説明

スパイラル型分離膜エレメントおよびその製造方法

【課題】テレスコープ防止板を必要としない長期安定性に優れたスパイラル型分離膜エレメントおよび、その製造方法を提供する。
【解決手段】分離膜を重ね合わせて接着された封筒状膜の中に透過液流路材を備えた分離膜ユニットおよび原液流路材を有孔集水管の周りにスパイラル状に巻囲してなるスパイラル型分離膜エレメントであって、分離膜ユニットの表面における有孔集水管の長手方向の両側の帯状端部のうちの少なくとも片側の帯状端部の投影面積比が0を超えて1未満となるように樹脂10が配置されることを特徴とするスパイラル型分離膜エレメント。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、分離膜を用いて逆浸透技術、濾過技術等により流体の成分を分離するスパイラル型分離膜エレメントおよびその製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
液体等を分離する分離膜には、その孔径サイズや分離機能の違いにより、種々のタイプが存在するが、分離膜の一方の面に原液を供給し、他方の面から透過液を取り出す点では共通している。例えば、逆浸透ろ過、限外ろ過などに用いられる流体分離エレメントとしては、供給側流体(原液)を分離膜表面へ導く原液流路材、供給側流体(透過液)を分離する分離膜、および分離膜を透過し供給側流体から分離された供給側流体を集水管(中心管)へと導く透過液流路材からなるユニットを有孔の中心管の周りに巻き付けたスパイラル型分離膜エレメントが知られている。
【0003】
図1は従来のスパイラル型分離膜エレメントの部材構成を模式的に示した一部展開斜視図である。図1に示すスパイラル型分離膜エレメント1は、分離膜5を重ね合わせて接着された封筒状膜の中に透過液流路材6を備えた分離膜ユニット7を形成し、その分離膜ユニット7の開口部を有孔中空管からなる集水管2に取り付け、ネット状(網状)の原液流路材4とともに集水管2の外周面にスパイラル状に巻回することにより構成される。図1に示すように、原液31はスパイラル型分離膜エレメント1の一方の端面側から供給される。供給された原液31は原液流路材4に沿って流れ、スパイラル型分離膜エレメント1の他方の端面側から濃縮液33として排出される。原液31が原液流路材4に沿って流れる過程で分離膜5を透過した透過液32が透過液流路材6に沿って集水管2の内部に流れ込み、集水管2の端部から排出される。上記のようなスパイラル型分離膜エレメントは、透過液流路材6を挟んで封筒状に形成された分離膜5および原液流路材4からなる1組または複数組の素材群(リーフ)を有する。
【0004】
図2は複数組の素材群を有するスパイラル型分離膜エレメントの軸方向の断面図、図3は図2のスパイラル型分離膜エレメントのA−A線断面図、図4は図2のスパイラル型分離膜エレメントの端面図である。
【0005】
スパイラル型分離膜エレメント1の製造の際には、折り畳んだ分離膜5、原液流路材4および透過液流路材6を重ね合わせ、透過液流路材6を介して背中合わせとなる各2枚の分離膜5の両端を樹脂からなる接着剤9で接着しながら、図3および図4に示すように、集水管2の外周面に渦巻き状に巻き付ける。そして、図2に示すように、集水管2に巻回された素材群の両端面には、流体が通過する際に生ずる圧力損失によってスパイラル型分離膜エレメントが望遠鏡(テレスコープ)状に変形し、分離性能が低下することを防止するためにテレスコープ防止板8を取り付けているのが一般的である。さらに、テレスコープ防止板8は、スパイラル型分離膜エレメント1とシール固定するために、接着剤9を含浸させたフィラメントをスパイラル型分離膜エレメント1の外表面にワインディングし、固着させる。また、テレスコープ防止板8は、スパイラル型分離膜エレメント1を充填する容器とスパイラル型分離膜エレメント1をシールできるようにシール部材を付設できる構造になっている。
【0006】
近年、スパイラル型分離膜エレメント等の膜分離装置には、造水コスト低減への高まりから、低コスト化のニーズが高まっている。しかしながら、上記のような多くの部材を使用していることがコストアップや製造工程の複雑化をもたらし、その妨げとなっている。一方、消費材の環境への負荷の問題が近年注目されている中、一定期間の寿命で廃棄されるスパイラル型膜エレメントについても、その環境負荷が問題となっている。
【0007】
このような背景から、特許文献1ではスパイラル型分離膜エレメントを充填する容器の蓋板部分で該エレメントの端面を支持することにより、テレスコープ防止板8を使用しないスパイラル型分離膜エレメント1が提案されている。本発明により、さらにスパイラル型分離膜エレメント1とテレスコープ防止板8との間を従来技術の様にフィラメントワインディングで強固にシールする必要もなくなり、工程数減による生産性の向上かつ、材料費の削減が可能である。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0008】
【特許文献1】特開平7−313848号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0009】
しかし、上記した分離膜エレメントは、長期間にわたり圧力をかけて運転を行った際の性能安定性の点で十分とは言えない。
【0010】
そこで、本発明の目的は、テレスコープ防止板を必要としない長期安定性に優れたスパイラル型分離膜エレメントおよび、その製造方法を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0011】
上記目的を達成するための本発明は、以下の構成をとる。
【0012】
(1)分離膜を重ね合わせて接着された封筒状膜の中に透過液流路材を備えた分離膜ユニットおよび原液流路材を有孔集水管の周りにスパイラル状に巻囲してなるスパイラル型分離膜エレメントであって、分離膜ユニットの表面における有孔集水管の長手方向の両側の帯状端部のうちの少なくとも片側の帯状端部の投影面積比が0を超えて1未満となるように樹脂が配置されることを特徴とするスパイラル型分離膜エレメント。
【0013】
(2)投影面積比が0.01以上0.3以下である(1)に記載のスパイラル型分離膜エレメント。
【0014】
(3)帯状端部に配置される樹脂のパターンがドット状であることを特徴とする(1)または(2)に記載のスパイラル型分離膜エレメント。
【0015】
(4)分離膜を重ね合わせて接着された封筒状分離膜の中に透過液流路材を備えた分離膜ユニットおよび原液流路材を有孔集水管の周りにスパイラル状に巻囲するスパイラル型分離膜エレメントの製造方法であって、分離膜ユニットの表面における有孔集水管の長手方向の両側の帯状端部のうちの少なくとも片側の帯状端部の投影面積比が0を超えて1未満となるように樹脂を配置することを特徴とするスパイラル型分離膜エレメントの製造方法。
【発明の効果】
【0016】
本発明によれば、特定の投影面積比を有する樹脂を分離膜ユニットの表面における有孔集水管の長手方向の帯状端部に配置することにより、従来のスパイラル型分離膜エレメントで必須であったテレスコープ防止板、およびスパイラル型分離膜エレメントとテレスコープ防止板を強固にシールするフィラメントワインディングが不要になる。その結果、分離膜エレメントの原料コストの軽減や製造工程の簡略化、環境負荷の低減を可能にした高性能、高効率分離膜エレメントを得ることができる。
【図面の簡単な説明】
【0017】
【図1】従来のスパイラル型分離膜エレメントの部材構成を模式的に示した一部展開斜視図である。
【図2】複数の素材群を有する従来のスパイラル型分離膜エレメントの軸方向の断面図である。
【図3】図2のスパイラル型分離膜エレメントのA−A線で破断し、分離膜ユニットを展開して示す断面図である。
【図4】図2のスパイラル型分離膜エレメントの端面での展開断面図である。
【図5】本発明の第1の実施例におけるスパイラル型分離膜エレメントの端面での展開断面図である。
【図6】分離膜ユニットの表面において両側の帯状端部に樹脂が配置された、図5のスパイラル型分離膜エレメントを巻囲する前の展開図である。
【図7】分離膜ユニットの表面において片側の帯状端部に樹脂が配置された、本発明の第2の実施例におけるスパイラル型分離膜エレメントを巻囲する前の展開図である。
【発明を実施するための形態】
【0018】
以下、本発明について、さらに詳細に説明する。
【0019】
本発明は、分離膜5を重ね合わせて接着された封筒状膜の中に透過液流路材6を備えた分離膜ユニット7および原液流路材4を有孔集水管2の周りにスパイラル状に巻囲してなるスパイラル型分離膜エレメント1であって、分離膜ユニット7の表面における有孔集水管2の長手方向の両側の帯状端部のうちの少なくとも片側の帯状端部の投影面積比が0を超えて1未満となるように樹脂10が配置されることを特徴とするスパイラル型分離膜エレメント1である。
【0020】
ここで、分離膜5とは、分離膜表面に供給される流体中の成分を分離し、分離膜を透過した透過流体を得るものであれば限定されないが、分離機能層、多孔性支持膜、基材からなるものが好ましく使用される。分離機能層としては、孔径制御、耐久性の点で架橋高分子が好ましく使用され、成分の分離性能の点で、多孔性支持膜上に、多官能アミンと多官能酸ハロゲン化物とを重縮合させてなるポリアミド分離機能層、有機無機ハイブリッド機能層などを好適に用いることができる。また、セルロース膜、PVDF膜、PES膜、ポリスルホン膜のような分離機能と支持体機能を有する膜を用いることもできる。
【0021】
本発明において、分離機能層を構成するポリアミドを用いる場合を詳述する。ポリアミド膜は、多官能アミンと多官能酸ハロゲン化物との界面重縮合により形成することができる。ここで、多官能アミンまたは多官能酸ハロゲン化物の少なくとも一方が3官能以上の化合物を含んでいることが好ましい。
【0022】
ここで、多官能アミンとは、一分子中に少なくとも2個の第一級アミノ基および/または第二級アミノ基を有し、そのアミノ基のうち少なくとも1つは第一級アミノ基であるアミンをいい、例えば、2個のアミノ基がオルト位、メタ位、パラ位のいずれかの位置関係でベンゼン環に結合したフェニレンジアミン、キシリレンジアミン、1,3,5−トリアミノベンゼン、1,2,4−トリアミノベンゼン、3,5−ジアミノ安息香酸、3−アミノベンジルアミン、4−アミノベンジルアミンなどの芳香族多官能アミン、エチレンジアミン、プロピレンジアミンなどの脂肪族アミン、1,2−ジアミノシクロヘキサン、1,4−ジアミノシクロヘキサン、4−アミノピペリジン、4−アミノエチルピペラジンなどの脂環式多官能アミン等を挙げることができる。中でも、膜の選択分離性や透過性、耐熱性を考慮すると、一分子中に2〜4個の第一級アミノ基および/または第二級アミノ基を有する芳香族多官能アミンであることが好ましく、このような多官能芳香族アミンとしては、m−フェニレンジアミン、p−フェニレンジアミン、1,3,5−トリアミノベンゼンが好適に用いられる。中でも、入手の容易性や取り扱いのしやすさから、m−フェニレンジアミン(以下、m−PDAと記す)を用いることがより好ましい。これらの多官能アミンは、単独で用いても、2種以上を同時に用いてもよい。2種以上を同時に用いる場合、上記アミン同士を組み合わせてもよく、上記アミンと一分子中に少なくとも2個の第二級アミノ基を有するアミンを組み合わせてもよい。一分子中に少なくとも2個の第二級アミノ基を有するアミンとして、例えば、ピペラジン、1,3−ビスピペリジルプロパン等を挙げることができる。
【0023】
多官能酸ハロゲン化物とは、一分子中に少なくとも2個のハロゲン化カルボニル基を有する酸ハロゲン化物をいう。例えば、3官能酸ハロゲン化物では、トリメシン酸クロリド、1,3,5−シクロヘキサントリカルボン酸トリクロリド、1,2,4−シクロブタントリカルボン酸トリクロリドなどを挙げることができ、2官能酸ハロゲン化物では、ビフェニルジカルボン酸ジクロリド、アゾベンゼンジカルボン酸ジクロリド、テレフタル酸クロリド、イソフタル酸クロリド、ナフタレンジカルボン酸クロリドなどの芳香族2官能酸ハロゲン化物、アジポイルクロリド、セバコイルクロリドなどの脂肪族2官能酸ハロゲン化物、シクロペンタンジカルボン酸ジクロリド、シクロヘキサンジカルボン酸ジクロリド、テトラヒドロフランジカルボン酸ジクロリドなどの脂環式2官能酸ハロゲン化物を挙げることができる。多官能アミンとの反応性を考慮すると、多官能酸ハロゲン化物は多官能酸塩化物であることが好ましく、また、膜の選択分離性、耐熱性を考慮すると、一分子中に2〜4個の塩化カルボニル基を有する多官能芳香族酸塩化物であることが好ましい。中でも、入手の容易性や取り扱いのしやすさの観点から、トリメシン酸クロリドを用いるとより好ましい。これらの多官能酸ハロゲン化物は、単独で用いても、2種以上を同時に用いてもよい。
【0024】
分離性能を保持する点では、2官能酸ハロゲン化合物と3官能ハロゲン化合物の比率をモル比(2官能酸ハロゲン化合物のモル/3官能酸ハロゲン化合物のモル)で0.05〜1.5であることが好ましく、さらに好ましくは0.1〜1.0であることが好ましい。
【0025】
さらに、分離機能層の耐薬品性の点でSi元素などを有する有機・無機ハイブリッド構造とした分離膜も使用することができる。有機無機ハイブリッド膜としては、特に限定されないが、例えば、(A)エチレン性不飽和基を有する反応性基および加水分解性基がケイ素原子に直接結合したケイ素化合物、ならびに(B)前記ケイ素化合物以外のエチレン性不飽和基を有する化合物を用いた、(A)のケイ素化合物の加水分解性基の縮合ならびに(A)のケイ素化合物および(B)のエチレン性不飽和基を有する化合物のエチレン性不飽和基の重合物が使用できる。
【0026】
まず(A)のエチレン性不飽和基を有する反応性基および加水分解性基がケイ素原子に直接結合したケイ素化合物について説明する。
【0027】
エチレン性不飽和基を有する反応性基はケイ素原子に直接結合している。このような反応性基としては、ビニル基、アリル基、メタクリルオキシエチル基、メタクリルオキシプロピル基、アクリルオキシエチル基、アクリルオキシプロピル基、スチリル基が例示される。重合性の観点から、メタクリルオキシプロピル基、アクリルオキシプロピル基、スチリル基が好ましい。
【0028】
またケイ素原子に直接結合している加水分解性基が水酸基に変化するなどのプロセスを経て、ケイ素化合物同士がシロキサン結合で結ばれるという縮合反応が生じ、高分子となる。加水分解性基としてはアルコキシ基、アルケニルオキシ基、カルボキシ基、ケトオキシム基、アミノヒドロキシ基、ハロゲン原子およびイソシアネート基などの官能基が例示される。アルコキシ基としては、炭素数1〜10のものが好ましく、さらに好ましくは炭素数1〜2のものである。アルケニルオキシ基としては炭素数2〜10のものが好ましく、さらには炭素数2〜4、さらには3のものである。カルボキシ基としては、炭素数2〜10のものが好ましく、さらには炭素数2のもの、すなわちアセトキシ基である。ケトオキシム基としては、メチルエチルケトオキシム基、ジメチルケトオキシム基、ジエチルケトオキシム基が例示される。アミノヒドロキシ基は、酸素を介してアミノ基が酸素原子を介してケイ素原子に結合しているものである。このようなものとしては、ジメチルアミノヒドロキシ基、ジエチルアミノヒドロキシ基、メチルエチルアミノヒドロキシ基が例示される。ハロゲン原子としては、塩素原子が好ましく使用される。
【0029】
分離機能層の形成にあたっては、上記加水分解性基の一部が加水分解し、シラノール構造をとっているケイ素化合物も使用できる。また2以上のケイ素化合物が、加水分解性基の一部が加水分解、縮合し架橋しない程度に高分子量化したものも使用できる。
【0030】
ケイ素化合物(A)としては下記一般式(a)で表されるものであることが好ましい。
Si(R(R(R4−m−n ・・・(a)
(Rはエチレン性不飽和基を含む反応性基を示す。Rはアルコキシ基、アルケニルオキシ基、カルボキシ基、ケトオキシム基、ハロゲン原子またはイソシアネート基のいずれかを表す。RはHまたはアルキル基を表す。m、nはm+n≦4を満たす整数であり、m≧1、n≧1を満たすものとする。R、R、Rそれぞれにおいて2以上の官能基がケイ素原子に結合している場合、同一であっても異なっていてもよい。)
はエチレン性不飽和基を含む反応性基であるが、上で説明したとおりである。
【0031】
は加水分解性基であるが、これらは上で説明したとおりである。Rとなるアルキル基の炭素数としては1〜10のものが好ましく、さらに1〜2のものが好ましい。
【0032】
加水分解性基としては、分離機能層の形成にあたって、反応液が粘性を持つことからアルコキシ基が好ましく用いられる。
【0033】
このようなケイ素化合物としては、ビニルトリメトキシシラン、ビニルトリエトキシシラン、スチリルトリメトキシシラン、メタクリロキシプロピルメチルジメトキシシラン、メタクリロキシプロピルトリメトキシシラン、メタクリロキシプロピルメチルジエトキシシラン、メタクリロキシプロピルトリエトキシシラン、アクリロキシプロピルトリメトキシシランが例示される。
【0034】
(A)のケイ素化合物の他、エチレン性不飽和基を有する反応性基を有しないが、加水分解性基を有するケイ素化合物を併せて使用することもできる。このようなケイ素化合物は、一般式(a)では「m≧1」と定義されているが、一般式(a)においてmがゼロである化合物が例示される。このようなものとしては、テトラメトキシシラン、テトラエトキシシラン、メチルトリメトキシシラン、メチルトリエトキシシランが例示される。
【0035】
次に(A)のケイ素化合物以外のものであって、エチレン性不飽和基を有する化合物(B)について説明する。
【0036】
エチレン性不飽和基は付加重合性を有する。このような化合物としてはエチレン、プロピレン、メタアクリル酸、アクリル酸、スチレンおよびこれらの誘導体が例示される。
【0037】
また、この化合物は、複合半透膜を水溶液の分離などに用いたときに水の選択的透過性を高め、塩の阻止率を上げるために、酸基を有するアルカリ可溶性の化合物であることが好ましい。
【0038】
好ましい酸の構造としては、カルボン酸、ホスホン酸、リン酸およびスルホン酸であり、これらの酸の構造としては、酸の形態、エステル化合物、および金属塩のいずれの状態で存在してもよい。これらのエチレン性不飽和基を1個以上有する化合物は、2つ以上の酸を含有し得るが、中でも1個〜2個の酸基を含有する化合物が、好ましい。
【0039】
上記のエチレン性不飽和基を1個以上有する化合物の中でカルボン酸基を有する化合物としては、以下のものが例示される。マレイン酸、無水マレイン酸、アクリル酸、メタクリル酸、2−(ヒドロキシメチル)アクリル酸、4−(メタ)アクリロイルオキシエチルトリメリト酸および対応する無水物、10−メタクリロイルオキシデシルマロン酸、N−(2−ヒドロキシ−3−メタクリロイルオキシプロピル)−N−フェニルグリシンおよび4−ビニル安息香酸が挙げられる。
【0040】
上記のエチレン性不飽和基を1個以上有する化合物の中でホスホン酸基を有する化合物としては、ビニルホスホン酸、4−ビニルフェニルホスホン酸、4−ビニルベンジルホスホン酸、2−メタクリロイルオキシエチルホスホン酸、2−メタクリルアミドエチルホスホン酸、4−メタクリルアミド−4−メチル−フェニル−ホスホン酸、2−[4−(ジヒドロキシホスホリル)−2−オキサ−ブチル]−アクリル酸および2−[2−ジヒドロキシホスホリル)−エトキシメチル]−アクリル酸−2,4,6−トリメチル−フェニルエステルが例示される。
【0041】
上記のエチレン性不飽和基を1個以上有する化合物の中でリン酸エステルの化合物としては、2−メタクリロイルオキシプロピル一水素リン酸および2−メタクリロイルオキシプロピル二水素リン酸、2−メタクリロイルオキシエチル一水素リン酸および2−メタクリロイルオキシエチル二水素リン酸、2−メタクリロイルオキシエチル−フェニル−水素リン酸、ジペンタエリトリトール−ペンタメタクリロイルオキシホスフェート、10−メタクリロイルオキシデシル−二水素リン酸、ジペンタエリトリトールペンタメタクリロイルオキシホスフェート、リン酸モノ−(1−アクリロイル−ピペリジン−4−イル)−エステル、6−(メタクリルアミド)ヘキシル二水素ホスフェートならびに1,3−ビス−(N−アクリロイル−N−プロピル−アミノ)−プロパン−2−イル−二水素ホスフェートが例示される。
【0042】
上記のエチレン性不飽和基を1個以上有する化合物の中でスルホン酸基を有する化合物としては、ビニルスルホン酸、4−ビニルフェニルスルホン酸または3−(メタクリルアミド)プロピルスルホン酸が挙げられる。
【0043】
本発明に係る分離膜では、分離機能層を形成するために、(A)のケイ素化合物以外に、エチレン性不飽和基を1個以上有する化合物、および重合開始剤を含んだ反応液が使用される。この反応液を多孔質膜上に塗布し、さらに加水分解性基を縮合することに加えて、エチレン性不飽和基の重合によって、これら化合物を高分子量化することが必要である。(A)のケイ素化合物を単独で縮合させた場合、ケイ素原子に架橋鎖の結合が集中し、ケイ素原子周辺とケイ素原子から離れた部分との密度差が大きくなるため、分離機能層中の孔径が不均一となる傾向がある。一方、(A)のケイ素化合物自体の高分子量化および架橋に加え、(B)のエチレン性不飽和基を有する化合物を共重合させることで、加水分解性基の縮合による架橋点とエチレン性不飽和基の重合による架橋点が適度に分散される。このように適度に架橋点を分散させることで、均一な孔径を有する分離機能層が構成され、透水性能と除去性能のバランスが取れた複合半透膜を得ることができる。この際、エチレン性不飽和基を1個以上有する化合物は、低分子量だと分離膜使用時に溶出し膜性能低下を引き起こす可能性があるため、高分子量化していることが必要である。
【0044】
本発明に係る分離膜の製造方法において、(A)エチレン性不飽和基を有する反応性基および加水分解性基がケイ素原子に直接結合したケイ素化合物の含有量は、反応液に含有される固形分量100重量部に対し10重量部以上であることが好ましく、さらに好ましくは20重量部〜50重量部である。ここで、反応液に含有される固形分とは、反応液に含有される全成分のうち、溶媒および縮合反応で生成する水やアルコールなどの留去成分を除いた、上記製造方法によって得られた分離膜に最終的に分離機能層として含まれる成分のことを指す。(A)のケイ素化合物量が少ないと、架橋度が不足する傾向があるので、膜ろ過時に分離機能層が溶出し分離性能が低下するなどの不具合が発生するおそれがある。
【0045】
(B)のエチレン性不飽和基を有する化合物の含有量は、反応液に含有される固形分量100重量部に対し90重量部以下であることが好ましく、さらに好ましくは50重量部〜80重量部である。(B)の化合物の含有量がこれらの範囲にあるとき、得られる分離機能層は架橋度が高くなるため、分離機能層が溶出することなく安定に膜ろ過ができる。
【0046】
次に、本発明に係る分離膜の製造方法における、分離機能層を多孔質支持膜上に形成する方法について説明する。
【0047】
分離機能層形成のために例示される方法としては、(A)のケイ素化合物および(B)のエチレン性不飽和基を有する化合物を含有する反応液を塗布する工程、溶媒を除去する工程、エチレン性不飽和基を重合させる工程、加水分解性基を縮合させる工程の順に行うものである。エチレン不飽和基を重合させる工程において、加水分解性基が同時に縮合することがあってもいい。
【0048】
まず、(A)および(B)を含有する反応液を多孔性支持膜に接触させる。かかる反応液は、通常溶媒を含有する溶液であるが、かかる溶媒は多孔性支持膜を破壊せず、(A)および(B)、および必要に応じて添加される重合開始剤を溶解するものであれば特に限定されない。この反応液には、(A)のケイ素化合物のモル数に対して1〜10倍モル量、好ましくは1〜5倍モル量の水を無機酸または有機酸と共に添加して、(A)のケイ素化合物の加水分解を促すことが好ましい。
【0049】
反応液の溶媒としては、水、アルコール系有機溶媒、エーテル系有機溶媒、ケトン系有機溶媒および、これらを混ぜ合わせたものが好ましい。例えば、アルコール系有機溶媒として、メタノール、エトキシメタノール、エタノール、プロパノール、ブタノール、アミルアルコール、シクロヘキサノール、メチルシクロヘキサノール、エチレングリコールモノメチルエーテル(2-メトキシエタノール)、エチレングリコールモノアセトエステル、ジエチレングリコールモノメチルエーテル、ジエチレングリコールモノアセテート、プロピレングリコールモノエチルエーテル、プロピレングリコールモノアセテート、ジプロピレングリコールモノエチルエーテル、メトキシブタノール等が挙げられる。また、エーテル系有機溶媒として、メチラール、ジエチルエーテル、ジプロピルエーテル、ジブチルエーテル、ジアミルエーテル、ジエチルアセタール、ジヘキシルエーテル、トリオキサン、ジオキサン等が挙げられる。また、ケトン系有機溶媒として、アセトン、メチルエチルケトン、メチルプロピルケトン、メチルイソブチルケトン、メチルアミルケトン、メチルシクロヘキシルケトン、ジエチルケトン、エチルブチルケトン、トリメチルノナノン、アセトニトリルアセトン、ジメチルオキシド、ホロン、シクロヘキサノン、ダイアセトンアルコール等が挙げられる。また、溶媒の添加量としては、50〜99重量%が好ましく、さらには80〜99重量%が好ましい。溶剤の添加量が多すぎると膜中に欠点が生じやすい傾向があり、少なすぎると得られる分離膜の透水性が低くなる傾向がある。
【0050】
多孔性支持膜と反応液との接触は、多孔性支持膜面上で均一にかつ連続的に行うことが好ましい。具体的には、例えば、反応液をスピンコーター、ワイヤーバー、フローコーター、ダイコーター、ロールコーター、スプレーなどの塗布装置を用いて多孔性支持膜にコーティングする方法があげられる。また多孔性支持膜を、反応液に浸漬する方法を挙げることができる。
【0051】
浸漬させる場合、多孔性支持膜と反応液との接触時間は、0.5〜10分間の範囲内であることが好ましく、1〜3分間の範囲内であるとさらに好ましい。反応液を多孔性支持膜に接触させたあとは、膜上に液滴が残らないように十分に液切りすることが好ましい。十分に液切りすることで、膜形成後に液滴残存部分が膜欠点となって膜性能が低下することを防ぐことができる。液切りの方法としては、反応液接触後の多孔性支持膜を垂直方向に把持して過剰の反応液を自然流下させる方法や、エアーノズルから窒素などの風を吹き付け、強制的に液切りする方法などを用いることができる。また、液切り後、膜面を乾燥させ、反応液の溶媒分の一部を除去することもできる。
【0052】
ケイ素の加水分解性基を縮合させる工程は、多孔性支持膜上に反応液を接触させた後に加熱処理することによって行われる。このときの加熱温度は、多孔性支持膜が溶融し分離膜としての性能が低下する温度より低いことが要求される。縮合反応を速やかに進行させるために通常0℃以上で加熱を行うことが好ましく、20℃以上がより好ましい。また、前記反応温度は、150℃以下が好ましく、100℃以下がより好ましい。反応温度が0℃以上であれば、加水分解および縮合反応が速やかに進行し、150℃以下であれば、加水分解および縮合反応の制御が容易になる。また、加水分解または縮合を促進する触媒を添加することで、より低温でも反応を進行させることが可能である。さらに本発明では分離機能層が細孔を有するよう加熱条件および湿度条件を選定し、縮合反応を適切に行うようにする。
【0053】
(A)のケイ素化合物および(B)のエチレン性不飽和基を有する化合物のエチレン性不飽和基の重合方法としては、熱処理、電磁波照射、電子線照射、プラズマ照射により行うことができる。ここで電磁波とは赤外線、紫外線、X線、γ線などを含む。重合方法は適宜最適な選択をすればよいが、ランニングコスト、生産性などの点から電磁波照射による重合が好ましい。電磁波の中でも赤外線照射や紫外線照射が簡便性の点からより好ましい。実際に赤外線または紫外線を用いて重合を行う際、これらの光源は選択的にこの波長域の光のみを発生する必要はなく、これらの波長域の電磁波を含むものであればよい。しかし、重合時間の短縮、重合条件の制御などのしやすさの点から、これらの電磁波の強度がその他の波長域の電磁波に比べ高いことが好ましい。
【0054】
電磁波は、ハロゲンランプ、キセノンランプ、UVランプ、エキシマランプ、メタルハライドランプ、希ガス蛍光ランプ、水銀灯などから発生させることができる。電磁波のエネルギーは重合できれば特に制限しないが、中でも高効率で低波長の紫外線が薄膜形成性に優れる。このような紫外線は低圧水銀灯、エキシマレーザーランプにより発生させることができる。本発明に係る分離機能層の厚み、形態はそれぞれの重合条件によっても大きく変化することがあり、電磁波による重合であれば電磁波の波長、強度、被照射物との距離、処理時間により大きく変化することがある。そのためこれらの条件は適宜最適化を行う必要がある。
【0055】
重合速度を速める目的で分離機能層形成の際に重合開始剤、重合促進剤等を添加することが好ましい。ここで、重合開始剤、重合促進剤とは特に限定されるものではなく、用いる化合物の構造、重合手法などに合わせて適宜選択されるものである。
【0056】
重合開始剤を以下例示する。電磁波による重合の開始剤としては、ベンゾインエーテル、ジアルキルベンジルケタール、ジアルコキシアセトフェノン、アシルホスフィンオキシドもしくはビスアシルホスフィンオキシド、α−ジケトン(例えば、9,10−フェナントレンキノン)、ジアセチルキノン、フリルキノン、アニシルキノン、4,4’−ジクロロベンジルキノンおよび4,4’−ジアルコキシベンジルキノン、およびショウノウキノンが、例示される。熱による重合の開始剤としては、アゾ化合物(例えば、2,2’−アゾビス(イソブチロニトリル)(AIBN)もしくはアゾビス−(4−シアノバレリアン酸))、または過酸化物(例えば、過酸化ジベンゾイル、過酸化ジラウロイル、過オクタン酸tert−ブチル、過安息香酸tert−ブチルもしくはジ−(tert−ブチル)ペルオキシド)、さらに芳香族ジアゾニウム塩、ビススルホニウム塩、芳香族ヨードニウム塩、芳香族スルホニウム塩、過硫酸カリウム、過硫酸アンモニウム、アルキルリチウム、クミルカリウム、ナトリウムナフタレン、ジスチリルジアニオンが例示される。なかでもベンゾピナコールおよび2,2’−ジアルキルベンゾピナコールは、ラジカル重合のための開始剤として特に好ましい。
【0057】
過酸化物およびα−ジケトンは、開始を加速するために、好ましくは、芳香族アミンと組み合わせて使用される。この組み合わせはレドックス系とも呼ばれる。このような系の例としては、過酸化ベンゾイルまたはショウノウキノンと、アミン(例えば、N,N−ジメチル−p−トルイジン、N,N−ジヒドロキシエチル−p−トルイジン、p−ジメチル−アミノ安息香酸エチルエステルまたはその誘導体)との組み合わせである。さらに、過酸化物を、還元剤としてのアスコルビン酸、バルビツレートまたはスルフィン酸と組み合わせて含有する系もまた好ましい。
【0058】
次いで、これを約100〜200℃で加熱処理すると重縮合反応が起こり、多孔性支持膜表面にシランカップリング剤由来の分離機能層が形成された本発明に係る分離膜を得ることができる。加熱温度は多孔性支持膜の素材にもよるが、高すぎると溶解が起こり多孔性支持膜の細孔が閉塞するため、複合半透膜の造水量が低下する。一方低すぎた場合には、重縮合反応が不十分となり機能層の溶出により除去率が低下するようになる。
【0059】
なお上記の製造方法において、シランカップリング剤とエチレン性不飽和基を1個以上有する化合物とを高分子量化する工程は、シランカップリング剤の重縮合工程の前に行っても良いし、後に行っても良い。また、同時に行っても良い。
【0060】
このようにして得られた複合半透膜はこのままでも使用できるが、使用する前に例えばアルコール含有水溶液、アルカリ水溶液によって膜の表面を親水化させることが好ましい。
【0061】
分離機能層の厚みとしては限定されないが、分離性能と透過性能の点で5〜3000nmであることが好ましい。特に逆浸透膜、正浸透膜、ナノろ過膜では5〜300nmであることが好ましい。
【0062】
分離機能層の厚みは、これまでの分離膜の膜厚測定法に準ずることができ、例えば分離膜を樹脂による包埋後に、超薄切片を作製し、染色などの処理を行った後に、透過型電子顕微鏡により観察することで測定することができる。主な測定法としては、分離機能層がひだ構造を有する場合、多孔性支持膜より上に位置するひだ構造の断面長さ方向に50nm間隔で測定し、ひだの数を20個測定し、その平均から求めることができる。
【0063】
本発明において多孔性支持膜を用いる場合、分離膜としての性能を保持しつつ分離機能層を支持する膜として用いることができる。
【0064】
多孔性支持膜に使用する材料やその形状は特に限定されないが、例えば基材に多孔性支持体を形成した膜を例示することができる。多孔性支持体の素材としては、ポリスルホン、酢酸セルロース、ポリ塩化ビニル、エポキシ樹脂あるいはそれらを混合、積層したものが使用され、化学的、機械的、熱的に安定性が高く、孔径が制御しやすいポリスルホンを使用することが好ましい。
【0065】
例えば、上記ポリスルホンのN,N−ジメチルホルムアミド(以降、DMFと記載)溶液を、後述する基材、例えば密に織ったポリエステル布あるいは不織布の上に一定の厚さに注型し、それを水中で湿式凝固させることによって、製造することができる。
【0066】
本発明に使用する多孔性支持膜は、”オフィス・オブ・セイリーン・ウォーター・リサーチ・アンド・ディベロップメント・プログレス・レポート”No.359(1968)に記載された方法に従って、上述した形態を得るためにポリマー濃度、溶媒の温度、貧溶媒を調整し、製造することができる。例えば、所定量のポリスルホンをDMFに溶解し、所定濃度のポリスルホン樹脂溶液を調製する。次いで、このポリスルホン樹脂溶液をポリエステル布あるいは不織布からなる基材上に略一定の厚さに塗布した後、一定時間空気中で表面の溶媒を除去した後、凝固液中でポリスルホンを凝固させることによって得ることが出来る。この時、凝固液と接触する表面部分などは溶媒のDMFが迅速に揮散するとともにポリスルホンの凝固が急速に進行し、DMFの存在した部分を核とする微細な連通孔が生成される。
【0067】
また、上記の表面部分から基材側へ向かう内部においては、DMFの揮散とポリスルホンの凝固は表面に比べて緩慢に進行するので、DMFが凝集して大きな核を形成しやすく、したがって、生成する連通孔が大径化する。勿論、上記の核生成の条件は、膜表面からの距離によって徐々に変化するので、明確な境界のない、滑らかな孔径分布を有する支持膜が形成されることになる。本発明は、この形成工程において用いるポリスルホン樹脂溶液ポリスルホン樹脂溶液の温度やポリスルホンの濃度、塗布を行う雰囲気の相対湿度、塗布してから凝固液に浸漬するまでの時間、凝固液の温度や組成等を調節することにより平均空隙率と平均孔径を制御したポリスルホン膜を得ることができる。
【0068】
多孔性支持膜としては、分離膜に機械的強度を与え、イオン等の分子サイズの小さな成分に対して分離膜のような分離性能を有さないものであれば、孔のサイズや分布は特に限定されないが、例えば、均一で微細な孔、あるいは分離機能層が形成される側の表面からもう一方の面まで徐々に大きな微細孔をもち、かつ、分離機能層が形成される側の表面で原子間力顕微鏡、電子顕微鏡などを用いて表面から測定された細孔の投影面積円相当径が1nm以上100nm以下であるような多孔性支持膜が好ましく使用される。特に界面重合反応性、分離機能膜の保持性の点で3〜50nmの投影面積円相当径を有することが好ましい。
【0069】
多孔性支持膜の厚みは特に限定されないが、分離膜の強度、分離膜の高低差を形成させる点、原液および透過液流路の形態安定性の点で、20〜500μmの範囲にあることが好ましく、より好ましくは30〜300μmである。
【0070】
多孔性支持膜の形態は、走査型電子顕微鏡や透過型電子顕微鏡、原子間顕微鏡により観察できる。例えば走査型電子顕微鏡で観察するのであれば、基材から多孔質支持体を剥がした後、これを凍結割断法で切断して断面観察のサンプルとする。このサンプルに白金または白金−パラジウムまたは四塩化ルテニウム、好ましくは四塩化ルテニウムを薄くコーティングして3〜6kVの加速電圧で、高分解能電界放射型走査電子顕微鏡(UHR−FE−SEM)で観察する。高分解能電界放射型走査電子顕微鏡は、日立製S−900型電子顕微鏡などが使用できる。得られた電子顕微鏡写真から多孔性支持膜の膜厚や表面の投影面積円相当径を決定する。支持膜の厚み、孔径は、平均値であり、支持膜の厚みは、断面観察で厚み方向に直交する方向に20μm間隔で測定し、20点測定の平均値である。また、孔径は、孔を200個カウントし、各投影面積円相当径の平均値である。
【0071】
さらに分離膜の強度、寸法安定性、凹凸形成能の点で、基材を用いてもよい。基材としては、特に限定されないが、分離膜の分離、透過性能を保持しつつ、適度な機械強度を与え、分離膜表面の高低差を制御する点で、繊維状基材が好ましく用いられる。
【0072】
繊維状基材としては、ポリオレフィン、ポリエステル、セルロースなどが用いられるが、分離膜の高低差を形成させる点、形態保持性の点でポリオレフィン、ポリエステルが好ましい。また、基材としては、複数の素材を混合させたものも使用することができる。
【0073】
本発明では、テレスコープ防止板8を必要としない長期安定性に優れたスパイラル型分離膜エレメント1を形成するために、図6、図7に示す通り分離膜ユニット7の表面(原液側)のにおいて、有孔集水管2の長手方向の両側の帯状端部のうちの少なくとも片側の帯状端部に投影面積比が0を超えて1未満となるように樹脂10が配置されることが必須である。特にテレスコープ現象を防止しながら、原液の流動抵抗を減らし、流路を安定に形成させる点では、投影面積比は0.005以上0.6以下であることが好ましく、さらに好ましくは0.01以上0.3以下である。
【0074】
塗布する範囲は、封筒状に折り畳んだ分離膜ユニット7の表面の有孔集水管2の長手方向の両側の帯状端部、片側の帯状端部のどちらでも良い。塗布幅、すなわち帯状端部の幅は端部から10.0mm以上100.0mm以下であることが好ましく、より好ましくは5.0mm以上70.0mm以下である。
【0075】
帯状端部に配置される樹脂10の配置パターンとしては連続であっても不連続構造であってもよい。ここで言う連続とは、ネット、フィルムなどのように投影した際に構成素材が連続的に形成される従来のものを意味する。一方、不連続とは、帯状端部において、少なくとも不連続となる部分を有することを意味し、例えば、ドット状、ストライプ状などのように素材同士が不連続に配置されるものを意味する。配置パターンとしてより好ましくは、ドット状、ストライプ状であり、特に好ましくはドット状である。ドット状の場合、高さは0.1mm以上2.0mm以下、径は0.1mm以上5.0mm以下、間隔は0.2mm以上20.0mm以下の千鳥、もしくは格子状が好ましい。より好ましくは、高さ0.2mm以上1.0mm以下、径0.5mm以上1.0mm以下、間隔1.0mm以上15.0mm以下の千鳥、もしくは格子状である。
【0076】
また樹脂10は、ポリオレフィン、変性ポリオレフィン、ポリエステル、ポリアミド、ウレタン、エポキシ樹脂などの熱可塑性樹脂が好ましいが、特に加工性と費用の点から、エチレン酢酸ビニル共重合樹脂などのポリオレフィン樹脂やポリエステル樹脂がより好ましく、特に好ましくは100℃以下での加工が可能なエチレン酢酸ビニル共重合樹脂などのポリオレフィン樹脂やポリエステル樹脂である。
【0077】
樹脂10の塗布方法は、分離膜ユニット7の表面の帯状端部に目的のパターンで配置できる方法であれば特に限定されないが、例えばノズル法、スクリーン法、グラビア法等が挙げられる。
【0078】
樹脂10の塗布工程としては特に限定されないが、分離膜を作製する前の段階で支持膜を加工する工程、支持膜、基材を積層した積層体を加工する工程、分離膜を加工する工程で塗布する方法を好適に採用することができる。
【0079】
ここで、帯状端部に塗布した樹脂の投影面積比とは、樹脂を塗布した分離膜の帯状端部の部分を1cm×5cm(端部が5cm)で切り出し、市販の顕微鏡画像解析装置を用い、樹脂を分離膜表面上部から投影した時に得られる投影面積を切り出し面積で割った値として求めることができる。
【0080】
本発明における原液流路材4としては、分離性能、透過性能、原液流路形成の点で、分離膜ユニット7表面(原液側)に投影面積比が0.03以上0.6以下の連続異素材からなる流路材が用いられる。ここで、「連続異素材」の異素材とは、分離膜で使用される材料とは異なる組成、大きさを有する材料を意味する。従って、分離機能層、多孔性支持体、基材を構成成分とする分離膜中のいずれの素材とも異なる組成物、径、形状のいずれかを満足するものであれば特に限定されない。さらに、連続異素材の連続とは、ネット、フィルムなどのように投影した際に構成素材が連続的に形成される従来のものを意味する。異素材の材質としてはポリオレフィン、変性ポリオレフィン、ポリエステル、ポリアミド、ウレタン、エポキシ樹脂などが好ましいが、原液側流路形成能力に優れる異素材であり、かつ上記投影面積比を満たすものであれば特に限定されない。
【0081】
形成方法としては特に限定されないが、連続形状の場合、あらかじめ加工しておいた流路材を分離膜の表側に積層する方法が用いられる。
【0082】
ここで、原液流路材の投影面積比とは、異素材からなる原液流路材を5cm×5cmで切り出し、市販の顕微鏡画像解析装置を用い、原液流路材を分離膜表面上部から投影した時に得られる投影面積を切り出し面積で割った値として求めることができる。
【0083】
本発明における透過液流路材6としては、分離膜裏面(透過流体側)に投影面積比が0を超えて1未満の異素材からなる流路材が用いられる。特に透過液の流動抵抗を減らし、流路を安定に形成させる点では、投影面積比が0.1以上0.8以下であることが好ましく、さらに好ましくは0.1以上0.7以下である。
【0084】
ここで、透過液流路材6の投影面積比とは、分離膜と異素材からなる透過液流路材を5cm×5cmで切り出し、市販の顕微鏡画像解析装置を用い、透過液流路材を分離膜裏面上部から投影した時に得られる投影面積を切り出し面積で割った値として求めることができる。
【0085】
異素材とは、分離膜で使用される材料とは異なる組成、大きさを有する材料を意味する。従って、分離機能層、多孔性支持体、基材を成形し、高低差を付与した際の分離膜中のいずれの素材とも異なる組成物、径、形状のいずれかを満足するものであれば特に限定されない。さらに、異素材は連続であっても不連続構造であってもよい。ここで言う連続とは、ネット、フィルムなどのように投影した際に構成素材が連続的に形成される従来のものを意味する。一方、不連続とは、エレメントを形成するリーフ表面において、少なくとも不連続となる部分を有することを意味し、例えば、粒状、線状などのように素材同士が不連続に配置されるものを意味する。本願発明は、透過側流路形成に優れる異素材を配置させることを特徴としており、上記投影面積比を設けるものであれば特に限定されない。
【0086】
異素材を用いた透過液流路材6とすることにより、透過液流路を安定に形成させるだけでなく、従来の編み状物であるトリコットとは異なる形態、素材を使用することも可能とする。
【0087】
例えば、目の粗いネット状物、棒状、円柱状、ドット状物、発泡物、粉末状物、それらの組み合わせなどが使用することができる。組成としては特に限定されないが、耐薬品性の点で、ポリエチレン、ポリポリプロピレンなどのポリオレフィンや共重合ポリオレフィンなどが好ましく、ウレタン、エポキシなどのポリマーを使用することもできる。
【0088】
形成方法としては特に限定されないが、連続形状の場合、あらかじめ加工しておいた流路材を分離膜の裏側に積層する方法が好ましく、不連続形状の場合、分離膜の裏側に直接異素材を、ホットメルトドット加工、印刷、噴霧などの不連続状物を配置させる方法が用いられる。
【0089】
次に、本発明のスパイラル型分離膜エレメントについて説明する。
【0090】
図5は本発明のスパイラル型分離膜エレメントの端面図、図6は図5のスパイラル型分離膜エレメントを巻囲する前の展開図である。
【0091】
本発明のスパイラル型分離膜エレメント1は、複数の集水孔3を備えた有孔中空管からなる集水管2の外周面に、折り畳んだ分離膜5、原液流路材4および透過液流路材6からなる複数の素材群を重ね合わせて巻回することにより構成されており、さらに、図5、図6に示すように分離膜5の表面端部(原液側)には樹脂10が帯状に配置されている。透過液流路材6を介して背中合わせとなる各2枚の分離膜5の両端部をウレタン樹脂、エポキシ樹脂等の樹脂からなる接着剤9で互いに接着することにより複数の封筒状分離膜ユニット7が形成されている。封筒状分離膜ユニット7の内部は、集水管2の内部に連通している。
【0092】
次に、本発明のスパイラル型分離膜エレメントの製造方法について説明する。
【0093】
本発明のスパイラル型分離膜エレメントの製造方法は限定されないが、ポリアミド分離機能層を多孔性支持膜、基材に積層し、分離膜を得た後に原液流路材、透過液流路材を配置してエレメントを製造する代表的な方法について述べる。なお、分離膜の表面の帯状端部に樹脂を配置する加工工程などは、前述したように分離膜製膜工程の前、途中、後のいずれにおいても取り入れることが可能である。
【0094】
多孔性支持膜と基材を複合した後、多孔性支持膜に多官能アミン水溶液を塗布し、余分なアミン水溶液をエアーナイフなどで除去した後、多官能酸ハロゲン化物含有溶液を塗布し、ポリアミド分離機能層を形成させる。有機溶媒は、水と非混和性であり、かつ多官能酸ハロゲン化物を溶解し、多孔性支持膜を破壊しないものが望ましく、多官能アミン化合物および多官能酸ハロゲン化物に対して不活性であるものであればよい。好ましい例として、n−ヘキサン、n−オクタン、n−デカンなどの炭化水素化合物が挙げられる。さらに、必要に応じて分離性能、透過性能を高めるべく、塩素、酸、アルカリ、亜硝酸などの化学処理、洗浄処理、分離膜の水分を低減すべく乾燥処理等を施し分離膜を得る。続いて、該シート表面(原液側)の帯状端部にホットメルトドット加工により1cm間隔で直径1mmφ、高さ400μmのエチレン酢酸ビニル共重合樹脂製ドットを千鳥状に配置する。さらに、従来のエレメント製作装置を用いてネットを原液側、トリコットを透過液側に配置させ、リーフ数7枚、リーフ有効面積9.1mの4インチエレメントを作製後、最後にエレメントの端面部分をラジエーションヒーター等でエチレン酢酸ビニル共重合樹脂の軟化点付近まで加熱し、樹脂を溶融することで原液側の分離膜の端部同士を固着する。エレメント作製方法としては、参考文献(特公昭44−14216号公報、特公平4−11928号公報、特開平11−226366号公報)に記載される方法を用いることができる。
【0095】
このように製造される本発明の分離膜エレメントは、さらに、直列または並列に接続して圧力容器に収納した分離膜モジュールとすることもできる。
【0096】
また、上記の分離膜エレメント、モジュールは、それらに流体を供給するポンプや、その流体を前処理する装置などと組み合わせて、流体分離装置を構成することができる。この分離装置を用いることにより、例えば原水を飲料水などの透過水と膜を透過しなかった濃縮水とに分離して、目的にあった水を得ることができる。
【0097】
流体分離装置の操作圧力は高い方が除去率は向上するが、運転に必要なエネルギーも増加すること、また、膜エレメントの供給流路、透過流路の保持性を考慮すると、膜モジュールに被処理水を透過する際の操作圧力は、0.2MPa以上、5MPa以下が好ましい。供給水温度は、高くなると塩除去率が低下するが、低くなるにしたがい膜透過流束も減少するので、3℃以上、60℃以下が好ましい。
【0098】
本発明に係る膜エレメントによって処理される流体は特に限定されないが、水処理に使用する場合、原水としては、海水、かん水、排水等の500mg/L〜100g/LのTDS(Total Dissolved Solids:総溶解固形分)を含有する液状混合物が挙げられる。一般に、TDSは総溶解固形分量を指し、「質量÷体積」あるいは「重量比」で表される。定義によれば、0.45ミクロンのフィルターで濾過した溶液を39.5〜40.5℃の温度で蒸発させ残留物の重さから算出できるが、より簡便には実用塩分(S)から換算する。
【実施例】
【0099】
以下に実施例によって本発明をさらに詳細に説明するが、本発明はこれらの実施例によってなんら限定されるものではない。
【0100】
(分離膜表面の帯状端部に塗布した樹脂の投影面積比)
樹脂を塗布した分離膜端部を1cm×5cm(端部が5cm)で切り出し、レーザー顕微鏡(倍率10〜500倍程度の中から選択)を用い、ステージを移動させて、全投影面積を測定した。塗布した樹脂の膜表面から投影した時に得られる投影面積を切り出し面積で割った値を投影面積比とした。
【0101】
(原液流路材、透過液流路材の投影面積比)
分離膜と連続異素材からなる原液流路材、または異素材からなる透過液流路材を5cm×5cmで切り出し、レーザー顕微鏡(倍率10〜500倍程度の中から選択)を用い、ステージを移動させて、原液流路材または透過液流路材の全投影面積を測定した。原液流路材または透過液流路材を膜表面または裏面上部から投影した時に得られる投影面積を切り出し面積で割った値を投影面積比とした。
【0102】
(脱塩率(TDS除去率))
10本のエレメントに対し、原水500mg/L食塩、運転圧力0.75MPa、運転温度25℃、pH7で3時間×10回運転(回収率15%)後の性能をそれぞれ測定し、その平均を求めた。
TDS除去率(%)=100×{1−(透過水中のTDS濃度/供給水中のTDS濃度)}。
【0103】
(造水量)
10本のエレメントに対し、原水500mg/L食塩、運転圧力0.75MPa、運転温度25℃、pH7で3時間×10回運転(回収率15%)後の性能をそれぞれ測定し、その平均を求めた。
【0104】
供給水(かん水)の膜エレメント透過水量を、膜エレメントあたり、1日あたりの透水量(立方メートル)を造水量(m/日)として表した。
【0105】
(テレスコープによる膜飛び出し長)
10本のエレメントに対し、原水500mg/L食塩、運転圧力0.75MPa、運転温度25℃、pH7で3時間×10回運転(回収率15%)後のスパイラル型分離膜エレメントの濃縮水出口側端面からのテレスコープ現象による膜飛び出し長をそれぞれ測定し、その平均を求めた。
【0106】
(実施例1)
ポリエステル繊維からなる不織布(糸径:1デシテックス、厚み:約98μm、通気度:0.9cc/cm/sec)上にポリスルホンの16.0重量%、ジメチルホルムアミド(DMF)溶液を180μmの厚みで室温(25℃)でキャストし、ただちに純水中に浸漬して5分間放置することによって繊維補強ポリスルホン支持膜からなる多孔性支持膜(厚さ135μm)ロールを作製した。
【0107】
その後に、多孔性支持膜ロールを巻きだし、ポリスルホン表面に、m−PDA1.8重量%、ε−カプロラクタム4.5重量%の水溶液中を塗布し、エアーノズルから窒素を吹き付け支持膜表面から余分な水溶液を取り除いた後、トリメシン酸クロリド0.06重量%を含む25℃のn−ヘキサン溶液を表面が完全に濡れるように塗布した。その後、膜から余分な溶液をエアーブローで除去し、50℃の熱水で洗浄して、2%のグリセリン水溶液に1分浸漬した後、100℃の熱風オーブンで3分間処理し、半乾燥状態の分離膜ロールを得た。
【0108】
次に、エチレン酢酸ビニル共重合樹脂(701A)をホットメルトし、分離膜ロールの分離膜表面(原液側)端部両側に対して、7.0mm間隔で直径1.0mmφ、高さ400μmのドットを幅50mmで格子状に塗布した。その後に、透過液流路材としてトリコット(厚み:300μm、溝幅:200μm、畦幅:300μm、溝深さ:105μm)を連続的に分離膜裏側に積層し、折り畳み断裁加工により分離膜と透過液流路材を配置させたリーフ状分離膜ユニットを、分離膜エレメントでの有効面積が9.1mになるように、幅930mmで7枚作製した。続いて、分離膜ユニットと原水側流路材としてネット(厚み:900μm、ピッチ:3mm×3mm)を交互に積層した。
【0109】
その後、分離膜ユニットと原水側流路材の積層体を集水管に巻き付けながら7枚のリーフ状物をスパイラル状に巻き付けた分離膜エレメントを作製し、外周にフィルムを巻き付け、テープで固定後、端部を120℃で1分加熱し、さらにエッジカットを行い、4インチエレメントを作製した。該エレメントを圧力容器に入れて、原水500mg/L食塩、運転圧力0.75MPa、運転温度25℃、pH7で3時間×10回運転(回収率14.8%)したところ、脱塩率99.3%、造水量10.4m/日であり、テレスコープによる膜の飛び出しは見られなかった。
【0110】
【表1】

【0111】
(実施例2〜4)
実施例2ではドット加工の位置を端部片側のみに実施する以外は、実施例1と同様の方法でエレメントを作製し評価を行ったところ、脱塩率99.4%、造水量10.1m/日であり、テレスコープによる変形は見られなかった。
【0112】
実施例3ではドット加工を3.0mm間隔で直径1.0mmφ、高さ800μmのドットを幅30mmで塗布する以外は、実施例1と同様の方法でエレメントを作製し評価を行ったところ、脱塩率99.3%、造水量10.2m/日であり、テレスコープによる膜の飛び出しは見られなかった。
【0113】
実施例4では透過液流路材としてシート状分離膜の裏側にエチレン酢酸ビニル共重合樹脂(701D)をホットメルトし、1.5mm間隔で直径1.0mmφ、高さ150μmのドット加工を行う以外は、実施例1と同様の方法でエレメントを作製し評価を行ったところ、脱塩率99.2%、造水量10.3m/日であり、テレスコープによる膜の飛び出しは見られなかった。
【0114】
(比較例1)
分離膜表面端部へのドット加工と端部の120℃・1分加熱を行わない以外は、実施例1と同様の方法でエレメントを作製し評価を行ったところ、脱塩率96.9%、造水量10.1m/日であり、テレスコープによる膜の飛び出し長は2.5mmであった。
【0115】
(比較例2)
分離膜表面端部へのドット加工と端部の120℃・1分加熱を行わない以外は、実施例4と同様の方法でエレメントを作製し評価を行ったところ、脱塩率96.3%、造水量9.9m/日であり、テレスコープによる膜の飛び出し長は3.1mmであった。
【0116】
(参考例1)
実施例1で分離膜表面端部へのドット加工と端部の120℃・1分加熱を行わず、エッジカット後に端板を取りつけ、フィラメントワインディングを行い、同様の方法でエレメントの評価を行ったところ、脱塩率99.3%、造水量10.2m/日であり、テレスコープによる膜の飛び出しは見られなかった。
【0117】
(参考例2)
実施例4で分離膜表面端部へのドット加工と端部の120℃・1分加熱を行わず、エッジカット後に端板を取りつけ、フィラメントワインディングを行い、同様の方法でエレメントの評価を行ったところ、脱塩率99.2%、造水量10.4m/日であり、テレスコープによる膜の飛び出しは見られなかった。
【符号の説明】
【0118】
1 スパイラル型分離膜エレメント
2 集水管
3 集水孔
4 原液流路材
5 分離膜
6 透過液流路材
7 分離膜ユニット
8 テレスコープ防止板
9 接着剤
10 樹脂
31 原液
32 透過液
33 濃縮液

【特許請求の範囲】
【請求項1】
分離膜を重ね合わせて接着された封筒状膜の中に透過液流路材を備えた分離膜ユニットおよび原液流路材を有孔集水管の周りにスパイラル状に巻囲してなるスパイラル型分離膜エレメントであって、分離膜ユニットの表面における有孔集水管の長手方向の両側の帯状端部のうちの少なくとも片側の帯状端部の投影面積比が0を超えて1未満となるように樹脂が配置されることを特徴とするスパイラル型分離膜エレメント。
【請求項2】
投影面積比が0.01以上0.3以下である請求項1に記載のスパイラル型分離膜エレメント。
【請求項3】
帯状端部に配置される樹脂のパターンがドット状であることを特徴とする請求項1または2に記載のスパイラル型分離膜エレメント。
【請求項4】
分離膜を重ね合わせて接着された封筒状分離膜の中に透過液流路材を備えた分離膜ユニットおよび原液流路材を有孔集水管の周りにスパイラル状に巻囲するスパイラル型分離膜エレメントの製造方法であって、分離膜ユニットの表面における有孔集水管の長手方向の両側の帯状端部のうちの少なくとも片側の帯状端部の投影面積比が0を超えて1未満となるように樹脂を配置することを特徴とするスパイラル型分離膜エレメントの製造方法。

【図1】
image rotate

【図2】
image rotate

【図3】
image rotate

【図4】
image rotate

【図5】
image rotate

【図6】
image rotate

【図7】
image rotate


【公開番号】特開2012−139615(P2012−139615A)
【公開日】平成24年7月26日(2012.7.26)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−292163(P2010−292163)
【出願日】平成22年12月28日(2010.12.28)
【出願人】(000003159)東レ株式会社 (7,677)
【Fターム(参考)】