説明

スピーカ

【課題】スピーカの音響特性を高める。
【解決手段】中央に磁気回路部1を保持したフレーム2に、上記磁気回路部の磁気回路内に入るボイスコイル3を備えた振動板4が被せられ、上記フレーム2に上記振動板4の上から放音孔5を有したキャップ6が被せられ、回りが周壁で閉じられる。上記振動板4と上記キャップ6との間の空室を外部に音響的に導通させる導通孔13が、上記周壁に形成される。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本願は、例えば小型電子機器に使用されるスピーカの技術分野に属する。
【背景技術】
【0002】
小型電子機器に使用されるスピーカは、中央に磁気回路部を保持したフレームと、磁気回路部の磁気回路内に入るボイスコイルを備えた振動板と、放音孔を有したキャップとを具備し、フレームの上から振動板とキャップが順に被せられ、キャップの回りのリム壁がフレームに連結されることにより組み立てられる。
【0003】
磁気回路部のボイスコイルに音声電流が流され、ボイスコイルから振動板に至る箇所が振動することにより、キャップの放音孔から音声がキャップ外に出る(例えば、特許文献1,2参照。)。
【0004】
【特許文献1】特開2003−134585号公報
【特許文献2】特開2004−266424号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
従来のスピーカのキャップには、音声が外部に適正に放出されるよう振動板に正対する位置に放音孔が形成される。
【0006】
本願の課題の一例は、この種のスピーカの音響特性をさらに高めることにある。
【課題を解決するための手段】
【0007】
上記課題を解決するために、請求項1に係る発明は、中央に磁気回路部を保持したフレームに、上記磁気回路部の磁気回路内に入るボイスコイルを備えた振動板が被せられ、上記フレームに上記振動板の上から放音孔を有したキャップが被せられ、回りが周壁で閉じられたスピーカにおいて、上記振動板と上記キャップとの間の空室を外部に音響的に導通させる導通孔が、上記周壁に形成されたことを特徴とする。
【発明を実施するための最良の形態】
【0008】
本願に係るスピーカの実施形態を図面に基づいて説明する。
【0009】
<実施の形態1>
図1乃至図3に示すように、このスピーカは、中央に磁気回路部1を保持したフレーム2と、磁気回路部1の磁気回路内に入るボイスコイル3を備えた振動板4と、放音孔5を有したキャップ6とを具備している。スピーカは、フレーム2の上から振動板4とキャップ6が順に被せられ、回りが周壁で閉じられる。
【0010】
周壁は、この実施の形態1ではフレーム2の回りの起立壁2aとこの起立壁2aを外側から覆うキャップ6の回りのリム壁6aとの重畳壁により形成される。キャップ6は、そのリム壁6aが起立壁2aに対し接着剤又は両面粘着テープによる接着、カシメ、嵌合等適宜の連結手段により連結されることによりフレーム2に固定される。
【0011】
フレーム2は、例えば合成樹脂の射出成形により、概ね長方形の輪郭を有した板状に形成される。フレーム2の回りからは上記起立壁2aが立ち上がり、フレーム2の中央部にはフレーム2の長手方向に伸びる長孔7が形成される。長孔7はフレーム2の表裏間を貫通している。フレーム2の裏面には突起2bが設けられ、バネ材からなる一対の端子8がこの突起2bを利用してそれぞれフレーム2の裏面に固定される。また、フレーム2の長辺に沿った起立壁2aの側面には、後述する導線を通すための凹溝2cが一対の端子8の各々に対応して形成される。
【0012】
一対の端子8は、その各々の細長い基部8aが上記フレーム2の裏面にフレーム2の長辺に沿うように当てられ、突起2bに対し嵌め込まれることにより、フレーム2の裏面に固定される。一対の端子8はその各基部8aからフレーム2の裏面の下方へと凸状に突出する。
【0013】
磁気回路部1は、ヨーク9と、マグネット10と、プレート11とを具備し、ヨーク9上にマグネット10と、プレート11が順次重ねられることにより組み立てられる。そして、磁気回路部1は、ヨーク9がフレーム2の長孔7内にフレーム2の裏面側から挿入されることにより、フレーム2内に組み付けられ固定される。ヨーク9の回りには凸壁9aが形成され、この凸壁9aに上記プレート11の周縁が溝を隔てて対向する。これにより、マグネット10と、ヨーク9と、プレート11とにより磁気回路が構成され、磁力線が上記ヨーク9の凸壁9aとプレート11の周縁との間の溝を横断する。
【0014】
振動板4は樹脂フィルム等により薄膜状に形成され、上記磁気回路部1を覆うようにフレーム2上から被せられ、周縁部がフレーム2の起立壁2aの内側に沿って接着剤等により固定される。また、振動板4の中央部には、上記磁気回路部1の溝に入り込むように細溝が形成され、この細溝内にボイスコイル3が埋設される。これにより、ボイスコイル3は磁気回路部1の磁気回路内に保持される。ボイスコイル3からは図示しないが二本の導線が引き出され、各導線がフレーム2の上記凹溝2cを通ってフレーム2の裏面の各端子8の基部8aにそれぞれ電気的に接続される。二本の導線からボイスコイル3に音声電流が流されると、振動板4がフレーム2上で振動し音を発する。
【0015】
なお、この振動板4の背後に位置するフレーム2には、振動板4とキャップ6との間の空室をスピーカ外と通気可能にするための背圧調整用孔12が設けられ、これにより振動板4は適正に振動する。
【0016】
キャップ6は、例えば金属薄板のプレス成形により、フレーム2と同様な長方形の輪郭を有した板状に形成される。キャップ6の回りからは上記リム壁6aが垂下する。また、キャップ6の中央部には、キャップ6の放音孔5が複数箇所にわたって設けられる。もちろん、放音孔5は一箇所に設けるのみでもよい。リム壁6a及び放音孔5は望ましくはキャップ6のプレス成形時に同時に成形される。このキャップ6は上記フレーム2に振動板4の上から被せられ、フレーム2の起立壁2aの縁がキャップ6の内面に当接することでフレーム2とキャップとの間の位置決めが完了する。また、両者の結合は上述した両面粘着テープ等の連結手段により完了する。
【0017】
図3及び図4に示すように、上記周壁には、上記振動板4と上記キャップ6との間の空室を外部に音響的に導通させる導通孔13が形成される。この導通孔13は、具体的には周壁を厚さ方向に貫く貫通孔であり、リム壁6aに穿設した孔と起立壁2aに形成した孔とを連通させることにより形成される。この場合リム壁6aの孔は回りが閉じた四角形に形成され、起立壁2aの孔は起立壁2aの端縁14上で開口した四角形に形成される。導通孔13がスピーカの周壁に形成されることで、振動板4とキャップ6との間の空室が放音孔5に加え、放音孔5の開放方向と略直角に交差する方向でもスピーカ外に開放される。
【0018】
このようにスピーカの周壁に導通孔13が形成された結果、音響面においてリーク作用が働き、図5に示すように、このスピーカの音響特性の高域ピークが抑制される。図5中、破線aは従来の特性曲線を示し、実線bはこのスピーカの特性曲線を示す。このように高域ピークが抑制されると、音響特性がフラット化するのみならず、高域の対入力が向上する。
【0019】
上記導通孔13は図示例では周壁上に二個のみ設けられるが、一個又は三個以上設けることも可能である。その形状も図示例では四角形であるが、円形その他所望の形状で設けることができる。また、導通孔13はキャップ6及びフレーム2の長方形の輪郭において、長方形の輪郭の短辺に沿った周壁にそれぞれ形成されるが、長辺に沿った周壁に設けることも可能であり、短辺と長辺の双方の周壁に設けることも可能である。
【0020】
上記構成のスピーカは図示しない回路基板に組み込まれ、この回路基板の端子にスピーカの端子8が接続される。回路基板から端子8を通じて音声電流がボイスコイル3に流れると、振動板4が磁気回路部1上で振動し、音声が放音孔5からスピーカ外に発せられる。また、導通孔13からは音響がリークし、音声の高域ピークが抑制される。これにより、スピーカの音響特性が改善される。
【0021】
<実施の形態2>
図6乃至図8に示すように、この実施の形態2のスピーカでは、実施の形態1の場合と同様に導通孔13がスピーカの周壁を内外方向に貫通しているが、実施の形態1とは異なり、リム壁6aの孔はリム壁6aの端縁15上で開口する四角形の切欠状に形成される。
【0022】
リム壁6aにおける導通孔13をこのような切欠状にすると、孔加工乃至キャップ6の成形を簡易に行うことができ、コスト低減に資することとなる。
【0023】
その他、この実施の形態2において、実施の形態1と同じ部分には同一符号を付して示すこととし重複した説明を省略する。
【0024】
なお、本発明は上記実施形態1,2に限定されることなく、種々の変更が可能である。例えば、上記実施の形態1,2では、スピーカの周壁をフレームの起立壁とキャップのリム壁との重畳壁として構成したが、本発明においてこの周壁はフレームの起立壁を省略しキャップの回りのリム壁のみで形成することもできるし、キャップのリム壁を省略しフレームの回りの起立壁のみで形成することもできるし、起立壁とリム壁とを突縁同士突き合せることによっても形成することができる。その場合、導通孔はリム壁上、起立壁上又はリム壁と起立壁との境界線上に形成されることになる。
【図面の簡単な説明】
【0025】
【図1】本願の実施の形態1に係るスピーカを示す斜視図である。
【図2】図1に示すスピーカの底面図である。
【図3】図2中、III−III線矢視断面図である。
【図4】図3中、IV部の拡大図である。
【図5】本願のスピーカと従来のスピーカとの音響特性を比較したグラフである。
【図6】本願の実施の形態2に係るスピーカを示す斜視図である。
【図7】図6に示すスピーカの図3と同様な断面図である。
【図8】図7中、VIII部の拡大図である。
【符号の説明】
【0026】
1…磁気回路部
2…フレーム
2a…起立壁
3…ボイスコイル
4…振動板
5…放音孔
6…キャップ
6a…リム壁
13…導通孔
14,15…端縁

【特許請求の範囲】
【請求項1】
中央に磁気回路部を保持したフレームに、上記磁気回路部の磁気回路内に入るボイスコイルを備えた振動板が被せられ、上記フレームに上記振動板の上から放音孔を有したキャップが被せられ、回りが周壁で閉じられたスピーカにおいて、上記振動板と上記キャップとの間の空室を外部に音響的に導通させる導通孔が、上記周壁に形成されたことを特徴とするスピーカ。
【請求項2】
請求項1に記載のスピーカにおいて、上記周壁がキャップの回りのリム壁と、上記フレームの回りの起立壁の一方又は双方で形成されることを特徴とするスピーカ。
【請求項3】
請求項1又は請求項2に記載のスピーカにおいて、上記導通孔が上記周壁に形成された貫通孔であることを特徴とするスピーカ。
【請求項4】
請求項2に記載のスピーカにおいて、上記導通孔が上記リム壁又は起立壁にそれらの端縁に開口する切欠として形成されたことを特徴とするスピーカ。
【請求項5】
請求項1乃至請求項4のいずれかに記載のスピーカにおいて、上記キャップ及び上記フレームはその輪郭が略長方形とされ、上記導通孔が長方形の輪郭の短辺に沿った周壁に形成されたことを特徴とするスピーカ。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【公開番号】特開2007−318467(P2007−318467A)
【公開日】平成19年12月6日(2007.12.6)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2006−146133(P2006−146133)
【出願日】平成18年5月26日(2006.5.26)
【出願人】(000005016)パイオニア株式会社 (3,620)
【出願人】(000221926)東北パイオニア株式会社 (474)
【Fターム(参考)】