説明

ストロボ装置

【課題】より自然な照明を可能とするストロボ装置を提供することを課題とする。
【解決手段】本発明のストロボ装置1は、反射体8との直線距離が最短となる第1直線の反射体上の点を第一点、被写体との直線距離が最短となる第2直線の被写体上の点を第二点、第一点と第二点を結んだ第3直線が第2直線となす鋭角を第一鋭角とした場合、反射体8で反射されて被写体に入射する発光部2からの光と第2直線とのなす入射角度が第一鋭角よりも小さい所定の角度範囲となるように、発光部2の反射体8に対する回動角度を決定する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、写真撮影に用いられるストロボ装置であって、特に光を天井等に反射させて間接照明を行うバウンス撮影用のストロボ装置である。
【背景技術】
【0002】
従来から、より自然な画像を得る為に、ストロボ装置の発光部から光(閃光)を天井や壁に照射して拡散させ、被写体を間接的に照明して撮影するバウンス撮影が行われている。
【0003】
バウンス撮影は、ストロボ装置の発光部を被写体とは正対させず、天井や壁などの任意の方向に向けて行われるが、発光部を適切な角度に向けていないと被写体を照明するための光量が得られなくなるため、適切な角度を演算可能な装置が提案されている。(特許文献1)
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開平1−304439号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
特許文献1に記載される装置は、ストロボ装置と被写体との距離、ストロボ装置と反射体(例えば天井)との距離を用い、照射光をバウンスさせずに直接照射した場合に照射範囲の中心を通過する光軸が、バウンスさせた場合であっても被写体を通過するように回動(バウンス)角度を演算しており、照射光が反射体に反射される場所(反射点)が主にストロボ装置と被写体との間に位置している。
【0006】
しかし、照射光の反射点と被写体との距離が接近した状態となった場合、被写体はほぼ真上方向から照明される(反射体によって拡散された光の入射角度が大きくなる)ため、例えば人物が被写体の場合などに目元や鼻などに不自然な影ができやすくなり、また、反射点までの距離が短い場合には照射光が強すぎて不自然に照明された(被写体と背景とに明度差のある)画像となる恐れがある。
【0007】
そこで、本発明は、上記問題に鑑みてなされたもので、より自然な照明を可能とするストロボ装置の提供を課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明に係るストロボ装置は、上記課題を解決するためになされたもので、光源を収納し、回動可能に構成された発光部と、発光部からの光を反射する反射体までの直線距離を測定する第1測距部と、被写体までの直線距離を測定する第2測距部と、第1及び第2測距部から得た距離情報を用いて、反射体に対する発光部の回動角度を決定する角度制御部とを備え、撮像装置に接続されるストロボ装置において、前記角度制御部は、反射体との直線距離が最短となる第1直線の反射体上の点を第一点、被写体との直線距離が最短となる第2直線の被写体上の点を第二点、第一点と第二点を結んだ第3直線が第2直線となす鋭角を第一鋭角とした場合、反射体で反射されて被写体に入射する発光部からの光と第2直線とのなす入射角度が第一鋭角よりも小さい所定の角度範囲となるように、発光部の反射体に対する回動角度を決定することを特徴とする。
【0009】
かかる構成からなるストロボ装置によれば、反射体から被写体に至る照射光の被写体に対する入射角度が所定の範囲となるように発光部の回動角度を制御し、影ができにくい光線で被写体を照明し、被写体の周囲に照射される光線を拡散させる。
【0010】
また、本発明に係るストロボ装置は、光源を収納し、回動可能に構成された発光部と、発光部からの光を反射する反射体までの直線距離を測定する第1測距部と、第1測距部から得た距離情報及び撮像装置の被写体に対する合焦制御情報に基づく被写体までの距離情報を用いて、反射体に対する発光部の回動角度を決定する角度制御部とを備え、撮像装置に接続されるストロボ装置において、前記角度制御部は、反射体との直線距離が最短となる第1直線の反射体上の点を第一点、被写体との直線距離が最短となる第2直線の被写体上の点を第二点、第一点と第二点を結んだ第3直線が第2直線となす鋭角を第一鋭角とした場合、反射体で反射されて被写体に入射する発光部からの光と第2直線とのなす入射角度が第一鋭角よりも小さい所定の角度範囲となるように、発光部の反射体に対する回動角度を決定するように構成することができる。
【0011】
かかる構成からなるストロボ装置によれば、撮像装置の被写体に対する合焦制御情報を用いて、第2直線におけるストロボ装置と被写体との最短直線距離である第2距離に関する情報を取得する。そのため、第2測距部を省略して、第2距離の測定をより簡易に行うことができる。
【0012】
また、本発明に係るストロボ装置は、前記第2直線上の被写体との直線距離が所定の距離以上となり、前記入射角度が前記第一鋭角以上の角度となるとき、発光部からの光が前記第一点に向くように、発光部の回動角度を制御するのが好ましい。
【0013】
かかる構成からなるストロボ装置によれば、ストロボ装置から被写体までの距離が遠くなり、前記入射角度が前記第一鋭角以上の角度となるとき、すなわち、ストロボ装置の発光部を被写体の反対側に向けて、光を照射して反射体で拡散させ、被写体に光を照射させても不自然な影ができやすい状況では、発光部からの光を第一点に向けて照射する。そのため、被写体と被写体の周囲との明度差をより緩和することができる。
【0014】
また、本発明に係るストロボ装置は、前記第1直線上の反射体との直線距離が所定の距離以上となるとき、前記第1直線軸回りに発光部が回動するように、発光部の回動角度を制御するのが好ましい。
【0015】
かかる構成からなるストロボ装置によれば、反射体までの距離が所定以上、すなわち、反射できない程度に離間した場合は、ストロボ装置の水平軸回りに発光部を回動させて照射光を反射させる。そのため、撮影環境の変化に関わらず照射光を拡散でき、被写体と被写体の周囲との明度差をより緩和することができる。
【0016】
また、本発明に係るストロボ装置は、前記発光部が、撮像装置からの信号に応答して自動で駆動されることが好ましい。
【0017】
かかる構成からなるストロボ装置によれば、撮像装置からの信号に応答して、自動で発光部が駆動される。そのため、より撮像装置の操作に集中することができる。
【0018】
また、本発明に係るストロボ装置は、撮像装置の合焦制御の開始とともに、発光部の回動角度の演算を開始し、合焦制御によるレンズ駆動に連動して発光部が回動することが好ましい。
【0019】
かかる構成からなるストロボ装置によれば、撮像装置の合焦制御の動作に、ストロボ装置の発光部の動作が連動する。具体的には、撮像装置の合焦制御の開始に伴い、ストロボ装置の発光部の回動角度の演算が開始され、撮像装置の合焦制御のレンズ駆動と連動して、ストロボ装置の発光部の回動がなされる。そのため、発光部の回動角度を自動制御し、撮影者は撮像装置から手を離すことなくバウンス撮影が可能となり、より撮像装置の操作に集中することができる。
【発明の効果】
【0020】
以上のように、本発明に係るストロボ装置によれば、不自然な影や、被写体と被写体の周囲との明度差をより緩和し、より自然な照明を可能とすることができる。
【図面の簡単な説明】
【0021】
【図1】第一実施形態に係るストロボ装置及び撮像装置の概略図
【図2】同実施形態に係るストロボ装置及び撮像装置の機能ブロック図
【図3】同実施形態に係るストロボ装置における発光部の回動角度の算出方法を示す説明図
【図4】同実施形態に係るストロボ装置及び撮像装置を用いた、バウンス撮影のフローチャート
【図5】第二実施形態に係るストロボ装置及び撮像装置を用いた、バウンス撮影のフローチャート
【発明を実施するための形態】
【0022】
以下、本発明に係るストロボ装置の第一実施形態について、図面を参酌しつつ説明する。図1は、ストロボ装置と撮像装置の概略図である。図2は、ストロボ装置1及び撮像装置6の機能ブロック図である。
【0023】
図1に示すように、本実施形態に係るストロボ装置1は、発光可能な光源21を収納し、回動可能に構成された発光部2と、発光部2からの光を反射する反射体までの直線距離を測定する第1測距部22と、被写体までの直線距離を測定する第2測距部32と、ストロボ装置1を動作させるための電源手段や制御・駆動手段を収納する本体部3と、発光部2及び本体部3を連結し、発光部2を回動可能にする連結部4とからなる。
【0024】
発光部2は、上面が開いた、つぼ状の形状をなし、その内部に、発光可能な光源21を収納し、垂直軸及び水平軸回りに回動可能に構成される。発光部2の側面には、第1測距部22が具備され、発光部2の底部には連結部4が具備される。
【0025】
連結部4は、発光部2及び本体部3を連結し、発光部2を水平軸回りに回動可能に構成される。具体的には、連結部4は、発光部2及び本体部3を連結する連結体と、発光部2を水平軸回りに回動する水平軸駆動手段23とからなる。水平軸駆動手段23は、発光部2を水平軸回りに回動するように構成され、例えば、発光部2を連結部4に対して、水平軸回りに回動自在にするヒンジである。
【0026】
本体部3は、ストロボ装置1を動作させるための電源手段と、連結部4及び発光部2を垂直軸回りに回動させる垂直軸駆動手段33と、発光部2の回動角度を決定する角度制御部34と、光源21の発光タイミングや発光量を決定する発光制御部35と、モード切替ダイヤルとからなる。また、本体部3の側面には、第2測距部(センサー)32が設けられ、本体部3の底部5は撮像装置6に接続される。
【0027】
垂直軸駆動手段33は、連結部4を介して、発光部2を垂直軸回りに回動するように構成され、例えば、発光部2に連結される連結部4を、本体部3に対して、垂直軸回りに回動自在にするヒンジである。
【0028】
第1測距部22は、ストロボ装置1と反射体までの直線距離を測定するように構成される。本実施形態では、測定はレーザによってなされ、特には、ストロボ装置1と反射体までの直線距離のうち、最短となる第1距離hが測定される。また、反射体は、例えば、天井などの平面からなる反射面8である。具体的には、反射面8は、水平な天井であり、ストロボ装置1の垂直方向の上方の所定の高さに固定して位置する。
【0029】
第2測距部32は、ストロボ装置1(もしくは撮像装置6)から被写体までの直線距離を測定するように構成される。本実施形態では、測定はレーザによってなされ、特には、ストロボ装置1と被写体までの直線距離のうち、最短となる第2距離Iが測定される。
【0030】
角度制御部34は、第1及び第2測距部32から得た距離情報を用いて、反射面8に対する発光部2の回動(バウンス)角度を決定するように構成される。また、角度制御部34は、図2に示すように、第1測距部22と、第2測距部32と、水平軸駆動手段23と、垂直軸駆動手段33とに接続される。
【0031】
ここで、角度制御部34における回動角度の決定方法について、図3を用いて説明する。図3は、ストロボ装置1における発光部2の回動角度を算出する説明図である。図3に示すように、ストロボ装置1と反射面8との直線距離が最短となる第1直線の反射面8上の点を第一点(点A)、ストロボ装置1と被写体との直線距離が最短となる第2直線の被写体上の点を第二点(点B)、第一点(点A)と第二点(点B)を結んだ第3直線が第2直線となす鋭角を第一鋭角(角度β)、反射面8上の点Cで反射されて被写体に入射する発光部2からの入射光と第2直線とのなす入射角度を角度γ、第1直線上におけるストロボ装置1から反射面8までの最短距離(第1距離)をh、第2直線上におけるストロボ装置1と被写体までの最短距離(第2距離)をI、反射面8上の点Cからの垂直線と被写体上の点Bを通る水平線が交差する点を点D、線分BD上のストロボ装置1から点Dまでの距離をb、点Cとストロボ装置1を結んだ線分と点Dとストロボ装置1を結んだ線分とがなす角度を回動(バウンス)角度αとする。このとき、I、b、γ、hの関係は数式1として表せ、α、h、bの関係は数式2として表せる。従って、数式1と2からbを消去すると、数式3のように、回動(バウンス)角度αは算出される。数式3において、h、Iはストロボ装置1の測距部によって、測定される値であり、γはβよりも小さい所定の角度範囲からなるユーザ設定値であり、Hはhにストロボ装置1の既知の高さを加算した値から、被写体の既知の高さを減算することによって、算出される値である。
【0032】
(数1)
tanγ=h/(I+b) (1)
【0033】
(数2)
tanα=h/b (2)
【0034】
(数3)
α=arctan(h・tanγ/(H−I・tanγ)) (3)
発光制御部35は、光源21の発光タイミングや発光量を制御するように構成され、光源21に接続される他、角度制御部34とも接続される。
【0035】
モード切替ダイヤルは、撮影モードが切り替えできるように構成される。具体的には、撮影モードは、バウンス撮影モードと通常撮影モードとからなり、どちらか一方のモードが選択される。バウンス撮影モードとは、第1・第2測距部22、32等からの情報を用いて角度制御部34によって、回動(バウンス)角度が演算され決定されるモードであり、これ対して、通常撮影モードは、角度制御部34による演算を要さず、ストロボ装置1からの光をユーザ設定の任意の角度で照射するモードである。
【0036】
撮像装置6は、被写体を撮影可能に構成される。撮像装置6は、複数のレンズからなるレンズ7と、レンズ7を収納する筐体と、筐体外部に取り付けられた撮影用のスイッチとからなり、筐体内には、レンズ7を水平方向に移動させるレンズ駆動手段71と、レンズ駆動手段71を介し、レンズ7のピント(焦点)調整制御を行う合焦制御部72と、合焦制御部72へのピント調整指示や撮像制御を行う撮像制御部61とを備える。また、撮像装置6内部において、図2に示すように、撮像制御部61は、合焦制御部72に接続されており、撮像装置6は、図1に示すように、ストロボ装置1の本体部3における底部5を介して、物理的且つ電気的に接続される。従って、図2に示すように、ストロボ装置1の角度制御部34及び発光制御部35と撮像装置6の撮像制御部61は互いに接続され、連動可能な構成となる。尚、撮影用のスイッチは、例えば、遠隔撮影を可能とするレリーズスイッチである。
【0037】
以上の構成からなる本実施形態に係るストロボ装置1及び撮像装置6について、図4を参照しつつ、動作の説明を行う。図4は、ストロボ装置1と撮像装置6を用いたバウンス撮影のフローチャートである。
【0038】
図4に示すように、ステップ1では、ストロボ装置1において、モード切替ダイヤルでバウンス撮影モードが選択される。また、ステップ1では、被写体及びストロボ装置1の高さ情報が、ストロボ装置1の角度制御部34に入力される。
【0039】
ステップ2では、発光部2を垂直(鉛直)方向(撮像装置6のレンズ光軸(被写体と撮像装置6のレンズ中心を通る直線)に対して90°方向)に回動させる。
【0040】
ステップ3では、第1測距部22によって、ストロボ装置1(第1測距部22)から反射面8までの最短距離(第1距離)を測定し、角度制御部34に出力する。
【0041】
ステップ4では、第1距離が所定範囲内にある否かの確認をする。具体的には、第1距離が所定範囲内であれば、ステップ6を行い、第1距離が所定以上の場合には、換言すれば、ストロボ装置1から反射面8までの距離が遠く、ストロボ装置1からの光のバウンスによる反射・拡散効果が得られない場合には、ステップ5aからステップ5dを行う。
【0042】
ステップ5aからステップ5dのステップはループ(回帰)構造となっているため、条件次第では、無限ループをする可能性がある。そこで、ステップ5aでは、ステップ5aを通過する回数が所定数を超えるか否か、確認する。換言すれば、ストロボ装置1の発光部2の回動角度を所定回だけ変更する間、第1距離が所定範囲内にないようであれば、バウンス撮影モードは終了される。ステップ5bでは、ステップ5aから5dのループ構造において、本ステップ処理の通過回数に応じて、角度制御部34は発光部2を所定の角度分(例えば、撮像装置6のレンズ光軸に対して90°方向を向いている発光部2を、水平軸駆動手段23を介して、15°ずつ水平軸回りに傾斜させ、その都度、垂直軸駆動手段33を介して、垂直軸回りに360°回動させる。従って、一回目のステップ3bでは、撮像装置6のレンズ光軸に対して75°方向に水平軸回りに傾斜させて、且つ、垂直軸回りに360°回動させる。)回動させる。ステップ5cでは、第1距離を測定し、角度制御部34に距離情報を出力する。ステップ5dでは、ステップ5cで出力した第1距離が所定の範囲内にあるか否かを確認し、所定の範囲内であれば、ステップ6に行き、所定の範囲内になければ、ステップ5aに戻り、二回目となるステップ5bから5dを繰り返す。その際に、ステップ5bでは、発光部2を所定の角度分回動(二回目のステップ5bなので、撮像装置6のレンズ光軸に対して60°方向に水平軸回りに傾斜させて、且つ、垂直軸回りに360°回動させる。)させる。そして、所定の回数、ステップ5aから5dを繰り返し、その間、第1距離が所定の範囲内になければ、ステップ5aによって、バウンス撮影モードは終了される。
【0043】
ステップ6では、第2測距部32によって、ストロボ装置1(第2測距部32)から被写体までの距離(第2距離)を測定し、角度制御部34に出力する。
【0044】
ステップ7では、撮像装置6のレリーズスイッチを用いて、合焦制御指示が出される。具体的には、レリーズスイッチからの信号を受けて、撮像制御部61は、撮像制御部61に接続される合焦制御に対して、ピント(焦点)調整指示をし、合焦制御部72によって、レンズ駆動手段71を介して、ピント(焦点)調整が開始される。尚、本ステップ7のピント調整の開始とともに、以降のステップ8、9a、9bの回動(バウンス)角度の演算処理がなされる。
【0045】
ステップ8では、第2距離が所定の範囲内にあるか否かを確認する。第2距離が所定の範囲内にあれば、換言すれば、ストロボ装置1から被写体までの距離が近く、ストロボ装置1を被写体とは反対側に向けて照射する、光のバウンスによる反射・拡散効果が得られる場合には、ストロボ装置1を被写体とは反対側に向けて(回動(バウンス)角度90°未満)、光を照射するステップ9aに行き、一方、第2距離が所定の範囲内を超えていれば、換言すれば、ストロボ装置1から被写体までの距離が遠く、ストロボ装置1を被写体とは反対側(正対しない向き)に向けて照射する、光のバウンスによる反射・拡散効果が得られない場合には、ストロボ装置1を被写体側(被写体に正対する向き)に向けて(回動(バウンス)角度90°以上)、光を照射するステップ9bに行く。
【0046】
ステップ9a、9bでは、角度制御部34において、第1と第2距離の情報、被写体の高さ、ストロボ装置1の高さの情報を用いて、数式3に基づき、発光部2の回動角度を算出する。尚、ステップ9bにおいて、回動(バウンス)角度180°(あるいは、その近傍の角度)は、発光部2からの光を反射面8にバウンスさせずに、被写体を直接照明することを意味する。また、ステップ9bでは、光の入射角度が第一鋭角(角度β)以上の角度となるとき、第一点(点A)に向けて、発光部2の回動角度を制御する。
【0047】
ステップ10では、ステップ9a、9bで算出された回動(バウンス)角度に基づき、発光部2を回動させる。尚、ステップ7のピント調整の開始とともに、ステップ8、9a、9bの回動(バウンス)角度の演算処理がなされるが、ステップ7のピント調整におけるレンズの駆動と連動して、本ステップ10の発光部2の回動がなされる。
【0048】
ステップ11では、撮像装置6のレリーズスイッチを用いて、撮影指示が出される。具体的には、撮像制御部61は、レリーズスイッチからの信号を介して、撮影者の撮影指示を受ける。
【0049】
ステップ12では、ストロボ装置1の発光制御部35による発光がなされるとともに、撮像装置6の撮像制御部61による撮影がなされる。具体的には、ストロボ装置1の発光制御部35は、撮像制御部61に接続されているため、ステップ11の撮像制御部61からの撮影指示がなされると、撮影指示と連動して、発光制御部35による発光と、撮像制御部61による撮影とがなされる。
【0050】
以上、本実施形態に係るストロボ装置1によれば、反射体で反射されて被写体に入射する発光部からの入射光と第2直線とのなす入射角度γが、所定の角度範囲であり、且つ、該入射角が第一鋭角βよりも小さくなるように、角度制御部34によって回動(バウンス)角度αを演算し、演算された回動(バウンス)角度αに基づき、水平軸・垂直軸駆動手段33を介して、発光部2を回動するため、影ができにくい光線で被写体を照明し、被写体の周囲に照射される光線を拡散させて、被写体と被写体の周囲との明度差をより緩和できる。換言すれば、発光部2の回動(バウンス)角度を、ストロボ装置1(撮像装置6)と被写体との距離に応じて変更し、その距離が短くなるほど、小さくなるように制御することで、不自然な影と、被写体と被写体の周囲との明度差をより緩和することができる。
【0051】
また、第1直線上における、ストロボ装置と反射体との最短直線距離である第1距離hが所定の距離以上となるとき、ストロボ装置の垂直軸回りに発光部を回動させるとともに、第2直線上における、ストロボ装置と被写体との最短直線距離である第2距離Iが所定の距離以上となり、入射角度γが第一鋭角β以上の角度となるとき、第一点(点C)に向けて、発光部の回動角度を制御するため、例えば、入射角度γが大きくなり、被写体のほぼ真上方向から照射するような不自然な照明を抑制し、被写体と被写体の周囲との明度差をより緩和することができる。
【0052】
さらに、撮像装置6の撮像制御部61とストロボ装置1の角度制御部34、発光制御部35とを接続して、撮像装置6の撮影とストロボ装置1の発光を連動させるとともに、撮像装置6のピント調整の開始とともに、ストロボ装置1の回動(バウンス)角度の演算処理がなされ、また、ピント調整におけるレンズの駆動と連動して、発光部2の回動がなされるため、バウンス撮影が自動的に、より簡易にできる。
【0053】
以下、本発明に係るストロボ装置1の第二実施形態について、図5を参酌しつつ説明する。図5は、ストロボ装置及び撮像装置を用いた、バウンス撮影のフローチャートである。
【0054】
本実施形態に係るストロボ装置1aは、第2測距部32を具備しない点を除き、第一実施形態のストロボ装置1と同様な構成(角度制御部は、回動角度の決定において、第1測距部と合焦制御部からの距離情報に基づく。)である。また、撮像装置6は、第一実施形態の撮像装置6と同じ構成である。
【0055】
上記の構成からなるストロボ装置1aと撮像装置6について、動作の説明をする。
【0056】
第一実施形態と第二実施形態に係るストロボ装置1、1a及び撮像装置6を用いた、バウンス撮影の違いは、ストロボ装置1、1aと被写体との距離(第2距離)の取得方法である。第一実施形態では、図4のステップ6に示すように、第2測距部32によって、第2距離が測定されるが、第二実施形態では、図5のステップ6aから6dに示すように、撮像装置6の合焦制御部72の機能による、ピント(焦点)調整過程の情報を用いて第2距離が求められる。
【0057】
ステップ6aでは、撮像装置6のレンズ7のピント(焦点)調整開始が、撮影者から指示される。具体的には、撮像装置6のレンズ7の合焦制御のために、レリーズスイッチが押下される。また、ストロボ装置1aにおいては、ステップ6aにおける撮像制御部61からの合焦開始指示によって、これと連動して、角度制御部34が水平軸・垂直軸駆動手段23、33を駆動し、発光部2の回動が開始される。
【0058】
ステップ6bでは、撮像制御部61がレリーズスイッチからの信号を受け、合焦制御部72にピント調整開始指示を出す。
【0059】
ステップ6cでは、合焦制御部72が、レンズ駆動手段71を駆動させて、レンズ駆動手段71を介してレンズ7を移動させ、ピント調整がなされる。換言すれば、カメラに映る画面内において、被写体の輪郭がぼやけず、鮮明に把握できるように焦点が合わせられる。また、ストロボ装置1aでは、ピント調整のために、撮像装置6のレンズ7の移動が、第2距離が無限遠状態から開始され、徐々に距離が短くなるように連続的に行われるのに合わせて、発光部2の回動(バウンス)角度を第2距離が長い状態(無限遠状態)、すなわち発光部2の角度が90°の状態から、第2距離が短い状態、すなわち発光部2の角度がレンズ光軸に対して徐々に大きくなるように制御し、レンズの駆動と連動して、事前に発光部2を回動させる。尚、発光部2の(事前の)回動は、レンズ合焦制御が近距離から無限遠に変化する場合は、上記の発光部2の角度制御とは逆に、発光部2の角度をレンズ光軸に対して所定の大きい角度(例えば、135°(被写体と反対側の方向))から90°に向けて徐々に小さくなるように制御する。
【0060】
ステップ6dでは、第2距離が求められる。例えば、本実施形態では、被写体距離は、焦点距離に被写体の実際の高さを乗算した値を、カメラ画面内の被写体の高さで除算することによって、算出される。算出された第2距離の情報は、合焦制御部72によって、撮像制御部61を介して角度制御部34に送られる。尚、ステップ6aから6d以外のステップは、第一実施形態(ステップ6と7を除く)と同様である。
【0061】
以上、第二実施形態に係るストロボ装置1aによれば、撮像装置6の合焦制御部72の機能であるピント調整過程の情報を用いて、第2距離を求めるため、第一実施形態のようなストロボ装置1による第2測距部32の測距を省略でき、バウンス撮影がより簡易に行うことができる。
【0062】
また、撮像装置6のレンズ7の合焦制御に合わせて、ストロボ装置1aの発光部2の回動が開始され、さらに、撮像装置6のレンズ駆動に連動して、発光部2の回動が事前になされており、発光部2の回動角度を演算して決定する前に、予め想定される角度に回動されるため、回動(バウンス)角度の決定後に、発光部2の角度調整がより迅速にできる。
【0063】
尚、本発明に係るストロボ装置1、1aは、上記実施形態に限定されるものではなく、本発明の要旨を逸脱しない範囲で種々の変更が可能である。
【0064】
例えば、上記第一及び第二実施形態においては、第1測距部22をストロボ装置1、1aに一つだけ設けているが、ストロボ装置1、1aと反射面8の距離を迅速に測定するため、複数設けることも可能である。
【産業上の利用可能性】
【0065】
本発明に係るストロボ装置は、不自然な影や、被写体と被写体の周囲との明度差をより緩和し、より自然な照明をすることが必要な技術分野での用途に適用できる。
【符号の説明】
【0066】
1、1a ストロボ装置
2 発光部
21 光源
22 第1測距部
23 水平軸駆動手段
3 本体部
32 第2測距部
33 垂直軸駆動手段
34 角度制御部
35 発光制御部
4 連結部
5 底部
6 撮像装置
61 撮像制御部
7 レンズ
71 レンズ駆動手段
72 合焦制御部
8 反射面

【特許請求の範囲】
【請求項1】
光源を収納し、回動可能に構成された発光部と、
発光部からの光を反射する反射体までの直線距離を測定する第1測距部と、
被写体までの直線距離を測定する第2測距部と、
第1及び第2測距部から得た距離情報を用いて、反射体に対する発光部の回動角度を決定する角度制御部とを備え、撮像装置に接続されるストロボ装置において、
前記角度制御部は、反射体との直線距離が最短となる第1直線の反射体上の点を第一点、被写体との直線距離が最短となる第2直線の被写体上の点を第二点、第一点と第二点を結んだ第3直線が第2直線となす鋭角を第一鋭角とした場合、反射体で反射されて被写体に入射する発光部からの光と第2直線とのなす入射角度が第一鋭角よりも小さい所定の角度範囲となるように、発光部の反射体に対する回動角度を決定するストロボ装置。
【請求項2】
光源を収納し、回動可能に構成された発光部と、
発光部からの光を反射する反射体までの直線距離を測定する第1測距部と、
第1測距部から得た距離情報及び撮像装置の被写体に対する合焦制御情報に基づく被写体までの距離情報を用いて、反射体に対する発光部の回動角度を決定する角度制御部とを備え、撮像装置に接続されるストロボ装置において、
前記角度制御部は、反射体との直線距離が最短となる第1直線の反射体上の点を第一点、被写体との直線距離が最短となる第2直線の被写体上の点を第二点、第一点と第二点を結んだ第3直線が第2直線となす鋭角を第一鋭角とした場合、反射体で反射されて被写体に入射する発光部からの光と第2直線とのなす入射角度が第一鋭角よりも小さい所定の角度範囲となるように、発光部の反射体に対する回動角度を決定するストロボ装置。
【請求項3】
前記第2直線上の被写体との直線距離が所定の距離以上となり、前記入射角度が前記第一鋭角以上の角度となるとき、発光部からの光が前記第一点に向くように、発光部の回動角度を制御することを特徴とする請求項1又は請求項2に記載のストロボ装置。
【請求項4】
前記第1直線上の反射体との直線距離が所定の距離以上となるとき、前記第1直線軸回りに発光部が回動するように、発光部の回動角度を制御することを特徴とする請求項1乃至請求項3のいずれか1項に記載のストロボ装置。
【請求項5】
前記発光部は、撮像装置からの信号に応答して自動で駆動されることを特徴とする請求項1乃至請求項4のいずれか1項に記載のストロボ装置
【請求項6】
撮像装置の合焦制御の開始とともに、発光部の回動角度の演算を開始し、合焦制御によるレンズ駆動に連動して発光部が回動することを特徴とする請求項1乃至請求項5のいずれか1項に記載のストロボ装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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