スパイラル型膜モジュール及びその製造方法
【課題】接着剤層の近傍でスキン層が破断した際の原水のリークを抑制することのできるスパイラル型膜モジュールを提供する。
【解決手段】膜シート１は、透過性支持層２と透水性のスキン層４とを、不織布３を介して接合してなる。スキン層４を内面側としてスペーサ（流路材）６を配置した状態で膜シート１を対向させ、スキン層４の端縁で接着剤層５を形成して固化して袋状の分離膜とする。そして、このスキン層４の接着部５Ａに沿って、接着剤層５からスキン層４を貫通して不織布３にまで至る細棒状の止水部７が断続的に形成されている。
【解決手段】膜シート１は、透過性支持層２と透水性のスキン層４とを、不織布３を介して接合してなる。スキン層４を内面側としてスペーサ（流路材）６を配置した状態で膜シート１を対向させ、スキン層４の端縁で接着剤層５を形成して固化して袋状の分離膜とする。そして、このスキン層４の接着部５Ａに沿って、接着剤層５からスキン層４を貫通して不織布３にまで至る細棒状の止水部７が断続的に形成されている。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【０００１】
本発明は、スパイラル型膜モジュール及びその製造方法に関し、特にリークが生じにくいスパイラル型膜モジュール及びその製造方法に関する。
【背景技術】
【０００２】
河川水、湖沼水等の表流水に凝集沈殿処理等の浄水処理を施して工業用水を得る場合、上水中の懸濁物・溶存物等を分離して高度な浄水を得る場合、又は工場、家庭、下水処理場等から排出された排水中の懸濁物・溶存物等を分離して再利用を図る場合等において、スパイラル型膜モジュール装置が広く用いられている。
【０００３】
上述したようなスパイラル型膜モジュール装置は、河川水、湖沼水等に凝集剤を添加して、凝集・沈殿・濾過等の固液分離処理を施して得られる分離水を原水とした処理に用いられる。このようなスパイラル型膜モジュール装置としては、例えば、特開平１１−１３７９７５号公報に開示されているようなものがある。このスパイラル型膜モジュール装置は、図５に示すように、シャフト２１の周りに袋状の膜２２を、メッシュスペーサ２３を介して巻き付けて円筒状の巻回体とし、この巻回体の後端面の外周側に透過水流出領域を形成し、内周側に濃縮水流出領域を形成したものである。
【特許文献１】特開平１１−１３７９７５号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【０００４】
上述したようなスパイラル型膜モジュール装置におけるスパイラル型膜モジュール（分離膜）は、例えば、図４に示すような構造を有する。すなわち、膜シート１は、ポリプロピレン製等の透過性支持層２と濾過を行うポリテトラフルオロエチレン（ＰＴＦＥ）製等の多孔質で透水性のスキン層４とを、不織布層３を介して接合してなる。この膜シート１をスキン層４側で対向させて内側にスペーサ（流路材）６を配置した状態でスキン層４の端縁に接着剤を塗布して接着剤層５を形成して、当該接着剤層５を接合して袋状の分離膜とし、この内面側に供給された原水Ｗがスキン層４を透過することで処理が行われる。
【０００５】
しかしながら、このような分離膜においては、スキン層４は柔軟であるので、接着剤層５の形成時に接着剤の固化に伴い境界部５ａで破断Ｂが生じることがあり、この破断Ｂ部分にて原水Ｗのリークが生じてしまうという問題点があった。
【０００６】
本発明は上記課題に鑑みてなされたものであり、接着剤層の近傍でスキン層が破断しても原水がリークしにくいスパイラル型膜モジュール（分離膜）を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【０００７】
第１に本発明のスパイラル型膜モジュールは、透過性支持層と中間層とスキン層とを有する膜シートを、スキン層を内側面として対向させて端縁部を接着部として接着剤により接合し、内側に供給された原水を外面側に透過させて処理するスパイラル型膜モジュールであって、前記膜シートのスキン層から中間層にかけて、前記接着部に沿って連続的又は断続的に形成された止水部を有することを特徴とする（請求項１）。
【０００８】
これにより、スキン層が破断したとしても、接着部に沿ってスキン層に連続的又は断続的に止水部が形成されているので、原水が止水部によりせき止められ、リークが生じにくくなっている。
【０００９】
特に、前記止水部は、その外径が０．１〜１０ｍｍの大きさであり、２ｍｍ以下の間隔で断続的に形成されていることが好ましい（請求項２）。このように止水部を断続的に形成することにより、スパイラル型膜モジュールの接着部での強度を低下させることがなく、しかもその外径を０．１〜１０ｍｍの大きさとすることで、十分なリーク抑制効果を発揮することができる。
【００１０】
第２に本発明のスパイラル型膜モジュールの製造方法は、透過性支持層と中間層とスキン層とを有する膜シートを、スキン層を内側面として対向させて端縁部を接着部として接着剤により接合し、内側に供給された原水を外面側に透過させて処理するスパイラル型膜モジュールの製造方法であって、前記膜シートの接着部に沿ってスキン層に溝又は細孔を形成した後、接着剤を塗布して接合することを特徴とする（請求項３）。
【００１１】
特に、前記細孔の外径を０．１〜１０ｍｍの大きさとし、かつ２ｍｍ以下の間隔で断続的に形成することが好ましい（請求項４）。このように細孔を断続的に形成することにより、スパイラル型膜モジュールの接着部の強度を低下させることがなく、しかも外径を０．１〜１０ｍｍの大きさとすることで、十分なリーク抑制効果を発揮することができる。
【００１２】
さらに、前記細孔を、前記中間層又は前記透過性支持層にまで形成することが好ましい（請求項５）。これにより、スキン層から中間層にかけて止水部を確実に形成することができる。
【発明の効果】
【００１３】
本発明のスパイラル型膜モジュールによれば、接着剤層の近傍でのスキン層の破断に伴う原水のリークを防止することができるばかりでなく、膜の耐圧性の向上を期待することができる。また、本発明のスパイラル型膜モジュールの製造方法によれば、このようなスパイラル型膜モジュールを簡単に製造することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【００１４】
以下、本発明の一実施形態に係るスパイラル型膜モジュールについて、図面を参照しながら詳細に説明する。図１は本実施形態に係るスパイラル型膜モジュールを示す縦断面図であり、図２は、本実施形態に係るスパイラル型膜モジュールを示す概略平面図である。
【００１５】
図１及び図２に示すように、膜シート１は、透過性支持層２と透水性のスキン層４とを、中間層である不織布３を介して接合してなる。
【００１６】
上述したような膜シート１において、透過性支持層２としては、水を透過するものであって構造体として用いられる材料であれば特に限定されないが、例えば、ポリプロピレン（ＰＰ）やポリエチレン（ＰＥ）等のオレフィン系樹脂、ポリ四フッ化エチレン（ＰＴＦＥ）やポリ四フッ化エチレン・パーフロロアルキルビニルエーテル共重合体（ＰＦＡ）等のフッ素系樹脂、ポリメチルメタクリレート（ＰＭＭＡ）、ポリサルホン、ポリカーボネート、エポキシ樹脂、ウレタン樹脂、フェノール樹脂、アクリル樹脂、又はステンレス鋼等の金属等を用いることができ、特にポリプロピレン（ＰＰ）、ポリエチレン（ＰＥ）等のメッシュシートや多孔製シート等を用いることができる。また、この透過性支持層２の厚さも特に制限はないが、柔軟性等の観点から０．５〜３ｍｍ程度、特に約１ｍｍの厚さとすればよい。
【００１７】
また、スキン層４は、直接分離に寄与するものであり、所望とする分離対象よりも小さい孔（開裂を含む）を膜表面に多数有することにより、水は通すが分離対象は通さないものであればよく、特に限定されるものではない。例えば、ポリ四フッ化エチレン（ＰＴＦＥ）やポリ四フッ化エチレン・パーフロロアルキルビニルエーテル共重合体（ＰＦＡ）等のフッ素系樹脂、ポリエチレン（ＰＥ）、ポリプロピレン（ＰＰ）、ポリエチレンテレフタレート（ＰＥＴ）、ナイロン、ポリアミド、ポリアクリロニトリル（ＰＡＮ）、ポリビニルアルコール（ＰＶＡ）、ＰＭＭＡ、ポリサルホン、ポリエーテルサルホン、ポリイミド等の多孔質膜等を用いることができ、膜表面に形成する孔の大きさや数、膜に要求される強度等に応じて適当な材料を選定すればよい。特に、ポリ四フッ化エチレン（ＰＴＦＥ）やポリ四フッ化エチレン・パーフロロアルキルビニルエーテル共重合体（ＰＦＡ）等のフッ素系樹脂が好ましい。このようなスキン層４の厚さは、薄い方がよいが、強度等の点も考慮すると、０．０５〜０．３ｍｍ程度、特に、約０．１ｍｍとすればよい。
【００１８】
さらに、不織布３は、スキン層４の通水性を保持するとともに膜シート１の柔軟性を向上させるためのものであり、このような不織布３としては、基本的には透過性支持層２と同様の材料を用いることができ、特に、ポリプロピレン（ＰＰ）やポリエチレン（ＰＥ）等の不織布が好ましい。この不織布３の厚さも特に制限はないが、柔軟性等の観点から、０．０５〜０．５ｍｍ程度、特に、約０．２ｍｍの厚さとすればよい。
【００１９】
本実施形態においては、この膜シート１を、スキン層４を内面側としてスペーサ（流路材）６を配置した状態で対向させ、スキン層４の端縁を接着部５Ａとして接着剤層５を形成して固化し、袋状に形成することにより、スパイラル型膜モジュールとする。そして、このスキン層４の接着部５Ａに沿って、接着剤層５からスキン層４を貫通して不織布３にまで至る細棒状の止水部７が断続的に形成されている。
【００２０】
ここで、接着剤層５及び止水部７を形成する接着剤としては、水不透性樹脂であれば制限はなく、例えば、エポキシ系接着剤、ウレタン系接着剤、ホトメルト接着剤、紫外線硬化樹脂系接着剤等が挙げられ、これらの中でもウレタン系接着剤が好ましい。
【００２１】
この止水部７の外径（Ｌ）は、０．１〜１０ｍｍの大きさであるのが好ましい。止水部７の外径が０．１ｍｍ未満だと、リーク抑制効果が十分でない一方、１０ｍｍを超えると接着部５Ａにおける膜の強度が低下するおそれがあるため好ましくない。また、この止水部７の間隔（Ｓ）は、２ｍｍ以下で断続的に形成されているのが好ましい。止水部７の間隔が２ｍｍを超えるとリーク抑制効果が十分でない。なお、この止水部７を連続的に形成することで溝状に形成してもよい。
【００２２】
上述したような止水部７の深さ（Ｄ）は、スキン層４を貫通して不織布３にまで形成されていればよく、透過性支持層２にまで延在してもよい。
【００２３】
このスパイラル型膜モジュールの作用について説明する。
まず、袋状の膜シート１の内面側に原水Ｗを供給してスキン層４を透過させることで処理を行う。この際、濾過対象となる不純物等はスキン層４を通過できず、これにより不純物等が除去された処理水Ｗ１のみがスキン層４を透過することで所望の水質の処理水Ｗ１を得ることができる。
【００２４】
このとき接着剤層５の近傍でスキン層４に破断Ｂが生じていると、スキン層４から接着剤層５を経由して原水Ｗがリークしてしまうが、本実施形態においては接着剤層５上のスキン層４に止水部７が形成されているので、破断Ｂ部分を経由して接着剤層５から原水Ｗがリークしにくくなっている。
【００２５】
次に、上述したような本実施形態に係るスパイラル型膜モジュールの製造方法について説明する。図３に示すように、広げた状態の膜シート１の端縁の接着部５Ａにスキン層４の側から断続的に細孔１１を形成する。この細孔１１の内径を、０．１〜１０ｍｍの大きさとするのが好ましい。細孔１１の内径が０．１ｍｍ未満では、形成される止水部７の外径が０．１ｍｍ未満となり、リーク抑制効果が十分でなくなる一方、１０ｍｍを越えると接着部５Ａにおける膜の強度が低下するため好ましくない。また、この細孔１１は、２ｍｍ以下の間隔で断続的に形成されるのが好ましい。細孔１１の間隔が２ｍｍを超えるとリーク抑制効果が十分でない。さらに、この細孔１１は、スキン層４を貫通して不織布３にまで形成されていればよく、場合によっては透過性支持層２にまで延在してもよい。ただし、透過性支持層２を貫通すると接着部５Ａにおける膜強度が低下するため好ましくない。
【００２６】
上述したような細孔１１は、所望の間隔の波状の刃を有するローラーカッタを帯状の接着部５Ａの中心線に沿うように走行させることにより容易に形成することができる。続いて、接着部５Ａに接着剤を塗布して、膜シート１を折りたたんで接着部５Ａを重ね合わせることにより、細孔１１から接着剤が浸透して接着剤層５が固化するとともに、止水部７が形成されることになる。
【００２７】
したがって、ローラーカッタを接着剤のコータに付設することにより、細孔１１の形成と接着剤の塗布とを同時に行うことができ、細孔１１の形成に伴い作業性を損なうことがない。なお、ローラーカッタを平刃として溝を形成して、細孔１１を線状とすることで、線状の止水部７としてもよい。
【産業上の利用可能性】
【００２８】
本発明のスパイラル型膜モジュールは、スキン層の破断による原水リークが防止できるので、高いフラックスが要求される有機排水等の処理に有用である。
【図面の簡単な説明】
【００２９】
【図１】本発明の一実施形態に係るスパイラル型膜モジュールの縦断面図である。
【図２】本発明の一実施形態に係るスパイラル型膜モジュールを概略的に示す平面図である。
【図３】本発明の一実施形態に係るスパイラル型膜モジュールの製造方法を概略的に示す平面図である。
【図４】従来のスパイラル型膜モジュールの一例を示す縦断面図である。
【図５】従来のスパイラル型膜モジュールを示す平面図である。
【符号の説明】
【００３０】
１…膜シート
２…透過性支持層
３…不織布層（中間層）
４…スキン層
５…接着剤層
５Ａ…接着部
７…止水部
１１…細孔
Ｂ…破断
【技術分野】
【０００１】
本発明は、スパイラル型膜モジュール及びその製造方法に関し、特にリークが生じにくいスパイラル型膜モジュール及びその製造方法に関する。
【背景技術】
【０００２】
河川水、湖沼水等の表流水に凝集沈殿処理等の浄水処理を施して工業用水を得る場合、上水中の懸濁物・溶存物等を分離して高度な浄水を得る場合、又は工場、家庭、下水処理場等から排出された排水中の懸濁物・溶存物等を分離して再利用を図る場合等において、スパイラル型膜モジュール装置が広く用いられている。
【０００３】
上述したようなスパイラル型膜モジュール装置は、河川水、湖沼水等に凝集剤を添加して、凝集・沈殿・濾過等の固液分離処理を施して得られる分離水を原水とした処理に用いられる。このようなスパイラル型膜モジュール装置としては、例えば、特開平１１−１３７９７５号公報に開示されているようなものがある。このスパイラル型膜モジュール装置は、図５に示すように、シャフト２１の周りに袋状の膜２２を、メッシュスペーサ２３を介して巻き付けて円筒状の巻回体とし、この巻回体の後端面の外周側に透過水流出領域を形成し、内周側に濃縮水流出領域を形成したものである。
【特許文献１】特開平１１−１３７９７５号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【０００４】
上述したようなスパイラル型膜モジュール装置におけるスパイラル型膜モジュール（分離膜）は、例えば、図４に示すような構造を有する。すなわち、膜シート１は、ポリプロピレン製等の透過性支持層２と濾過を行うポリテトラフルオロエチレン（ＰＴＦＥ）製等の多孔質で透水性のスキン層４とを、不織布層３を介して接合してなる。この膜シート１をスキン層４側で対向させて内側にスペーサ（流路材）６を配置した状態でスキン層４の端縁に接着剤を塗布して接着剤層５を形成して、当該接着剤層５を接合して袋状の分離膜とし、この内面側に供給された原水Ｗがスキン層４を透過することで処理が行われる。
【０００５】
しかしながら、このような分離膜においては、スキン層４は柔軟であるので、接着剤層５の形成時に接着剤の固化に伴い境界部５ａで破断Ｂが生じることがあり、この破断Ｂ部分にて原水Ｗのリークが生じてしまうという問題点があった。
【０００６】
本発明は上記課題に鑑みてなされたものであり、接着剤層の近傍でスキン層が破断しても原水がリークしにくいスパイラル型膜モジュール（分離膜）を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【０００７】
第１に本発明のスパイラル型膜モジュールは、透過性支持層と中間層とスキン層とを有する膜シートを、スキン層を内側面として対向させて端縁部を接着部として接着剤により接合し、内側に供給された原水を外面側に透過させて処理するスパイラル型膜モジュールであって、前記膜シートのスキン層から中間層にかけて、前記接着部に沿って連続的又は断続的に形成された止水部を有することを特徴とする（請求項１）。
【０００８】
これにより、スキン層が破断したとしても、接着部に沿ってスキン層に連続的又は断続的に止水部が形成されているので、原水が止水部によりせき止められ、リークが生じにくくなっている。
【０００９】
特に、前記止水部は、その外径が０．１〜１０ｍｍの大きさであり、２ｍｍ以下の間隔で断続的に形成されていることが好ましい（請求項２）。このように止水部を断続的に形成することにより、スパイラル型膜モジュールの接着部での強度を低下させることがなく、しかもその外径を０．１〜１０ｍｍの大きさとすることで、十分なリーク抑制効果を発揮することができる。
【００１０】
第２に本発明のスパイラル型膜モジュールの製造方法は、透過性支持層と中間層とスキン層とを有する膜シートを、スキン層を内側面として対向させて端縁部を接着部として接着剤により接合し、内側に供給された原水を外面側に透過させて処理するスパイラル型膜モジュールの製造方法であって、前記膜シートの接着部に沿ってスキン層に溝又は細孔を形成した後、接着剤を塗布して接合することを特徴とする（請求項３）。
【００１１】
特に、前記細孔の外径を０．１〜１０ｍｍの大きさとし、かつ２ｍｍ以下の間隔で断続的に形成することが好ましい（請求項４）。このように細孔を断続的に形成することにより、スパイラル型膜モジュールの接着部の強度を低下させることがなく、しかも外径を０．１〜１０ｍｍの大きさとすることで、十分なリーク抑制効果を発揮することができる。
【００１２】
さらに、前記細孔を、前記中間層又は前記透過性支持層にまで形成することが好ましい（請求項５）。これにより、スキン層から中間層にかけて止水部を確実に形成することができる。
【発明の効果】
【００１３】
本発明のスパイラル型膜モジュールによれば、接着剤層の近傍でのスキン層の破断に伴う原水のリークを防止することができるばかりでなく、膜の耐圧性の向上を期待することができる。また、本発明のスパイラル型膜モジュールの製造方法によれば、このようなスパイラル型膜モジュールを簡単に製造することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【００１４】
以下、本発明の一実施形態に係るスパイラル型膜モジュールについて、図面を参照しながら詳細に説明する。図１は本実施形態に係るスパイラル型膜モジュールを示す縦断面図であり、図２は、本実施形態に係るスパイラル型膜モジュールを示す概略平面図である。
【００１５】
図１及び図２に示すように、膜シート１は、透過性支持層２と透水性のスキン層４とを、中間層である不織布３を介して接合してなる。
【００１６】
上述したような膜シート１において、透過性支持層２としては、水を透過するものであって構造体として用いられる材料であれば特に限定されないが、例えば、ポリプロピレン（ＰＰ）やポリエチレン（ＰＥ）等のオレフィン系樹脂、ポリ四フッ化エチレン（ＰＴＦＥ）やポリ四フッ化エチレン・パーフロロアルキルビニルエーテル共重合体（ＰＦＡ）等のフッ素系樹脂、ポリメチルメタクリレート（ＰＭＭＡ）、ポリサルホン、ポリカーボネート、エポキシ樹脂、ウレタン樹脂、フェノール樹脂、アクリル樹脂、又はステンレス鋼等の金属等を用いることができ、特にポリプロピレン（ＰＰ）、ポリエチレン（ＰＥ）等のメッシュシートや多孔製シート等を用いることができる。また、この透過性支持層２の厚さも特に制限はないが、柔軟性等の観点から０．５〜３ｍｍ程度、特に約１ｍｍの厚さとすればよい。
【００１７】
また、スキン層４は、直接分離に寄与するものであり、所望とする分離対象よりも小さい孔（開裂を含む）を膜表面に多数有することにより、水は通すが分離対象は通さないものであればよく、特に限定されるものではない。例えば、ポリ四フッ化エチレン（ＰＴＦＥ）やポリ四フッ化エチレン・パーフロロアルキルビニルエーテル共重合体（ＰＦＡ）等のフッ素系樹脂、ポリエチレン（ＰＥ）、ポリプロピレン（ＰＰ）、ポリエチレンテレフタレート（ＰＥＴ）、ナイロン、ポリアミド、ポリアクリロニトリル（ＰＡＮ）、ポリビニルアルコール（ＰＶＡ）、ＰＭＭＡ、ポリサルホン、ポリエーテルサルホン、ポリイミド等の多孔質膜等を用いることができ、膜表面に形成する孔の大きさや数、膜に要求される強度等に応じて適当な材料を選定すればよい。特に、ポリ四フッ化エチレン（ＰＴＦＥ）やポリ四フッ化エチレン・パーフロロアルキルビニルエーテル共重合体（ＰＦＡ）等のフッ素系樹脂が好ましい。このようなスキン層４の厚さは、薄い方がよいが、強度等の点も考慮すると、０．０５〜０．３ｍｍ程度、特に、約０．１ｍｍとすればよい。
【００１８】
さらに、不織布３は、スキン層４の通水性を保持するとともに膜シート１の柔軟性を向上させるためのものであり、このような不織布３としては、基本的には透過性支持層２と同様の材料を用いることができ、特に、ポリプロピレン（ＰＰ）やポリエチレン（ＰＥ）等の不織布が好ましい。この不織布３の厚さも特に制限はないが、柔軟性等の観点から、０．０５〜０．５ｍｍ程度、特に、約０．２ｍｍの厚さとすればよい。
【００１９】
本実施形態においては、この膜シート１を、スキン層４を内面側としてスペーサ（流路材）６を配置した状態で対向させ、スキン層４の端縁を接着部５Ａとして接着剤層５を形成して固化し、袋状に形成することにより、スパイラル型膜モジュールとする。そして、このスキン層４の接着部５Ａに沿って、接着剤層５からスキン層４を貫通して不織布３にまで至る細棒状の止水部７が断続的に形成されている。
【００２０】
ここで、接着剤層５及び止水部７を形成する接着剤としては、水不透性樹脂であれば制限はなく、例えば、エポキシ系接着剤、ウレタン系接着剤、ホトメルト接着剤、紫外線硬化樹脂系接着剤等が挙げられ、これらの中でもウレタン系接着剤が好ましい。
【００２１】
この止水部７の外径（Ｌ）は、０．１〜１０ｍｍの大きさであるのが好ましい。止水部７の外径が０．１ｍｍ未満だと、リーク抑制効果が十分でない一方、１０ｍｍを超えると接着部５Ａにおける膜の強度が低下するおそれがあるため好ましくない。また、この止水部７の間隔（Ｓ）は、２ｍｍ以下で断続的に形成されているのが好ましい。止水部７の間隔が２ｍｍを超えるとリーク抑制効果が十分でない。なお、この止水部７を連続的に形成することで溝状に形成してもよい。
【００２２】
上述したような止水部７の深さ（Ｄ）は、スキン層４を貫通して不織布３にまで形成されていればよく、透過性支持層２にまで延在してもよい。
【００２３】
このスパイラル型膜モジュールの作用について説明する。
まず、袋状の膜シート１の内面側に原水Ｗを供給してスキン層４を透過させることで処理を行う。この際、濾過対象となる不純物等はスキン層４を通過できず、これにより不純物等が除去された処理水Ｗ１のみがスキン層４を透過することで所望の水質の処理水Ｗ１を得ることができる。
【００２４】
このとき接着剤層５の近傍でスキン層４に破断Ｂが生じていると、スキン層４から接着剤層５を経由して原水Ｗがリークしてしまうが、本実施形態においては接着剤層５上のスキン層４に止水部７が形成されているので、破断Ｂ部分を経由して接着剤層５から原水Ｗがリークしにくくなっている。
【００２５】
次に、上述したような本実施形態に係るスパイラル型膜モジュールの製造方法について説明する。図３に示すように、広げた状態の膜シート１の端縁の接着部５Ａにスキン層４の側から断続的に細孔１１を形成する。この細孔１１の内径を、０．１〜１０ｍｍの大きさとするのが好ましい。細孔１１の内径が０．１ｍｍ未満では、形成される止水部７の外径が０．１ｍｍ未満となり、リーク抑制効果が十分でなくなる一方、１０ｍｍを越えると接着部５Ａにおける膜の強度が低下するため好ましくない。また、この細孔１１は、２ｍｍ以下の間隔で断続的に形成されるのが好ましい。細孔１１の間隔が２ｍｍを超えるとリーク抑制効果が十分でない。さらに、この細孔１１は、スキン層４を貫通して不織布３にまで形成されていればよく、場合によっては透過性支持層２にまで延在してもよい。ただし、透過性支持層２を貫通すると接着部５Ａにおける膜強度が低下するため好ましくない。
【００２６】
上述したような細孔１１は、所望の間隔の波状の刃を有するローラーカッタを帯状の接着部５Ａの中心線に沿うように走行させることにより容易に形成することができる。続いて、接着部５Ａに接着剤を塗布して、膜シート１を折りたたんで接着部５Ａを重ね合わせることにより、細孔１１から接着剤が浸透して接着剤層５が固化するとともに、止水部７が形成されることになる。
【００２７】
したがって、ローラーカッタを接着剤のコータに付設することにより、細孔１１の形成と接着剤の塗布とを同時に行うことができ、細孔１１の形成に伴い作業性を損なうことがない。なお、ローラーカッタを平刃として溝を形成して、細孔１１を線状とすることで、線状の止水部７としてもよい。
【産業上の利用可能性】
【００２８】
本発明のスパイラル型膜モジュールは、スキン層の破断による原水リークが防止できるので、高いフラックスが要求される有機排水等の処理に有用である。
【図面の簡単な説明】
【００２９】
【図１】本発明の一実施形態に係るスパイラル型膜モジュールの縦断面図である。
【図２】本発明の一実施形態に係るスパイラル型膜モジュールを概略的に示す平面図である。
【図３】本発明の一実施形態に係るスパイラル型膜モジュールの製造方法を概略的に示す平面図である。
【図４】従来のスパイラル型膜モジュールの一例を示す縦断面図である。
【図５】従来のスパイラル型膜モジュールを示す平面図である。
【符号の説明】
【００３０】
１…膜シート
２…透過性支持層
３…不織布層（中間層）
４…スキン層
５…接着剤層
５Ａ…接着部
７…止水部
１１…細孔
Ｂ…破断
【特許請求の範囲】
【請求項１】
透過性支持層と中間層とスキン層とを有する膜シートを、スキン層を内側面として対向させて端縁部を接着部として接着剤により接合し、内側に供給された原水を外面側に透過させて処理するスパイラル型膜モジュールであって、
前記膜シートのスキン層から中間層にかけて、前記接着部に沿って連続的又は断続的に形成された止水部を有することを特徴とするスパイラル型膜モジュール。
【請求項２】
前記止水部は、その外径が０．１〜１０ｍｍの大きさであり、２ｍｍ以下の間隔で断続的に形成されていることを特徴とする請求項１に記載のスパイラル型膜モジュール。
【請求項３】
透過性支持層と中間層とスキン層とを有する膜シートを、スキン層を内側面として対向させて端縁部を接着部として接着剤により接合し、内側に供給された原水を外面側に透過させて処理するスパイラル型膜モジュールの製造方法であって、
前記膜シートの接着部に沿ってスキン層に溝又は細孔を形成した後、接着剤を塗布して接合することを特徴とするスパイラル型膜モジュールの製造方法。
【請求項４】
前記細孔の外径を０．１〜１０ｍｍの大きさとし、かつ２ｍｍ以下の間隔で断続的に形成することを特徴とする請求項３に記載のスパイラル型膜モジュールの製造方法。
【請求項５】
前記細孔を、前記中間層又は前記透過性支持層にまで形成することを特徴とする請求項３又は４に記載のスパイラル型膜モジュールの製造方法。
【請求項１】
透過性支持層と中間層とスキン層とを有する膜シートを、スキン層を内側面として対向させて端縁部を接着部として接着剤により接合し、内側に供給された原水を外面側に透過させて処理するスパイラル型膜モジュールであって、
前記膜シートのスキン層から中間層にかけて、前記接着部に沿って連続的又は断続的に形成された止水部を有することを特徴とするスパイラル型膜モジュール。
【請求項２】
前記止水部は、その外径が０．１〜１０ｍｍの大きさであり、２ｍｍ以下の間隔で断続的に形成されていることを特徴とする請求項１に記載のスパイラル型膜モジュール。
【請求項３】
透過性支持層と中間層とスキン層とを有する膜シートを、スキン層を内側面として対向させて端縁部を接着部として接着剤により接合し、内側に供給された原水を外面側に透過させて処理するスパイラル型膜モジュールの製造方法であって、
前記膜シートの接着部に沿ってスキン層に溝又は細孔を形成した後、接着剤を塗布して接合することを特徴とするスパイラル型膜モジュールの製造方法。
【請求項４】
前記細孔の外径を０．１〜１０ｍｍの大きさとし、かつ２ｍｍ以下の間隔で断続的に形成することを特徴とする請求項３に記載のスパイラル型膜モジュールの製造方法。
【請求項５】
前記細孔を、前記中間層又は前記透過性支持層にまで形成することを特徴とする請求項３又は４に記載のスパイラル型膜モジュールの製造方法。
【図１】
【図２】
【図３】
【図４】
【図５】
【図２】
【図３】
【図４】
【図５】
【公開番号】特開２００７−１４４２６８（Ｐ２００７−１４４２６８Ａ）
【公開日】平成１９年６月１４日（２００７．６．１４）
【国際特許分類】
【出願番号】特願２００５−３３９４４３（Ｐ２００５−３３９４４３）
【出願日】平成１７年１１月２４日（２００５．１１．２４）
【出願人】（０００００１０６３）栗田工業株式会社 (1,536)
【Ｆターム（参考）】
【公開日】平成１９年６月１４日（２００７．６．１４）
【国際特許分類】
【出願日】平成１７年１１月２４日（２００５．１１．２４）
【出願人】（０００００１０６３）栗田工業株式会社 (1,536)
【Ｆターム（参考）】
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