説明

スパイラル式熱交換器

【課題】
所定の間隔をあけて、渦巻状に多数回巻回された2枚の帯状伝熱板の相対向する両壁面に付着する全ての付着物を、全面に亘って他動的に又は自動的に掃除除去できるクリーニング部材を内装したスパイラル式熱交換器を提供する。
【解決手段】
前記スパイラル式熱交換器において、流体の入口及び又は出口を複数設け、その帯状伝熱板より長く、帯状伝熱板の流路を長手方向に2分割し、且つその間隔に充満する紐状クリーニング部材を設置し、そして前記複数設けた流体の入口、及び又は出口を交互に開閉操作することによって、2分割された夫々流路を自由に拡大又は縮小し、2枚の帯状伝熱板の相対向する両壁面を、前記紐状クリーニング部材がワイパーで拭くように自在に軸方向(帯状伝熱板の長手方向と直角方向)に振って摺動掃除させる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
この発明は1枚以上の帯状伝熱板を互いに所定の間隔をあけて渦巻き状に多数回巻回して構成されたスパイラル式熱交換器に関する。
更に詳しくは、前記2枚の帯状伝熱板の相対向する両壁面に、紐状クリーニング部材を摺動移動せしめることを特徴とするスパイラル式熱交換器に関するものである。
【背景技術】
【0002】
熱交換器にはスパイラル式の他に、プレート式、多管式、その他、家庭用から産業用まで沢山の種類があるが、どの形式であっても伝熱板に付着堆積して熱の伝導を低下させ、熱交換器の効率を悪化させる付着物を掃除、除去して伝熱板を再生しなければならない問題がある。
【0003】
家庭用のエアコン等は各自溜まった埃を拭く程度で済ませているが、長期間連続運転される産業用ではこの伝熱板の壁面の掃除と再生が極めて重要である。
而して上記産業用では、一部に洗浄液に塩素注入や、薬剤処理がなされることがあるが、環境上からも不都合である。
【0004】
然しながらこれら伝熱板の掃除は必須であり且つ大変な仕事である。
掃除の通常の手順は、先ず稼働中の装置の運転を止め、当該熱交換器が分解される。
そして産業用で最も広く使用されている多管式熱交換器では、蓋を開け、管の中は水流によってクリーニングボールやブラシを回転移動させて掃除をするが、管の外側は錆や煤が付いたままのことが多く、これらを除去するには更に大掛かりな作業を必要としていた。
【0005】
また産業用で次に使用されているプレート式熱交換器では、伝熱板の4周をガスケットで密封し、流体を対向流に流して熱交換するものである。
このプレート式熱交換器を掃除するときは、多数の組み立てボルトのナットを緩めて、一枚ずつ伝熱板をずらせて分解し、ガスケットを外し、伝熱板と伝熱板の間をあけ、主として人力で逐次且つ繰り返して掃除をすることがなされていた。
【0006】
またスパイラル式熱交換器は通常、図1に示すように、2枚の薄い帯状伝熱板2、2’を所定の間隔をあけて渦巻状に多数回巻回したもので、流体の一方は流路Aを外周から内芯へ、流体の他の一方は流路Bを内芯から外周へ、夫々完全な対向流となって流れ、熱交換するようになっている。図中4は胴部、5は蓋体、6はフランジである。
【0007】
スパイラル式熱交換器は、帯状伝熱板が渦巻状に多数回巻回されて構成されているため曲率が異なり、夫々の帯状伝熱板の各壁面を掃除して再生することが極めて困難である。 そこでスパイラル式熱交換器は一度組み立てると修理ができない、即ちスクラップになる問題があった。
更に、帯状伝熱板の間にディスタンスバー、ディスタンスピン等の部材を使用したものは、これら流路に突き出た部材が掃除を妨げる問題があった。
又上記ディスタンスピン等によらず、2枚の薄い帯状伝熱板の両開口端縁3を図7に示すように折曲げて溶接して帯筒状の1つの流路としたものは、前記帯筒状の外は比較的容易であるが、帯筒状の中を掃除することは更に困難となる問題があった。
【0008】
これらスパイラル式熱交換器の従来から行われているクリーニング方法は、渦巻状に巻回された伝熱板の開口端縁を閉じている少なくとも一方の蓋体を外し、ここから高圧洗浄水をノズルから噴出させて吹き落とすものであった。
【0009】
而して上記した渦巻状に巻回された帯状伝熱板を、自動的に掃除して再生することができるスパイラル式熱交換器は見当たらない。
このため、スパイラル式熱交換器は最小の温度差でも機能し、最も小型で最高の熱交換効率が得られる優れた熱交換器でありながら、次第に淘汰されている現状である。
【特許文献1】特願2007−285245号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0010】
この発明の課題は、従来提案されなかった、所定の間隔をあけて渦巻状に多数回巻回された2枚の帯状伝熱板の両壁面を、全面にわたって容易に、且つ同時に掃除除去することができるスパイラル式熱交換器を提供することを目的としている。
【0011】
そしてこの掃除の作業が、スパイラル式熱交換器を分解することなく、有姿のまま且つ自動的に行われるようにすることである。
【課題を解決するための手段】
【0012】
図2と図3〜5に示すように紐状クリーニング部材9は、帯状伝熱板2より長く、帯状伝熱板2の一端7に設けられた流体Aの入口aと、圧力洗浄水の入口bとの中間点から始まり、流体Aの出口a’と圧力洗浄水の出口b’が同様に設けられた帯状伝熱板2’の他の一端7’に至っている。10は出入口を保護するガイドである。
この紐状クリーニング部材9を前記複数設けた流体の入口及び又は出口を交互に開閉操作することによって、自在に軸方向(帯状伝熱板の長手方向と直角方向)に振って、長いワイパーのように摺動移動せしめる。
【0013】
即ち図3に展開して示すように、スパイラル式熱交換器1の通常運転中、流体Aは入口aから入って流路Aを通り、出口a’から排出される。
このとき紐状クリーニング部材9は流体Aの圧力で図3では、下方に広がり、紐状ガスケット11’側に張り付いた態様になっている。
【0014】
この状態でスパイラル式熱交換器を長時間運転し、帯状伝熱板2と、これに向き合って流路Aを構成する帯状伝熱板2’の相対向する両壁面に付着する付着物を除去する。
先ず図3に示す出口b’を閉じ、入口bから圧力洗浄水を注入する。すると紐状クリーニング部材9は図4に示すように矢印12のように湾曲13から上方に移動し、図5に示すようになる。この時、流路Aにあった流体は出入口a及び出口a’から排出される。
而して帯状伝熱板2と帯状伝熱板2’の隙間に充満する紐状クリーニング部材9は、接触している帯状伝熱板2と帯状伝熱板2’の相対向する両壁面を強力に摺動移動して付着物を除去することができる。
【0015】
復路はこれを逆に運転する。
即ち復路の高圧洗浄水は、入口a又は出入口aから導入される。すると、流路A’にあった往路の高圧洗浄水は、出入口b、b’から排出され図3に戻る。
【発明の効果】
【0016】
この発明による紐状クリーニング部材を内装すると、以下に列挙する種々の効果が得られる。
(1)スパイラル式熱交換器の中に容易に内装できる。
(2)スパイラル式熱交換器は有姿のままで、分解しなくても良い。
(3)出入口a、a’、b、b’を増設し、バルブを切り替えるだけで内装された紐状クリーニング部材がワイパー状に、帯状伝熱板の長手方向に直角に移動し、蛇行などとなって帯状伝熱板の相対向する両壁面を摺動移動して掃除ができる。
(4)紐状クリーニング部材は屈曲自在であり、且つ掃除をする対象によってゴム等の材質、構成等が選択できる。
(5)通常運転中でも紐状クリーニング部材の使用ができるので、掃除のためにラインを止める必要が無くなる。
(6)任意の流路に適用できる。
(7)複数の紐状クリーニング部材が使用できる。
(8)出入口a、a’、b、b’から注入される高圧洗浄水の圧力の強弱、量を調節して紐状クリーニング部材で任意の場所を集中的に摺ったり、蛇行させたり等ができる。
(9)故障などで紐状クリーニング部材が機能しなくなっても、図3の状態で通常運転ができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0017】
本発明の実施形態を以下の実施例1〜実施例6に基づいて説明する。
【実施例1】
【0018】
この実施例は図2に示す特願2007−285245号に適用したものである。
即ち、図2に示すようにスパイラル式熱交換器1の帯状伝熱板2、2’の開口端縁3には連設されたスタッドピン8で支えられた紐状ガスケット11、11’が流路Aと流路Bを構成している。
即ちこの実施例のスパイラル式熱交換器1の芯筒Cには、流体の出入口aと、出入口bとが設けられ、その外側を帯状伝熱板2の開口端縁3に沿って紐状ガスケット11、11’が渦巻状に巻回され、開口端縁3から芯筒C及び又は外胴4から周回してエンドレスに設置されている。図3はこの流路Aに紐状クリーニング部材9を内装したものである。
以下この発明の紐状クリーニング部材9の態様を図3〜5に展開して示す。
【0019】
図3〜5に示すように紐状クリーニング部材9は、一端7が流体の出入口aと出入口bとの中間を始点とし、帯状伝熱板2の開口端縁3の内側に沿っての出入口a’と出入口b’との中間を終点とする他の一端7’に到る。そしてこれら流体の出入口aと出入口b、及び出入口a’出入口b’はバルブ(図示しない)で操作することができる。この紐状クリーニング部材9は途中蛇行ができる充分な長さがある。図中10はガイドである。
【0020】
この例の紐状クリーニング部材9の操作は以下の通りである。
スパイラル式熱交換器としての通常の運転は図3に示す状態で行われる。
即ち、熱交換する流体は入口aから入って流路Aを通り、出口a’から出る。
したがって出入口a、a’は通常運転の口径が設けられている。
他方、出入口b、b’の口径は高圧洗浄水を注入するだけであるから小さくてよい。
【0021】
掃除の第一工程(往路)は図3に示す。先ず出入口a及び出入口a’を開放してから、出入口b’を閉じ、入口bから流路A’に高圧洗浄水を注入する。すると。高圧洗浄水の圧力によって紐状クリーニング部材9は紐状ガスケット11’を離れ、図4に示す矢印12の方向に湾曲13のように移動し、最後に紐状ガスケット11に密着する。
この時、相対向する帯状伝熱板2、2’の両壁面及び開口端縁3を封止している紐状ガスケット11、11’迄の流路Aに充満していた熱交換の流体は、予め開放されている出入口a及び又はa’から排出される。而して流路A’は全域が高圧洗浄水に占められる。
【0022】
掃除の第二工程(復路)は図5に示す。
先ず出入口b、b’を開放してから出入口a’を閉じ、出入口aから流路Aに高圧洗浄水をを注入する。すると、高圧洗浄水の圧力によって紐状クリーニング部材9は紐状ガスケット11を離れて湾曲13’のように摺動移動し、最後に全部が紐状ガスケット11’に密着して元の帯状伝熱板2、2’の位置に戻る。
この時、流路A’に充満していた第一工程(往路)の洗浄水は、予め開放されている出入口b及び又は出入口b’から排出される。
而して流路Aは全域が第二工程(復路)の洗浄水に占められる。
【0023】
上記往路、復路は必要に応じて繰り返しても良い。
又高圧洗浄水の圧力を強弱変化させ、任意の脈動、蛇行などを起させたり、出入口を変えたり、同じ場所を繰り返し摺動させることもできる。
【0024】
この実施例で使用される紐状クリーニング部材9は図2、図7に示すように断面がX状のゴムで、芯にワイヤー15を包み、ブレード状ゴムの先端16は尖った態様である。
従って紐状クリーニング部材9は屈曲自在で、渦巻状に巻回され帯状伝熱板2、2’の不均一に連続する円弧にも自在に追従して移動し、背後より受ける高圧洗浄水を漏らさず、X状の先端16で付着物を削ぎ落とし、帯状伝熱板2、2’の掃除と再生がなされる。
即ち、該紐状クリーニング部材は帯状伝熱板の相対向する両壁面にを摺動してその付着物を除去するのに好適、且つ高圧洗浄水の圧力を受け易いようにX状に裾広がりで、少なくとも一部がワイパー状の先端16をなし紐状クリーニング部材9の移動の往路、復路共に帯状伝熱板2、2’の両壁面に密着して摺動し、掃除ができるように構成されている。
【実施例2】
【0025】
この例は実施例1の紐状クリーニング部材9を2本にしたものである。
図6に示すようにスパイラル式熱交換器1の帯状伝熱板2、2’にはディスタンスバーを兼ねた仕切り17が設けられている。
この例では出入口a、b等は増加するが、紐状クリーニング部材9の移動距離は1/2に減少する。従って、相対向する帯状伝熱板の両壁面の距離、即ち隙間が狭いとき、又は筒が長いとき、曲率が小さいときなどによい。また耐圧性が良くなる。
【実施例3】
【0026】
この実施例は、図7に示すように帯状伝熱板2、と帯状伝熱板2’との開口端縁3の一方が折曲げ18られ、溶接されて成るスパイラル式熱交換器に適用したものである。
流路Aは両方の伝熱板2,2’の開口端縁3、3’が溶接されて帯筒状を成しているため、この中に固体のクリーニング部材を入れて機械的な掃除をすることができない。
【0027】
従って帯筒状の流路Aではなく、流路Bを掃除する例である。
即ち、流路Bの開口端縁3に沿って構成された凹所19に紐状充填部材を20が充填され、紐状クリーニング部材9が前記凹所19まで届かないようになっている。しかしてワイヤー15を包んだ紐状クリーニング部材9は、前記折曲部18の凹所19に影響されず、実施例1と同様に相対向する帯状伝熱板の両壁面に摺動して掃除をすることができる。
【実施例4】
【0028】
この実施例は図8に示す。充分な長さの紐状クリーニング部材9を動かすレバー21は、一端22に紐状クリーニング部材9と接続し、他の一端は軸23と結合してレバー21を扇状に旋回、回転又はスライドさせるようになっている。即ち外部から歯車(図示しない)などで、軸23によってレバー21を点線24に移動し、入口aから高圧洗浄水を注入すると、紐状クリーニング部材9は実施例1と同様に湾曲13を経て点線で示す紐状クリーニング部材9’の位置に移動する。而して実施例1と同様に相対向する帯状伝熱板の両壁面に摺動移動して掃除することができる。この例では出入口a、a’は夫々1つでも良い。
【0029】
尚上記では1本の長い紐状クリーニング部材をワイパー状に設けて、これと接触する帯状伝熱板の両壁面に波状、蛇行又は平行に摺動移動せしめて掃除をする例で説明したが、これに限定せず、複数の紐状クリーニング部材を設けてもよい。
更に紐状クリーニング部材の形状、構成材料も実施例に限定せず、複数のワイヤーを包んだり、X状のゴムに金属片14やセラミックを混ぜたり、また添付するなどしても良い。
【図面の簡単な説明】
【0030】
【図1】図1は従来のスパイラル式熱交換器の一部を削除した断面図である。
【図2】図2は実施例1の説明図である。
【図3】図3は実施例1を展開して示した説明図である。
【図4】図4は実施例1の紐状クリーニング部材の往路を展開して示した説明図である。
【図5】図5は実施例1の紐状クリーニング部材の復路を展開して示した説明図である。
【図6】図6は実施例2を展開して示した説明図である。
【図7】図7は実施例3の開口端縁の縦断面図である。
【図8】図8は実施例4を展開して示した説明図である。
【符号の説明】
【0031】
A.流路
A’流路
B.流路
B’流路
C.胴部
a.出入口
a’出入口
b.出入口
b’出入口
1.スパイラル式熱交換器
2.帯状伝熱板
2’帯状伝熱板
3.開口端縁
4.外胴
5.蓋体
6.フランジ
7.端部
8.スタッドピン
9.紐状クリーニング部材
10.ガイド
11.ガスケット
12.矢印
13.湾曲
14.金属片
15.ワイヤー
16.先端
17.仕切り
18.折り曲げ
19.凹所
20.充填材
21.レバー
22.一端
23.軸
24.点線


【特許請求の範囲】
【請求項1】
少なくとも一組(2枚)の長尺の帯状伝熱板を互いに所定の間隔をあけて渦巻状に巻回して構成されたスパイラル式熱交換器であって、このスパイラル式熱交換器に流体の入口及び又は出口を夫々一組又は複数組設け、その中間に帯状伝熱板を長手方向に縦断する前記帯状伝熱板より長い紐状クリーニング部材を設置し、そして前記複数設けた流体の入口及び又は出口を交互に開閉操作することによって、紐状クリーニング部材を自在に軸方向(帯状伝熱板の長手方向と直角方向)に振って、長いワイパーのように摺動移動せしめることを特徴とするスパイラル式熱交換器。
【請求項2】
スパイラル式熱交換器の流体の入口、及び又は出口に設けたレバーを、外部から旋回又はスライド操作することによって、前記紐状クリーニング部材を自在に軸方向(帯状伝熱板の長手方向と直角方向)に振らしめ、紐状クリーニング部材を長いワイパーのように摺動移動せしめることを特徴とするスパイラル式熱交換器。
【請求項3】
前記流路が帯状伝熱板の長手方向に少なくとも2分割され、それに対応した紐状クリーニング部材と出入口とを設けたことを特徴とする請求項1〜2に記載のスパイラル式熱交換器。
【請求項4】
流路Aの開口端縁3に沿って構成された凹所19に紐状充填部材16が充填されたことを特徴とする請求項1〜3に記載のスパイラル式熱交換器。
【請求項5】
前記スパイラル式熱交換器の流路を掃除するための紐状クリーニング部材9であって、該紐状クリーニング部材9はゴム等の柔軟な紐状ワイパー素材の中に、屈曲自在なワイヤー等の芯材を包んで成ることを特徴とする請求項1〜4に記載のスパイラル式熱交換器。


【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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