説明

スピニングリールのスプール

【課題】スピニングリールのスプールにおいて、安価な構成でスプール内部を防水できるようにするとともに、容易な工程でスプール全体の軽量化を図る。
【解決手段】前フランジ固定部材9は、外周面が筒状部16aの内側面に装着され前鍔部9aの内側後部から収納壁部16gの前端部より前方となる位置まで延びる筒状の内筒部9cと、内筒部9cの後端部から内側に延びる延出部9dとを有している。延出部9dは、内筒部9cの後端部から内側に延びる板状部9eと、板状部9eの内周部に筒状に一体成形され内側面に防水部材80の一端面が接触可能な円筒部9gとを有している。防水部材80は、前フランジ固定部材9とドラグ機構60のつまみ部61の押圧部材61bとの間に配置され、両端面が延出部9dの円筒部9gの内側面とつまみ部61の押圧部材61bの外側面とに接触して挟持されている。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、スプール、特に、釣り糸を前方に繰り出し、リール本体に対して前後移動自在に設けられ、釣り糸が外周に巻き付けられるスピニングリールのスプールに関する。
【背景技術】
【0002】
一般に、スピニングリールは、リール本体と、リール本体に回転自在に支持されたロータと、ロータの前方に配置され外周に釣り糸が巻き付けられるスプールとを備えている。このようなスプールは、外周に釣り糸が巻き付けられる糸巻胴部と、糸巻胴部の前端部に糸巻胴部よりも大径に設けられた前フランジ部と、前フランジ部の前端部に接触するように糸巻胴部の内周部に沿って装着された前フランジ固定部材と、糸巻胴部の後端部に糸巻胴部よりも大径に設けられたスカート部とを有している。また、この種のスプールでは、糸巻胴部の内周部には糸巻胴部の回転を制動するドラグ機構のドラグ板(摩擦部)を収納するための収納空間が形成されており、前方から収納空間の内部に水等が浸入するのを防止するための防水部材が前フランジ固定部材とドラグ機構の押圧部材(つまみ部)との間に配置されている(たとえば、特許文献1参照)。
【特許文献1】特開2000−139286号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0003】
前記従来の防水部材は、糸巻胴部の内周部に沿って装着された前フランジ固定部材とドラグ機構の押圧部材との間に配置されているので、防水部材を大径に形成しなければならず、このため、弾性樹脂製のリップ部材の内部に金属製の円板部材を設けることによって防水部材自身を補強する必要が生じ、防水部材の製造コストが増大するおそれが生じる。そこで、ドラグ機構のドラグ板が収納される収納空間を生成する小径の収納壁部を前方に延出し、収納壁部の内周部に防水部材を装着することが考えられる。この場合には、収納壁部の内径は、糸巻胴部の内周部に沿って装着された前フランジ固定部材の内径より小径となっているので、防水部材を小径に形成することができ、したがって、防水部材を安価な弾性樹脂製のリップ部材のみで形成できる。
【0004】
また、前記従来のスプールでは、特に、細い釣り糸を巻き付けるために、糸巻胴部の外径を大きく形成し、かつ前フランジ部の外径を小さく形成した浅溝スプールが知られている。このような浅溝スプールでは、糸巻胴部の外径が大きく形成されているので、糸巻胴部の内周部が厚肉に形成され、このため、スプール全体の重量が増加するおそれが生じる。そこで、糸巻胴部の内周部を切削加工によって切り欠いて中空の肉盗み部を形成することにより、スプール全体の軽量化を図ることが考えられる。
【0005】
しかし、特に、小径の防水部材を装着するために収納壁部を前方に延出したスプールでは、肉盗み部を形成するために糸巻胴部の内周部と収納壁部の外周部との間を切削加工すると、収納壁部が前方に長く延出されているために、切削加工した際に発生した切削切粉が糸巻胴部の内周部と収納壁部の外周部との間に滞留してしまい、肉盗み部を切削加工するのが非常に困難である。
【0006】
本発明の課題は、スピニングリールのスプールにおいて、安価な構成でスプール内部を防水できるようにするとともに、容易な工程でスプール全体の軽量化を図ることにある。
【課題を解決するための手段】
【0007】
発明1に係るスピニングリールのスプールは、釣り糸を前方に繰り出し、リール本体に対して前後移動自在なスピニングリールのスプールであって、糸巻胴部と、前フランジ部と、前フランジ固定部材と、ドラグ機構と、防水部材とを備えている。糸巻胴部は、外周面に釣り糸が巻き付けられる筒状部と、筒状部の後端側の内周部から内側に延びる円板部と、円板部から前方に向けて筒状に突出して形成され内部に収納空間を生成する収納壁部とを有している。前フランジ部は、筒状部の前端部に設けられ、筒状部の外径より大きい外径を有する環状の部材である。前フランジ固定部材は、前フランジ部の前端部に接触するように装着される前鍔部と、収納壁部の前端部より前方となる位置において前鍔部の内周部から内側に延びる延出部とを有している。ドラグ機構は、少なくとも一部が前フランジ固定部材の内周側に配置されるつまみ部と、収納空間に配置されつまみ部の後方への移動によって押圧される摩擦部とを有し、糸巻胴部の糸繰り出し方向への回転を制動するための機構である。防水部材は、前フランジ固定部材とドラグ機構との間に配置され、両端面が延出部の内側面とつまみ部の外側面とに接触して挟持されている。
【0008】
このスプールでは、前フランジ固定部材は、収納壁部の前端部より前方となる位置において前鍔部の内周部から内側に延びる延出部を有しており、防水部材は、前フランジ固定部材とドラグ機構との間に配置され、両端面が延出部の内側面とつまみ部の外側面とに接触して挟持されている。ここでは、防水部材は、先端面が延出部の内側面に接触するように配置されているので、防水部材を小径に形成することができ、このため、防水部材を安価な弾性樹脂製のリップ部材のみで形成できる。また、ここでは、収納壁部の内周部に防水部材が装着されていないので、収納壁部を前方に延出して形成する必要がなくなる。このため、筒状部の内周部と収納壁部の外周部との間に軽量化のための肉盗み部を形成するときに、切削加工する際に発生した切削切粉が糸巻胴部の内周部と収納壁部の外周部との間に滞留しにくくなるので、肉盗み部を切削加工するのが容易になる。したがって、安価な構成でスプール内部を防水できるとともに、容易な工程でスプール全体の軽量化を図ることができる。
【0009】
発明2に係るスプールは、発明1のスプールにおいて、延出部は、前鍔部の内周側から内側に延びる板状部と、板状部の内周部に筒状に形成され内側面に防水部材の一端面が接触可能な円筒部とを有している。この場合、防水部材の一端面が接触可能な円筒部が形成されているので、防水部材を確実に接触させることができ、このため、防水性を向上できる。
【0010】
発明3に係るスプールは、発明2のスプールにおいて、円筒部は、内側面が収納壁部の内側面と略同一又は収納壁部の内側面より外側に位置するように形成されている。この場合、防水部材によって収納壁部の前方を確実に覆うことができるので、防水性をさらに向上できる。
【0011】
発明4に係るスプールは、発明1又は2のスプールにおいて、延出部は、内側面が収納壁部の内側面と略同一又は収納壁部の内側面より外側に位置するように形成されている。この場合、の場合、防水部材によって収納壁部の前方を確実に覆うことができるので、防水性をさらに向上できる。
【0012】
発明5に係るスプールは、発明1から4のいずれかのスプールにおいて、前鍔部は、つまみ部の最外径位置となる部分を覆うように前方に向かって傾斜するように形成されている。この場合、前鍔部は前方に向かって傾斜するように形成されているので、釣り糸がつまみ部に引っ掛かりにくくなる。
【0013】
発明6に係るスプールは、発明1から5のいずれかのスプールにおいて、筒状部は、前端側の内側面に形成された雌ねじ部を有している。前鍔部は、内周部後面から後方に延び、外周面が筒状部の内側面に装着される筒状の内筒部を有している。内筒部は、外側面に形成され雌ねじ部に螺合する雄ねじ部を有している。この場合、前フランジ固定部材の着脱が容易になる。
【0014】
発明7に係るスプールは、発明1から5のいずれかのスプールにおいて、筒状部は、前端側の外側面に形成された雄ねじ部を有している。前鍔部は、内周部後面から後方に延び、内周面が筒状部の外側面に装着される筒状の外筒部を有している。外筒部は、内側面に形成され雄ねじ部に螺合する雌ねじ部を有している。この場合、前フランジ固定部材の着脱が容易になる。
【0015】
発明8に係るスプールは、発明1から7のいずれかのスプールにおいて、防水部材は、弾性を有する合成樹脂製のリップ部材である。この場合、比較的安価なリップ部材によって、安価な構成でスプール内部を防水できる。
【0016】
発明9に係るスプールは、発明1から8のいずれかのスプールにおいて、防水部材は、つまみ部の外周面に止め輪部材によって固定されている。この場合、簡素な構成で防水部材を固定できる。
【0017】
発明10に係るスプールは、発明1から9のいずれかのスプールにおいて、前フランジ固定部材は、延出部の内周側に突出して形成され、防水部材の前面が接触可能な突出部をさらに有している。この場合、防水部材の前面を突出部としてのリブに接触させることにより、防水性をさらに向上できる。
【0018】
発明11に係るスプールは、発明10のスプールにおいて、突出部は、一部が切り欠かれて形成され、工具を係止するための係止部を有している。この場合、工具を係止するための係止部としてスリットを設けることにより、組立性を向上できる。
【発明の効果】
【0019】
本発明によれば、スピニングリールのスプールにおいて、前フランジ固定部材は、収納壁部の前端部より前方となる位置において前鍔部の内周部から内側に延びる延出部を有しており、防水部材は、前フランジ固定部材とドラグ機構との間に配置され、両端面が延出部の内側面とつまみ部の外側面とに接触して挟持されているので、安価な構成でスプール内部を防水できるとともに、容易な工程でスプール全体の軽量化を図ることができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0020】
本発明の一実施形態を採用したスピニングリールは、図1に示すように、ハンドル1を回転自在に支持するリール本体2と、ロータ3と、スプール4とを備えている。ロータ3は、リール本体2の前部に回転自在に支持されている。スプール4は、釣り糸を外周面に巻き取るものであり、ロータ3の前部に前後移動自在に配置されている。
【0021】
リール本体2は、リールボディ2aと、リールボディ2aから斜め上前方に延びる竿取付脚2bとを有している。リールボディ2aは、図2に示すように、内部に空間を有しており、その空間内には、ロータ3をハンドル1の回転に連動して回転させるロータ駆動機構5と、スプール4を前後に移動させて釣り糸を均一に巻き取るためのオシレーティング機構6とが設けられている。
【0022】
ロータ駆動機構5は、図2に示すように、ハンドル1が固定されたハンドル軸10とともに回転するフェースギア11と、このフェースギア11に噛み合うピニオンギア12とを有している。ピニオンギア12は筒状に形成されており、ピニオンギア12の前部はロータ3の中心部を貫通し、ナット13によりロータ3に固定されている。また、ピニオンギア12は、その軸方向の中間部と後端部とが、それぞれ軸受14a、14bを介してリール本体2に回転自在に支持されている。
【0023】
オシレーティング機構6は、スプール4の中心部にドラグ機構60を介して連結されたスプール軸15を前後方向に移動させてスプール4を同方向に移動させるための機構である。オシレーティング機構6は、図2に示すように、スプール軸15の下方に平行に配置された螺軸21と、螺軸21に沿って前後方向に移動するスライダ22と、螺軸21の先端に固定された中間ギア23とを有している。スライダ22にはスプール軸15の後端が回転不能に固定されている。中間ギア23はピニオンギア12に噛み合っている。
【0024】
ロータ3は、図2に示すように、円筒部30と、円筒部30の側方に互いに対向して設けられた第1ロータアーム31及び第2ロータアーム32とを有している。円筒部30と第1ロータアーム31及び第2ロータアーム32とは、たとえばアルミニウム合金製であり一体成形されている。
【0025】
第1ロータアーム31の先端の外周側には、図2に示すように、第1ベール支持部材40が揺動自在に装着されている。第1ベール支持部材40の先端には、釣り糸をスプール4に案内するためのラインローラ41が装着されている。また、第2ロータアーム32の先端内周側には、第2ベール支持部材42が揺動自在に装着されている。
【0026】
ラインローラ41と第2ベール支持部材42との間には、線材を略U状に湾曲させた形状のベール43が固定されている。これらの第1ベール支持部材40、第2ベール支持部材42、ラインローラ41及びベール43により釣り糸をスプール4に案内するベールアーム44が構成される。ベールアーム44は、図2に示す糸案内姿勢とそれから反転した糸開放姿勢との間で揺動自在である。
【0027】
ロータ3の円筒部30の内部には、ロータ3の逆転を禁止・解除するための逆転防止機構50が配置されている。逆転防止機構50は、図2に示すように、内輪が遊転するローラ型のワンウェイクラッチ51と、ワンウェイクラッチ51を作動状態(逆転禁止状態)と非作動状態(逆転許可状態)とに切り換える切換機構52とを有している。
【0028】
スプール4は、図2に示すように、ロータ3の第1ロータアーム31と第2ロータアーム32との間に配置されており、スプール軸15の先端にドラグ機構60を介して装着されている。
【0029】
スプール4は、図2及び図3に示すように、細い釣り糸を巻き付けるための浅溝スプールであって、外周に釣り糸が巻かれる筒状の糸巻胴部7aと、糸巻胴部7aの後端部に一体で形成された大径筒状のスカート部7bと、糸巻胴部7aの前端部に設けられた大径の前フランジ部8と、前フランジ部8を糸巻胴部7aに固定するための前フランジ固定部材9と、ドラグ機構60と、防水部材80とを有している。スプール4は、外周部がたとえばアルミニウム合金等の金属製の部材を鍛造加工することによって形成された大小2段の円筒状の部材であって、第1軸受56及び第2軸受57によりスプール軸15に回転自在に装着されている。
【0030】
糸巻胴部7aは、図3に示すように、金属製部材により円筒状に形成された筒状部16aと、筒状部16aの前部内周側に形成された雌ねじ部16bと、筒状部16aの後部内周側に一体的に延びる板状の円板部16cと、円板部16cから前方に向けて筒状に突出して形成され内部に収納空間16fを生成する収納壁部16gとを有している。また、筒状部16aの内周部と収納壁部16gの外周部との間には、軽量化のために切削加工によって形成された肉盗み部100が生成されている。雌ねじ部16bは、前フランジ固定部材9を糸巻胴部7aに着脱自在に装着するために設けられ、後述する前フランジ固定部材9の雄ねじ部9bが螺合可能である。円板部16cの内側には、有底筒状の第1支持部16d及び第2支持部16eが前後にそれぞれ形成されている。第1支持部16d及び第2支持部16eの内側には、第1軸受56及び第2軸受57が装着されており、第1軸受56及び第2軸受57は、筒状の保持部材70を介してスプール軸15に回転自在に装着されている。
【0031】
スカート部7bは、図2に示すように、ロータ3の円筒部30を覆うように大径筒状に糸巻胴部7aと一体成形されている。スカート部7bは、たとえばアルミニウム合金等の金属製の部材を鍛造加工することにより形成されている。
【0032】
前フランジ部8は、図3に示すように、糸巻胴部7aの前端部に設けられ、糸巻胴部7aの外径より大きい外径を有する環状の部材である。前フランジ部8は、糸巻胴部7aの前端部と前フランジ固定部材9とで挟持されている。
【0033】
前フランジ固定部材9は、図3に示すように、前フランジ部8の前端部に接触するように装着され前端部側に向かって縮径するように前方に突出する前鍔部9aと、前鍔部9aの内周部後面から後方に延び外周面が筒状部16aの内側面に装着され前鍔部9aの内側後部から収納壁部16gの前端部より前方となる位置まで延びる筒状の内筒部9cと、内筒部9cの後端部外周に形成され糸巻胴部7aの雌ねじ部16bに螺合する雄ねじ部9bと、内筒部9cの後端部から内側に延びる延出部9dとを有している。延出部9dは、図3に示すように、内筒部9cの後端部から内側に延びる板状部9eと、板状部9eの内周部に筒状に一体成形され内側面に後述する防水部材80の一端面が接触可能な円筒部9gとを有している。円筒部9gは、外周面の略中央部のやや前部に板状部9eの内周部が位置するように形成され、内側面が収納壁部16gの内側面よりやや外側に位置するように形成されている。
【0034】
また、前フランジ固定部材9は、延出部9dの内周側に突出して形成され、防水部材80の前面が接触可能な突出部9h(図4参照)と、突出部9hの一部が切り欠かれて形成され、組み立て時に工具を係止するための係止部9i(図3参照)とをさらに有している。突出部9hは、延出部9dの内周側の2箇所に設けられたリブであり、係止部9iは、突出部9hの一部が切り欠かれたスリットである。前フランジ固定部材9の内周部には、後述するドラグ機構60のつまみ部61の後端側から後方部分が収納されており、前鍔部9aは、つまみ部61の最外径位置となる部分を覆うように前方に向かって傾斜するように形成されている。
【0035】
ドラグ機構60は、図2及び図3に示すように、スプール4とスプール軸15との間に装着されスプール4にドラグ力を作用させるための機構である。ドラグ機構60は、ドラグ力を手で調整するためのつまみ部61と、つまみ部61によりスプール4側に押圧される複数枚のドラグ板62とを有している。つまみ部61は、図3に示すように、前方に露出するように設けられ回動によって前後移動可能なつまみ部材61aと、前端がつまみ部材61aの後端に接触するように配置され後端がドラグ板62に接触するように配置されつまみ部61の前後移動に応じてドラグ板62を押圧するための筒状の押圧部材61bとを有している。押圧部材61bの外周部には、後述する防水部材80が装着され、防水部材80の後端部には、押圧部材61bの外周部に形成された溝部61cにE型止め輪等の止め輪部材81を装着することによって固定されている。
【0036】
防水部材80は、図3に示すように、前フランジ固定部材9とドラグ機構60のつまみ部61の押圧部材61bとの間に配置され、両端面が延出部9dの円筒部9gの内側面とつまみ部61の押圧部材61bの外側面とに接触して挟持されている。防水部材80は、たとえばNBR等の弾性を有する合成樹脂製のリップ部材である。防水部材80は、外周部の皿状のリップが前方側に向くように装着されている。
【0037】
次にリールの操作及び動作について説明する。
【0038】
キャスティング時にはベールアーム44を糸開放姿勢に反転させる。これにより第1ベール支持部材40及び第2ベール支持部材42は揺動する。この状態で釣竿を握る手の人差し指で釣り糸を引っかけながら釣竿をキャスティングする。すると釣り糸は仕掛けの重さにより勢いよく放出される。仕掛けが着水した後ハンドル1を釣り糸巻き取り方向に回転させると、ロータ駆動機構5によりロータ3が釣り糸巻き取り方向に回転し、ベールアーム44が図示しないベール反転機構により釣り糸巻き取り位置に復帰しロータ3の逆転が禁止されているので釣り糸の放出が止まる。
【0039】
釣り糸を巻き取る際には、ハンドル1を釣り糸巻き取り方向に回転させる。すると、その回転がフェースギア11、ピニオンギア12を介してロータ3に伝達されロータ3が回転する。ロータ3が回転すると、ラインローラ41に案内された釣り糸がスプール4に巻き付けられる。
【0040】
このようなスピニングリールでは、前フランジ固定部材9は、前鍔部9aの内側後部から収納壁部16gの前端部より前方となる位置まで延びる筒状の内筒部9cと、内筒部9cの後端部から内側に延びる延出部9dとを有している。また、防水部材80は、前フランジ固定部材9とドラグ機構60のつまみ部61の押圧部材61bとの間に配置され、両端面が延出部9dの円筒部9gの内側面とつまみ部61の押圧部材61bの外側面とに接触して挟持されている。
【0041】
ここでは、防水部材80は、先端面が延出部9dの円筒部9gの内側面に接触するように配置されているので、防水部材80を小径に形成することができ、このため、防水部材80を安価な弾性樹脂製のリップ部材のみで形成できる。さらに、ここでは、収納壁部16gの内周部に防水部材80が装着されていないので、収納壁部16gを前方に延出して形成する必要がなくなる。このため、筒状部16aの内周部と収納壁部16gの外周部との間に軽量化のための肉盗み部100を形成するときに、切削加工する際に発生した切削切粉が筒状部16aの内周部と収納壁部16gの外周部との間に滞留しにくくなるので、肉盗み部100を切削加工するのが容易になる。したがって、安価な構成でスプール内部を防水できるとともに、容易な工程でスプール全体の軽量化を図ることができる。
【0042】
〔他の実施形態〕
(a) 前記実施形態では、細い釣り糸を巻き付けるための浅溝スプールを例にあげて説明したが、他のあらゆるスピニングリールのスプールに本発明を適用できる。
【0043】
(b) 前記実施形態では、糸巻胴部7aとスカート部7bとを金属によって一体成形されていたが、たとえば合成樹脂によって糸巻胴部7aとスカート部7bとを一体成形したり、あるいは糸巻胴部7aとスカート部7bとを異なる材質の部材によって別体で構成してもよい。
【0044】
(c) 前記実施形態では、2つの第1軸受56及び第2軸受57を用いたが、これに限定されるものではなく、たとえば1つの軸受のみ用いる構成にしてもよい。
【0045】
(d) 前記実施形態では、前フランジ固定部材9は、突出部9hや係止部9iを有していたが、図5に示すように、係止部、あるいは突出部及び係止部を有さない構成にしてもよい。
【0046】
(e) 前記実施形態では、円筒部9gは、外周面の略中央部のやや前部に板状部9eの内周部が位置するように形成されていたが、円筒部9gと板状部9eの接続位置はこれに限定されるものではなく、図6に示すように、外周面の前部に板状部9eの内周部が位置するように円筒部9gを形成する構成にしてもよい。また、図8に示すように、円筒部9gを収納壁部16gの前端部まで後方に延出する構成にしてもよい。また、図7に示すように、円筒部を有さない構成にしてもよい。なお、この場合には、延出部9dは、内筒部9cの後端部から内側に延びる板状部9eのみ有しており、板状部9eの内側面が収納壁部16gの内側面よりやや外側に位置するように形成されており、板状部9eの内周面に防水部材80の一端面が接触するようになっている。
【0047】
(f) 前記実施形態では、前フランジ固定部材9は、内筒部9cの後端部外周に形成された雄ねじ部9bを、糸巻胴部7aの雌ねじ部16bに螺合することによって固定していたが、図9に示すように、前フランジ固定部材9は、前鍔部9aの内周部後面から後方に延び、内周面が糸巻胴部7aの外側面に装着される筒状の外筒部9jをさらに備え、外筒部9jの後端部内周に形成された雌ねじ部9kを、糸巻胴部7aの前端部外周に形成された雄ねじ部16hに螺合することによって固定する構成にしてもよい。
【図面の簡単な説明】
【0048】
【図1】本発明の一実施形態によるスピニングリールの側面図。
【図2】前記スピニングリールの側面断面図。
【図3】前記スピニングリールのスプールの側面拡大断面図。
【図4】前フランジ固定部材の斜視図。
【図5】他の実施形態の図3に相当する図。
【図6】他の実施形態の図3に相当する図。
【図7】他の実施形態の図3に相当する図。
【図8】他の実施形態の図3に相当する図。
【図9】他の実施形態の図3に相当する図。
【符号の説明】
【0049】
1 ハンドル
2 リール本体
3 ロータ
4 スプール
5 ロータ駆動機構
6 オシレーティング機構
7a 糸巻胴部
7b スカート部
8 前フランジ部
9 前フランジ固定部材
9a 前鍔部
9b 雄ねじ部
9c 内筒部
9d 延出部
9e 板状部
9g 円筒部
9h 突出部
9i 係止部
9j 外筒部
9k 雌ねじ部
16a 筒状部
16b 雌ねじ部
16c 円板部
16d 第1支持部
16e 第2支持部
16f 収納凹部
16g 収納壁部
16h 雄ねじ部
60 ドラグ機構
61 つまみ部
61a つまみ部材
61b 押圧部材
62 ドラグ板
80 防水部材
81 止め輪部材
100 肉盗み部

【特許請求の範囲】
【請求項1】
釣り糸を前方に繰り出し、リール本体に対して前後移動自在なスピニングリールのスプールであって、
外周面に前記釣り糸が巻き付けられる筒状部と、前記筒状部の後端側の内周部から内側に延びる円板部と、前記円板部から前方に向けて筒状に突出して形成され内部に収納空間を生成する収納壁部とを有する糸巻胴部と、
前記筒状部の前端部に設けられ、前記筒状部の外径より大きい外径を有する環状の前フランジ部と、
前記前フランジ部の前端部に接触するように装着される前鍔部と、前記収納壁部の前端部より前方となる位置において前記前鍔部の内周部から内側に延びる延出部とを有する前フランジ固定部材と、
少なくとも一部が前記前フランジ固定部材の内周側に配置されるつまみ部と、前記収納空間に配置され前記つまみ部の後方への移動によって押圧される摩擦部とを有し、前記糸巻胴部の糸繰り出し方向への回転を制動するためのドラグ機構と、
前記前フランジ固定部材と前記ドラグ機構との間に配置され、両端面が前記延出部の内側面と前記つまみ部の外側面とに接触して挟持された防水部材と、
を備えたスピニングリールのスプール。
【請求項2】
前記延出部は、前記前鍔部の内周側から内側に延びる板状部と、前記板状部の内周部に筒状に形成され内側面に前記防水部材の一端面が接触可能な円筒部とを有している、請求項1に記載のスピニングリールのスプール。
【請求項3】
前記円筒部は、内側面が前記収納壁部の内側面と略同一又は前記収納壁部の内側面より外側に位置するように形成されている、請求項2に記載のスピニングリールのスプール。
【請求項4】
前記延出部は、内側面が前記収納壁部の内側面と略同一又は前記収納壁部の内側面より外側に位置するように形成されている、請求項1又は2に記載のスピニングリールのスプール。
【請求項5】
前記前鍔部は、前記つまみ部の最外径位置となる部分を覆うように前方に向かって傾斜するように形成されている、請求項1から4のいずれか1項に記載のスピニングリールのスプール。
【請求項6】
前記筒状部は、前端側の内側面に形成された雌ねじ部を有しており、
前記前鍔部は、内周部後面から後方に延び、外周面が前記筒状部の内側面に装着される筒状の内筒部を有しており、
前記内筒部は、外側面に形成され前記雌ねじ部に螺合する雄ねじ部を有している、請求項1から5のいずれか1項に記載のスピニングリールのスプール。
【請求項7】
前記筒状部は、前端側の外側面に形成された雄ねじ部を有しており、
前記前鍔部は、内周部後面から後方に延び、内周面が前記筒状部の外側面に装着される筒状の外筒部を有しており、
前記外筒部は、内側面に形成され前記雄ねじ部に螺合する雌ねじ部を有している、請求項1から5のいずれか1項に記載のスピニングリールのスプール。
【請求項8】
前記防水部材は、弾性を有する合成樹脂製のリップ部材である、請求項1から7のいずれか1項に記載のスピニングリールのスプール。
【請求項9】
前記防水部材は、前記つまみ部の外周面に止め輪部材によって固定されている、請求項1から8のいずれか1項に記載のスピニングリールのスプール。
【請求項10】
前記前フランジ固定部材は、前記延出部の内周側に突出して形成され、前記防水部材の前面が接触可能な突出部をさらに有している、請求項1から9のいずれか1項に記載のスピニングリールのスプール。
【請求項11】
前記突出部は、一部が切り欠かれて形成され、工具を係止するための係止部を有している、請求項10に記載のスピニングリールのスプール。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【公開番号】特開2008−35817(P2008−35817A)
【公開日】平成20年2月21日(2008.2.21)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2006−216634(P2006−216634)
【出願日】平成18年8月9日(2006.8.9)
【出願人】(000002439)株式会社シマノ (1,038)
【Fターム(参考)】