説明

スピニングリールのスプールカバー

【課題】 スピニングリールのスプールカバーにおいて、スプール及びスプールに巻き付けられた釣り糸を確実に保護できるようにするとともに、スプール及び釣り糸を速やかに乾燥できるようにする。
【解決手段】 スピニングリールのスプールカバー10は、前フランジ部4cの前方から装着され前フランジ部4c、糸巻胴部4a及びスカート部4bの全周を覆う弾性樹脂製の筒状部11と、筒状部11の前端から内側に折れ曲がって一体成形され前フランジ部4cの前面周縁部を覆う環状部12と、筒状部11及び環状部12の内外周を貫通する複数の水抜き孔13とを有している。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、スプールカバー、特に、スプールの外周を保護するスピニングリールのスプールカバーに関する。
【背景技術】
【0002】
一般に、スピニングリールは、ハンドルを回転自在に支持するリール本体と、ロータと、スプールとを有している。スプールは、リール本体に対して前後移動自在であり、釣り糸が巻き付けられる糸巻胴部と、糸巻胴部の前端に配置され糸巻胴部の外径より大きい外径を有する前フランジ部と、糸巻胴部の後方に一体で設けられた筒状のスカート部とを備えている。このようなスプールは、通常、釣り糸を巻き付けた状態で釣り場を移動したり、リールを保管したりするので、スプールに巻き付けられた釣り糸を保護するために、筒状のスプールカバーを装着したものが知られている(たとえば、特許文献1、非特許文献1参照)。このスプールカバーは、たとえば弾性及び撥水性を有する合成樹脂によって形成された筒状部材であり、スプール全体を覆うように装着されている。このようなスプールカバーをスプールに装着することにより、落下等による外部からの衝撃を受けても、スプール自身及びスプールに巻き付けられた釣り糸を確実に保護することができる。
【特許文献1】実用新案登録第3098574号公報
【非特許文献1】インターネット<URL:http://www.f−kumagai.co.jp/bwh/goods/goods.html#spoolguard>
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0003】
前記従来のスピニングリールのスプールは、たとえば海釣り等を行った後に海水を洗い流すために、釣り糸を巻き付けた状態でスプールを水洗いすることが多い。しかし、水分が残った状態でスプールカバーを装着すると、スプールカバーは合成樹脂製の筒状部材であるので、スプールカバーの内部に水分が残留し、スプール及びスプールに巻き付けられた釣り糸の速やかな乾燥を阻害するおそれがある。
【0004】
本発明の課題は、スピニングリールのスプールカバーにおいて、スプール及びスプールに巻き付けられた釣り糸を確実に保護できるようにするとともに、スプール及び釣り糸を速やかに乾燥できるようにすることにある。
【課題を解決するための手段】
【0005】
発明1に係るスプールカバーは、外周に釣り糸が巻き付けられる糸巻胴部と糸巻胴部の前端部に設けられた前フランジ部と糸巻胴部の後端部に設けられた筒状のスカート部とを有するスプールの外周を保護するスピニングリールのスプールカバーであって、前フランジ部の前方から装着され少なくとも前フランジ部及び糸巻胴部の外周を覆う弾性樹脂製の筒状部と、筒状部の内外周を貫通する複数の水抜き孔とを備えている。
【0006】
このスプールカバーでは、スプール単体またはスプールをリールに装着した状態で、弾性樹脂製の筒状部により少なくとも前フランジ部及び糸巻胴部の外周が覆われているので、特に、外部からの衝撃によって傷付きやすい前フランジ部及びスプールに巻き付けられた釣り糸を確実に保護することができる。また、筒状部には、内外周を貫通する複数の水抜き孔が形成されているので、水分が残った状態でスプールカバーを装着しても水抜き孔から水分が排出され、このためスプール及びスプールに巻き付けられた釣り糸を速やかに乾燥できる。
【0007】
発明2に係るスプールカバーは、発明1のスプールカバーにおいて、筒状部は、スカート部の外周を覆うように形成されている。この場合、糸巻胴部及び前フランジ部だけでなくスカート部の外周も確実に保護できる。
【0008】
発明3に係るスプールカバーは、発明1又は2のスプールカバーにおいて、筒状部は、クロロプレンゴム製である。この場合、耐久性及び弾性等バランスが良好な合成ゴムであるクロロプレンゴムによって、安価かつ触感のよいものを形成することができる。
【0009】
発明4に係るスプールカバーは、発明2又は3のスプールカバーにおいて、筒状部は、内径がスカート部の外径よりやや大きくなるように形成されている。この場合、筒状部をスカート部の外周に密着させて容易に固定することができる。
【0010】
発明5に係るスプールカバーは、発明1から4のいずれかのスプールカバーにおいて、水抜き孔は、筒状部の全周にわたって形成されている。この場合、スプールの全周及びスプールの全周に巻き付けられた釣り糸の乾燥がさらに速やかになる。
【0011】
発明6に係るスプールカバーは、発明1から5のいずれかのスプールカバーにおいて、水抜き孔は、メッシュ状に形成されている。この場合、外形が矩形の貫通孔を格子状に並べてメッシュ状に形成することにより、水抜き孔を大量に形成できる。
【0012】
発明7に係るスプールカバーは、発明1から5のいずれかのスプールカバーにおいて、水抜き孔は、外形が略円形の貫通孔である。この場合、たとえば複数の貫通孔を周方向及び軸方向に並べて配置することにより、水抜き孔の形成が容易になる。
【0013】
発明8に係るスプールカバーは、発明1から7のいずれかのスプールカバーにおいて、筒状部の前端から内側に折れ曲がって形成され、前フランジ部の前面周縁部を覆う環状部をさらに備えている。この場合、前フランジ部の前面側を確実に保護できる。
【0014】
発明9に係るスプールカバーは、発明8のスプールカバーにおいて、環状部は、筒状部と一体成形されている。この場合、たとえば筒状部と環状部とをクロロプレンゴムによって一体成形することにより、筒状部及び環状部の加工性を向上できる。
【0015】
発明10に係るスプールカバーは、発明8又は9のスプールカバーにおいて、環状部の内外周を貫通する複数の水抜き孔をさらに備えている。この場合、前フランジ部の前面側の乾燥が速やかになる。
【発明の効果】
【0016】
本発明によれば、スピニングリールのスプールカバーにおいて、少なくとも前フランジ部及び糸巻胴部の外周を覆う弾性樹脂製の筒状部と、筒状部の内外周を貫通する複数の水抜き孔とを有しているので、スプール及びスプールに巻き付けられた釣り糸を確実に保護できるとともに、スプール及び釣り糸を速やかに乾燥できる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0017】
本発明の一実施形態を採用したスピニングリールは、図1に示すように、ハンドル1と、ハンドル1を回転自在に支持するリール本体2と、ロータ3と、スプール4とを備えている。ロータ3は、リール本体2の前部に回転自在に支持されている。スプール4は、釣り糸を外周面に巻き取るものであり、ロータ3の前部に前後移動自在に配置されている。
【0018】
リール本体2は、内部に空間を有するリールボディ2aと、リールボディ2aの空間を塞ぐためにリールボディ2aに着脱自在に装着される蓋部材2bとを有している。リールボディ2aは、上部に前後に延びるT字形の竿取付脚2cが一体形成されている。
【0019】
スプール4は、リール本体2に対して着脱可能に装着されており、外周に釣り糸が巻かれる糸巻胴部4aと、糸巻胴部4aの後部に一体で形成されたスカート部4bと、糸巻胴部4aの前端に一体で形成された前フランジ部4cと、糸巻胴部4aの内部に装着された図示しないドラグ機構を操作するためのドラグつまみ4dとを有している。糸巻胴部4a、スカート部4b及び前フランジ部4cの外周には、図2に示すように、筒状のスプールカバー10が着脱可能に装着されている。
【0020】
スプールカバー10は、図3から図5に示すように、前フランジ部4cの前方から装着され前フランジ部4c、糸巻胴部4a及びスカート部4bの全周を覆う弾性樹脂製の筒状部11と、筒状部11の前端から内側に折れ曲がって一体成形され前フランジ部4cの前面周縁部を覆う環状部12と、筒状部11及び環状部12の内外周を貫通する複数の水抜き孔13とを有している。
【0021】
筒状部11は、図3及び図4に示すように、耐久性及び弾性等バランスが良好な合成ゴムであるクロロプレンゴムによって形成され、スカート部4b側が開口する第1開口部11aを有している。筒状部11の内径は、前フランジ部4cの外径より大きくなるように形成され、かつスカート部4bの外径よりやや大きくなるように形成されており、筒状部11をスカート部4bの外周に密着させて固定することができる。
【0022】
環状部12は、図3から図5に示すように、クロロプレンゴムによって筒状部11と一体成形されており、内周部が開口する第2開口部12aを有している。第2開口部12aは、ドラグつまみ4dの先端部が外方に露出するように形成されている。
【0023】
水抜き孔13は、図3から図5に示すように、筒状部11及び環状部12の内外周を貫通する外形が矩形の貫通孔を格子状に並べてメッシュ状に形成されたものである。水抜き孔13は、筒状部11の全周及び環状部12の全面にわたって大量に形成されている。
【0024】
このようなスピニングリールでは、図2に示すように、スプール4をリール本体2に対して取り付けた状態(図2参照)や、スプール4をリール本体2に対して取り外した状態(図4参照)のいずれの状態においても、スプールカバー10をスプール4に装着することができる。スプールカバー10をスプール4に装着するには、図3に示すように、筒状部11の第1開口部11aを前フランジ部4cの前方から装着し、スカート部4bの後端部まで挿入して固定する。このとき、環状部12は、前フランジ部4cの前面周縁部に密着し、第2開口部12aからドラグつまみ4dの先端部が外方に露出している。
【0025】
このようなスプールカバー10では、クロロプレンゴム製の筒状部11により前フランジ部4c、糸巻胴部4a及びスカート部4bの全面が覆われ、クロロプレンゴム製の環状部12により前フランジ部4cの前面周縁部が覆われているので、外部からの衝撃によって傷付きやすい前フランジ部4c及びび糸巻胴部4aに巻き付けられた釣り糸を確実に保護することができる。
【0026】
また、筒状部11及び環状部12は、内外周を貫通する複数の水抜き孔13が形成されている。このため、スプール4及び糸巻胴部4aに巻き付けられた釣り糸に水分が残った状態でスプールカバー10を装着しても水抜き孔13から水分が排出されるので、スプール4及び糸巻胴部4aに巻き付けられた釣り糸を速やかに乾燥できる。
【0027】
〔他の実施形態〕
(a) スピニングリールの形態は前記実施形態に限定されるものではなく、ドラグ機構を有さないものや、ドラグ機構を後部に有するものや、ブレーキレバーを有する制動機構を装着したものにも本発明を適用できる。
【0028】
(b) 前記実施形態では、スプールカバー10は、前フランジ部4c、糸巻胴部4a及びスカート部4bの全面を覆っていたが、図6及び図7に示すように、糸巻胴部4a及び前フランジ部4cの全面のみを覆う構成にしてもよい。なお、筒状部11の端部は、図7に示すように、スカート部4bの前端部の一部を覆っており、これにより筒状部11がスカート部4bの外周に密着固定される。
【0029】
(c) 前記実施形態では、環状部12は、筒状部11と一体成形されていたが、筒状部11と別体で構成してもよいし、あるいは環状部12を設けない構成にしてもよい。また、図8に示すように、環状部12に水抜き孔13を設けない構成にしてもよい。また、図9に示すように、環状部12に第2開口部12aを設けず、前フランジ部4c及びドラグつまみ4dの全面を覆う構成にしてもよい。
【0030】
(d) 前記実施形態では、水抜き孔13は、筒状部11及び環状部12の全面に設けられていたが、筒状部11及び環状部12の一部にのみ水抜き孔13を設ける構成にしてもよい。また、前記実施形態では、水抜き孔13は、メッシュ状に形成されていたが、図10に示すように、外形が略円形の複数の貫通孔を周方向及び軸方向に並べて配置することによって水抜き孔13を設ける構成にしてもよい。
【図面の簡単な説明】
【0031】
【図1】本発明の一実施形態を採用したスピニングリールの側面図。
【図2】スプールにスプールカバーを装着したときの図1に相当する図。
【図3】前記スプール及び前記スプールカバーの拡大側面図。
【図4】前記スプールに前記スプールカバーを装着したときの図3に相当する図。
【図5】前記スプールに前記スプールカバーを装着したときの拡大正面図。
【図6】他の実施形態の図3に相当する図。
【図7】他の実施形態の図4に相当する図。
【図8】他の実施形態の図5に相当する図。
【図9】他の実施形態の図5に相当する図。
【図10】他の実施形態の図3に相当する図。
【符号の説明】
【0032】
1 ハンドル
2 リール本体
2a リールボディ
2b 蓋部材
2c 竿取付脚
3 ロータ
4 スプール
4a 糸巻胴部
4b スカート部
4c 前フランジ部
4d ドラグつまみ
10 スプールカバー
11 筒状部
11a 第1開口部
12 環状部
12a 第2開口部
13 水抜き孔

【特許請求の範囲】
【請求項1】
外周に釣り糸が巻き付けられる糸巻胴部と、前記糸巻胴部の前端部に設けられた前フランジ部と、前記糸巻胴部の後端部に設けられた筒状のスカート部とを有するスプールの外周を保護するスピニングリールのスプールカバーであって、
前記前フランジ部の前方から装着され、少なくとも前記前フランジ部及び前記糸巻胴部の外周を覆う弾性樹脂製の筒状部と、
前記筒状部の内外周を貫通する複数の水抜き孔と、
を備えたスピニングリールのスプールカバー。
【請求項2】
前記筒状部は、前記スカート部の外周を覆うように形成されている、請求項1に記載のスピニングリールのスプールカバー。
【請求項3】
前記筒状部は、クロロプレンゴム製である、請求項1又は2に記載のスピニングリールのスプールカバー。
【請求項4】
前記筒状部は、内径が前記スカート部の外径よりやや大きくなるように形成されている、請求項2又は3に記載のスピニングリールのスプールカバー。
【請求項5】
前記水抜き孔は、前記筒状部の全周にわたって形成されている、請求項1から4のいずれか1項に記載のスピニングリールのスプールカバー。
【請求項6】
前記水抜き孔は、メッシュ状に形成されている、請求項1から5のいずれか1項に記載のスピニングリールのスプールカバー。
【請求項7】
前記水抜き孔は、外形が略円形の複数の貫通孔である、請求項1から5のいずれか1項に記載のスピニングリールのスプールカバー。
【請求項8】
前記筒状部の前端から内側に折れ曲がって形成され、前記前フランジ部の前面周縁部を覆う環状部をさらに備えている、請求項1から7のいずれか1項に記載のスピニングリールのスプールカバー。
【請求項9】
前記環状部は、前記筒状部と一体成形されている、請求項8に記載のスピニングリールのスプールカバー。
【請求項10】
前記環状部の内外周を貫通する複数の水抜き孔をさらに備えている、請求項8又は9に記載のスピニングリールのスプールカバー。

【図1】
image rotate

【図2】
image rotate

【図3】
image rotate

【図4】
image rotate

【図5】
image rotate

【図6】
image rotate

【図7】
image rotate

【図8】
image rotate

【図9】
image rotate

【図10】
image rotate


【公開番号】特開2006−94755(P2006−94755A)
【公開日】平成18年4月13日(2006.4.13)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2004−284221(P2004−284221)
【出願日】平成16年9月29日(2004.9.29)
【出願人】(000002439)株式会社シマノ (1,038)
【Fターム(参考)】