説明

スピロキラリティを有する第4級アンモニウム塩およびその製造法、並びに該アンモニウム塩を用いた不斉触媒反応

【課題】スピロキラリティを有する第4級アンモニウム塩およびその製造法、並びに該アンモニウム塩を用いた不斉触媒反応を提供すること。
【解決手段】下記式(1)で表されるスピロキラリティーを有する第4級アンモニウム塩。
式中、Rは水素、炭素数1〜6のアルキル基、置換もしくは無置換のアラルキル基、置換もしくは無置換のアリール基、またはメンチルオキシメチル基を表す。Xはハロゲン原子である。
【化1】




【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、医薬、農薬等の合成中間体として有用な光学活性化合物を与える不斉触媒反応およびその触媒であるスピロキラリティ−を有する第4級アンモニウム塩、さらにはその触媒の製造法に関する。
【背景技術】
【0002】
不斉相間移動触媒としては、その多くがシンコナアルカロイドの誘導体である。最近になって、酒石酸等の誘導体を母核とした触媒、ならびに軸不斉を有するビナフチル骨格を有する触媒等が報告されている。
【0003】
【特許文献1】Muraoka, K.; Ooi, T. Chem. Rev. 2003, 103,3031.
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
ところで、これら不斉相間移動触媒には反応目的に応じた、種々多様性が要求されるところ、スピロキラリティ−を有する第4級アンモニウム塩に関しては、その合成例も、またその触媒作用についても報告例がなかった。
【課題を解決するための手段】
【0005】
本発明者らは、スピロキラリティ−を有する第4級アンモニウム塩が不斉合成反応の触媒として有効に働くことを見出し、本発明を完成させたものである。
【0006】
即ち、本発明は、下記式(1)で表されるスピロキラリティ−を有する第4級アンモニウム塩である。
【化1】


(式中、Rは水素、炭素数1〜6のアルキル基、置換もしくは無置換のアラルキル基、置換もしくは無置換のアリール基、またはメンチルオキシメチル基を表す。Xはハロゲン原子である。)
【0007】
また本発明は、下記式(2)
【化2】


(式中、Xはハロゲンを意味する。)
で表される光学活性なハロゲノメチルメンチルエーテルを、塩基存在下、3−ヒドロキシフタル酸無水物と反応させ、下記式(3)
【化3】


で表される酸無水物を有する光学活性な化合物とし、次いで該エーテル体の無水カルボン酸部位を還元により下記式(4)
【化4】


で表されるジオールを有する光学活性な化合物とし、次いで該ジオールの水酸基をハロゲン化し、下記式(5)
【化5】


(式中、Xはハロゲンを意味する。)
で表される光学活性な化合物とし、次いで該光学活性な化合物(5)をアンモニア水と反応させ、下記式(6)
【化6】


(式中、Xはハロゲンを意味する。)
で表されるスピロキラリティ−を有する第4級アンモニウム塩(6)のジアステレオマー混合物を得た後、該混合物を分割し、スピロキラリティ−を有する第4級アンモニウム塩(6)を得、次いで、酸性溶液を作用させ、メンチルオキシメチル基を除去し、下記式(7)
【化7】


(式中、Xはハロゲンを意味する。)
で表されるスピロキラリティ−を有する第4級アンモニウム塩(7)を得、次いで、該第4級アンモニウム塩(7)を置換もしくは無置換アラルキルハライドと作用させることを特徴とする、下記式(8)
【化8】


(式中、Rは炭素数1〜6のアルキル基、置換もしくは無置換のアラルキル基、を表す。Xはハロゲンを意味する。)
で表されるスピロキラリティーを有する第4級アンモニウム塩の製法である。
【0008】
更に、本発明は、不斉触媒反応、特にα、β−不飽和エステルへの不斉マイケル型求核付加反応において、式(1)で表されるスピロキラリティ−を有する第4級アンモニウム塩の相間移動触媒としての使用に関する。
【化9】


(式中、RおよびXは上述に同じである。)
【発明の効果】
【0009】
本発明により得られたスピロキラリティ−を有する第4級アンモニウム塩は相間移動触媒としての機能を有し、不斉触媒反応に利用することで高収率、高光学純度で光学活性化合物を得ることができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0010】
本発明を更に詳細に説明する。
式(1)で表されるスピロキラリティ−を有する第4級アンモニウム塩のRは、メンチルオキシメチル基、水素、炭素数1〜6のアルキル基、置換もしくは無置換のアラルキル基、または置換もしくは無置換アリール基から選ばれる基を表す。2つのRは同一でも異なってもよい。
【0011】
具体的は、アルキル基としては、メチル基、エチル基、n-プロピル基、イソプロピル基、n-ブチル基、イソブチル基、sec-ブチル基、tert-ブチル基が挙げられる。また、置換もしくは無置換のアラルキル基としてはベンジル基、m-クロロベンジル基、p-ブロモベンジル基、o-トリフルオロメチルベンジル基、ジフェニルメチル基、アントラニル基等が挙げられる。更に、置換もしくは無置換のアリール基としては、フェニル基、m-クロロフェニル基、p-ブロモフェニル基、o-トリル基、m-トリル基、p-トリル基、p-シアノフェニル基、1−ナフチル基、2−ナフチル基、6−ブロモ−1−ナフチル基、6−クロロ−2−ナフチル基、6−メチル−1−ナフチル基が挙げられる。
は、置換もしくは無置換のアラルキル基およびメンチルオキシメチル基が好ましく、中でもメンチルオキシメチル基が最も好ましい。
【0012】
また、Xはハロゲン原子を表す。ハロゲン原子としては、塩素、臭素、ヨウ素が好ましく挙げられる。臭素が最も好ましい。
【0013】
次に、式(1)で表されるスピロキラリティ−を有する第4級アンモニウム塩の製造方法について詳細に述べる。下記には本発明の全フローが示される。ここで、式(1)とは下記式(6)〜(8)の集合を意味する。
【化10】


(式中、R、XおよびXは上述と同じである。)
【0014】
第1段階は、3−ヒドロキシフタル酸無水物に(-)-クロロメチルメンチルエーテル(2)を塩基存在下で作用させ、水酸基をエーテル化する反応である。(-)-クロロメチルメンチルエーテル(2)は3−ヒドロキシフタル酸無水物に対して、1〜2当量が好ましい量である。
【0015】
ここで用いられる塩基としては、水酸化ナトリウム、水酸化カリウム等のアルカリ金属水酸化物、水素化ナトリウム、水素化カリウム、水素化カルシウム等のアルカリ金属またはアルカリ土類金属の水素化物、ナトリウムメチラート、ナトリウムエチラート、カリウムtert-ブトキシド等のアルカリ金属アルコラート類が挙げられ、特に好ましくは水素化ナトリウムである。塩基の量は3−ヒドロキシフタル酸無水物に対して、1〜3当量が好ましい量である。
【0016】
溶媒としては、非プロトン性であれば特に選ばないが、一般にTHF、ジエチルエーテルなどのエーテル系溶媒やN,N-ジメチルホルムアミド、N,N-ジメチルアセトアミドなどのアミド系の溶媒を用いてよい。
【0017】
第2段階は、第一段階で得られた生成物(3)の酸無水物部分を還元によりジオール(4)とする反応である。用いられる還元剤は、水素化リチウムアルミニウム、水素化ジイソブチルアルミニウム、ビットライド、水素化ホウ素ナトリウムが挙げられるが、特に好ましくは水素化リチウムアルミニウムである。還元剤は生成物(3)に対して2〜5当量が好ましい量である。
【0018】
この場合においても、上述の非プロトン性溶媒を同様に使用することができる。
【0019】
第3段階は、第2段階で得られたジオール(4)をハロゲン化する反応である。1級アルコールをハロゲン化する条件であれば特に方法は選ばないが、例えば、四臭化炭素とトリフェニルホスフィンによる方法などが挙げられる。この場合、該ジオール(4)に対して四臭化炭素は2〜8当量、トリフェニルホスフィンは2〜8当量がそれぞれ適量である。
【0020】
第4段階は、第3段階で得られたジハライド(5)をアンモニアにより第4級アンモニウム塩に変換する反応である。通常一般的に行われる反応であってよく、例えば、当該ジハライド(5)のアセトニトリル溶液に5当量分のアンモニア水(濃度28wt%)を滴下する手段により行うことができる。
【0021】
第5段階は、第4段階で得られた第4級アンモニウム塩(6)のジアステレオマーの混合物を分離精製する工程である。分離方法は問わないが、例えば汎用のシリカゲルカラムによる精製で容易に分離が可能である。
【0022】
ところで、第5段階により分離精製されたスピロキラリティ−を有する第4級アンモニウム塩(6)は次の手段により、官能基変換が可能である。
まず第一に、臭化水素酸等の酸性条件下で該第4級アンモニウム塩(6)のメンチルオキシメチル基が容易に加水分解され、水酸基に変換され、これにより化合物(7)が得られる。
第二に、化合物(7)は、炭酸カリウム等の塩基存在下で、容易にアルキル化、アラルキル化することが可能であり、これにより化合物(8)が得られる。
【0023】
次に、本発明化合物であるスピロキラリティ−を有する第4級アンモニウム塩を用いる不斉触媒反応について説明する。
【0024】
本発明によるスピロキラリティ−を有する第4級アンモニウム塩は不斉触媒反応に応用することができる。ここで言う不斉触媒反応には不斉求核置換反応や不斉マイケル付加反応が含まれる。
【0025】
不斉触媒反応に用いられる求核剤の種類としては、一般に不斉合成が可能な基質であればいずれを問わず使用することができるが、例えばアミノエステル、特にグリシンのシッフ塩基誘導体などが好ましく例示される。
【0026】
不斉求核置換反応のうち、不斉アルキル化反応での求電子剤としては、アルキルハライド、アラルキルハライドなどが挙げられる。
【0027】
また、不斉マイケル付加反応ではマイケル受容体として、α、β−不飽和エステルが挙げられる。
【0028】
これらの反応で用いられる本発明化合物であるスピロキラリティ−を有する第4級アンモニウム塩(1)の量であるが、基質である求核剤に対して0.5 mol%〜50 mol%が好ましく、特に好ましくは1 mol%〜20 mol%である。
【実施例】
【0029】
以下、実施例を挙げて本発明をさらに具体的に説明するが、本発明はこれらに限定されるものではない。
先に全実施例をフローで示す。
【化11】

【0030】
[実施例1]
化合物4の合成
3−ヒドロキシ無水フタル酸(8.2g、50mmol)と水素化ナトリウム(2.4g,60mmol)のTHF(150mL)溶液に、0℃で(-)―クロロメチルメンチルエーテル(12mL,55mmol)を滴下し、そのままの温度で15時間撹拌した。反応液を水に注ぎ、酢酸エチルで抽出した。(50mL×3)。有機層は硫酸マグネシウムで乾燥し、濃縮した。得られた粗生成物(化合物3)を精製することなく、水素化リチウムアルミニウム(4.7g,125mmol)のTHF(200mL)溶液で、還元を行った。3時間撹拌を行い、水を滴下して反応を終結させた。反応液をセライトでろ過後、ジクロロメタンで抽出し、濃縮した。シリカゲルクロマトグラフィー(ヘキサン/酢酸エチル=2/1)で精製を行い、化合物3を収率31%で得た。
1H-NMR(CDCl3):δ0.60(d,J=7.0Hz,3H),0.82-0.92(m,8H),1.20-1.40(m,2H),1.59-1.67(m,2H),2.00-2.12(m,3H),3.48(dt,J=4.3Hz,10.5Hz,1H),4.74(d,J=2.2Hz,2H),4.84(d,J=3.0Hz,2H),5.32(dd,J=6.3Hz,7.3Hz,2H),7.01(d,J=7.0Hz,1H),7.13(d,2H),7.22-7.28(m,1H);13C-NMR(CDCl3):δ 155.54,140.7,128.86,127.94,122.5,114.22,91.77,78.42,64.14,56.26,48.08,41.16,34.28,31.53,25.28,22.98,22.31,21.0,15.60;FAB-MS
m/z:323([M+H]+)

【0031】
[実施例2]
化合物5の合成
化合物3(4.8g,15mmol)のジクロロメタン(75mL)溶液に、2,6−ルチジン(17mL,149mmol)、トリフェニルホスフィン(25g,75mmol)、四臭化炭素(25g,75mmol)を0℃で加え、15時間撹拌した。水を加えて反応を終結させた後、ジクロロメタンで抽出した。硫酸マグネシウムで乾燥後、溶媒を留去し、シリカゲルクロマトグラフィー(ヘキサン/エーテル=19/1)で精製した後、化合物4を収率96%で得た。
1H-NMR(CDCl3):δ 0.59(d,J=7.0Hz,3H),0.77-0.94(m,8H),1.18-1.50(m,3H),1.59-1.67(m,2H2.02-2.15(m,2H),3.53(dt,J=4.0Hz,10.5Hz,1H),4.62(d,J=1.0Hz,2H),4.77(d,J=1Hz,1H),5.37(dd,J=6.5Hz,7.3Hz,2H),6.99(d,J=1.0Hz,7.6Hz,1H),7.11(dd,J=1.0Hz,8.5Hz,2H),7.21-7.26(m,1H);13C-NMR(CDCl3):δ 155.74,137.75,129.81,125.27,123.39,114.46,91.29,78.40,48.22,41.17,34.39,31.61,30.21,25.38,24.01,23.07,22.35,21.13,15.72;FAB-MSm/z:447([M+H]+)
【0032】
[実施例3]
スピロビスフェノール誘導体6の合成
化合物4(45mg,0.1mmol)のアセトニトリル(5mL)溶液に、0℃で28%アンモニア水(30μL,0.5mmol)を滴下し、12時間撹拌した。反応液をろ過後、ジクロロメタンで洗浄し、ろ液を濃縮した。濃縮物は薄層クロマトグラフィー(酢酸エチル/メタノール=5/1)で精製し、目的の4級アンモニウム塩を26%の収率で得た。
33a:1H-NMR(CDCl3):δ 0.58(d,J=6.7Hz,6H),0.82-0.93(m,18H),1.19-1.37(m,7H),1.60-1.67(m,4H),2.00-2.04(m,5H),3.43(dt,J=4.1Hz,10.5Hz,2H),5.04-5.41(m,10H),5.66(d,J=14.0Hz,2H),7.02(d,J=,7.3Hz,2H),7.30-7.37(m,2H);13C-NMR(CDCl3):δ 153.15,134.61,131.16,120.51,116.29,114.25,91.39,78.55,68.32,66.37,48.02,41.08,34.20,31.40,25.26,22.86,22.25,20.94,15.63;FAB-MSm/z:590(M+-Br)
33b:1H-NMR(270MHz,CDCl3):δ 0.56(d,J=7.0Hz,2H),0.82-0.94(m,20H),1.19-1.35(m,6H),1.60-1.65(m,4H),2.00-2.04(m,5H),3.42(dt,J=4.3Hz,10.5Hz,2H),4.85(d,J=14.0Hz,2H),5.21-5.29(m,6H),5.44(d,J=14.0Hz,2H),5.79(d,J=13.2Hz,2H),7.03(d,J=,7.6Hz,2H),7.14(d,J=8.4Hz,2H),7.27-7.38(m,2H);13C-NMR(CDCl3):δ 153.26,134.77,131.31,120.36,116.36,114.23,91.25,78.41,68.28,37.31,48.01,41.00,34.23,31.53,25.29,22.95,22.30,20.99,15.59;FAB-MSm/z:590(M+-Br)
【0033】
[実施例4]
化合物7の合成
化合物5(117mg,0.17mmol)のアセトニトリル(0.57mL)溶液に、0度で47%臭化水素酸を加え、そのまま1時間撹拌した。溶媒を濃縮し、ろ過により回収した粗生成物Aを水とジクロロメタンで洗浄し、乾燥後に化合物Aが白色固体として得られた(25mg,45%)。
1H-NMR(CD3OD):δ4.89-4.90(m,8H),6.68(d,J=7.3Hz,2H),6.73(d,J=8.4Hz,2H),7.15-7.20(m,2H);13C-NMR(CDCl3):δ158.99,141.97,135.67,131.81,121.11,118.67,112.26,69.92,67.95,;FAB-MSm/z:254(M+-Br);34a:[α]D28+4.39°(C=0.255,MeOH);
34b:[α]D29-3.73°(C=0.260,MeOH)
【0034】
[実施例5]
化合物7のエーテル化反応(8A)
化合物A(6mg,0.02mmol)と炭酸カリウム(7.5mg,0.06mmol)のアセトニトリル溶液(0.1
mL)に、ベンジルブロミド(6.4μL,0.054mmol)加え、11時間撹拌した。その反応液を室温に戻し、8時間撹拌した。反応液をろ過した後、ジクロロメタンで洗浄しろ液を濃縮した。濃縮物は、シリカゲルプレート(酢酸エチル/メタノール=5/1)で精製し、目的とするアンモニウム塩が54%(5mg)の収率で得られた。
【0035】
[実施例6]
化合物7のエーテル化反応(8B)
化合物A(6mg,0.02mmol)と炭酸カリウム(7.5mg,0.06mmol)のアセトニトリル溶液(0.1mL)に、α−ブロモジフェニルメタン(12mg,0.05mmol)加え、11時間撹拌した。その反応液を室温に戻し、8時間撹拌した。反応液をろ過した後、ジクロロメタンで洗浄しろ液を濃縮した。濃縮物は、シリカゲルプレート(酢酸エチル/メタノール=5/1)で精製し、目的とするアンモニウム塩が40%の収率で得られた。
【0036】
[実施例7]
化合物7のエーテル化反応(8C)
化合物A(6mg,0.02mmol)と炭酸カリウム(7.5mg,0.06mmol)のアセトニトリル溶液(0.1mL)に、9−ブロモメチルアントラセン(15mg,0.05mmol)加え、11時間撹拌した。その反応液を室温に戻し、8時間撹拌した。反応液をろ過した後、ジクロロメタンで洗浄しろ液を濃縮した。濃縮物は、シリカゲルプレート(酢酸エチル/メタノール=5/1)で精製し、目的とするアンモニウム塩が39%の収率で得られた。
【0037】
[実施例8]
化合物7のエーテル化反応(8D)
化合物A(6mg,0.02mmol)と炭酸カリウム(7.5mg,0.06mmol)のアセトニトリル溶液(0.1mL)に、2−(トリフルオロメチル)ベンジルブロミド(13mg,0.05mmol)加え、11時間撹拌した。その反応液を室温に戻し、8時間撹拌した。反応液をろ過した後、ジクロロメタンで洗浄しろ液を濃縮した。濃縮物は、シリカゲルプレート(酢酸エチル/メタノール=5/1)で精製し、目的とするアンモニウム塩が57%の収率で得られた。
【0038】
[実施例9]
不斉マイケル付加反応
【化12】


実施例3で合成した化合物5(4.3mg,0.006mmol)とシッフ塩基(20mg,0.06mmol)のt−ブチルメチルエーテル(0.2mL)溶液に、水酸化カリウム(0.34mg,0.006mmol)を加え、アクリル酸t−ブチルを-20℃でゆっくり加えて8時間撹拌した。水を加えて反応を終結させた後、酢酸エチルで抽出して、硫酸マグネシウムで乾燥させた。溶媒を留去し、クロマトグラフィーによる精製後、目的の生成物を86%の収率で得た。(光学純度:49%ee)
【0039】
[実施例10]
不斉アルキル化反応
【化13】


実施例3で合成した化合物5(4.1mg,0.006mmol)とシッフ塩基(18mg,0.06mmol)のトルエン(0.48mL)−50%水酸化カリウム(0.12mL)の混合溶液に、−40℃でベンジルブロミド(21μL,0.18mmol)を滴下し,4.5時間撹拌した。反応液を水に注ぎ、エーテル抽出し、硫酸マグネシウムで乾燥させた。溶媒を留去し、シリカゲルクロマトグラフィーによる精製後、目的の生成物を58%の収率で得た。(光学純度:28%ee)
【産業上の利用可能性】
【0040】
本発明は、相間移動触媒を用いた不斉触媒反応に利用することができる。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
下記式(1)で表されるスピロキラリティ−を有する第4級アンモニウム塩。
【化1】


(式中、Rは水素、炭素数1〜6のアルキル基、置換もしくは無置換のアラルキル基、置換もしくは無置換のアリール基、またはメンチルオキシメチル基を表す。Xはハロゲン原子である。)
【請求項2】
式(1)におけるRがメンチルオキシメチル基であることを特徴とする請求項1記載の第4級アンモニウム塩。
【請求項3】
式(1)におけるRが水素であることを特徴とする請求項1記載の第4級アンモニウム塩。
【請求項4】
式(1)におけるXが臭素であることを特徴とする請求項1〜3記載の第4級アンモニウム塩。
【請求項5】
下記式(2)
【化2】


(式中、Xはハロゲンを意味する。)
で表される光学活性なハロゲノメチルメンチルエーテルを、塩基存在下、3−ヒドロキシフタル酸無水物と反応させ、下記式(3)
【化3】


で表される酸無水物を有する光学活性な化合物とし、次いで該エーテル体の無水カルボン酸部位を還元により下記式(4)
【化4】


で表されるジオールを有する光学活性な化合物とし、次いで該ジオールの水酸基をハロゲン化し、下記式(5)
【化5】


(式中、Xはハロゲンを意味する。)
で表される光学活性な化合物とし、次いで該光学活性な化合物(5)をアンモニア水と反応させ、下記式(6)
【化6】


(式中、Xはハロゲンを意味する。)
で表されるスピロキラリティ−を有する第4級アンモニウム塩(6)のジアステレオマー混合物の製法。
【請求項6】
下記式(2)
【化7】


(式中、Xはハロゲンを意味する。)
で表される光学活性なハロゲノメチルメンチルエーテルを、塩基存在下、3−ヒドロキシフタル酸無水物と反応させ、下記式(3)
【化8】


で表される酸無水物を有する光学活性な化合物とし、次いで該エーテル体の無水カルボン酸部位を還元により下記式(4)
【化9】


で表されるジオールを有する光学活性な化合物とし、次いで該ジオールの水酸基をハロゲン化し、下記式(5)
【化10】


(式中、Xはハロゲンを意味する。)
で表される光学活性な化合物とし、次いで該光学活性な化合物(5)をアンモニア水と反応させ、下記式(6)
【化11】


(式中、Xはハロゲンを意味する。)
で表されるスピロキラリティ−を有する第4級アンモニウム塩(6)のジアステレオマー混合物を得た後、該混合物を分割してなるスピロキラリティ−を有する第4級アンモニウム塩(6)の製法。
【請求項7】
下記式(2)
【化12】


(式中、Xはハロゲンを意味する。)
で表される光学活性なハロゲノメチルメンチルエーテルを、塩基存在下、3−ヒドロキシフタル酸無水物と反応させ、下記式(3)
【化13】


で表される酸無水物を有する光学活性な化合物とし、次いで該エーテル体の無水カルボン酸部位を還元により下記式(4)
【化14】


で表されるジオールを有する光学活性な化合物とし、次いで該ジオールの水酸基をハロゲン化し、下記式(5)
【化15】


(式中、Xはハロゲンを意味する。)
で表される光学活性な化合物とし、次いで該光学活性な化合物(5)をアンモニア水と反応させ、下記式(6)
【化16】


(式中、Xはハロゲンを意味する。)
で表されるスピロキラリティ−を有する第4級アンモニウム塩(6)のジアステレオマー混合物を得た後、該混合物を分割し、スピロキラリティ−を有する第4級アンモニウム塩(6)を得、次いで、酸性溶液を作用させ、メンチルオキシメチル基を除去することを特徴とする下記式(7)
【化17】


(式中、Xはハロゲンを意味する。)
で表されるスピロキラリティ−を有する第4級アンモニウム塩(7)の製法。
【請求項8】
下記式(2)
【化18】


(式中、Xはハロゲンを意味する。)
で表される光学活性なハロゲノメチルメンチルエーテルを、塩基存在下、3−ヒドロキシフタル酸無水物と反応させ、下記式(3)
【化19】


で表される酸無水物を有する光学活性な化合物とし、次いで該エーテル体の無水カルボン酸部位を還元により下記式(4)
【化20】


で表されるジオールを有する光学活性な化合物とし、次いで該ジオールの水酸基をハロゲン化し、下記式(5)
【化21】


(式中、Xはハロゲンを意味する。)
で表される光学活性な化合物とし、次いで該光学活性な化合物(5)をアンモニア水と反応させ、下記式(6)
【化22】


(式中、Xはハロゲンを意味する。)
で表されるスピロキラリティ−を有する第4級アンモニウム塩(6)のジアステレオマー混合物を得た後、該混合物を分割し、スピロキラリティ−を有する第4級アンモニウム塩(6)を得、次いで、酸性溶液を作用させ、メンチルオキシメチル基を除去し、下記式(7)
【化23】


(式中、Xはハロゲンを意味する。)
で表されるスピロキラリティ−を有する第4級アンモニウム塩(7)を得、次いで、該第4級アンモニウム塩(7)を置換もしくは無置換アラルキルハライドと作用させることを特徴とする、下記式(8)
【化24】


(式中、Rは炭素数1〜6のアルキル基、置換もしくは無置換のアラルキル基、を表す。Xはハロゲンを意味する。)
で表されるスピロキラリティーを有する第4級アンモニウム塩の製法。
【請求項9】
不斉触媒反応において、請求項1〜4記載の式(1)で表されるスピロキラリティーを有する第4級アンモニウム塩の相間移動触媒としての使用。
【請求項10】
不斉触媒反応が、不斉アルキル化反応であることを特徴とする請求項9記載の使用。
【請求項11】
不斉触媒反応が、不斉マイケル付加反応であることを特徴とする請求項9記載の使用。
【請求項12】
不斉マイケル付加反応のマイケル受容体がα、β―不飽和エステルである請求項11記載の使用。


【公開番号】特開2006−76911(P2006−76911A)
【公開日】平成18年3月23日(2006.3.23)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2004−261766(P2004−261766)
【出願日】平成16年9月9日(2004.9.9)
【新規性喪失の例外の表示】特許法第30条第1項適用申請有り 平成16年3月11日 社団法人日本化学会発行の「日本化学会第84春季年会 講演予稿集2」に発表
【出願人】(000108993)ダイソー株式会社 (229)
【Fターム(参考)】