説明

スピーカ用端子取付構造およびスピーカユニット

【課題】端子をスリットに安定して固定することによって、端子の移動によるリード線の断線を抑制することができるスピーカ用端子取付構造およびスピーカユニットを提供する。
【解決手段】スピーカ用端子取付構造は、スリット22を有するフレーム11と、スリット22に差し込まれることでフレーム11に支持される端子21とを備えている。スリット22は、端子21が差し込まれる方向IDから見て、2つの一方側支持部22fと、他方表面21sに当接し、かつ2つの一方側支持部22fに挟まれる領域24の内側に位置する少なくとも1つの他方側支持部22sとを含む形状を有している。2つの一方側支持部22fをつなぐ仮想の第1直線L1に対して第1の方向D1に端子21の厚みT1より小さい距離T2において第1直線L1と平行に延びる仮想の第2直線L2を想定したときに、他方側支持部22sは第2直線L2から第2の方向D2側に位置している。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、スピーカ用端子取付構造およびスピーカユニットに関し、特に、フレームのスリットに端子が差し込まれるスピーカ用端子取付構造およびそれを備えたスピーカユニットに関するものである。
【背景技術】
【0002】
携帯電話機、スマートフォン、PDA(Personal Digital Assistants)、ゲーム機、
、パーソナルコンピュータなどの携帯情報端末にスピーカが搭載されている。このスピーカでは、セット側基板(機器側回路基板)にスピーカユニットの端子が電気的に接続されている。この端子とスピーカユニットのボイスコイルとがリード線で電気的に接続されている。これにより、スピーカユニットとセット側基板とが電気的に接続されている。
【0003】
従来、この端子がフレームのスリットに差し込まれる構造を有するスピーカが提案されている。この種のスピーカとして、たとえば、特開2005−136708号公報(特許文献1)には、フレームのL字状の鉤状突起部の引掛り部にバネ端子の開口部の一内周縁部が係合され、かつフレームの穴部にバネ端子のL字状の挿入部が挿入されることによりバネ端子がフレームに固定されたスピーカ装置が提案されている。
【0004】
また、たとえば、特開2005−260775号公報(特許文献2)には、金属製のバネ端子の複数の折り曲げ片が樹脂製フレーム上の複数個の取付穴に圧入されることで金属製のバネ端子が樹脂製フレームに固定されたスピーカ装置が提案されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開2005−136708号公報
【特許文献2】特開2005−260775号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
上記の特開2005−136708号公報に記載されたスピーカ装置では、フレームのL字状の鉤状突起部の引掛り部にバネ端子の開口部が挿入され、フレームの穴部にバネ端子のL字状の挿入部が挿入される。したがって、バネ端子をフレームに取り付けるためにはフレームの穴部はバネ端子のL字状の挿入部のより寸法が大きくなるように形成される必要がある。このため、バネ端子をフレームに取り付けた後にフレームの穴部に対してバネ端子の挿入部が移動してしまう。そのため、バネ端子の位置が安定しない。
【0007】
上記の特開2005−260775号公報に記載されたスピーカ装置では、金属製のバネ端子の複数の折り曲げ片が非平行に設定されているため、樹脂製フレームの取付穴は折り曲げ片より寸法が大きくなるように形成される必要がある。このため、取り付け後に樹脂製フレームの取付穴に対して金属製のバネ端子の折り曲げ片が移動してしまう。そのため金属製のバネ端子の位置が安定しない。
【0008】
上述のようにバネ端子の位置が安定しない場合には、バネ端子が移動することによってバネ端子に電気的に接続されたリード線が断線するおそれがある。
【0009】
本発明は上記課題を鑑みてなされたものであり、その目的は、端子をスリットに安定して固定することによって、端子の移動によるリード線の断線を抑制することができるスピーカ用端子取付構造およびスピーカユニットを提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0010】
本発明のスピーカ用端子取付構造は、スリットを有するフレームと、スリットに差し込まれることでフレームに支持される端子とを備えている。スリットは、端子が差し込まれる方向から見て、端子の一方表面に当接する2つの一方側支持部と、端子の一方表面と対向する他方表面に当接し、かつ2つの一方側支持部に挟まれる領域の内側に位置する少なくとも1つの他方側支持部と、を含む形状を有している。2つの一方側支持部をつなぐ仮想の第1直線に対して一方表面から他方表面に向かう第1の方向に端子の厚みより小さい距離において第1直線と平行に延びる仮想の第2直線を想定したときに、他方側支持部は第2直線から第1の方向と反対方向の第2の方向側に位置している。
【0011】
本発明のスピーカ用端子取付構造によれば、2つの一方側支持部をつなぐ仮想の第1直線に対して第1の方向に端子の厚みより小さい距離において第1直線と平行に延びる仮想の第2直線を想定したときに、他方側支持部は第2直線から第2の方向側に位置している。このため、2つの一方側支持部と他方側支持部とによって湾曲された状態で端子を支持することができる。そのため、端子の弾性力によって端子をスリットに対して付勢することができる。これにより、端子をスリットに安定して固定することができる。端子をスリットに安定して固定することによって、端子の移動によるリード線の断線を抑制することができる。
【0012】
上記のスピーカ用端子取付構造において好ましくは、他方側支持部は、第1直線よりも第1の方向に位置している。そのため、2つの一方側支持部と他方側支持部とによって湾曲された端子の湾曲の度合いを小さくすることができる。これによりスリットへの端子の差し込みを容易にすることができる。
【0013】
上記のスピーカ用端子取付構造において好ましくは、他方側支持部は、第1直線よりも第2の方向に位置している。そのため、2つの一方側支持部と他方側支持部とによって大きく湾曲された状態で端子を支持することができる。そのため、端子の弾性力によって端子をスリットに対して強く付勢することができる。これにより、端子をスリットに強く固定することができる。
【0014】
上記のスピーカ用端子取付構造において好ましくは、少なくとも1つの他方側支持部は、単数の前記他方側支持部である。そのため、スリットの構成を簡易にすることができる。
【0015】
上記のスピーカ用端子取付構造において好ましくは、少なくとも1つの他方側支持部は、2つの前記他方側支持部である。そのため、端子を4点以上で支持することができる。端子の一方端側および他方端側の両側において、一方側支持部と他方側支持部とで端子を挟み込むことができる。これにより、端子をスリットにさらに安定して固定することができる。
【0016】
上記のスピーカ用端子取付構造において好ましくは、端子は、スリットに端子が差し込まれる方向において、フレームと係合可能な突起部を有している。そのため、突起部をフレームに係合させることでスリットに端子が差し込まれる方向において端子の位置決めをすることができる。これにより、スリットに端子が差し込まれる方向において端子をスリットに安定して固定することができる。
【0017】
上記のスピーカ用端子取付構造において好ましくは、フレームは、突起部を受入可能な凹部を有している。そのため、凹部に突起部を受入れることでスリットに端子が差し込まれる方向においてさらに安定して端子の位置決めをすることができる。これにより、スリットに端子が差し込まれる方向において端子をスリットに安定して固定することができる。
【0018】
上記のスピーカ用端子取付構造において好ましくは、端子はバネ端子である。端子をスリットに安定して固定することができるため、バネ端子の接点の位置を安定させることができる。そのため、端子とセット側基板の基板側端子との接点ずれを抑制することができる。これにより接点ずれによる導通不良を抑制することができる。また、端子をスリットに安定して固定することができるため、バネ端子に荷重が作用した場合にバネ端子の支点を安定させることができる。そのため、バネ端子の性能を安定させることができる。
【0019】
本発明のスピーカユニットは、上記のスピーカ用端子取付構造を備え、端子はリード線と電気的に接続されることでボイスコイルと電気的に接続されている。上記のスピーカ用端子取付構造によって端子をスリットに安定して固定することができるため、端子の移動によるリード線の断線を抑制することができる。
【発明の効果】
【0020】
以上説明したように本発明のスピーカユニットの取付構造およびスピーカユニットによれば、端子をスリットに安定して固定することによって、端子の移動によるリード線の断線を抑制することができる。
【図面の簡単な説明】
【0021】
【図1】本発明の実施の形態1におけるスピーカユニットの概略上面図である。
【図2】図1のII−II線に沿う概略断面図である。
【図3】図1のIII−III線に沿う概略部分断面図である。
【図4】図1のIV−IV線に沿う概略部分断面図である。
【図5】本発明の実施の形態1におけるスピーカユニットの概略側面図である。
【図6】本発明の実施の形態1におけるスピーカユニットの概略下面図である。
【図7】図1のP1部におけるスリットと端子との係合状態を示す概略上面図である。
【図8】図7のP2部を示す概略部分拡大上面図である。
【図9】図1のP1部におけるスリットの形状を示す概略上面図である。
【図10】スリットに端子が挿入される前の状態を示す図4の断面位置に対応する概略部分断面図である。
【図11】スリットに端子が挿入された後の状態を示す図4の断面位置に対応する概略断面図である。
【図12】本発明の実施の形態1の変形例1を示す図8の平面位置に対応する概略部分拡大上面図である。
【図13】本発明の実施の形態1の変形例2を示す図8の平面位置に対応する概略部分拡大上面図である。
【図14】本発明の実施の形態1の変形例3を示す図8の平面位置に対応する概略部分拡大上面図である。
【図15】本発明の実施の形態1の変形例4を示す図5の平面位置に対応する概略側面図である。
【図16】比較例1におけるスリットと端子との係合状態を示す概略上面図であって、図7の平面位置に対応する概略上面図である。
【図17】比較例1におけるスリットの幅方向に端子が移動する状態を示す概略部分断面図であって、図4の断面位置に対応する概略部分断面図である。
【図18】比較例1におけるスリット内を端子が回動する状態を示す概略部分断面図であって、図4の断面位置に対応する概略部分断面図である。
【図19】比較例1におけるスリットと端子との係合状態を示す概略部分断面図であって、図3の断面位置に対応する概略部分断面図である。
【図20】比較例1におけるスリットの深さ方向に端子が移動する状態を示す概略部分断面図であって、図4の断面位置に対応する概略部分断面図である。
【図21】比較例2におけるスリットと端子との係合状態を示す概略部分拡大上面図であって、図8の平面位置に対応する概略拡大上面図である。
【図22】本発明の実施の形態2における携帯情報端末の概略斜視図である。
【図23】本発明の実施の形態2における携帯情報端末の折りたたまれた状態を示す概略斜視図である。
【発明を実施するための形態】
【0022】
以下、本発明の実施の形態について図に基づいて説明する。
(実施の形態1)
最初に本発明の実施の形態1のスピーカユニットの構成について説明する。
【0023】
図1および図2を参照して、スピーカユニット10は、フレーム11と、振動板12と、フレームカバー13と、ボイスコイル14と、マグネット15と、プレート16と、ヨーク17と、リード線18と、端子21とを主に有している。
【0024】
フレーム11は、支持部11aと、内周部11bと、外周部11cと、端子取付部11dと、スリット22とを主に有している。フレーム11には背面孔11eが設けられている。支持部11aは外周部11cの上面に設けられている。支持部11aに振動板12の外周端部が支持されることにより、フレーム11に振動板12が振動可能に支持されている。支持部11aと内周部11bとの間には段差が設けられていてもよい。
【0025】
外周部11cに2つのスリット22が設けられている。2つのスリット22のそれぞれは、フレーム11とフレームカバー13とが重ねられる方向に端子取付部11dを貫通するように形成されている。2つのスリット22のそれぞれには端子21が支持されている。2つの端子21は、各々スリット22に差し込まれることでフレーム11に支持されている。端子21は、たとえば金属板をプレス成形することで形成されている。端子21は、たとえばステンレス、チタン銅などで形成されている。端子21の厚みは、たとえば0.1mm以上0.2mm以下に形成されている。端子21として、たとえばバネ端子が用いられ得る。
【0026】
図3および図4を参照して、端子21は、突出部21aと、突起部21bと、挿入部21cと、折り曲げ部21dとを主に有している。突出部21aはフレーム11から突出するように設けられている。突起部21bはスリット22に端子21が差し込まれる方向IDにおいてフレーム11と係合可能に設けられている。フレーム11の端子取付部11dには突起部21bを受入可能な凹部23が設けられている。本実施の形態では、突起部21bが凹部23に受入れられている。挿入部21cはスリット22に挿入されている。折り曲げ部21dは端子取付部11dの下面に沿うように折り曲げられている。
【0027】
図5を参照して、端子21の突出部21aが弾性変形された状態でセット側基板(機器側回路基板)50の基板側端子51に当接することで、スピーカユニット10は端子21を介してセット側基板50と電気的に接続されるように構成されている。
【0028】
また、再び図1および図2を参照して、フレーム11は、内周部11bにおいてマグネット15が配置されたヨーク17を支持するように構成されている。ヨーク17は背面孔11eから露出するようにフレーム11に支持されている。外周部11cは、支持部11aの外周側に連続して形成されている。フレーム11は、たとえば平面視においてトラック状に形成されている。ここでトラック状とは2本の直線の両端を円弧でつなぐようにして形成された形状である。フレーム11は、たとえば樹脂で形成されている。なお、フレーム11は、金属で形成された部分を有していてもよい。
【0029】
振動板12は、上下方向(図2中矢印A方向)に振動可能なように薄板によって構成されている。振動板12は、中央振動部12aと、ボイスコイル取付部12bと、エッジ部12cと、フレーム取付部12dとを有している。中央振動部12aは、振動板12の中央に設けられている。中央振動部12aは、振動板12の径方向Dの断面視においてマグネット15と反対側に凸となるような円弧状に形成されている。
【0030】
ボイスコイル取付部12bは、中央振動部12aの外周側に設けられている。ボイスコイル取付部12bは中央振動部12aとエッジ部12cとの間に設けられている。ボイスコイル取付部12bは中央振動部12aを取り囲むように環状に設けられている。ボイスコイル取付部12bは、ボイスコイル14を取り付けるためのものである。ボイスコイル取付部12bは、振動板12の径方向Dの断面視において平坦となるように形成されている。
【0031】
エッジ部12cは、ボイスコイル取付部12bの外周側に設けられている。フレーム取付部12dは、エッジ部12cの外周側に設けられている。フレーム取付部12dは、フレーム11の支持部11aに取り付けられている。フレーム取付部12dはエッジ部12cを取り囲むように環状に設けられている。フレーム取付部12dは、振動板12の径方向Dの断面視において平坦となるように形成されている。
【0032】
振動板12は、たとえば平面視においてトラック状に形成されている。振動板12は、たとえば、PET(ポリエチレンテレフタレート)、PEN(ポリエチレンナフタレート)、PEI(ポリエーテルイミド)などで形成されている。
【0033】
ボイスコイル14は、ボイスコイル14の上面が振動板12のボイスコイル取付部12bに固定されることにより、振動板12に取り付けられている。ボイスコイル14は、たとえばトラック状に形成されている。ボイスコイル14にはリード線18が電気的に接続されている。
【0034】
マグネット15は、ボイスコイル14の内周面と間隔をあけてボイスコイル14の内周側に配置されている(内磁型)。マグネット15は、ボイスコイル14と対向するように配置されている。ヨーク17は、ボイスコイル14の外周面と間隔をあけてボイスコイル14の外周側に配置された部分(外周側部分)とボイスコイル14およびマグネット15の下側に配置された部分(下側部分)とを有している。
【0035】
ヨーク17は、外周側部分の外周面でフレーム11の内周部11bと嵌合することにより固定されている。ヨーク17の下側部分は、ボイスコイル14の下面と間隔をあけて配置されている。ヨーク17の下側部分の中央部にはマグネット15が配置されている。マグネット15の上面にはプレート16が配置されている。これらのマグネット15、プレート16およびヨーク17により磁気回路が構成されている。
【0036】
図2および図6を参照して、端子21は、リード線18にはんだ19により接合されている。端子21の折り曲げ部21dにボイスコイル14と電気的に接続されたリード線18がはんだ付けされている。端子21は、リード線18と電気的に接続されることでボイスコイル14と電気的に接続されている。
【0037】
次に、端子とスリットとの係合についてさらに詳しく説明する。なお、図7および図8では、説明の便宜のため端子の湾曲の度合いを実際より大きく図示している。同様に、後述する図12〜図14においても説明の便宜のため端子の湾曲の度合いを実際より大きく図示している。
【0038】
図7および図8を参照して、スリット22は、端子21が差し込まれる方向IDから見て、端子21の一方表面21fに当接する2つの一方側支持部22fと、端子21の一方表面21fと対向する他方表面21sに当接する2つの他方側支持部22sを含む形状を有している。他方側支持部22sは2つの一方側支持部22fに挟まれる領域24の内側に位置している。つまり、他方側支持部22sは、2つの一方側支持部22fに挟まれる領域24において、2つの一方側支持部22fよりも内側に位置している。すなわち、他方側支持部22sは、2つの一方側支持部22f上を含まないように位置している。また、他方側支持部22sは少なくとも1つ設けられていればよい。
【0039】
2つの一方側支持部22fをつなぐように仮想の第1直線L1が想定される。第1直線L1と平行に延びるように仮想の第2直線L2が想定される。第2直線L2は、第1直線L1に対して、端子21の一方表面21fから他方表面21sに向かう第1の方向D1側に位置している。第2直線L2は、第1直線L1に対して端子21の厚みT1より小さい距離T2だけ離れて位置している。他方側支持部22sは第2直線L2から第1の方向D1と反対方向の第2の方向D2側に位置している。つまり、他方側支持部22sは第2直線L2上または第2直線L2よりも第2の方向D2側に位置している。本実施の形態では、他方側支持部22sは、第1直線L1よりも第1の方向D1に位置している。
【0040】
つまり、第1直線L1と第2直線L2との垂線の距離T2は端子21の厚みT1より小さい。第1直線L1と第2直線L2との垂線の距離T2は、端子21の厚みT1より5%以上15%以下の範囲で小さくなるように想定されることが好ましい。第1直線L1と第2直線L2との垂線の距離T2は、端子21の厚みT1より10%小さくなるように想定されることが特に好ましい。
【0041】
そして、他方側支持部22sが第2直線L2よりも第1の方向D1に位置している。そのため、第1直線L1から他方側支持部22sまでの垂線の距離は端子21の厚みT1よりも小さくなる。この結果、端子21は第1直線L1に沿う直線状態ではスリット22に支持されない。すなわち、端子21は湾曲した状態でスリット22に支持される。
【0042】
スリット22の形状についてさらに説明する。スリット22は、第1の孔部22aと、第1の孔部22aの両側に設けられた第2の孔部22bおよび第3の孔部22cを有している。第1の孔部22aと第2の孔部22bとは互いに段差が生じるようにつながっている。また第1の孔部22aと第3の孔部22cとは互いに段差が生じるようにつながっている。第1の孔部22aと第2の孔部22bとの連結部分および第1の孔部22aと第3の孔部22cとの連結部分にはそれぞれ絞り部25が設けられている。
【0043】
端子21は、湾曲した状態でスリット22に支持されている。つまり、他方側支持部22sは第2直線L2よりも第1の方向D1と反対方向の第2の方向D2に位置しているため、端子21は直線の状態では一方側支持部22fと他方側支持部22sとの間を通ることができない。そのため、端子21は湾曲した状態で一方側支持部22fと他方側支持部22sとによって支持されている。
【0044】
次に、端子をフレームに取り付ける方法について説明する。
図9を参照して、スリット22が形成されたフレーム11が準備される。図10を参照して、スリット22に差し込まれるように端子21が準備される。図11を参照して、スリット22に端子21が差し込まれる。この際、挿入部21cがスリット22の内部に位置している。本実施の形態では突起部21bがフレーム11と係合するため、端子21は突起部21bによって端子が差し込まれる方向IDにおいて位置決めされる。続いて、折り曲げ部21dが端子取付部11dの下面に沿って折り曲げられる。このようにして、端子21がスリット差し込まれることでフレーム11に支持される。
【0045】
次に、本実施の形態のスピーカユニットの動作について説明する。
スピーカユニット10において、マグネット15から発生する磁束がプレート16およびヨーク17によって導かれて、ボイスコイル14の配置されている空隙に収束されて磁界が発生する。そして、ボイスコイル14に交番電流が流れると、ボイスコイル14を流れる交番電流とマグネット15から発生する磁界とによってフレミングの左手の法則に基づいて、ボイスコイル14が上下に振動する。したがって、ボイスコイル14に取り付けられた振動板12が振動する。これにより、電気信号(交番電流)が音響(振動)に変換される。
【0046】
上記では、他方側支持部22sが第1直線L1よりも第1の方向D1に位置している場合について説明したが本実施の形態のスピーカ用端子取付構造はこれに限定されない。図12を参照して、本実施の形態のスピーカ用取付構造の変形例1では、他方側支持部22sは、第1直線L1よりも第2の方向D2に位置している。
【0047】
上記では、他方側支持部22sが2つである場合について説明したが本実施の形態のスピーカ用端子取付構造はこれに限定されない。図13を参照して、本実施の形態のスピーカ用取付構造の変形例2では、他方側支持部22sが単数である。
【0048】
上記の変形例2では、他方側支持部22sが第1直線L1よりも第1の方向D1に位置している場合について説明したが、変形例1と同様に、他方側支持部22sは、第1直線L1よりも第2の方向D2に位置していてもよい。図14を参照して、本実施の形態のスピーカ用取付構造の変形例3では、単数の他方側支持部22sが第1直線L1よりも第2の方向D2に位置している。
【0049】
上記では、端子21がバネ端子である場合について説明したが、端子21はこれに限定されない。図15を参照して、端子21の突出部21aは端子取付部11dの上面に沿うように設けられていてもよい。この場合、たとえば端子21の突出部21aはセット側基板(機器側回路基板)50の基板側端子51と配線52を介してはんだ付けにより電気的に接続されてもよい。
【0050】
なお、上記では、内磁型のスピーカユニット10について説明したが、本実施の形態は、マグネット15がボイスコイル14の外周側に配置された外磁型のスピーカユニットにも適用され得る。また、本実施の形態は、ボイスコイル14が厚み方向より幅方向に大きくなるように形成されておりマグネット15の一方面に配置された水平型のスピーカユニット10にも適用され得る。
【0051】
なお、上記ではスピーカユニット10は、平面視においてトラック状に構成されている場合について説明したが、平面視において円状、楕円状などに構成されていてもよい。
【0052】
次に、本実施の形態の作用効果について比較例と比較して説明する。
図16を参照して、比較例1では、スリット22の形状が直線状に形成されている。この比較例1の場合には、端子21をスリット22に差し込むために端子21の寸法をスリット22の寸法より小さくする必要がある。図17を参照して、端子21の寸法がスリット22の寸法より小さいため、スリット22内で端子21がスリット22の幅方向(図中矢印X方向)に移動する。そのため、スリット22の幅方向(図中矢印X方向)に対する端子21の位置が安定しない。
【0053】
また、図18を参照して、端子21の寸法がスリット22の寸法より小さいため、スリット22内で端子21が折り曲げ部21dを支点に回動する。そのため、端子21の回動方向(図中矢印R方向)に対する端子21の位置が安定しない。
【0054】
また、図19を参照して、比較例1では、端子21は図3に示す突起部21bを有していない。なお、フレーム11は図3に示す凹部23を有していない。このため、端子21が差し込まれる方向IDにおいて、突起部21bによって端子21は位置決めされない。この状態では、図20を参照して、端子21の寸法がスリット22寸法より小さいため、スリット22内で端子21がスリット22の深さ方向(図中矢印Y方向)に移動する。そのため、スリット22の深さ方向(図中矢印Y方向)に対する端子21の位置が安定しない。
【0055】
図21を参照して、比較例2では、スリット22の形状が直線状に形成されている。また端子21が凸形状にプレス成形で形成されている。比較例2では、端子21は、第1の湾曲部31と、第2の湾曲部32と、第3の湾曲部33とを主に有している。端子21がスリット22に差し込まれた状態では、端子21の弾性変形によって端子21はスリット22に対して付勢されている。したがって、端子21が付勢された状態で、第1の湾曲部31がスリット22の一方側面41と接触し、第2の湾曲部32および第3の湾曲部33が他方側面42と接触している。
【0056】
比較例2では、端子21を凹形状に形成する際に形状のばらつきが発生しやすい。そのため、比較例2では、端子21が直線形状の場合と比べてプレス成形による形状のばらつきが発生しやすい。このブレス成形による形状のばらつきによって端子21がスリット22に安定して固定されない。そのため、端子21の位置が安定しない。
【0057】
これらに対して、本実施の形態のスピーカ用端子取付構造によれば、2つの一方側支持部22fをつなぐ仮想の第1直線L1に対して第1の方向D1に端子21の厚みTより小さい距離T2において第1直線と平行に延びる仮想の第2直線を想定したときに、他方側支持部22sは第2直線L2から第2の方向D2側に位置している。このため、2つの一方側支持部22fと他方側支持部22sとによって湾曲された状態で端子21を支持することができる。そのため、端子21の弾性力によって端子21をスリット22に対して付勢することができる。これにより、端子21をスリット22に安定して固定することができる。端子21をスリット22に安定して固定することによって、端子21の移動によるリード線18の断線を抑制することができる。
【0058】
また、端子21をスリット22に安定して固定することができるため、端子21の位置を安定させることができる。そのため、端子21とセット側基板(機器側回路基板)50の基板側端子51との接点ずれを抑制することができる。これにより、接点ずれによる導通不良を抑制することができる。
【0059】
また、端子21をスリット22に安定して固定することができるため、端子21の移動によるビビリ音の発生を抑制することができる。これにより、安定した音を発生させることができる。
【0060】
また、比較例1のようにスリット22が直線状に形成されている場合には、スリット22を形成するための金型の幅の寸法が直線形状の幅の寸法となるため、金型の幅の寸法が薄くなる。そのため金型の強度が低下する。したがって、スリット22の幅の寸法に限界がある。よって、端子21の厚みが薄い場合にはスリット22に端子21を安定して固定することができない。
【0061】
これに対して本実施の形態によれば、2つの一方側支持部22fと他方側支持部22sとによって湾曲された状態で端子21を支持することができるため、端子21が直線状の場合と比較してスリット22の幅方向の寸法を大きくすることができる。そのため金型の強度を確保することができる。これにより、この点からも端子21をスリット22に安定して固定することができる。
【0062】
また、本実施の形態のスピーカ用端子取付構造では、他方側支持部22sは、第1直線L1よりも第1の方向D1に位置しているため、2つの一方側支持部22fと他方側支持部22sとによって湾曲された端子21の湾曲の度合いを小さくすることができる。これによりスリット22への端子21の差し込みを容易にすることができる。
【0063】
また、本実施の形態のスピーカ用端子取付構造では、他方側支持部22sは、第1直線L1よりも第2の方向D2に位置していてもよい。これにより、2つの一方側支持部22fと他方側支持部22sとによって大きく湾曲された状態で端子21を支持することができる。そのため、端子21の弾性力によって端子21をスリット22に対して強く付勢することができる。これにより、端子21をスリット22に強く固定することができる。
【0064】
また、本実施の形態のスピーカ用端子取付構造では、少なくとも1つの他方側支持部22sは、単数の他方側支持部22sである。そのため、スリット22の構成を簡易にすることができる。
【0065】
また、本実施の形態のスピーカ用端子取付構造では、少なくとも1つの他方側支持部22sは、2つの他方側支持部22sである。そのため、端子21を4点以上で支持することができる。端子21の一方端側および他方端側の両側において、一方側支持部22fと他方側支持部22sとで端子21を挟み込むことができる。これにより、端子21をスリット22にさらに安定して固定することができる。
【0066】
また、本実施の形態のスピーカ用端子取付構造では、端子21は、スリット22に端子21が差し込まれる方向において、フレーム11と係合可能な突起部21bを有している。そのため、突起部21bをフレーム11に係合させることでスリット22に端子21が差し込まれる方向IDにおいて端子21の位置決めをすることができる。これにより、スリット22に端子21が差し込まれる方向IDにおいて端子21をスリット22に安定して固定することができる。
【0067】
また、本実施の形態のスピーカ用端子取付構造では、フレーム11は、突起部21bを受入可能な凹部23を有している。そのため、凹部23に突起部21bを受入れることでスリット22に端子21が差し込まれる方向IDにおいてさらに安定して端子21の位置決めをすることができる。これにより、スリット22に端子21が差し込まれる方向IDにおいて端子21をスリット22に安定して固定することができる。
【0068】
また、本実施の形態のスピーカ用端子取付構造では、端子21はバネ端子である。端子21をスリット22に安定して固定することができるため、バネ端子の接点の位置を安定させることができる。そのため、端子21とセット側基板50の基板側端子51との接点ずれを抑制することができる。これにより接点ずれによる導通不良を抑制することができる。また、端子21をスリット22に安定して固定することができるため、バネ端子に荷重が作用した場合にバネ端子の支点を安定させることができる。そのため、バネ端子の性能を安定させることができる。
【0069】
本実施の形態のスピーカユニットは、上記のスピーカ用端子取付構造を備えており、端子21はリード線18と電気的に接続されることでボイスコイル14と電気的に接続されている。上記のスピーカ用端子取付構造によって端子21をスリット22に安定して固定することができるため、端子21の移動によるリード線18の断線を抑制することができる。
【0070】
(実施の形態2)
最初に本発明の実施の形態2における携帯情報端末の構成について説明する。本実施の形態では実施の形態1のスピーカユニット10を備えた携帯情報端末について説明する。
【0071】
図22および図23を参照して、本実施の形態における携帯情報端末100は、携帯電話機であって、上部筐体101、表示部102、放音孔103、ヒンジ部104、下部筐体105、操作ボタン106、数字ボタン107、表示部111、放音孔112と、図示しない実施の形態1のスピーカユニット10を主に備えている。
【0072】
図22を参照して、上部筐体101の表面には表示部102が設けられている。上部筐体101の表面の一方端部側には放音孔103が形成されている。上部筐体101の他方端部側にはヒンジ部104が形成されている。下部筐体105の一方端部側にはヒンジ部104が形成されている。ヒンジ部104によって上部筐体101と下部筐体105とは開閉可能に連結されている。下部筐体105の表面のヒンジ部104側には操作ボタン106が形成されている。操作ボタン106からヒンジ部104と反対側に向かって数字ボタン107が形成されている。
【0073】
図23を参照して、上部筐体101の裏面には表示部111が設けられている。表示部111の横に放音孔112が形成されている。
【0074】
図示しない実施の形態1に記載のスピーカユニット10は、上部筐体101の内側に設けられている。そのスピーカユニット10より主に放音孔103および112を通じて携帯情報端末100の外に音が発せられる。
【0075】
次に本実施の形態における携帯情報端末の作用効果について説明する。
本実施の形態における携帯情報端末100によれば、上記の実施の形態1に記載のスピーカユニット10を備えているので、実施の形態1と同様の作用効果を有する。
【0076】
なお、本実施の形態では、携帯情報端末は、携帯電話機を例として説明したが、これに限定されず、スマートフォン、PDA(Personal Digital Assistants)、ゲーム機、パーソナルコンピュータなどであってもよい。
【0077】
なお、上記の各実施の形態は、適宜組み合わせることができる。
今回開示された実施の形態はすべての点で例示であって制限的なものではないと考えられるべきである。本発明の範囲は上記した説明ではなくて特許請求の範囲によって示され、特許請求の範囲と均等の意味および範囲内でのすべての変更が含まれることを意図される。
【産業上の利用可能性】
【0078】
本発明は、フレームのスリットに端子が差し込まれるスピーカ用端子取付構造およびそれを備えたスピーカユニットに特に有利に適用され得る。
【符号の説明】
【0079】
10 スピーカユニット、11 フレーム、11a 支持部、11b 内周部、11c 外周部、11d 端子取付部、11e 背面孔、12 振動板、12a 中央振動部、12b ボイスコイル取付部、12c エッジ部、12d フレーム取付部、13 フレームカバー、14 ボイスコイル、15 マグネット、16 プレート、17 ヨーク、18 リード線、19 はんだ、21 端子、21a 突出部、21b 突起部、21c 挿入部、21d 折れ曲げ部、21f 一方表面、21s 他方表面、22 スリット、22f 一方側支持部、22s 他方側支持部、22a 第1の孔部、22b 第2の孔部、22c 第3の孔部、23 凹部、24 領域、25 絞り部、31 第1の湾曲部、32 第2の湾曲部、33 第3の湾曲部、41 一方側面、42 他方側面、50 セット側基板、51 基板側端子、52 配線、100 携帯情報端末、101 上部筐体、102 表示部、103 放音孔、104 ヒンジ部、105 下部筐体、106 操作ボタン、107 数字ボタン、111 表示部、112 放音孔、D1 第1の方向、D2 第2の方向、ID 端子が差し込まれる方向、L1 仮想の第1直線、L2 仮想の第2直線、T1 端子の厚み、T2 距離。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
スリットを有するフレームと、
前記スリットに差し込まれることで前記フレームに支持される端子とを備え、
前記スリットは、前記端子が差し込まれる方向から見て、
前記端子の一方表面に当接する2つの一方側支持部と、
前記端子の前記一方表面と対向する他方表面に当接し、かつ前記2つの一方側支持部に挟まれる領域の内側に位置する少なくとも1つの他方側支持部と、
を含む形状を有し、
前記2つの一方側支持部をつなぐ仮想の第1直線に対して前記一方表面から前記他方表面に向かう第1の方向に前記端子の厚みより小さい距離において前記第1直線と平行に延びる仮想の第2直線を想定したときに、前記他方側支持部は前記第2直線から前記第1の方向と反対方向の第2の方向側に位置している、スピーカ用端子取付構造。
【請求項2】
前記他方側支持部は、前記第1直線よりも前記第1の方向に位置している、請求項1に記載のスピーカ用端子取付構造。
【請求項3】
前記他方側支持部は、前記第1直線よりも前記第2の方向に位置している、請求項1に記載のスピーカ用端子取付構造。
【請求項4】
前記少なくとも1つの他方側支持部は、単数の前記他方側支持部である、請求項1〜3のいずれかに記載のスピーカ用端子取付構造。
【請求項5】
前記少なくとも1つの他方側支持部は、2つの前記他方側支持部である、請求項1〜3のいずれかに記載のスピーカ用端子取付構造。
【請求項6】
前記端子は、前記スリットに前記端子が差し込まれる方向において、前記フレームと係合可能な突起部を有している、請求項1〜5のいずれかに記載のスピーカ用端子取付構造。
【請求項7】
前記フレームは、前記突起部を受入可能な凹部を有している、請求項6に記載のスピーカ用端子取付構造。
【請求項8】
前記端子はバネ端子である、請求項1〜7のいずれかに記載のスピーカ用端子取付構造。
【請求項9】
請求項1〜8のいずれかに記載のスピーカ用端子取付構造と、
振動板と、
前記振動板に取り付けられたボイスコイルと、
前記ボイスコイルに電気的に接続されたリード線と、
前記ボイスコイルと対向するように配置されたマグネットとを備え、
前記フレームは、前記マグネットおよび前記振動板を支持し、
前記端子は、前記リード線と電気的に接続されることで前記ボイスコイルと電気的に接続されている、スピーカユニット。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【図13】
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【図14】
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【図15】
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【図16】
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【図17】
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【図18】
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【図19】
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【図20】
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【図21】
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【図22】
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【図23】
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【公開番号】特開2012−156953(P2012−156953A)
【公開日】平成24年8月16日(2012.8.16)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−16673(P2011−16673)
【出願日】平成23年1月28日(2011.1.28)
【出願人】(000001889)三洋電機株式会社 (18,308)
【Fターム(参考)】