説明

スピーカ用振動板の製造方法

【課題】本発明は各種映像機器や各種音響機器に使用されるスピーカ用振動板の製造方法に関するものであり、常温に戻った状態で変形のない振動板の製造方法を実現することを目的とする。
【解決手段】本発明のスピーカ用振動板の製造方法は、樹脂フィルムを成形する工程と、成形された樹脂フィルムとボイスコイルとの熱収縮率の違いによる変形を防止するために、樹脂フィルムとボイスコイルとの加熱加圧形成時に、常温に戻った状態で変形する方向と反対の方向に形状形成する加熱加圧結合工程とを備えたスピーカ用振動板の製造方法としたものである。
すなわち、振動板である樹脂フィルムとボイスコイルの結合体が、治具から取出して常温に戻ったときに変形する変形量をあらかじめ考慮して、その変形と反対方向に変形させて形状形成したものである。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は各種映像機器や各種音響機器に使用されるスピーカ用振動板の製造方法に関するものである。
【背景技術】
【0002】
最近の映像分野や音響分野では、液晶テレビやプラズマテレビの普及により、これらの映像機器に使用されるスピーカについても、小型化、スリム化、薄型化の市場要求が顕著である。
【0003】
以上の市場要求を満足させるために、従来のコーンタイプの紙振動板に円筒状のボイスコイルを結合した大型のスピーカから、樹脂フィルムに平面状のボイスコイルを結合したスリムで薄型化を実現できる小型スピーカに変わりつつある。
【0004】
従来のこの種の樹脂フィルムに平面状のボイスコイルを加熱加圧結合して形成されるスピーカ用振動板の製造方法は、樹脂フィルムを成形する工程の後に、成形された樹脂フィルムとボイスコイルとを治具により加熱加圧して結合する工程とを備えている。
【0005】
尚、この出願の発明に関する先行技術文献情報としては、例えば、特許文献1が知られている。
【特許文献1】特開2001−231091号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
従来のスピーカ用振動板の製造方法では、樹脂フィルムとボイスコイルとを治具により加熱加圧して結合した後に、治具から取出して常温に戻った状態では、変形が発生するという課題を有するものであった。
【0007】
この変形の発生原因としては、樹脂フィルムからなる振動板と、マグネットワイヤーすなわち金属からなるボイスコイルとの熱収縮率の違いによるものである。
【0008】
振動板とボイスコイルの結合には、治具により温度をかけることで接着剤を熱軟化させて、さらにこの治具により加圧して結合する工程としている。
【0009】
従って、温度の高い状態で結合された振動板とボイスコイルは、治具から取出して常温に戻った状態では、振動板とボイスコイルの熱収縮率の違いにより変形が発生するというものである。
【0010】
本発明は上記課題を解決し、常温に戻った状態で変形のない振動板を提供しようとするものである。
【課題を解決するための手段】
【0011】
上記課題を解決するために本発明は、樹脂フィルムを成形する工程と、成形された樹脂フィルムとボイスコイルとの熱収縮率の違いによる変形を防止するために、樹脂フィルムとボイスコイルとの加熱加圧形成時に、常温に戻った状態で変形する方向と反対の方向に形状形成する加熱加圧結合工程とを備えたスピーカ用振動板の製造方法としたものである。
【0012】
すなわち、振動板である樹脂フィルムとボイスコイルの結合体が、治具から取出して常温に戻ったときに変形する変形量をあらかじめ考慮して、その変形と反対方向に変形させて形状形成したものである。
【発明の効果】
【0013】
本発明のスピーカ用振動板の製造方法は、樹脂フィルムとボイスコイルとの加熱加圧形成時に、常温に戻った状態で変形する方向と反対の方向に形状形成する加熱加圧結合工程を設けた製造方法としたものである。
【0014】
この製造方法とすることにより、樹脂フィルムとボイスコイルの結合体である振動板が、治具から取出して常温に戻ったときに変形の発生をなくすことができる。
【0015】
よって、形状的に安定した品質の高いスピーカ用振動板の製造方法を提供することができ、このスピーカ用振動板を使用したスピーカの品質向上や不良率の低減化を実現することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0016】
以下、本発明の実施の形態を図面を参照しながら説明する。
【0017】
(実施の形態1)
以下、実施の形態1を用いて、本発明について説明する。
【0018】
図1は本発明の一実施の形態におけるスピーカ用振動板の製造方法の主要部を示す外観斜視図である。
【0019】
図1について説明する。
【0020】
最初の工程は、先ず金型により樹脂フィルムを成形する工程である。
【0021】
この工程は、1枚のシート状の樹脂フィルムから、成形用上型1と成形用下型2により加熱加圧して振動板形状を成形し、その後抜き型により外形抜きをして振動板3を得ている。
【0022】
この工程は、成形用の上下金型による加熱加圧成形以外に、真空成形や圧空成形による成形であっても良い。
【0023】
次の工程は、先の工程で成形した振動板3に、別の工程でマグネットワイヤーを平面状に形成して製造されたボイスコイル4を結合する工程である。
【0024】
この工程は、振動板3とボイスコイル4を接着用上治具5と接着用下治具6により加熱加圧して結合させて振動板組立品を得ている。
【0025】
このとき、振動板3である樹脂フィルムとボイスコイル4である銅やアルミニウムとの熱収縮率の違いによる変形を防止するために、樹脂フィルムとボイスコイルとの加熱加圧形成時に、常温に戻った状態で変形する方向と反対の方向に治具に曲率を設けて形状形成している。
【0026】
この治具に設けた曲率は、接着用上治具5の下面に凸状に設け、接着用下治具6の上面に凹状に設けて構成している。
【0027】
次に、先の工程で結合した振動板組立品を治具から取出す。
【0028】
そして、この振動板組立品が、加熱加圧結合された高温になった状態から常温に戻った状態では、樹脂フィルムとボイスコイルである銅やアルミニウムとの熱収縮率の違いによる変形で、本来の形状に戻った状態で安定する。
【0029】
以上のように、振動板組立品である樹脂フィルムからなる振動板3とボイスコイル4の結合体が、治具から取出して常温に戻ったときに変形する変形量をあらかじめ考慮して、その変形と反対方向に変形させて形状形成しているため、治具から取出したときには、常温に戻る過程での変形により、本来の安定した形状になる。
【0030】
この製造方法とすることにより、振動板組立品の常温に戻った状態での変形の発生をなくすことができる。
【0031】
よって、形状的に安定した品質の高いスピーカ用振動板の製造方法を提供することができ、このスピーカ用振動板を使用したスピーカの品質向上や不良率の低減化を実現することができる。
【産業上の利用可能性】
【0032】
本発明にかかるスピーカ用振動板の製造方法は、樹脂フィルムとボイスコイルを結合した振動板組立品の変形を防止したいスピーカ用振動板の製造方法に適用できる。
【図面の簡単な説明】
【0033】
【図1】本発明の一実施の形態におけるスピーカ用振動板の製造方法の主要部を示す外観斜視図
【符号の説明】
【0034】
1 成形用上型
2 成形用下型
3 振動板
4 ボイスコイル
5 接着用上治具
6 接着用下治具

【特許請求の範囲】
【請求項1】
樹脂フィルムにボイスコイルを加熱加圧結合して形成されるスピーカ用振動板の製造方法であって、前記スピーカ用振動板の製造方法は、前記樹脂フィルムを成形する工程と、前記樹脂フィルムと前記ボイスコイルとを接着剤を熱軟化させて加圧結合させる加熱加圧形成時に、常温に戻ったときに前記樹脂フィルムと前記ボイスコイルの熱収縮率の違いにより変形する方向と反対の方向に形状形成する加熱加圧結合工程とを備えたスピーカ用振動板の製造方法。
【請求項2】
ボイスコイルは、マグネットワイヤーを平面状に形成してなる請求項1記載のスピーカ用振動板の製造方法。

【図1】
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