説明

スパイラル型膜エレメント及びこれを備えたスパイラル型膜濾過装置

【課題】使用する電力を良好に回収することができるスパイラル型膜エレメント及びこれを備えたスパイラル型膜濾過装置を提供する。
【解決手段】液体を用いて発電を行う発電部(コイル25など)と、上記発電部から供給される電力を有線又は無線で出力する電力出力部39とを備える。これにより、液体(原水、透過水又は濃縮水)を用いて発電部で発電される電力を電力出力部39から有線又は無線で出力することができる。したがって、上記電力出力部39から出力された電力を外部に設けられた電気部品で使用したり、外部に設けられた蓄電部に蓄積したりすることができるので、使用する電力を良好に回収することができる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、分離膜と供給側流路材と透過側流路材とが積層された状態で中心管の周囲にスパイラル状に巻回され、上記供給側流路材により形成される原液流路を介して供給される原液から上記分離膜により濾過された透過液が、上記透過側流路材を介して上記中心管に導かれるスパイラル型膜エレメント及びこれを備えたスパイラル型膜濾過装置に関するものである。
【背景技術】
【0002】
上記スパイラル型膜エレメント(以下、単に「膜エレメント」という。)を一直線上に複数配置するとともに、隣接する膜エレメントの上記中心管同士をインターコネクタ(連結部)で連結することにより構成されるスパイラル型膜濾過装置(以下、単に「膜濾過装置」という。)が知られている。このようにして連結された複数の膜エレメントは、例えば樹脂により形成された外筒内に収容され、1本の膜濾過装置として取り扱われる(例えば、特許文献1参照)。
【0003】
この種の膜濾過装置は、一般的に、排水や海水などの原水(原液)を濾過して、浄化された透過水(透過液)を得るために用いられる。特に大型のプラントなどでは、多数本の膜濾過装置がトレーンと呼ばれるラックで保持され、例えば1日に10000トン程度の原水を処理するような大型のプラントでは、1000本以上の膜濾過装置が使用される。
【0004】
【特許文献1】特表2007−527318号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
上記のような膜濾過装置を用いて原水を処理する場合、その処理コストの大部分は使用する電力が占めている。特に、上記のような大型のプラントでは、原水を処理するために莫大な電力が必要となる。したがって、使用する電力を良好に回収することができれば、処理コストを低減することも可能である。
【0006】
本発明は、上記実情に鑑みてなされたものであり、使用する電力を良好に回収することができるスパイラル型膜エレメント及びこれを備えたスパイラル型膜濾過装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
第1の本発明に係るスパイラル型膜エレメントは、分離膜と供給側流路材と透過側流路材とが積層された状態で中心管の周囲にスパイラル状に巻回され、上記供給側流路材により形成される原液流路を介して供給される原液から上記分離膜により濾過された透過液が、上記透過側流路材を介して上記中心管に導かれるスパイラル型膜エレメントであって、液体を用いて発電を行う発電部と、上記発電部から供給される電力を有線又は無線で出力する電力出力部とを備えたことを特徴とする。
【0008】
このような構成によれば、液体を用いて発電部で発電される電力を電力出力部から有線又は無線で出力することができる。したがって、上記電力出力部から出力された電力を外部に設けられた電気部品で使用したり、外部に設けられた蓄電部に蓄積したりすることができるので、使用する電力を良好に回収することができる。
【0009】
第2の本発明に係るスパイラル型膜エレメントは、分離膜と供給側流路材と透過側流路材とが積層された状態で中心管の周囲にスパイラル状に巻回され、上記供給側流路材により形成される原液流路を介して供給される原液から上記分離膜により濾過された透過液が、上記透過側流路材を介して上記中心管に導かれるスパイラル型膜エレメントであって、液体を用いて発電を行う発電部と、上記発電部から供給される電力を蓄積する蓄電部とを備えたことを特徴とする。
【0010】
このような構成によれば、液体を用いて発電部で発電される電力を蓄電部に蓄積しておくことができるので、使用する電力を良好に回収することができ、当該電力を用いてスパイラル型膜エレメントに備えられている各部を動作させることができる。
【0011】
第3の本発明に係るスパイラル型膜エレメントは、上記発電部が、上記液体の流圧により発電を行うことを特徴とする。
【0012】
このような構成によれば、スパイラル型膜エレメント内を液体が流れているときに、当該液体の流圧により効率よく発電を行うことができる。
【0013】
第4の本発明に係るスパイラル型膜エレメントは、上記液体の流圧により回転する回転体を備え、上記発電部が、上記回転体の回転に基づいて発電を行うことを特徴とする。
【0014】
このような構成によれば、スパイラル型膜エレメント内を液体が流れているときに、当該液体の流圧により回転体が回転し、その回転に基づいて発電部で発電が行われる。したがって、上記液体の流圧により回転する回転体を設けるといった簡単な構成で、効率よく発電を行うことができる。
【0015】
第5の本発明に係るスパイラル型膜エレメントは、上記回転体が、上記中心管内に設けられていることを特徴とする。
【0016】
このような構成によれば、中心管内を透過液が流れているときに、当該液体の流圧により回転体が回転し、その回転に基づいて発電部で発電が行われる。したがって、中心管内に回転体を設けるといった簡単な構成で、効率よく発電を行うことができる。
【0017】
第6の本発明に係るスパイラル型膜エレメントは、上記回転体が、上記原液流路内に設けられていることを特徴とする。
【0018】
このような構成によれば、原液流路内を原液が流れているときに、当該液体の流圧により回転体が回転し、その回転に基づいて発電部で発電が行われる。したがって、原液流路内に回転体を設けるといった簡単な構成で、効率よく発電を行うことができる。また、一般的に、原液流路内を流れる原液は、中心管内を流れる透過液よりも流圧が大きいため、原液流路内に回転体を設けることによって、より効率よく発電を行うことができる。
【0019】
第7の本発明に係るスパイラル型膜濾過装置は、上記スパイラル型膜エレメントを備えたことを特徴とする。
【0020】
このような構成によれば、液体を用いて発電部で発電される電力を電力出力部から有線又は無線で出力することができる。したがって、上記電力出力部から出力された電力を外部に設けられた電気部品で使用したり、外部に設けられた蓄電部に蓄積したりすることができるので、使用する電力を良好に回収することができる。
【発明の効果】
【0021】
本発明によれば、液体を用いて発電部で発電される電力を電力出力部から有線又は無線で出力することができるので、使用する電力を良好に回収することができる。また、本発明によれば、液体を用いて発電部で発電される電力を蓄電部に蓄積しておくことができるので、使用する電力を良好に回収することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0022】
<第1実施形態>
図1は、本発明の第1実施形態に係るスパイラル型膜エレメント10が備えられたスパイラル型膜濾過装置50の一例を示した概略断面図である。また、図2は、図1のスパイラル型膜エレメント10の内部構成を示した斜視図である。このスパイラル型膜濾過装置50(以下、単に「膜濾過装置50」という。)は、スパイラル型膜エレメント(以下、単に「膜エレメント10」という。)を外筒40内に一直線上に複数配置することにより構成されている。
【0023】
外筒40は、耐圧ベッセルと呼ばれる樹脂製の筒体であり、例えばFRP(Fiberglass Reinforced Plastics)により形成される。外筒40の一端部には、排水や海水などの原水(原液)が流入する原水流入口48が形成されており、当該原水流入口48から流入する原水が複数の膜エレメント10で濾過されることにより、浄化された透過水(透過液)と、濾過後の原水である濃縮水(濃縮液)とが得られる。外筒40の他端部には、透過水が流出する透過水流出口46と、濃縮水が流出する濃縮水流出口44とが形成されている。
【0024】
図2に示すように、膜エレメント10は、分離膜12と供給側流路材18と透過側流路材14とが積層された状態で中心管20の周囲にスパイラル状に巻回されることにより形成されたRO(Reverse Osmosis:逆浸透)エレメントである。
【0025】
より具体的には、樹脂製の網状部材からなる矩形形状の透過側流路材14の両面に、同一の矩形形状からなる分離膜12が重ね合わせられるとともに、その3辺が接着されることにより、1辺に開口部を有する袋状の膜部材16が形成される。そして、この膜部材16の開口部が中心管20の外周面に取り付けられ、樹脂製の網状部材からなる供給側流路材18とともに中心管20の周囲に巻回されることにより、上記膜エレメント10が形成される。上記分離膜12は、例えば不織布層上に多孔性支持体及びスキン層(緻密層)が順次に積層されることにより形成される。
【0026】
上記のようにして形成された膜エレメント10の一端側から原水を供給すると、原水スペーサとして機能する供給側流路材18により形成された原水流路を介して、膜エレメント10内を原水が通過する。その際、原水が分離膜12により濾過され、原水から濾過された透過水が、透過水スペーサとして機能する透過側流路材14により形成された透過水流路内に浸透する。
【0027】
その後、透過水流路内に浸透した透過水が、当該透過水流路を通って中心管20側に流れ、中心管20の外周面に形成された複数の通水孔(図示せず)から中心管20内に導かれる。これにより、膜エレメント10の他端側から、中心管20を介して透過水が流出するとともに、供給側流路材18により形成された原水流路を介して濃縮水が流出することとなる。
【0028】
図1に示すように、外筒40内に収容されている複数の膜エレメント10は、隣接する膜エレメント10の中心管20同士が管状のインターコネクタ(連結部)42で連結されている。したがって、原水流入口48から流入した原水は、当該原水流入口48側の膜エレメント10から順に原水流路内に流れ込み、各膜エレメント10で原水から濾過された透過水が、インターコネクタ42により接続された1本の中心管20を介して透過水流出口46から流出する。一方、各膜エレメント10の原水流路を通過することにより透過水が濾過されて濃縮された濃縮水は、濃縮水流出口44から流出する。
【0029】
図3は、中心管20の内部構成の一例を示した概略斜視図であり、内部構成を透視した状態を示している。この例では、中心管20内に、当該中心管20内を流れる透過水の流圧により回転する回転体としての羽根車21が設けられている。ただし、上記回転体は、羽根車21に限らず、各種形状のものを採用することができる。また、中心管20は、例えば直径が20mm〜50mmの円管からなるような構成を採用することができるが、このような構成に限らず、より小径又はより大径の中心管20を採用することも可能である。
【0030】
中心管20内には、その中心軸線に沿って主軸22が配置されており、当該主軸22の両端部が中心管20の両端部において保持部23により保持されている。保持部23は、中心管20の中心軸線に対して放射状に延びる複数本の棒材からなり、これらの棒材間の空間が透過水を流通させるための通水口24を形成している。
【0031】
羽根車21は、それぞれの先端部が中心管20の内周面に近接する位置まで延びる複数枚の羽根21aを有している。したがって、中心管20の一端部の通水口24を介して中心管20内に流入した透過水が、羽根車21の羽根21aに接触しながら中心管20内を流通し、当該中心管20の他端部の通水口24から流出することにより、羽根21aに作用する透過水の流圧によって羽根車21が回転するようになっている。
【0032】
中心管20における羽根車21の周囲には、金属線が巻回されることによりコイル25が形成されている。また、羽根車21の各羽根21aの先端部には、磁石(図示せず)が取り付けられている。このような構成により、羽根車21が回転すると、コイル25の周囲で上記磁石により形成される磁界が変化し、いわゆる電磁誘導によってコイル25に誘導電流が流れるようになっている。すなわち、羽根車21に取り付けられた磁石及びコイル25は、羽根車21の回転に基づいて発電を行う発電部26を構成している。ただし、液体の流圧により回転する回転体を用いて発電を行うような構成としては、上記羽根車21を用いた構成に限らず、特開2006−141155号公報に開示されているような回転式磁石発電機や、特開2000−146639号公報に開示されているような非接触式回転体を用いた構成を採用することにより、良好に発電を行うことができる。
【0033】
図4は、図1のスパイラル型膜濾過装置50の電気的構成を示したブロック図である。この膜濾過装置50は、上記コイル25の他に、AC/DCコンバータ30、バッテリ31、流量センサ32、電導度センサ33、温度センサ34、汚染検知センサ35、通信部36、RFIDタグ37及び電力出力部39などを備えている。
【0034】
膜濾過装置50に備えられた上記各部のうち、コイル25、AC/DCコンバータ30、バッテリ31、流量センサ32、電導度センサ33、温度センサ34、汚染検知センサ35、通信部36及び電力出力部39は、中心管20に取り付けられている。一方、RFIDタグ37は、膜エレメント10の外周面を形成する膜部材16に取り付けられている。ただし、このような構成に限らず、発電部26、AC/DCコンバータ30、バッテリ31、流量センサ32、電導度センサ33、温度センサ34、汚染検知センサ35、通信部36及び電力出力部39などが、膜エレメント10における中心管20以外の部分、例えば膜エレメント10の端部に取り付けられる端部部材(シールキャリア又はテレスコープ防止部材)などに取り付けられた構成であってもよい。また、RFIDタグ37が、膜エレメント10における膜部材16以外の部分、例えば中心管20又は上記端部部材などに取り付けられた構成であってもよい。
【0035】
コイル25に発生する誘導電流は、AC/DCコンバータ30により交流(AC)電流から直流(DC)電流に変換され、バッテリ31に供給される。バッテリ31は二次電池からなり、AC/DCコンバータ30を介して発電部26から供給される電力を蓄積する蓄電部を構成している。このように、膜エレメント10内を流れる液体(この例では、透過水)を用いて発電部26で発電される電力をバッテリ31に蓄積しておくことができるので、使用する電力を良好に回収することができ、当該電力を用いて膜エレメント10に備えられている各部を動作させることができる。
【0036】
バッテリ31に蓄積された電力は、当該膜濾過装置50に備えられた流量センサ32、電導度センサ33、温度センサ34及び汚染検知センサ35といった各種センサの他、通信部36などの他の電気部品にも供給される。上記他の電気部品には、例えばGPS(Global Positioning System)などの位置検知部が含まれていてもよい。
【0037】
流量センサ32、電導度センサ33、温度センサ34及び汚染検知センサ35は、それぞれ中心管20内を流れる透過水の性状を検知するセンサである。より具体的には、流量センサ32は、上記羽根車21を含む構成であって、当該羽根車21の回転数に基づいて、中心管20内を流れる透過水の流量を検知する。言い換えれば、羽根車21に取り付けられた磁石及びコイル25により構成される発電部26は、流量センサ32の羽根車21を用いて発電を行うものである。
【0038】
このような構成によれば、中心管20内を透過水が流れているときに、流量センサ32に備えられた羽根車21が透過水の流圧で回転することにより、その回転数に基づいて当該流量センサ32で透過水の流量を検知することができるとともに、羽根車21の回転に基づいて発電部26で発電を行うことができる。したがって、流量センサ32に備えられた羽根車21を利用して、効率よく発電を行うことができる。
【0039】
電導度センサ33は、中心管20内を流れる透過水の電導度を検知するセンサである。温度センサ34は、中心管20内を流れる透過水の温度を検知するセンサであり、例えば熱電対により構成することができる。汚染検知センサ35は、中心管20内を流れる透過水の汚染状態を検知するセンサである。
【0040】
通信部36は、アンテナ36aを有しており、流量センサ32、電導度センサ33、温度センサ34及び汚染検知センサ35などの各種センサからの検知信号を通信装置38へ無線送信する無線送信部を構成している。通信部36のアンテナ36aは、例えば中心管20に金属線を巻回することにより形成することができる。
【0041】
RFIDタグ37は、データを記憶可能な記憶媒体を備え、電波を用いた非接触通信により、通信装置38との間でデータを送受信することができる無線タグである。このRFIDタグ37は、蓄電部を有するアクティブ型のものであってもよいし、蓄電部を有しておらず、通信装置38からの電波に基づいて電磁誘導を生じることにより電力を得るようなパッシブ型のものであってもよい。
【0042】
RFIDタグ37には、当該RFIDタグ37が取り付けられている膜エレメント10に関するデータを記憶することができる。このRFIDタグ37に記憶されるデータとしては、膜エレメント10の位置情報、膜エレメント10の製造履歴、膜エレメント10の性能データ、又は、膜エレメント10のロードマップデータなどが挙げられる。
【0043】
電力出力部39は、例えば図1に破線で描いた円形領域内に示されるような中心管20の端部に、電極を設けることにより構成することができる。すなわち、上記電極を介して、当該膜濾過装置50の外部に設けられた電気部品や蓄電部などをバッテリ31と有線で電気的に接続することにより、バッテリ31に蓄積されている電力を外部に出力することができる。これにより、電力出力部39から出力された電力を外部に設けられた電気部品で使用したり、外部に設けられた蓄電部に蓄積したりすることができるので、使用する電力を良好に回収することができる。
【0044】
ただし、電力出力部39は、上記のように中心管20の端部に設けられた電極により構成されるものに限らず、膜エレメント10の発電部26で発電された電力を当該膜濾過装置50の外部に出力することができるような構成であれば、他の各種構成を採用することができる。例えば、図1に一点鎖線で描いた円形領域内に示されるような膜エレメント10の外周面に、電極を設けることにより電力出力部39を構成し、当該電極と接触する外筒40を介して、発電部26で発電された電力が当該膜濾過装置50の外部に出力されるような構成であってもよい。
【0045】
また、上記の例では、発電部26から供給される電力が電力出力部39から有線で出力されるような構成について説明したが、このような構成に限らず、発電部26から供給される電力が電力出力部39から無線で出力されるような構成であってもよい。この場合、電力出力部39にアンテナが備えられたような構成であってもよいし、通信部36のアンテナ36aを用いて電力を出力するような構成であってもよい。
【0046】
さらに、上記の例では、バッテリ31に蓄積されている電力が電力出力部39から外部に出力されるような構成について説明したが、このような構成に限らず、発電部26から供給される電力が、バッテリ31のような蓄電部を介さずに直接外部に出力されるような構成であってもよい。この場合、電力出力部39が、発電部26(コイル25)又はAC/DCコンバータ30に対して直接接続された構成であってもよい。
【0047】
<第2実施形態>
第1実施形態では、中心管20内に設けられた回転体(羽根車21)の回転に基づいて発電が行われるような構成について説明した。これに対して、第2実施形態では、供給側流路材18により形成される原水流路内に回転体が設けられている点が異なっている。
【0048】
図5は、本発明の第2実施形態に係るスパイラル型膜エレメント10の内部構成の一例を示した概略斜視図であり、内部構成を透視した状態を示している。この例では、中心管20の周囲に巻回された膜部材16が、中心管20の軸線方向に沿って2つに分割され、これらの分割された膜部材16の端面間に空間27が形成されている。この空間27は、分割された一方の膜部材16内における供給側流路材18により形成された原水流路28から、他方の膜部材16内の原水流路28へと流れる原水が流通する領域であり、上記原水流路28の一部を構成している。
【0049】
上記空間27内には、中心管20に対して回転可能に取り付けられた回転体としての羽根車121が配置されている。この羽根車121は、それぞれの先端部が膜エレメント10の外周面に近接する位置まで延びる複数枚の羽根121aを有している。したがって、分割された一方の膜部材16内の原水流路28から他方の膜部材16内の原水流路28へと流れる原水が、羽根車121の羽根121aに接触しながら空間27内を流通することにより、羽根121aに作用する原水の流圧によって羽根車121が回転するようになっている。
【0050】
分割された各膜部材16の一方又は両方における羽根車121の周囲には、金属線が巻回されることによりコイル125が形成されている。また、羽根車121の各羽根121aの先端部には、磁石(図示せず)が取り付けられている。このような構成により、羽根車121が回転すると、コイル125の周囲で上記磁石により形成される磁界が変化し、いわゆる電磁誘導によってコイル125に誘導電流が流れるようになっている。すなわち、羽根車121に取り付けられた磁石及びコイル125は、羽根車121の回転に基づいて発電を行う発電部126を構成している。
【0051】
このような構成によれば、原水流路28内を原水が流れているときに、羽根車121が原水の流圧で回転し、その回転に基づいて発電部126で発電がおこなわれる。したがって、膜エレメント10内に羽根車121を設けるといった簡単な構成で、効率よく発電を行うことができる。ただし、上記回転体は、羽根車121に限らず、各種形状のものを採用することができる。
【0052】
なお、本実施形態における膜濾過装置50の電気的構成は、図4を用いて説明した第1実施形態に係る膜濾過装置50の電気的構成と同様であるので、ここでは詳細な説明を省略することとする。
【0053】
<第3実施形態>
第2実施形態では、膜エレメント10の中間部に設けられた回転体(羽根車121)の回転に基づいて発電が行われるような構成について説明した。これに対して、第3実施形態では、膜エレメント10の端部に回転体が設けられている点が異なっている。
【0054】
図6は、本発明の第3実施形態に係るスパイラル型膜エレメント10の内部構成の一例を示した概略斜視図であり、内部構成を透視した状態を示している。この例では、中心管20の周囲に巻回された膜部材16における軸線方向の両端部に、外周面にシール部材(図示せず)を保持するシールキャリア、又は、膜部材16がテレスコープ状に変形するのを防止するテレスコープ防止部材として機能する端部部材11が取り付けられている。膜部材16内における供給側流路材18により形成された原水流路28を流れる原水は、これらの端部部材11内を通過するようになっている。
【0055】
端部部材11内には、中心管20に対して回転可能に取り付けられた回転体としての羽根車221が配置されている。この羽根車221は、それぞれの先端部が膜エレメント10の外周面に近接する位置まで延びる複数枚の羽根221aを有している。したがって、膜部材16内の原水流路28に対して流入又は流出する原水が、羽根車221の羽根221aに接触しながら端部部材11内を流通することにより、羽根221aに作用する原水の流圧によって羽根車221が回転するようになっている。
【0056】
各端部部材11に隣接する膜部材16の両端部には、金属線が巻回されることによりコイル225が形成されている。また、羽根車221の各羽根221aの先端部には、磁石(図示せず)が取り付けられている。このような構成により、羽根車221が回転すると、コイル225の周囲で上記磁石により形成される磁界が変化し、いわゆる電磁誘導によってコイル225に誘導電流が流れるようになっている。すなわち、羽根車221に取り付けられた磁石及びコイル225は、羽根車221の回転に基づいて発電を行う発電部226を構成している。
【0057】
なお、図6の例では、膜エレメント10の一端部に取り付けられた端部部材11内にのみ羽根車221を図示するとともに、当該一端部にのみコイル225を図示しており、膜エレメント10の他端部に設けられている羽根車221及びコイル225を省略して示している。ただし、羽根車221及びコイル225は、膜エレメント10の両端部に設けられるような構成に限らず、いずれか一方の端部にのみ設けられるような構成であってもよい。
【0058】
本実施形態のような構成によれば、原水流路28内を原水が流れているときに、羽根車221が原水の流圧で回転し、その回転に基づいて発電部226で発電がおこなわれる。したがって、端部部材11に羽根車221を設けるといった簡単な構成で、効率よく発電を行うことができる。ただし、上記回転体は、羽根車221に限らず、各種形状のものを採用することができる。
【0059】
なお、本実施形態における膜濾過装置50の電気的構成は、図4を用いて説明した第1実施形態に係る膜濾過装置50の電気的構成と同様であるので、ここでは詳細な説明を省略することとする。
【0060】
以上の実施形態では、センサにより検知される液体(原水、透過水又は濃縮水)を用いて発電部26,126,226で発電を行うことによって、効率よく発電を行うことができる。なお、一般的に、原水流路28内を流れる原水は、中心管20内を流れる透過水よりも流圧が大きいため、第2実施形態又は第3実施形態のように原水流路28内に羽根車121,221を設けることによって、第1実施形態の場合よりも効率よく発電を行うことができる。
【0061】
また、以上の実施形態では、膜エレメント10にRFIDタグ37を取り付けることにより、当該RFIDタグ37にデータを予め格納しておき、当該データを外部から読み出すことにより、膜エレメント10の処理特性の管理を行うことができる。したがって、RFIDタグ37に格納されているデータと、上記センサなどの各部で得られるデータとに基づいて、より精度よく管理を行うことができる。
【0062】
以上の実施形態では、羽根車21,121,221などの流量センサ32に備えられた回転体を用いて発電を行うような構成について説明したが、このような構成に限らず、流量センサ32とは別個に設けられた回転体を用いて発電を行うような構成であってもよいし、回転体以外の他の機構を用いて発電を行うような構成であってもよい。上記他の機構としては、中心管20や原水流路28などの膜濾過装置50内を流れる液体から受ける流圧に応じた電圧を発生する圧電素子や歪みゲージなどを挙げることができる。例えば、膜濾過装置50の適切な場所に圧電素子(ピエゾ素子)を設けることにより発電することができる。圧電素子は、設置のしやすさや発電効率の観点から、屈曲性を有するフィルム状であることが好ましい。また、圧電素子は、外筒40(耐圧ベッセル)の内面、膜エレメント10の外装面、中心管20の内部やインターコネクタ42との接続部、外筒40端部の原水流入部分、膜エレメント10端部の膜保持部材、膜濾過装置50の配管内部など、流体の圧力を受けやすい部位や、振動の生じやすい部位に設置することができる。なかでも、電気配線や無線伝送により電力を取り出し、利用する観点からは、外筒40の内面や、膜エレメント10の外装面に設けることが好ましい。なお、圧電素子としては、モノモルフ型、バイモルフ型、積層型など、適宜公知の技術を適用することができる。
【0063】
また、膜濾過装置50内を流れる液体の流圧を用いて発電を行うような構成に限らず、他の態様で発電を行うような構成を採用することも可能である。例えば、中心管20内を流れる透過水中に多数の気泡を発生させることにより、当該気泡のエネルギーを用いて発電を行うことも考えられる。この場合、透過水中に発生する多数の気泡の作用により、透過水の洗浄効果も期待することができる。
【0064】
さらに、以上の実施形態では、膜濾過装置50を用いて排水や海水などの原水を濾過する場合について説明したが、このような構成に限らず、膜濾過装置50を用いて水以外の原液を濾過するような構成であってもよい。
【図面の簡単な説明】
【0065】
【図1】本発明の第1実施形態に係るスパイラル型膜エレメントが備えられたスパイラル型膜濾過装置の一例を示した概略断面図である。
【図2】図1のスパイラル型膜エレメントの内部構成を示した斜視図である。
【図3】中心管の内部構成の一例を示した概略斜視図であり、内部構成を透視した状態を示している。
【図4】図1のスパイラル型膜濾過装置の電気的構成を示したブロック図である。
【図5】本発明の第2実施形態に係るスパイラル型膜エレメントの内部構成の一例を示した概略斜視図であり、内部構成を透視した状態を示している。
【図6】本発明の第3実施形態に係るスパイラル型膜エレメントの内部構成の一例を示した概略斜視図であり、内部構成を透視した状態を示している。
【符号の説明】
【0066】
10 スパイラル型膜エレメント
12 分離膜
14 透過側流路材
16 膜部材
18 供給側流路材
20 中心管
21 羽根車
25 コイル
26 発電部
27 空間
28 原水流路
31 バッテリ
32 流量センサ
33 電導度センサ
34 温度センサ
35 汚染検知センサ
36 通信部
37 RFIDタグ
38 通信装置
39 電力出力部
40 外筒
42 インターコネクタ
44 濃縮水流出口
46 透過水流出口
48 原水流入口
50 スパイラル型膜濾過装置
121 羽根車
125 コイル
126 発電部
221 羽根車
225 コイル
226 発電部

【特許請求の範囲】
【請求項1】
分離膜と供給側流路材と透過側流路材とが積層された状態で中心管の周囲にスパイラル状に巻回され、上記供給側流路材により形成される原液流路を介して供給される原液から上記分離膜により濾過された透過液が、上記透過側流路材を介して上記中心管に導かれるスパイラル型膜エレメントであって、
液体を用いて発電を行う発電部と、
上記発電部から供給される電力を有線又は無線で出力する電力出力部とを備えたことを特徴とするスパイラル型膜エレメント。
【請求項2】
分離膜と供給側流路材と透過側流路材とが積層された状態で中心管の周囲にスパイラル状に巻回され、上記供給側流路材により形成される原液流路を介して供給される原液から上記分離膜により濾過された透過液が、上記透過側流路材を介して上記中心管に導かれるスパイラル型膜エレメントであって、
液体を用いて発電を行う発電部と、
上記発電部から供給される電力を蓄積する蓄電部とを備えたことを特徴とするスパイラル型膜エレメント。
【請求項3】
上記発電部が、上記液体の流圧により発電を行うことを特徴とする請求項1又は2に記載のスパイラル型膜エレメント。
【請求項4】
上記液体の流圧により回転する回転体を備え、
上記発電部が、上記回転体の回転に基づいて発電を行うことを特徴とする請求項3に記載のスパイラル型膜エレメント。
【請求項5】
上記回転体が、上記中心管内に設けられていることを特徴とする請求項4に記載のスパイラル型膜エレメント。
【請求項6】
上記回転体が、上記原液流路内に設けられていることを特徴とする請求項4に記載のスパイラル型膜エレメント。
【請求項7】
請求項1〜6のいずれかに記載のスパイラル型膜エレメントを備えたことを特徴とするスパイラル型膜濾過装置。

【図1】
image rotate

【図2】
image rotate

【図3】
image rotate

【図4】
image rotate

【図5】
image rotate

【図6】
image rotate


【公開番号】特開2009−166036(P2009−166036A)
【公開日】平成21年7月30日(2009.7.30)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−319816(P2008−319816)
【出願日】平成20年12月16日(2008.12.16)
【出願人】(000003964)日東電工株式会社 (5,557)
【Fターム(参考)】