スピーカ
【課題】磁気回路とブラケットとを接着剤によって固定する際、接着剤のはみ出しによる排気への影響を抑制して良質な音を提供できるスピーカに関する技術を提供する。
【解決手段】振動板を振動させる磁気回路であって、該振動板から発せられる振動空気を該振動板の背面側に逃がす排気孔を有する磁気回路と、前記磁気回路の一部を構成する、底部が円盤状の磁性体であって、該底部の中央部に前記排気孔としての磁性体排気孔を有する磁性体と、前記磁性体の底部の背面側と接着剤を介して面接続される円盤状の底部を有するブラケットであって、該ブラケットの底部の中央部に前記磁性体排気孔と連通するブラケット排気孔を有するブラケットと、を備え、前記磁性体排気孔の縁部近傍と前記ブラケット排気孔の縁部近傍とのうち少なくともいずれか一方は、前記接着剤が前記排気孔の中心に向けてはみ出すことを抑制する抑制部を有する。
【解決手段】振動板を振動させる磁気回路であって、該振動板から発せられる振動空気を該振動板の背面側に逃がす排気孔を有する磁気回路と、前記磁気回路の一部を構成する、底部が円盤状の磁性体であって、該底部の中央部に前記排気孔としての磁性体排気孔を有する磁性体と、前記磁性体の底部の背面側と接着剤を介して面接続される円盤状の底部を有するブラケットであって、該ブラケットの底部の中央部に前記磁性体排気孔と連通するブラケット排気孔を有するブラケットと、を備え、前記磁性体排気孔の縁部近傍と前記ブラケット排気孔の縁部近傍とのうち少なくともいずれか一方は、前記接着剤が前記排気孔の中心に向けてはみ出すことを抑制する抑制部を有する。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、スピーカに関する。
【背景技術】
【0002】
音響特性の向上や音質向上を目的として、スピーカに関する種々の技術が提案されている。例えば、特許文献1には、磁気回路を収容する外周壁を備えるスピーカであって、スピーカを構成する磁気回路収容部の外周壁を流線型にする技術が開示されている。この技術によれば、外周壁を流線型とすることで、スピーカの背面側の空気の流れに乱れが生じるのを低減し、スピーカの性能が低下することを防止することができる。
【特許文献1】特開2006−229520号公報
【特許文献2】特開2005−277561号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0003】
音響特性の向上や音質向上を目的として、スピーカに関する種々の技術が提案されている。ここで図1は、従来のスピーカの一例を示す。図1に示す従来のスピーカでは、磁気回路1x、換言するとヨーク14xに振動板34xにより動かされる空気を逃がすための排気孔50xが形成され、音質向上が図られている。一方、この従来のスピーカ100では、ヨーク14xとブラケット2xとの接続が接着剤によって行われている。その結果、接着剤がヨーク14xの排気孔50にはみ出し、振動板34xによる空気の排気を妨げる虞があった(図2参照。)。
【0004】
本発明では、上記した背景に鑑み、排気のための排気孔を有する磁気回路を備えるスピーカであって、磁気回路とブラケットとを接着剤によって固定する際、接着剤のはみ出しによる排気への影響を抑制して良質な音を提供できるスピーカに関する技術を提供することを課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0005】
本発明では、上述した課題を解決するため、磁性体に、該磁性体とガスケットとの接触部分からはみ出る余分な接着剤が排気孔へ到達することを抑制する段差部を設けることとした。
【0006】
より詳細には、本発明は、振動板を振動させる磁気回路であって、該振動板により動かされる空気を該振動板の背面側に逃がす排気孔を有する磁気回路と、前記磁気回路の一部を構成し、該磁気回路の背面側に設けられる基部を有する磁性体であって、該基部に前記排気孔としての磁性体排気孔を有する磁性体と、前記磁性体の基部の背面と接着剤を介して面接続される、前記磁気回路を保持するブラケットであって、前記磁性体排気孔と連通するブラケット排気孔を有するブラケットと、を備え、前記磁性体は、前記磁性体排気孔の周囲に前記振動板の前面側に凹んだ段差部であって、前記磁性体の基部と前記ガスケットとの接触部分からはみ出る余分な接着剤が前記排気孔へ到達することを抑制する段差部を有する。
【0007】
磁気回路は、振動板からの空気を排気する排気孔を有していればよい。磁性体は、磁気回路の背面側に設けられる基部を有し、この基部には、排気孔としての磁性体排気孔を有する。磁気回路は、磁石や磁性体といった一般的な構成を有するとともに、閉じた回路を形成することで振動板を振動させることができればよい。また、本発明の磁気回路は、内磁型、外磁型いずれでもよい。
【0008】
ブラケットは、磁気回路、より詳細には、磁気回路を構成する磁性体を保持するものであり、電気コネクタと接続されるコネクタ固定用ブラケットによって構成することができる。また、ブラケットは、相手側部材(例えば、車両用音響機器の場合は車体、スピーカボックスではバッフル板等。)と接続するものでもよい。本発明のブラケットは、磁性体の基部の背面側と接着剤を介して面接続される。すなわち、本発明によれば、接着剤によって磁性体とブラケットとの接続を行うことができ、螺子等を用いて磁性体とブラケットと接続する技術に比べて容易に磁性体とブラケットとを接続することができる。螺子等を用いることなく、接続できることから、従来の螺子等を用いて接続する技術に比べて、より容易に接続することが可能となる。
【0009】
ここで、従来、接着剤を用いて磁性体とブラケットとを接続する場合には、接着剤が排気孔へはみ出すことにより、振動板により動かされる空気の排気が妨げられるといった問題があった。また、接着剤のはみ出しを防止するには、排気孔内へ治具を挿入するといったように別途治具が必要であり、工程も煩雑になるといった問題があった。
【0010】
このような課題を解決するため、本発明のスピーカは、磁性体が、磁性体排気孔の周囲に振動板の前面側に凹んだ段差部であって、磁性体の基部とガスケットとの接触部分からはみ出る余分な接着剤が排気孔へ到達することを抑制する段差部を有することを特徴とする。これにより、余分な接着剤は、必ず段差部を通ることになる。つまり、従来においては、余分な接着剤は直接排気孔内へはみ出していたが、本発明によれば、余分な接着剤は、段差部を必ず通る。従って、排気孔までの距離が長くなることで余分な接着剤が排気孔内へ到達することが抑制される。なお、段差部の形状等は、特に限定されないが、段差部の高さを高くし、又は、段差部の面積を増加させることで、余分な接着剤が排気孔へ到達するのをより効果的に抑制することが可能となる。
【0011】
ここで、本発明において、前記ブラケットは、前記排気孔の近傍に、前記余分な接着剤を前記段差部へ導くことで該余分な接着剤が前記排気孔へはみ出すのを抑制する抑制部を有する構成としてもよい。ブラケット側に抑制部を設けることで、更に効果的に余分な接着剤の排気孔へのはみ出しを抑制することが可能となる。
【0012】
なお、前記抑制部は、前記段差部の内側面よりも内側に設けられ、前記余分な接着剤をせき止め、該接着剤を前記振動板の前面方向へ導く抑止壁とすることができる。上記抑止壁を設けることで、余分な接着剤が振動板の前面方向に導いて、段差部内へ導くことが可能となる。
【0013】
また、本発明のスピーカにおいて、前記抑止壁は、前記振動板の前面方向に延出することで前記段差部の内側面と対向し、前記抑止壁と該抑止壁と対向する前記磁性体排気孔の内側面との間には、該抑止壁によってせき止められた接着剤が収容される間隙が設けられているようにしてもよい。本発明のスピーカによれば、上記間隙に、はみ出した接着剤を収容することが可能となる。
【0014】
また、本発明のスピーカにおいて、前記ブラケットは、前記抑制部として、前記段差部の内側面よりも内側に延出した延出部と、該延出部の内側に設けられ、前記ブラケット排気孔としての複数の貫通孔と、を有するようにしてもよい。
【0015】
本発明のブラケットでは、段差部の内側面よりも内側に延出した延出部を設けることで、この延出部に接着剤が溜まる。延出部は、設計時に予め内側へ延出しており、想定外に排気の流れを妨げられることはない。また、この接着剤を溜める延出部の内側には、排気孔に相当する複数の貫通孔が設けられおり、空気の排気が十分に確保される。なお、延出
部の長さを十分とることで、接着剤の複数の貫通孔への流入を防止することができる。但し、より確実に複数の貫通孔への接着剤の流入を防止するため、延出部には、複数の貫通孔への流入を防止する流入抑止壁を設けてもよい。
【発明の効果】
【0016】
本発明によれば、排気のための排気孔を有する磁気回路を備えるスピーカであって、磁気回路とブラケットとを接着剤によって固定する際、接着剤のはみ出しによる排気への影響を抑制して良質な音を提供できるスピーカに関する技術を提供することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0017】
次に、本発明のスピーカの実施形態について図面に基づいて説明する。
【0018】
(第一実施形態)
<構成>
図3は、第一実施形態のスピーカの概略断面図を示す。なお、同図は、スピーカを正面視した場合の断面を示す。同図に示すように、第一実施形態のスピーカ101は、コーン型振動板34からの空気を排出する排気孔50を有する磁気回路1と、磁気回路1の下部と接続されるブラケット2と、磁気回路1の上部に接続されるスピーカ上部構造3と、によって構成されている。
【0019】
まず、スピーカ上部構造3について説明する。スピーカ上部構造3は、磁気ギャップ31に挿入されるボイスコイル32と、ボイスコイル32の振動を伝達するボイスコイルボビン33と、ボイスコイルボビン33を介して伝達された振動を音波として発するコーン型振動板34と、コーン型振動板34を保持するフレーム35と、ボイスコイル32が所定の磁界に収まるように保持すると共にボイスコイル32が無制限に振動するのを抑制するダンパ36と、コーン型振動板34に取り付けられ、コーン型振動板34の径方向の変形防止及び塵埃などの進入を防止するセンターキャップ37と、フレーム35と接続されるガスケット38を介してセンターキャップ37を覆うように設置された塵埃などの進入を防止するネット39と、ガスケット38の正面側と接続され、ネット39がスピーカ101の筐体と直接接続するのを防止する面クッション40と、によって構成されている。なお、スピーカ上部構造3は、従来の構成を用いることができ、上記はあくまで一例にすぎない。
【0020】
次に磁気回路1について説明する。磁気回路1も上述したスピーカ上部構造3と同様に、基本的には、従来の磁気回路を用いることができる。本実施形態の磁気回路1は、円盤状の磁石11と、円盤状の磁石11の上面に接続される円盤状の磁性体(以下、プレートという。)12と、プレート12の上面に接続される円盤状の補助磁石13と、ヨーク14と、によって構成されている。
【0021】
円盤状の磁石11は、高さ方向に着磁されている。より具体的には、上側にN極下側にS極となるように着磁されている。プレート12は、その外径が円盤状の磁石11の外径よりも一回り大きく形成されている。これにより、円盤状の磁石11より放出される磁束の漏洩を抑制することができる。ヨーク14は、筒状部141と筒状部141の下部が接続される円盤状の底部142(本発明の基部に相当する。)とによって構成されている。
【0022】
なお、本実施形態のスピーカ101では、磁気回路1に、円盤状の磁石11、プレート12、円盤状の補助磁石13、ヨーク14の夫々の中央部に、互いに連通することで振動板によって動かされる空気を背面側へ排気する排気孔50が設けられている。これにより、コーン型振動板34の背面側からの排気が可能となり、音質をより高められている。
【0023】
また、第一実施形態のヨーク14には、底部142の中央部分に段差部149が設けられている。段差部149は、排気孔50の外側に、コーン型振動板34の前面側に凹むように形成されている。ヨーク14の底部142とブラケット21との間からはみ出る余分な接着剤は、この段差部149に流れ込む。従って、従来では、余分な接着剤が直接排気孔内へはみ出していたが、本実施形態のスピーカによれば、余分な接着剤が必ず段差部149を通ることになる。つまり、余分の接着剤の排気孔50への到達が抑制されることになる。これにより、余分な接着剤によって排気孔50内が塞がれることもなくなり、良質な音を提供することが可能となる。
【0024】
ここで、第一実施形態のスピーカ磁気回路1における磁束の流れについて簡単に説明する。円盤状の磁石11のN極(紙面上側)から放出される磁束の方向は、プレート12内で径方向外向き、磁気ギャップ31内で径方向外向きとなっている。そして、磁気ギャップ31内を径方向外向きの磁束は、ヨーク14の筒状部141内において下向きとなり、ヨーク14の底部142では、径方向内向きとなる。その後、磁束の向きは円盤状の磁石11のS極へと導かれて上向きとなる。以上により、第一実施形態のスピーカ磁気回路1は、閉じた磁気回路を形成する。
【0025】
次に、磁気回路1の下部と接続されるブラケット2について説明する。ブラケット2は、磁気回路1を保持する部材であり、電気コネクタや相手側部材と接続される。相手側部材とは、例えば、車両用音響機器の場合は車体、スピーカボックスではバッフル板等が該当する。本実施形態のブラケット2は、ヨーク14の底部142の外径と略同径の円盤状のブラケット底部21と、ブラケット底部21から上部へ立ち上げられ、ヨーク14の筒状部141の下側を覆うブラケット筒状部22と、によって構成されている。また、ブラケット2のブラケット底部21には、磁気回路1の排気孔50を通る空気を排気するためのブラケット排気孔23が設けられている。
【0026】
ブラケット2は、ブラケット底部21の上面とヨーク14の底部の背面側とが接着剤を介して接続される。ブラケット底部21の中央部分、換言すると、ブラケット排気孔23の縁部には、ヨーク14の段差部149の内側面143よりも内側に僅かに突出する突出部24が設けられ、この突出部24は、上方向に押し上げられている。換言すると、突出部24は、ブラケット底部21よりも上方向に押し上げられ、突出部24とブラケット底部21との接続部分には、階段部241が設けられている。更に、この突出部24の外側面242と、ヨーク14の段差部149の内側面143との間には、間隙が設けられ、この間隙には、余分な接着剤が収容される。これにより、本実施形態のスピーカ101では、ヨーク14とブラケット2とを接続するための接着剤が直接排気孔50内へはみ出すことが防止される。その結果、排気の流れに乱れを生じさせることが低減され、スピーカの性能低下を防止することができる。
【0027】
なお、上記第一実施形態のブラケット2は、穴あき加工を途中で止めることで凸部を形成する、いわゆる半抜き加工や、絞り加工によって形成することができる。また、階段部241の位置は、限定されるものではないが、突出部24の外側面とヨーク14の段差部149の内側面143との間に間隙が形成されるように、階段部241は、ヨーク14の段差部149の内側面143よりも僅かに内側に設けることが好ましい。なお、突出部24は、段差部149の内側面143の更に内側に設けられることになるが、設計時に予め設けられているものであり、排気の流れを想定外に変化させるものではない。従って、良質な音を提供することができる。
【0028】
以上説明した第一実施形態のスピーカ101によれば、余分の接着剤の排気孔50への到達が抑制されることになる。これにより、余分な接着剤によって排気孔50内が塞がれることもなくなり、良質な音を提供することが可能となる。また、ブラケット2の突出部
24によって、余分な接着剤が確実に段差部149内へ導かれる。また、ブラケット2の突出部24の外側面242と、ヨーク14の段差部149の内側面143との間の間隙に、ブラケット2とヨーク14との間から流れでた接着剤を収容することができる。これにより、余分な接着剤が排気孔50内へ直接はみ出すことをより効果的に防止することができる。その結果、排気の流れに乱れを生じさせることが低減され、スピーカの性能低下を防止することができる。また、従来では、このような接着剤のはみ出しを、ブラケット排気孔23と略同径の治具をブラケット排気孔23内に収めることで防止していたが、本実施形態のスピーカ101によれば、このような従来必要とされた治具も不要となる。
【0029】
(第二実施形態)
次に、第二実施形態のスピーカについて説明する。図4は、第二実施形態のスピーカの概略断面図を示す。同図に示すように、第二実施形態のスピーカ102は、第一実施形態のスピーカ101と同じく、磁気回路1と、ブラケット2aと、スピーカ上部構造3と、によって構成されている。なお、ブラケット2a以外の構成は、第一実施形態と同様であるので、同一符号を付すことでその詳細な説明は省略する。
【0030】
第二実施形態のブラケット2aも基本的には、第一実施形態のブラケット2と同様の構成を有しているが、第二実施形態のブラケット2aには、第一実施形態の突出部24に替えて、折り返し部25が設けられている。折り返し部25は、ブラケット排気孔23の縁部が、上方向に略直角に折り曲げられることで形成されている。折り返し部25の外側面251とヨーク14の段差部149の内側面143との間には、間隙が設けられ、この間隙には、排気孔50内へはみ出る接着剤が収容可能である。
【0031】
なお、上記第二実施形態のブラケット2aは、ブラケットを構成するプレートの中心部を刳り貫き、刳り貫いた縁部を上部へ略90度に折り曲げることで形成することができる。折り曲げるに際しては、折り返し部25の外側面251とヨーク14の段差部149の内側面143との間に間隙が形成されるように、ヨーク14の段差部149の内側面143よりも僅かに内側で折り曲げる必要がある。
【0032】
これにより、第二実施形態のスピーカ102においても、ヨーク14とブラケット2aとを接続するための接着剤が排気孔50内へ直接はみ出すことが防止される。その結果、排気の流れに乱れを生じさせることが低減され、スピーカの性能低下を防止することができる。また、折り返し部25は、ブラケット2aを相手側部材へ固定する際の位置決めや、ブラケット2aをヨーク14と接続する際の位置決めとしても機能する。その結果、第二実施形態のスピーカ102によれば、より簡単にスピーカを相手側部材へ固定することが可能となる。
【0033】
(第三実施形態)
次に第三実施形態のスピーカについて説明する。図5は、第三実施形態のスピーカの概略断面図を示す。同図に示すように、第三実施形態のスピーカ103は、第一実施形態のスピーカ101と同じく、磁気回路1と、ブラケット2bと、スピーカ上部構造3と、によって構成されている。なお、ブラケット2b以外の構成は、第一実施形態と同様であるので、同一符号を付すことでその詳細な説明は省略する。
【0034】
第三実施形態のブラケット2bも基本的には、第一実施形態のブラケット2と同様の構成を有しているが、第三実施形態のブラケット2bは、ヨーク14の底部142との接着面が内側に延出された延出部26を有し、延出部26の更に内側にパンチング孔27が複数設けられている。なお、この複数のパンチング孔27が排気孔として機能する。図6は、第三実施形態のブラケット2bの平面図を示す。なお、点線は、ヨーク14の段差部149の内側面143を示す。同図に示すように、ブラケット2bの底部142のうち、ヨ
ーク14との接触面が内側に延出されている。その結果、はみ出した接着剤は、この延出部26上に広がる。すなわち、接着剤は、設計時に予め内側へ延出している延出部26上に接着部に溜まり、排気の流れを妨げるように排気孔(パンチング孔27)内に流入して排気の流れを妨げることはない。
【0035】
以上説明したように、第三実施形態のスピーカ103によっても、ヨーク14とブラケット2bとを接続するための接着剤が排気孔(本実施形態では、複数のパンチング孔27)内へ直接はみ出すことが防止される。その結果、排気の流れに乱れを生じさせることが低減され、スピーカの性能低下を防止することができる。なお、延出部26の長さを十分とることで、接着剤がパンチング孔27に流入することはない。但し、より確実にパンチング孔27への流入を防止するため、延出部26には、パンチング孔27への流入を防止する流入抑止壁28を設けてもよい。ここで、図7は、流入抑止壁28が設けられたブラケット2bの断面図を示す。同図に示すように、図7に示すブラケット2bには、延出部26の内側に、ヨーク14の段差部149の内側面143と所定間隔をあけて上向きに立ち上げられた流入抑止壁28が設けられている。これにより、接着剤は、この流入抑止壁28によってせき止められ、流入抑止壁28とヨーク14の段差部149の内側面143との間に収容される。その結果、より確実に、パンチング孔27への接着剤の流入を防止し、排気の流れに乱れを生じさせることを防止することができる。
【0036】
以上、本発明の好適な実施形態を説明したが、本発明に係るスピーカはこれらに限らず、可能な限りこれらの組合せを含むことができる。なお、上述した実施形態では、ブラケット2側の形状を工夫したが、ヨーク14の段差部149の内側面143に溝部144を設けるようにしてもよい(図8参照。)これにより、はみ出した接着剤をより効果的に収容することができる。また、ヨーク14の段差部149の内側面143とヨーク14の底部142の背面側との隅部に切り欠き部145を形成してもよい(図9参照。)これにより、はみ出した接着剤を切欠部145に収容することで、排気孔50内へ直接接着剤がはみ出ることを防止することができる。なお、ヨーク14に切欠部145を設けた場合、ブラケット2に突出部24や階段部241等が設けられていなくても、接着剤のはみ出しを防止することができる。但し、これらを適宜組み合わせることでより効果的に接着剤が排気孔50内へ直接はみ出すことを防止することができる。また、ヨーク14の底部142の背面に例えば余分な接着剤を収容する背面側溝部148を設けてもよい(図10参照。)これにより、段差部149のみを設ける場合に比べて、より効果的に接着剤のはみ出しを抑制することが可能となる。
【図面の簡単な説明】
【0037】
【図1】従来のスピーカの一例を示す。
【図2】接着剤が排気孔へはみ出した状態を示す。
【図3】第一実施形態のスピーカの概略断面図を示す。
【図4】第二実施形態のスピーカの概略断面図を示す。
【図5】第三実施形態のスピーカの概略断面図を示す。
【図6】第三実施形態のブラケットの平面図を示す。
【図7】流入抑止壁が設けられたブラケットの断面図を示す。
【図8】溝部が設けられたヨークの断面図を示す。
【図9】切欠部が設けられたヨークの断面図を示す。
【図10】背面側溝が設けられたヨークの断面図を示す。
【符号の説明】
【0038】
1・・・磁気回路
2、2a、2b・・・ブラケット
3・・・スピーカ上部構造
11・・・磁石
12・・・プレート
13・・・補助磁石
14・・・ヨーク
21・・・ブラケット底部
22・・・ブラケット筒状部
23・・・ブラケット排気孔
24・・・突出部
25・・・折り返し部
26・・・延出部
27・・・パンチング孔
31・・・磁気ギャップ
32・・・ボイスコイル
33・・・ボイスコイルボビン
34・・・コーン型振動板
35・・・フレーム
36・・・ダンパ
37・・・センターキャップ
38・・・ガスケット
39・・・ネット
40・・・面クッション
50・・・排気孔
149・・・段差部
【技術分野】
【0001】
本発明は、スピーカに関する。
【背景技術】
【0002】
音響特性の向上や音質向上を目的として、スピーカに関する種々の技術が提案されている。例えば、特許文献1には、磁気回路を収容する外周壁を備えるスピーカであって、スピーカを構成する磁気回路収容部の外周壁を流線型にする技術が開示されている。この技術によれば、外周壁を流線型とすることで、スピーカの背面側の空気の流れに乱れが生じるのを低減し、スピーカの性能が低下することを防止することができる。
【特許文献1】特開2006−229520号公報
【特許文献2】特開2005−277561号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0003】
音響特性の向上や音質向上を目的として、スピーカに関する種々の技術が提案されている。ここで図1は、従来のスピーカの一例を示す。図1に示す従来のスピーカでは、磁気回路1x、換言するとヨーク14xに振動板34xにより動かされる空気を逃がすための排気孔50xが形成され、音質向上が図られている。一方、この従来のスピーカ100では、ヨーク14xとブラケット2xとの接続が接着剤によって行われている。その結果、接着剤がヨーク14xの排気孔50にはみ出し、振動板34xによる空気の排気を妨げる虞があった(図2参照。)。
【0004】
本発明では、上記した背景に鑑み、排気のための排気孔を有する磁気回路を備えるスピーカであって、磁気回路とブラケットとを接着剤によって固定する際、接着剤のはみ出しによる排気への影響を抑制して良質な音を提供できるスピーカに関する技術を提供することを課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0005】
本発明では、上述した課題を解決するため、磁性体に、該磁性体とガスケットとの接触部分からはみ出る余分な接着剤が排気孔へ到達することを抑制する段差部を設けることとした。
【0006】
より詳細には、本発明は、振動板を振動させる磁気回路であって、該振動板により動かされる空気を該振動板の背面側に逃がす排気孔を有する磁気回路と、前記磁気回路の一部を構成し、該磁気回路の背面側に設けられる基部を有する磁性体であって、該基部に前記排気孔としての磁性体排気孔を有する磁性体と、前記磁性体の基部の背面と接着剤を介して面接続される、前記磁気回路を保持するブラケットであって、前記磁性体排気孔と連通するブラケット排気孔を有するブラケットと、を備え、前記磁性体は、前記磁性体排気孔の周囲に前記振動板の前面側に凹んだ段差部であって、前記磁性体の基部と前記ガスケットとの接触部分からはみ出る余分な接着剤が前記排気孔へ到達することを抑制する段差部を有する。
【0007】
磁気回路は、振動板からの空気を排気する排気孔を有していればよい。磁性体は、磁気回路の背面側に設けられる基部を有し、この基部には、排気孔としての磁性体排気孔を有する。磁気回路は、磁石や磁性体といった一般的な構成を有するとともに、閉じた回路を形成することで振動板を振動させることができればよい。また、本発明の磁気回路は、内磁型、外磁型いずれでもよい。
【0008】
ブラケットは、磁気回路、より詳細には、磁気回路を構成する磁性体を保持するものであり、電気コネクタと接続されるコネクタ固定用ブラケットによって構成することができる。また、ブラケットは、相手側部材(例えば、車両用音響機器の場合は車体、スピーカボックスではバッフル板等。)と接続するものでもよい。本発明のブラケットは、磁性体の基部の背面側と接着剤を介して面接続される。すなわち、本発明によれば、接着剤によって磁性体とブラケットとの接続を行うことができ、螺子等を用いて磁性体とブラケットと接続する技術に比べて容易に磁性体とブラケットとを接続することができる。螺子等を用いることなく、接続できることから、従来の螺子等を用いて接続する技術に比べて、より容易に接続することが可能となる。
【0009】
ここで、従来、接着剤を用いて磁性体とブラケットとを接続する場合には、接着剤が排気孔へはみ出すことにより、振動板により動かされる空気の排気が妨げられるといった問題があった。また、接着剤のはみ出しを防止するには、排気孔内へ治具を挿入するといったように別途治具が必要であり、工程も煩雑になるといった問題があった。
【0010】
このような課題を解決するため、本発明のスピーカは、磁性体が、磁性体排気孔の周囲に振動板の前面側に凹んだ段差部であって、磁性体の基部とガスケットとの接触部分からはみ出る余分な接着剤が排気孔へ到達することを抑制する段差部を有することを特徴とする。これにより、余分な接着剤は、必ず段差部を通ることになる。つまり、従来においては、余分な接着剤は直接排気孔内へはみ出していたが、本発明によれば、余分な接着剤は、段差部を必ず通る。従って、排気孔までの距離が長くなることで余分な接着剤が排気孔内へ到達することが抑制される。なお、段差部の形状等は、特に限定されないが、段差部の高さを高くし、又は、段差部の面積を増加させることで、余分な接着剤が排気孔へ到達するのをより効果的に抑制することが可能となる。
【0011】
ここで、本発明において、前記ブラケットは、前記排気孔の近傍に、前記余分な接着剤を前記段差部へ導くことで該余分な接着剤が前記排気孔へはみ出すのを抑制する抑制部を有する構成としてもよい。ブラケット側に抑制部を設けることで、更に効果的に余分な接着剤の排気孔へのはみ出しを抑制することが可能となる。
【0012】
なお、前記抑制部は、前記段差部の内側面よりも内側に設けられ、前記余分な接着剤をせき止め、該接着剤を前記振動板の前面方向へ導く抑止壁とすることができる。上記抑止壁を設けることで、余分な接着剤が振動板の前面方向に導いて、段差部内へ導くことが可能となる。
【0013】
また、本発明のスピーカにおいて、前記抑止壁は、前記振動板の前面方向に延出することで前記段差部の内側面と対向し、前記抑止壁と該抑止壁と対向する前記磁性体排気孔の内側面との間には、該抑止壁によってせき止められた接着剤が収容される間隙が設けられているようにしてもよい。本発明のスピーカによれば、上記間隙に、はみ出した接着剤を収容することが可能となる。
【0014】
また、本発明のスピーカにおいて、前記ブラケットは、前記抑制部として、前記段差部の内側面よりも内側に延出した延出部と、該延出部の内側に設けられ、前記ブラケット排気孔としての複数の貫通孔と、を有するようにしてもよい。
【0015】
本発明のブラケットでは、段差部の内側面よりも内側に延出した延出部を設けることで、この延出部に接着剤が溜まる。延出部は、設計時に予め内側へ延出しており、想定外に排気の流れを妨げられることはない。また、この接着剤を溜める延出部の内側には、排気孔に相当する複数の貫通孔が設けられおり、空気の排気が十分に確保される。なお、延出
部の長さを十分とることで、接着剤の複数の貫通孔への流入を防止することができる。但し、より確実に複数の貫通孔への接着剤の流入を防止するため、延出部には、複数の貫通孔への流入を防止する流入抑止壁を設けてもよい。
【発明の効果】
【0016】
本発明によれば、排気のための排気孔を有する磁気回路を備えるスピーカであって、磁気回路とブラケットとを接着剤によって固定する際、接着剤のはみ出しによる排気への影響を抑制して良質な音を提供できるスピーカに関する技術を提供することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0017】
次に、本発明のスピーカの実施形態について図面に基づいて説明する。
【0018】
(第一実施形態)
<構成>
図3は、第一実施形態のスピーカの概略断面図を示す。なお、同図は、スピーカを正面視した場合の断面を示す。同図に示すように、第一実施形態のスピーカ101は、コーン型振動板34からの空気を排出する排気孔50を有する磁気回路1と、磁気回路1の下部と接続されるブラケット2と、磁気回路1の上部に接続されるスピーカ上部構造3と、によって構成されている。
【0019】
まず、スピーカ上部構造3について説明する。スピーカ上部構造3は、磁気ギャップ31に挿入されるボイスコイル32と、ボイスコイル32の振動を伝達するボイスコイルボビン33と、ボイスコイルボビン33を介して伝達された振動を音波として発するコーン型振動板34と、コーン型振動板34を保持するフレーム35と、ボイスコイル32が所定の磁界に収まるように保持すると共にボイスコイル32が無制限に振動するのを抑制するダンパ36と、コーン型振動板34に取り付けられ、コーン型振動板34の径方向の変形防止及び塵埃などの進入を防止するセンターキャップ37と、フレーム35と接続されるガスケット38を介してセンターキャップ37を覆うように設置された塵埃などの進入を防止するネット39と、ガスケット38の正面側と接続され、ネット39がスピーカ101の筐体と直接接続するのを防止する面クッション40と、によって構成されている。なお、スピーカ上部構造3は、従来の構成を用いることができ、上記はあくまで一例にすぎない。
【0020】
次に磁気回路1について説明する。磁気回路1も上述したスピーカ上部構造3と同様に、基本的には、従来の磁気回路を用いることができる。本実施形態の磁気回路1は、円盤状の磁石11と、円盤状の磁石11の上面に接続される円盤状の磁性体(以下、プレートという。)12と、プレート12の上面に接続される円盤状の補助磁石13と、ヨーク14と、によって構成されている。
【0021】
円盤状の磁石11は、高さ方向に着磁されている。より具体的には、上側にN極下側にS極となるように着磁されている。プレート12は、その外径が円盤状の磁石11の外径よりも一回り大きく形成されている。これにより、円盤状の磁石11より放出される磁束の漏洩を抑制することができる。ヨーク14は、筒状部141と筒状部141の下部が接続される円盤状の底部142(本発明の基部に相当する。)とによって構成されている。
【0022】
なお、本実施形態のスピーカ101では、磁気回路1に、円盤状の磁石11、プレート12、円盤状の補助磁石13、ヨーク14の夫々の中央部に、互いに連通することで振動板によって動かされる空気を背面側へ排気する排気孔50が設けられている。これにより、コーン型振動板34の背面側からの排気が可能となり、音質をより高められている。
【0023】
また、第一実施形態のヨーク14には、底部142の中央部分に段差部149が設けられている。段差部149は、排気孔50の外側に、コーン型振動板34の前面側に凹むように形成されている。ヨーク14の底部142とブラケット21との間からはみ出る余分な接着剤は、この段差部149に流れ込む。従って、従来では、余分な接着剤が直接排気孔内へはみ出していたが、本実施形態のスピーカによれば、余分な接着剤が必ず段差部149を通ることになる。つまり、余分の接着剤の排気孔50への到達が抑制されることになる。これにより、余分な接着剤によって排気孔50内が塞がれることもなくなり、良質な音を提供することが可能となる。
【0024】
ここで、第一実施形態のスピーカ磁気回路1における磁束の流れについて簡単に説明する。円盤状の磁石11のN極(紙面上側)から放出される磁束の方向は、プレート12内で径方向外向き、磁気ギャップ31内で径方向外向きとなっている。そして、磁気ギャップ31内を径方向外向きの磁束は、ヨーク14の筒状部141内において下向きとなり、ヨーク14の底部142では、径方向内向きとなる。その後、磁束の向きは円盤状の磁石11のS極へと導かれて上向きとなる。以上により、第一実施形態のスピーカ磁気回路1は、閉じた磁気回路を形成する。
【0025】
次に、磁気回路1の下部と接続されるブラケット2について説明する。ブラケット2は、磁気回路1を保持する部材であり、電気コネクタや相手側部材と接続される。相手側部材とは、例えば、車両用音響機器の場合は車体、スピーカボックスではバッフル板等が該当する。本実施形態のブラケット2は、ヨーク14の底部142の外径と略同径の円盤状のブラケット底部21と、ブラケット底部21から上部へ立ち上げられ、ヨーク14の筒状部141の下側を覆うブラケット筒状部22と、によって構成されている。また、ブラケット2のブラケット底部21には、磁気回路1の排気孔50を通る空気を排気するためのブラケット排気孔23が設けられている。
【0026】
ブラケット2は、ブラケット底部21の上面とヨーク14の底部の背面側とが接着剤を介して接続される。ブラケット底部21の中央部分、換言すると、ブラケット排気孔23の縁部には、ヨーク14の段差部149の内側面143よりも内側に僅かに突出する突出部24が設けられ、この突出部24は、上方向に押し上げられている。換言すると、突出部24は、ブラケット底部21よりも上方向に押し上げられ、突出部24とブラケット底部21との接続部分には、階段部241が設けられている。更に、この突出部24の外側面242と、ヨーク14の段差部149の内側面143との間には、間隙が設けられ、この間隙には、余分な接着剤が収容される。これにより、本実施形態のスピーカ101では、ヨーク14とブラケット2とを接続するための接着剤が直接排気孔50内へはみ出すことが防止される。その結果、排気の流れに乱れを生じさせることが低減され、スピーカの性能低下を防止することができる。
【0027】
なお、上記第一実施形態のブラケット2は、穴あき加工を途中で止めることで凸部を形成する、いわゆる半抜き加工や、絞り加工によって形成することができる。また、階段部241の位置は、限定されるものではないが、突出部24の外側面とヨーク14の段差部149の内側面143との間に間隙が形成されるように、階段部241は、ヨーク14の段差部149の内側面143よりも僅かに内側に設けることが好ましい。なお、突出部24は、段差部149の内側面143の更に内側に設けられることになるが、設計時に予め設けられているものであり、排気の流れを想定外に変化させるものではない。従って、良質な音を提供することができる。
【0028】
以上説明した第一実施形態のスピーカ101によれば、余分の接着剤の排気孔50への到達が抑制されることになる。これにより、余分な接着剤によって排気孔50内が塞がれることもなくなり、良質な音を提供することが可能となる。また、ブラケット2の突出部
24によって、余分な接着剤が確実に段差部149内へ導かれる。また、ブラケット2の突出部24の外側面242と、ヨーク14の段差部149の内側面143との間の間隙に、ブラケット2とヨーク14との間から流れでた接着剤を収容することができる。これにより、余分な接着剤が排気孔50内へ直接はみ出すことをより効果的に防止することができる。その結果、排気の流れに乱れを生じさせることが低減され、スピーカの性能低下を防止することができる。また、従来では、このような接着剤のはみ出しを、ブラケット排気孔23と略同径の治具をブラケット排気孔23内に収めることで防止していたが、本実施形態のスピーカ101によれば、このような従来必要とされた治具も不要となる。
【0029】
(第二実施形態)
次に、第二実施形態のスピーカについて説明する。図4は、第二実施形態のスピーカの概略断面図を示す。同図に示すように、第二実施形態のスピーカ102は、第一実施形態のスピーカ101と同じく、磁気回路1と、ブラケット2aと、スピーカ上部構造3と、によって構成されている。なお、ブラケット2a以外の構成は、第一実施形態と同様であるので、同一符号を付すことでその詳細な説明は省略する。
【0030】
第二実施形態のブラケット2aも基本的には、第一実施形態のブラケット2と同様の構成を有しているが、第二実施形態のブラケット2aには、第一実施形態の突出部24に替えて、折り返し部25が設けられている。折り返し部25は、ブラケット排気孔23の縁部が、上方向に略直角に折り曲げられることで形成されている。折り返し部25の外側面251とヨーク14の段差部149の内側面143との間には、間隙が設けられ、この間隙には、排気孔50内へはみ出る接着剤が収容可能である。
【0031】
なお、上記第二実施形態のブラケット2aは、ブラケットを構成するプレートの中心部を刳り貫き、刳り貫いた縁部を上部へ略90度に折り曲げることで形成することができる。折り曲げるに際しては、折り返し部25の外側面251とヨーク14の段差部149の内側面143との間に間隙が形成されるように、ヨーク14の段差部149の内側面143よりも僅かに内側で折り曲げる必要がある。
【0032】
これにより、第二実施形態のスピーカ102においても、ヨーク14とブラケット2aとを接続するための接着剤が排気孔50内へ直接はみ出すことが防止される。その結果、排気の流れに乱れを生じさせることが低減され、スピーカの性能低下を防止することができる。また、折り返し部25は、ブラケット2aを相手側部材へ固定する際の位置決めや、ブラケット2aをヨーク14と接続する際の位置決めとしても機能する。その結果、第二実施形態のスピーカ102によれば、より簡単にスピーカを相手側部材へ固定することが可能となる。
【0033】
(第三実施形態)
次に第三実施形態のスピーカについて説明する。図5は、第三実施形態のスピーカの概略断面図を示す。同図に示すように、第三実施形態のスピーカ103は、第一実施形態のスピーカ101と同じく、磁気回路1と、ブラケット2bと、スピーカ上部構造3と、によって構成されている。なお、ブラケット2b以外の構成は、第一実施形態と同様であるので、同一符号を付すことでその詳細な説明は省略する。
【0034】
第三実施形態のブラケット2bも基本的には、第一実施形態のブラケット2と同様の構成を有しているが、第三実施形態のブラケット2bは、ヨーク14の底部142との接着面が内側に延出された延出部26を有し、延出部26の更に内側にパンチング孔27が複数設けられている。なお、この複数のパンチング孔27が排気孔として機能する。図6は、第三実施形態のブラケット2bの平面図を示す。なお、点線は、ヨーク14の段差部149の内側面143を示す。同図に示すように、ブラケット2bの底部142のうち、ヨ
ーク14との接触面が内側に延出されている。その結果、はみ出した接着剤は、この延出部26上に広がる。すなわち、接着剤は、設計時に予め内側へ延出している延出部26上に接着部に溜まり、排気の流れを妨げるように排気孔(パンチング孔27)内に流入して排気の流れを妨げることはない。
【0035】
以上説明したように、第三実施形態のスピーカ103によっても、ヨーク14とブラケット2bとを接続するための接着剤が排気孔(本実施形態では、複数のパンチング孔27)内へ直接はみ出すことが防止される。その結果、排気の流れに乱れを生じさせることが低減され、スピーカの性能低下を防止することができる。なお、延出部26の長さを十分とることで、接着剤がパンチング孔27に流入することはない。但し、より確実にパンチング孔27への流入を防止するため、延出部26には、パンチング孔27への流入を防止する流入抑止壁28を設けてもよい。ここで、図7は、流入抑止壁28が設けられたブラケット2bの断面図を示す。同図に示すように、図7に示すブラケット2bには、延出部26の内側に、ヨーク14の段差部149の内側面143と所定間隔をあけて上向きに立ち上げられた流入抑止壁28が設けられている。これにより、接着剤は、この流入抑止壁28によってせき止められ、流入抑止壁28とヨーク14の段差部149の内側面143との間に収容される。その結果、より確実に、パンチング孔27への接着剤の流入を防止し、排気の流れに乱れを生じさせることを防止することができる。
【0036】
以上、本発明の好適な実施形態を説明したが、本発明に係るスピーカはこれらに限らず、可能な限りこれらの組合せを含むことができる。なお、上述した実施形態では、ブラケット2側の形状を工夫したが、ヨーク14の段差部149の内側面143に溝部144を設けるようにしてもよい(図8参照。)これにより、はみ出した接着剤をより効果的に収容することができる。また、ヨーク14の段差部149の内側面143とヨーク14の底部142の背面側との隅部に切り欠き部145を形成してもよい(図9参照。)これにより、はみ出した接着剤を切欠部145に収容することで、排気孔50内へ直接接着剤がはみ出ることを防止することができる。なお、ヨーク14に切欠部145を設けた場合、ブラケット2に突出部24や階段部241等が設けられていなくても、接着剤のはみ出しを防止することができる。但し、これらを適宜組み合わせることでより効果的に接着剤が排気孔50内へ直接はみ出すことを防止することができる。また、ヨーク14の底部142の背面に例えば余分な接着剤を収容する背面側溝部148を設けてもよい(図10参照。)これにより、段差部149のみを設ける場合に比べて、より効果的に接着剤のはみ出しを抑制することが可能となる。
【図面の簡単な説明】
【0037】
【図1】従来のスピーカの一例を示す。
【図2】接着剤が排気孔へはみ出した状態を示す。
【図3】第一実施形態のスピーカの概略断面図を示す。
【図4】第二実施形態のスピーカの概略断面図を示す。
【図5】第三実施形態のスピーカの概略断面図を示す。
【図6】第三実施形態のブラケットの平面図を示す。
【図7】流入抑止壁が設けられたブラケットの断面図を示す。
【図8】溝部が設けられたヨークの断面図を示す。
【図9】切欠部が設けられたヨークの断面図を示す。
【図10】背面側溝が設けられたヨークの断面図を示す。
【符号の説明】
【0038】
1・・・磁気回路
2、2a、2b・・・ブラケット
3・・・スピーカ上部構造
11・・・磁石
12・・・プレート
13・・・補助磁石
14・・・ヨーク
21・・・ブラケット底部
22・・・ブラケット筒状部
23・・・ブラケット排気孔
24・・・突出部
25・・・折り返し部
26・・・延出部
27・・・パンチング孔
31・・・磁気ギャップ
32・・・ボイスコイル
33・・・ボイスコイルボビン
34・・・コーン型振動板
35・・・フレーム
36・・・ダンパ
37・・・センターキャップ
38・・・ガスケット
39・・・ネット
40・・・面クッション
50・・・排気孔
149・・・段差部
【特許請求の範囲】
【請求項1】
振動板を振動させる磁気回路であって、該振動板により動かされる空気を該振動板の背面側に逃がす排気孔を有する磁気回路と、
前記磁気回路の一部を構成し、該磁気回路の背面側に設けられる基部を有する磁性体であって、該基部に前記排気孔としての磁性体排気孔を有する磁性体と、
前記磁性体の基部の背面と接着剤を介して面接続される、前記磁気回路を保持するブラケットであって、前記磁性体排気孔と連通するブラケット排気孔を有するブラケットと、を備え、
前記磁性体は、前記磁性体排気孔の周囲に前記振動板の前面側に凹んだ段差部であって、前記磁性体の基部と前記ガスケットとの接触部分からはみ出る余分な接着剤が前記排気孔へ到達することを抑制する段差部を有する、スピーカ。
【請求項2】
前記ブラケットは、前記排気孔の近傍に、前記余分な接着剤を前記段差部へ導くことで該余分な接着剤が前記排気孔へはみ出すのを抑制する抑制部を有する、請求項1に記載のスピーカ。
【請求項3】
前記抑制部は、前記段差部の内側面よりも内側に設けられ、前記余分な接着剤をせき止め、該接着剤を前記振動板の前面方向へ導く抑止壁である、請求項2に記載のスピーカ。
【請求項4】
前記抑止壁は、前記振動板の前面方向に延出することで前記段差部の内側面と対向し、
前記抑止壁と該抑止壁と対向する前記磁性体排気孔の内側面との間には、該抑止壁によってせき止められた接着剤が収容される間隙が設けられている、請求項3に記載のスピーカ。
【請求項5】
前記ブラケットは、前記抑制部として、前記段差部の内側面よりも内側に延出した延出部と、該延出部の内側に設けられ、前記ブラケット排気孔としての複数の貫通孔と、を有する、請求項2に記載のスピーカ。
【請求項1】
振動板を振動させる磁気回路であって、該振動板により動かされる空気を該振動板の背面側に逃がす排気孔を有する磁気回路と、
前記磁気回路の一部を構成し、該磁気回路の背面側に設けられる基部を有する磁性体であって、該基部に前記排気孔としての磁性体排気孔を有する磁性体と、
前記磁性体の基部の背面と接着剤を介して面接続される、前記磁気回路を保持するブラケットであって、前記磁性体排気孔と連通するブラケット排気孔を有するブラケットと、を備え、
前記磁性体は、前記磁性体排気孔の周囲に前記振動板の前面側に凹んだ段差部であって、前記磁性体の基部と前記ガスケットとの接触部分からはみ出る余分な接着剤が前記排気孔へ到達することを抑制する段差部を有する、スピーカ。
【請求項2】
前記ブラケットは、前記排気孔の近傍に、前記余分な接着剤を前記段差部へ導くことで該余分な接着剤が前記排気孔へはみ出すのを抑制する抑制部を有する、請求項1に記載のスピーカ。
【請求項3】
前記抑制部は、前記段差部の内側面よりも内側に設けられ、前記余分な接着剤をせき止め、該接着剤を前記振動板の前面方向へ導く抑止壁である、請求項2に記載のスピーカ。
【請求項4】
前記抑止壁は、前記振動板の前面方向に延出することで前記段差部の内側面と対向し、
前記抑止壁と該抑止壁と対向する前記磁性体排気孔の内側面との間には、該抑止壁によってせき止められた接着剤が収容される間隙が設けられている、請求項3に記載のスピーカ。
【請求項5】
前記ブラケットは、前記抑制部として、前記段差部の内側面よりも内側に延出した延出部と、該延出部の内側に設けられ、前記ブラケット排気孔としての複数の貫通孔と、を有する、請求項2に記載のスピーカ。
【図1】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【公開番号】特開2009−194774(P2009−194774A)
【公開日】平成21年8月27日(2009.8.27)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−35337(P2008−35337)
【出願日】平成20年2月15日(2008.2.15)
【出願人】(000237592)富士通テン株式会社 (3,383)
【Fターム(参考)】
【公開日】平成21年8月27日(2009.8.27)
【国際特許分類】
【出願日】平成20年2月15日(2008.2.15)
【出願人】(000237592)富士通テン株式会社 (3,383)
【Fターム(参考)】
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