説明

スナウト内浮遊ドロスの除去方法

【課題】鋼帯の溶融亜鉛めっき設備等のような金属帯の溶融めっき設備において、スナウト内の浮遊ドロスを的確に除去することができるスナウト内浮遊ドロスの除去方法を提供する。
【解決手段】スナウト2の四隅に、順番に、第1吐出口13a、第1吸引口16a、第2吐出口13b、第2吸引口16bを配置する。第1吐出口13aから第1吸引口16aに向う強制流れ21aと、第2吐出口13bから第2吸引口16bに向う強制流れ21bが形成され、端部淀み領域に堆積した浮遊ドロスが鋼帯Sの幅中央方向に流出するのを抑止し、同時に強制流れ22aと22bの形成によって鋼帯Sの幅中央部に向かって流れ出した浮遊ドロスを押し流して鋼帯Sに巻き込ませない。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、鋼帯の溶融亜鉛めっき設備等のような金属帯の溶融めっき設備において、スナウト内に浮遊するドロスを除去するためのスナウト内浮遊ドロスの除去方法に関するものである。
【背景技術】
【0002】
鋼帯の溶融亜鉛めっき設備等のような金属帯の溶融めっき設備において、スナウト内に金属酸化物、金属間化合物、不純物の酸化物等(以下これらを総称して「ドロス」という)が浮遊して金属帯の表面に付着すると表面欠陥の原因となるので、この浮遊ドロスを除去することが重要である。
【0003】
まず、金属帯の溶融めっき設備の一例を図4によって説明する。この図は鋼帯の溶融亜鉛めっき設備における溶融ポット回りの構成を示す概念図であり、Sは金属帯(鋼帯)、1は焼鈍炉、2はスナウト、3は溶融ポット、4はシンクロール、5はサポートロール、6はめっき付着量制御装置である。連続式の焼鈍炉1で焼鈍された鋼帯Sは、スナウト2に囲まれて焼鈍炉内の還元性ガスの雰囲気のまま、大気に触れることなくめっき浴(亜鉛浴)Mに浸漬し、シンクロール4に巻き付いて反転し、サポートロール5に支持されて垂直上方に引き上げられ、めっき付着量制御装置6で表面に付着しためっき厚を調整される。矢印は鋼帯Sの移動方向を示す。
【0004】
この溶融亜鉛めっき設備において、スナウト2は焼鈍炉1と溶融ポット3とを気密性を保って接続する役割をもつが、スナウト2内の浴面に発生した浮遊ドロスは、鋼帯Sの表面に付着して外観不良等の表面欠陥を引き起こす。スナウト2内は一般には不活性雰囲気で満たされた空間であり、スナウト2内の浴面に浮遊する浮遊ドロスの除去は容易でない。そのため、スナウト2内の液面に浮遊するドロスの除去には、メタルポンプ(以下、スナウトポンプと呼ぶ)が用いられている。
【0005】
このスナウトポンプは、メインテナンス性やスペースの制約のため、通常、スナウト2の幅方向(鋼帯Sの幅方向)の両端部に設置される。スナウトポンプを用いた浮遊ドロスの除去方式としては、両側吸引方式(例えば特許文献1)と吐出−吸引方式(例えば特許文献2)に分類できる。
【0006】
両側吸引方式は、図5にその概念図を示すように、スナウト2内に吸引口16を有し、スナウト2外に吐出口17を有するスナウト内吸引型スナウトポンプ15をスナウト2の幅方向(鋼帯Sの幅方向)の両端部に設置したものである。この両側吸引方式は、スナウト幅中央部における浮遊ドロスの除去能力に劣るという問題がある。
【0007】
一方、吐出−吸引方式は、図6にその概念図を示すように、スナウト2外に吸引口12を有し、スナウト2内に吐出口13を有するスナウト内吐出型スナウトポンプ11をスナウト2の幅方向の一端部に設置し、スナウト2内に吸引口16を有し、スナウト2外に吐出口17を有するスナウト内吸引型スナウトポンプ15をスナウト2の幅方向の他端部に設置したものである。この吐出−吸引方式は、スナウト2内の幅方向に強制的な流れを作り出すので、浮遊ドロスの除去能力に優れるが、鋼帯Sの進行で生じる随伴流による浮遊ドロスの巻込みが避けられず、スナウトボンプの運転中に鋼帯Sの外観品質を損なうという問題がある。
【0008】
この吐出−吸引方式の問題に対応するために、前記特許文献2では、図7に示すように、スナウト内吐出型スナウトポンプ11の吐出口16を2個所にして、鋼帯Sの両表面側に独立な強制流れ19を発生させるようにしている。しかし、この場合でも、スナウト内吸引型スナウトポンプ15の吸引口17は1個所であり、吸引口17に近づくに従って強制流れ19は鋼帯Sに接近し、浮遊ドロスの鋼帯Sへの巻込みを許すことになる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0009】
【特許文献1】特開2000−273599号公報
【特許文献2】特開2003−293107号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0010】
本発明は、上記のような事情に鑑みてなされたものであり、鋼帯の溶融亜鉛めっき設備等のような金属帯の溶融めっき設備において、スナウト内の浮遊ドロスを的確に除去することができるスナウト内浮遊ドロスの除去方法を提供することを目的とするものである。
【課題を解決するための手段】
【0011】
上記課題を解決するために、本発明は以下の特徴を有する。
【0012】
[1]金属帯の溶融めっき設備において、スナウトポンプを用いてスナウト内の浮遊ドロスを除去するに際して、
スナウト外に吸引口を有し、スナウト内に吐出口を有するスナウト内吐出型スナウトポンプを2台(第1スナウト内吐出型スナウトポンプ、第2スナウト内吐出型スナウトポンプ)と、スナウト内に吸引口を有し、スナウト外に吐出口を有するスナウト内吸引型スナウトポンプを2台(第1スナウト内吸引型スナウトポンプ、第2スナウト内吸引型スナウトポンプ)を用い、
スナウト幅方向の一端部側において、金属帯の一方の表面側に第1スナウト内吐出型スナウトポンプの吐出口を配置し、金属帯の他方の表面側に第1スナウト内吸引型スナウトポンプの吸引口を配置するとともに、スナウト幅方向の他端部側において、前記一方の金属帯表面側に第2スナウト内吸引型スナウトポンプの吸引口を配置し、前記他方の金属帯表面側に第2スナウト内吐出型スナウトポンプの吐出口を配置することを特徴とするスナウト内浮遊ドロスの除去方法。
【発明の効果】
【0013】
本発明においては、金属帯の溶融めっき設備でのスナウト内の浮遊ドロスを的確に除去することができ、金属帯の表面欠陥の発生を抑止することが可能になる。
【図面の簡単な説明】
【0014】
【図1】本発明の一実施形態を示す図である。
【図2】浮遊ドロスの発生メカニズムを説明する図である。
【図3】浮遊ドロスの発生メカニズムを説明する図である。
【図4】鋼帯の溶融亜鉛めっき設備における溶融ポット回りの概念図である。
【図5】両側吸引方式の概念図である。
【図6】吐出−吸引方式の概念図である。
【図7】従来技術(特許文献2)の説明図である。
【発明を実施するための形態】
【0015】
本発明の一実施形態を以下に述べる。
【0016】
最初に、金属帯の溶融めっき設備(ここでは、鋼帯の溶融亜鉛めっき設備)において、スナウト内に浮遊ドロスが発生するメカニズムを図2、図3により説明する。
【0017】
まず、図2に示すように、亜鉛ヒュームがスナウト2の上部内壁で凝固して、その凝固亜鉛9aが浴面変動による振動で液面に落下する。また、浴面付近でドロスが発生する。さらに浴面付近で内壁に付着したドロス9bが浴面の波立ちにより流出する。次に、図3にスナウト内の液面付近の平面図を示すように、鋼帯Sの随伴流の影響が及ばない端部淀み領域に浮遊したドロス9b、9cが堆積し、この堆積したドロス9cが飽和したところで、浮遊ドロス9dとして鋼帯Sの方向に流出する。
【0018】
したがって、上記のようにして発生する浮遊ドロス9dを鋼帯Sに巻き込ませないためには、以下の二条件を同時に満たすことが必要である。
【0019】
<条件1>端部淀み領域から鋼帯の幅中央部に向う浮遊ドロスを最小限に抑える。
【0020】
<条件2>鋼帯の幅方向に沿って直線的に流れる強制流れを発生させる。
【0021】
そこで、この二条件を満足できるように、本発明の一実施形態においては、スナウト内吐出型スナウトポンプを2台(第1スナウト内吐出型スナウトポンプ、第2スナウト内吐出型スナウトポンプ)と、スナウト内吸引型スナウトポンプを2台(第1スナウト内吸引型スナウトポンプ、第2スナウト内吸引型スナウトポンプ)を用い、図1にスナウト内の液面付近の平面図を示すように、スナウト幅方向の一端部側(図1中の左側)において、鋼帯Sの一方の表面側(図1中の下側)に第1スナウト内吐出型スナウトポンプの吐出口(第1吐出口)13aを配置し、鋼帯Sの他方の表面側(図1中の上側)に第1スナウト内吸引型スナウトポンプの吸引口(第1吸引口)16aを配置するとともに、スナウト幅方向の他端部側(図1中の右側)において、前記一方の鋼帯表面側(図1中の上側)に第2スナウト内吸引型スナウトポンプの吸引口(第2吸引口)13bを配置し、前記他方の鋼帯表面側に第2スナウト内吐出型スナウトポンプの吐出口(第2吐出口)16bを配置するようにしている。すなわち、スナウト2の四隅に、順番に、第1吐出口13a、第1吸引口16a、第2吐出口13b、第2吸引口16bを配置している。
【0022】
これにより、前記の条件1を満たすように、図1に示すような、第1吐出口13aから第1吸引口16aに向う強制流れ21aと、第2吐出口13bから第2吸引口16bに向う強制流れ21bが形成される。この強制流れ21a、21bによって、端部淀み領域に堆積した浮遊ドロス9cが鋼帯幅中央部方向に向かって流出することを抑止し、浮遊ドロス9cを鋼帯Sに巻き込ませずに第1吸引口16aまたは第2吸引口16bからスナウト2外に除去することができる。
【0023】
また、前記の条件2を満たすように、図1に示すような、第1吐出口13aから第2吸引口16bに向う強制流れ22aと、第2吐出口13bから第1吸引口16aに向う強制流れ22bが形成される。この鋼帯Sの幅方向に沿って直線的に流れる強制流れ22a、22bによって、鋼帯幅中央部に向かって流出した浮遊ドロス9dを押し流し、鋼帯Sに巻き込ませずに、そのまま第2吸引口16bまたは第1吸引口16aからスナウト2外に除去することができる。
【0024】
このようにして、この実施形態においては、鋼帯の溶融亜鉛めっき設備でのスナウト内の浮遊ドロスを的確に除去することができ、鋼帯の表面欠陥の発生を抑止することが可能になる。
【符号の説明】
【0025】
1 焼鈍炉
2 スナウト
3 溶融ポット
4 シンクロール
5 サポートロール
6 めっき付着量制御装置
9a 凝固亜鉛
9b 内壁付着ドロス
9c 端部淀み領域の堆積ドロス
9d 浮遊ドロス
11 スナウト内吐出型スナウトポンプ
12 吸引口
13 吐出口
13a 第1吐出口
13b 第2吐出口
15 スナウト内吸引型スナウトポンプ
16 吸引口
16a 第1吸引口
16b 第2吸引口
17 吐出口
19 強制流れ
21a、21b 強制流れ
22a、22b 強制流れ
M めっき浴(亜鉛浴)
S 金属帯(鋼帯)

【特許請求の範囲】
【請求項1】
金属帯の溶融めっき設備において、スナウトポンプを用いてスナウト内の浮遊ドロスを除去するに際して、
スナウト外に吸引口を有し、スナウト内に吐出口を有するスナウト内吐出型スナウトポンプを2台(第1スナウト内吐出型スナウトポンプ、第2スナウト内吐出型スナウトポンプ)と、スナウト内に吸引口を有し、スナウト外に吐出口を有するスナウト内吸引型スナウトポンプを2台(第1スナウト内吸引型スナウトポンプ、第2スナウト内吸引型スナウトポンプ)を用い、
スナウト幅方向の一端部側において、金属帯の一方の表面側に第1スナウト内吐出型スナウトポンプの吐出口を配置し、金属帯の他方の表面側に第1スナウト内吸引型スナウトポンプの吸引口を配置するとともに、スナウト幅方向の他端部側において、前記一方の金属帯表面側に第2スナウト内吸引型スナウトポンプの吸引口を配置し、前記他方の金属帯表面側に第2スナウト内吐出型スナウトポンプの吐出口を配置することを特徴とするスナウト内浮遊ドロスの除去方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【公開番号】特開2010−229530(P2010−229530A)
【公開日】平成22年10月14日(2010.10.14)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−80893(P2009−80893)
【出願日】平成21年3月30日(2009.3.30)
【出願人】(000001258)JFEスチール株式会社 (8,589)
【Fターム(参考)】