説明

スパッタ装置用電源

【発明の詳細な説明】
【0001】
【発明の属する分野の説明】本発明は電子部品等の製造に使用するスパッタ装置に適用する電源特に逆パルス発生回路に関するものである。
【0002】
【従来技術】スパッタ装置には高速化、製品の歩留り向上が望まれ、この方向でスパッタ技術が進展してきている。一般にスパッタ装置に適用する電源はタ−ゲ−トに負の高電圧を印加するためのDCパワ−電源が使用されるが、この高電圧印加状態で長時間の連続運転を行うと、真空室内(チャンバ)に設けられたタ−ゲット近傍で電弧を発生し、正常な運転が出来なくなることがある。電弧の発生はタ−ゲットの材質あるいは形状により相違する。この電弧はタ−ゲットから異常なスパッタリングを起こし、薄膜を形成する基板上に不正規な膜を作り、製品の歩留低下が問題になる。この電弧の発生をなくすことは、 技術的に非常に困難であり、従来種々の電源回路が検討されているが決めて に欠けるのが現状である。
【0003】
【発明の目的】本発明はタ−ゲットの材質或いは形状に無関係に電弧の発生、及び異常放電を防止せしめる電源の提供を目的とする。
【0004】
【課題を解決するための手段】本発明はスパッタを行うための真空室内のタ−ゲットに直流電圧、電力(パワ−)を供給する電源の出力部に前記電源と逆極性のパルスを重畳せしめ、該逆パルスの電圧及び周波数を任意に調整することにより電弧或は異常放電を消弧するように構成したものである。
【0005】
【実施例】図1は本発明の一実施例回路図で図中DCは直流電源でタ−ゲット等の負荷RLに負の直流高電圧を印加する極性に接続されている。Lはインダクタ、D1、R3はサ−ジ吸収用のダイオ−ド及び抵抗、次にRPCは逆パルス発生回路でPTはパルストランス、n1、n2はその1次巻線及び2次(出力)巻線で1次巻線n1側はスイッチング回路swと、該スイッチング回路swの発振周波数等を制御す発振回路OSCが接続されている。又2次巻線n2は直流電源DCの出力部に該出力と逆極性にパルスが重畳される如く接続されている。C1は該直流電源DCよりダイオ−ドD2を介して充電されるコンデンサでスイッチング回路swの電源を形成する。D3、R2はパルストランスPTのフライバック電圧を抑制するダイオ−ド及び抵抗である。
【0006】この回路の基本動作は直流電源DCを負荷RLに給電すると同時に必要に応じて連続的に或いは間欠的に逆パルス電圧を該直流電源DCに重畳して負荷RLに給電する。因みに図2は図1において直流電源DCの電圧をE1、コンデンサC1の電圧をE2(E1≒E2)パルストランスPTの出力電圧をE3負荷電圧をE0とした時の各部動作波形を示す。なお図2において、t1はスイッチング回路のオン(導通)時間(5〜30μsec程度)Tは繰返し周期(1Hz〜20KHz程度)△eは逆電圧レベルである。この回路では、■LはパルストランスPTのパルス電圧発生時電流iの増加率を防止する。■パルストランスPTのフライバック電圧(図2a、EFR)はダイオードD4により出力電圧に重畳させない目的で装備し、 ダイオ−ドD3抵抗R2、ダイオ−ドD4の電圧耐量等により必要に応じて設 けてもよい。■パルストランスPTの1次巻線n1側の電圧はコンデンサC1 の電圧(DC電源電圧)により駆動しているので駆動電源をあらたに設ける必 要はなく、又パルストランスPTの1次n12次n2の巻数比の設定により 容易に逆パルス電圧E3の調整が可能である。■電源電圧、負荷変動等によ り非パルス発生時(スイッチング回路swのオフ時)コンデンサC1の充電 々流が変動するがダイオ−ドD2によりパルストランスPTの直流励磁を防 止する。■DC電源の負荷電流は直列に挿入されたインダクタLによりパル ス発生時も大きな変化はなく連結して流れるため、DC電源のトランジエン トによる影響は少ない。
【0007】図3は本発明の実施例回路(図1)において、抵抗負荷電圧−450V、4A、逆電圧レベル△e≒85V(約19%)、パルスt10μs、周波数10KHzの運転条件で実施した時の負荷電圧E0及び負荷電流I0の関係を示す波形図で異常現象は何ら生じないことを確認した。
【0008】図4は同実施例回路において、R負荷電圧−820V、12A、逆電圧レベル△e≒100V、運転条件で実施した時の動作波形図で、これによっても全く異常現象は発生しなかった。
【0009】以上の説明から明らかなように本発明によればスパッタ装置用電源としてタ−ゲットの材質(金属、絶縁物)に係わりなく異常放電を防止し得る装置を提供できるので実用上の効果は大きい。
【図面の簡単な説明】
【図1】本発明の一実施例回路図
【図2】本発明の動作説明図
【図3】本発明実施例の出力特性図
【図4】本発明実施例の出力特性図
【符号の簡単な説明】
DC 直流電源
C インダクタ
RL 負荷(タ−ゲ−ト)
RPC 逆パルス発生回路
PT パルストランス
sw スイッチング回路
osc 発振回路
C1 コンデンサ
D1、D2、D3 ダイオ−ド

【特許請求の範囲】
【請求項1】 スパッタを行うための真空室内のタ−ゲットに直流電圧、電力(パワ−)を供給する電源の出力部に、前記電源と逆極性のパルスを重畳せしめるように、少なくとも発振回路、スイッチ素子、パルストランス、ダイオード、コンデンサを含む逆パルス発生回路を接続し、該逆パルスの電圧及び周波数を任意に調整することにより電弧或いは異常放電を消弧するように構成したことを特徴とするスパッタ装置用電源。

【図1】
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【図3】
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【図2】
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【図4】
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【特許番号】特許第3398447号(P3398447)
【登録日】平成15年2月14日(2003.2.14)
【発行日】平成15年4月21日(2003.4.21)
【国際特許分類】
【出願番号】特願平5−321385
【出願日】平成5年11月26日(1993.11.26)
【公開番号】特開平7−150348
【公開日】平成7年6月13日(1995.6.13)
【審査請求日】平成11年12月28日(1999.12.28)
【出願人】(000002037)新電元工業株式会社 (776)
【参考文献】
【文献】特開 平6−220629(JP,A)
【文献】国際公開94/23440(WO,A1)