説明

スパイラル型膜エレメント及びスパイラル型膜モジュール

【課題】有効膜面積の低下を抑えながら、供給液に含まれる不溶成分を濃縮液として効率良く排出することができるスパイラル型膜エレメント、及びスパイラル型膜モジュールを提供する。
【解決手段】分離膜2、供給側流路材6及び透過側流路材3の単数又は複数が、有孔の中心管5に巻きつけられた巻回体Rを備えるスパイラル型膜エレメント1において、巻回体Rの上流側に、その供給液7に対して軸芯回りに旋回流を生じさせる羽根部11を有する上流側端部材10が設けられていることを特徴とする。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、液体中に浮遊及び溶存している成分を分離するスパイラル型膜エレメント、及びスパイラル型膜モジュールに関し、特に供給液に含まれる不溶成分による弊害を少なくするための技術として有効である。
【背景技術】
【0002】
従来のスパイラル型膜エレメント(以下、単に「膜エレメント」ともいう)の構造としては、分離膜、供給側流路材及び透過側流路材の単数または複数が、分離膜、供給側流路材及び透過側流路材の単数又は複数が、有孔の中心管に巻きつけられた巻回体を備えるものが知られている(例えば、特許文献1参照)。
【0003】
図7は、従来の膜エレメントの一部切欠き斜視図である。この図に示す膜エレメント1は、分離膜2、供給側流路材6及び透過側流路材3を含む分離膜ユニットが、中心管5の回りに巻きつけられた構造を有する。より具体的には、透過側流路材3の両面に分離膜2を重ね合わせて3辺を接着することにより封筒状膜(袋状膜)を形成し、その封筒状膜の開口部を中心管5に取り付け、ネット状(網状)の供給側流路材6とともに中心管5の外周面にスパイラル状に巻回することにより構成される。この巻回体Rの上流側には、シールキャリア等の上流側端部材10が設けられ、下流側にはテレスコープ防止材等の下流側端部材20が設けられる。
【0004】
上記膜エレメント1を使用する際は、供給液7は膜エレメント1の一方の端面側から供給される。供給された供給液7は、供給側流路材6に沿って中心管5の軸芯方向に平行な方向に流れ、膜エレメント1の他方の端面側から濃縮液9として排出される。また、供給液7が供給側流路材6に沿って流れる過程で分離膜2を透過した透過液8は、図中破線矢印に示すように透過側流路材3に沿って開口5aから中心管5の内部に流れ込み、この中心管5の端部から排出される。
【0005】
従来の膜エレメント1では、供給側流路材6の厚みが一定であり、また、エレメント体積当たりの有効膜面積を大きくする必要があるため、供給側流路材6の厚みは非常に薄いものであった(例えば0.7mm程度)。
【0006】
一方、RO膜等の膜エレメント1は、目詰まりによって分離性能が低下するため、より大きい粒子を分離対象とする分離膜(MF膜、UF膜等)を用いて、供給液を前処理する方法が実施されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0007】
【特許文献1】特開平10−137558号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
しかしながら、分離膜による前処理を行っても、それで分離できなかった微粒子やコロイド状物質、また、途中の配管等からの溶出物質、内部で増殖したバクテリアなどの不溶成分が、膜エレメントの供給液に含まれることが多い。このような不溶成分は、上記のように供給側流路材の厚みが薄いと、濃縮液として排出されにくく、目詰まりによる分離性能の低下が生じ易くなる。その一方で、供給側流路材の厚みを大きくすると、エレメント体積当たりの有効膜面積が小さくなり、分離性能が低下するという問題がある。
【0009】
そこで、本発明の目的は、有効膜面積の低下を抑えながら、供給液に含まれる不溶成分を濃縮液として効率良く排出することができるスパイラル型膜エレメント、及びスパイラル型膜モジュールを提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0010】
上記目的は、下記の如き本発明により達成できる。
即ち、本発明のスパイラル型膜エレメントは、分離膜、供給側流路材及び透過側流路材の単数又は複数が、有孔の中心管に巻きつけられた巻回体を備えるスパイラル型膜エレメントにおいて、前記巻回体の上流側には、供給液に含まれる不溶成分を外周側に誘導する上流側端部材を有すると共に、前記供給側流路材は、内周側より厚みを大きくした部分を外周側に備えることを特徴とする。なお、供給側流路材の厚みとは、最も嵩高い部分の厚みをさす。例えば、供給側流路材が縦糸と横糸からなるネット状シートの場合、透過側流路材の厚みは、縦糸と横糸の交点部分の厚みをさす。
【0011】
本発明のスパイラル型膜エレメントによると、上流側端部材により供給液中の不溶成分を外周側に誘導することができ、供給側流路材の外周側に厚みを大きくした部分を有するため、供給液に含まれる不溶成分が濃縮液として排出され易くなる。その際、供給側流路材の厚みを部分的に大きくするだけであるため、有効膜面積の低下を十分に抑えることができる。その結果、有効膜面積の低下を抑えながら、供給液に含まれる不溶成分を濃縮液として効率良く排出することができるスパイラル型膜エレメントを提供することができる。
【0012】
上記において、前記供給側流路材は、軸芯方向に沿って配置される縦糸とその縦糸と交差する横糸とを有するネットであり、前記縦糸のうち外周側に配置される縦糸の太さを太くしてあることが好ましい。このようなネットを使用することで、外周側に配置される縦糸の太さを太くするだけで、供給側流路材の外周側に、より厚みを大きくした部分を設けることができる。そして、縦糸の太さを太くした分だけ供給側流路の隙間が広がり、供給液に含まれる不溶成分が濃縮液として排出され易くなる。
【0013】
また、前記供給側流路材は、内周側から外周側へと徐々に厚みが増加する部分を設けることが好ましい。これにより、供給側流路材の厚みが急激に変化しにくくなり、応力集中による分離膜等の破損が生じにくく、耐久性を高めることができる。
【0014】
また、前記上流側端部材は、軸芯回りに旋回流を生じさせる羽根部を有することが好ましい。このような上流側端部材の羽根部によって旋回流が生じるため、そのときの遠心力によって不溶成分を外周側に効率良く誘導することができる。
【0015】
一方、本発明のスパイラル型膜モジュールは、分離膜、供給側流路材及び透過側流路材の単数又は複数が、有孔の中心管に巻きつけられた巻回体を備えるスパイラル型膜エレメントが、圧力容器内に収容されたスパイラル型膜モジュールにおいて、前記スパイラル型膜エレメントの上流側には、その供給液に含まれる不溶成分を外周側に誘導する流動規制部材を有すると共に、前記供給側流路材は、内周側より厚みを大きくした部分を外周側に備えることを特徴とする。
【0016】
本発明のスパイラル型膜モジュールによると、流動規制部材により供給液中の不溶成分を外周側に誘導することができ、供給側流路材の外周側に厚みを大きくした部分を有するため、供給液に含まれる不溶成分が濃縮液として排出され易くなる。その際、供給側流路材の厚みを部分的に大きくするだけであるため、有効膜面積の低下を十分に抑えることができる。その結果、有効膜面積の低下を抑えながら、供給液に含まれる不溶成分を濃縮液として効率良く排出することができるスパイラル型膜モジュールを提供することができる。
【0017】
上記において、前記流動規制部材は、前記スパイラル型膜エレメントの軸芯回りに旋回流を生じさせる羽根部を有することが好ましい。このような流動規制部材の羽根部によって旋回流が生じるため、そのときの遠心力によって不溶成分を外周側に効率良く誘導することができる。
【図面の簡単な説明】
【0018】
【図1】本発明のスパイラル型膜エレメントの一例を示す斜視図
【図2】本発明に用いられる上流側端部材の一例を示す図であり、(a)は一部を破断した斜視図、(b)は正面図、(c)は上面図、(d)は(b)におけるA矢視からB矢視までを示す展開図、(e)は(b)におけるA“矢視からB”矢視までを示す展開図
【図3】本発明に用いられる供給側流路材の一例の巻回前の状態を示す図であり、(a)は中心管と共に示した平面図、(b)その正面図
【図4】本発明に用いられる透過側流路材の一例を示す概略構成図
【図5】本発明に用いられる上流側端部材の他の例を示す図であり、(a)は巻回体側からの正面図に相当する背面図、(b)は正面図、(c)は上面図、(d)は(b)におけるA矢視からB矢視までを示す展開図、(e)は(b)におけるA“矢視からB”矢視までを示す展開図
【図6】本発明のスパイラル型膜モジュールの一例を示す斜視図
【図7】従来のスパイラル型膜エレメントの一例を示す斜視図
【発明を実施するための形態】
【0019】
以下、本発明の好ましい実施形態について、図面を参照しながら説明する。
【0020】
(スパイラル型膜エレメント)
図1は、本発明のスパイラル型膜エレメントの一例を示す斜視図である。図2は、本発明に用いられる上流側端部材の一例を示す図であり、(a)は一部を破断した斜視図、(b)は正面図、(c)は上面図、(d)は(b)におけるA矢視からB矢視までを示す展開図、(e)は(b)におけるA“矢視からB”矢視までを示す展開図である。なお、図2の(d)及び(e)における斜線部は、展開図における羽根の破断面を示す。図3は、本発明に用いられる供給側流路材の一例の巻回前の状態を示す図であり、(a)は中心管と共に示した平面図、(b)その正面図である。
【0021】
本発明のスパイラル型膜エレメントは、図1に示すように、分離膜2、供給側流路材6及び透過側流路材3の単数又は複数が、有孔の中心管5に巻きつけられた巻回体Rを備える。本実施形態では、分離膜2、供給側流路材6及び透過側流路材3を含む複数の分離膜ユニットが、中心管5の回りに巻きつけられている例を示すが、単数の分離膜ユニットが中心管に巻回されていてもよい。
【0022】
本発明のスパイラル型膜エレメントは、供給側流路と透過側流路との混合を防止するための封止部を備えている。例えば、透過側流路材3の両面に分離膜2を重ね合わせて3辺を接着することにより封筒状膜(袋状膜)を形成する場合、外周側端辺の封止部21と上流側端辺及び下流側端辺とに封止部が形成される。また、上流側端辺及び下流側端辺の内周側端部と中心管5との間にも封止部を設けるのが好ましい。
【0023】
封筒状膜は、その開口部を中心管5に取り付け、ネット状(網状)の供給側流路材6とともに中心管5の外周面にスパイラル状に巻回することにより、巻回体Rが形成される。この巻回体Rの上流側には、シールキャリア等の上流側端部材10が設けられ、下流側には、必要に応じてテレスコープ防止材等の下流側端部材20が設けられる。
【0024】
上記膜エレメント1を使用する際は、供給液7は膜エレメント1の一方の端面側から供給される。供給された供給液7は、供給側流路材6に沿って中心管5の軸芯方向に平行な方向に流れ、膜エレメント1の他方の端面側から濃縮液9として排出される。また、供給液7が供給側流路材6に沿って流れる過程で分離膜2を透過した透過液8は、図中破線矢印に示すように透過側流路材3に沿って開孔5aから中心管5の内部に流れ込み、この中心管5の端部から排出される。
【0025】
本発明では、図1〜図2に示すように、巻回体Rの上流側に、供給液7に含まれる不溶成分を外周側に誘導する上流側端部材10が設けられていることを特徴とする。本発明では、上流側端部材10は、軸芯A1回りに旋回流を生じさせる羽根部11を有することが好ましい。なお、図1は、簡略化のために4枚の羽根部11を有するものを記載しているが、図2に示すように8枚の羽根部11を有するものについて詳細に説明する。
【0026】
本実施形態の上流側端部材10は、図2に示すように、外側環状部12と、内側環状部13と、それらを連結する羽根部11を有する。本実施形態では、上流側端部材10がシールキャリアとしての機能を有する例を示す。このため外側環状部12は、O−リングや断面がコの字型等のシール材を保持するための溝部12aを備える。
【0027】
羽根部11の形状は、軸芯A1回りに旋回流を生じさせることができれば何れでもよいが、羽根の枚数は、限られたスペースで効果的に旋回流を生じさせる観点から、3〜40が好ましく、6〜16がより好ましい。
【0028】
羽根部11は、図2(d)〜(e)に示すように、内周側ほど、羽根の傾斜角度が大きくなっている。
【0029】
また、羽根部11は、図2(b)に示すように、正面視において、各々の羽根の重なりや隙間がないように、設計されている。効果的に旋回流を生じさせるためには、正面視において、各々の羽根の隙間がないようにするのが好ましいが、正面視において、各々の羽根の占有面積が80%以上が好ましい。また、さらに大きな旋回流を生じさせるためには、正面視において、各々の羽根の重なりが生じるようにするのが好ましい。その場合、正面視において、隣接する羽根の重なり面積が1つの羽根の面積の1〜50%とするのが好ましい。
【0030】
内側環状部13は、中心管5を挿入するための開口13aを有し、内側環状部13を介して、上流側端部材10は中心管5に保持されている。この内側環状部13と外側環状部12との間を流れる供給液7は、羽根部11に沿って流動するため、軸芯A1回りに旋回流(図2(a)中の矢印)を生じさせることができる。
【0031】
一方、本発明のスパイラル型膜エレメントは、図3に示すように、供給側流路材6が、内周側A2より厚みを大きくした部分を外周側A3に備えることを特徴とする。本実施形態では、図3に示すように、軸芯方向A1に沿って配置される縦糸6aとその縦糸6aと交差する横糸6bとを有するネットで供給側流路材6を構成し、縦糸6aのうち外周側A3に配置される縦糸6aの太さを太くしてある例を示す。
【0032】
本発明では、供給側流路材6の厚みを大きくした部分とそうでない部分との間に、大きな段差が生じないことが好ましい。このため、内周側A2から外周側A3へと徐々に厚みが増加する部分を設けることが好ましい。本実施形態では、領域R1、R2、R3、R4の順に段階的に、縦糸6aの太さを大きくすることで、供給側流路材6の厚みt1〜t4を段階的に大きくすることで、段差を小さく抑えている。
【0033】
最も外周側A3の領域R4における供給側流路材6の厚みt4は、エレメント体積当たりの有効膜面積の低下を抑えながら、不溶成分を濃縮液9として効果的に排出する観点から、0.9〜2.5mmが好ましく、1.2〜2.0mmがより好ましい。また、同様の観点から、最も外周側A3の領域R4における縦糸6aの径は、0.6〜2.0mmが好ましく、0.8〜1.5mmがより好ましい。
【0034】
横糸6bは、縦糸6aに対して垂直でも傾斜していてもよく、横糸6bが2種以上の傾斜方向を有するものでもよい。但し、不溶成分を濃縮液9として効果的に排出する観点から、横糸6bは、縦糸6aに対して、30〜60°で傾斜していることが好ましく、40〜60°で傾斜していることがより好ましい。横糸6bの径は、特に限定されないが、例えば0.2〜0.5mm程度である。
【0035】
供給側流路材6の両面には、分離活性層を有する面が対向するように、分離膜2が配置されるが、このように領域R1、R2、R3、R4の順に段階的に、縦糸6aの太さを大きくすることで、分離膜2どうしの隙間が外周側A3ほど広がり、外周側A3において、供給液7に含まれる不溶成分が濃縮液9として排出され易くなる。つまり、不溶成分は、元々粒径の大きいものであったり、凝集によって粒径が大きくなり、分離膜2どうしの隙間が小さいと、濃縮液9として排出され難い。
【0036】
ネット状の供給側流路材6の製造方法としては、例えば融着法や剪断法等にて製造することが可能である。ネットを融着法で成型する場合、一般的に、押出機のダイスの内外2つの円周上に配置した多数のノズル孔を逆方向に回転させながら、横糸と縦糸とを押出してから交差部で互いに融着させ、冷却槽に浸漬後、引取を行う。上記押出を行う際、横糸と縦糸との交差部で両者のノズル孔が重ならないようにノズル孔を配置しておき(この点が剪断法と相違する)、押出された横糸と縦糸とを適度な融着が起るタイミングで融着させる。
【0037】
特に、図3に示すようなネットを融着法で成型する場合、縦糸のノズル径を外周側A3に相当する位置で大きくすると共に、縦糸のノズル孔を回転させずに、横糸のノズル孔をだけ回転させる方法が有効である。
【0038】
供給側流路材6としては、任意の材質を用いることが可能であるが、上記のように耐蝕性、耐熱性、機械的強度などを考慮すると、例えば、ポリプロピレン、ポリエチレンなどのポリオレフィンが好ましい。
【0039】
上記のような供給側流路材6に対して、従来のような厚みが一定の透過側流路材3を用いることも可能であるが、本発明では、図4に示すように、外周側A3から内周側A2にかけて、厚みが漸増している透過側流路材3を用いるのが好ましい。これにより、巻回する分離膜ユニットの厚みの変化を小さくできると共に、外周側から内周側にかけて透過液流路の厚みを漸増させることができるため、透過側流路材3の内周側における流路抵抗の増加を抑制できる。透過側流路材3の内周側における流路抵抗の増加を抑制できる。
【0040】
近年、膜処理プラントの大型化に伴い、従来主流であった直径8インチ(約200mm)の膜エレメントに代わって、膜エレメントが大径化(例えば16インチ)する傾向があり、透過側流路材3の内周側における流路抵抗の増加が問題となり易いことから、外周側A3から内周側A2にかけて、厚みが漸増している透過側流路材3を用いるのが、特に有効である。
【0041】
図4は、本発明に用いられる透過側流路材3の一例を示すものであり、中心管5に対して、分離膜1と共に取り付けられた状態を示している。この例では、上下の分離膜1で透過側流路材3を挟みこんで3辺を封止し(封止部21は外周側端部の封止部を示す)、その際に、外周側A3から内周側A2にかけて、透過側流路材の厚みを1枚〜3枚へと増加させている。透過側流路材の厚みは、構成糸の径を変えることでも変化させることができる。
【0042】
中心管12は、管の周囲に開孔12aを有するものであれば良く、従来のものが何れも使用できる。透過側流路材13には、ネット状シート、メッシュ状シート、溝付シート、波形シート等が使用できる。分離膜14には、逆浸透膜、ナノろ過膜、限外ろ過膜等が使用できる。
【0043】
図4に示す例では、分離膜2は中心管5側で2つ折りにされ、その間に供給側流路材6が挟み込まれ、これが中心管5に巻回される。巻回する分離膜ユニットUの数(リーフ数)としては、25〜80が好ましい。
【0044】
本発明のスパイラル型膜エレメントは、樹脂封止後の巻回体Rを、軸芯方向の長さを調整するために、両端部のトリミング等を行ってもよい。更に変形(テレスコープ等)を防止するための有孔の端部材や、シール材、補強材、外装材などを必要に応じて設けることができる。
【0045】
(スパイラル型膜エレメントの別実施形態)
以上、本発明の別の実施形態について説明する。
【0046】
(1)前述の実施形態では、上流側端部材10として、図2に示すように、比較的フラットな羽根部11を有するものを使用する例を示したが、本発明では、図5に示すように、巻回体側(下流側)において流動方向を規制するエッジ部11aを備える羽根部11を有する上流側端部材10を使用してもよい。このように、羽根部11がエッジ部11aを備えることによって、端面が軸芯方向に垂直になり、巻回体Rの端面を支持してテレスコープを抑制する効果が得られる。
【0047】
なお、図5は、本発明に用いられる上流側端部材の他の例を示す図であり、(a)は巻回体側からの正面図に相当する背面図、(b)は正面図、(c)は上面図、(d)は(b)におけるA矢視からB矢視までを示す展開図、(e)は(b)におけるA“矢視からB”矢視までを示す展開図である。
【0048】
(2)前述の実施形態では、軸芯回りに旋回流を生じさせる羽根部を有する上流側端部材を用いる例を示したが、本発明では、軸芯回りに旋回流を生じさせる複数のスリットを有する上流側端部材を用いてもよい。このようなスリットとしては、スリット自体の形成方向を旋回方向に傾斜させて形成したものや、スリットを設けた円盤を複数枚積層し、各々のスリットを少しづつズラすことによって、スリットの開口方向を旋回方向にシフトさせたもの等が挙げられる。
【0049】
その他、供給液に含まれる不溶成分を外周側に誘導する方法としては、沈降速度の違いを利用する方法などが挙げられる。
【0050】
(3)前述の実施形態では、ネット状供給側流路材を用いて、縦糸の太さを変えることで内周側より厚みを大きくした部分を外周側に備える例を示したが、本発明では、ネットの積層枚数を部分的に変えることで、内周側より厚みを大きくした部分を外周側に備える供給側流路材を得ることも可能である。その場合、例えば、厚みが一定のネット状供給側流路材の外周側を折り返して2枚積層することで、外周側の厚みを大きくすることが可能である。
【0051】
(スパイラル型膜モジュール)
本発明のスパイラル型膜モジュールは、図6に示すように、分離膜2、供給側流路材6及び透過側流路材3の単数又は複数が、有孔の中心管5に巻きつけられた巻回体Rを備えるスパイラル型膜エレメント1が、圧力容器30内に収容された構造を有する。スパイラル型膜エレメント1の供給側流路材6は、内周側より厚みを大きくした部分を外周側に備えるものであり、前述した本発明のスパイラル型膜エレメント1と同じ構成が適用できる。
【0052】
異なる点は、前述した本発明のスパイラル型膜エレメント1が、巻回体Rの上流側に、供給液7に含まれる不溶成分を外周側に誘導する上流側端部材10が設けられているのに対して、本発明のスパイラル型膜モジュールは、スパイラル型膜エレメント1の上流側に、その供給液に含まれる不溶成分を外周側に誘導する流動規制部材16を有する点である。なお、本発明のスパイラル型膜モジュールにおいても、スパイラル型膜エレメント1として、巻回体Rの上流側に、供給液7に含まれる不溶成分を外周側に誘導する上流側端部材10を設けたものを使用することも可能である。
【0053】
本実施形態では、スパイラル型膜エレメントの軸芯A1回りに旋回流を生じさせる羽根部16aを有する流動規制部材16を用いる例を示す。図中において、圧力容器30は仮想線で示されているが、流動規制部材16の羽根部16aの外径は、効果的に旋回流を生じさせる観点から、圧力容器30の内径の60〜90%が好ましく、70〜85%がより好ましい。
【0054】
羽根部16aの形状は、軸芯A1回りに旋回流を生じさせることができれば何れでもよいが、羽根の枚数は、限られたスペースで効果的に旋回流を生じさせる観点から、3〜40が好ましく、6〜16がより好ましい。
【0055】
羽根部16aは、上流側端部材10の羽根部11と同様に、正面視において、各々の羽根の隙間がないようにするのが好ましいが、正面視において、各々の羽根の占有面積が80%以上が好ましい。また、さらに大きな旋回流を生じさせるためには、正面視において、各々の羽根の重なりが生じるようにするのが好ましい。その場合、正面視において、隣接する羽根の重なり面積が1つの羽根の面積の1〜50%とするのが好ましい。
【0056】
内側環状部16bは、中心管5を挿入するための開口を有し、内側環状部16bを介して、流動規制部材16を中心管5に保持するのが好ましい。流動規制部材16によって、供給液7は、羽根部16aに沿って流動するため、軸芯A1回りに旋回流を生じさせることができる。
【0057】
本発明では、羽根部16aを有する流動規制部材16の代わりに、軸芯回りに旋回流を生じさせる複数のスリットを有する流動規制部材16を用いてもよい。このようなスリットとしては、スリット自体の形成方向を旋回方向に傾斜させて形成したものや、スリットを設けた円盤を複数枚積層し、各々のスリットを少しづつズラすことによって、スリットの開口方向を旋回方向にシフトさせたもの等が挙げられる。
【0058】
その他、供給液に含まれる不溶成分を外周側に誘導する方法としては、沈降速度の違いを利用する方法などが挙げられる。
【符号の説明】
【0059】
1 スパイラル型膜エレメント
2 分離膜
3 透過側流路材
5 中心管
5a 開孔
6 供給側流路材
6a 縦糸
6b 横糸
7 供給液
10 上流側端部材
11 羽根部
16 流動規制部材
16a 羽根部
R 巻回体
A1 軸芯方向
A2 内周側
A3 外周側

【特許請求の範囲】
【請求項1】
分離膜、供給側流路材及び透過側流路材の単数又は複数が、有孔の中心管に巻きつけられた巻回体を備えるスパイラル型膜エレメントにおいて、
前記巻回体の上流側には、その供給液に対して軸芯回りに旋回流を生じさせる羽根部を有する上流側端部材を有することを特徴とするスパイラル型膜エレメント。
【請求項2】
分離膜、供給側流路材及び透過側流路材の単数又は複数が、有孔の中心管に巻きつけられた巻回体を備えるスパイラル型膜エレメントが、圧力容器内に収容されたスパイラル型膜モジュールにおいて、
前記スパイラル型膜エレメントの上流側には、その供給液に対して軸芯回りに旋回流を生じさせる羽根部を有する流動規制部材を有することを特徴とするスパイラル型膜モジュール。

【図1】
image rotate

【図2】
image rotate

【図3】
image rotate

【図4】
image rotate

【図5】
image rotate

【図6】
image rotate

【図7】
image rotate


【公開番号】特開2013−59766(P2013−59766A)
【公開日】平成25年4月4日(2013.4.4)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2013−2020(P2013−2020)
【出願日】平成25年1月9日(2013.1.9)
【分割の表示】特願2008−69647(P2008−69647)の分割
【原出願日】平成20年3月18日(2008.3.18)
【出願人】(000003964)日東電工株式会社 (5,557)
【Fターム(参考)】