スパンカー
【課題】マストを低くできる簡素な構成を備えたスパンカーを提供すること。
【解決手段】スパンカー5は、マスト7と、ガフ9と、セール11と、ロープR4とを含む。セール11は、ガフ9によって支持されている。ガフ9の前端部9aは、マスト7に固定された回転支持部材J2に支持されている。ガフ9の前端部9aは、回転支持部材J2を通る水平軸線A1まわりに回転可能である。ガフ9は、収納位置と、収納位置より後端部9bが上方に位置する使用位置との間でマスト7に対して回転可能である。マスト側取付部材14およびガフ側取付部材16に取り付けられたロープR4が操作されると、ガフ側取付部材16がマスト側取付部材14に近づいて、ガフ9が使用位置に移動する。
【解決手段】スパンカー5は、マスト7と、ガフ9と、セール11と、ロープR4とを含む。セール11は、ガフ9によって支持されている。ガフ9の前端部9aは、マスト7に固定された回転支持部材J2に支持されている。ガフ9の前端部9aは、回転支持部材J2を通る水平軸線A1まわりに回転可能である。ガフ9は、収納位置と、収納位置より後端部9bが上方に位置する使用位置との間でマスト7に対して回転可能である。マスト側取付部材14およびガフ側取付部材16に取り付けられたロープR4が操作されると、ガフ側取付部材16がマスト側取付部材14に近づいて、ガフ9が使用位置に移動する。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
この発明は、流し釣りを行うときに用いられるスパンカー(spanker)に関する。
【背景技術】
【0002】
船釣りでは、舵や推力の調整によって船舶が風に流されることを抑制すると共に、船舶を潮流に乗せながら釣りをする「流し釣り」が行われる場合がある。流し釣りが行われるときには、たとえばスパンカーが用いられる。スパンカーは、船尾に配置されたセール(帆)によって風を受けることにより、風力によって船舶を旋回させて、船首を風上に向ける装置である。船首が風上に向けられた状態で、操船者が舵や推力を調整することにより、船舶が風に流されることを抑制することができる。
【0003】
特許文献1に記載のスパンカーは、側面視四角形状のセールと、マストと、マストから後方に延びるブーム(boom)およびガフ(gaff)とを備えている(特許文献1の図15参照)。ガフは、ブームより上方に配置されており、セールの上辺は、ガフに支持されている。セールの下辺は、ブームに支持されており、セールの前辺は、ロープによってマストに結索されている。ガフの前端部は、スライダジョイント部材を介してマストに連結されている。スライダジョイント部材は、マストに対して上下に昇降可能である。したがって、マストに対してガフ全体が上下に昇降可能である。ガフは、マストから延びるロープによって吊り上げられている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2000−128078号公報
【発明の概要】
【課題を解決するための手段】
【0005】
特許文献1記載のスパンカーでは、セールの後辺が固定されておらず、ロープからの張力によって、ガフの後端部とブームの後端部との間で上下に張られている。したがって、セールの後辺に加わる張力が十分でない場合には、セールが風を受けたときに、セールの後辺が変形してしまい、船舶を旋回させる力が減少してしまう。そのため、スパンカーの性能を十分に発揮させるために、セールの後辺の変形を防ぐ必要がある。
【0006】
しかしながら、特許文献1記載のスパンカーでは、ロープによってガフを吊り上げることにより、セールの後辺が張られている。ガフが動くと、セールの後辺が変形してしまう。したがって、マストとガフとを繋ぐロープに強い力(張力)を与えて、ガフを強固に固定する必要がある。さらに、ガフ全体がマストに対して上下に移動可能であり、ガフの殆ど全ての重量がロープに加わるので、ガフ全体を支え、セールの後辺を張るのに十分な大きさの張力をロープに与える必要がある。
【0007】
ところが、特許文献1記載のスパンカーでは、ガフを吊り上げるロープがマストに結索されているため、ロープを強く張るとマストに大きな力が加わる。そのため、マストが変形することを防止するために、マストを太くしてマストの強度を増加させたり、ステーロープによってマストと船体とを堅固に結び付ける必要がある。
さらに、特許文献1記載のスパンカーでは、ガフ全体がマストから延びるロープによって吊られているため、ガフをロープによって上方向に強く引っ張って、セールの後辺に強い張力を与える必要がある。したがって、ロープは、水平面に対して大きな傾斜角度でガフからマストに向かって斜め上に延びている。そのため、マストに対するロープの取付位置が高くなり、マストが高くなる。しかしながら、マストが高いと、マストの強度をさらに増加させたり、ステーロープによってマストと船体とを堅固に結び付ける必要がある。さらに、マストが高いと、スパンカーを含む船舶全体の高さが、橋などの構造物の制限高さを超えてしまい、船舶が構造物の下を通過できない場合がある。当然、スパンカーを取り外せば、船舶全体の高さが低くなるので、構造物の下を通過できるが、スパンカーの取外しが必要となり手間である。
【0008】
そこで、この発明の目的は、マストを低くできる簡素な構成を備えたスパンカーを提供することである。
また、この発明の他の目的は、セールの後辺の変形を抑制する簡素な構成を備えたスパンカーを提供することである。
前記目的を達成するための本発明の一実施形態は、上下方向に延びるマストと、前記マストに固定された回転支持部材と、前記回転支持部材を通る水平軸線まわりに回転可能に前記回転支持部材に支持された被支持部と、前記マストより後方に配置された後端部とを含み、収納位置と、前記収納位置より前記後端部が上方に位置する使用位置との間で前記マストに対して回転可能なガフと、前記ガフによって支持された上辺を含むセールと、前記マストおよびガフにそれぞれ取り付けられたマスト側取付部材およびガフ側取付部材に取り付けられており、前記ガフ側取付部材が前記マスト側取付部材に近づいて、前記ガフが前記使用位置に移動するように操作可能なロープとを含む、スパンカーである。
【0009】
この構成によれば、ガフが、マストに固定された回転支持部材を介してマストに支持されている。ガフの被支持部は、回転支持部材に対して、回転支持部材を通る水平軸線まわりに回転可能である。その一方で、回転支持部材は、マストに固定されており、マストに対して移動不能である。したがって、ガフの被支持部は、マストに対して上下に移動不能である。よって、ガフ全体は、マストに対して被支持部を中心に上下に回転可能であると共に、マストに対して上下に移動不能である。
【0010】
ガフは、ロープの操作によって、収納位置と使用位置との間で被支持部を中心に上げ下げされる。すなわち、ロープは、ガフに取り付けられたガフ側取付部材と、マストに取り付けられたマスト側取付部材とに取り付けられている。ロープが操作(展開操作)されると、ガフ側取付部材がマスト側取付部材に近づいて、ガフが使用位置に移動する。これにより、セールが展開される。また、ロープが操作(折り畳み操作)されると、ガフ側取付部材がマスト側取付部材から遠ざかり、ガフが収納位置に移動する。これにより、セールが折り畳まれる。
【0011】
このように、上下方向に関してガフの被支持部がマストに固定されているので、従来のスパンカーのように、使用位置においてガフをロープによって上方向に強く引っ張らなくてもよい。したがって、マストに対するロープの取付位置を従来のスパンカーよりも低くでき、マストを低くできる。そのため、マストの強度を増加させるために、マストを太くしたり、ステーロープによってマストと船体とを堅固に結び付けなくてもよい。さらに、マストを低くできるので、スパンカーを含む船舶全体の高さを低減できる。したがって、船舶の通航が橋などの構造物によって制限される頻度を低減できる。
【0012】
前記マスト側取付部材は、前記回転支持部材より上方に配置されていてもよい。
また、前記マストの上端は、前記使用位置に位置する前記ガフの後端部より下方に配置されていてもよい。
また、前記マストの上端は、前記使用位置に位置する前記ガフ側取付部材より下方に配置されていてもよい。
【0013】
また、前記マスト側取付部材は、前記使用位置に位置する前記ガフの後端部より下方に配置されていてもよい。
また、前記マスト側取付部材は、前記使用位置に位置する前記ガフ側取付部材より下方に配置されていてもよい。
また、前記スパンカーは、前記ガフを支持する左右支持部材をさらに含んでいてもよい。前記左右支持部材は、前記回転支持部材に対して上下方向に離れた位置で前記マストに取り付けられており、前記使用位置に位置する前記ガフを支持していてもよい。この場合、前記左右支持部材は、前記回転支持部材の上方で前記マストに取り付けられていてもよいし、前記回転支持部材の下方で前記マストに取り付けられていてもよい。前記マストに対する前記ガフの左右方向への移動は、前記左右支持部材によって規制される。
【0014】
また、前記スパンカーは、前記マストから後方に延びており、前記使用位置に位置する前記ガフの後端部より下方に配置されており、前記セールの下辺に沿って配置されたブームと、前記セールに取り付けられたローチ補強部材とをさらに含んでいてもよい。この場合、前記セールは、前記ガフに取り付けられたガフ側取付部と、前記ブームに取り付けられたブーム側取付部と、前記使用位置において前記ガフ側取付部の後端と前記ブーム側取付部の後端とを結ぶ直線より後方に配置されており、前記ローチ補強部材が取り付けられたローチとを含んでいてもよい。
【0015】
また、前記ローチ補強部材は、前記回転支持部材から前記セールの後辺に向かって放射状に延びる複数の棒状部材を含んでいてもよい。
また、前記スパンカーは、前記マストから後方に延びており、前記使用位置に位置する前記ガフの後端部より下方に配置されており、前記セールの下辺に沿って配置されたブームと、前記使用位置において前記セールの前記下辺の後端から上方に延びる後辺に沿って配置されており、前記後辺が取り付けられた後辺補強部材とをさらに含んでいてもよい。
【0016】
この構成によれば、セールの下辺が、マストから後方に延びるブームに沿って配置されており、セールの下辺の後端から上方に延びるセールの後辺が、後辺補強部材に沿って配置されている。セールの後辺は、後辺補強部材に取り付けられている。セールが強い風を受けたとしても、セールの後辺の変形は、後辺補強部材によって抑制される。したがって、スパンカーは、その性能を安定して発揮することができる。
【0017】
また、従来のように、ロープによって張力を与えることにより、セールの後辺を張らなくてもよいので、セールを支持する骨組み構造を簡素化することができる。さらに、ロープによってセールの後辺を張らなくてもよいので、従来に比べてマストの太さや長さを減少させることができる。したがって、スパンカーの重量を低減できると共に、スパンカーを小型化することができる。そのため、スパンカーの運搬や設置を簡単にできる。さらに、マストを低くできるので、船体から延びるステーロープをマストに結びつけなくてもよい。したがって、ステーロープが、船尾で作業を行う乗船者の邪魔になることを防止することができる。
【0018】
また、前記後辺補強部材は、前記後辺の変形を抑制するように構成された棒状の部材であってもよい。
また、前記後辺補強部材の下端部は、前記ブームによって支持されていてもよい。
また、前記後辺補強部材の下端部は、前記ブームに沿って前後方向に移動できるように構成されており、前記後辺補強部材の上端部は、前記ガフに対して前後方向に回転できるように前記ガフに支持されていてもよい。
【0019】
また、前記ブームは、前記マストより長くてもよい。
また、前記使用位置において、前記セールの上端は、前記マストの上端より上方に配置されていてもよい。
また、前記スパンカーは、前記マストの中心軸線まわりに回転可能に前記マストを支持しており、船体に取り付けられるマスト支持部材をさらに含んでいてもよい。
【図面の簡単な説明】
【0020】
【図1】本発明の第1実施形態に係る船舶の側面図である。
【図2】本発明の第1実施形態に係る船舶の平面図である。
【図3】本発明の第1実施形態に係る第1スパンカーの右側面図である。
【図4】本発明の第1実施形態に係る第1スパンカーの平面図である。
【図5】本発明の第1実施形態に係る第1スパンカーの背面図である。
【図6A】本発明の第1実施形態に係る第1スパンカーを折り畳むときの動作の一例について説明するための側面図である。
【図6B】本発明の第1実施形態に係る第1スパンカーを折り畳むときの動作の一例について説明するための側面図である。
【図6C】本発明の第1実施形態に係る第1スパンカーを折り畳むときの動作の一例について説明するための側面図である。
【図6D】本発明の第1実施形態に係る第1スパンカーを折り畳むときの動作の一例について説明するための側面図である。
【図7】本発明の第2実施形態に係る第1スパンカーの模式的な右側面図である。
【図8】本発明の第3実施形態に係る船舶の側面図である。
【図9】本発明の第3実施形態に係る船舶の平面図である。
【図10】本発明の第3実施形態に係る第2スパンカーの斜視図である。
【図11】本発明の第3実施形態に係る第2スパンカーの右側面図である。
【図12】本発明の第3実施形態に係る第2スパンカーを折り畳むときの動作の一例について説明するための側面図である。
【図13】本発明の第4実施形態に係る第2スパンカーの右側面図である。
【発明を実施するための形態】
【0021】
以下では、この発明の実施の形態を、添付図面を参照して詳細に説明する。
具体的には、セールを補強する複数のバテンを備える第1スパンカーと、セールの後辺を補強する補強部材を備える第2スパンカーとについて説明する。最初に、第1スパンカーについて説明する。
[第1スパンカー]
図1は、本発明の第1実施形態に係る船舶1の側面図である。図2は、本発明の第1実施形態に係る船舶1の平面図である。
【0022】
船舶1は、船体2と、船舶1を推進する船舶推進機3と、船舶1を操作するために操船者によって操作される操作部材4と、風力によって船首を風上に向ける第1スパンカー5とを含む。船舶推進機3は、船体2の後部中央部に取り付けられている。船舶推進機3は、船首と船尾中央とを通る鉛直な平面である船体中心C1に沿って配置されている。操作部材4は、船舶1の中央部に設けられた操船位置P1に配置されている。船舶推進機3は、平面視において操船位置P1の後方に位置している。第1スパンカー5は、船舶推進機3の側方に配置されている。第1スパンカー5および船舶推進機3は、平面視において左右方向に並んでいる。船舶推進機3は、エンジンと、エンジンの動力をプロペラに伝達するドライブユニットとが船外に配置された船外機である。船舶推進機3は、船外機に限らず、船内に配置されたエンジンと、船外に配置されたドライブユニットとを含む船内外機であってもよいし、船内に配置されたエンジンおよびドライブユニットを含む船内機であってもよい。また、船舶1に備えられる船舶推進機3の数は、1つであってもよいし、複数であってもよい。
【0023】
図3は、第1スパンカー5の右側面図である。図4は、第1スパンカー5の平面図である。図5は、第1スパンカー5の背面図である。
後述するように、第1スパンカー5は折り畳み可能であり、ブーム8およびガフ9は、マスト7に対して収納位置と使用位置との間で移動可能である。図3〜図5では、使用状態(展開状態)の第1スパンカー5が示されている。第1スパンカー5の使用状態とは、ブーム8およびガフ9がそれぞれの使用位置に配置されている状態である。第1スパンカー5の収納状態とは、ブーム8およびガフ9がそれぞれの収納位置に配置されている状態である。
【0024】
以下では、使用状態の第1スパンカー5について説明する。以下の説明における「前後方向」および「左右方向」は、2つのブーム8の後端の中間の中間位置P2(図4参照)と、マスト7とを通る鉛直な平面である基準面X1を基準とする方向である。中間位置P2からマスト7に向かう方向が前方向であり、マスト7から中間位置P2に向かう方向が後方向である。以下の説明における「左右対称」は、基準面X1に関して対称なことを意味する。
【0025】
第1スパンカー5は、左右対称な形状を有している。図3に示すように、第1スパンカー5は、船体2に取り付けられた支持部材6と、支持部材6から上方に延びるマスト7と、マスト7に連結された左右一対のブーム8と、ブーム8より上方でマスト7に連結されたガフ9と、ブーム8およびガフ9によって支持されたセール11と、セール11に沿って配置された複数のバテン12(batten)とを含む。
【0026】
支持部材6は、船体2に固定されている。図3に示すように、支持部材6は、船体2に固定された固定部6aと、固定部6aから上方に延びる円筒状の筒状部6bと、固定部6aおよび筒状部6bに結合された補強プレート6cとを含む。固定部6aは、たとえば複数のボルト(図示せず)によって船体2に固定されている。したがって、支持部材6は、取り外し可能に船体2に取り付けられている。
【0027】
図3に示すように、マスト7は、上下方向に延びている。マスト7は、ブーム8およびガフ9より太い棒状の部材である。マスト7の下端部は、筒状部6b内に挿入されている。マスト7は、筒状部6bに対してマスト7の中心軸線まわりに回転可能である。したがって、支持部材6は、マスト7の中心軸線まわりに回転可能にマスト7を支持している。マスト7は、鉛直な姿勢で支持部材6に支持されていてもよいし、鉛直軸線に対して傾いた姿勢で支持部材6に支持されていてもよい。すなわち、マスト7は、鉛直方向に延びていてもよいし、鉛直軸線に対して傾いた方向に延びていてもよい。
【0028】
図3に示すように、ブーム8は、直線状に延びる棒状の部材である。ブーム8は、マスト7の後方に配置されている。ブーム8は、マスト7に固定された第1ジョイントJ1を介してマスト7に連結されている。ブーム8は、マスト7の中間部から後方に延びている。ブーム8は、船舶推進機3よりも上方に配置されている(図1参照)。ブーム8は、マスト7より長い。2つのブーム8の前端部は、同じ高さでマスト7に支持されている。図4に示すように、2つのブーム8は、平面視において後ろ向きに広がるV字状に配置されている。2つのブーム8は、左右対称に配置されている。ブーム8の前端部は、第1ジョイントJ1に対して上下に回転可能である。さらに、ブーム8の前端部は、第1ジョイントJ1に対して左右に回転可能である。したがって、ブーム8は、ブーム8の前端部を中心にマスト7に対して上下に回転可能であり、ブーム8の前端部を中心にマスト7に対して左右に回転可能である。
【0029】
ブーム8は、収納位置(図6Cおよび図6Dに示す位置)と使用位置(図3〜図5に示す位置)との間で、ブーム8の前端部を中心に移動可能である。図3に示すように、ブーム8は、マスト7から延びるブーム吊り上げロープR1によって使用位置まで吊り上げられている。ブーム吊り上げロープR1は、ブーム8の後端部に結び付けられている。さらに、ブーム吊り上げロープR1は、マスト7の上端部に取り付けられたマスト側取付部材14を介してマスト7に結び付けられている。ブーム8の後端部とマスト7の上端部との間のブーム吊り上げロープR1の長さは、ブーム8が水平またはほぼ水平に延びるように調整されている。これにより、ブーム8の高さが使用位置に対応する高さに調整されている。
【0030】
さらに、図4に示すように、ブーム8は、船体2から延びるブーム引っ張りロープR2によって、2つのブーム8の後端の間隔が広がるように外側(基準面X1から離れる方向)に引っ張られている。ブーム引っ張りロープR2の端部は、ブーム8に取り付けられたブーム側取付部材13に結び付けられている。船体2からブーム8までのブーム引っ張りロープR2の長さは、2つのブーム8の後端部に結び付けられた開き角度調整ロープR3の弛みがなくなるように調整されている。これにより、左右方向へのブーム8の位置が調整されている。このようにして、ブーム8が使用位置に保持されている。支持部材6に対するマスト7の回転は、2本のブーム引っ張りロープR2によって防止されている。
【0031】
図3に示すように、ガフ9は、たとえば湾曲した棒状の部材である。ガフ9は、ブーム8より上方に配置されており、マスト7から後方に延びている。ガフ9は、回転支持部材としての第2ジョイントJ2を介してマスト7に連結されている。第2ジョイントJ2は、第1ジョイントJ1とマスト側取付部材14との間の高さでマスト7に固定されている。ガフ9は、第2ジョイントJ2に支持された被支持部としての前端部9aと、前端部9aの斜め上後方に配置された後端部9bと、マスト7と平行な平行部9cと、マスト7に対して傾いた傾斜部9dとを含む。平行部9cは、第2ジョイントJ2から上方に延びており、傾斜部9dは、平行部9cの上端から斜め上後方に延びている。マスト7の上端7tは、ガフ9の後端部9bより下方に配置されている。ガフ9は、ブーム8よりも長い。すなわち、ガフ9の前端部9aからガフ9の後端部9bまでの直線距離は、ブーム8の前端部からブーム8の後端部までの直線距離よりも長い。図4に示すように、ガフ9は、平面視において2つのブーム8の中間に位置するようにマスト7に取り付けられている。
【0032】
図3に示すように、ガフ9の前端部9aは、第2ジョイントJ2によって、ブーム8の前端部の上方でマスト7に支持されている。ガフ9の前端部9aは、第2ジョイントJ2に対して、第2ジョイントJ2を通る水平軸線A1まわりに回転可能である。すなわち、ガフ9の前端部9aは、第2ジョイントJ2に対して上下に回転可能である。したがって、ガフ9は、ガフ9の前端部9aを中心にマスト7に対して上下に回転可能である。さらに、ガフ9の前端部9aは、第2ジョイントJ2に対して上下に移動不能である。第2ジョイントJ2は、マスト7に固定されており、マスト7に対して上下に移動不能である。したがって、ガフ9の前端部9aは、マスト7に対して上下に移動不能である。
【0033】
ガフ9は、収納位置(図6Cに示す位置)と使用位置(図3〜図5に示す位置)との間で、ガフ9の前端部9aを中心に上下に回転可能である。図3に示すように、ガフ9は、マスト7の上端部から延びるガフ吊り上げロープR4によって使用位置まで吊り上げられている。ガフ吊り上げロープR4の一端部は、ガフ9の中間部に取り付けられたガフ側取付部材16に結び付けられている。ガフ側取付部材16は、マスト側取付部材14およびマスト7の上端7tより上方に配置されている。ガフ吊り上げロープR4は、ガフ9の中間部からマスト7の上端部に延びている。ガフ吊り上げロープR4は、マスト側取付部材14に取り付けられている。したがって、ガフ吊り上げロープR4は、マスト側取付部材14を介してマスト7に取り付けられており、ガフ側取付部材16を介してガフ9に取り付けられている。ガフ9の中間部からマスト7の上端部までのガフ吊り上げロープR4の長さは、ガフ9の後端部9bがガフ9の前端部9aよりも上方に位置するように調整されている。ガフ9は、ガフ吊り上げロープR4の操作によって収納位置と使用位置との間で上げ下げされる。使用位置でのガフ9の後端部9bの高さは、収納位置でのガフ9の後端部9bの高さより高い。
【0034】
図3に示すように、ガフ9は、マスト7に取り付けられたガフキャッチ17によって保持されている。ガフキャッチ17は、第2ジョイントJ2の上方に配置されている。ガフキャッチ17は、第2ジョイントJ2とマスト側取付部材14との中間の高さより上方でマスト7に取り付けられている。図4に示すように、ガフキャッチ17は、後向きに開いた平面視コの字状である。ガフ9が使用位置に位置している状態では、ガフ9の一部がガフキャッチ17に嵌っている。ガフ9は、ガフキャッチ17によって左右方向に支持されている。したがって、マスト7に対するガフ9の左右方向への移動は、ガフキャッチ17によって規制される。これにより、ガフ9とマスト7との結合力が高められている。ガフ9は、ガフキャッチ17の内部を出入り可能である(図6A参照)。操船者がガフ9を使用位置から収納位置側に移動させると、ガフ9がガフキャッチ17から外れ、ガフキャッチ17によるガフ9の移動規制が解除される。また、操船者がガフ9を使用位置に移動させると、ガフ9がガフキャッチ17に嵌り、マスト7に対するガフ9の左右方向への移動が規制される。
【0035】
セール11は、布などの柔らかい材料(たとえばナイロン等の化学繊維)によって形成されている。図5に示すように、セール11は、セール11を2等分する位置で折り曲げられた上に凸の山形である。すなわち、セール11は、背面視倒立V字状である。図4に示すように、セール11は、前側に凸の平面視V字状である。さらに、図3に示すように、セール11は、上側に凸の側面視四角形状である。セール11は、ブーム8およびガフ9によって支持されている。セール11は、ガフ9によって吊り上げられている。セール11は、ブーム8およびガフ9に上下によって張られている。セール11が風を受けると、抗力中心C2(図1参照)まわりに船舶1を旋回させる力が船舶1に加わる。すなわち、船舶1が風の方向に対して傾いている状態でセール11が風を受けると、船舶1を右まわりに旋回させる力と、船舶1を左まわりに旋回させる力とのバランスが崩れ、船首を風上に向ける力が発生する。これにより、船首が風上に向けられる。
【0036】
図4に示すように、セール11は、上辺11aによって2等分された右セール11Rおよび左セール11Lを含む。右セール11Rおよび左セール11Lは、左右対称である。右セール11Rは、右側のブーム8と、ガフ9とによって支持されており、左セール11Lは、左側のブーム8と、ガフ9とによって支持されている。図5に示すように、右セール11Rおよび左セール11Lは、それぞれ、右側のブーム8および左側のブーム8からガフ9に向かって斜め上に延びている。右セール11Rおよび左セール11Lは、内側(基準面X1側)に傾いた姿勢で支持されている。図3に示すように、右セール11Rおよび左セール11Lのそれぞれは、上側に凸の側面視四角形状であり、上辺11aと、下辺11bと、前辺11cと、後辺11dとを含む。上辺11aは、右セール11Rおよび左セール11Lに共有されている。
【0037】
図3に示すように、前辺11cは、他の辺11a、11b、11dよりも短い。上辺11aは、後辺11dの上端から前辺11cの上端に向かって下降している。上辺11aは、ガフ9に沿って配置されている。上辺11aは、直線状である。上辺11aは、ガフ9に取り付けられている。上辺11aの後端は、セール11において最も上に位置している部分である。すなわち、上辺11aの後端は、セール11の上端11tである。セール11の上端11tは、マスト7の上端7tより上方に配置されている。また、下辺11bは、ブーム8に沿って配置されている。下辺11bは、側面視において前後方向に延びる直線状である。下辺11bの前端は、ロープR5によってマスト7に取り付けられおり、下辺11bの後端は、ロープによってブーム8の後端部に取り付けられている。後辺11dは、下辺11bの後端から斜め前に向かって上方に延びている。
【0038】
図3に示すように、上辺11aは、ガフ9に取り付けられた袋状のガフ側取付部11eを含む。下辺11bは、ブーム8に取り付けられたブーム側取付部11fを含む。図3では、ガフ側取付部11eの後端11gは、ガフ9の後端と一致しており、ブーム側取付部11fの後端11hは、ブーム8の後端と一致している。ガフ側取付部11eの後端11gは、ガフ9の後端より前方に配置されていてもよい。同様に、ブーム側取付部11fの後端11hは、ブーム8の後端より前方に配置されていてもよい。後辺11dは、2つの後端(後端11gおよび後端11h)とを結ぶ直線L1より後方に配置されている。右セール11Rにおいて直線L1より後方の部分は、ローチ11iである。同様に、左セール11Lにおいて直線L1より後方の部分は、ローチ11iである。ローチ11iは、複数のバテン12によって補強されている。
【0039】
バテン12は、弾性変形可能な棒状の部材である。バテン12は、セール11よりも剛性が高く、マスト7、ブーム8、およびガフ9よりも剛性が低い。したがって、バテン12は、セール11よりも曲がり難く、マスト7、ブーム8、およびガフ9よりも曲がり易い。右セール11Rおよび左セール11Lのそれぞれには、複数のバテン12が取り付けられている。図3に示すように、共通のセール(右セール11Rまたは左セール11L)に取り付けられた複数のバテン12は、当該セールに沿って配置されている。さらに、共通のセールに取り付けられた複数のバテン12は、第2ジョイントJ2からセール11の後辺11dに向かって放射状に延びている。バテン12の後端は、少なくともローチ11iに達している。図3では、バテン12の後端は、後辺11dに達している。複数のバテン12は、ローチ11iを上下方向に概ね等分割するように配置されている。
【0040】
図6A〜図6Dは、本発明の第1実施形態に係る第1スパンカー5を折り畳むときの動作の一例について説明するための側面図である。図6Aおよび図6Bでは、第1スパンカー5が折り畳まれる途中の状態が示されている。また、図6Cおよび図6Dでは、第1スパンカー5が折り畳まれた状態、すなわち、収納状態の第1スパンカー5が示されている。以下では、第1スパンカー5が折り畳まれて収納されるときの動作の一例、および折り畳まれた第1スパンカー5が展開されるときの動作の一例について説明する。
【0041】
[折り畳み動作]
展開状態(使用状態)の第1スパンカー5を折り畳むときには、ガフ吊り上げロープR4を緩めて、収納位置までガフ9を下す。具体的には、図6Aおよび図6Bにおいて黒色の矢印で示すように、ガフ9の前端部9aを中心にガフ9を下方に回転させる。これにより、ガフ側取付部材16がマスト側取付部材14から遠ざかり、ガフ9が、ガフキャッチ17から外れる。それと共に、セール11が上下に折り畳まれていく。そして、図6Cに示すように、ガフ9の後端部9bがガフ9の前端部9aと概ね同じ高さまで下降し、ガフ9が、左右一対のブーム8の間まで移動すると、ガフ吊り上げロープR4をマスト7に結索して、ガフ9を収納位置に保持する。
【0042】
次に、ブーム引っ張りロープR2を緩めて、収納位置まで各ブーム8を内側に移動させる。具体的には、図6Dにおいて黒色の矢印で示すように、ブーム8がガフ9に沿う位置(収納位置)まで、ブーム8を内側に回転させる。これにより、各ブーム8が収納位置に位置するガフ9に沿って配置される。それと共に、セール11が左右に折り畳まれる。このようにして、ブーム8およびガフ9が、それぞれの収納位置に配置され、第1スパンカー5がコンパクトに折り畳まれる。その後、図6Cにおいて黒色の矢印で示すように、ブーム引っ張りロープR2が緩められている状態で、支持部材6に対してマスト7を中心軸線まわりに回転させる。これにより、ブーム8、ガフ9、およびセール11が、船体2上に移動し、第1スパンカー5が船体2上に収納される。
【0043】
[展開動作]
一方、船体2上に収納されている収納状態の第1スパンカー5を展開させるときには、ブーム引っ張りロープR2が緩められている状態で、支持部材6に対してマスト7を中心軸線まわりに回転させて、ブーム8、ガフ9、およびセール11を船体2上から船体2の後方に移動させる。その後、図6Dにおいて白色の矢印で示すように、収納位置に配置されている左右一対のブーム8を広げて、V字状に配置する。すなわち、ブーム8を収納位置から使用位置に移動させて、セール11を左右に広げる。その後、ブーム引っ張りロープR2を船体2に結索する。これにより、ブーム8が使用位置に保持されると共に、支持部材6に対するマスト7の回転が規制される。
【0044】
次に、ガフ吊り上げロープR4をマスト7側に引っ張って、ガフ9を使用位置まで吊り上げる。具体的には、ガフ吊り上げロープR4をマスト7側に引っ張って、ガフ側取付部材16からマスト側取付部材14までのガフ吊り上げロープR4の長さを減少させる。これにより、図6A、図6B、および図6Cにおいて白色の矢印で示すように、ガフ9の前端部9aを中心にガフ9が上方に回転し、ガフ側取付部材16がマスト側取付部材14に近づく。それと共に、セール11が上下に広げられる。そして、ガフ9が、ガフキャッチ17に嵌り、使用位置に移動すると、ガフ吊り上げロープR4をマスト7に結索して、ガフ9を使用位置に保持する。このようにして、第1スパンカー5が展開され、セール11が張られる。
【0045】
以上のように第1実施形態では、被支持部としてのガフ9の前端部9aが、マスト7に固定された回転支持部材としての第2ジョイントJ2に支持されている。すなわち、上下方向に関してガフ9の前端部9aがマスト7に固定されている。したがって、従来のスパンカーのように、使用位置においてガフ9をロープR4によって上方向に強く引っ張らなくてもよい。そのため、マスト7に対するロープR4の取付位置を従来のスパンカーよりも低くでき、マスト7を低くできる。よって、マスト7の強度を増加させるために、マスト7を太くしたり、ステーロープによってマスト7と船体2とを堅固に結び付けなくてもよい。さらに、マスト7を低くできるので、第1スパンカー5を含む船舶1全体の高さを低減できる。したがって、船舶1の通航が橋などの構造物によって制限される頻度を低減できる。
【0046】
また第1実施形態では、使用位置に位置するガフ9が、第2ジョイントJ2とは離れた位置でガフキャッチ17によって支持されている。左右方向へのガフ9の剛性は、ガフキャッチ17によって高められている。すなわち、マスト7に対するガフ9の左右方向への移動は、ロープR4および第2ジョイントJ2に加えて、ガフキャッチ17によって規制される。したがって、たとえばセール11が横風を受けて、左右方向への力がガフ9に加わったときに、ガフ9が左右に傾いて倒れることを防止できる。これにより、第1スパンカー5の性能を十分に発揮させることができる。
【0047】
また第1実施形態では、セール11にローチ11iが設けられている。ローチ11iは、ガフ側取付部11eの後端11gとブーム側取付部11fの後端11hとを結ぶ直線L1より後方の部分である。すなわち、セール11が、ブーム8およびガフ9から後方にオーバーハングしており、セール11の面積が広げられている。したがって、セール11に加わる風力が増加する。さらに、セール11が後方にオーバーハングしているので、セール11の抗力中心(風からセール11に加わる抗力の中心)が後方に移動する。したがって、セール11の抗力中心から船舶1の抗力中心C2(水から船舶1に加わる抗力の中心)までの距離が増加し、セール11が風を受けることによって発生するモーメント(船舶1の抗力中心C2まわりのモーメント)が増加する。そのため、第1スパンカー5は、より大きな旋回力を発生できる。
【0048】
また第1実施形態では、セール11に複数のバテン12が取り付けられている。ローチ11iは、複数のバテン12によって補強されている。ブーム8およびガフ9からの張力が効率的に伝達される位置は、ガフ側取付部11eの後端11gとブーム側取付部11fの後端11hとを結ぶ直線L1より前方の部分、すなわち、ローチ11iより前方の部分である。したがって、ローチ11iより前方の部分がしっかり張られているとしても、ローチ11iの張りが不十分な場合がある。そのため、複数のバテン12によってローチ11iを補強することにより、ローチ11iの変形を抑制できる。これにより、第1スパンカー5の性能を十分に発揮させることができる。
【0049】
また第1実施形態では、複数のバテン12が、複数の棒状部材によって構成されており、第2ジョイントJ2からセール11の後辺11dに向かって放射状に延びている。ガフ9は、第2ジョイントJ2を通る水平軸線A1まわりに上下に回転可能であり、セール11は、ガフ9に支持されている。複数のバテン12が、第2ジョイントJ2からセール11の後辺11dに向かって放射状に延びているので、セール11を折り畳むと、上下に隣接する2つのバテン12の間に折り目が形成される。そのため、セール11を綺麗に折り畳むことができる。さらに、折り畳み状態におけるセール11の撓みがバテン12によって規制されるので、折り畳みによるしわの発生を抑制できる。これにより、長期間に亘ってセール11を綺麗な状態に保つことができる。
【0050】
なお、前述の説明では、ガフ9が湾曲している場合について説明した。しかし、図7に示す第2実施形態に係る第1スパンカー205のように、ガフ209は、直線状に延びる棒状の部材であってもよい。この図7において、前述の図1〜図6Dに示された各部と同等の構成部分については、図1等と同一の参照符号を付している。
[第2スパンカー]
次に、セールの後辺を補強する補強部材を備える第2スパンカーについて説明する。
【0051】
以下の図において、前述の図1〜図7に示された各部と同等の構成部分については、図1等と同一の参照符号を付してその説明を省略する。
図8は、本発明の第3実施形態に係る船舶1の側面図である。図9は、本発明の第3実施形態に係る船舶1の平面図である。
船舶1は、船体2と、船舶1を推進する船舶推進機3と、船舶1を操作するために操船者によって操作される操作部材4と、風力によって船首を風上に向ける第2スパンカー305とを含む。船舶推進機3は、船体2の後部中央部に取り付けられている。船舶推進機3は、船首と船尾中央とを通る鉛直な平面である船体中心C1に沿って配置されている。操作部材4は、船舶1の中央部に設けられた操船位置P1に配置されている。船舶推進機3は、平面視において操船位置P1の後方に位置している。第2スパンカー305は、船舶推進機3の側方に配置されている。第2スパンカー305および船舶推進機3は、平面視において左右方向に並んでいる。船舶推進機3は、エンジンと、エンジンの動力をプロペラに伝達するドライブユニットとが船外に配置された船外機である。船舶推進機3は、船外機に限らず、船内に配置されたエンジンと、船外に配置されたドライブユニットとを含む船内外機であってもよいし、船内に配置されたエンジンおよびドライブユニットを含む船内機であってもよい。また、船舶1に備えられる船舶推進機3の数は、1つであってもよいし、複数であってもよい。
【0052】
図10は、本発明の第3実施形態に係る第2スパンカー305の斜視図である。図11は、本発明の第3実施形態に係る第2スパンカー305の右側面図である。後述するように、第2スパンカー305は折り畳み可能である(図12参照)。図10および図11では、使用状態(展開状態)の第2スパンカー305が示されている。以下では、使用状態の第2スパンカー305について説明する。また、以下の説明における「前後方向」および「左右方向」は、2つのブーム308の後端の中間の中間位置P2(図9参照)と、マスト7とを通る鉛直な平面である基準面X1(図9参照)を基準とする方向である。中間位置P2からマスト7に向かう方向が前方向であり、マスト7から中間位置P2に向かう方向が後方向である。以下の説明における「左右対称」は、基準面X1に関して対称なことを意味する。
【0053】
第2スパンカー305は、支持部材6と、マスト7と、左右一対のブーム308と、ガフ309と、左右一対の補強部材310と、セール311とを含む。
支持部材6は、船体2に固定されている。支持部材6は、船体2に固定された固定部6aと、固定部6aから上方に延びる円筒状の筒状部6bと、固定部6aおよび筒状部6bに結合された補強プレート6cとを含む。固定部6aは、たとえば複数のボルト312(図10参照)によって船体2に固定されている。したがって、支持部材6は、取り外し可能に船体2に取り付けられている。
【0054】
マスト7は、支持部材6から上方に延びている。マスト7は、棒状の部材である。マスト7の下端部は、筒状部6b内に挿入されている。マスト7は、筒状部6bに対してマスト7の中心軸線まわりに回転可能である。したがって、支持部材6は、マスト7の中心軸線まわりに回転可能にマスト7を支持している。マスト7は、鉛直な姿勢で支持部材6に支持されていてもよいし、鉛直軸線に対して傾いた姿勢で支持部材6に支持されていてもよい。すなわち、マスト7は、鉛直方向に延びていてもよいし、鉛直軸線に対して傾いた方向に延びていてもよい。
【0055】
ブーム308は、直線状に延びる棒状の部材である。ブーム308は、マスト7の中間部から後方に延びている。図11に示すように、ブーム308は、船舶推進機3よりも上方に配置されている。ブーム308は、マスト7より長い。言い換えると、マスト7は、ブーム308より短い。2つのブーム308の前端部は、同じ高さでマスト7に支持されている。2つのブーム308は、平面視において後ろ向きに広がるV字状に配置されている(図9参照)。ブーム308の前端部は、マスト7に対して上下方向に回転できるようにマスト7に支持されている。さらに、ブーム308の前端部は、マスト7に対して左右方向に回転できるようにマスト7に支持されている。したがって、ブーム308は、ブーム308の前端部を中心にマスト7に対して上下に回転可能であり、ブーム308の前端部を中心にマスト7に対して左右に回転可能である。
【0056】
ブーム308は、マスト7から延びるブーム吊り上げロープR301によって吊り上げられている。ブーム吊り上げロープR301は、ブーム308の中間部に取り付けられたブーム側取付部材313を介してブーム308に結び付けられている。さらに、ブーム吊り上げロープR301は、マスト7の上端部に取り付けられたマスト側取付部材314を介してマスト7に結び付けられている。ブーム側取付部材313とマスト側取付部材314との間のブーム吊り上げロープR301の長さは、ブーム308が水平またはほぼ水平に延びるように調整されている。
【0057】
また、ブーム308は、船体2から延びるブーム引っ張りロープR302によって、2つのブーム308の後端の間隔が広がるように外側(基準面X1から離れる方向)に引っ張られている。ブーム引っ張りロープR302の一端部は、ブーム側取付部材313を介してブーム308に結び付けられている。さらに、ブーム引っ張りロープR302の他端部は、船体2に取り付けられた船体側取付部材315を介して船体2に結び付けられている。ブーム308から船体側取付部材315までのブーム引っ張りロープR302の長さは、2つのブーム308の後端部に結び付けられた開き角度調整ロープR303の弛みがなくなるように調整されている。また、支持部材6に対するマスト7の回転は、2本のブーム引っ張りロープR302によって防止されている。
【0058】
ガフ309は、湾曲した棒状の部材である。ガフ309は、たとえば、上向きに凸の円弧状である。ガフ309は、直線状に延びる棒状の部材であってもよい。ガフ309は、平面視において2つのブーム308の中間に位置するようにマスト7に取り付けられている(図9参照)。ガフ309は、平面視において前後方向に延びている。ガフ309は、ブーム308よりも短い。すなわち、ガフ309の前端部309aからガフ309の後端部309bまでの直線距離は、ブーム308の前端部からブーム308の後端部までの直線距離よりも短い。ガフ309は、ブーム308より上方に配置されており、マスト7から後方に延びている。
【0059】
ガフ309の前端部309aは、ブーム308の上端部よりも上方でマスト7に支持されている。具体的には、被支持部としてのガフ309の前端部309aは、マスト7に固定された第2ジョイントJ2によって支持されている。したがって、ガフ309は、ガフ309の前端部309aを中心にマスト7に対して上下に回転可能である。ガフ309は、マスト7の上端部から延びるガフ吊り上げロープR304によって吊り上げられている。ガフ吊り上げロープR304の一端部は、マスト側取付部材314に結び付けられており、ガフ309の中間部に取り付けられたガフ側取付部材316を通って船体2側に延びている。ガフ吊り上げロープR304は、マスト7に取り付けられた取付部材317を介してマスト7に結び付けられている。マスト側取付部材314から取付部材317までのガフ吊り上げロープR304の長さは、ガフ309の後端部309bがガフ309の前端部309aよりも上方に位置するように調整されている。
【0060】
補強部材310は、直線状に延びる棒状の部材である。補強部材310は、ガフ309とブーム308とによって支持されている。補強部材310は、ガフ309の後端部309bからブーム308の後端部に向かって延びている。補強部材310の上端部310aは、ガフ309に支持されており、補強部材の下端部310bは、ブーム308によって支持されている。補強部材310は、ブーム308よりも短い。補強部材310は、補強部材310の上端部310aが補強部材の下端部310bよりも前方に位置するように前後に傾斜している。さらに、図10に示すように、補強部材310は、補強部材310の上端部310aが補強部材の下端部310bよりも内側(基準面X1側)に位置するように左右に傾斜している。補強部材310の上端部310aは、ガフ309に対して前後方向に回転できるようにガフ309に支持されている。また、補強部材の下端部310bは、ブーム308に沿って前後方向に移動できるように構成されている。
【0061】
具体的には、ブーム308には、ブーム308から下方に突出する2つのロープ取付軸318が取り付けられている。2つのロープ取付軸318は、前後方向に間隔を空けて配置されている。ガイドロープR305の一端部および他端部は、それぞれ、2つのロープ取付軸318に結び付けられている。ガイドロープR305は、ブーム308に沿って前後方向に延びている。ガイドロープR305は、補強部材310の下端部に取り付けられたスライドリング319に通されている。スライドリング319は、ガイドロープR305に沿って前後方向に移動可能である。スライドリング319がガイドロープR305に沿って前後方向に移動すると、補強部材の下端部310bは、ブーム308に沿って前後方向に移動する。したがって、補強部材の下端部310bは、ブーム308に沿って前後方向に移動可能である。
【0062】
セール311は、ガフ309によって吊り上げられている。セール311は、マスト7、ブーム308、ガフ309、および補強部材310によって張られている。セール311は、布などの柔らかい材料(たとえばナイロン等の化学繊維)によって形成されている。セール311は、セール311を2等分する位置で折り曲げられた山形である。セール311は、背面視倒立V字状であると共に、前側に凸の平面視三角形状である。セール311が風を受けると、抗力中心C2(図8参照)まわりに船舶1を旋回させる力が船舶1に加わる。すなわち、船舶1が風の方向に対して傾いている状態でセール311が風を受けると、船舶1を右まわりに旋回させる力と、船舶1を左まわりに旋回させる力とのバランスが崩れ、船首を風上に向ける力が発生する。
【0063】
図10に示すように、セール311は、上辺311aによって2等分された右セール311Rおよび左セール311Lを含む。右セール311Rは、マスト7と、右側のブーム308と、ガフ309と、右側の補強部材310とによって区画された空間に張られており、左セール311Lは、マスト7と、左側のブーム308と、ガフ309と、左側の補強部材310とによって区画された空間に張られている。右セール311Rおよび左セール311Lは、左右対称である。図11に示すように、右セール311Rおよび左セール311Lのそれぞれは、上側に凸の側面視四角形状であり、上辺311aと、下辺311bと、前辺311cと、後辺311dとを含む。上辺311aは、右セール311Rおよび左セール311Lに共有されている。
【0064】
図11に示すように、前辺311cは、他の辺311a、311b、311dよりも短い。上辺311aは、後辺311dの上端から前辺311cの上端に向かって降下している。上辺311aは、ガフ309に沿って配置されている。上辺311aは、上側に凸の側面視円弧状である。上辺311aは、たとえばロープ(図示せず)によって、ガフ309に取り付けられている。上辺311aの後端は、セール311において最も上に位置している部分である。すなわち、上辺311aの後端は、セール311の上端311tである。セール311の上端311tは、マスト7の上端7tより上方に配置されている。また、下辺311bは、ブーム308に沿って配置されている。下辺311bは、側面視において前後方向に延びる直線状である。下辺311bの前端は、ロープR5によってマスト7に取り付けられおり、下辺311bの後端は、ロープによって補強部材の下端部310bに取り付けられている。後辺311dは、下辺311bの後端から斜め前に向かって上方に延びている。後辺311dは、直線状である。後辺311dは、補強部材310に沿って配置されている。言い換えると、補強部材310は、後辺311dに沿って配置されている。後辺311dは、たとえばロープ(図示せず)によって、補強部材310に取り付けられている。
【0065】
図12は、本発明の第3実施形態に係る第2スパンカー305を折り畳むときの動作の一例について説明するための側面図である。図12(a)および図12(b)では、第2スパンカー305が折り畳まれる途中の状態が示されている。また、図12(c)では、第2スパンカー305が折り畳まれた状態、すなわち、折り畳み状態の第2スパンカー305が示されている。以下では、図10〜図12を参照する。
【0066】
第2スパンカー305は、折り畳み可能である。図10および図11に示すように、第2スパンカー305は、第2スパンカー305を折り畳むときに操作される左右一対の折り畳みロープR306と、第2スパンカー305を展開させるときに操作される左右一対の展開ロープR307とをさらに含む。折り畳みロープR306の一端部は、補強部材の下端部310bに結び付けられている。折り畳みロープR306は、補強部材の下端部310bから前方に延びている。折り畳みロープR306は、マスト7に取り付けられた取付部材320を介してマスト7に結び付けられている。また、展開ロープR307の一端部は、折り畳みロープR306よりも下方で補強部材の下端部310bに結び付けられている。展開ロープR307は、ブーム308の後端部に取り付けられた固定リング321に通されている。展開ロープR307は、補強部材の下端部310bから固定リング321に向かって後方に延び、その後、固定リング321からマスト7に向かって前方に延びている。展開ロープR307は、マスト7に取り付けられた取付部材322を介してマスト7に結び付けられている。
【0067】
折り畳みロープR306が引っ張られると、補強部材の下端部310bは、前方に引っ張られる。その一方で、展開ロープR307が引っ張られると、補強部材の下端部310bは、後方に引っ張られる。補強部材の下端部310bの前方への移動は、展開ロープR307が張られることにより防止されている。したがって、展開ロープR307が緩められた状態で折り畳みロープR306が引っ張られると、補強部材の下端部310bは、ブーム308に沿って前方に移動する。以下に説明するように、第2スパンカー305は、展開ロープR307が緩められた状態で折り畳みロープR306が引っ張られることにより折り畳まれる。
【0068】
次に、図12を参照して、第2スパンカー305が折り畳まれて収納されるときの動作の一例、および折り畳まれた第2スパンカー305が展開されるときの動作の一例について説明する。
[折り畳み動作]
第2スパンカー305を折り畳むときには、展開ロープR307が緩められる。これにより、補強部材の下端部310bの拘束(前方への移動の拘束)が解除される。その後、折り畳みロープR306が操船者によって引っ張られる。図12(a)において黒色の矢印で示すように、折り畳みロープR306が引っ張られると、補強部材の下端部310bは、補強部材310の上端部310aを中心に前方に回転しながら、ブーム308に沿って前方に移動する。これにより、図12(a)に示すように、補強部材の下端部310bがガフ309の後端部309bより前方に移動する。
【0069】
次に、ガフ309を吊り上げるガフ吊り上げロープR304が操船者によって緩められる。図12(b)において黒色の矢印で示すように、ガフ吊り上げロープR304が緩められると、ガフ309は、その自重によって、ガフ309の前端部309aを中心に下方に回転する。このとき補強部材の下端部310bは、ガフ309の回転に伴って、補強部材310の上端部310aを中心に前方に回転する。これにより、図12(c)に示すように、補強部材の下端部310bがマスト7の近傍まで移動し、セール311が折り畳まれる。このようにして、第2スパンカー305が折り畳まれる。
【0070】
次に、ブーム308を外側に引っ張るブーム引っ張りロープR302が操船者によって緩められる。2本のブーム引っ張りロープR302が張られている状態では、支持部材6に対するマスト7の回転が拘束されている。したがって、ブーム引っ張りロープR302が緩められることにより、中心軸線まわりのマスト7の拘束が解除される。図12(c)において黒色の矢印で示すように、操船者は、ブーム引っ張りロープR302を緩めた後、マスト7を中心軸線まわりに回転させる。これにより、ブーム308、ガフ309、補強部材310、およびセール311が、船体2上の収納位置に移動し、第2スパンカー305が収納される。
【0071】
[展開動作]
一方、船体2上に収納されている第2スパンカー305を展開させるときには、操船者が支持部材6に対してマスト7を回転させて、ブーム308、ガフ309、補強部材310、およびセール311を船体2上から船体2の後方に移動させる。その後、2本のブーム引っ張りロープR302が操船者によって船体2に結び付けられて、支持部材6に対するマスト7の回転が拘束される。
【0072】
次に、展開ロープR307が操船者によって引っ張られる。これにより、図12(b)において白色の矢印で示すように、補強部材の下端部310bがブーム308に沿って後方に移動する。展開ロープR307は、補強部材の下端部310bがブーム308の後端部に移動するまで引っ張られる。これにより、補強部材310は、補強部材310の上端部310aを中心に後方に回転しながら立ち上がる。それと共に、ガフ309が、補強部材310によって持ち上げられて、ガフ309の前端部309aを中心に上方に回転する。これにより、セール311が広げられる。
【0073】
セール311が広げられた後は、ガフ吊り上げロープR304が、マスト7に取り付けられている取付部材317に結び付けられる。これにより、ガフ309がガフ吊り上げロープR304によって吊り上げられる。その後、展開ロープR307が、マスト7に取り付けられている取付部材322に結び付けられる。これにより、補強部材の下端部310bが前方に移動することが防止される。このようにして、第2スパンカー305が展開される。
【0074】
以上のように第3実施形態では、第1実施形態と同様に、ガフ309の前端部309aが、マスト7に固定された第2ジョイントJ2に支持されている。したがって、従来のスパンカーのように、使用位置においてガフ309をロープR304によって上方向に強く引っ張らなくてもよい。したがって、マスト7に対するロープR304の取付位置を従来のスパンカーよりも低くでき、マスト7を低くできる。さらに、セール311の後辺311dが補強部材310によって補強されているので、セール311が強い風を受けたとしても、セール311の後辺311dの変形は、補強部材310によって抑制される。したがって、第2スパンカー305は、その性能を安定して発揮することができる。
【0075】
また、従来のように、ロープによって張力を与えることにより、セール311の後辺311dを張らなくてもよいので、セール311を支持する骨組み構造を簡素化することができる。さらに、ロープによってセール311の後辺311dを張らなくてもよいので、従来に比べてマスト7の太さや長さを減少させることができる。したがって、第2スパンカー305の重量を低減できると共に、第2スパンカー305を小型化することができる。そのため、第2スパンカー305の運搬や設置を簡単にできる。さらに、マスト7を短くすることができるので、船体2から延びるステーロープをマスト7に結びつけなくてもよい。したがって、ステーロープが、船尾で作業を行う乗船者の邪魔になることを防止することができる。
【0076】
また第3実施形態では、第2スパンカー305が折り畳み可能である。すなわち、ガフ309は、マスト7によって支持されたガフ309の前端部309aを中心にマスト7に対して上下に回転可能である。さらに、補強部材310は、ガフ309によって支持された補強部材310の上端部310aを中心にガフ309に対して前後に回転可能であると共に、ブーム308に対して前後方向に移動可能である。このように、第2スパンカー305が折り畳み可能に構成されているから、第2スパンカー305をコンパクトに収納することができる。これにより、第2スパンカー305の収納性を高めることができる。さらに、第2スパンカー305の運搬や設置を簡単に行うことができる。
【0077】
また第3実施形態では、ガフ309および補強部材310がブーム308より短い。ガフ309および補強部材310の長さは、第2スパンカー305が折り畳まれたときに、ガフ309の後端部309bと補強部材310の上端部310aとが側面視においてブーム308の後端部308bの上方に位置するように設定されている(図12(c)参照)。たとえば、ガフ309が、ブーム308より長いと、第2スパンカー305が折り畳まれたときに、ガフ309の後端部309bがブーム308より後方に突出する場合がある。また、補強部材310がブーム308より長いと、第2スパンカー305が折り畳まれたときに、補強部材の下端部310bがマスト7より前方に突出する場合がある。したがって、ガフ309および補強部材310をブーム308より短くすることにより、折り畳まれた状態での第2スパンカー305の大きさを小さくすることができる。
【0078】
また第3実施形態では、セール311の上端311tがマスト7の上端7tより上方に配置されている。言い換えると、マスト7が短いので、マスト7の上端7tがセール311の上端311tより下方に位置している。このように、セール311の後辺311dを補強部材310によって支持することにより、マスト7を短くすることができる。マスト7が短いので、第2スパンカー305が取り付けられた船舶1は、マスト7が立てられたまま、橋などの構造物の下を通過することができる。
【0079】
また第3実施形態では、ブーム308がマスト7より長い。従来のように、ロープによってセールの後辺を張る場合にブームが長いと、ブームに大きな曲げモーメントが加わる。しかし、第3実施形態では、セール311の後辺311dが補強部材310によって支持されているので、ブーム308が長くても、大きな曲げモーメントがブーム308に加わることを防止できる。したがって、ブーム308の長さを増加させることができる。これにより、セール311の抗力中心を後方に移動させて、船舶1に加わるモーメント(抗力中心C2まわりのモーメント)を増加させることができる。これにより、船首を確実に風上に向けることができる。
【0080】
また第3実施形態では、マスト7の中心軸線まわりに支持部材6とマスト7とを相対回転させることにより、船体2に対してマスト7を回転させることができる。これにより、ブーム308やセール311などのマスト7に支持されている部材を船体2に対して回転させることができる。これにより、ブーム308やセール311を船体2上に移動させて第2スパンカー305を船体2上に収納することができる。また、前述のように、マスト7の周囲にステーロープを配置しなくてもよいので、マスト7を回転させるときに、ブーム308とステーロープとの干渉を避けるためにステーロープを取り外さなくてもよい。したがって、第2スパンカー305を収納する作業を簡単にできる。
【0081】
また第3実施形態では、ガフ309が湾曲している。したがって、ガフ309が直線状に延びている場合に比べて、セール311の面積を増加させることができる。そのため、セール311が風を受けたときに、船舶1に加わる力(抗力中心C2まわりのモーメント)を増加させることができる。これにより、船舶1を確実に旋回させて、船首を風上に向けることができる。
【0082】
なお、前述の第2スパンカー305において、図13に示す第4実施形態に係る第2スパンカー405のように、展開ロープR307を案内する複数のガイドリング423が、右セール311Rおよび左セール311Lに取り付けられていてもよい。複数のガイドリング423は、補強部材310の上端部310aを中心とする円弧に沿って配置されており、展開ロープR307は、セール311の内側と外側とを行き来するように、複数のガイドリング423に通されている。この構成によれば、展開ロープR307が引っ張られると、セール311の下辺311bが展開ロープR307によって案内されるので、セール311を規則的に折り畳むことができる。つまり、セール311の折り目の位置が安定するので、より綺麗にセール311を折り畳むことができる。
【0083】
この発明の実施の形態の説明は以上であるが、この発明は、前述の第1〜第4実施形態の内容に限定されるものではなく、請求項記載の範囲内において種々の変更が可能である。
たとえば、前述の第1〜第4実施形態では、ガフの前端部が、回転支持部材としての第2ジョイントに支持されている場合について説明した。しかし、前端部と後端部の間のガフの中間部が、第2ジョイントによって支持されていてもよい。すなわち、ガフの被支持部は、前端部に限らず、中間部であってもよい。
【0084】
また、前述の第3および第4実施形態では、ガフの左右方向への移動を規制する左右支持部材としてのガフキャッチが設けられていない場合について説明した。しかし、第3および第4実施形態に係るスパンカー(第2スパンカー)に、ガフキャッチが設けられ、このガフキャッチによってガフを使用位置で支持してもよい。
また、前述の第1〜第4実施形態では、ガフの前端部がブームの前端部より上方に配置されている場合について説明した。しかし、ガフの前端部は、ブームの前端部と同じ高さに配置されていてもよい。
【0085】
また、前述の第1〜第4実施形態では、マストがブームより短い場合について説明した。しかし、マストは、ブームより長くてもよいし、ブームと等しい長さを有していてもよい。
また、前述の第1〜第4実施形態では、支持部材は、マストの中心軸線まわりに回転可能にマストを支持している場合について説明した。しかし、支持部材は、マストが支持部材に対して回転できないようにマストを支持していてもよい。
【0086】
また、前述の第1〜第4実施形態では、マストが支持部材を介して船体に取り付けられている場合について説明した。しかし、支持部材が設けられておらず、マストが船体に直接取り付けられていてもよい。
その他、特許請求の範囲に記載された事項の範囲で種々の設計変更を施すことが可能である。
【0087】
以下に、特許請求の範囲に記載された構成要素と前述の実施形態における構成要素との
対応関係を示す。
マスト:マスト7
回転支持部材:第2ジョイントJ2
水平軸線:水平軸線A1
ガフの被支持部:前端部9a,309a
ガフの後端部:後端部9b、309b
ガフ:ガフ9、209、309
セールの上辺:上辺11a,311a
セール:セール11、311
マスト側取付部材:マスト側取付部材14、314
ガフ側取付部材:ガフ側取付部材16、316
ロープ:ガフ吊り上げロープR4、R304
スパンカー:第1スパンカー5、205、第2スパンカー305、405
マストの上端:上端7t
左右支持部材:ガフキャッチ17
セールの下辺:下辺11b、311b
ブーム:ブーム8、308
ローチ補強部材:バテン12
ガフ側取付部:ガフ側取付部11e
ブーム側取付部:ブーム側取付部11f
ガフ側取付部の後端:ガフ側取付部の後端11g
ブーム側取付部の後端:ブーム側取付部の後端11h
直線:直線L1
ローチ:ローチ11i
棒状部材:バテン12
後辺:後辺311d
後辺補強部材:補強部材310
後辺補強部材の下端部:下端部310b
後辺補強部材の上端部:上端部310a
セールの上端:上端11t、311t
船体:船体2
マスト支持部材:支持部材6
【符号の説明】
【0088】
5 :第1スパンカー
6 :支持部材
7 :マスト
7t :マストの上端
8 :ブーム
9 :ガフ
9a :ガフの前端部
9b :ガフの後端部
11 :セール
11a :セールの上辺
11b :セールの下辺
11d :セールの後辺
11e :ガフ側取付部
11f :ブーム側取付部
11i :ローチ
11t :セールの上端
12 :バテン
14 :マスト側取付部材
16 :ガフ側取付部材
17 :ガフキャッチ
205 :第1スパンカー
209 :ガフ
305 :第2スパンカー
308 :ブーム
309 :ガフ
309a :ガフの前端部
309b :ガフの後端部
310 :補強部材
310a :補強部材の上端部
310b :補強部材の下端部
311 :セール
311a :セールの上辺
311b :セールの下辺
311d :セールの後辺
311t :セールの上端
314 :マスト側取付部材
316 :ガフ側取付部材
405 :第2スパンカー
A1 :水平軸線
J2 :第2ジョイント
R4 :ガフ吊り上げロープ
R304 :ガフ吊り上げロープ
【技術分野】
【0001】
この発明は、流し釣りを行うときに用いられるスパンカー(spanker)に関する。
【背景技術】
【0002】
船釣りでは、舵や推力の調整によって船舶が風に流されることを抑制すると共に、船舶を潮流に乗せながら釣りをする「流し釣り」が行われる場合がある。流し釣りが行われるときには、たとえばスパンカーが用いられる。スパンカーは、船尾に配置されたセール(帆)によって風を受けることにより、風力によって船舶を旋回させて、船首を風上に向ける装置である。船首が風上に向けられた状態で、操船者が舵や推力を調整することにより、船舶が風に流されることを抑制することができる。
【0003】
特許文献1に記載のスパンカーは、側面視四角形状のセールと、マストと、マストから後方に延びるブーム(boom)およびガフ(gaff)とを備えている(特許文献1の図15参照)。ガフは、ブームより上方に配置されており、セールの上辺は、ガフに支持されている。セールの下辺は、ブームに支持されており、セールの前辺は、ロープによってマストに結索されている。ガフの前端部は、スライダジョイント部材を介してマストに連結されている。スライダジョイント部材は、マストに対して上下に昇降可能である。したがって、マストに対してガフ全体が上下に昇降可能である。ガフは、マストから延びるロープによって吊り上げられている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2000−128078号公報
【発明の概要】
【課題を解決するための手段】
【0005】
特許文献1記載のスパンカーでは、セールの後辺が固定されておらず、ロープからの張力によって、ガフの後端部とブームの後端部との間で上下に張られている。したがって、セールの後辺に加わる張力が十分でない場合には、セールが風を受けたときに、セールの後辺が変形してしまい、船舶を旋回させる力が減少してしまう。そのため、スパンカーの性能を十分に発揮させるために、セールの後辺の変形を防ぐ必要がある。
【0006】
しかしながら、特許文献1記載のスパンカーでは、ロープによってガフを吊り上げることにより、セールの後辺が張られている。ガフが動くと、セールの後辺が変形してしまう。したがって、マストとガフとを繋ぐロープに強い力(張力)を与えて、ガフを強固に固定する必要がある。さらに、ガフ全体がマストに対して上下に移動可能であり、ガフの殆ど全ての重量がロープに加わるので、ガフ全体を支え、セールの後辺を張るのに十分な大きさの張力をロープに与える必要がある。
【0007】
ところが、特許文献1記載のスパンカーでは、ガフを吊り上げるロープがマストに結索されているため、ロープを強く張るとマストに大きな力が加わる。そのため、マストが変形することを防止するために、マストを太くしてマストの強度を増加させたり、ステーロープによってマストと船体とを堅固に結び付ける必要がある。
さらに、特許文献1記載のスパンカーでは、ガフ全体がマストから延びるロープによって吊られているため、ガフをロープによって上方向に強く引っ張って、セールの後辺に強い張力を与える必要がある。したがって、ロープは、水平面に対して大きな傾斜角度でガフからマストに向かって斜め上に延びている。そのため、マストに対するロープの取付位置が高くなり、マストが高くなる。しかしながら、マストが高いと、マストの強度をさらに増加させたり、ステーロープによってマストと船体とを堅固に結び付ける必要がある。さらに、マストが高いと、スパンカーを含む船舶全体の高さが、橋などの構造物の制限高さを超えてしまい、船舶が構造物の下を通過できない場合がある。当然、スパンカーを取り外せば、船舶全体の高さが低くなるので、構造物の下を通過できるが、スパンカーの取外しが必要となり手間である。
【0008】
そこで、この発明の目的は、マストを低くできる簡素な構成を備えたスパンカーを提供することである。
また、この発明の他の目的は、セールの後辺の変形を抑制する簡素な構成を備えたスパンカーを提供することである。
前記目的を達成するための本発明の一実施形態は、上下方向に延びるマストと、前記マストに固定された回転支持部材と、前記回転支持部材を通る水平軸線まわりに回転可能に前記回転支持部材に支持された被支持部と、前記マストより後方に配置された後端部とを含み、収納位置と、前記収納位置より前記後端部が上方に位置する使用位置との間で前記マストに対して回転可能なガフと、前記ガフによって支持された上辺を含むセールと、前記マストおよびガフにそれぞれ取り付けられたマスト側取付部材およびガフ側取付部材に取り付けられており、前記ガフ側取付部材が前記マスト側取付部材に近づいて、前記ガフが前記使用位置に移動するように操作可能なロープとを含む、スパンカーである。
【0009】
この構成によれば、ガフが、マストに固定された回転支持部材を介してマストに支持されている。ガフの被支持部は、回転支持部材に対して、回転支持部材を通る水平軸線まわりに回転可能である。その一方で、回転支持部材は、マストに固定されており、マストに対して移動不能である。したがって、ガフの被支持部は、マストに対して上下に移動不能である。よって、ガフ全体は、マストに対して被支持部を中心に上下に回転可能であると共に、マストに対して上下に移動不能である。
【0010】
ガフは、ロープの操作によって、収納位置と使用位置との間で被支持部を中心に上げ下げされる。すなわち、ロープは、ガフに取り付けられたガフ側取付部材と、マストに取り付けられたマスト側取付部材とに取り付けられている。ロープが操作(展開操作)されると、ガフ側取付部材がマスト側取付部材に近づいて、ガフが使用位置に移動する。これにより、セールが展開される。また、ロープが操作(折り畳み操作)されると、ガフ側取付部材がマスト側取付部材から遠ざかり、ガフが収納位置に移動する。これにより、セールが折り畳まれる。
【0011】
このように、上下方向に関してガフの被支持部がマストに固定されているので、従来のスパンカーのように、使用位置においてガフをロープによって上方向に強く引っ張らなくてもよい。したがって、マストに対するロープの取付位置を従来のスパンカーよりも低くでき、マストを低くできる。そのため、マストの強度を増加させるために、マストを太くしたり、ステーロープによってマストと船体とを堅固に結び付けなくてもよい。さらに、マストを低くできるので、スパンカーを含む船舶全体の高さを低減できる。したがって、船舶の通航が橋などの構造物によって制限される頻度を低減できる。
【0012】
前記マスト側取付部材は、前記回転支持部材より上方に配置されていてもよい。
また、前記マストの上端は、前記使用位置に位置する前記ガフの後端部より下方に配置されていてもよい。
また、前記マストの上端は、前記使用位置に位置する前記ガフ側取付部材より下方に配置されていてもよい。
【0013】
また、前記マスト側取付部材は、前記使用位置に位置する前記ガフの後端部より下方に配置されていてもよい。
また、前記マスト側取付部材は、前記使用位置に位置する前記ガフ側取付部材より下方に配置されていてもよい。
また、前記スパンカーは、前記ガフを支持する左右支持部材をさらに含んでいてもよい。前記左右支持部材は、前記回転支持部材に対して上下方向に離れた位置で前記マストに取り付けられており、前記使用位置に位置する前記ガフを支持していてもよい。この場合、前記左右支持部材は、前記回転支持部材の上方で前記マストに取り付けられていてもよいし、前記回転支持部材の下方で前記マストに取り付けられていてもよい。前記マストに対する前記ガフの左右方向への移動は、前記左右支持部材によって規制される。
【0014】
また、前記スパンカーは、前記マストから後方に延びており、前記使用位置に位置する前記ガフの後端部より下方に配置されており、前記セールの下辺に沿って配置されたブームと、前記セールに取り付けられたローチ補強部材とをさらに含んでいてもよい。この場合、前記セールは、前記ガフに取り付けられたガフ側取付部と、前記ブームに取り付けられたブーム側取付部と、前記使用位置において前記ガフ側取付部の後端と前記ブーム側取付部の後端とを結ぶ直線より後方に配置されており、前記ローチ補強部材が取り付けられたローチとを含んでいてもよい。
【0015】
また、前記ローチ補強部材は、前記回転支持部材から前記セールの後辺に向かって放射状に延びる複数の棒状部材を含んでいてもよい。
また、前記スパンカーは、前記マストから後方に延びており、前記使用位置に位置する前記ガフの後端部より下方に配置されており、前記セールの下辺に沿って配置されたブームと、前記使用位置において前記セールの前記下辺の後端から上方に延びる後辺に沿って配置されており、前記後辺が取り付けられた後辺補強部材とをさらに含んでいてもよい。
【0016】
この構成によれば、セールの下辺が、マストから後方に延びるブームに沿って配置されており、セールの下辺の後端から上方に延びるセールの後辺が、後辺補強部材に沿って配置されている。セールの後辺は、後辺補強部材に取り付けられている。セールが強い風を受けたとしても、セールの後辺の変形は、後辺補強部材によって抑制される。したがって、スパンカーは、その性能を安定して発揮することができる。
【0017】
また、従来のように、ロープによって張力を与えることにより、セールの後辺を張らなくてもよいので、セールを支持する骨組み構造を簡素化することができる。さらに、ロープによってセールの後辺を張らなくてもよいので、従来に比べてマストの太さや長さを減少させることができる。したがって、スパンカーの重量を低減できると共に、スパンカーを小型化することができる。そのため、スパンカーの運搬や設置を簡単にできる。さらに、マストを低くできるので、船体から延びるステーロープをマストに結びつけなくてもよい。したがって、ステーロープが、船尾で作業を行う乗船者の邪魔になることを防止することができる。
【0018】
また、前記後辺補強部材は、前記後辺の変形を抑制するように構成された棒状の部材であってもよい。
また、前記後辺補強部材の下端部は、前記ブームによって支持されていてもよい。
また、前記後辺補強部材の下端部は、前記ブームに沿って前後方向に移動できるように構成されており、前記後辺補強部材の上端部は、前記ガフに対して前後方向に回転できるように前記ガフに支持されていてもよい。
【0019】
また、前記ブームは、前記マストより長くてもよい。
また、前記使用位置において、前記セールの上端は、前記マストの上端より上方に配置されていてもよい。
また、前記スパンカーは、前記マストの中心軸線まわりに回転可能に前記マストを支持しており、船体に取り付けられるマスト支持部材をさらに含んでいてもよい。
【図面の簡単な説明】
【0020】
【図1】本発明の第1実施形態に係る船舶の側面図である。
【図2】本発明の第1実施形態に係る船舶の平面図である。
【図3】本発明の第1実施形態に係る第1スパンカーの右側面図である。
【図4】本発明の第1実施形態に係る第1スパンカーの平面図である。
【図5】本発明の第1実施形態に係る第1スパンカーの背面図である。
【図6A】本発明の第1実施形態に係る第1スパンカーを折り畳むときの動作の一例について説明するための側面図である。
【図6B】本発明の第1実施形態に係る第1スパンカーを折り畳むときの動作の一例について説明するための側面図である。
【図6C】本発明の第1実施形態に係る第1スパンカーを折り畳むときの動作の一例について説明するための側面図である。
【図6D】本発明の第1実施形態に係る第1スパンカーを折り畳むときの動作の一例について説明するための側面図である。
【図7】本発明の第2実施形態に係る第1スパンカーの模式的な右側面図である。
【図8】本発明の第3実施形態に係る船舶の側面図である。
【図9】本発明の第3実施形態に係る船舶の平面図である。
【図10】本発明の第3実施形態に係る第2スパンカーの斜視図である。
【図11】本発明の第3実施形態に係る第2スパンカーの右側面図である。
【図12】本発明の第3実施形態に係る第2スパンカーを折り畳むときの動作の一例について説明するための側面図である。
【図13】本発明の第4実施形態に係る第2スパンカーの右側面図である。
【発明を実施するための形態】
【0021】
以下では、この発明の実施の形態を、添付図面を参照して詳細に説明する。
具体的には、セールを補強する複数のバテンを備える第1スパンカーと、セールの後辺を補強する補強部材を備える第2スパンカーとについて説明する。最初に、第1スパンカーについて説明する。
[第1スパンカー]
図1は、本発明の第1実施形態に係る船舶1の側面図である。図2は、本発明の第1実施形態に係る船舶1の平面図である。
【0022】
船舶1は、船体2と、船舶1を推進する船舶推進機3と、船舶1を操作するために操船者によって操作される操作部材4と、風力によって船首を風上に向ける第1スパンカー5とを含む。船舶推進機3は、船体2の後部中央部に取り付けられている。船舶推進機3は、船首と船尾中央とを通る鉛直な平面である船体中心C1に沿って配置されている。操作部材4は、船舶1の中央部に設けられた操船位置P1に配置されている。船舶推進機3は、平面視において操船位置P1の後方に位置している。第1スパンカー5は、船舶推進機3の側方に配置されている。第1スパンカー5および船舶推進機3は、平面視において左右方向に並んでいる。船舶推進機3は、エンジンと、エンジンの動力をプロペラに伝達するドライブユニットとが船外に配置された船外機である。船舶推進機3は、船外機に限らず、船内に配置されたエンジンと、船外に配置されたドライブユニットとを含む船内外機であってもよいし、船内に配置されたエンジンおよびドライブユニットを含む船内機であってもよい。また、船舶1に備えられる船舶推進機3の数は、1つであってもよいし、複数であってもよい。
【0023】
図3は、第1スパンカー5の右側面図である。図4は、第1スパンカー5の平面図である。図5は、第1スパンカー5の背面図である。
後述するように、第1スパンカー5は折り畳み可能であり、ブーム8およびガフ9は、マスト7に対して収納位置と使用位置との間で移動可能である。図3〜図5では、使用状態(展開状態)の第1スパンカー5が示されている。第1スパンカー5の使用状態とは、ブーム8およびガフ9がそれぞれの使用位置に配置されている状態である。第1スパンカー5の収納状態とは、ブーム8およびガフ9がそれぞれの収納位置に配置されている状態である。
【0024】
以下では、使用状態の第1スパンカー5について説明する。以下の説明における「前後方向」および「左右方向」は、2つのブーム8の後端の中間の中間位置P2(図4参照)と、マスト7とを通る鉛直な平面である基準面X1を基準とする方向である。中間位置P2からマスト7に向かう方向が前方向であり、マスト7から中間位置P2に向かう方向が後方向である。以下の説明における「左右対称」は、基準面X1に関して対称なことを意味する。
【0025】
第1スパンカー5は、左右対称な形状を有している。図3に示すように、第1スパンカー5は、船体2に取り付けられた支持部材6と、支持部材6から上方に延びるマスト7と、マスト7に連結された左右一対のブーム8と、ブーム8より上方でマスト7に連結されたガフ9と、ブーム8およびガフ9によって支持されたセール11と、セール11に沿って配置された複数のバテン12(batten)とを含む。
【0026】
支持部材6は、船体2に固定されている。図3に示すように、支持部材6は、船体2に固定された固定部6aと、固定部6aから上方に延びる円筒状の筒状部6bと、固定部6aおよび筒状部6bに結合された補強プレート6cとを含む。固定部6aは、たとえば複数のボルト(図示せず)によって船体2に固定されている。したがって、支持部材6は、取り外し可能に船体2に取り付けられている。
【0027】
図3に示すように、マスト7は、上下方向に延びている。マスト7は、ブーム8およびガフ9より太い棒状の部材である。マスト7の下端部は、筒状部6b内に挿入されている。マスト7は、筒状部6bに対してマスト7の中心軸線まわりに回転可能である。したがって、支持部材6は、マスト7の中心軸線まわりに回転可能にマスト7を支持している。マスト7は、鉛直な姿勢で支持部材6に支持されていてもよいし、鉛直軸線に対して傾いた姿勢で支持部材6に支持されていてもよい。すなわち、マスト7は、鉛直方向に延びていてもよいし、鉛直軸線に対して傾いた方向に延びていてもよい。
【0028】
図3に示すように、ブーム8は、直線状に延びる棒状の部材である。ブーム8は、マスト7の後方に配置されている。ブーム8は、マスト7に固定された第1ジョイントJ1を介してマスト7に連結されている。ブーム8は、マスト7の中間部から後方に延びている。ブーム8は、船舶推進機3よりも上方に配置されている(図1参照)。ブーム8は、マスト7より長い。2つのブーム8の前端部は、同じ高さでマスト7に支持されている。図4に示すように、2つのブーム8は、平面視において後ろ向きに広がるV字状に配置されている。2つのブーム8は、左右対称に配置されている。ブーム8の前端部は、第1ジョイントJ1に対して上下に回転可能である。さらに、ブーム8の前端部は、第1ジョイントJ1に対して左右に回転可能である。したがって、ブーム8は、ブーム8の前端部を中心にマスト7に対して上下に回転可能であり、ブーム8の前端部を中心にマスト7に対して左右に回転可能である。
【0029】
ブーム8は、収納位置(図6Cおよび図6Dに示す位置)と使用位置(図3〜図5に示す位置)との間で、ブーム8の前端部を中心に移動可能である。図3に示すように、ブーム8は、マスト7から延びるブーム吊り上げロープR1によって使用位置まで吊り上げられている。ブーム吊り上げロープR1は、ブーム8の後端部に結び付けられている。さらに、ブーム吊り上げロープR1は、マスト7の上端部に取り付けられたマスト側取付部材14を介してマスト7に結び付けられている。ブーム8の後端部とマスト7の上端部との間のブーム吊り上げロープR1の長さは、ブーム8が水平またはほぼ水平に延びるように調整されている。これにより、ブーム8の高さが使用位置に対応する高さに調整されている。
【0030】
さらに、図4に示すように、ブーム8は、船体2から延びるブーム引っ張りロープR2によって、2つのブーム8の後端の間隔が広がるように外側(基準面X1から離れる方向)に引っ張られている。ブーム引っ張りロープR2の端部は、ブーム8に取り付けられたブーム側取付部材13に結び付けられている。船体2からブーム8までのブーム引っ張りロープR2の長さは、2つのブーム8の後端部に結び付けられた開き角度調整ロープR3の弛みがなくなるように調整されている。これにより、左右方向へのブーム8の位置が調整されている。このようにして、ブーム8が使用位置に保持されている。支持部材6に対するマスト7の回転は、2本のブーム引っ張りロープR2によって防止されている。
【0031】
図3に示すように、ガフ9は、たとえば湾曲した棒状の部材である。ガフ9は、ブーム8より上方に配置されており、マスト7から後方に延びている。ガフ9は、回転支持部材としての第2ジョイントJ2を介してマスト7に連結されている。第2ジョイントJ2は、第1ジョイントJ1とマスト側取付部材14との間の高さでマスト7に固定されている。ガフ9は、第2ジョイントJ2に支持された被支持部としての前端部9aと、前端部9aの斜め上後方に配置された後端部9bと、マスト7と平行な平行部9cと、マスト7に対して傾いた傾斜部9dとを含む。平行部9cは、第2ジョイントJ2から上方に延びており、傾斜部9dは、平行部9cの上端から斜め上後方に延びている。マスト7の上端7tは、ガフ9の後端部9bより下方に配置されている。ガフ9は、ブーム8よりも長い。すなわち、ガフ9の前端部9aからガフ9の後端部9bまでの直線距離は、ブーム8の前端部からブーム8の後端部までの直線距離よりも長い。図4に示すように、ガフ9は、平面視において2つのブーム8の中間に位置するようにマスト7に取り付けられている。
【0032】
図3に示すように、ガフ9の前端部9aは、第2ジョイントJ2によって、ブーム8の前端部の上方でマスト7に支持されている。ガフ9の前端部9aは、第2ジョイントJ2に対して、第2ジョイントJ2を通る水平軸線A1まわりに回転可能である。すなわち、ガフ9の前端部9aは、第2ジョイントJ2に対して上下に回転可能である。したがって、ガフ9は、ガフ9の前端部9aを中心にマスト7に対して上下に回転可能である。さらに、ガフ9の前端部9aは、第2ジョイントJ2に対して上下に移動不能である。第2ジョイントJ2は、マスト7に固定されており、マスト7に対して上下に移動不能である。したがって、ガフ9の前端部9aは、マスト7に対して上下に移動不能である。
【0033】
ガフ9は、収納位置(図6Cに示す位置)と使用位置(図3〜図5に示す位置)との間で、ガフ9の前端部9aを中心に上下に回転可能である。図3に示すように、ガフ9は、マスト7の上端部から延びるガフ吊り上げロープR4によって使用位置まで吊り上げられている。ガフ吊り上げロープR4の一端部は、ガフ9の中間部に取り付けられたガフ側取付部材16に結び付けられている。ガフ側取付部材16は、マスト側取付部材14およびマスト7の上端7tより上方に配置されている。ガフ吊り上げロープR4は、ガフ9の中間部からマスト7の上端部に延びている。ガフ吊り上げロープR4は、マスト側取付部材14に取り付けられている。したがって、ガフ吊り上げロープR4は、マスト側取付部材14を介してマスト7に取り付けられており、ガフ側取付部材16を介してガフ9に取り付けられている。ガフ9の中間部からマスト7の上端部までのガフ吊り上げロープR4の長さは、ガフ9の後端部9bがガフ9の前端部9aよりも上方に位置するように調整されている。ガフ9は、ガフ吊り上げロープR4の操作によって収納位置と使用位置との間で上げ下げされる。使用位置でのガフ9の後端部9bの高さは、収納位置でのガフ9の後端部9bの高さより高い。
【0034】
図3に示すように、ガフ9は、マスト7に取り付けられたガフキャッチ17によって保持されている。ガフキャッチ17は、第2ジョイントJ2の上方に配置されている。ガフキャッチ17は、第2ジョイントJ2とマスト側取付部材14との中間の高さより上方でマスト7に取り付けられている。図4に示すように、ガフキャッチ17は、後向きに開いた平面視コの字状である。ガフ9が使用位置に位置している状態では、ガフ9の一部がガフキャッチ17に嵌っている。ガフ9は、ガフキャッチ17によって左右方向に支持されている。したがって、マスト7に対するガフ9の左右方向への移動は、ガフキャッチ17によって規制される。これにより、ガフ9とマスト7との結合力が高められている。ガフ9は、ガフキャッチ17の内部を出入り可能である(図6A参照)。操船者がガフ9を使用位置から収納位置側に移動させると、ガフ9がガフキャッチ17から外れ、ガフキャッチ17によるガフ9の移動規制が解除される。また、操船者がガフ9を使用位置に移動させると、ガフ9がガフキャッチ17に嵌り、マスト7に対するガフ9の左右方向への移動が規制される。
【0035】
セール11は、布などの柔らかい材料(たとえばナイロン等の化学繊維)によって形成されている。図5に示すように、セール11は、セール11を2等分する位置で折り曲げられた上に凸の山形である。すなわち、セール11は、背面視倒立V字状である。図4に示すように、セール11は、前側に凸の平面視V字状である。さらに、図3に示すように、セール11は、上側に凸の側面視四角形状である。セール11は、ブーム8およびガフ9によって支持されている。セール11は、ガフ9によって吊り上げられている。セール11は、ブーム8およびガフ9に上下によって張られている。セール11が風を受けると、抗力中心C2(図1参照)まわりに船舶1を旋回させる力が船舶1に加わる。すなわち、船舶1が風の方向に対して傾いている状態でセール11が風を受けると、船舶1を右まわりに旋回させる力と、船舶1を左まわりに旋回させる力とのバランスが崩れ、船首を風上に向ける力が発生する。これにより、船首が風上に向けられる。
【0036】
図4に示すように、セール11は、上辺11aによって2等分された右セール11Rおよび左セール11Lを含む。右セール11Rおよび左セール11Lは、左右対称である。右セール11Rは、右側のブーム8と、ガフ9とによって支持されており、左セール11Lは、左側のブーム8と、ガフ9とによって支持されている。図5に示すように、右セール11Rおよび左セール11Lは、それぞれ、右側のブーム8および左側のブーム8からガフ9に向かって斜め上に延びている。右セール11Rおよび左セール11Lは、内側(基準面X1側)に傾いた姿勢で支持されている。図3に示すように、右セール11Rおよび左セール11Lのそれぞれは、上側に凸の側面視四角形状であり、上辺11aと、下辺11bと、前辺11cと、後辺11dとを含む。上辺11aは、右セール11Rおよび左セール11Lに共有されている。
【0037】
図3に示すように、前辺11cは、他の辺11a、11b、11dよりも短い。上辺11aは、後辺11dの上端から前辺11cの上端に向かって下降している。上辺11aは、ガフ9に沿って配置されている。上辺11aは、直線状である。上辺11aは、ガフ9に取り付けられている。上辺11aの後端は、セール11において最も上に位置している部分である。すなわち、上辺11aの後端は、セール11の上端11tである。セール11の上端11tは、マスト7の上端7tより上方に配置されている。また、下辺11bは、ブーム8に沿って配置されている。下辺11bは、側面視において前後方向に延びる直線状である。下辺11bの前端は、ロープR5によってマスト7に取り付けられおり、下辺11bの後端は、ロープによってブーム8の後端部に取り付けられている。後辺11dは、下辺11bの後端から斜め前に向かって上方に延びている。
【0038】
図3に示すように、上辺11aは、ガフ9に取り付けられた袋状のガフ側取付部11eを含む。下辺11bは、ブーム8に取り付けられたブーム側取付部11fを含む。図3では、ガフ側取付部11eの後端11gは、ガフ9の後端と一致しており、ブーム側取付部11fの後端11hは、ブーム8の後端と一致している。ガフ側取付部11eの後端11gは、ガフ9の後端より前方に配置されていてもよい。同様に、ブーム側取付部11fの後端11hは、ブーム8の後端より前方に配置されていてもよい。後辺11dは、2つの後端(後端11gおよび後端11h)とを結ぶ直線L1より後方に配置されている。右セール11Rにおいて直線L1より後方の部分は、ローチ11iである。同様に、左セール11Lにおいて直線L1より後方の部分は、ローチ11iである。ローチ11iは、複数のバテン12によって補強されている。
【0039】
バテン12は、弾性変形可能な棒状の部材である。バテン12は、セール11よりも剛性が高く、マスト7、ブーム8、およびガフ9よりも剛性が低い。したがって、バテン12は、セール11よりも曲がり難く、マスト7、ブーム8、およびガフ9よりも曲がり易い。右セール11Rおよび左セール11Lのそれぞれには、複数のバテン12が取り付けられている。図3に示すように、共通のセール(右セール11Rまたは左セール11L)に取り付けられた複数のバテン12は、当該セールに沿って配置されている。さらに、共通のセールに取り付けられた複数のバテン12は、第2ジョイントJ2からセール11の後辺11dに向かって放射状に延びている。バテン12の後端は、少なくともローチ11iに達している。図3では、バテン12の後端は、後辺11dに達している。複数のバテン12は、ローチ11iを上下方向に概ね等分割するように配置されている。
【0040】
図6A〜図6Dは、本発明の第1実施形態に係る第1スパンカー5を折り畳むときの動作の一例について説明するための側面図である。図6Aおよび図6Bでは、第1スパンカー5が折り畳まれる途中の状態が示されている。また、図6Cおよび図6Dでは、第1スパンカー5が折り畳まれた状態、すなわち、収納状態の第1スパンカー5が示されている。以下では、第1スパンカー5が折り畳まれて収納されるときの動作の一例、および折り畳まれた第1スパンカー5が展開されるときの動作の一例について説明する。
【0041】
[折り畳み動作]
展開状態(使用状態)の第1スパンカー5を折り畳むときには、ガフ吊り上げロープR4を緩めて、収納位置までガフ9を下す。具体的には、図6Aおよび図6Bにおいて黒色の矢印で示すように、ガフ9の前端部9aを中心にガフ9を下方に回転させる。これにより、ガフ側取付部材16がマスト側取付部材14から遠ざかり、ガフ9が、ガフキャッチ17から外れる。それと共に、セール11が上下に折り畳まれていく。そして、図6Cに示すように、ガフ9の後端部9bがガフ9の前端部9aと概ね同じ高さまで下降し、ガフ9が、左右一対のブーム8の間まで移動すると、ガフ吊り上げロープR4をマスト7に結索して、ガフ9を収納位置に保持する。
【0042】
次に、ブーム引っ張りロープR2を緩めて、収納位置まで各ブーム8を内側に移動させる。具体的には、図6Dにおいて黒色の矢印で示すように、ブーム8がガフ9に沿う位置(収納位置)まで、ブーム8を内側に回転させる。これにより、各ブーム8が収納位置に位置するガフ9に沿って配置される。それと共に、セール11が左右に折り畳まれる。このようにして、ブーム8およびガフ9が、それぞれの収納位置に配置され、第1スパンカー5がコンパクトに折り畳まれる。その後、図6Cにおいて黒色の矢印で示すように、ブーム引っ張りロープR2が緩められている状態で、支持部材6に対してマスト7を中心軸線まわりに回転させる。これにより、ブーム8、ガフ9、およびセール11が、船体2上に移動し、第1スパンカー5が船体2上に収納される。
【0043】
[展開動作]
一方、船体2上に収納されている収納状態の第1スパンカー5を展開させるときには、ブーム引っ張りロープR2が緩められている状態で、支持部材6に対してマスト7を中心軸線まわりに回転させて、ブーム8、ガフ9、およびセール11を船体2上から船体2の後方に移動させる。その後、図6Dにおいて白色の矢印で示すように、収納位置に配置されている左右一対のブーム8を広げて、V字状に配置する。すなわち、ブーム8を収納位置から使用位置に移動させて、セール11を左右に広げる。その後、ブーム引っ張りロープR2を船体2に結索する。これにより、ブーム8が使用位置に保持されると共に、支持部材6に対するマスト7の回転が規制される。
【0044】
次に、ガフ吊り上げロープR4をマスト7側に引っ張って、ガフ9を使用位置まで吊り上げる。具体的には、ガフ吊り上げロープR4をマスト7側に引っ張って、ガフ側取付部材16からマスト側取付部材14までのガフ吊り上げロープR4の長さを減少させる。これにより、図6A、図6B、および図6Cにおいて白色の矢印で示すように、ガフ9の前端部9aを中心にガフ9が上方に回転し、ガフ側取付部材16がマスト側取付部材14に近づく。それと共に、セール11が上下に広げられる。そして、ガフ9が、ガフキャッチ17に嵌り、使用位置に移動すると、ガフ吊り上げロープR4をマスト7に結索して、ガフ9を使用位置に保持する。このようにして、第1スパンカー5が展開され、セール11が張られる。
【0045】
以上のように第1実施形態では、被支持部としてのガフ9の前端部9aが、マスト7に固定された回転支持部材としての第2ジョイントJ2に支持されている。すなわち、上下方向に関してガフ9の前端部9aがマスト7に固定されている。したがって、従来のスパンカーのように、使用位置においてガフ9をロープR4によって上方向に強く引っ張らなくてもよい。そのため、マスト7に対するロープR4の取付位置を従来のスパンカーよりも低くでき、マスト7を低くできる。よって、マスト7の強度を増加させるために、マスト7を太くしたり、ステーロープによってマスト7と船体2とを堅固に結び付けなくてもよい。さらに、マスト7を低くできるので、第1スパンカー5を含む船舶1全体の高さを低減できる。したがって、船舶1の通航が橋などの構造物によって制限される頻度を低減できる。
【0046】
また第1実施形態では、使用位置に位置するガフ9が、第2ジョイントJ2とは離れた位置でガフキャッチ17によって支持されている。左右方向へのガフ9の剛性は、ガフキャッチ17によって高められている。すなわち、マスト7に対するガフ9の左右方向への移動は、ロープR4および第2ジョイントJ2に加えて、ガフキャッチ17によって規制される。したがって、たとえばセール11が横風を受けて、左右方向への力がガフ9に加わったときに、ガフ9が左右に傾いて倒れることを防止できる。これにより、第1スパンカー5の性能を十分に発揮させることができる。
【0047】
また第1実施形態では、セール11にローチ11iが設けられている。ローチ11iは、ガフ側取付部11eの後端11gとブーム側取付部11fの後端11hとを結ぶ直線L1より後方の部分である。すなわち、セール11が、ブーム8およびガフ9から後方にオーバーハングしており、セール11の面積が広げられている。したがって、セール11に加わる風力が増加する。さらに、セール11が後方にオーバーハングしているので、セール11の抗力中心(風からセール11に加わる抗力の中心)が後方に移動する。したがって、セール11の抗力中心から船舶1の抗力中心C2(水から船舶1に加わる抗力の中心)までの距離が増加し、セール11が風を受けることによって発生するモーメント(船舶1の抗力中心C2まわりのモーメント)が増加する。そのため、第1スパンカー5は、より大きな旋回力を発生できる。
【0048】
また第1実施形態では、セール11に複数のバテン12が取り付けられている。ローチ11iは、複数のバテン12によって補強されている。ブーム8およびガフ9からの張力が効率的に伝達される位置は、ガフ側取付部11eの後端11gとブーム側取付部11fの後端11hとを結ぶ直線L1より前方の部分、すなわち、ローチ11iより前方の部分である。したがって、ローチ11iより前方の部分がしっかり張られているとしても、ローチ11iの張りが不十分な場合がある。そのため、複数のバテン12によってローチ11iを補強することにより、ローチ11iの変形を抑制できる。これにより、第1スパンカー5の性能を十分に発揮させることができる。
【0049】
また第1実施形態では、複数のバテン12が、複数の棒状部材によって構成されており、第2ジョイントJ2からセール11の後辺11dに向かって放射状に延びている。ガフ9は、第2ジョイントJ2を通る水平軸線A1まわりに上下に回転可能であり、セール11は、ガフ9に支持されている。複数のバテン12が、第2ジョイントJ2からセール11の後辺11dに向かって放射状に延びているので、セール11を折り畳むと、上下に隣接する2つのバテン12の間に折り目が形成される。そのため、セール11を綺麗に折り畳むことができる。さらに、折り畳み状態におけるセール11の撓みがバテン12によって規制されるので、折り畳みによるしわの発生を抑制できる。これにより、長期間に亘ってセール11を綺麗な状態に保つことができる。
【0050】
なお、前述の説明では、ガフ9が湾曲している場合について説明した。しかし、図7に示す第2実施形態に係る第1スパンカー205のように、ガフ209は、直線状に延びる棒状の部材であってもよい。この図7において、前述の図1〜図6Dに示された各部と同等の構成部分については、図1等と同一の参照符号を付している。
[第2スパンカー]
次に、セールの後辺を補強する補強部材を備える第2スパンカーについて説明する。
【0051】
以下の図において、前述の図1〜図7に示された各部と同等の構成部分については、図1等と同一の参照符号を付してその説明を省略する。
図8は、本発明の第3実施形態に係る船舶1の側面図である。図9は、本発明の第3実施形態に係る船舶1の平面図である。
船舶1は、船体2と、船舶1を推進する船舶推進機3と、船舶1を操作するために操船者によって操作される操作部材4と、風力によって船首を風上に向ける第2スパンカー305とを含む。船舶推進機3は、船体2の後部中央部に取り付けられている。船舶推進機3は、船首と船尾中央とを通る鉛直な平面である船体中心C1に沿って配置されている。操作部材4は、船舶1の中央部に設けられた操船位置P1に配置されている。船舶推進機3は、平面視において操船位置P1の後方に位置している。第2スパンカー305は、船舶推進機3の側方に配置されている。第2スパンカー305および船舶推進機3は、平面視において左右方向に並んでいる。船舶推進機3は、エンジンと、エンジンの動力をプロペラに伝達するドライブユニットとが船外に配置された船外機である。船舶推進機3は、船外機に限らず、船内に配置されたエンジンと、船外に配置されたドライブユニットとを含む船内外機であってもよいし、船内に配置されたエンジンおよびドライブユニットを含む船内機であってもよい。また、船舶1に備えられる船舶推進機3の数は、1つであってもよいし、複数であってもよい。
【0052】
図10は、本発明の第3実施形態に係る第2スパンカー305の斜視図である。図11は、本発明の第3実施形態に係る第2スパンカー305の右側面図である。後述するように、第2スパンカー305は折り畳み可能である(図12参照)。図10および図11では、使用状態(展開状態)の第2スパンカー305が示されている。以下では、使用状態の第2スパンカー305について説明する。また、以下の説明における「前後方向」および「左右方向」は、2つのブーム308の後端の中間の中間位置P2(図9参照)と、マスト7とを通る鉛直な平面である基準面X1(図9参照)を基準とする方向である。中間位置P2からマスト7に向かう方向が前方向であり、マスト7から中間位置P2に向かう方向が後方向である。以下の説明における「左右対称」は、基準面X1に関して対称なことを意味する。
【0053】
第2スパンカー305は、支持部材6と、マスト7と、左右一対のブーム308と、ガフ309と、左右一対の補強部材310と、セール311とを含む。
支持部材6は、船体2に固定されている。支持部材6は、船体2に固定された固定部6aと、固定部6aから上方に延びる円筒状の筒状部6bと、固定部6aおよび筒状部6bに結合された補強プレート6cとを含む。固定部6aは、たとえば複数のボルト312(図10参照)によって船体2に固定されている。したがって、支持部材6は、取り外し可能に船体2に取り付けられている。
【0054】
マスト7は、支持部材6から上方に延びている。マスト7は、棒状の部材である。マスト7の下端部は、筒状部6b内に挿入されている。マスト7は、筒状部6bに対してマスト7の中心軸線まわりに回転可能である。したがって、支持部材6は、マスト7の中心軸線まわりに回転可能にマスト7を支持している。マスト7は、鉛直な姿勢で支持部材6に支持されていてもよいし、鉛直軸線に対して傾いた姿勢で支持部材6に支持されていてもよい。すなわち、マスト7は、鉛直方向に延びていてもよいし、鉛直軸線に対して傾いた方向に延びていてもよい。
【0055】
ブーム308は、直線状に延びる棒状の部材である。ブーム308は、マスト7の中間部から後方に延びている。図11に示すように、ブーム308は、船舶推進機3よりも上方に配置されている。ブーム308は、マスト7より長い。言い換えると、マスト7は、ブーム308より短い。2つのブーム308の前端部は、同じ高さでマスト7に支持されている。2つのブーム308は、平面視において後ろ向きに広がるV字状に配置されている(図9参照)。ブーム308の前端部は、マスト7に対して上下方向に回転できるようにマスト7に支持されている。さらに、ブーム308の前端部は、マスト7に対して左右方向に回転できるようにマスト7に支持されている。したがって、ブーム308は、ブーム308の前端部を中心にマスト7に対して上下に回転可能であり、ブーム308の前端部を中心にマスト7に対して左右に回転可能である。
【0056】
ブーム308は、マスト7から延びるブーム吊り上げロープR301によって吊り上げられている。ブーム吊り上げロープR301は、ブーム308の中間部に取り付けられたブーム側取付部材313を介してブーム308に結び付けられている。さらに、ブーム吊り上げロープR301は、マスト7の上端部に取り付けられたマスト側取付部材314を介してマスト7に結び付けられている。ブーム側取付部材313とマスト側取付部材314との間のブーム吊り上げロープR301の長さは、ブーム308が水平またはほぼ水平に延びるように調整されている。
【0057】
また、ブーム308は、船体2から延びるブーム引っ張りロープR302によって、2つのブーム308の後端の間隔が広がるように外側(基準面X1から離れる方向)に引っ張られている。ブーム引っ張りロープR302の一端部は、ブーム側取付部材313を介してブーム308に結び付けられている。さらに、ブーム引っ張りロープR302の他端部は、船体2に取り付けられた船体側取付部材315を介して船体2に結び付けられている。ブーム308から船体側取付部材315までのブーム引っ張りロープR302の長さは、2つのブーム308の後端部に結び付けられた開き角度調整ロープR303の弛みがなくなるように調整されている。また、支持部材6に対するマスト7の回転は、2本のブーム引っ張りロープR302によって防止されている。
【0058】
ガフ309は、湾曲した棒状の部材である。ガフ309は、たとえば、上向きに凸の円弧状である。ガフ309は、直線状に延びる棒状の部材であってもよい。ガフ309は、平面視において2つのブーム308の中間に位置するようにマスト7に取り付けられている(図9参照)。ガフ309は、平面視において前後方向に延びている。ガフ309は、ブーム308よりも短い。すなわち、ガフ309の前端部309aからガフ309の後端部309bまでの直線距離は、ブーム308の前端部からブーム308の後端部までの直線距離よりも短い。ガフ309は、ブーム308より上方に配置されており、マスト7から後方に延びている。
【0059】
ガフ309の前端部309aは、ブーム308の上端部よりも上方でマスト7に支持されている。具体的には、被支持部としてのガフ309の前端部309aは、マスト7に固定された第2ジョイントJ2によって支持されている。したがって、ガフ309は、ガフ309の前端部309aを中心にマスト7に対して上下に回転可能である。ガフ309は、マスト7の上端部から延びるガフ吊り上げロープR304によって吊り上げられている。ガフ吊り上げロープR304の一端部は、マスト側取付部材314に結び付けられており、ガフ309の中間部に取り付けられたガフ側取付部材316を通って船体2側に延びている。ガフ吊り上げロープR304は、マスト7に取り付けられた取付部材317を介してマスト7に結び付けられている。マスト側取付部材314から取付部材317までのガフ吊り上げロープR304の長さは、ガフ309の後端部309bがガフ309の前端部309aよりも上方に位置するように調整されている。
【0060】
補強部材310は、直線状に延びる棒状の部材である。補強部材310は、ガフ309とブーム308とによって支持されている。補強部材310は、ガフ309の後端部309bからブーム308の後端部に向かって延びている。補強部材310の上端部310aは、ガフ309に支持されており、補強部材の下端部310bは、ブーム308によって支持されている。補強部材310は、ブーム308よりも短い。補強部材310は、補強部材310の上端部310aが補強部材の下端部310bよりも前方に位置するように前後に傾斜している。さらに、図10に示すように、補強部材310は、補強部材310の上端部310aが補強部材の下端部310bよりも内側(基準面X1側)に位置するように左右に傾斜している。補強部材310の上端部310aは、ガフ309に対して前後方向に回転できるようにガフ309に支持されている。また、補強部材の下端部310bは、ブーム308に沿って前後方向に移動できるように構成されている。
【0061】
具体的には、ブーム308には、ブーム308から下方に突出する2つのロープ取付軸318が取り付けられている。2つのロープ取付軸318は、前後方向に間隔を空けて配置されている。ガイドロープR305の一端部および他端部は、それぞれ、2つのロープ取付軸318に結び付けられている。ガイドロープR305は、ブーム308に沿って前後方向に延びている。ガイドロープR305は、補強部材310の下端部に取り付けられたスライドリング319に通されている。スライドリング319は、ガイドロープR305に沿って前後方向に移動可能である。スライドリング319がガイドロープR305に沿って前後方向に移動すると、補強部材の下端部310bは、ブーム308に沿って前後方向に移動する。したがって、補強部材の下端部310bは、ブーム308に沿って前後方向に移動可能である。
【0062】
セール311は、ガフ309によって吊り上げられている。セール311は、マスト7、ブーム308、ガフ309、および補強部材310によって張られている。セール311は、布などの柔らかい材料(たとえばナイロン等の化学繊維)によって形成されている。セール311は、セール311を2等分する位置で折り曲げられた山形である。セール311は、背面視倒立V字状であると共に、前側に凸の平面視三角形状である。セール311が風を受けると、抗力中心C2(図8参照)まわりに船舶1を旋回させる力が船舶1に加わる。すなわち、船舶1が風の方向に対して傾いている状態でセール311が風を受けると、船舶1を右まわりに旋回させる力と、船舶1を左まわりに旋回させる力とのバランスが崩れ、船首を風上に向ける力が発生する。
【0063】
図10に示すように、セール311は、上辺311aによって2等分された右セール311Rおよび左セール311Lを含む。右セール311Rは、マスト7と、右側のブーム308と、ガフ309と、右側の補強部材310とによって区画された空間に張られており、左セール311Lは、マスト7と、左側のブーム308と、ガフ309と、左側の補強部材310とによって区画された空間に張られている。右セール311Rおよび左セール311Lは、左右対称である。図11に示すように、右セール311Rおよび左セール311Lのそれぞれは、上側に凸の側面視四角形状であり、上辺311aと、下辺311bと、前辺311cと、後辺311dとを含む。上辺311aは、右セール311Rおよび左セール311Lに共有されている。
【0064】
図11に示すように、前辺311cは、他の辺311a、311b、311dよりも短い。上辺311aは、後辺311dの上端から前辺311cの上端に向かって降下している。上辺311aは、ガフ309に沿って配置されている。上辺311aは、上側に凸の側面視円弧状である。上辺311aは、たとえばロープ(図示せず)によって、ガフ309に取り付けられている。上辺311aの後端は、セール311において最も上に位置している部分である。すなわち、上辺311aの後端は、セール311の上端311tである。セール311の上端311tは、マスト7の上端7tより上方に配置されている。また、下辺311bは、ブーム308に沿って配置されている。下辺311bは、側面視において前後方向に延びる直線状である。下辺311bの前端は、ロープR5によってマスト7に取り付けられおり、下辺311bの後端は、ロープによって補強部材の下端部310bに取り付けられている。後辺311dは、下辺311bの後端から斜め前に向かって上方に延びている。後辺311dは、直線状である。後辺311dは、補強部材310に沿って配置されている。言い換えると、補強部材310は、後辺311dに沿って配置されている。後辺311dは、たとえばロープ(図示せず)によって、補強部材310に取り付けられている。
【0065】
図12は、本発明の第3実施形態に係る第2スパンカー305を折り畳むときの動作の一例について説明するための側面図である。図12(a)および図12(b)では、第2スパンカー305が折り畳まれる途中の状態が示されている。また、図12(c)では、第2スパンカー305が折り畳まれた状態、すなわち、折り畳み状態の第2スパンカー305が示されている。以下では、図10〜図12を参照する。
【0066】
第2スパンカー305は、折り畳み可能である。図10および図11に示すように、第2スパンカー305は、第2スパンカー305を折り畳むときに操作される左右一対の折り畳みロープR306と、第2スパンカー305を展開させるときに操作される左右一対の展開ロープR307とをさらに含む。折り畳みロープR306の一端部は、補強部材の下端部310bに結び付けられている。折り畳みロープR306は、補強部材の下端部310bから前方に延びている。折り畳みロープR306は、マスト7に取り付けられた取付部材320を介してマスト7に結び付けられている。また、展開ロープR307の一端部は、折り畳みロープR306よりも下方で補強部材の下端部310bに結び付けられている。展開ロープR307は、ブーム308の後端部に取り付けられた固定リング321に通されている。展開ロープR307は、補強部材の下端部310bから固定リング321に向かって後方に延び、その後、固定リング321からマスト7に向かって前方に延びている。展開ロープR307は、マスト7に取り付けられた取付部材322を介してマスト7に結び付けられている。
【0067】
折り畳みロープR306が引っ張られると、補強部材の下端部310bは、前方に引っ張られる。その一方で、展開ロープR307が引っ張られると、補強部材の下端部310bは、後方に引っ張られる。補強部材の下端部310bの前方への移動は、展開ロープR307が張られることにより防止されている。したがって、展開ロープR307が緩められた状態で折り畳みロープR306が引っ張られると、補強部材の下端部310bは、ブーム308に沿って前方に移動する。以下に説明するように、第2スパンカー305は、展開ロープR307が緩められた状態で折り畳みロープR306が引っ張られることにより折り畳まれる。
【0068】
次に、図12を参照して、第2スパンカー305が折り畳まれて収納されるときの動作の一例、および折り畳まれた第2スパンカー305が展開されるときの動作の一例について説明する。
[折り畳み動作]
第2スパンカー305を折り畳むときには、展開ロープR307が緩められる。これにより、補強部材の下端部310bの拘束(前方への移動の拘束)が解除される。その後、折り畳みロープR306が操船者によって引っ張られる。図12(a)において黒色の矢印で示すように、折り畳みロープR306が引っ張られると、補強部材の下端部310bは、補強部材310の上端部310aを中心に前方に回転しながら、ブーム308に沿って前方に移動する。これにより、図12(a)に示すように、補強部材の下端部310bがガフ309の後端部309bより前方に移動する。
【0069】
次に、ガフ309を吊り上げるガフ吊り上げロープR304が操船者によって緩められる。図12(b)において黒色の矢印で示すように、ガフ吊り上げロープR304が緩められると、ガフ309は、その自重によって、ガフ309の前端部309aを中心に下方に回転する。このとき補強部材の下端部310bは、ガフ309の回転に伴って、補強部材310の上端部310aを中心に前方に回転する。これにより、図12(c)に示すように、補強部材の下端部310bがマスト7の近傍まで移動し、セール311が折り畳まれる。このようにして、第2スパンカー305が折り畳まれる。
【0070】
次に、ブーム308を外側に引っ張るブーム引っ張りロープR302が操船者によって緩められる。2本のブーム引っ張りロープR302が張られている状態では、支持部材6に対するマスト7の回転が拘束されている。したがって、ブーム引っ張りロープR302が緩められることにより、中心軸線まわりのマスト7の拘束が解除される。図12(c)において黒色の矢印で示すように、操船者は、ブーム引っ張りロープR302を緩めた後、マスト7を中心軸線まわりに回転させる。これにより、ブーム308、ガフ309、補強部材310、およびセール311が、船体2上の収納位置に移動し、第2スパンカー305が収納される。
【0071】
[展開動作]
一方、船体2上に収納されている第2スパンカー305を展開させるときには、操船者が支持部材6に対してマスト7を回転させて、ブーム308、ガフ309、補強部材310、およびセール311を船体2上から船体2の後方に移動させる。その後、2本のブーム引っ張りロープR302が操船者によって船体2に結び付けられて、支持部材6に対するマスト7の回転が拘束される。
【0072】
次に、展開ロープR307が操船者によって引っ張られる。これにより、図12(b)において白色の矢印で示すように、補強部材の下端部310bがブーム308に沿って後方に移動する。展開ロープR307は、補強部材の下端部310bがブーム308の後端部に移動するまで引っ張られる。これにより、補強部材310は、補強部材310の上端部310aを中心に後方に回転しながら立ち上がる。それと共に、ガフ309が、補強部材310によって持ち上げられて、ガフ309の前端部309aを中心に上方に回転する。これにより、セール311が広げられる。
【0073】
セール311が広げられた後は、ガフ吊り上げロープR304が、マスト7に取り付けられている取付部材317に結び付けられる。これにより、ガフ309がガフ吊り上げロープR304によって吊り上げられる。その後、展開ロープR307が、マスト7に取り付けられている取付部材322に結び付けられる。これにより、補強部材の下端部310bが前方に移動することが防止される。このようにして、第2スパンカー305が展開される。
【0074】
以上のように第3実施形態では、第1実施形態と同様に、ガフ309の前端部309aが、マスト7に固定された第2ジョイントJ2に支持されている。したがって、従来のスパンカーのように、使用位置においてガフ309をロープR304によって上方向に強く引っ張らなくてもよい。したがって、マスト7に対するロープR304の取付位置を従来のスパンカーよりも低くでき、マスト7を低くできる。さらに、セール311の後辺311dが補強部材310によって補強されているので、セール311が強い風を受けたとしても、セール311の後辺311dの変形は、補強部材310によって抑制される。したがって、第2スパンカー305は、その性能を安定して発揮することができる。
【0075】
また、従来のように、ロープによって張力を与えることにより、セール311の後辺311dを張らなくてもよいので、セール311を支持する骨組み構造を簡素化することができる。さらに、ロープによってセール311の後辺311dを張らなくてもよいので、従来に比べてマスト7の太さや長さを減少させることができる。したがって、第2スパンカー305の重量を低減できると共に、第2スパンカー305を小型化することができる。そのため、第2スパンカー305の運搬や設置を簡単にできる。さらに、マスト7を短くすることができるので、船体2から延びるステーロープをマスト7に結びつけなくてもよい。したがって、ステーロープが、船尾で作業を行う乗船者の邪魔になることを防止することができる。
【0076】
また第3実施形態では、第2スパンカー305が折り畳み可能である。すなわち、ガフ309は、マスト7によって支持されたガフ309の前端部309aを中心にマスト7に対して上下に回転可能である。さらに、補強部材310は、ガフ309によって支持された補強部材310の上端部310aを中心にガフ309に対して前後に回転可能であると共に、ブーム308に対して前後方向に移動可能である。このように、第2スパンカー305が折り畳み可能に構成されているから、第2スパンカー305をコンパクトに収納することができる。これにより、第2スパンカー305の収納性を高めることができる。さらに、第2スパンカー305の運搬や設置を簡単に行うことができる。
【0077】
また第3実施形態では、ガフ309および補強部材310がブーム308より短い。ガフ309および補強部材310の長さは、第2スパンカー305が折り畳まれたときに、ガフ309の後端部309bと補強部材310の上端部310aとが側面視においてブーム308の後端部308bの上方に位置するように設定されている(図12(c)参照)。たとえば、ガフ309が、ブーム308より長いと、第2スパンカー305が折り畳まれたときに、ガフ309の後端部309bがブーム308より後方に突出する場合がある。また、補強部材310がブーム308より長いと、第2スパンカー305が折り畳まれたときに、補強部材の下端部310bがマスト7より前方に突出する場合がある。したがって、ガフ309および補強部材310をブーム308より短くすることにより、折り畳まれた状態での第2スパンカー305の大きさを小さくすることができる。
【0078】
また第3実施形態では、セール311の上端311tがマスト7の上端7tより上方に配置されている。言い換えると、マスト7が短いので、マスト7の上端7tがセール311の上端311tより下方に位置している。このように、セール311の後辺311dを補強部材310によって支持することにより、マスト7を短くすることができる。マスト7が短いので、第2スパンカー305が取り付けられた船舶1は、マスト7が立てられたまま、橋などの構造物の下を通過することができる。
【0079】
また第3実施形態では、ブーム308がマスト7より長い。従来のように、ロープによってセールの後辺を張る場合にブームが長いと、ブームに大きな曲げモーメントが加わる。しかし、第3実施形態では、セール311の後辺311dが補強部材310によって支持されているので、ブーム308が長くても、大きな曲げモーメントがブーム308に加わることを防止できる。したがって、ブーム308の長さを増加させることができる。これにより、セール311の抗力中心を後方に移動させて、船舶1に加わるモーメント(抗力中心C2まわりのモーメント)を増加させることができる。これにより、船首を確実に風上に向けることができる。
【0080】
また第3実施形態では、マスト7の中心軸線まわりに支持部材6とマスト7とを相対回転させることにより、船体2に対してマスト7を回転させることができる。これにより、ブーム308やセール311などのマスト7に支持されている部材を船体2に対して回転させることができる。これにより、ブーム308やセール311を船体2上に移動させて第2スパンカー305を船体2上に収納することができる。また、前述のように、マスト7の周囲にステーロープを配置しなくてもよいので、マスト7を回転させるときに、ブーム308とステーロープとの干渉を避けるためにステーロープを取り外さなくてもよい。したがって、第2スパンカー305を収納する作業を簡単にできる。
【0081】
また第3実施形態では、ガフ309が湾曲している。したがって、ガフ309が直線状に延びている場合に比べて、セール311の面積を増加させることができる。そのため、セール311が風を受けたときに、船舶1に加わる力(抗力中心C2まわりのモーメント)を増加させることができる。これにより、船舶1を確実に旋回させて、船首を風上に向けることができる。
【0082】
なお、前述の第2スパンカー305において、図13に示す第4実施形態に係る第2スパンカー405のように、展開ロープR307を案内する複数のガイドリング423が、右セール311Rおよび左セール311Lに取り付けられていてもよい。複数のガイドリング423は、補強部材310の上端部310aを中心とする円弧に沿って配置されており、展開ロープR307は、セール311の内側と外側とを行き来するように、複数のガイドリング423に通されている。この構成によれば、展開ロープR307が引っ張られると、セール311の下辺311bが展開ロープR307によって案内されるので、セール311を規則的に折り畳むことができる。つまり、セール311の折り目の位置が安定するので、より綺麗にセール311を折り畳むことができる。
【0083】
この発明の実施の形態の説明は以上であるが、この発明は、前述の第1〜第4実施形態の内容に限定されるものではなく、請求項記載の範囲内において種々の変更が可能である。
たとえば、前述の第1〜第4実施形態では、ガフの前端部が、回転支持部材としての第2ジョイントに支持されている場合について説明した。しかし、前端部と後端部の間のガフの中間部が、第2ジョイントによって支持されていてもよい。すなわち、ガフの被支持部は、前端部に限らず、中間部であってもよい。
【0084】
また、前述の第3および第4実施形態では、ガフの左右方向への移動を規制する左右支持部材としてのガフキャッチが設けられていない場合について説明した。しかし、第3および第4実施形態に係るスパンカー(第2スパンカー)に、ガフキャッチが設けられ、このガフキャッチによってガフを使用位置で支持してもよい。
また、前述の第1〜第4実施形態では、ガフの前端部がブームの前端部より上方に配置されている場合について説明した。しかし、ガフの前端部は、ブームの前端部と同じ高さに配置されていてもよい。
【0085】
また、前述の第1〜第4実施形態では、マストがブームより短い場合について説明した。しかし、マストは、ブームより長くてもよいし、ブームと等しい長さを有していてもよい。
また、前述の第1〜第4実施形態では、支持部材は、マストの中心軸線まわりに回転可能にマストを支持している場合について説明した。しかし、支持部材は、マストが支持部材に対して回転できないようにマストを支持していてもよい。
【0086】
また、前述の第1〜第4実施形態では、マストが支持部材を介して船体に取り付けられている場合について説明した。しかし、支持部材が設けられておらず、マストが船体に直接取り付けられていてもよい。
その他、特許請求の範囲に記載された事項の範囲で種々の設計変更を施すことが可能である。
【0087】
以下に、特許請求の範囲に記載された構成要素と前述の実施形態における構成要素との
対応関係を示す。
マスト:マスト7
回転支持部材:第2ジョイントJ2
水平軸線:水平軸線A1
ガフの被支持部:前端部9a,309a
ガフの後端部:後端部9b、309b
ガフ:ガフ9、209、309
セールの上辺:上辺11a,311a
セール:セール11、311
マスト側取付部材:マスト側取付部材14、314
ガフ側取付部材:ガフ側取付部材16、316
ロープ:ガフ吊り上げロープR4、R304
スパンカー:第1スパンカー5、205、第2スパンカー305、405
マストの上端:上端7t
左右支持部材:ガフキャッチ17
セールの下辺:下辺11b、311b
ブーム:ブーム8、308
ローチ補強部材:バテン12
ガフ側取付部:ガフ側取付部11e
ブーム側取付部:ブーム側取付部11f
ガフ側取付部の後端:ガフ側取付部の後端11g
ブーム側取付部の後端:ブーム側取付部の後端11h
直線:直線L1
ローチ:ローチ11i
棒状部材:バテン12
後辺:後辺311d
後辺補強部材:補強部材310
後辺補強部材の下端部:下端部310b
後辺補強部材の上端部:上端部310a
セールの上端:上端11t、311t
船体:船体2
マスト支持部材:支持部材6
【符号の説明】
【0088】
5 :第1スパンカー
6 :支持部材
7 :マスト
7t :マストの上端
8 :ブーム
9 :ガフ
9a :ガフの前端部
9b :ガフの後端部
11 :セール
11a :セールの上辺
11b :セールの下辺
11d :セールの後辺
11e :ガフ側取付部
11f :ブーム側取付部
11i :ローチ
11t :セールの上端
12 :バテン
14 :マスト側取付部材
16 :ガフ側取付部材
17 :ガフキャッチ
205 :第1スパンカー
209 :ガフ
305 :第2スパンカー
308 :ブーム
309 :ガフ
309a :ガフの前端部
309b :ガフの後端部
310 :補強部材
310a :補強部材の上端部
310b :補強部材の下端部
311 :セール
311a :セールの上辺
311b :セールの下辺
311d :セールの後辺
311t :セールの上端
314 :マスト側取付部材
316 :ガフ側取付部材
405 :第2スパンカー
A1 :水平軸線
J2 :第2ジョイント
R4 :ガフ吊り上げロープ
R304 :ガフ吊り上げロープ
【特許請求の範囲】
【請求項1】
上下方向に延びるマストと、
前記マストに固定された回転支持部材と、
前記回転支持部材を通る水平軸線まわりに回転可能に前記回転支持部材に支持された被支持部と、前記マストより後方に配置された後端部とを含み、収納位置と、前記収納位置より前記後端部が上方に位置する使用位置との間で前記マストに対して回転可能なガフと、
前記ガフによって支持された上辺を含むセールと、
前記マストおよびガフにそれぞれ取り付けられたマスト側取付部材およびガフ側取付部材に取り付けられており、前記ガフ側取付部材が前記マスト側取付部材に近づいて、前記ガフが前記使用位置に移動するように操作可能なロープとを含む、スパンカー。
【請求項2】
前記マスト側取付部材は、前記回転支持部材より上方に配置されている、請求項1に記載のスパンカー。
【請求項3】
前記マストの上端は、前記使用位置に位置する前記ガフの後端部より下方に配置されている、請求項1または2に記載のスパンカー。
【請求項4】
前記マストの上端は、前記使用位置に位置する前記ガフ側取付部材より下方に配置されている、請求項1〜3のいずれか一項に記載のスパンカー。
【請求項5】
前記マスト側取付部材は、前記使用位置に位置する前記ガフの後端部より下方に配置されている、請求項1〜4のいずれか一項に記載のスパンカー。
【請求項6】
前記マスト側取付部材は、前記使用位置に位置する前記ガフ側取付部材より下方に配置されている、請求項1〜5のいずれか一項に記載のスパンカー。
【請求項7】
前記回転支持部材に対して上下方向に離れた位置で前記マストに取り付けられており、前記使用位置に位置する前記ガフを支持することにより、前記マストに対する前記ガフの左右方向への移動を規制する左右支持部材をさらに含む、請求項1〜6のいずれか一項に記載のスパンカー。
【請求項8】
前記左右支持部材は、前記回転支持部材の上方で前記マストに取り付けられている、請求項7に記載のスパンカー。
【請求項9】
前記マストから後方に延びており、前記使用位置に位置する前記ガフの後端部より下方に配置されており、前記セールの下辺に沿って配置されたブームと、
前記セールに取り付けられたローチ補強部材とをさらに含み、
前記セールは、前記ガフに取り付けられたガフ側取付部と、前記ブームに取り付けられたブーム側取付部と、前記使用位置において前記ガフ側取付部の後端と前記ブーム側取付部の後端とを結ぶ直線より後方に配置されており、前記ローチ補強部材が取り付けられたローチとを含む、請求項1〜8のいずれか一項に記載のスパンカー。
【請求項10】
前記ローチ補強部材は、前記回転支持部材から前記セールの後辺に向かって放射状に延びる複数の棒状部材を含む、請求項9に記載のスパンカー。
【請求項11】
前記マストから後方に延びており、前記使用位置に位置する前記ガフの後端部より下方に配置されており、前記セールの下辺に沿って配置されたブームと、
前記使用位置において前記セールの前記下辺の後端から上方に延びる後辺に沿って配置されており、前記後辺が取り付けられた後辺補強部材とをさらに含む、請求項1〜8に記載のスパンカー。
【請求項12】
前記後辺補強部材は、前記後辺の変形を抑制するように構成された棒状の部材である、請求項11に記載のスパンカー。
【請求項13】
前記後辺補強部材の下端部は、前記ブームによって支持されている、請求項11または12記載のスパンカー。
【請求項14】
前記後辺補強部材の下端部は、前記ブームに沿って前後方向に移動できるように構成されており、
前記後辺補強部材の上端部は、前記ガフに対して前後方向に回転できるように前記ガフに支持されている、請求項13に記載のスパンカー。
【請求項15】
前記ブームは、前記マストより長い、請求項9〜14のいずれか一項に記載のスパンカー。
【請求項16】
前記使用位置において、前記セールの上端は、前記マストの上端より上方に配置されている、請求項1〜15のいずれか一項に記載のスパンカー。
【請求項17】
前記マストの中心軸線まわりに回転可能に前記マストを支持しており、船体に取り付けられるマスト支持部材をさらに含む、請求項1〜16のいずれか一項に記載のスパンカー。
【請求項1】
上下方向に延びるマストと、
前記マストに固定された回転支持部材と、
前記回転支持部材を通る水平軸線まわりに回転可能に前記回転支持部材に支持された被支持部と、前記マストより後方に配置された後端部とを含み、収納位置と、前記収納位置より前記後端部が上方に位置する使用位置との間で前記マストに対して回転可能なガフと、
前記ガフによって支持された上辺を含むセールと、
前記マストおよびガフにそれぞれ取り付けられたマスト側取付部材およびガフ側取付部材に取り付けられており、前記ガフ側取付部材が前記マスト側取付部材に近づいて、前記ガフが前記使用位置に移動するように操作可能なロープとを含む、スパンカー。
【請求項2】
前記マスト側取付部材は、前記回転支持部材より上方に配置されている、請求項1に記載のスパンカー。
【請求項3】
前記マストの上端は、前記使用位置に位置する前記ガフの後端部より下方に配置されている、請求項1または2に記載のスパンカー。
【請求項4】
前記マストの上端は、前記使用位置に位置する前記ガフ側取付部材より下方に配置されている、請求項1〜3のいずれか一項に記載のスパンカー。
【請求項5】
前記マスト側取付部材は、前記使用位置に位置する前記ガフの後端部より下方に配置されている、請求項1〜4のいずれか一項に記載のスパンカー。
【請求項6】
前記マスト側取付部材は、前記使用位置に位置する前記ガフ側取付部材より下方に配置されている、請求項1〜5のいずれか一項に記載のスパンカー。
【請求項7】
前記回転支持部材に対して上下方向に離れた位置で前記マストに取り付けられており、前記使用位置に位置する前記ガフを支持することにより、前記マストに対する前記ガフの左右方向への移動を規制する左右支持部材をさらに含む、請求項1〜6のいずれか一項に記載のスパンカー。
【請求項8】
前記左右支持部材は、前記回転支持部材の上方で前記マストに取り付けられている、請求項7に記載のスパンカー。
【請求項9】
前記マストから後方に延びており、前記使用位置に位置する前記ガフの後端部より下方に配置されており、前記セールの下辺に沿って配置されたブームと、
前記セールに取り付けられたローチ補強部材とをさらに含み、
前記セールは、前記ガフに取り付けられたガフ側取付部と、前記ブームに取り付けられたブーム側取付部と、前記使用位置において前記ガフ側取付部の後端と前記ブーム側取付部の後端とを結ぶ直線より後方に配置されており、前記ローチ補強部材が取り付けられたローチとを含む、請求項1〜8のいずれか一項に記載のスパンカー。
【請求項10】
前記ローチ補強部材は、前記回転支持部材から前記セールの後辺に向かって放射状に延びる複数の棒状部材を含む、請求項9に記載のスパンカー。
【請求項11】
前記マストから後方に延びており、前記使用位置に位置する前記ガフの後端部より下方に配置されており、前記セールの下辺に沿って配置されたブームと、
前記使用位置において前記セールの前記下辺の後端から上方に延びる後辺に沿って配置されており、前記後辺が取り付けられた後辺補強部材とをさらに含む、請求項1〜8に記載のスパンカー。
【請求項12】
前記後辺補強部材は、前記後辺の変形を抑制するように構成された棒状の部材である、請求項11に記載のスパンカー。
【請求項13】
前記後辺補強部材の下端部は、前記ブームによって支持されている、請求項11または12記載のスパンカー。
【請求項14】
前記後辺補強部材の下端部は、前記ブームに沿って前後方向に移動できるように構成されており、
前記後辺補強部材の上端部は、前記ガフに対して前後方向に回転できるように前記ガフに支持されている、請求項13に記載のスパンカー。
【請求項15】
前記ブームは、前記マストより長い、請求項9〜14のいずれか一項に記載のスパンカー。
【請求項16】
前記使用位置において、前記セールの上端は、前記マストの上端より上方に配置されている、請求項1〜15のいずれか一項に記載のスパンカー。
【請求項17】
前記マストの中心軸線まわりに回転可能に前記マストを支持しており、船体に取り付けられるマスト支持部材をさらに含む、請求項1〜16のいずれか一項に記載のスパンカー。
【図1】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6A】
【図6B】
【図6C】
【図6D】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【図13】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6A】
【図6B】
【図6C】
【図6D】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【図13】
【公開番号】特開2012−236584(P2012−236584A)
【公開日】平成24年12月6日(2012.12.6)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−190598(P2011−190598)
【出願日】平成23年9月1日(2011.9.1)
【出願人】(598117975)株式会社ワイズギア (18)
【公開日】平成24年12月6日(2012.12.6)
【国際特許分類】
【出願日】平成23年9月1日(2011.9.1)
【出願人】(598117975)株式会社ワイズギア (18)
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