説明

スピーカ

【課題】音響特性の悪化を防止できるとともに、音響特性を悪化する原因を容易に目視によって把握することを可能とするスピーカを提供する。
【解決手段】スピーカ1は磁気回路部と振動部3とを備えている。磁気回路部は磁気ギャップを形成する。振動部3はボイスコイルと駆動コーン14と振動板15を備えている。ボイスコイルは音声電流が供給され磁気ギャップ内に配置されている。駆動コーン14はボイスコイルに取り付けられている。駆動コーン14の外縁には立設片24が設けられている。振動板15は外縁15aが立設片24と間隔をあけて駆動コーン14に重ねられて外縁15aと立設片24との間に接着剤26が充填されて駆動コーン14に取り付けられている。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、例えば、音声電流が供給されることで振動板を振動させて音を発生するスピーカに関する。
【背景技術】
【0002】
例えば、移動体としての自動車には、従来から種々のスピーカ(例えば、特許文献1乃至3参照)が搭載されている。従来から用いられてきたスピーカは、キャビネットと、キャビネットに取り付けられる振動部と、前記キャビネット内に収容されるとともに前記振動部を振動させて音を生じさせる磁気回路部を備えている。
【0003】
キャビネットは、扁平な箱状に形成されている。振動部は、音声電流が供給されるボイスコイルと、このボイスコイルに取り付けられた駆動コーンと、更に該駆動コーンに取り付けられた振動板とを備えている。駆動コーンの平板状の外縁部に振動板の平板状の外縁部が重ねられて、これらの外縁部間に塗布された接着剤によって、駆動コーンと振動板とが、互いに固定されている。
【0004】
前述した構成のスピーカは、ボイスコイルに音声電流が供給されることで、該ボイスコイルが磁気回路部と協働して前記駆動コーンと前記振動板を振動させて、前述した音声電流に応じた音を発生する。
【特許文献1】特開平11−75291号公報
【特許文献2】特開平11−168794号公報
【特許文献3】特開平11−168795号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
前述した従来のスピーカは、駆動コーンの平板状の外縁部と振動板の平板状の外縁部との間に接着剤を塗布して、該外縁部同士を互いに重ねて、駆動コーンと振動板とを互いに固定してきた。このため、駆動コーンの外縁部の平面度と振動板の外縁部の平面度とや、前述した平面度と接着剤の塗布量のばらつき等によって、前述した外縁部間の接着剤に他の部分よりも薄くなる箇所が生じたり、部分的に前述した外縁部に接着剤が塗布されていない箇所が生じることがあった。
【0006】
このため、特に、接着剤が塗布されていない箇所や該接着剤の薄い箇所から、駆動コーンの外縁部と振動板の外縁部との間の接着剤に亀裂が生じることがあった。このような亀裂が生じると、前述した駆動コーンと振動板とが振動する際に、気体が該亀裂内を移動して、スピーカの音響特性が悪化してしまう。
【0007】
また、前述した従来のスピーカは、駆動コーンの外縁部と振動板の外縁部との間に接着剤を塗布するので、前述した亀裂が生じたか否かを目視によって確認することが困難で、実際に音声電流を供給して、駆動コーンと振動板を振動させるまで、前述した亀裂の有無を把握することが困難であった。このように、音響特性を悪化させる原因を目視によって、把握することが困難であった。
【0008】
したがって、本発明の目的は、例えば、音響特性の悪化を防止できるとともに、音響特性を悪化する原因を容易に目視によって把握することを可能とするスピーカを提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0009】
前記課題を解決し目的を達成するために、請求項1に記載の本発明のスピーカは、音声電流が供給されるボイスコイルと、前記ボイスコイルに取り付けられた駆動コーンと、前記駆動コーンに取り付けられた振動板と、前記ボイスコイルと協働して、前記駆動コーンと前記振動板を振動させる磁気回路部と、を備えたスピーカにおいて、前記駆動コーンと前記振動板は、互いに外縁部が重ねられて、接着剤によって互いに固定されているとともに、前記駆動コーンの外縁部から立設しているとともに、前記振動板の外縁と間隔をあける立設片を備え、前記接着剤が、前記立設片と前記振動板の外縁との間に充填されて、前記駆動コーンと前記振動板とを互いに固定されていることを特徴としている。
【発明を実施するための最良の形態】
【0010】
以下、本発明の一実施形態を説明する。本発明の一実施形態にかかるスピーカは、駆動コーンの外縁部に、振動板の外縁と間隔をあける立設片を設けて、該立設片と振動板の外縁との間に接着剤を充填して、振動板と駆動コーンとを固定している。こうすることで、振動板と駆動コーンとを接着した接着剤を目視可能として、該接着剤に亀裂が生じたか否かを容易に把握可能としている。こうして、音響特性を悪化する原因を容易に目視によって把握することを可能としている。
【0011】
また、スピーカは、互いに間隔をあける前述した立設片と振動板の外縁との間に接着剤を充填しているので、平面度が低くても、立設片と振動板の外縁とが直接接触する箇所が生じることを防止でき、立設片と振動板の外縁との間に接着剤が塗布されていない箇所が生じることを防止できる。こうして、駆動コーンと振動板とを接着した接着剤に亀裂が生じることを防止でき、振動板などが振動する際即ち音を発生する際に、接着剤内に生じた亀裂内を気体が通ることを防止でき、音響特性が悪化することを防止できるようにしている。
【0012】
駆動コーンと振動板とを位置決めする位置決め部を備えていても良い。この場合、立設片と振動板の外縁との間隔が、スピーカの周方向に略均一となり、駆動コーンと振動板とを接着した接着剤の厚みがスピーカの周方向に略均一となる。したがって、前述した接着剤の厚みが極端に薄くなった箇所が生じることを防止でき、該接着剤に亀裂が生じることをより確実に防止できるようにしている。
【0013】
位置決め部が、駆動コーンと振動板との一方から凸の凸部と、他方に設けられた干渉部とを備えていても良い。この場合、位置決め部が駆動コーンと振動板とをより確実に位置決めすることができる。
【0014】
駆動コーンのフランジ部にフランジ本体から凸の外縁凸部と内縁凸部とを設けても良い。この場合、駆動コーンのフランジ部の全体が振動板と接触することを防止でき、駆動コーンのフランジ部と振動板との接触箇所を確実に外縁凸部及び内縁凸部にすることを可能として、駆動コーンのフランジ部の平面度と振動板の平面度が低くても、駆動コーンのフランジ部と振動板との接触箇所がランダムに生じることを防止できる。
【0015】
また、外縁凸部を内縁凸部よりも突出させても良い。この場合、外縁凸部で駆動コーンと振動板とが互いに接触することとなって、駆動コーンのフランジ部の平面度と振動板の平面度が低くても、駆動コーンのフランジ部と振動板との接触箇所がランダムに生じることを防止できる。
【0016】
さらに、外縁凸部と内縁凸部との間に駆動コーンのフランジ部のフランジ本体を貫通した貫通孔を設けても良い。この場合、外縁凸部などに塗布した接着剤の溶剤が貫通孔を通して、容易に外部に拡散され易くなって、接着剤の硬化にかかる所要時間を短縮することができ、スピーカの組立にかかる時間を短縮することができる。
【実施例】
【0017】
本発明の一実施例を、図1ないし図6に基づいて説明する。図1に示す本発明の一実施例に係るスピーカ1は、移動体としての自動車などに搭載されて、該自動車の乗員に音声情報を提供する。
【0018】
スピーカ1は、図1及び図2に示すように、図示しないキャビネットと、磁気回路部2(図2に示す)と、該磁気回路部2によって振動されて音を生じる振動部3とを備えている。
【0019】
キャビネットは、図示しない扁平な箱状のキャビネット本体と、図2に示す固定フレーム4とを備えている。キャビネット本体には、振動部3の主に後述する振動板15を露出するための露出窓が設けられている。露出窓は、勿論、キャビネット本体の内外を連通している。キャビネットは、図示しない扁平な箱状のキャビネット本体に図2に示す固定フレーム4を介してスピーカ1を取り付ける構造になっている。キャビネット本体には、振動部3の主に後述する振動板15を露出するための開口穴が設けられている。開口穴は、勿論、キャビネット内外を連通している。
【0020】
固定フレーム4は、厚手の板金で構成されている。固定フレーム4は、外観が裁頭錐(錐台)状の本体部5と、該本体部5の外縁から該本体部5の外方向に延びたフランジ部6と、を備えている。本体部5は、環状に形成されている。本体部5の外縁の平面形状は、小判形に形成されている。固定フレーム4は、本体部5がキャビネット本体内に収容されて、フランジ部6が該キャビネット本体に固定される。
【0021】
磁気回路部2は、前述したキャビネット内に収容されている。磁気回路部2は、図2に示すように、磁性体(所謂、常磁性体又は強磁性体)で構成されたヨーク7と、磁石8と、磁性体(所謂、常磁性体又は強磁性体)で構成されたヨークプレート9とを備えている。ヨーク7は、円環状のボトムプレート10と、該ボトムプレート10の中央の内縁部から立設した円筒状の筒部11とを一体に備えている。
【0022】
磁石8は、円環状に形成されている。磁石8の内径は、筒部11の外径よりも大きい。磁石8は、内側に筒部11を通して、ボトムプレート10に重ねられている。前述した磁石8は、永久磁石又は直流電源により励磁されるものでも良い。
【0023】
ヨークプレート9は、円環状に形成されている。ヨークプレート9の内径は、筒部11の外径よりも大きい。ヨークプレート9は、内側にヨーク7の筒部11と後述するボイスコイルボビン13とを通した状態で、磁石8上に重ねられている。前述したヨーク7と、磁石8と、ヨークプレート9は、互いに同軸に配置されている。このため、磁石8とヨークプレート9の内周面は、ヨーク7の筒部11の外周面と間隔をあけている。
【0024】
前述した構成により、磁気回路部2は、所謂外磁型に構成されている。磁気回路部2は、ヨーク7の筒部11の外周面と、ヨークプレート9の内周面との間に、後述のボイスコイル12と協働して駆動コーン14及び振動板15を駆動(振動)するための磁力を発生する磁気ギャップGを形成している。即ち、磁気回路部2は、ボイスコイル12と協働して、駆動コーン14及び振動板15を振動させる。
【0025】
また、磁気回路部2のヨークプレート9には、固定フレーム4の内縁部が重ねられている。ヨークプレート9は、固定フレーム4と固定されている。
【0026】
振動部3は、前述したキャビネット内に収容されている。振動部3は、ボイスコイル12と、ボイスコイルボビン13と、駆動コーン14と、振動板15と、位置決め部16と、ダンパ17と、エッジ18などを備えている。ボイスコイル12は、磁気回路部2の前述した磁気ギャップG内に配されている。ボイスコイル12には、音声電流が供給される。
【0027】
ボイスコイルボビン13は、円筒状に形成されている。ボイスコイルボビン13の内径は、ヨーク7の筒部11の外径よりも大きく形成されている。ボイスコイルボビン13の外径は、ヨークプレート9の内径よりも小さく形成されている。ボイスコイルボビン13は、ヨーク7とヨークプレート9とボイスコイル12などと同軸に配されている。ボイスコイルボビン13は、軸芯方向の一端部が磁気ギャップG内に挿入されており、該一端部の外周にボイスコイル12を取り付けている。ボイスコイルボビン13は、駆動コーン14とエッジ18などによって、ヨーク7の軸芯P(図2中に一点鎖線で示す)に沿って移動自在に支持されている。なお、ヨーク7の軸芯Pは、スピーカ1の軸芯となっている。
【0028】
駆動コーン14は、合成樹脂で構成されている。駆動コーン14は、図5に示すように、本体部19と、フランジ部20とを一体に備えている。本体部19は、外観が裁頭錐(錐台)状の環状に形成されている。本体部19は、その内縁がダンパ17の内縁部に取り付けられている。本体部19即ち駆動コーン14は、ダンパ17及びボイスコイルボビン13を介して、ボイスコイル12に取り付けられている。
【0029】
フランジ部20は、本体部19に連なりかつ該本体部19の外縁から該本体部19の外周方向に延びた平板状に形成されている。フランジ部20の外縁の平面形状は、固定フレーム4と略同形状の小判形に形成されている。フランジ部20は、環状のフランジ本体21と、該フランジ本体21から振動板15に向かって凸の内縁凸部22と、外縁凸部23と、立設片24とを備えている。
【0030】
フランジ本体21には、貫通孔25が設けられている。貫通孔25は、勿論、フランジ本体21を貫通している。貫通孔25は、内縁凸部22と外縁凸部23との間に設けられている。貫通孔25は、フランジ部20のフランジ本体21の周方向に互いに間隔をあけて複数配置されている。
【0031】
内縁凸部22は、フランジ本体21の内縁部に設けられている。内縁凸部22は、フランジ本体21よりも振動板15に向かって突出している。内縁凸部22は、フランジ本体21の全周に亘って設けられている。内縁凸部22の上面は、平坦に形成されている。
【0032】
外縁凸部23は、フランジ本体21の外縁部に設けられている。外縁凸部23は、フランジ本体21よりも振動板15に向かって突出している。また、外縁凸部23は、内縁凸部22よりもフランジ本体21から振動板15に向かって突出している。外縁凸部23は、フランジ本体21の全周に亘って設けられている。外縁凸部23の上面は、平坦に形成されている。外縁凸部23即ち駆動コーン14の外縁部には、振動板15の外縁部が重ねられる。外縁凸部23上に振動板15が重ねられると、該振動板15と内側凸部22との間に隙間が生じる。前述したフランジ本体21は、振動板15よりも大きく形成されている。
【0033】
立設片24は、フランジ本体21の外縁即ち駆動コーン14の外縁部から振動板15側に立設している。立設片24は、フランジ本体21の外縁即ち駆動コーンの外縁部の全周に亘って設けられている。立設片24は、外縁凸部23上に重ねられた振動板15の外縁15aと間隔をあける。
【0034】
振動板15は、金属で構成されているとともに、図示例では、平板状に形成されている。振動板15の平面形状は、駆動コーン14などの平面形状と同様に小判形に形成されている。振動板15は、駆動コーン14よりも若干小さく形成されている。振動板15は、図6に示すように、その外縁部が内縁凸部22に接着剤が塗布された駆動コーン14の外縁凸部23即ち該駆動コーン14の外縁部に重ねられて、その外縁15aと立設片24との間に接着剤26が充填されて、該接着剤26によって駆動コーン14に固定される。
【0035】
位置決め部16は、図4及び図6に示すように、駆動コーン14から振動板15に向かって凸の凸部27と、振動板15に設けられた干渉部としての切欠き28とを備えている。凸部27は、円柱状に形成されている。凸部27は、外縁凸部23の外縁部から凸に設けられている。凸部27は、図示例では、二つ設けられている。これら二つの凸部27は、前述した軸芯Pを挟んで互いに反対となる位置に配置されている。即ち、複数の凸部27は、駆動コーン14の周方向に等間隔に配置されている。
【0036】
切欠き28は、図3に示すように、振動板15の外縁部の一部を切り欠いた格好に形成されている。切欠き28は、駆動コーン14の外縁凸部23に振動板15の外縁部が重ねられると、その内側に凸部27を位置付ける。前述した位置決め部16は、図4に示すように、切欠き28内に凸部27を位置付けて、該切欠き28の内面が凸部27と干渉(接触)することで、立設片24と外縁15aとの間隔が駆動コーン14と振動板15の周方向に略一定となる位置に、駆動コーン14と振動板15とを位置決めする。
【0037】
ダンパ17は、円環状に形成され、かつ薄板状に形成されている。ダンパ17は、内縁部がボイスコイルボビン13に取り付けられ、かつ外縁部が固定フレーム4の内周面に取り付けられている。ダンパ17には、駆動コーン14の内縁部が取り付けられている。ダンパ17は、ボイスコイルボビン13即ち駆動コーン14及び振動板15が前述した軸芯Pに沿って振動することを許容するとともに、該ボイスコイルボビン13即ち駆動コーン14及び振動板15の振動を徐々に減衰させる。
【0038】
エッジ18は、円環状に形成され、かつ薄板状に形成されている。エッジ18は、内縁部が駆動コーン14の外縁部に取り付けられ、かつ外縁部が固定フレーム4の外縁部に取り付けられている。エッジ18は、接着剤29によって固定フレーム4に固定されている。エッジ18は、ボイスコイルボビン13即ち駆動コーン14及び振動板15が前述した軸芯Pに沿って振動することを許容するとともに、該ボイスコイルボビン13即ち駆動コーン14及び振動板15の振動を徐々に減衰させる。
【0039】
前述した構成のスピーカ1は、ボイスコイル12に音声電流が供給され、この音声電流に応じて磁気ギャップG内に保持されたボイスコイル12が前述した軸芯Pに沿って振動する。そして、ボイスコイル12を支持したボイスコイルボビン13が、駆動コーン14及び振動板15などと共に軸芯Pに沿って振動して、該駆動コーン14及び振動板15などが音声電流に応じた音を生じる。このように、磁気回路部2は、駆動コーン14及び振動板15則ち振動部3を振動させて、音を生じさせる。
【0040】
本実施例によれば、駆動コーン14の外縁部に、振動板15の外縁15aと間隔をあける立設片24を設けて、該立設片24と振動板15の外縁15aとの間に接着剤26を充填して、振動板15と駆動コーン14とを固定している。このため、振動板15と駆動コーン14とを接着した接着剤26を目視可能となり、該接着剤26に亀裂が生じたか否かを容易に把握することが可能となる。したがって、スピーカ1は、音響特性を悪化する原因を容易に目視によって把握することが可能となる。
【0041】
また、スピーカ1は、互いに間隔をあける前述した立設片24と振動板15の外縁15aとの間に接着剤26を充填しているので、平面度によって、立設片24と振動板15の外縁15aとが直接接触する箇所が生じることを防止できる。このため、立設片24と振動板15の外縁15aとの間に接着剤26が塗布されていない箇所が生じることを防止できる。したがって、スピーカ1は、駆動コーン14と振動板15とを接着した接着剤26に亀裂が生じることを防止でき、振動板15などが振動する際即ち音を発生する際に、接着剤26内に生じた亀裂内を気体が通ることを防止でき、音響特性が悪化することを防止できる。
【0042】
駆動コーン14と振動板15とを位置決めする位置決め部16を備えているので、立設片24と振動板15の外縁15aとの間隔が、スピーカ1の周方向に略均一となり、駆動コーン14と振動板15とを接着した接着剤26の厚みがスピーカ1の周方向に略均一となる。したがって、前述した接着剤26の厚みが極端に薄くなった箇所が生じることを防止でき、該接着剤26に亀裂が生じることをより確実に防止できる。
【0043】
位置決め部16が、駆動コーン14から凸の凸部27と、振動板15に設けられた切欠き28とを備えているので、該位置決め部16が、駆動コーン14と振動板15とをより確実に位置決めすることができる。
【0044】
駆動コーン14のフランジ部20にフランジ本体21から凸の外縁凸部23と内縁凸部22とを設けているので、駆動コーン14のフランジ部20の全体が振動板15と接触することを防止でき、駆動コーン14のフランジ部20と振動板15との接触箇所を確実に外縁凸部23及び内縁凸部22にすることが可能となる。このため、駆動コーン14のフランジ部20の平面度と振動板15の平面度が低くても、駆動コーン14のフランジ部20と振動板15との接触箇所がランダムに生じることを防止できる。
【0045】
また、外縁凸部23を内縁凸部22よりも突出させているので、外縁凸部23で駆動コーン14と振動板15とが互いに接触することとなって、駆動コーン14のフランジ部20の平面度と振動板15の平面度が低くても、駆動コーン14のフランジ部20と振動板15との接触箇所がランダムに生じることを防止できる。
【0046】
さらに、外縁凸部23と内縁凸部22との間に駆動コーン14のフランジ部20のフランジ本体21を貫通した貫通孔25を設けている。このため、外縁凸部23などに接着剤を塗布しても、該接着剤の溶剤が貫通孔25を通して、容易に外部に拡散され易くなって、接着剤の硬化にかかる所要時間を短縮することができ、スピーカ1の組立にかかる時間を短縮することができる。
【0047】
前述した実施例では、位置決め部16が、駆動コーン14から凸の凸部27と、振動板15に設けられた切欠き28とを備えている。しかしながら、本発明では、位置決め部16が、振動板15から駆動コーン14に向かって凸の凸部と、駆動コーン14に設けられた干渉部としての凹みなどを備えても良い。また、干渉部として、切欠き28の他に、孔や凹みを用いても良いことがことは勿論である。
【0048】
また、前述した実施例では、立設片24が駆動コーン14の外縁から立設させている。しかしながら、本発明では、立設片24が振動板15の外縁15aと間隔をあけることができれば、駆動コーン14の外縁部の如何なる箇所から立設しても良いことは勿論である。さらに、本発明では、外縁凸部23と内縁凸部22とのフランジ本体21からの突出量を等しくしても良い。
【0049】
前述した実施例によれば、以下のスピーカ1が得られる。
【0050】
(付記) 音声電流が供給されるボイスコイル12と、
前記ボイスコイル12に取り付けられた駆動コーン14と、
前記駆動コーン14に取り付けられた振動板15と、
前記ボイスコイル12と協働して、前記駆動コーン14と前記振動板15を振動させる磁気回路部2と、
を備えたスピーカ1において、
前記駆動コーン14と前記振動板15は、互いに外縁部が重ねられて、接着剤26によって互いに固定されているとともに、
前記駆動コーン14の外縁部から立設しているとともに、前記振動板15の外縁15aと間隔をあける立設片24を備え、
前記接着剤26が、前記立設片24と前記振動板15の外縁15aとの間に充填されて、前記駆動コーン14と前記振動板15とを互いに固定されていることを特徴とするスピーカ1。
【0051】
付記によれば、駆動コーン14の外縁部に、振動板15の外縁15aと間隔をあける立設片24を設けて、該立設片24と振動板15の外縁15aとの間に接着剤26を充填して、振動板15と駆動コーン14とを固定している。このため、振動板15と駆動コーン14とを接着した接着剤26を目視可能となり、該接着剤26に亀裂が生じたか否かを容易に把握することが可能となる。したがって、スピーカ1は、音響特性を悪化する原因を容易に目視によって把握することが可能となる。
【0052】
また、スピーカ1は、互いに間隔をあける前述した立設片24と振動板15の外縁15aとの間に接着剤26を充填しているので、平面度によって、立設片24と振動板15の外縁15aとが直接接触する箇所が生じることを防止できる。このため、立設片24と振動板15の外縁15aとの間に接着剤26が塗布されていない箇所が生じることを防止できる。したがって、スピーカ1は、駆動コーン14と振動板15とを接着した接着剤26に亀裂が生じることを防止できる。
【0053】
なお、前述した実施例は本発明の代表的な形態を示したに過ぎず、本発明は、実施例に限定されるものではない。即ち、本発明の骨子を逸脱しない範囲で種々変形して実施することができる。
【図面の簡単な説明】
【0054】
【図1】本発明の一実施例にかかるスピーカの平面図である。
【図2】図1中のII−II線に沿う断面図である。
【図3】図1に示されたスピーカの振動板の要部を拡大して示す平面図である。
【図4】図1に示されたスピーカの位置決め部を拡大して示す平面図である。
【図5】図1に示されたスピーカの駆動コーンの平面図である。
【図6】図2中のVI部を拡大して示す断面図である。
【符号の説明】
【0055】
1 スピーカ
2 磁気回路部
3 振動部
12 ボイスコイル
14 駆動コーン
15 振動板
15a 外縁
16 位置決め部
19 本体部
20 フランジ部
21 フランジ本体
22 内縁凸部
23 外縁凸部
24 立設片
25 貫通孔
26 接着剤
27 凸部
28 切欠き(干渉部)

【特許請求の範囲】
【請求項1】
音声電流が供給されるボイスコイルと、
前記ボイスコイルに取り付けられた駆動コーンと、
前記駆動コーンに取り付けられた振動板と、
前記ボイスコイルと協働して、前記駆動コーンと前記振動板を振動させる磁気回路部と、
を備えたスピーカにおいて、
前記駆動コーンと前記振動板は、互いに外縁部が重ねられて、接着剤によって互いに固定されているとともに、
前記駆動コーンの外縁部から立設しているとともに、前記振動板の外縁と間隔をあける立設片を備え、
前記接着剤が、前記立設片と前記振動板の外縁との間に充填されて、前記駆動コーンと前記振動板とを互いに固定されていることを特徴とするスピーカ。
【請求項2】
前記駆動コーンと前記振動板とを位置決めする位置決め部を備えたことを特徴とする請求項1記載のスピーカ。
【請求項3】
前記位置決め部は、前記駆動コーンと前記振動板とのうち一方から他方に向かって凸の凸部と、前記他方に設けられかつ前記凸部と干渉する干渉部とを備えたことを特徴とする請求項2記載のスピーカ。
【請求項4】
前記駆動コーンは、外観が裁頭錐状の本体部と、該本体部の外縁に連なった環状のフランジ部と、を備え、
前記フランジ部は、環状のフランジ本体と、
前記フランジ本体の内縁部に設けられかつ前記振動板に向かって該フランジ本体よりも突出した内縁凸部と、
フランジ本体の外縁部に設けられかつ前記振動板に向かって該フランジ本体よりも突出しているとともに、前記振動板の外縁部が重ねられる外縁凸部と、
を備えたことを特徴とする請求項1乃至請求項3のうちいずれか一項に記載のスピーカ。
【請求項5】
前記外縁凸部は、前記内縁凸部よりも前記フランジ本体から前記振動板に向かって突出していることを特徴とする請求項4記載のスピーカ。
【請求項6】
前記外縁凸部と前記内縁凸部との間に設けられ、かつ前記フランジ本体を貫通した貫通孔を備えたことを特徴とする請求項4又は請求項5記載のスピーカ。

【図1】
image rotate

【図2】
image rotate

【図3】
image rotate

【図4】
image rotate

【図5】
image rotate

【図6】
image rotate


【公開番号】特開2007−251281(P2007−251281A)
【公開日】平成19年9月27日(2007.9.27)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2006−68301(P2006−68301)
【出願日】平成18年3月13日(2006.3.13)
【出願人】(000005016)パイオニア株式会社 (3,620)
【出願人】(000221926)東北パイオニア株式会社 (474)
【Fターム(参考)】