説明

スピーカースタンド

【課題】 キャビネットを備えるスピーカーシステムを設置するスピーカースタンドに関し、スピーカーシステムで生じる反作用力を利用して、スピーカーシステムからの再生音を改善するスピーカースタンドを提供する。
【解決手段】 本発明のスピーカースタンドは、スピーカーを載せる載置部と、台座部と、載置部と台座部とを連結する脚部と、を備え、脚部が、弾性を有する板状部材を厚み方向に屈曲した弾性支持脚により構成され、載置部が、弾性支持脚の弾性変形に伴って一の軸方向に揺動する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、キャビネットを備えるスピーカーシステムを、使用者が再生音を聴取するのに適する位置に設置するスピーカースタンドに関する。
【背景技術】
【0002】
従来のスピーカースタンドにおいては、設置されるスピーカーシステム(以下において、スピーカーと略する場合がある)からの再生音を改善することを目的にして、キャビネットを強固に支持することにより、スピーカーで生じる反作用力による振動を抑制しようとするものがある(特許文献1)。また、強固に支持した場合であっても、スピーカーシステムでの反作用力によって生じる振動をスピーカースタンドおよび設置される床面に伝搬しないようにすることを目的として、スピーカースタンドに緩衝材を設けるものや、スピーカースタンドの構造において、振動が伝搬しにくい材料を使用するものがある(特許文献2)。
【0003】
また、一方で、従来のスピーカースタンドにおいては、防振を図るためにキャビネットを磁石の吸引力もしくは反発力により浮上させ、いわばスピーカーシステムを軟らかく支持することにより、防振ならびに音響特性の改善を図ろうとするものや、または、スピーカーシステムとスピーカースタンドとの間の設置面に回転可能な車を取り付けて、反作用力を吸収しようとするものがある(特許文献3)。
【0004】
【特許文献1】特開平7−7778号公報 (第1図)
【特許文献2】特開平6−125591号公報 (第1図)
【特許文献3】特開平7−174190号公報 (第1図)
【0005】
しかしながら、従来技術のスピーカースタンドでは、スピーカーシステムからの再生音を改善する点において、十分ではないという問題があった。スピーカーのキャビネットとスピーカースタンドとに生じる振動はそれぞれの筐体の強度や材料により相互に影響を及ぼす関係であり、強固に支持すること、もしくは、軟らかく支持することのみでは、振動の抑制および伝搬の防止を実現できず、また、スピーカーシステムで生じる反作用力を十分に吸収できない。
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
本発明は、上記の従来技術が有する問題を解決するためになされたものであり、その目的は、キャビネットを備えるスピーカーシステムを設置するスピーカースタンドに関し、スピーカーシステムで生じる反作用力を利用して、スピーカーシステムからの再生音を改善するスピーカースタンドを提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明のスピーカースタンドは、スピーカーを載せる載置部と、台座部と、載置部と台座部とを連結する脚部と、を備え、脚部が、弾性を有する板状部材を厚み方向に屈曲した弾性支持脚により構成され、載置部が、弾性支持脚の弾性変形に伴って一の軸方向に揺動する。
【0008】
好ましくは、本発明のスピーカースタンドは、載置部に所定範囲内の重量を備えるスピーカーを載せたときに、載置部が揺動する一の軸方向における第1の揺動距離が、一の軸方向と直交する他の軸方向における第2の揺動距離よりも長い。
【0009】
また、好ましくは、本発明のスピーカースタンドは、載置部に所定範囲内の重量を備えるスピーカーを載せたときに、載置部が揺動する一の軸方向における第1の揺動共振周波数が、1.0Hz以上10.0Hz以下であり、かつ、一の軸方向と直交する他の軸方向における第2の揺動共振周波数が、第1の揺動共振周波数よりも高い周波数である。
【0010】
さらに好ましくは、本発明のスピーカースタンドは、脚部の弾性支持脚と、載置部と、台座部とが、弾性を有する板状部材を厚み方向に屈曲して一体に構成されている。
【0011】
さらに好ましくは、上記の本発明のスピーカースタンドは、脚部が、柱状部材から構成される支柱脚をさらに備え、支柱脚の一方端が弾性支持脚の載置部に固着され、支柱脚の他方端が弾性支持脚の台座部に固着される。
【0012】
さらに好ましくは、脚部の弾性支持脚が、板状部材の厚み方向に貫通孔を備え、貫通孔を支柱脚が貫通する。
【0013】
さらに好ましくは、脚部の弾性支持脚の貫通孔において、弾性支持脚と、支柱脚とが、緩衝部材を狭着する。
【0014】
さらに好ましくは、脚部が、支持脚を、載置部が揺動する一の軸方向における弾性が異なる他の支持脚に交換して、固着可能に構成されている、
【0015】
また、さらに好ましくは、本発明のスピーカースタンドは、弾性支持脚の載置部と支持脚とを固着する第1固着部材と、弾性支持脚の台座部と支持脚とを固着する第2固着部材と、をさらに備え、第1固着部材および第2固着部材が、載置部が揺動する一の軸方向に規定される長孔を有し、他の第2支持脚を固着可能に構成されている。
【0016】
さらに好ましくは、第1固着部材および第2固着部材と連結する第2支持脚を更に備え、第2支持脚が、長孔を介して第1固着部材および第2固着部材と連結する。
【0017】
さらに好ましくは、第2支持脚が、第1固着部材および第2固着部材ならびに支持脚と固着する固定部材と、長孔を介して第1固着部材および第2固着部材と連結する可動部材と、を備え、可動部材が第1固着部材および第2固着部材の長孔と連結する位置により、第2支持脚の載置部が揺動する一の軸方向における弾性が変化する。
【0018】
以下、本発明の作用について説明する。
【0019】
本発明のスピーカースタンドは、スピーカーを載せる載置部と、設置する床面に対応する台座部と、載置部と台座部とを連結する脚部とを備え、脚部が、弾性を有する板状部材を厚み方向に屈曲した弾性支持脚により構成される。脚部を構成する弾性を有する板状部材とは、例えば、厚みが一様な冷間圧延鋼板の金属板である。板厚に対して幅広で長い板状部材を厚み方向に屈曲することにより、厚み方向により規定される一方向、つまり、板状部材を屈曲した方向に弾性を備える脚部が構成される。その結果、スピーカーを載せる載置部は、弾性支持脚の弾性変形に伴って一の軸方向に揺動可能となる。
【0020】
すなわち、スピーカースタンドの弾性支持脚は、屈曲前の長い板状部材の厚み方向が3次元におけるY軸方向(板状部材の幅方向がX軸方向、長さ方向がZ軸方向)である場合には、板状部材を屈曲した結果、屈曲した方向であるY軸方向には揺動しやすく、Y軸方向と直交する他の軸方向(特にX軸方向)には揺動しにくい形状となる。具体的には、スピーカーを載せる載置部と台座部とが一体に構成されている弾性支持脚は、側面であるX軸方向から見た場合に、例えば「Z」型の形状や、「匚」型の形状や、ギリシア語アルファベットの大文字「シグマ」型の形状が備わっていて、スピーカーを載せる載置部および設置されたスピーカーシステムは、板状部材の弾性によりY軸方向に揺動可能となる。台座部が床面に接するとスピーカーシステムとスピーカースタンドの重量によって静止摩擦力が働き、台座部はほぼ固定されて動かない状態となるからである。なお、ここでは、載置部が揺動する距離範囲は非常に短いので、弾性支持脚の動作が、載置部が台座部を支点として軸回転する動作に近い場合であっても、一の軸方向への揺動として近似される。
【0021】
本発明のスピーカースタンドにおいて、スピーカーシステムに備わるスピーカーの振動板が振動する方向を上記のY軸方向になるようにスピーカーシステムを載置すると、スピーカーシステムでの反作用によって生じる振動により、載置部および載置されたスピーカーシステムは、最も効果的にY軸方向に揺動する。このとき、スピーカーシステムからの再生音声には、このY軸方向の揺動共振周波数に相当する周波数、すなわち、1.0Hz以上10.0Hz以下の極めて低い揺動共振周波数の音波が励起されていることが確認されると伴に、好ましい揺れが重畳されることで聴感上のスピーカーシステムからの再生音が改善される。
【0022】
その一方で、Y軸方向と直交するX軸方向についての載置部の揺動は抑制される。スピーカースタンドの載置部のY軸方向の揺動距離(第1の揺動距離)は、X軸方向の揺動距離(第2の揺動距離)よりも長くなり、また、X軸方向における第2の揺動共振周波数は、Y軸方向における第1の揺動共振周波数よりも高い周波数となる。弾性支持脚の屈曲の方法や、弾性支持脚の材料を選定することによって、載置部が揺動するそれぞれの軸方向における第1および第2の揺動共振周波数と、第1および第2の揺動距離とが、コントロールされる。載置部には、所定範囲内の重量を備えるスピーカーシステムが載置され、この重量の範囲で上記の揺動共振周波数の範囲を満足することが好ましい。
【0023】
さらに、スピーカースタンドの脚部が、上記の弾性支持脚に加えて、柱状部材から構成される支柱脚をさらに備えていてもよい。支柱脚は、一方端が弾性支持脚の載置部に固着され、他方端が弾性支持脚の台座部に固着される。したがって、重量が重いスピーカーシステムが載置部に載置されても、弾性支持脚とともに支柱脚がスピーカーシステムによる荷重を支えることができる。このとき支柱脚は、一方端が弾性支持脚の載置部に固着され、他方端が弾性支持脚の台座部に固着されているので、弾性支持脚の載置部が揺動するのにしたがって揺動することができる。その結果、本発明のスピーカースタンドは、対応するスピーカーシステムの重量の適用範囲を広く設定できるとともに、スピーカーシステムで生じる反作用力を利用して、スピーカーシステムからの再生音を改善することができる。
【0024】
支柱脚と弾性支持脚とは、支柱脚の一方端が弾性支持脚の載置部に固着され、支柱脚の他方端が弾性支持脚の台座部に固着されていればよい。脚部の弾性支持脚が、例えば上記の「Z」型の形状である場合には、弾性支持脚の斜めとなる脚部の中間部に貫通孔を設けて支柱脚が貫通するようにしてもよい。好ましくは、弾性支持脚の貫通孔では、支柱脚が接触しないように離隔する、もしくは、緩衝部材を狭着することで、弾性支持脚の載置部の揺動を抑制することなく支柱脚を設けることができる。したがって、弾性支持脚の屈曲によるデザイン上の美観を重視して設計する場合であっても、本発明のスピーカースタンドは、スピーカーシステムで生じる反作用力を利用して、スピーカーシステムからの再生音を改善することができる。
【0025】
また、スピーカースタンドの支持脚は、載置部が揺動する一の軸方向における弾性が異なる他の支持脚に交換して、固着可能に構成されていてもよい。支持脚を交換することにより、載置部に載置されるスピーカーシステムの重量に合わせて揺動共振周波数もしくは揺動距離を調整することができる。
【0026】
さらに、スピーカースタンドは、弾性支持脚の載置部と支持脚とを固着する第1固着部材と、弾性支持脚の台座部と支持脚とを固着する第2固着部材と、を備え、第1固着部材および第2固着部材が、載置部が揺動する一の軸方向に規定される長孔を有し、他の第2支持脚を固着可能に構成されていてもよい。また、第2支持脚が、長孔を介して第1固着部材および第2固着部材と連結してもよい。他の第2支持脚を固着することで、載置部に載置されるスピーカーシステムに応じて、揺動共振周波数もしくは揺動距離を調整することができる。さらに第2支持脚が、第1固着部材および第2固着部材ならびに支持脚と固着する固定部材と、長孔を介して第1固着部材および第2固着部材と連結する可動部材と、を備えるようにしてもよい。第2支持脚可動部材が第1固着部材および第2固着部材の長孔と連結する位置により、第2支持脚の載置部が揺動する一の軸方向における弾性が変化するので、揺動共振周波数もしくは揺動距離を調整することができ、その結果、スピーカーシステムで生じる反作用力を利用して、スピーカーシステムからの再生音を改善することができる。
【発明の効果】
【0027】
本発明のスピーカースタンドは、スピーカーシステムで生じる反作用力を利用して、スピーカーシステムからの再生音をさらに改善することができる。弾性支持脚の形状と材料を選定すること、さらに、支柱脚を設けることにより、広い範囲の重量のスピーカーシステムに適用可能でありながら、弾性支持脚の屈曲によるデザイン上の美観も満足するスピーカースタンドが提供される。
【発明を実施するための最良の形態】
【0028】
本発明のスピーカースタンドは、設置されるスピーカーシステムからの再生音を改善するという目的を、スピーカーを載せる載置部と、設置する床面に対応する台座部と、載置部と台座部とを連結する脚部とを備え、脚部が、弾性を有する板状部材を厚み方向に屈曲した弾性支持脚により構成することにより、実現した。
【0029】
以下、本発明の好ましい実施形態によるスピーカースタンドについて説明するが、本発明はこれらの実施形態には限定されない。
【実施例1】
【0030】
図1は、本発明の好ましい実施形態によるスピーカースタンド1について説明する図であり、スピーカースタンド1は、床3に設置され、スピーカーシステム2を使用者(図示しない)が再生音を聴取するのに適する位置(高さ、向き)に設置することができる。このスピーカーシステム2は、略直方体形状のキャビネット20の前面板21に低音再生用スピーカー23が取り付けられており、低音再生用スピーカー23の振動板24が前後に変位して振動することにより音声再生する。なお、以下の説明では、図1に示したとおり床面3に対して鉛直方法をZ軸方向、スピーカーシステム2の振動板24が振動する方向をY軸方向、Z軸方向及びY軸方向に直角でスピーカースタンド1を側面視する方向をX軸方向とする。スピーカーシステム2は、スピーカースタンド1の載置部11の上に載置されており、キャビネット20の底板22が載置部11に接している。好ましくは、キャビネット20の底板22と載置部11とをネジ等の締結部材により固着してもよい。
【0031】
本実施例のスピーカースタンド1は、弾性支持脚10と、固定台座板14とから構成されている。弾性支持脚10は、スピーカーを載せる載置部11と、弾性脚部12と、固定台座板14に固定される台座部13とが、冷間圧延鋼板を屈曲することにより一体に構成されている。ここで、屈曲とは、平面状の板部材を折り曲げた結果、弾性変形を超えて塑性変形することをいい、材料が金属板の場合だけでなく熱可塑性樹脂の場合には、金型で板状の部材があたかも折り曲げられたような形状を成型することを含む。弾性支持脚10は、厚さt=0.2mm〜5.0mm(好ましくは2.0mm〜4.0mm)の冷間圧延鋼板の金属板を板厚に対して幅広(好ましくは10mm以上)で十分に長い(好ましくは100mm以上)形状に切断加工した板状部材を、プレス加工、折り曲げ加工、等により屈曲して形成されているので、Z軸方向に長さを備える弾性脚部12は、屈曲した方向に弾性を備える。したがって、弾性支持脚10は、板状部材の厚み方向により規定される一方向、つまり、ここではY軸方向に弾性を備えている。弾性支持脚10は、その幅方向であるX軸方向には変形しにくい一方で、弾性変形に伴ってY軸方向には変形する。弾性支持脚10の台座部13は固定台座板14に固定されているので、スピーカーを載せる載置部11は、スピーカーシステム2とともにY軸方向に揺動する。
【0032】
スピーカーシステム1の振動板24が振動するY軸方向には、振動板24を変位および振動させる駆動力に対する反作用によって、X軸方向及びZ軸方向よりも強い振動が生じる。この振動がキャビネット20の底板22を介して弾性支持脚10の載置部11に伝わると、弾性支持脚10の弾性脚部12の弾性と、載置部11および載置されたスピーカーシステム2の重量で定まる揺動共振周波数でY軸方向に揺動する。この揺動共振周波数は1.0Hz以上10.0Hz以下の極めて低い周波数であり、また、Y軸方向における揺動距離(揺動に伴い軸方向の一方に最も動く位置と、他方に最も動く位置との距離)は10.0mm以下と短い距離である。一方で、弾性支持脚10は、その幅方向であるX軸方向にも揺動するものの、Y軸方向に比べて揺動しにくく、X軸方向の揺動距離はY軸方向に比べて短くなる。
【0033】
図2は、本発明のスピーカースタンド1のY軸方向の揺動による効果について説明する図である。図2(a)のグラフは、本発明のスピーカースタンド1の載置部11に載置されたスピーカーシステム2に21.2Wの50Hz以下の帯域ノイズ信号を印加したときの再生音圧周波数特性(1.0〜10.0Hz)であり、図2(b)のグラフは、比較例として、剛性を高めて強固にスピーカーシステム2を設置する、いわば、従来からの(Y軸方向に揺動しない)スピーカースタンドでの再生音圧周波数特性である。図2(a)において、Y軸方向の揺動共振周波数である約3.8Hzに一致するピーク(グラフ中の矢印に示す)が見られる一方で、図2(b)においては、強固にY軸方向に固定されているので、揺動共振に伴うピークは1.0〜10.0Hzの範囲には観察されない。このように、本発明のスピーカースタンド1は、低周波の揺動共振周波数にともなう好ましい揺れを再生音に重畳することができ、その結果、聴感上のスピーカーシステム2からの再生音を改善することができる。なお、スピーカースタンド1が載置可能なスピーカーシステム2の重量の範囲は、弾性支持脚の弾性により定まるY軸方向の揺動共振周波数が1.0Hz以上10.0Hz以下となる範囲と合致するのが好ましい。なお、弾性支持脚の弾性により定まるX軸方向の揺動共振周波数は、Y軸方向の揺動共振周波数よりも高い周波数の約7.0Hzであり、図2(a)の再生音圧周波数特性のグラフ中には、X軸方向の揺動に伴うピークは観察されない。
【0034】
図3は、スピーカースタンド1の弾性支持脚10が採りうる他の実施例について模式的に説明する図であり、いずれについても弾性支持脚10をX軸方向から側面視している。X軸方向から見た場合に、例えば「Z」型の形状や、「匚」型の形状や、ギリシア語アルファベットの大文字「シグマ」型の形状や、「己」型もしくは「乙」型の形状が備わっていて、板厚等を考慮して屈曲の曲面のR寸法や材料の幅を設定する。屈曲の曲面は、R寸法が大きくて緩やかに変化するのが、揺動共振周波数の調整において、また、屈曲の加工において、加えて、デザイン上の美観において好ましい。弾性支持脚10の屈曲によりデザイン上の美観が優れたスピーカースタンド1が提供される。また、載置部11および台座部13の長さも自由に設定できる。弾性支持脚10は、載置部11と弾性脚部12と台座部13とが一体に構成されているのが好ましいが、載置部11を構成する載置板(図示しない)、もしくは、台座部13を構成する台座板14を備える場合には、必ずしも一体に構成しなくてもよい。
【0035】
もちろん弾性支持脚10の形状は、図1および図3の実施例に限定されない。弾性支持脚10は、板状部材を板厚の方向に屈曲したものであればよく、結果として、載置部11および設置されたスピーカーシステム2が板状部材の弾性により一軸方向、すなわち、スピーカーシステムの振動板が振動する方向に揺動可能となればよい。弾性支持脚10の屈曲の方法や、弾性支持脚10の材料、板厚、幅等を選定することによって、載置部11が揺動するY軸方向における揺動共振周波数および揺動距離を適切な範囲に設定することができる。また、スピーカースタンド1は、本実施例のような1本の弾性支持脚10を備える場合に限定されるものではない。複数の弾性支持脚10を備える場合であっても、それぞれの揺動する方向が一致していればよい。
【実施例2】
【0036】
図4、図5および図6は、本発明の他の好ましい実施形態によるスピーカースタンドについて説明する図である。いずれの実施例のスピーカースタンド1も、実施例1の場合と同様に、弾性支持脚10と、固定台座板14とから構成されており、弾性支持脚10は、スピーカーシステムを載せる載置部11と、弾性脚部12と、固定台座板14に固定される台座部13とが、冷間圧延鋼板を屈曲することにより一体に構成されている。さらに、本実施例のスピーカースタンド1の脚部は、「乙型」の弾性支持脚10に加えて、柱状部材から構成される支柱脚15をさらに備えている。支柱脚15は、弾性支持脚10の載置部11の直下鉛直方向(Z軸方向)に、スピーカーシステムの荷重を支えるように設けられる。支柱脚15は、一方端が弾性支持脚10の載置部11に固着され、他方端が弾性支持脚10の台座部13に固着されて、その中間部分が「乙型」の弾性支持脚10の弾性脚部12に設けられた貫通孔16を通過している。なお、スピーカーシステムは図4、図5および図6では、図示しない。
【0037】
ここで、支柱脚15を構成する柱状部材とは、弾性支持脚10を構成する板状部材よりも幅が狭い柱状の構造物であり、支柱脚15の材料もしくは形状は特に限定されない。支柱脚15は、一方端が弾性支持脚10の載置部11に固着され、他方端が弾性支持脚10の台座部13に固着されて、スピーカーシステムによる載置部11への荷重を支える。具体的には、支柱脚15は、長さ方向への伸びは極めて小さいが、長くなるにつれてたわむ程度の弾性を備える材料であることが好ましく、図4の場合には鉄もしくは鉄やアルミ等の金属の丸棒材、もしくはパイプ材であり、図5および図6の場合には弾性支持脚10と同一の材料の冷間圧延鋼板の板材である。特に、図6の場合は冷間圧延鋼板の板材をT字型に組み合わせて、支柱脚15を構成している。
【0038】
本実施例のスピーカースタンド1は、支柱脚15が弾性支持脚10とともにスピーカーシステムによる荷重を支えるので、さらに重量が重いスピーカーシステムにも対応可能になり、載置可能なスピーカーシステムの重量の範囲を拡大することができる。このとき支柱脚15は、一方端が弾性支持脚10の載置部11に固着され、他方端が弾性支持脚10の台座部13に固着されているので、弾性支持脚10の載置部11がY軸方向に揺動するのにしたがってY軸方向に揺動する。一方、X軸方向へ動きにくいのは実施例1の場合と変わりなく、さらに、支持脚15がZ軸方向の動きを拘束するので、その結果、載置部11および載置されたスピーカーシステムは、Y軸方向、つまり、振動板の振動する方向に最もよく揺動する。
【0039】
例えば、図6の場合において、弾性支持脚10は、厚さt=3.0mmの冷間圧延鋼板を幅126mm、長さ1250mmに切断した板状部材を、Y軸方向に略「乙」形状に屈曲して形成したものであり、さらに、支持脚15は、厚さt=3.0mmの冷間圧延鋼板を幅64mmで長さ558mmに、もしくは、幅48mmで長さ500mmに切断した2枚の板状部材をT字型に組み合わせて溶接したものである。支持脚15は、弾性支持脚10の載置部11と、台座部13とに溶接により固定されていて、T字型の貫通孔16では後述するように弾性支持脚10とは離隔している。本実施例のスピーカースタンド1では、Y軸方向に1kg重の力を加えた時のY軸方向における揺動距離が約2.70mmであるのに対して、同じ力でのX軸方向における揺動距離は、約1.54mm以下である。つまり、載置部11およびスピーカーシステム2は、X軸方向に比べてY軸方向に揺動しやすく、X軸方向の揺動距離に比べて、Y軸方向の揺動距離が長くなる。また、スピーカーシステム2の重量が10.8kgの場合には、本実施例のスピーカースタンド1のY軸方向の第1の揺動共振周波数は約6.7Hzであり、一方で、X軸方向における第2の揺動共振周波数はその約1.4倍以上に高くなる。
【0040】
支柱脚15は、弾性支持脚10の貫通孔16を通過しており、貫通孔16では接触せずに離隔している。載置部11がY軸方向に揺動しやすくするために、支柱脚15の一方端が弾性支持脚10の載置部11に固着され、支柱脚15の他方端が弾性支持脚10の台座部13に固定されていればよく、弾性脚部12の貫通孔16においては弾性支持脚10と支柱脚15とが接触しない方が好ましいからである。したがって、弾性支持脚10の屈曲によるデザイン上の美観を重視して弾性支持脚10と支柱脚15を組み合わせる設計をする場合であっても、本発明のスピーカースタンド1は、スピーカーシステムで生じる反作用力を利用して、スピーカーシステムからの再生音を改善することができる。貫通孔16において、弾性支持脚10と支柱脚15との離隔距離が十分にとれずに、載置部11の揺動により接触する可能性がある場合には、接触による拘束を緩和させ、また、接触による異音の発生を防ぐために、緩衝部材(図示しない)を狭着してもよい。具体的には、緩衝部材は、多孔質のウレタンフォームや、エラストマー等のゴムでもよく、フェルト等の繊維材料であってもよい。
【0041】
したがって、弾性支持脚10が、例えば上記の「乙」型の形状である場合であっても、弾性支持脚10に設ける貫通孔16は一つでなくて複数であってもよく、また、必ずしも弾性支持脚10に貫通孔16を設けて、支柱脚15を通過させなくてもよい。弾性支持脚10は、図3に模式的に示した弾性支持脚10が採りうる他の実施例の形状であってもよく、弾性支持脚10の載置部11の直下鉛直方向に、スピーカーシステムの荷重を支える支柱脚15を設けて、これに接触しない位置関係で、揺動の軸方向が一致する複数の弾性支持脚を設けてもよい。屈曲した弾性支持脚により、美観に優れ、かつ、載置するスピーカーシステムからの再生音を改善することができるスピーカースタンドが提供される。
【0042】
また、スピーカースタンド1の支持脚15は、載置部11が揺動するY軸方向における弾性が異なる他の支持脚(図示しない)に交換して、固着可能に構成されていてもよい。例えば、図4の場合において、支持脚15を構成する丸棒材を、より太い径の丸棒材に交換することにより、載置部に載置されるスピーカーシステムの重量が重くなって揺動共振周波数が低くなっても、揺動共振周波数を高くするように調整することができる。
【実施例3】
【0043】
図7および図8は、本発明の他の好ましい実施形態によるスピーカースタンドについて説明する図である。いずれの実施例のスピーカースタンド1も、実施例2の場合と同様に、弾性支持脚10と、固定台座板14と、支持脚15とを備えている。スピーカーシステムを載せる載置部11と、弾性脚部12と、固定台座板14に固定される台座部13とが、冷間圧延鋼板を屈曲することにより一体に「乙型」に構成される弾性支持脚10に加えて、柱状部材から構成される支柱脚15は、弾性支持脚10の載置部11の直下鉛直方向(Z軸方向)に、スピーカーシステムの荷重を支えるように設けられ、一方端が弾性支持脚10の載置部11に固着され、他方端が弾性支持脚10の台座部13に固着されて、その中間部分が「乙型」の弾性支持脚10の弾性脚部12に設けられた貫通孔16を通過している。
【0044】
例えば、図7(a)は、スピーカースタンド1の斜視図、図7(b)は、図7(a)の場合のスピーカースタンド1の側面図である。このスピーカースタンド1は、実施例1の図5のスピーカースタンドに、さらに他の第2支持脚30が備わり、支持脚15および他の第2支持脚30が、T字型とされた弾性脚部12の貫通孔16を貫通している。ここで、第2支持脚30は、支持脚15を構成する板状部材と同一厚みの板状部材であり、弾性支持脚10の載置部11と支持脚15とを固着する第1固着部材31と、弾性支持脚10の台座部13と支持脚15とを固着する第2固着部材32と、により取り付けられている。第1固着部材31および第2固着部材32は、略L字型の部材で、載置部11が揺動するY軸方向に規定される長孔33および34をそれぞれ有している。弾性支持脚10と、第1固着部材31および第2固着部材32は、それぞれ溶接されている。また、第2支持脚30と、第1固着部材31および第2固着部材32とは、長孔33および34を貫通するネジにより固定されている。
【0045】
第2支持脚30は、ネジにより第1固着部材31および第2固着部材32に固定されているので、揺動共振周波数を調整するために、寸法や材料の異なる他の第2支持脚に交換が可能である。例えば、図7(c)は、このスピーカースタンド1の第2支持脚30を、別のY軸方向に幅が広い板状部材から構成される他の第2支持脚40に変更した場合の斜視図、図7(d)は、図7(c)の場合のスピーカースタンド1の側面図である。弾性支持脚10の載置部11が揺動する方向であるY軸方向にたわみにくい他の第2支持脚40に変更することにより、揺動共振周波数を高くするように調整することができる。このように支持脚15に加えて、第2支持脚30もしくは他の第2支持脚40を固着することで、載置部11に載置されるスピーカーシステム(図示しない)に応じて、揺動共振周波数もしくは揺動距離を調整することができる。
【0046】
また、第2支持脚30を構成する板状部材の材質、厚みを選択することにより、揺動共振周波数もしくは揺動距離の調整が可能になり、スピーカーシステムからの再生音を改善することができるスピーカースタンド1が提供される。また、長孔33および34が規定されている範囲において、第2支持脚30を第1固着部材31および第2固着部材32に取り付ける位置を変更することによっても、揺動共振周波数もしくは揺動距離を調整できる。
【0047】
さらに、図8(a)および(b)は、揺動共振周波数もしくは揺動距離の調整が可能な他のスピーカースタンド1の側面図であり、揺動共振周波数が異なる2通りの場合を表している。このスピーカースタンド1は、実施例1の図5のスピーカースタンド1にさらに第2支持脚50が備わり、さらに第2支持脚50が、第1固着部材31および第2固着部材32ならびに支持脚と固着する固定部材50aと、長孔33もしくは34を介して第1固着部材31および第2固着部材32と連結する可動部材50bと、を備える。
【0048】
つまり、固定部材50aと可動部材50bとは、それぞれ板状部材が重ね合わせて長孔33もしくは34を貫通するネジを介してスライドする関係となっている。したがって、固定部材50aおよび可動部材50bを重ね合わせる幅を変更することにより、Y軸方向における実質的な第2支持脚50の弾性(たわみ強度)が変わるので、スピーカースタンド1の揺動共振周波数ならびに揺動距離が変更される。したがって、第2支持脚50を交換しなくても、揺動共振周波数ならびに揺動距離の調整が可能になり、スピーカーシステムからの再生音の改善が容易になる。また、重量の異なるスピーカーシステムに対しても、対応できる範囲を広くすることができる。
【産業上の利用可能性】
【0049】
本発明のスピーカースタンドは、上記実施例に限られず、キャビネット底板部にスピーカースタンドが一体に固定されたスピーカーシステムにも適用が可能である。また、本発明のスピーカースタンドが設置されるのは床面に限られず、天井面もしくは壁面に取り付けてもよく、天井面もしくは壁面へのスピーカー取付具にも適する。
【図面の簡単な説明】
【0050】
【図1】本発明の好ましい実施形態によるスピーカースタンドについて説明する図である。(実施例1)
【図2】本発明のスピーカースタンドの揺動の効果について説明する図である。(実施例1)
【図3】本発明のスピーカースタンドの弾性支持脚が採りうる他の実施例について説明する図である。
【図4】本発明の他の好ましい実施形態によるスピーカースタンドについて説明する図である。(実施例2)
【図5】本発明の他の好ましい実施形態によるスピーカースタンドについて説明する図である。(実施例2)
【図6】本発明の他の好ましい実施形態によるスピーカースタンドについて説明する図である。(実施例2)
【図7】本発明の他の好ましい実施形態によるスピーカースタンドについて説明する図である。(実施例3)
【図8】本発明の他の好ましい実施形態によるスピーカースタンドについて説明する図である。(実施例3)
【符号の説明】
【0051】
1 スピーカースタンド
2 スピーカーシステム
3 床
10 弾性支持脚
11 載置部
12 弾性脚部
13 台座部
14 固定台座板
15 支柱脚
16 貫通孔
20 キャビネット
21 前面板
22 底板
23 低音再生用スピーカー
24 振動板
30、40 第2支持脚
31 第1固着部材
32 第2固着部材
33、34 長孔
50 第2支持脚
50a 固定部材
50b 可動部材


【特許請求の範囲】
【請求項1】
スピーカーを載せる載置部と、台座部と、該載置部と該台座部とを連結する脚部と、を備えるスピーカースタンドであって、
該脚部が、弾性を有する板状部材を厚み方向に屈曲した弾性支持脚により構成され、
該載置部が、該弾性支持脚の弾性変形に伴って一の軸方向に揺動する、
スピーカースタンド。
【請求項2】
前記載置部に所定範囲内の重量を備えるスピーカーを載せたときに、該載置部が揺動する一の軸方向における第1の揺動距離が、該一の軸方向と直交する他の軸方向における第2の揺動距離よりも長い、
請求項1に記載のスピーカースタンド。
【請求項3】
前記載置部に所定範囲内の重量を備えるスピーカーを載せたときに、該載置部が揺動する一の軸方向における第1の揺動共振周波数が、1.0Hz以上10.0Hz以下であり、かつ、該一の軸方向と直交する他の軸方向における第2の揺動共振周波数が、該第1の揺動共振周波数よりも高い周波数である、
請求項1に記載のスピーカースタンド。
【請求項4】
前記脚部の弾性支持脚と、前記載置部と、前記台座部とが、弾性を有する板状部材を厚み方向に屈曲して一体に構成されている、
請求項1から3のいずれかに記載のスピーカースタンド。
【請求項5】
前記脚部が、柱状部材から構成される支柱脚をさらに備え、
該支柱脚の一方端が前記弾性支持脚の前記載置部に固着され、該支柱脚の他方端が前記弾性支持脚の前記台座部に固着される、
請求項4に記載のスピーカースタンド。
【請求項6】
前記脚部の弾性支持脚が、前記板状部材の厚み方向に貫通孔を備え、該貫通孔を前記支柱脚が貫通する、
請求項5に記載のスピーカースタンド。
【請求項7】
前記脚部の弾性支持脚の貫通孔において、該弾性支持脚と、前記支柱脚とが、緩衝部材を狭着する、
請求項6に記載のスピーカースタンド。
【請求項8】
前記脚部が、前記支持脚を、前記載置部が揺動する一の軸方向における弾性が異なる他の支持脚に交換して、固着可能に構成されている、
請求項5から7のいずれかに記載のスピーカースタンド。
【請求項9】
前記弾性支持脚の載置部と前記支持脚とを固着する第1固着部材と、前記弾性支持脚の台座部と該支持脚とを固着する第2固着部材と、を備え、
該第1固着部材および該第2固着部材が、前記載置部が揺動する一の軸方向に規定される長孔を有し、他の第2支持脚を固着可能に構成されている、
請求項5から7のいずれかに記載のスピーカースタンド。
【請求項10】
前記第1固着部材および前記第2固着部材と連結する前記第2支持脚を更に備え、
該第2支持脚が、前記長孔を介して該第1固着部材および該第2固着部材と連結する、
請求項9に記載のスピーカースタンド。
【請求項11】
前記第2支持脚が、前記第1固着部材および前記第2固着部材ならびに前記支持脚と固着する固定部材と、前記長孔を介して該第1固着部材および該第2固着部材と連結する可動部材と、をさらに備え、
該可動部材が該第1固着部材および該第2固着部材の該長孔と連結する位置により、該第2支持脚の前記載置部が揺動する一の軸方向における弾性が変化する、
請求項10に記載のスピーカースタンド。



【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【公開番号】特開2006−287894(P2006−287894A)
【公開日】平成18年10月19日(2006.10.19)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2005−203768(P2005−203768)
【出願日】平成17年7月13日(2005.7.13)
【出願人】(000000273)オンキヨー株式会社 (502)
【Fターム(参考)】