでおり、目的の遺伝子を組み入れることを可能にし、そのためその遺伝子によりコードされる抗原がストレス蛋白質との融合蛋白質として発現される。これらのベクターのサブセットには、融合蛋白質の精製を容易にするために、C−末端6−ヒスチジン「標識」のコード配列を持つ外来遺伝子を組み込むことが可能である。これまでに、HIVgagおよびHIVpol蛋白質と融合したhsp70蛋白質を産生する組換えクローンが得られている。
【0059】
ストレス蛋白質融合蛋白質の精製 組換え融合蛋白質を精製するために、2つの方式が開発されている。T7システムは通常、封入体を形成するほどの大量の蛋白質を産生し、遠心分離による精製が可能となる。hsp70−HIV gag 融合蛋白は、T7システムにおいてイー・コリにより産生される総蛋白質の約20%をしめるといる予備結果が得られている。必要ならば、6−ヒスチジン「標識」により他の融合蛋白質を精製することができる。
【0060】
実施例3
インビボにおけるHSP70のアジュバントフリー担体の効果
T7RNAポリメラーゼプロモーター、ポリリンカー、およびミコバクテリウム・チュバクローシスhsp70遺伝子を含む、ストレス蛋白質融合ベクターpKS70(図6)を構築した。NdeIおよびBamHI部位を利用して、HIVp24gag遺伝子をpKS70にサブクローニングし、得られたpKS72ベクター(図6)を、イー・コリにおいてp24−hsp70融合蛋白質を生産するために使用した。この融合蛋白質を封入体として精製し、さらにATP−アガロースクロマトグラフィーおよびMonoQイオン交換クロマトグラフィーを使用して精製した。
【0061】
p24−hsp70蛋白質をリン酸緩衝化食塩水(PBS)に溶かし、アジュバント無しに、Balb/cマウスに腹腔内注射した。対照として、p24蛋白質のみまたはhsp70蛋白質のみをPBSに溶かしたものを、別のマウス群に注射した。3週間後、マウスにブースターを行い、このブースターの3週間後にマウスを放血した。抗p24抗体価をELISAにより測定した。25pmolのp24−hsp70を注射したマウスの抗体価は、p24またはhsp70のみを注射したマウスの2.7倍の高いレベルであった(図7)。マウスにp24とアジュバントのミョウバン(alum)を注射した実験の結果も、p24に対する抗体応答があったことを示した。さらに、p24−hsp70融合蛋白質を注射したマウスおよびp24のみを注射したマウスは、明らかなT細胞応答を示した。
【0062】
配列表
(1)一般情報:
(i)出願人: ホワイトヘッド インスティチュート フォー
バイオメディカル リサーチ 及び
メディカル リサーチ カウンシル
(ii) 発明の名称: ストレス蛋白質とその使用
(iii)配列の数: 4
(iv) 連絡先住所:
(A) 宛名: ハミルトン, ブルック, スミス アンド
レイノルズ, ピー. シー.
(B) ストリート: ツー ミリティア ドライブ
(C) 市: レキシントン
(D) 州: マサチューセッツ
(E) 国: アメリカ合衆国
(F) 郵便番号: 02173
(v) コンピュータ可読フォーム:
(A) 媒体タイプ: フロッピーディスク(商品名)
(B) コンピュータ: IBM PC 互換機
(C) オペレーティングシステム: PC−DOS/MS−DOS
(D) ソフトウェア: パテントイン リリース
#1.0,バージョン #1.25
(vi) 現出願データ:
(A) 出願番号:
(B) 出願日:
(C) 分類:
(vii) 先行出願データ:
(A) 出願番号: US 08/073,381
(B) 出願日: 1993年6月4日
(viii) 代理人情報:
(A) 氏名: グラナハン, パトリシア
(B) 登録番号: 32,227
(C) 参照/ ファイル番号: WHI 88−08AFA2
(ix) テレコミュニケーション情報:
(A) 電話番号: 617(861)6240
【0063】
(2)配列番号:1の情報:
(i) 配列の特徴:
(A) 配列の長さ: 575アミノ酸
(B) 配列の型: アミノ酸
(D) トポロジー: 直鎖状
(ii) 分子の種類: 蛋白質
(xi) 配列: 配列番号:1
【0064】
【化1】

【0065】
【化2】

【0066】
【化3】

【0067】
【化4】

【0068】
(2)配列番号:2の情報:
(i) 配列の特徴:
(A) 配列の長さ: 575アミノ酸
(B) 配列の型: アミノ酸
(D) トポロジー: 直鎖状
(ii) 分子の種類: 蛋白質
(xi) 配列: 配列番号:2
【0069】
【化5】

【0070】
【化6】

【0071】
【化7】

【0072】
【化8】

【0073】
(2)配列番号:3の情報:
(i) 配列の特徴:
(A) 配列の長さ: 573アミノ酸
(B) 配列の型: アミノ酸
(D) トポロジー: 直鎖状
(ii) 分子の種類: 蛋白質
(xi) 配列: 配列番号:3
【0074】
【化9】

【0075】
【化10】

【0076】
【化11】

【0077】
【化12】

【0078】
(2)配列番号:4の情報:
(i) 配列の特徴:
(A) 配列の長さ: 573アミノ酸
(B) 配列の型: アミノ酸
(D) トポロジー: 直鎖状
(ii) 分子の種類: 蛋白質
(xi) 配列: 配列番号:4
【0079】
【化13】

【0080】
【化14】

【0081】
【化15】

【0082】
【化16】

【0083】
均等物
当業者であれば、単なる日常的実験手法により、本明細書に記載された発明の具体的態様に対する多くの均等物を認識し、あるいは確認することができるであろう。そのような均等物は下記クレームの範疇に含まれるものである。
【図面の簡単な説明】
【0084】
【図1A】図1Aは、ミコバクテリウム抗原と既知のストレス蛋白質との間の相同性を示すグラフである。また図1Aは、エム.チュバクローシス71−kDa抗原の一部(残基1−204;TB71−kDa)とイー・コリDnaK蛋白質の一部(残基430−639)との間の配列類似性を示している。
【図1B】図1Bは、ミコバクテリウム抗原と既知のストレス蛋白質との間の相同性を示すグラフである。また図1Bは、エム.チュバクローシス65−kDa抗原の一部(残基1−540;TB 65 kDa)と、イー・コリGroEL蛋白質の一部(残基1−547)の間の配列類似性を示している。
【図2】図2は、ヒトP1蛋白質(573残基)(配列番号:1)とgroEL蛋白質(547残基)のアミノ酸配列(配列番号:2)の比較である。
【図3】図3は、groEL蛋白質のホモログであるヒトP1蛋白質(573残基)(配列番号:1)と65kDaエム.レプラ蛋白質(540残基)のアミノ酸配列(配列番号:3)の比較である。
【図4】図4は、groEL蛋白質のホモログであるヒトP1蛋白質(573残基)(配列番号:1)と65kDaエム.チュバクローシス蛋白質(540残基)のアミノ酸配列(配列番号:4)の比較である。
【図5】図5は、目的遺伝子の組み込みを可能にする複数のクローニング部位を有するポリリンカーを含む、選択されたストレス蛋白質融合ベクターの概略図である。
【図6】図6は、T7RNAポリメラーゼプロモーター、ポリリンカーおよびミコバクテリウムチュバクローシスhsp70遺伝子を含むストレス蛋白質融合ベクターpKS70およびpKS70ベクターにサブクローニングされたHIVp24gag遺伝子を含むストレス蛋白質融合ベクターpKS72の概略図である。
【図7】図7は、p24−hsp70融合蛋白、p24単独およびhsp70単独の注射を受けたマウスにおける抗−p24抗体力価を示すグラフである。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
(a)熱ショックタンパク質(hsp)、(b)前記hspと少なくとも40%同一であるタンパク質、又は(c)前記hspもしくは前記タンパク質の一部と、(d)抗原とを融合させる、体液性応答および/またはT細胞応答を刺激することができる融合タンパク質の製造方法。


【図1A】
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【図1B】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【公開番号】特開2006−42823(P2006−42823A)
【公開日】平成18年2月16日(2006.2.16)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2005−258485(P2005−258485)
【出願日】平成17年9月6日(2005.9.6)
【分割の表示】特願平7−502024の分割
【原出願日】平成6年6月6日(1994.6.6)
【出願人】(505291480)ホワイトヘッド インスティチュート フォー バイオメディカル リサーチ (5)
【Fターム(参考)】