説明

スピーカキャビネット

【課題】低音域での再生周波数帯域が広く、低音域から高音域まで伸びやかな再生音を再生することができるバスレフ方式のスピーカ装置に最適なスピーカキャビネットを提供する。
【解決手段】スピーカキャビネットCのスピーカユニットが取り付けられるバッフル板1に、スピーカユニットから再生される再生音の低音域を増強するための第1の共振ポート8を形成するとともに、該第1の共振ポート8に加えて、共振周波数が第1の共振ポート8と異なり、かつ、互いに異なる第2の及び第3の共振ポート9、10を形成した。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、バスレフ方式のスピーカ装置に最適なスピーカキャビネットに関する。
【背景技術】
【0002】
従来から、本棚等の狭い場所に設置する小型のスピーカ装置として、フルレンジタイプのスピーカユニットを用いたブックシェルフ型のスピーカ装置が知られている。
【0003】
このスピーカ装置は、装置全体が小型に形成されているので、スピーカキャビネットは勿論のこと、該スピーカキャビネットに取り付けられるフルレンジタイプのスピーカユニットも小型に形成されていて、該スピーカユニットのスピーカコーンの口径も小さく形成されている。一般に、このような小口径のスピーカコーンは、高音の再生には有利であるが、低音の再生には向いていない。
【0004】
そのために、前記小型のスピーカユニットを有するスピーカ装置では、スピーカユニットが取り付けられたバッフル板と、該バッフル板の上端に連続した上板と、前記バッフル板の下端に連続した下板と、前記バッフル板の左右端にそれぞれ連続した側板とから構成されるキャビネット本体と、該キャビネット本体の背面開口部を塞ぐ背板とからなるスピーカキャビネットのバッフル板に開口を形成し、該開口にキャビネット本体の内部に延びるダクトを取り付けて、1つの共振ポートを形成している。そして、前記共振ポートにより前記スピーカユニットの背面から放射される音を特定の周波数で共振させ、キャビネット本体内を通り共振ポートを通って放射される音の位相を反転させて、スピーカユニットの正面から放射される音の位相に合わせて低音域を増強するようにしたバスレフ方式のスピーカ装置が提案されている。(例えば、特許文献1参照)。
【特許文献1】特開2000−217178号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかしながら、前記バスレフ方式のスピーカ装置では、1つの共振ポートでの共振を利用するためにスピーカ装置の共振周波数が単一となり、そのために、スピーカユニットから再生される音波の一定出力に対して共振周波数帯域の前後の音波の音圧レベルが急激に低くなって、低音域での再生周波数帯域が広いスピーカ装置を得ることが難しいという問題があった。
【0006】
本発明は、かかる問題を解決することを目的とし、低音域での再生周波数帯域が広く、低音域から高音域まで伸びやかな再生音を再生することができるバスレフ方式のスピーカ装置に最適なスピーカキャビネットを提供することを目的としている。
【課題を解決するための手段】
【0007】
前記目的を達成するために、請求項1に記載の発明は、スピーカユニットが取り付けられるバッフル板と、該バッフル板の上端に連続した上板と、前記バッフル板の下端に連続した下板と、前記バッフル板の左右端にそれぞれ連続した側板とから構成されるキャビネット本体と、該キャビネット本体の背面開口部を塞ぐ背板とを備え、前記バッフル板が、低音域を増強するための第1の共振ポートを備えたスピーカキャビネットにおいて、前記バッフル板が、共振周波数が前記第1の共振ポートと異なり、かつ、互いに異なる第2及び第3の共振ポートを備えていることを特徴とするスピーカキャビネットである。
【0008】
請求項2に記載の発明は、請求項1記載の発明において、前記第2及び第3の共振ポートが、それぞれ、前記バッフル板に形成された四角形状の開口と、該開口に取り付けられて前記キャビネット本体の内部に延びるダクトとから構成され、前記ダクトの一部が、前記キャビネット本体及び背板の壁面により構成されていることを特徴とするスピーカキャビネットである。
【0009】
請求項3に記載の発明は、請求項2記載の発明において、前記第2及び第3の共振ポートの開口が、並んで構成されるとともに、該並んだ開口の間に仕切板が設けられ、前記第2及び第3の共振ポートのダクトの一部が、前記仕切板の壁面により構成されていることを特徴とするスピーカキャビネットである。
【発明の効果】
【0010】
請求項1に記載された発明によれば、スピーカユニットが取り付けられるバッフル板と、該バッフル板の上端に連続した上板と、前記バッフル板の下端に連続した下板と、前記バッフル板の左右端にそれぞれ連続した側板とから構成されるキャビネット本体と、該キャビネット本体の背面開口部を塞ぐ背板とを備え、前記バッフル板が、低音域を増強するための第1の共振ポートを備えたスピーカキャビネットにおいて、前記バッフル板が、共振周波数が前記第1の共振ポートと異なり、かつ、互いに異なる第2及び第3の共振ポートを備えているので、前記第1の共振ポートでスピーカユニットの背面から放射される音を特定の周波数で共振させ、キャビネット本体内を通り第1の共振ポートを通って放射される音の位相を反転させて、スピーカユニットの正面から放射される音の位相に合わせて、所望の低音域を増強させることができ、また、共振周波数が前記第1の共振ポートと異なり、かつ、互いに異なる第2及び第3の共振ポートにより、該第2及び第3の共振ポートでも、それぞれ、スピーカユニットの背面から放射される音を特定の周波数で共振させて、キャビネット本体内を通り第2及び第3の共振ポートを通って放射される音の位相を反転させて、スピーカユニットの正面から放射される音の位相に合わせて低音域を増強させることができ、そのために、前記第1の共振ポートにより増強された低音域と異なる周波数帯の低音域を増強させることができる。そして、前記第1の共振ポートで低音域が増強された再生音に、前記第2及び第3の共振ポートで第1の共振ポートと異なる低音域が増強された再生音が合成されることにより、第1の共振ポートで増強された低音域の前後の音波の音圧レベルを第2及び第3の共振ポートでコントロールすることができ、そのために、低音域での再生周波数帯域を広くすることができ、低音から高音まで伸びやかな再生音を再生することができるスピーカ装置とすることができる。
【0011】
また、前記第1、第2及び第3の共振ポートにより、スピーカ装置の低音域の再生音を広範囲にわたって増強させることができるので、小型のスピーカキャビネットでも大型のスピーカ装置並の豊かな低音を再生することができ、しかも、従来のバスレフ方式のスピーカ装置と比べてもより小型のスピーカキャビネットで大型機並の豊かな低音を再生することができ、そのために、スピーカキャビネット全体をより小型に形成することができる。
【0012】
請求項2に記載された発明によれば、前記第2及び第3の共振ポートが、それぞれ、前記バッフル板に形成された四角形状の開口と、該開口に取り付けられて前記キャビネット本体の内部に延びるダクトとから構成され、前記ダクトの一部が、前記キャビネット本体及び背板の壁面により構成されているので、キャビネット本体の内部に第1の共振ポートとは別に第2及び第3の共振ポートを形成する場合に、該第2及び第3の共振ポートのダクトをキャビネット本体と背板との壁面を利用したキャビネット本体の内部に延びるダクトとして構成することにより、キャビネット本体の内部を複数の区画壁で複雑に加工することなく十分な長さを有するダクトを簡単に形成することができ、ダクトを形成する際の加工コストの高騰を防ぐことができるとともに、小型のスピーカキャビネットであっても十分な有効長を有するダクトを形成することができる。
【0013】
請求項3に記載された発明によれば、前記第2及び第3の共振ポートの開口が、並んで構成されるとともに、該並んだ開口の間に仕切板が設けられ、前記第2及び第3の共振ポートのダクトの一部が、前記仕切板の壁面により構成されているので、キャビネット本体の下板に平行な水平区画壁と、背板に平行な垂直区画壁とを設けて、キャビネット本体と背板との壁面を利用したバッフル板からキャビネット本体の内部に延びる側面視L字状のダクト空間を形成し、該ダクト空間を前記仕切板で仕切って仕切板の壁面を利用したダクトとして構成することにより、十分な長さを有するダクトをより簡単に形成することができ、ダクトを形成する際の加工コストの高騰をより防ぐことができるとともに、小型のスピーカキャビネットであっても十分な有効長を有するダクトを形成することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0014】
次に、本発明の実施形態を、図面を用いて説明する。図1は、本発明の一実施形態のスピーカキャビネットCを示す正面図、図2は同背面図、図3及び図4は図1の側断面図である。
【0015】
スピーカキャビネットCは、図示しないスピーカユニットが取り付けられるバッフル板と1、該バッフル板1の上端1aに連続した上板2と、前記バッフル板1の下端1bに連続した下板3と、前記バッフル板1の左右端1c、1dにそれぞれ連続した側板4、4とから構成されるキャビネット本体5と、該キャビネット本体5の背面開口部5aを塞ぐ背板6とを備えた縦長の直方体状の箱体として構成されている。前記スピーカキャビネットCの材料としては、楓、ブナ、白樺などの木材や、海底に沈んでいたサルベージ材などが用いられ、前記スピーカキャビネットCを形成するには、前記バッフル板1に上板2、下板3及び側板4、4を接着剤などの固着手段で固着してキャビネット本体5を形成し、該キャビネット本体5の背面に螺子や釘などの固着手段によって背板6を着脱可能に取り付けて形成するが、背板6を接着剤などの固着手段でキャビネット本体5に固定的に取り付けて形成するようにしても良い。
【0016】
前記バッフル板1の正面視上方には、図1に示すように、図示しないスピーカユニットが取り付けられるスピーカ取付孔7が形成され、該スピーカ取付孔7には、例えば、フルレンジタイプのスピーカユニットが取り付けられるようになっている。
【0017】
前記バッフル板1の前記スピーカ取付孔7の下方には、前記フルレンジタイプのスピーカユニットから再生される再生音の低音域を増強するための第1の共振ポート8が形成されている。該第1の共振ポート8は、図1及び図3に示すように、前記バッフル板1に形成された円形状の開口8aと、該開口8aに取り付けられて前記キャビネット本体5の内部に延びる円柱状のダクト8bとから構成され、該ダクト8bは、前記開口8a部分のバッフル板1の背面に塩化ビニル管などの円柱管を接着剤などの固着手段により固着して形成している。なお、前記第1の共振ポート8を、四角形状の開口と、該開口に取り付けられた角柱状のダクトとで構成しても良く、また、2つ以上の開口と、該開口に取り付けられた2つ以上のダクトとから構成するようにしても良い。
【0018】
前記バッフル板1の正面視下方には、図1に示すよう、第2及び第3の共振ポート9、10が形成されている。前記バッフル板1には、横長の四角形状の開口11が形成されて、該開口11の左右端11a、11b部分のバッフル板1の背面には、図2に示すようにそれぞれ、キャビネット本体5の下板3に垂直で、前記開口11の上端11cまでの高さh1を有してバッフル板1の背面からキャビネット本体5の内部に延びる水平部12aと、該水平部12aの延出端部において上方に立ち上がり形成された垂直部12bとから構成されたL字状の支持板12、12がキャビネット本体5の側板4、4の内壁に密着して取り付けられている。
【0019】
前記支持板12、12の水平部12a、12aの間には、前記開口11の上端11cに沿ってバッフル板1の背面からキャビネット本体5の内部に延びる水平区画壁13が下板3に平行になるように取り付けられている。また、前記水平区画壁13の延出端部には、前記背板6から所定距離離れて背板6に平行な垂直区画壁14が立設されている。これにより、前記キャビネット本体5の内部には、図3に示すように、側面視L字状のダクト空間15が形成されている。なお、前記支持板12、12を設けずに、キャビネット本体5の側板4、4の間に直接水平区画壁13を取り付けるようにしても良い。
【0020】
前記支持板12、12の間には、図2及び図3に示すように、支持板12と同一形状の仕切板16が設けられている。すなわち、前記仕切板16は、前記キャビネット本体5の下板3に垂直で、前記開口11の上端11cまでの高さh1を有して前記バッフル板1の背面からキャビネット本体5の内部に延びる水平部16aと、該水平部16aの延出端部において上方に立ち上がり形成された垂直部16bとから構成されたL字状に形成されている。そして、前記仕切板16により、前記開口11が2つの開口9a、10aに仕切られるとともに、前記ダクト空間15が2つのダクト9b、10bに仕切られて、前記第2及び第3の共振ポート9、10をそれぞれ構成する開口9a、10aが形成されるとともに、該開口9a、10aにそれぞれ取り付けられてキャビネット本体5の内部に延びる角柱状で側面視L字状のダクト9b、10bが形成されている。
【0021】
これにより、前記ダクト9b、10bは、キャビネット本体5の下板3、背板6、支持板12、水平区画壁13、垂直区画壁14及び仕切板16の壁面を利用して形成されるようになっている。なお、前記支持板12、水平区画壁13、垂直区画壁14及び仕切板16のキャビネット本体5への取り付けは、接着剤などの固着手段で固着して行われる。
【0022】
後記するように、前記第2及び第3の共振ポート9、10の開口9a、10aのうち第2の共振ポート9の開口9aが第3の共振ポート10の開口10aより横幅が僅かに大きく形成され、第2の共振ポート9のダクト9bの長さが第3の共振ポート10のダクト10bの長さより長く形成されている。このために、前記仕切板16により仕切られるダクト空間15を形成する垂直区画壁14の長さも、前記第2の共振ポート9のダクト9bに該当する壁部14aが前記第3の共振ポート10のダクト10bに該当する壁部14bより長く形成されている。
【0023】
また、前記仕切板16の前記開口11に臨む先端部にはテーパ部16cが形成され、前記ダクト空間15を形成する水平区画壁13の延出端部にもテーパ部13aが形成され、さらに、前記ダクト9b、10bを形成する下板3と背板6との角部にもテーパ部17a、17bが形成されている。
【0024】
次に、前記第1の共振ポート8と、第2及び第3の共振ポート9、10とについて説明する。一般に、フルレンジタイプのスピーカユニットを用いた小型のスピーカ装置においては、再生音の低音域を増強するために、スピーカユニットが取り付けられたキャビネット本体のバッフル板に共振ポートを形成し、スピーカユニットの背面から放射される音を特定の周波数で共振させ、キャビネット本体内を通り共振ポートを通って放射される音の位相を反転させて、スピーカユニットの正面から放射される音の位相に合わせるようにしたバスレフ方式のスピーカ装置が採用されている。
【0025】
前記共振ポートは、バッフル板に形成された開口と該開口に接続されたダクトとから構成されて、前記共振ポートの共振周波数は、スピーカユニットの最低共振周波数fの近くにチューニングしたものが望ましいと考えられている。また、前記共振ポートの共振周波数は、スピーカキャビネットの内容積と、共振ポートを構成するダクトの断面積と、該ダクトの長さとによって決まり、ダクトの断面積が大きい方が共振周波数が高くなるとともに、ダクトの長さが長い方が共振周波数が低くなることが知られている。さらに、前記ダクトの断面積は、スピーカユニットの振動板面積の1/2が目安となっている。
【0026】
従って、本発明の第1の共振ポート8は、前記バッフル板1に取り付けられる図示しないフルレンジタイプのスピーカユニットから再生される再生音の低音域を増強するために設けられている。具体的には、前記キャビネット本体5の内容積が90l、前記第1の共振ポート8を構成する円形状の開口8aの直径が82mm(図1の8R)、前記開口8aに接続されたダクト8bのバッフル板1の正面からの長さが93mm(図3の8L)に形成されていて、これらの数値は、バッフル板1に取り付けられるスピーカユニットの最低共振周波数fから決定されている。
【0027】
本発明においては、前記バッフル板1に、前記第1の共振ポート8に加えて、共振周波数が前記第1の共振ポート8と異なり、かつ、互いに異なる第2の及び第3の共振ポート9、10が形成されている。本発明者らは、前記第1の共振ポート8で低音域が増強された再生音に、前記第2及び第3の共振ポート9、10で第1の共振ポート8と異なる低音域が増強された再生音が合成されることにより、第1の共振ポート8で増強された低音域の前後の音波の音圧レベルを第2及び第3の共振ポート9、10でコントロールすることができ、そのために、スピーカ装置の低音域での再生周波数帯域を広くすることができることを見出して、前記スピーカユニットが取り付けられるバッフル板1に、共振周波数が前記第1の共振ポート8と異なり、かつ、互いに異なる第2の及び第3の共振ポート9、10を形成したものである。
【0028】
本発明者らは、前記第1の共振ポート8のダクトの断面積8Sに所定の定数(1〜1.3)を乗じたものが前記第2の共振ポート9のダクトの断面積9Sと前記第3の共振ポート10のダクトの断面積10Sとを加算したもので、また、第2の共振ポート9のダクトの断面積9Sと第3の共振ポート10のダクトの断面積10Sとが一定の割合(6:5)であり、該ダクトの断面積9S、10Sにそれぞれ所定の定数(第2の共振ポート9は1.093、第3の共振ポート10は1.169)を乗じると望ましいダクトの長さ9L、10Lが得られることを見出して、第2の及び第3の共振ポート9、10を形成した。
【0029】
また、前記第2の及び第3の共振ポート9、10を形成する際に、本発明者らは、図1及び図2に示すように、第2及び第3の共振ポート9、10を、それぞれ、バッフル板1に形成された四角形状の開口9a、10aと、該開口9a、10aに取り付けられてキャビネット本体5の内部に延びるダクト9b、10bとで構成し、しかも、第2及び第3の共振ポート9、10の開口9a、10aを並んで構成するとともに、該並んだ開口9a、10aの間に仕切板16を設けることにより、キャビネット本体5の下板3に平行な水平区画壁13と、背板6に平行な垂直区画壁14とを設けて、キャビネット本体5と背板6との壁面を利用したキャビネット本体5の内部に延びる側面視L字状のダクト空間15を形成し、該ダクト空間15を前記仕切板16で仕切って、キャビネット本体5、背板6及び仕切板16の壁面を利用した角柱状のダクト9b、10bとして構成することが、キャビネット本体5の内部を複数の区画壁で複雑に加工することなく十分な長さを有するダクトを簡単に形成することができることを見出して、第2及び第3の共振ポート9、10を形成した。
【0030】
具体的には、第2の共振ポート9の開口9aの横幅が86mm(図1の9w)、第3の共振ポート10の開口10aの横幅が71mm(図1の10w)、前記開口9a、10aの高さがともに43mm(図1のh1)に形成されている。また、前記したように、第2の及び第3の共振ポート9、10のダクト9b、10bの断面積9S、10S(図2参照)にそれぞれ所定の定数を乗じて得られるダクト9b、10bの各長さ9L、10Lは、前記ダクト9bの長さ9Lが402mm(図3の9Lと9Lを加算したもの)、前記ダクト10bの長さ10Lが359mm(図4の10Lと10Lを加算したもの)に形成されている。
【0031】
本発明においては、スピーカユニットが取り付けられるバッフル板1が、低音域を増強するための第1の共振ポート8に加えて、共振周波数が前記第1の共振ポート8と異なり、かつ、互いに異なる第2及び第3の共振ポート9、10を備えているので、第1の共振ポート8でスピーカユニットの背面から放射される音を特定の周波数で共振させ、キャビネット本体5内を通り第1の共振ポート8を通って放射される音の位相を反転させて、スピーカユニットの正面から放射される音の位相に合わせて、所望の低音域を増強させることができるだけでなく、共振周波数が第1の共振ポート8と異なり、かつ、互いに異なる第2及び第3の共振ポート9、10でも、それぞれ、スピーカユニットの背面から放射される音を特定の周波数で共振させて、キャビネット本体5内を通り第2及び第3の共振ポート9、10を通って放射される音の位相を反転させて、スピーカユニットの正面から放射される音の位相に合わせて低音域を増強させることができ、そのために、第1の共振ポート8により増強された低音域と異なる周波数帯の低音域を増強させることができる。そして、前記第1の共振ポート8で低音域が増強された再生音に、前記第2及び第3の共振ポート9、10で第1の共振ポート8と異なる低音域が増強された再生音が合成されることにより、第1の共振ポート8で増強された低音域の前後の音波の音圧レベルを第2及び第3の共振ポート9、10でコントロールすることができ、そのために、低音域での再生周波数帯域を広くすることができ、低音から高音まで伸びやかな再生音を再生することができるスピーカ装置とすることができる。
【0032】
また、前記第1、第2及び第3の共振ポート8、9、10により、スピーカ装置の低音域の再生音を広範囲にわたって増強させることができるので、小型のスピーカキャビネットでも大型のスピーカ装置並の豊かな低音を再生することができ、しかも、従来のバスレフ方式のスピーカ装置と比べてもより小型のスピーカキャビネットで大型機並の豊かな低音を再生することができ、そのために、スピーカキャビネット全体をより小型に形成することができる。
【0033】
本発明においては、前記第2及び第3の共振ポート9、10が、それぞれ、前記バッフル板1に形成された四角形状の開口9a、10aと、該開口9a、10aに取り付けられてキャビネット本体5の内部に延びるダクト9b、10bとから構成され、前記ダクト9b、10bの一部が前記キャビネット本体5及び背板6の壁面により構成されているので、キャビネット本体5の内部に第1の共振ポート8とは別に第2及び第3の共振ポート9、10を形成する場合に、該第1及び第2の共振ポート9、10のダクト9b、10bをキャビネット本体5と背板6との壁面を利用したキャビネット本体5の内部に延びるダクトとして構成することにより、キャビネット本体5の内部を複数の区画壁で複雑に加工することなく十分な長さを有するダクトを簡単に形成することができ、ダクトを形成する際の加工コストの高騰を防ぐことができるとともに、小型のスピーカキャビネットであっても十分な有効長を有するダクトを形成することができる。
【0034】
本発明においては、前記第2及び第3の共振ポート9、10の開口9a、10aが並んで構成されるとともに、該並んだ開口9a、10aの間に仕切板16が設けられ、前記第2及び第3の共振ポート9、10のダクト9b、10bの一部が前記仕切板16の壁面により構成されているので、キャビネット本体5の下板3に平行な水平区画壁13と、背板6に平行な垂直区画壁14とを設けて、キャビネット本体5と背板6との壁面を利用したバッフル板1からキャビネット本体5の内部に向けて延びる側面視L字状のダクト空間15を形成し、該ダクト空間15を仕切板16で仕切って、キャビネット本体5、背板6及び仕切板16の壁面を利用したダクト9b、10bとして構成することにより、十分な長さを有するダクトをより簡単に形成することができ、ダクトを形成する際の加工コストの高騰をより防ぐことができるとともに、小型のスピーカキャビネットであっても十分な有効長を有するダクトを形成することができる。
【0035】
なお、本発明は、前記した実施形態に限定されるものではなく、本発明の骨子を逸脱しない範囲で種々変形することができる。すなわち、前記した実施形態では、第2及び第3の共振ポート9、10を、四角形状の開口9a、10aと、該開口9a、10aに取り付けられてキャビネット本体5の内部に延びるダクト9b、10bとで構成したが、前記第2及び第3の共振ポート9、10を、円形状の開口と該開口に取り付けられたダクトとで構成しても良い。要は、第2及び第3の共振ポート9、10のダクトの断面積が一定の割合で形成され、該ダクトの断面積に所定の定数を乗じて得られる長さを有するダクトであれば、その形状は問題でない。
【0036】
また、前記した実施形態では、前記第2及び第3の共振ポート9、10の開口9a、10aをバッフル板1の正面視下方に並んで形成したが、これはスピーカキャビネットCのデザイン上の安定感を得るためと、第2及び第3の共振ポート9、10のダクト9b、10bをより少ない工数で形成するためであり、前記開口9a、10aをバッフル板1の上方または側方に形成してもよく、また、前記開口9a、10aを離して形成してもよい。
【図面の簡単な説明】
【0037】
【図1】本発明の一実施形態のスピーカキャビネットを示す正面図である。
【図2】図1のスピーカキャビネットの背面図である。
【図3】図1のスピーカキャビネットのA−A線側断面図である。
【図4】図1のスピーカキャビネットのB−B線側断面図である。
【符号の説明】
【0038】
C スピーカキャビネット
1 バッフル板
2 上板
3 下板
4 側板
5 キャビネット本体
6 背板
7 スピーカ取付孔
8 第1の共振ポート
8a 開口
8b ダクト
9 第2の共振ポート
9a 開口
9b ダクト
10 第3の共振ポート
10a 開口
10b ダクト
11 開口
12 支持板
12a 水平部
12b 垂直部
13 水平区画壁
14 垂直区画壁
15 ダクト空間
16 仕切板
16a 水平部
16b 垂直部

【特許請求の範囲】
【請求項1】
スピーカユニットが取り付けられるバッフル板と、該バッフル板の上端に連続した上板と、前記バッフル板の下端に連続した下板と、前記バッフル板の左右端にそれぞれ連続した側板とから構成されるキャビネット本体と、該キャビネット本体の背面開口部を塞ぐ背板とを備え、前記バッフル板が、低音域を増強するための第1の共振ポートを備えたスピーカキャビネットにおいて、
前記バッフル板が、共振周波数が前記第1の共振ポートと異なり、かつ、互いに異なる第2及び第3の共振ポートを備えていることを特徴とするスピーカキャビネット。
【請求項2】
前記第2及び第3の共振ポートが、それぞれ、前記バッフル板に形成された四角形状の開口と、該開口に取り付けられて前記キャビネット本体の内部に延びるダクトとから構成され、前記ダクトの一部が、前記キャビネット本体及び背板の壁面により構成されていることを特徴とする請求項1記載のスピーカキャビネット。
【請求項3】
前記第2及び第3の共振ポートの開口が、並んで構成されるとともに、該並んだ開口の間に仕切板が設けられ、前記第2及び第3の共振ポートのダクトの一部が、前記仕切板の壁面により構成されていることを特徴とする請求項2記載のスピーカキャビネット。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【公開番号】特開2007−184841(P2007−184841A)
【公開日】平成19年7月19日(2007.7.19)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2006−2649(P2006−2649)
【出願日】平成18年1月10日(2006.1.10)
【出願人】(501295693)株式会社アイ・ビー・アイ (6)
【Fターム(参考)】