説明

スピーカ

【課題】小型化を図っても感度が低下することを防止できるスピーカを提供する。
【解決手段】スピーカ1はケース2とスピーカユニット3を備えている。ケース2には電極8が取り付けられている。スピーカユニット3は振動板と該振動板に取り付けられたボイスコイルと磁気回路部を備えている。磁気回路部はボイスコイルと協働して振動板を振動させる磁石19を備えている。磁石19は幅Hが一定の幅等部23と幅hが幅等部23よりも狭い幅狭部24を備えている。電極8は平面視において幅狭部24の近傍に配置されている。電極8は幅狭部24の近傍における幅等部23内となる位置Rに設けられている。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、例えば、音声電流が供給されることで振動板を振動させて音を発生するスピーカに関する。
【背景技術】
【0002】
例えば、携帯電話などの小型携帯端末には、非常に小型のスピーカ(例えば、特許文献1参照)が用いられる。前述した小型携帯端末に用いられるスピーカは、ケースと、ケース内に設けられた振動部と、前記ケース内に収容されるとともに前記振動部を振動させて音を生じさせる磁気回路部を備えている。
【0003】
ケースは、扁平な箱状に形成されている。振動部は、振動板と、音声電流が印加されることで磁気回路部と協働して前記振動板を振動させるボイスコイルを備えている。磁気回路部は、磁石などを備えている。また、ケースの外表面には、前記ボイスコイルと接続した電極が取り付けられている。
【0004】
前述した構成のスピーカは、電極を介してボイスコイルに音声電流が供給されることで、振動板が振動して、前述した音声電流に応じた音を発生する。
【特許文献1】特開2004−23200号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
前述した従来のスピーカは、非常に小型であること(厚みを抑制すること)が求められているために、その平面視において、電極と磁石とが重ならない位置に配置する必要があった。このため、前述したスピーカは、磁石を小型化してきた。磁石を小型化すると、該磁石の生じる磁界の磁束密度が低下して、微弱な音声電流によって振動板を振動させにくくなる傾向であった。即ち、従来のスピーカは、磁石を小型化することで感度が低下する傾向であった。
【0006】
したがって、本発明の目的は、例えば、小型化を図っても感度が低下することを防止できるスピーカを提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0007】
前記課題を解決し目的を達成するために、請求項1に記載の本発明のスピーカは、振動板と、該振動板に取り付けられたボイスコイルと、前記ボイスコイルと協働して、前記振動板を振動させる磁気回路部と、前記磁気回路部を収容したケースと、を備えたスピーカにおいて、前記磁気回路部は、環状に形成されて、周方向に幅が一定に形成された幅等部と、該幅等部の一部が切り欠かれた格好に形成されてこの幅等部よりも幅が狭く形成された幅狭部とが設けられた磁石を備えているとともに、前記ケースの外表面に設けられかつ前記ボイスコイルと接続した電極が、前記磁気回路部の平面視において、前記幅狭部の近傍における前記幅等部内となる位置に設けられていることを特徴としている。
【発明を実施するための最良の形態】
【0008】
以下、本発明の一実施形態を説明する。本発明の一実施形態にかかるスピーカは、磁気回路部の磁石に幅等部よりも幅が狭い幅狭部を設けて、この幅狭部の近傍に電極を配置すことで、電極と磁石とを互いに重ならない位置に配置するとともに、磁石からの電極の突出量を抑制して平面形の小型化を図って、スピーカの小型化を図っている。
【0009】
また、スピーカは、磁石に幅狭部よりも幅が広い幅等設を設けることで、磁石が発生する磁界の磁束密度の低下を防止している。こうすることで、より微弱な音声電流による振動板の振動を可能として、感度の低下を防止している。よって、本発明の一実施形態にかかるスピーカは、小型化を図っても感度が低下することを防止することを可能としている。
【0010】
磁石の平面形が、多角形の環状に形成されても良く、長円形の環状に形成されても良く、円形の環状に形成されても良い。また、磁石の平面形が多角形の環状に形成されている場合には、角を切り落とした格好で、幅狭部を形成するのが望ましい。この場合、確実に磁石に幅等部と幅狭部とを形成することができ、小型化と感度の低下の防止との双方を可能とすることができる。
【実施例】
【0011】
本発明の一実施例を、図1ないし図4に基づいて説明する。本発明の一実施例に係るスピーカ1は、携帯電話などの小型携帯端末を構成して、この小型携帯端末の使用者に音声情報を提供する。
【0012】
スピーカ1は、図1及び図2に示すように、ケース2と、スピーカユニット3とを備えている。ケース2は、ロアケース4と、アッパケース5とを備えている。ロアケース4は、例えば、合成樹脂で構成されており、平板状に形成されている。ロアケース4の平面形状は、矩形状に形成されている。
【0013】
アッパケース5は、例えば、合成樹脂で構成されており、筒部6と、該筒部6の一端部から該筒部6の内側に向かって延在した内側フランジ部7とを備えている。筒部6は、四角筒状に形成されている。内側フランジ部7が、筒部6の全周に亘って設けられている。
【0014】
筒部6の他端部がロアケース4の外縁に重ねられた格好で、ロアケース4とアッパケース5とが互いに固定される。アッパケース5とロアケース4とが互いに固定されると、ケース2は、扁平な箱状となる。勿論、ケース2の平面形状は、矩形状となる。
【0015】
また、図3に示すように、ロアケース4のケース2の外側に位置する外表面(即ち、ケース2の外表面)には、一対の電極8が取り付けられている。電極8は、銅又は銅合金などの導電性の金属で構成されており、図2に示すように、ロアケース4の前述した外表面に露出する露出部9と、該露出部9から立設した貫通部10とを備えている。露出部9は、平板状に形成されて、ロアケース4の外表面と面一となるように、該ロアケース4に取り付けられている。貫通部10は、柱状に形成されており、ロアケース4を貫通して、その先端がケース2の内側に位置している。
【0016】
スピーカユニット3は、振動部11と、この振動部11を振動させて該振動部11に音を生じさせる磁気回路部12とを備えている。
【0017】
振動部11は、ロアケース4とアッパケース5との間の空間即ちケース2内に収容されている。振動部11は、ボイスコイル13と、ボイスコイルボビン14と、振動板15と、ダンパ16と、エッジ17などを備えている。ボイスコイル13は、磁気回路部12の後述する磁気ギャップG内に配されている。ボイスコイル13には、音声電流が供給される。また、ボイスコイル13は、その両端が図示しない錦糸線を介して前述した電極8と接続している。ボイスコイル13には、電極8及び錦糸線などを介して、音声電流発生源から音声電流が供給される。
【0018】
ボイスコイルボビン14は、外周面の平面形状が矩形状の筒状に形成されている。ボイスコイルボビン14は、ヨーク18とヨークプレート20とボイスコイル13などと同軸に配されている。ボイスコイルボビン14は、軸芯方向の一端部が磁気ギャップG内に挿入されており、該一端部の外周にボイスコイル13を取り付けている。ボイスコイルボビン14は、ヨーク18に、該ヨーク18の軸芯P(図2中に一点鎖線で示す)に沿って移動自在に支持されている。
【0019】
振動板15は、断面円弧状でかつ平面形状が矩形状に形成された薄板状のセンタキャップ26と、側方からみて切頭四角錐状(四角錐台状)でかつ平面形状が矩形状の環状に形成された薄板状のコーン27とを備えている。コーン27は、センタキャップ26則ちヨーク18などと同軸に配され、かつ内縁部が前記ボイスコイルボビン14の他端部に取り付けられている。センタキャップ26は、ボイスコイルボビン14を塞いだ格好で、外縁部がコーン27に取り付けられている。振動板15の内縁部がボイスコイルボビン14の他端部に取り付けられていることで、ボイスコイル13は、ボイスコイルボビン14を介して振動板15に取り付けられている。
【0020】
ダンパ16は、平面形状が矩形状の環状に形成され、かつ薄板状に形成されている。ダンパ16は、内縁部がボイスコイルボビン14に取り付けられ、かつ外縁部が後述する固定部材25の内周面に取り付けられている。ダンパ16は、ボイスコイルボビン14即ち振動板15が前述した軸芯Pに沿って振動することを許容するとともに、該ボイスコイルボビン14即ち振動板15の振動を徐々に減衰させる。
【0021】
エッジ17は、平面形状が矩形状の環状に形成され、かつ薄板状に形成されている。エッジ17は、内縁部がコーン27の外縁部に取り付けられ、かつ外縁部が固定部材25とアッパケース5の内側フランジ部7とに挟まれた格好でこれらに取り付けられている。エッジ17は、ボイスコイルボビン14即ち振動板15が前述した軸芯Pに沿って振動することを許容するとともに、該ボイスコイルボビン14即ち振動板15の振動を徐々に減衰させる。
【0022】
磁気回路部12は、磁性体(所謂、常磁性体又は強磁性体)からなるヨーク18と、磁石19と、磁性体(所謂、常磁性体又は強磁性体)からなるヨークプレート20と、固定部材25とを備えている。ヨーク18は、平板状のボトムプレート21と、該ボトムプレート21の中央部から立設した柱状の柱部22とを一体に備えている。
【0023】
ボトムプレート21は、平面形状がロアケース4と略等しい矩形状に形成されている。ボトムプレート21は、ロアケース4よりも若干小さく形成されている。ボトムプレート21は、ロアケース4上に重ねられている。柱部22の平面形状は、ボトムプレート21の平面形状と略等しく形成されている。柱部22は、ボトムプレート21からアッパケース5に向かって突出している。
【0024】
磁石19は、図4に示すように、角が円弧状に形成されて、外縁の平面形状が略矩形状の環(リング)状に形成されている。即ち、磁石19は、平面視が四角形(多角形)の環状に形成されている。磁石19は、その厚みが、一定に形成されている。磁石19は、図4に示すように、幅Hが周方向に一定に形成された幅等部23と、該幅等部23よりも幅hが狭い幅狭部24とが一体に形成されている。なお、幅H,hとは、軸芯Pに直交する方向の磁石19の幅である。幅hは、幅狭部24の最小の幅を示している。
【0025】
幅狭部24は、幅等部23即ち磁石19の二つの角Q(図4中に二点鎖線で示す)が切り欠かれた格好に形成されている。即ち、幅狭部24は、磁石19の角Qに設けられており、図示例では、二つ設けられている。
【0026】
また、幅狭部24は、前述した電極8の近傍に配置されている。前述した電極8は、図3に示すように、磁気回路部12即ちスピーカ1の平面視において、幅狭部24の近傍における図3などに示す二点鎖線Qよりも内側の図3などに示す平行斜線Rで示す幅等部23内となる位置に、一部が位置付けられている。こうして、電極8は、磁気回路部12の平面視において、平行斜線Rで示す幅等部23内となる位置に設けられている。
【0027】
前述した磁石19は、内側にヨーク18の柱部22を通した状態で、該ヨーク18のボトムプレート21に重ねられている。前述した磁石19は、永久磁石又は直流電源により励磁されるものでも良い。
【0028】
ヨークプレート20は、前述した磁石19と平面形状が略等しい矩形の環状に形成されており、内側にヨーク18の柱部22とボイスコイルボビン14とを通した状態で、磁石19上に重ねられている。磁石19とヨークプレート20の内周面は、ヨーク18の柱部22の外周面と間隔をあけている。固定部材25は、平面形状が磁石19やヨークプレート20などと略等しい矩形の環状に形成されており、ヨークプレート20の外縁部に重ねられている。
【0029】
前述した構成により、磁気回路部12は、所謂外磁型に構成されている。磁気回路部12は、ヨーク18の柱部22の外周面と、ヨークプレート20の内周面との間に、前述したボイスコイル13と協働して振動板15を駆動(振動)するための磁力を発生する磁気ギャップGを形成している。即ち、磁気回路部12は、ボイスコイル13と協働して、振動板15を振動させる。
【0030】
前述した構成のスピーカユニット3は、ボイスコイル13に音声電流が供給され、この音声電流に応じて磁気ギャップG内に保持されたボイスコイル13が前述した軸芯Pに沿って振動する。そして、ボイスコイル13を支持したボイスコイルボビン14が、振動板15などと共に軸芯Pに沿って振動して、振動板15などが、音声電流に応じた音を生じる。このように、磁気回路部12は、振動板15則ち振動部11を振動させて、音を生じさせる。
【0031】
本実施例によれば、磁気回路部12の磁石19に幅等部23よりも幅hが狭い幅狭部24を設けて、この幅狭部24の近傍に電極8を配置することで、電極8と磁石19とを互いに重ならない位置に配置している。また、磁気回路部12の磁石19に幅等部23よりも幅hが狭い幅狭部24を設けて、磁石19からの電極8の突出量を抑制して平面形の小型化を図って、スピーカ1の小型化を図っている。
【0032】
また、スピーカ1は、磁石19に幅狭部24よりも幅Hが広い幅等部23を設けることで、磁石19が発生する磁界の磁束密度の低下を防止している。このため、より微弱な音声電流による振動板15の振動が可能となり、感度の低下を防止している。したがって、前述した実施例のスピーカ1は、小型化を図っても感度が低下することを防止することができる。
【0033】
磁石19の平面形が、矩形の環状に形成されて、角Qを切り落とした格好で幅狭部24を形成している。このため、確実に磁石19に幅等部23と幅狭部24とを形成することができ、スピーカ1の小型化と感度の低下の防止との双方を可能とすることができる。
【0034】
また、前述した実施例では、磁石19を矩形の環状に形成したが、本発明では、磁石19を矩形に限らず種々の多角形の環状に形成しても良い。さらに、本発明では、図5に示すように、磁石19を、外縁の平面形状が小判形の環状に形成しても良く、磁石19を、外縁の平面形状が楕円形の環状に形成しても良い。要するに、本発明では、磁石19を、平面形が長円形の環状に形成しても良い。
【0035】
さらに、本発明では、図6に示すように、磁石19を、外縁の平面形状が円形の環状に形成しても良い。要するに、本発明では、磁石19の平面形を円環状に形成しても良い。なお、図5及び図6において、前述した実施例と同一部分には、同一符号を付して説明を省略する。
【0036】
前述した実施例によれば、以下のスピーカ1が得られる。
【0037】
(付記) 振動板15と、
該振動板15に取り付けられたボイスコイル13と、
前記ボイスコイル13と協働して、前記振動板15を振動させる磁気回路部12と、
前記磁気回路部12を収容したケース2と、を備えたスピーカ1において、
前記磁気回路部12は、環状に形成されて、周方向に幅Hが一定に形成された幅等部23と、該幅等部23の一部が切り欠かれた格好に形成されてこの幅等部23よりも幅hが狭く形成された幅狭部24とが設けられた磁石19を備えているとともに、
前記ケース2の外表面に設けられかつ前記ボイスコイル13と接続した電極8が、前記磁気回路部12の平面視において、前記幅狭部24の近傍における前記幅等部23内となる位置Rに設けられていることを特徴とするスピーカ1。
【0038】
付記によれば、磁気回路部12の磁石19に幅等部23よりも幅hが狭い幅狭部24を設けて、この幅狭部24の近傍に電極8を配置することで、電極8と磁石19とを互いに重ならない位置に配置している。また、磁気回路部12の磁石19に幅等部23よりも幅hが狭い幅狭部24を設けて、磁石19からの電極8の突出量を抑制して平面形の小型化を図って、スピーカ1の小型化を図っている。
【0039】
また、スピーカ1は、磁石19に幅狭部24よりも幅Hが広い幅等部23を設けることで、磁石19が発生する磁界の磁束密度の低下を防止している。このため、より微弱な音声電流による振動板15の振動が可能となり、感度の低下を防止している。したがって、スピーカ1は、小型化を図っても感度が低下することを防止することができる。
【0040】
なお、前述した実施例は本発明の代表的な形態を示したに過ぎず、本発明は、実施例に限定されるものではない。即ち、本発明の骨子を逸脱しない範囲で種々変形して実施することができる。
【図面の簡単な説明】
【0041】
【図1】本発明の一実施例にかかるスピーカの平面図である。
【図2】図1中のII−II線に沿う断面図である。
【図3】図1に示されたスピーカの底面図である。
【図4】図1に示されたスピーカの磁石の平面図である。
【図5】図4に示されたスピーカの磁石の変形例を示す平面図である。
【図6】図4に示されたスピーカの磁石の他の変形例を示す平面図である。
【符号の説明】
【0042】
1 スピーカ
2 ケース
8 電極
12 磁気回路部
13 ボイスコイル
15 振動板
19 磁石
23 幅等部
24 幅狭部
R 幅等部内となる位置
H 幅等部の幅
h 幅狭部の幅

【特許請求の範囲】
【請求項1】
振動板と、
該振動板に取り付けられたボイスコイルと、
前記ボイスコイルと協働して、前記振動板を振動させる磁気回路部と、
前記磁気回路部を収容したケースと、を備えたスピーカにおいて、
前記磁気回路部は、環状に形成されて、周方向に幅が一定に形成された幅等部と、該幅等部の一部が切り欠かれた格好に形成されてこの幅等部よりも幅が狭く形成された幅狭部とが設けられた磁石を備えているとともに、
前記ケースの外表面に設けられかつ前記ボイスコイルと接続した電極が、前記磁気回路部の平面視において、前記幅狭部の近傍における前記幅等部内となる位置に設けられていることを特徴とするスピーカ。
【請求項2】
前記磁石は、平面形が多角形の環状に形成されていることを特徴とする請求項1記載のスピーカ。
【請求項3】
前記幅狭部は、前記幅等部の角を切り落とした格好に形成されていることを特徴とする請求項2記載のスピーカ。
【請求項4】
前記磁石は、平面形が長円形の環状に形成されていることを特徴とする請求項1記載のスピーカ。
【請求項5】
前記磁石は、平面形が円環状に形成されていることを特徴とする請求項1記載のスピーカ。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【公開番号】特開2007−251230(P2007−251230A)
【公開日】平成19年9月27日(2007.9.27)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2006−67557(P2006−67557)
【出願日】平成18年3月13日(2006.3.13)
【出願人】(000005016)パイオニア株式会社 (3,620)
【出願人】(000221926)東北パイオニア株式会社 (474)
【Fターム(参考)】