説明

スパイラル管の製造装置

【課題】簡単な構成で、スパイラル管の成形時に傷が発生するのを防いで見映えのよいスパイラル管を製造できるようにする。
【解決手段】帯材の端部をハゼ加工しながら送り出し、複数のローラー11を配置したスパイラル成形部6の内周面6aに沿って帯材をスパイラル状に巻きながら、隣り合うハゼ部を互いに固着してスパイラル管を製造する。ハゼ加工ではなく、スパイラル状に巻かれたスパイラル管における隣り合う帯材の端部を互いに溶接するようにしてもよい。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、空調やコンクリート型枠に用いられるスパイラル管の製造装置に関し、特にスパイラル成形部の改善に関するものである。
【背景技術】
【0002】
従来より、帯材の端部をハゼ加工しながら送り出し、スパイラル成形部の内周面に沿って帯材をスパイラル状に巻きながら、隣り合うハゼ部を互いに固着してスパイラル管を製造する製造装置は知られている。
【0003】
従来のスパイラル管の製造装置では、帯材をスパイラル成形部内周面に沿って巻く際、帯材をスパイラル成形部の内周面に対して滑らせることによって線状の傷が発生し、見映えが悪いという問題がある。この傷は、スパイラル成形部の内周面を平滑にしたとしても、帯材のめっき粉等の異物がいったん内周面に付着すれば、この異物を取り除かない限り、線状に傷が生じるのをさけることができない。
【0004】
そこで、例えば、特許文献1では、帯材のハゼ加工やスパイラル成形時に発生する傷を、成形後に塗装液を噴射して補修する発明が記載されている。
【0005】
また、特許文献2には、長いスパイラル管を成形するときに受け部ローラーとの接触によって発生する傷を、スパイラル成形と共に外装処理をして目立たないようにする発明が記載されている。
【特許文献1】特開2003−080310号公報
【特許文献2】特開平09−057336号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
しかしながら、上記特許文献1及び2の発明は、傷の発生自体を防止するのではなく、発生した傷を目立たないようにするものであるために、余計な外装処理を必要とし、装置全体が複雑なものとなるという問題がある。
【0007】
本発明は、かかる点に鑑みてなされたものであり、その目的とするところは、簡単な構成で、スパイラル管の成形時に傷が発生するのを防いで見映えのよいスパイラル管を製造できるようにすることにある。
【課題を解決するための手段】
【0008】
上記の目的を達成するために、この発明では、スパイラル成形部内周面に複数のローラーを配置した。
【0009】
具体的には、第1の発明では、
スパイラル成形部の内周面に沿って帯材をスパイラル状に巻きながらスパイラル管を製造するスパイラル管の製造装置を対象とし、
上記スパイラル成形部の内周面には、複数のローラーが配置されている。
【0010】
上記の構成によると、ローラーによって帯材とスパイラル成形部内周面との間の摩擦抵抗が減るので、めっき粉等の異物が発生しにくくなり、帯材供給に必要な駆動力も減る。仮にめっき粉等の異物が発生してローラーの外面に付着しても、帯材がローラー外面上を進むときに、異物はローラー間に落下するなどによりローラー外面上にとどまらないので、異物により帯材に傷を付け続けることはない。
【0011】
第2の発明では、第1の発明において、
上記帯材の端部をハゼ加工しながら送り出し、上記スパイラル成形部の内周面に沿って該帯材をスパイラル状に巻きながら、隣り合うハゼ部を互いに固着してスパイラル管を製造する構成とする。
【0012】
上記の構成によると、スパイラル成形部を通過する際にハゼ加工が行われるので、スパイラル管の製造が容易であると共に、ハゼ部が固着されることにより、スパイラル管の剛性が確保される。
【0013】
第3の発明では、第1又は第2の発明において、
上記複数のローラーは、その中心軸がそれぞれ上記スパイラル成形部の中心軸と平行となるように並べて配置されている。
【0014】
上記の構成によると、スパイラル成形部の中心軸とローラーの中心軸とが平行であるので、複数のローラーをスパイラル成形部の内面に並べて配置しやすく、また、帯材が滑らかに内面上を進むので、帯材に傷が発生しない。
【0015】
第4の発明では、第3の発明において、
上記ローラーは、上記スパイラル成形部の内周面の入口部分から少なくとも1/4周の範囲に配置されている。
【0016】
上記の構成によると、スパイラル成形時にめっき粉が発生しやすいのは、平らな帯材を丸め始める内周面の入口近辺であるので、この入口近辺にローラーを配置することにより、傷の発生が効果的に防止される。
【0017】
第5の発明では、第1乃至第4のいずれか1つの発明において、
上記帯材は、亜鉛めっき鋼板よりなるものとする。
【0018】
上記の構成によると、亜鉛めっき鋼板であってもローラーの作用により、めっき粉が発生しにくいので、スパイラル管に傷が付くのが効果的に防止される。
【発明の効果】
【0019】
以上説明したように、本発明のスパイラル管の製造装置によると、スパイラル成形部の内周面に複数のローラーを配置したことにより、簡単な構成で異物の付着を防止し、スパイラル管の成形時に傷が発生するのを防いで見映えのよいスパイラル管を製造することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0020】
以下、本発明の実施形態を図面に基づいて説明する。
【0021】
−スパイラル管の製造装置の構成−
図1は本発明の実施形態のスパイラル管の製造装置1を示し、この製造装置1は、図7に示すスパイラル管20を製造するもので、コイル2から帯材3を供給するアンコイラー4を備えている。このアンコイラー4は、亜鉛めっき鋼板よりなる帯材3のコイル2を回転自在に支持している。アンコイラー4の次工程にはローラートレイン5が設けられ、このローラートレイン5は、アンコイラー4に支持されたコイル2から帯材3を引き出しながら白矢印の方向へ送り出す。詳細は図示しないが、ローラートレイン5は、駆動モータ5aと、送出ローラー5bと、帯材3の両側部をハゼ加工する加工部とを備え、帯材3を送出ローラー5bで引き出しながら、加工部で帯材3の幅方向両端にハゼ加工(折り曲げ加工)を行うように構成されている。ハゼ加工は、例えば、アンコイラー4側から見て帯材3の左側を下方に垂直に折り曲げ、右側を上方に垂直に折り曲げるようにハゼ部3aを形成する(図6参照)。ハゼ加工された帯材3は、スパイラル成形部6に対して、その内周面6aに沿わせて押し込まれることにより、スパイラル状に巻き付けられる。
【0022】
スパイラル成形部6の入口部分6eの右側には、カシメ部7が設けられ、帯材3はスパイラル成形部6の内周面6aを通過しながら、カシメ部7で隣り合うハゼ部3aが重なり合い、加圧されてかしめられるようになっている。
【0023】
スパイラル成形部6でスパイラル状に巻き付けられたスパイラル管20は、黒矢印の方向へ受け台8上に送り出され、所定長さに成形されると、カッター(図示せず)により切断されるようになっている。
【0024】
次に、上記スパイラル成形部6の構成について詳細に説明する。
【0025】
図2乃至図4に示すように、スパイラル成形部6は、例えば、厚肉の鋼管をスパイラル状に切断するなどにより製造される。内周面6aの内径は、スパイラル管20の外径に合わせて設定される。入口部分6eから半周にわたり、両端の側壁6fを残して凹んだ凹溝10が形成されている。
【0026】
図4及び図6に示すように、スパイラル成形部6の入口部分6eの右側の側壁6fと、1周回った左側側壁6fとの間には、隙間6gが形成され、その隙間6gの入口部分6e部分の広くなった領域には、カシメ部7が設けられている。カシメ部7は、上下のカシメローラー7a,7bを有し、上側カシメローラー7aは平坦な外周面を備え、下側カシメローラー7bは、凹状の外周面を備えている。帯材3はスパイラル成形部6の内周面6aを通過しながら、カシメローラー7a,7bに挟まれて隣り合うハゼ部3aが加圧されてかしめられるようになっている。かしめられたハゼ嵌合部21は、その後、隙間6gを通過するようになっている。
【0027】
図5に示すように、この凹溝10の内部には、複数のローラー11が互いに平行に並べられている。各ローラー11は、中心軸11aとこの中心軸11a回りに回転する外筒11bとを有している。ローラー11は、その中心軸11aがスパイラル成形部6の中心軸6hと平行となるように並んで配置されている。この外筒11bの外径は特に限定されないが、密に配置するためには15mm程度が望ましい。図6に示すように、ローラー11の表面は、入口部分6eの側壁6fよりも高い位置にあり、帯材3と側壁6fとの間に隙間Cが発生するようになっている。このようにすることで、帯材3が側壁6fと接触しないようになっている。ローラー11間の隙間は、互いに干渉しない程度に離れて配置されている。本実施形態では、15本のローラーが約半周にわたり配置されているが、少なくとも1/4周(軸方向から見て90°)の範囲に配置されていればよい。なお、半周よりも広い範囲に設けても、傷防止の効果は変わらない。
【0028】
図5及び図6に示すように、入口部分6eの右側にはカシメ部7が配置されることから、最初の2本のローラー11の長さL1は他のローラー11の長さL2に比べて短いものとなっている(L1<L2)。ローラー11の長さL1,L2よりも帯材3の幅Wの方が長く(L1<L2<W)、左側のハゼ部3aは、スパイラル成形部6の側壁6fよりも外側に位置し、1周した帯材の左側のハゼ部3aが、新たに入口部分6eに入り込んだ右側のハゼ部3aと重なり合ったところを、上下のカシメローラー7a,7bで挟み込んで互いにかしめられるようになっている。
【0029】
半周以降の内周面6aは、ローラー11が設けられていない平滑面で構成されている。この平滑面の表面とローラー11の表面とは、ほぼ一致している。平滑面は、平滑で摩擦係数の低いめっき加工をすることが望ましい。
【0030】
−スパイラル管の製造装置の作動−
次に、本実施形態にかかるスパイラル管の製造装置1の作動について説明する。
【0031】
まず、図1に示すように、アンコイラー4に亜鉛めっき鋼板よりなるコイル2を取り付け、帯材3の先端をローラートレイン5まで延ばす。
【0032】
次いで、ローラートレイン5の駆動モータ5aを駆動し、送出ローラー5bを回転させて帯材3を引き出しながら、加工部でハゼ加工を行う。
【0033】
次いで、図6に示すように、ハゼ加工された帯材3がスパイラル成形部6に供給される。この帯材3は、入口部分6eから半周の間はローラー11に接しながら、その後は平滑面に接しながら、図2,図4及び図5に示す白矢印の方向へ進みながらスパイラル状に巻かれて1周し、隣り合うハゼ部3aがカシメ部7により固着され、ハゼ嵌合部21が形成される。このとき、ローラー11によって帯材3とスパイラル成形部6の内周面6aとの間の摩擦抵抗が減り、めっき粉等の異物が発生しにくくなり、帯材3供給に必要な駆動力も減る。仮にめっき粉等の異物が発生してローラー11の外面に付着しても、帯材3がローラー11外面上を進むときに異物はローラー11間に落下する等により、ローラー11上に付着し続けることはないので、異物により帯材3に傷を付けることはない。
【0034】
次いで、スパイラル加工されたスパイラル管20が黒矢印の方向へ受け台8上を進み、所定の長さになったときにカッターで切断され、図7に示すスパイラル管20が完成する。
【0035】
−実施形態の効果−
したがって、本実施形態にかかるスパイラル管の製造装置1によると、スパイラル成形部6の内周面6aに複数のローラー11を配置したことにより、簡単な構成でスパイラル成形部6の内周面6aに異物が付着するのを防止し、スパイラル管20の成形時に傷が発生するのを防いで見映えのよいスパイラル管20を製造することができる。
【0036】
(その他の実施形態)
本発明は、上記実施形態について、以下のような構成としてもよい。
【0037】
すなわち、上記実施形態では、帯材3は、亜鉛めっき鋼板としたが、亜鉛めっき以外のめっき鋼板でもよく、ステンレス、アルミなどでもよい。
【0038】
上記実施形態では、スパイラル管の製造装置1は、アンコイラー4、ローラートレイン5及び受け台8を有するものとしたが、これに限定されず、少なくとも本実施形態のスパイラル成形部6を備えていればよい。
【0039】
上記実施形態では、帯材3の端部はハゼ加工するようにしたが、隣り合う帯材の端部を互いに溶接するスパイラル溶接鋼管の製造ラインにおいても本発明のスパイラル成形部を使用することができる。この場合には、カシメ部の位置に溶接装置を配置してもよいし、スパイラル成形部を通過後に溶接するようにしてもよい。
【0040】
なお、以上の実施形態は、本質的に好ましい例示であって、本発明、その適用物や用途の範囲を制限することを意図するものではない。
【図面の簡単な説明】
【0041】
【図1】スパイラル管の製造装置の概略を示す平面図である。
【図2】スパイラル成形部を入口側から見た斜視図である。
【図3】スパイラル成形部を示す正面図である。
【図4】図3のIV−IV線断面図である。
【図5】入口部分周辺のローラーをV方向から見た矢視図である。
【図6】帯材が載ったスパイラル成形部の入口部分を拡大して示す概略図である。
【図7】スパイラル管を示す側面図である。
【符号の説明】
【0042】
1 スパイラル管の製造装置
3 帯材
3a ハゼ部
6 スパイラル成形部
6a 内周面
6e 入口部分
6f 側壁
6h 中心軸
7 カシメ部
11 ローラー
11a 中心軸
20 スパイラル管

【特許請求の範囲】
【請求項1】
スパイラル成形部の内周面に沿って帯材をスパイラル状に巻きながらスパイラル管を製造するスパイラル管の製造装置であって、
上記スパイラル成形部の内周面には、複数のローラーが配置されている
ことを特徴とするスパイラル管の製造装置。
【請求項2】
請求項1に記載のスパイラル管の製造装置において、
上記帯材の端部をハゼ加工しながら送り出し、上記スパイラル成形部の内周面に沿って該帯材をスパイラル状に巻きながら、隣り合うハゼ部を互いに固着してスパイラル管を製造する
ことを特徴とするスパイラル管の製造装置。
【請求項3】
請求項1又は2に記載のスパイラル管の製造装置において、
上記複数のローラーは、その中心軸がそれぞれ上記スパイラル成形部の中心軸と平行となるように並べて配置されている
ことを特徴とするスパイラル管の製造装置。
【請求項4】
請求項3に記載のスパイラル管の製造装置において、
上記ローラーは、上記スパイラル成形部の内周面の入口部分から少なくとも1/4周の範囲に配置されている
ことを特徴とするスパイラル管の製造装置。
【請求項5】
請求項1乃至4のいずれか1つに記載のスパイラル管の製造装置において、
上記帯材は、亜鉛めっき鋼板よりなる
ことを特徴とするスパイラル管の製造装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【公開番号】特開2009−160614(P2009−160614A)
【公開日】平成21年7月23日(2009.7.23)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−1023(P2008−1023)
【出願日】平成20年1月8日(2008.1.8)
【出願人】(000142595)株式会社栗本鐵工所 (566)
【Fターム(参考)】