説明

スパウト

【課題】一旦開封すると再封することができず、しかも、内容物を充填することができるスパウトを提供する。
【解決手段】パウチにヒートシールされるスパウト本体10と、このスパウト本体10の注出口部13を閉塞する蓋体20とを備えており、スパウト本体10の注出口部13の下半部には、その外周面に雄ねじ13bが形成されている。蓋体20は、注出口部13を閉塞するキャップ21と、このキャップ21の下端に切り離し可能に連結された、内周面に雄ねじ13bに螺合する雌ねじ22cが形成されたタンパーリング22とを有しており、キャップ21は、注出口部13に保持されない状態で、注出口部13の上半部に嵌合することで、注出口部13を閉塞するようになっている。タンパーリング22は、その内周面に雄ねじ13bに螺合する雌ねじ22cが形成されており、ねじを緩める方向に回り止めされた状態で、注出口部13の下半部に螺合している。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
この発明は、パウチ容器等に装着されるスパウト、特に、再封不能なスパウトに関する。
【背景技術】
【0002】
パウチ容器に装着されるスパウトとしては、特許文献1に開示されているように、注出口部に取り付けたスクリューキャップによって、注出口を開閉するツーピースタイプのスパウトや、特許文献2に開示されているように、注出筒の上端部に破断可能な薄肉部を介して連設された閉止部を折り取ることによって開封するワンピースタイプのスパウトがあり、ツーピースタイプのスパウトには、開封されたことが分かるように、注出口部に取り付けたタンパーリングにスクリューキャップが切り離し可能に連設されたタンパーエビデンス構造が採用されているものもある。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開平11−180463号公報
【特許文献2】特開2009−190781号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
ところで、介護食品や医薬品等は、栄養士やドクターの処方に基づき摂取が義務づけられることから、こういった介護食品や医薬品等の一回の摂取量をパウチ容器に充填して供給する場合、パウチ容器一袋分の全てを摂取する必要があるが、スクリューキャップによって注出口を開閉するツーピースタイプのスパウトが装着されたパウチ容器では、一旦開封した後、スクリューキャップによって再封することができるため、充填された介護食品や医薬品等を何回かに分けて摂取する場合があり、介護食品や医薬品等における一回の摂取量分を充填する容器として適しているとは言えない。特に、開封後にすぐに変質してしまう内容物の場合は、その問題が顕著に現れることになる。
【0005】
これに対して、閉止部を折り取ることによって開封するワンピースタイプのスパウトが装着されたパウチ容器では、一旦開封すると、再封することができないので、介護食品や医薬品等における一回の摂取量分を充填する容器として適しているといえるが、こういったスパウトが装着されたパウチ容器では、スクリューキャップによって注出口を開閉するツーピースタイプのスパウトを装着したパウチ容器のように、内容物をスパウトから充填することができないので、スパウトが装着されたパウチの一部に充填口を形成しておき、その充填口から内容物を充填した後、充填口を閉塞するといった袋充填を採用することになる。
【0006】
しかしながら、袋充填を採用すると、パウチ内に充填ノズルを挿入するためのスペースが必要になるので、パウチ自体が必要以上に大きくなると共に、パウチの製造コストが高くなるといった問題がある。
【0007】
そこで、この発明の課題は、一旦開封すると再封することができず、しかも、内容物を充填することができるスパウトを提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0008】
上記の課題を解決するため、請求項1に係る発明は、容器本体に固着されるスパウト本体と、前記スパウト本体の注出口部を閉塞する蓋体とを備えたスパウトにおいて、前記蓋体は、前記注出口部を閉塞するキャップと、前記キャップの下端に切り離し可能に連結されたタンパーリングとを有し、前記キャップは、前記注出口部に保持されない状態で、前記注出口部の上半部に嵌合することで、前記注出口部を閉塞するようになっており、前記タンパーリングは、少なくとも一方向に周り止めされると共に上方に抜け止めされた状態で、前記注出口部の下半部に保持されていることを特徴とするスパウトを提供するものである。
【0009】
また、請求項2に係る発明は、前記注出口部の下半部には、その外周面に雄ねじが形成されており、前記タンパーリングには、その内周面に前記雄ねじに螺合する雌ねじが形成されており、前記タンパーリングは、ねじを緩める方向に回り止めされた状態で、前記注出口部の下半部に螺合していることを特徴としている。
【発明の効果】
【0010】
以上のように、請求項1に係る発明のスパウトは、少なくとも一方向に周り止めされると共に上方に抜け止めされた状態で、スパウト本体における注出口部の下半部に保持されているタンパーリングに切り離し可能に連結されたキャップが、注出口部に保持されない状態で、注出口部の上半部に嵌合することで、注出口部を閉塞するようになっているので、キャップを摘んで他方向に回すと、キャップがタンパーリングから切り離されて開封されるが、キャップ自体は、注出口部に保持されないようになっているので、開封後に再封することはできず、介護食品や医薬品等における一回の摂取量分を充填する容器として適している。
【0011】
しかも、このスパウトが装着されたパウチ容器は、従来から使用されている、スクリューキャップによって注出口部を開閉するツーピースタイプのスパウトが装着されたパウチ容器と同様に、キャップが連結されたタンパーリングを、スパウト本体における注出口部の下半部に保持する前に、スパウト本体の注出口部からパウチ内に内容物を充填することができるので、パウチ自体が必要以上に大きくなることがなく、パウチの製造コストも最小限に抑えることができる。
【0012】
また、従来のスクリューキャップタイプのスパウトは、スクリューキャップを緩める方向にタンパーリングを回り止めした状態で、スクリューキャップを注出口部の上半部に螺合させることで、スクリューキャップが連結されたタンパーリングをスパウト本体における注出口部の下半部に保持することになるが、請求項2に係る発明のスパウトは、ねじを緩める方向に回り止めされたタンパーリングを注出口部の下半部に螺合させることで、キャップが連結されたタンパーリングを注出口部の下半部に取り付けて保持するようになっているので、従来のスクリューキャップタイプのスパウトのスパウト本体の注出口部に、タンパーリングが連結されたスクリューキャップを取り付ける装置によって、キャップが連結されたタンパーリングをスパウト本体における注出口部に取り付けることができる。
【図面の簡単な説明】
【0013】
【図1】この発明に係るスパウトの一実施形態を示す正面図である。
【図2】(a)は同上のスパウトにおけるスパウト本体の注出口部を蓋体で閉塞した状態を示す縦断面図、(b)は(a)のX−X線に沿った断面図である。
【図3】(a)は同上のスパウトにおけるスパウト本体の注出口部を示す縦断面図、(b)は(a)のY−Y線に沿った断面図である。
【図4】(a)は同上のスパウトにおける蓋体を示す縦断面図、(b)は同上の蓋体を示す底面図である。
【図5】(a)は同上のスパウトの開封前の状態を示す斜視図、(b)は同上のスパウトの開封後の状態を示す斜視図である。
【図6】同上のタンパーリングの周り止め状態を説明するための説明図である。
【図7】同上のスパウトの開封後の状態を示す縦断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0014】
以下、実施の形態について図面を参照して説明する。図1及び図2に示すように、このスパウト1は、介護食品や医薬品等の一回の摂取量を充填するパウチ容器に採用されるものであり、パウチにヒートシールされるスパウト本体10と、このスパウト本体10に取り付けられる蓋体20とから構成されている。
【0015】
前記スパウト本体10は、図1〜図3に示すように、パウチにヒートシールされる横断面舟形状の装着部11と、この装着部11の上部に順次連設された把持部12及び筒状の注出口部13と、装着部11の下部に連設された横断面十字形状のリブによって形成された導出補助部14とから構成されており、導出補助部14がパウチ内に挿入されることで、パウチを形成している表裏一対の外装シートが密着して装着部11に形成された内容物の導出孔(図示せず)を閉塞しないようになっている。
【0016】
前記把持部12は、所定間隔を開けて形成された、略長方形状の上下一対のフランジ12a、12bを有しており、このフランジ12a、12bの間を把持することで、このスパウト1や、このスパウト1が装着されたパウチ容器を移送することができるようになっている。
【0017】
前記注出口部13は、図3(a)、(b)に示すように、その下半部が厚肉に形成されていると共に、その厚肉部の外周面には、上側から、径方向外側に張り出す円周状の突条13a、雄ねじ13b及び周方向に等間隔で配置された、径方向外側に張り出す4つのラチェット歯13cが順次形成されており、各ラチェット歯13cは、注出口部13を下方側から見て、時計の反回転方向側の張出量が最も大きく、時計の回転方向に向かって徐々に張出量が小さくなっている。
【0018】
前記蓋体20は、図1、図2及び図4に示すように、スパウト本体10の注出口部13の上半部に嵌合することで注出口を閉塞するキャップ21と、このキャップ21の下端に、薄肉の連結部23を介して切り離し可能に連結されたタンパーリング22とから構成されており、キャップ21の内部上面には、注出口部13の上端部が嵌合する周溝21aが形成されている。
【0019】
前記タンパーリング22の上端面には、タンパーリング22を下方側から見て、時計の回転方向側が真上に立ち上がると共に、時計の反回転方向側が下がり傾斜になった略台形状の二対の突起22a、22aが形成されており、キャップ21の下端面には、二対の突起22a、22aに嵌合する略同一形状の凹部21b、21bが形成されている。
【0020】
また、前記タンパーリング22の内周面には、上側から、注出口部13の突条13aの下面に係止される、径方向外側に張り出す円周状の突条22b、注出口部13の雄ねじ13bに螺合する雌ねじ22c及び周方向に等間隔で配置された、タンパーリング22を下方側から見て、時計の回転方向側に張り出す8つのラチェット爪22dが形成されており、タンパーリング22を注出口部13の下半部にねじ込む際は、ラチェット爪22dが変形しながら、注出口部13のラチェット歯13cを乗り越えるようになっているが、一旦、ねじ込んだタンパーリング22を緩めようとしても、ラチェット爪22dがラチェット歯13cに係止され、タンパーリング22が周り止めされるので、緩めることができないようになっている(図6参照)。
【0021】
この蓋体20を注出口部13に嵌め込んで、タンパーリング22の雌ねじ22cを注出口部13の雄ねじ13bにねじ込むと、図2(a)、(b)に示すように、タンパーリング22の突条22bの上面が注出口部13の突条13aの下面に係止されると共に、キャップ21の周溝21aが注出口部13の上端部に嵌合することで、注出口がキャップ21によって閉塞されるようになっている。
【0022】
なお、タンパーリング22の雌ねじ22cを注出口部13の雄ねじ13bにねじ込む際、キャップ21を持って蓋体20を回転させても、タンパーリング22に形成された突起22aにおける真上に立ち上がった端面がキャップ21に形成された凹部21bにおける対応する部分に係止されるので、キャップ21がタンパーリング22に対して相対回転して、キャップ21がタンパーリング22から切り離されることはない。
【0023】
以上のように、スパウト本体10における注出口部13が蓋体20によって閉塞されたスパウト1は、図5(a)に矢印で示すように、キャップ21を持ってねじを緩める方向(キャップ21を真上から見て時計の反回転方向)に回すと、図6に示すように、タンパーリング22のラチェット爪22dが注出口部13のラチェット歯13cに係止され、タンパーリング22は周り止めされるが、キャップ21は、その凹部21bにおける、タンパーリング22に形成された突起22aの傾斜面に対応する部分が、突起22aの傾斜面に沿うように持ち上がりながら回転し始めるので、キャップ21とタンパーリング22とを連結している薄肉の連結部23が破断され、図5(b)及び図7に示すように、キャップ21がタンパーリング22から切り離され、開封することができる。
【0024】
このようにして、タンパーリング22から切り離したキャップ21は、スパウト本体10における注出口部13に保持することができないので、このスパウト1を一旦開封すると、再封することができない。従って、このスパウト1は、介護食品や医薬品等における一回の摂取量分を充填するパウチ容器用のスパウトとして適していると言える。
【0025】
しかも、このスパウト1が装着されたパウチ容器は、従来から使用されている、スクリューキャップによって注出口を開閉するツーピースタイプのスパウトが装着されたパウチ容器と同様に、キャップ21が連結されたタンパーリング22を、スパウト本体10における注出口部13の下半部に係止する前に、スパウト本体10の注出口部13からパウチ内に内容物を充填することができるので、パウチ自体が必要以上に大きくなることがなく、パウチの製造コストも最小限に抑えることができる。
【0026】
特に、このスパウト1は、ねじを緩める方向に回り止めされたタンパーリング22を注出口部13の下半部に螺合させることで、キャップ21が連結されたタンパーリング22を注出口部13の下半部に取り付けて保持するようになっているので、スパウト本体10における注出口部13に蓋体20を取り付ける際、従来のスクリューキャップタイプのスパウトの本体部の注出口部に、タンパーリングが連結されたスクリューキャップを取り付ける装置をそのまま使用することができ、既存の装置の有効利用を図ることができる。
【0027】
なお、上述した実施形態では、蓋体20のタンパーリング22をスパウト本体10における注出口部13に螺合させると共に、タンパーリング22のラチェット爪22dと注出口部13のラチェット歯13cとからなるラチェット機構によって、ねじを緩める方向へのタンパーリング22の回転を規制することで、タンパーリング22、即ち、蓋体20を注出口部13に保持するようにしているが、これに限定されるものではなく、タンパーリングが、少なくとも一方向に周り止めされると共に、注出口部に一旦嵌め込むと、上方側に容易に抜けないようになっている、所謂「打栓式」のスパウトを採用することもできる。
【0028】
また、スパウト本体10の注出口部13を蓋体20によって閉塞する際、蓋体20を指で摘んで、タンパーリング22を注出口部13に螺合させる場合は、キャップ21だけでなく、タンパーリング22にも指がかかることになるので、タンパーリング22部分で指が滑って、キャップ21だけを回すことにならないように、タンパーリング22の外表面に滑り止めの凹凸、溝またはリブ等を形成しておくことが望ましい。
【0029】
また、上述した実施形態では、横断面十字形状のリブによって形成された導出補助部14を備えたスパウト1について説明したが、導出補助部の形状等は限定されるものではなく、導出補助部を省略することも可能である。
【産業上の利用可能性】
【0030】
一旦開封した後は、再封することができないほうが好ましいパウチ容器に装着されるスパウトとして利用することができる。
【符号の説明】
【0031】
1 スパウト
10 スパウト本体
11 装着部
12 把持部
12a、12b フランジ
13 注出口部
13a 突条
13b 雄ねじ
13c ラチェット歯
14 導出補助部
20 蓋体
21 キャップ
21a 周溝
21b 凹部
22 タンパーリング
22a 突起
22b 突条
22c 雌ねじ
22d ラチェット爪
23 連結部

【特許請求の範囲】
【請求項1】
容器本体に固着されるスパウト本体と、前記スパウト本体の注出口部を閉塞する蓋体とを備えたスパウトにおいて、
前記蓋体は、
前記注出口部を閉塞するキャップと、
前記キャップの下端に切り離し可能に連結されたタンパーリングと
を有し、
前記キャップは、前記注出口部に保持されない状態で、前記注出口部の上半部に嵌合することで、前記注出口部を閉塞するようになっており、
前記タンパーリングは、少なくとも一方向に周り止めされると共に上方に抜け止めされた状態で、前記注出口部の下半部に保持されていることを特徴とするスパウト。
【請求項2】
前記注出口部の下半部には、その外周面に雄ねじが形成されており、
前記タンパーリングには、その内周面に前記雄ねじに螺合する雌ねじが形成されており、
前記タンパーリングは、ねじを緩める方向に回り止めされた状態で、前記注出口部の下半部に螺合していることを特徴とする請求項1に記載のスパウト。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【公開番号】特開2011−246155(P2011−246155A)
【公開日】平成23年12月8日(2011.12.8)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−120222(P2010−120222)
【出願日】平成22年5月26日(2010.5.26)
【出願人】(000238005)株式会社フジシールインターナショナル (641)
【Fターム(参考)】