スピーカ
【課題】 簡単な構成で引出し線の破断を抑制することができるスピーカを提供する。
【解決手段】 円筒状の磁気ギャップ16を有する磁気回路11,12,15と、前記磁気ギャップに収納したボイスコイル14と、このボイスコイルを支持する振動板4と、前記振動板4を保持し前記磁気回路の一部が取付けられたフレーム2と、前記ボイスコイルの引出し線14aが、前記振動板5に接触することなく引出され、中間位置に屈曲部14cが形成され、当該屈曲部14cが弾性粘着剤により前記フレーム2に接着されている。
【解決手段】 円筒状の磁気ギャップ16を有する磁気回路11,12,15と、前記磁気ギャップに収納したボイスコイル14と、このボイスコイルを支持する振動板4と、前記振動板4を保持し前記磁気回路の一部が取付けられたフレーム2と、前記ボイスコイルの引出し線14aが、前記振動板5に接触することなく引出され、中間位置に屈曲部14cが形成され、当該屈曲部14cが弾性粘着剤により前記フレーム2に接着されている。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、スピーカに関し、特に、例えばカーナビゲーションシステムやガス漏れ警報器など比較的小型の電子機器に用いられるスピーカに関する。
【背景技術】
【0002】
近年、カーナビゲーション機器やガス漏れ警報器など小型の電子機器が動作確認や動作手順などを音声で説明するように構成されているものが多くなってきている。このようなしゃべる電子機器には、小型のスピーカが搭載されており、電子機器の制御部からの信号により発声する。
【0003】
図10は、小型の電子機器に使用される従来のスピーカの構成を示す断面図である。図10に示す従来のスピーカ100は、有底容器形状の磁性体で作成されたヨーク101内に円板状の磁石102を配置し、磁石の上面にポールピース103を配置する。ポールピース103とヨーク101の側壁101aによって形成された磁気ギャップの間には、ごく細いコイルを環状に巻き束ねたボイスコイル104が配置される。ボイスコイル104は、振動板105の背面側に接着剤105aで固定されている。振動板105の外周縁部分が、上記ヨーク101を収納したケース106に固定され、ボイスコイル104が上記磁気ギャップ内に収まるように位置あわせされている。
【0004】
また、ボイスコイル104の引出し線104aは、ボイスコイル104の下端から引き回され、ヨーク101を通ってヨーク101の外側に引き回される。
【0005】
このような構成のスピーカは、例えば特許第3098127号公報(特許文献1)や特開2008−263418号公報(特許文献2)などに開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【特許文献1】特許第3098127号公報
【特許文献2】特開2008−263418号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
このような構成のスピーカは、図11に示すように、振動板105の振動と一体にボイスコイル104の引出し線104aも振動する。すなわち、ボイスコイル104が実線で示した基準位置に対して矢印方向(上下方向)に振動するため、引出し線104aの一端がコイルと供に振動するため、静止した他端によって引出し線104aのたるみの程度が変化する。この引出し線の振動は、引出し線の両端104bに応力集中を発生させ、当該端部104bにおいて材料疲労による破断の原因となっていた。
【0008】
また、引出し線104aの振動による応力変化を少なくするために、引出し線を長くし、十分なたるみを持たせることもできるが、引出し線104aの長さが長くなると振動板105の振動による共振が発生し、引出し線の破断につながるという問題もあった。
【0009】
このような問題を防止するため、引出し線を振動板の裏面に沿って配置させ、引出し線の共振を防止するスピーカも存在する。しかし、引出し線の配置は、複雑な形状の振動板には困難でありスピーカの設計の障害の一つとなっており、また、引出し線により振動板の自由な振動の障害になり音質を低下させる原因となっていた。
【0010】
したがって、本発明が解決しようとする技術的課題は、簡単な構成で引出し線の破断を抑制することができるスピーカを提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0011】
本発明は、上記技術的課題を解決するために、以下の構成のスピーカを提供する。
【0012】
本発明の第1態様によれば、円筒状の磁気ギャップを有する磁気回路と、前記磁気ギャップに収納したボイスコイルと、このボイスコイルを支持する振動板と、前記振動板を保持し前記磁気回路の一部が取付けられたフレームと、前記ボイスコイルの引出し線が、前記振動板に接触することなく引出され、中間位置に屈曲部が形成され、当該屈曲部が弾性粘着剤により前記フレームに接着されていることを特徴とするスピーカを提供する。なお、本発明において屈曲部をフレームに接着する態様としては、直接フレームに固定する場合であってもよいし、例えば端子板などの他の部材を介してフレームに固定されていてもよい。
【0013】
本発明の第2態様によれば、前記引出し線は、当該屈曲部の少なくとも一部を粘着剤内に埋設するように固定されていることを特徴とする第1態様のスピーカを提供する。
【0014】
本発明の第3態様によれば、前記引出し線は、ボイスコイルの前記振動板から遠い側の端部から導出されることを特徴とする第1又は第2態様のスピーカを提供する。
【0015】
本発明の第4態様によれば、前記屈曲部は、前記引出し線の中間部に設けられた曲率が大きい部位で形成されていることを特徴とする、第1から第3態様のいずれか1つのスピーカを提供する。
【0016】
本発明の第5態様によれば、前記屈曲部は、前記引出し線を環状に巻いて形成されていることを特徴とする、第4態様のスピーカを提供する。
【0017】
本発明の第6態様によれば、前記屈曲部は、前記引出し部をS字状に屈曲させて形成されていることを特徴とする、第4態様のスピーカを提供する。
【0018】
本発明の第7態様によれば、前記粘着剤は、ダンプ剤で形成されていることを特徴とする、第1から第6態様のいずれか1つのスピーカを提供する。
【0019】
本発明の第8態様によれば、前記引出し線は、前記フレーム内に設けられた端子板に接続されていることを特徴とする、第1から第7態様のいずれか1つのスピーカを提供する。
【発明の効果】
【0020】
本発明によれば、コイルの引出し線の中間位置に屈曲部を設けているため、引出し線の振動に応じて変化する引出し線の長さ変化を屈曲部が吸収する。このため、コイルの引出し線、特に両端部に応力が集中するのを防止することができる。さらに、屈曲部に粘着剤を塗布してフレームに接着することにより、ある程度の弾性を持った状態で固定されるため、引出し線の振動が引出し線全体に伝わることが防止され、さらに、屈曲部による長さ調整によって、引出し線の共振を防止することができる。したがって、引出し線の破断を抑制することができる。
【0021】
本発明の第2態様によれば、粘着剤の内部に屈曲部を埋設することにより、フレームと引出し線の接着強度を高くすることができ、さらに、振動時における引出し線の長さの変化を確実に吸収することができるため、引出し線の破断を抑制することができる。
【0022】
本発明の第3態様によれば、ボイスコイルの引出し線をよりフレームに近い側から導出することにより、引出し線をより短くして、引出し線の共振を抑えることができる。
【0023】
本発明の第4態様によれば、引出し線を曲率が大きくなるように屈曲させることで、より簡単に屈曲部を形成することができ、引出し線の両端に加わる応力により、屈曲の度合が変化することで、応力を吸収することができる。具体的には、屈曲部は、環(ループ)状に引出し線を巻き取ったり、S字形に屈曲させることでより簡単に屈曲部を形成することができる。
【0024】
本発明の第7態様によれば、弾性粘着剤としてダンプ剤を用いることにより、引出し線の振動に応じて応力を吸収することができ、さらに、確実2フレームと引出し線を接着することができる。
【図面の簡単な説明】
【0025】
【図1】本発明の実施形態にかかるスピーカの外観構成を示す斜視図である。
【図2】図1のスピーカの構成を模式的に示す断面図である。
【図3】図1のスピーカの引出し線の取り回しの例を示す模式図である。
【図4】図1のスピーカの引出し線の取り回しの他の例を示す模式図である。
【図5】図1のスピーカの引出し線の取り回しの他の例を示す模式図である。
【図6】変形例にかかるスピーカの構成を模式的に示す断面図である。
【図7】他の変形例にかかるスピーカの構成を模式的に示す断面図である。
【図8】図1のスピーカの組み立て工程を示すフローチャートである。
【図9】図1のスピーカの組み立て工程に使用するボイスコイルの支持治具の構成を示す模式図である。
【図10】従来のスピーカ構成を模式的に示す断面図である。
【図11】振動板の振動に伴うボイスコイルの振動の様子を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0026】
以下、本発明の一実施形態に係るスピーカについて、図面を参照しながら説明する。
【0027】
図1は、本発明の実施形態にかかるスピーカの外観構成を示す斜視図である。本発明のスピーカ1は、小型の電子機器、例えば、カーナビゲーションシステムやガス漏れ警報器などに搭載されるスピーカである。
【0028】
スピーカ1は、筐体としての有底円筒形のフレーム2を備え、フレーム2の開口部分に振動板4が設けられている。振動板4は、フレーム2内に内蔵される磁気回路にリード線3から電気信号が送られることにより振動して発声する。
【0029】
振動板4は合成樹脂で作成されており、本実施形態ではポリイミド樹脂が用いられている。
【0030】
図2は、図1のスピーカの構成を模式的に示す断面図である。本実施形態にかかるスピーカ1は、図2に示すように、フレーム2の内部に各種部材が組み込まれている。
【0031】
フレーム2に組み込まれる各種部材は、マグネット11,ポールピース12,端子板13,ボイスコイル14,ヨークプレート15である。後述のように、フレーム2,マグネット11、ポールピース12、ヨークプレート14により磁気回路を構成する。
【0032】
フレーム2は、底壁5と側壁6を有する有底容器形状の部材であり、磁性体材料で構成されている。本実施形態では、厚さ0.6mmの鉄鋼が用いられる。
【0033】
フレームの底壁5は、中央に磁石を配置する磁石配置部7が形成され、その周囲に外周部8が形成される。磁石配置部7は、外周部8に対して高くなるように設けられている。外周部8には、端子板13が配置される。
【0034】
側壁6は、周囲を折り曲げることによって、底壁5から図示上側に立ち上がって設けられている。側壁6の中間部分には、後述するヨークプレート15を取り付けるための平坦部10が設けられている。
【0035】
マグネット11は、円板形状の永久磁石であり、本実施形態では直径9mm、厚み1.4mmのものが用いられている。マグネットの種類は、特に限定されるものではなく、アルニコ磁石、フェライト磁石、ネオジム磁石、サマリウムコバルト磁石などが用いられる。マグネット11は、フレーム2の磁石配置部7に接着剤により固定される。
【0036】
マグネット11の上面には、ポールピース12が接着される。ポールピース12は、マグネット11と同じ径を有する金属製の円板で構成され、本実施形態では厚みは0.8mmのものが用いられている。
【0037】
フレーム2の外周部8に設けられる端子板13は、リード線と引出し線14aとを電気的に接続するための部材であり、ボイスコイル14から引き出された引出し線14aとリード線3が半田付けにより固定される。
【0038】
フレームの側壁6の平坦部10には、ヨークプレート15が固定される。ヨークプレート15は、リング状の金属板である。ヨークプレート15の中心に設けられる磁石挿入孔16は、マグネット11及びポールピース12の径よりも若干大きく構成されて、スピーカの磁気ギャップを形成する。
【0039】
ヨークプレート15は、図2に示すように、フレーム側壁6の平坦部からフレーム底壁5に平行となるように設けられる。ヨークプレート15の中央の磁石挿入孔16には、マグネット11及びポールピース12が位置する。すなわち、ヨークプレート15は、フレーム底壁5の外周部8の上方に離間した状態で配置される。
【0040】
ヨークプレート15及びポールピース12は同じ材質で同じ厚みに構成されており、ヨークプレート15の製造時に磁石挿入孔16を打ち抜いた打ち抜き片を用いてポールピース12を作成する。これにより、供取りによる材料の効率的な利用ができ、さらにマグネット11の磁力の均一性が保たれる。
【0041】
ヨークプレート15とマグネット11及びポールピース12の間に形成された磁気ギャップには円形状のボイスコイル14が配置される。ボイスコイル14は、絶縁導線を何重にも巻回して円筒状に形成されており、下端位置から引出し線14aが引き出されている。ボイスコイル14は、振動板4の背面側に接着剤によって接着され支持されている。本実施形態では、磁石配置部7が高く構成されていることにより、ボイスコイル14がフレームの底壁5などの他の部材に接触することなく、ボイスコイル14及び引出し線14aの振動スペースを確保することができる。
【0042】
ボイスコイル14の引出し線14aは、ヨークプレート15とフレーム2の外周部8との間の隙間8bを通り、中間部分がフレーム2の底壁の外周部8に接着され、一端が端子板13に半田付けされる。
【0043】
ボイスコイル14の引出し線14aのフレーム2に接着される部分は、引出し線14aが屈曲されその両端の直状部14bに較べて曲率を大きくした屈曲部14cとして構成されている。図3は、引出し線の取り回しの例を示す模式図である。屈曲部14cは、引出し線14aの中間部位を折り曲げて作成したものである。このため、引出し線14aの屈曲部14cが設けられている部位が他の部分(直状部14bに較べて)は、屈曲した状態となり、曲率が大きく構成されている。
【0044】
なお、屈曲部14cの形状は、特に限定されるものではないが、図3及び図4に示すように、S字形や環状(ループ)にすることで容易に構成することができる。また、ループの巻数や折り返しの数も特に限定されるものではなく両者を組み合わせてもよいし、巻きバネのように立体的に形成されていてもよい。
【0045】
屈曲部14cの曲率は、あまりに小さいとフレーム2に組み込むスペースの問題及び粘着剤による支持に問題が生じ、あまりに大きいと引出し線14aに極度の屈曲疲労を生じさせる原因となる。すなわち、これらの問題を生じさせない程度の粘着剤に埋設できる程度の大きさであればよい。屈曲部14cは、例えば、細い棒状部材などに引出し線14aをループ状に巻き回すことにより簡単に形成することができる。
【0046】
また、屈曲部14cを接着する粘着剤17は、一定の粘弾性を維持した状態で屈曲部14cを支持することできる軟性材料が用いられており、具体的には、グリスなどの油性体やダンプ剤、シリコンゴムなどを用いることができる。
【0047】
粘着剤17は、屈曲部14cを内部に埋設するように支持する。粘着剤17により支持されている屈曲部14cは、粘着剤内で自由に変形することができ、ボイスコイル14の振動に伴いその引出し線14aに加わる水平方向に対する圧縮変位力及び垂直方向に対する屈曲変位力を容易かつ安定的に分散する。
【0048】
また、粘着剤17は、図3及び図4に示すように屈曲部14cの全体を埋設してもよいし、図5に示すように屈曲部14cの少なくとも一部分のみを埋設してもよい。粘着剤17内に埋設される屈曲部14cの割合は、粘着剤17内で、屈曲部14cの曲率が変化して振動を吸収できる程度であればよい。
【0049】
本実施形態にかかるスピーカは、引出し線14aは、ボイスコイルの振動を粘着剤17の粘弾性により吸収し、さらに、引出し線14aに加わる応力の変化は、粘着剤17内で屈曲部14cがゆっくりと変形することで吸収できるため、引出し線14aの撓み量を少なくすることができる。また、粘着剤17及び引出し線14a自体の弾性により、屈曲部14cは、変形のために付加された応力が除去されることにより元の形状に復帰する。これにより、ボイスコイルの振動時に生じるたわみ量の変化を原因とする引出し線14aの共振を防止することができる。
【0050】
なお、引出し線14aの直状部14bを粘着剤で固着させても共振は防止することができる。しかし、粘着剤により一定の弾性を持たせた状態で引出し線14aを支持することは容易でない。具体的には、引出し線14aの表面積が少ないなど粘着剤をはじき、接着が難しく、さらに引出し線14aの振動により接着がずれるなどにより特定位置において安定して支持しにくいという問題がある。
【0051】
図6は、変形例にかかるスピーカの構成を模式的に示す断面図である。図6に示すスピーカは、フレーム2の磁石配置部7は外周部8に較べて高く構成されず、同一面上に構成されている。さらに、ポールピース12は、ボイスコイル14及び引出し線14aの振動スペースを確保するために外周部分12aが高くなるように構成されている。
【0052】
すなわち、本実施形態にかかるスピーカ1bは、フレームの内底面から磁気ギャップまでの高さがボイスコイル14及び引出し線14aの振動スペースを確保できる程度に構成されていることが好ましい。このため、引出し線をフレーム2に接着させるために、フレームに固定台18を設け、固定台18の上面に屈曲部14cを固定する。
【0053】
固定台18は、ボイスコイル14の振動を阻害しないように、ボイスコイル14の直下から外側位置にずらして設けられている。固定台18は、フレームと一体に構成されていてもよいし、フレームに別部材を設けるように構成されていてもよい。また、固定台18の高さ寸法は、ボイスコイル14の引出し線14a引き出し位置よりも低く構成されていることが好ましく、本変形例では、ボイスコイル14の下端よりも低く構成されている。
【0054】
本変形例によれば、ボイスコイル14の振動を阻害しない厚み寸法とすることができ、また、接着剤17による固定位置までの引出し線14aの長さを短くすることができるため、ボイスコイル14の振動に伴う引出し線14aの共振を防止することができる。
【0055】
図7は、他の変形例にかかるスピーカの構成を模式的に示す断面図である。図6に示すスピーカ1cは、フレーム2の磁石配置部7が外周部8に較べて低く構成されており、フレームの側壁6が磁気ギャップを構成するヨークとして機能するように構成されている。また、端子板13などは、外周部8に設けられ、ボイスコイル14の振動スペースを十分に確保しつつ、スピーカを薄型とすることができる。
【0056】
ボイスコイル14の引出し線14aは、ボイスコイルの上端側から引き出され、屈曲部14cの部分が外周部8上に粘着剤17により固定されている。本実施形態においては、引出し線14aをボイスコイルの上端側から引き出すことにより、引出し線14aのたわみ量を少なくし、ボイスコイル14の振動に伴う引出し線14aの共振を防止することができる。
【0057】
次に、図1のスピーカの組み立て工程について説明する。図1のスピーカ1の組み立ては、従来のスピーカの組み立てと同様に行うことができるが、ボイスコイル14の屈曲部14cを設ける工程が追加されている。
【0058】
まず、スピーカの組み立ての第1工程として、組立治具(図示なし)にフレーム2を挿入する(#1)。組立治具は、スピーカのフレームに応じて適宜構成することができるが、フレーム内に組み入れられる各種部材の位置決め及び仮保持できるように構成されていることが好ましい。
【0059】
次に、フレーム2に端子板13を貼り付ける(#2)。次にフレーム2にマグネット11及びポールピース12から構成される磁石部材を貼り付ける(#3)。マグネット11は、フレーム2の磁石配置部7に接着剤を用いて貼着される。次に、リード線3と端子板13とを接続する(#4)。
【0060】
ボイスコイル14を支持治具(図9参照)に装着し、ボイスコイルに屈曲部を作成する(#5)。図9にボイスコイルの支持具の模式的構成を示す。支持治具30は、ボイスコイルを保持する本体部31と、本体部31のボイスコイル支持面32上に設けられ、ボイスコイルを挿入して支持する環状の挿入溝33を備える。
【0061】
本体部31には、細い棒状の巻取り部34が設けられており、巻取り部34に引出し線14aを巻き付けることにより引出し線14aにループ状の屈曲部を作成する。引出し線14aの巻取り部34への巻取り回数は特に限定されるものではないが、少なくとも1回で十分である。
【0062】
支持治具30にボイスコイルを装着する工程では、スピーカ1への組み入れ時に下側になる方向を上側に向けてボイスコイル14を支持治具30に装着し、2本の引出し線14aを巻取り部34に巻き付けて屈曲部を作成する。ボイスコイル支持面32が下側となるように支持治具30を反転させ、フレーム内に挿入する(#6)。
【0063】
ボイスコイル14の引出し線14aを端子板13の引き回し線部13aまで引き回し、ボイスコイル14の引出し線14aを端子板13にスポット溶接し、引出し線14aと端子板13を半田付けする(#7)。さらに、コイル引出し線14aの余線をカットし、端子板13の半田付けを行なった部分の保護接着を行う。
【0064】
次いで、引出し線14aの屈曲部14cをフレーム2の底壁に粘着剤17を用いて固定する(#8)。粘着剤としてはダンプ剤を用い、細いノズルで屈曲部14cをフレーム底壁に押さえつつダンプ剤を吐出、塗布することで屈曲部14cの固定を行なう。
【0065】
次に、フレーム2にヨークプレート15を取り付ける(#9)。ヨークプレート15は、磁石挿入孔16内に、ボイスコイル14が挿入されるようにフレーム2の平坦部10に載置される。平坦部10の径はヨークプレート15の径とほぼ等しく構成されており、フレーム2のフレーム側壁6に沿わせてヨークプレート15を載置することで位置決めを行うことができる。
【0066】
振動板4をボイスコイル14とフレーム2に接着する(#10)。ボイスコイル14は、上記のように挿入部36a,36bの上面によって下支えされているため、振動板4との接着が容易となる。なお、接着のための接着剤は振動板4側に塗付される。
【0067】
以上の組立が終了すると、マグネット11の着磁を行なう(#11)。着磁工程による加熱により、複数箇所に塗布された接着剤の乾燥を一度に行うことができる。着磁工程後、組立治具からスピーカを取り外す。
【0068】
以上説明したように、本発明の実施形態にかかるスピーカによれば、フレーム内に各部材を位置決めされた状態で順次取り付けていくことにより製造することができるため、製造工程を簡略化することができる。特にボイスコイルからの引出し線の取り回しを容易にし、ボイスコイルと振動板との組み立てを容易かつ確実にすることができる。
【0069】
なお、本発明は上記実施形態に限定されるものではなく、その他種々の態様で実施可能である。
【産業上の利用可能性】
【0070】
本発明のスピーカは、比較的小型の電子機器に用いることができ、引出し線の破断を防止することができることから耐久性に優れた電子機器を提供することができる。
【符号の説明】
【0071】
1、1b、1c スピーカ
2 フレーム
3 リード線
4 振動板
5 底壁
6 側壁
7 磁石配置部
8 外周部
10 平坦部
11 マグネット
12 ポールピース
13 端子板
14 ボイスコイル
14a 引出し線
15 ヨークプレート
16 磁石挿入孔
17 粘着剤
18 固定台
【技術分野】
【0001】
本発明は、スピーカに関し、特に、例えばカーナビゲーションシステムやガス漏れ警報器など比較的小型の電子機器に用いられるスピーカに関する。
【背景技術】
【0002】
近年、カーナビゲーション機器やガス漏れ警報器など小型の電子機器が動作確認や動作手順などを音声で説明するように構成されているものが多くなってきている。このようなしゃべる電子機器には、小型のスピーカが搭載されており、電子機器の制御部からの信号により発声する。
【0003】
図10は、小型の電子機器に使用される従来のスピーカの構成を示す断面図である。図10に示す従来のスピーカ100は、有底容器形状の磁性体で作成されたヨーク101内に円板状の磁石102を配置し、磁石の上面にポールピース103を配置する。ポールピース103とヨーク101の側壁101aによって形成された磁気ギャップの間には、ごく細いコイルを環状に巻き束ねたボイスコイル104が配置される。ボイスコイル104は、振動板105の背面側に接着剤105aで固定されている。振動板105の外周縁部分が、上記ヨーク101を収納したケース106に固定され、ボイスコイル104が上記磁気ギャップ内に収まるように位置あわせされている。
【0004】
また、ボイスコイル104の引出し線104aは、ボイスコイル104の下端から引き回され、ヨーク101を通ってヨーク101の外側に引き回される。
【0005】
このような構成のスピーカは、例えば特許第3098127号公報(特許文献1)や特開2008−263418号公報(特許文献2)などに開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【特許文献1】特許第3098127号公報
【特許文献2】特開2008−263418号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
このような構成のスピーカは、図11に示すように、振動板105の振動と一体にボイスコイル104の引出し線104aも振動する。すなわち、ボイスコイル104が実線で示した基準位置に対して矢印方向(上下方向)に振動するため、引出し線104aの一端がコイルと供に振動するため、静止した他端によって引出し線104aのたるみの程度が変化する。この引出し線の振動は、引出し線の両端104bに応力集中を発生させ、当該端部104bにおいて材料疲労による破断の原因となっていた。
【0008】
また、引出し線104aの振動による応力変化を少なくするために、引出し線を長くし、十分なたるみを持たせることもできるが、引出し線104aの長さが長くなると振動板105の振動による共振が発生し、引出し線の破断につながるという問題もあった。
【0009】
このような問題を防止するため、引出し線を振動板の裏面に沿って配置させ、引出し線の共振を防止するスピーカも存在する。しかし、引出し線の配置は、複雑な形状の振動板には困難でありスピーカの設計の障害の一つとなっており、また、引出し線により振動板の自由な振動の障害になり音質を低下させる原因となっていた。
【0010】
したがって、本発明が解決しようとする技術的課題は、簡単な構成で引出し線の破断を抑制することができるスピーカを提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0011】
本発明は、上記技術的課題を解決するために、以下の構成のスピーカを提供する。
【0012】
本発明の第1態様によれば、円筒状の磁気ギャップを有する磁気回路と、前記磁気ギャップに収納したボイスコイルと、このボイスコイルを支持する振動板と、前記振動板を保持し前記磁気回路の一部が取付けられたフレームと、前記ボイスコイルの引出し線が、前記振動板に接触することなく引出され、中間位置に屈曲部が形成され、当該屈曲部が弾性粘着剤により前記フレームに接着されていることを特徴とするスピーカを提供する。なお、本発明において屈曲部をフレームに接着する態様としては、直接フレームに固定する場合であってもよいし、例えば端子板などの他の部材を介してフレームに固定されていてもよい。
【0013】
本発明の第2態様によれば、前記引出し線は、当該屈曲部の少なくとも一部を粘着剤内に埋設するように固定されていることを特徴とする第1態様のスピーカを提供する。
【0014】
本発明の第3態様によれば、前記引出し線は、ボイスコイルの前記振動板から遠い側の端部から導出されることを特徴とする第1又は第2態様のスピーカを提供する。
【0015】
本発明の第4態様によれば、前記屈曲部は、前記引出し線の中間部に設けられた曲率が大きい部位で形成されていることを特徴とする、第1から第3態様のいずれか1つのスピーカを提供する。
【0016】
本発明の第5態様によれば、前記屈曲部は、前記引出し線を環状に巻いて形成されていることを特徴とする、第4態様のスピーカを提供する。
【0017】
本発明の第6態様によれば、前記屈曲部は、前記引出し部をS字状に屈曲させて形成されていることを特徴とする、第4態様のスピーカを提供する。
【0018】
本発明の第7態様によれば、前記粘着剤は、ダンプ剤で形成されていることを特徴とする、第1から第6態様のいずれか1つのスピーカを提供する。
【0019】
本発明の第8態様によれば、前記引出し線は、前記フレーム内に設けられた端子板に接続されていることを特徴とする、第1から第7態様のいずれか1つのスピーカを提供する。
【発明の効果】
【0020】
本発明によれば、コイルの引出し線の中間位置に屈曲部を設けているため、引出し線の振動に応じて変化する引出し線の長さ変化を屈曲部が吸収する。このため、コイルの引出し線、特に両端部に応力が集中するのを防止することができる。さらに、屈曲部に粘着剤を塗布してフレームに接着することにより、ある程度の弾性を持った状態で固定されるため、引出し線の振動が引出し線全体に伝わることが防止され、さらに、屈曲部による長さ調整によって、引出し線の共振を防止することができる。したがって、引出し線の破断を抑制することができる。
【0021】
本発明の第2態様によれば、粘着剤の内部に屈曲部を埋設することにより、フレームと引出し線の接着強度を高くすることができ、さらに、振動時における引出し線の長さの変化を確実に吸収することができるため、引出し線の破断を抑制することができる。
【0022】
本発明の第3態様によれば、ボイスコイルの引出し線をよりフレームに近い側から導出することにより、引出し線をより短くして、引出し線の共振を抑えることができる。
【0023】
本発明の第4態様によれば、引出し線を曲率が大きくなるように屈曲させることで、より簡単に屈曲部を形成することができ、引出し線の両端に加わる応力により、屈曲の度合が変化することで、応力を吸収することができる。具体的には、屈曲部は、環(ループ)状に引出し線を巻き取ったり、S字形に屈曲させることでより簡単に屈曲部を形成することができる。
【0024】
本発明の第7態様によれば、弾性粘着剤としてダンプ剤を用いることにより、引出し線の振動に応じて応力を吸収することができ、さらに、確実2フレームと引出し線を接着することができる。
【図面の簡単な説明】
【0025】
【図1】本発明の実施形態にかかるスピーカの外観構成を示す斜視図である。
【図2】図1のスピーカの構成を模式的に示す断面図である。
【図3】図1のスピーカの引出し線の取り回しの例を示す模式図である。
【図4】図1のスピーカの引出し線の取り回しの他の例を示す模式図である。
【図5】図1のスピーカの引出し線の取り回しの他の例を示す模式図である。
【図6】変形例にかかるスピーカの構成を模式的に示す断面図である。
【図7】他の変形例にかかるスピーカの構成を模式的に示す断面図である。
【図8】図1のスピーカの組み立て工程を示すフローチャートである。
【図9】図1のスピーカの組み立て工程に使用するボイスコイルの支持治具の構成を示す模式図である。
【図10】従来のスピーカ構成を模式的に示す断面図である。
【図11】振動板の振動に伴うボイスコイルの振動の様子を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0026】
以下、本発明の一実施形態に係るスピーカについて、図面を参照しながら説明する。
【0027】
図1は、本発明の実施形態にかかるスピーカの外観構成を示す斜視図である。本発明のスピーカ1は、小型の電子機器、例えば、カーナビゲーションシステムやガス漏れ警報器などに搭載されるスピーカである。
【0028】
スピーカ1は、筐体としての有底円筒形のフレーム2を備え、フレーム2の開口部分に振動板4が設けられている。振動板4は、フレーム2内に内蔵される磁気回路にリード線3から電気信号が送られることにより振動して発声する。
【0029】
振動板4は合成樹脂で作成されており、本実施形態ではポリイミド樹脂が用いられている。
【0030】
図2は、図1のスピーカの構成を模式的に示す断面図である。本実施形態にかかるスピーカ1は、図2に示すように、フレーム2の内部に各種部材が組み込まれている。
【0031】
フレーム2に組み込まれる各種部材は、マグネット11,ポールピース12,端子板13,ボイスコイル14,ヨークプレート15である。後述のように、フレーム2,マグネット11、ポールピース12、ヨークプレート14により磁気回路を構成する。
【0032】
フレーム2は、底壁5と側壁6を有する有底容器形状の部材であり、磁性体材料で構成されている。本実施形態では、厚さ0.6mmの鉄鋼が用いられる。
【0033】
フレームの底壁5は、中央に磁石を配置する磁石配置部7が形成され、その周囲に外周部8が形成される。磁石配置部7は、外周部8に対して高くなるように設けられている。外周部8には、端子板13が配置される。
【0034】
側壁6は、周囲を折り曲げることによって、底壁5から図示上側に立ち上がって設けられている。側壁6の中間部分には、後述するヨークプレート15を取り付けるための平坦部10が設けられている。
【0035】
マグネット11は、円板形状の永久磁石であり、本実施形態では直径9mm、厚み1.4mmのものが用いられている。マグネットの種類は、特に限定されるものではなく、アルニコ磁石、フェライト磁石、ネオジム磁石、サマリウムコバルト磁石などが用いられる。マグネット11は、フレーム2の磁石配置部7に接着剤により固定される。
【0036】
マグネット11の上面には、ポールピース12が接着される。ポールピース12は、マグネット11と同じ径を有する金属製の円板で構成され、本実施形態では厚みは0.8mmのものが用いられている。
【0037】
フレーム2の外周部8に設けられる端子板13は、リード線と引出し線14aとを電気的に接続するための部材であり、ボイスコイル14から引き出された引出し線14aとリード線3が半田付けにより固定される。
【0038】
フレームの側壁6の平坦部10には、ヨークプレート15が固定される。ヨークプレート15は、リング状の金属板である。ヨークプレート15の中心に設けられる磁石挿入孔16は、マグネット11及びポールピース12の径よりも若干大きく構成されて、スピーカの磁気ギャップを形成する。
【0039】
ヨークプレート15は、図2に示すように、フレーム側壁6の平坦部からフレーム底壁5に平行となるように設けられる。ヨークプレート15の中央の磁石挿入孔16には、マグネット11及びポールピース12が位置する。すなわち、ヨークプレート15は、フレーム底壁5の外周部8の上方に離間した状態で配置される。
【0040】
ヨークプレート15及びポールピース12は同じ材質で同じ厚みに構成されており、ヨークプレート15の製造時に磁石挿入孔16を打ち抜いた打ち抜き片を用いてポールピース12を作成する。これにより、供取りによる材料の効率的な利用ができ、さらにマグネット11の磁力の均一性が保たれる。
【0041】
ヨークプレート15とマグネット11及びポールピース12の間に形成された磁気ギャップには円形状のボイスコイル14が配置される。ボイスコイル14は、絶縁導線を何重にも巻回して円筒状に形成されており、下端位置から引出し線14aが引き出されている。ボイスコイル14は、振動板4の背面側に接着剤によって接着され支持されている。本実施形態では、磁石配置部7が高く構成されていることにより、ボイスコイル14がフレームの底壁5などの他の部材に接触することなく、ボイスコイル14及び引出し線14aの振動スペースを確保することができる。
【0042】
ボイスコイル14の引出し線14aは、ヨークプレート15とフレーム2の外周部8との間の隙間8bを通り、中間部分がフレーム2の底壁の外周部8に接着され、一端が端子板13に半田付けされる。
【0043】
ボイスコイル14の引出し線14aのフレーム2に接着される部分は、引出し線14aが屈曲されその両端の直状部14bに較べて曲率を大きくした屈曲部14cとして構成されている。図3は、引出し線の取り回しの例を示す模式図である。屈曲部14cは、引出し線14aの中間部位を折り曲げて作成したものである。このため、引出し線14aの屈曲部14cが設けられている部位が他の部分(直状部14bに較べて)は、屈曲した状態となり、曲率が大きく構成されている。
【0044】
なお、屈曲部14cの形状は、特に限定されるものではないが、図3及び図4に示すように、S字形や環状(ループ)にすることで容易に構成することができる。また、ループの巻数や折り返しの数も特に限定されるものではなく両者を組み合わせてもよいし、巻きバネのように立体的に形成されていてもよい。
【0045】
屈曲部14cの曲率は、あまりに小さいとフレーム2に組み込むスペースの問題及び粘着剤による支持に問題が生じ、あまりに大きいと引出し線14aに極度の屈曲疲労を生じさせる原因となる。すなわち、これらの問題を生じさせない程度の粘着剤に埋設できる程度の大きさであればよい。屈曲部14cは、例えば、細い棒状部材などに引出し線14aをループ状に巻き回すことにより簡単に形成することができる。
【0046】
また、屈曲部14cを接着する粘着剤17は、一定の粘弾性を維持した状態で屈曲部14cを支持することできる軟性材料が用いられており、具体的には、グリスなどの油性体やダンプ剤、シリコンゴムなどを用いることができる。
【0047】
粘着剤17は、屈曲部14cを内部に埋設するように支持する。粘着剤17により支持されている屈曲部14cは、粘着剤内で自由に変形することができ、ボイスコイル14の振動に伴いその引出し線14aに加わる水平方向に対する圧縮変位力及び垂直方向に対する屈曲変位力を容易かつ安定的に分散する。
【0048】
また、粘着剤17は、図3及び図4に示すように屈曲部14cの全体を埋設してもよいし、図5に示すように屈曲部14cの少なくとも一部分のみを埋設してもよい。粘着剤17内に埋設される屈曲部14cの割合は、粘着剤17内で、屈曲部14cの曲率が変化して振動を吸収できる程度であればよい。
【0049】
本実施形態にかかるスピーカは、引出し線14aは、ボイスコイルの振動を粘着剤17の粘弾性により吸収し、さらに、引出し線14aに加わる応力の変化は、粘着剤17内で屈曲部14cがゆっくりと変形することで吸収できるため、引出し線14aの撓み量を少なくすることができる。また、粘着剤17及び引出し線14a自体の弾性により、屈曲部14cは、変形のために付加された応力が除去されることにより元の形状に復帰する。これにより、ボイスコイルの振動時に生じるたわみ量の変化を原因とする引出し線14aの共振を防止することができる。
【0050】
なお、引出し線14aの直状部14bを粘着剤で固着させても共振は防止することができる。しかし、粘着剤により一定の弾性を持たせた状態で引出し線14aを支持することは容易でない。具体的には、引出し線14aの表面積が少ないなど粘着剤をはじき、接着が難しく、さらに引出し線14aの振動により接着がずれるなどにより特定位置において安定して支持しにくいという問題がある。
【0051】
図6は、変形例にかかるスピーカの構成を模式的に示す断面図である。図6に示すスピーカは、フレーム2の磁石配置部7は外周部8に較べて高く構成されず、同一面上に構成されている。さらに、ポールピース12は、ボイスコイル14及び引出し線14aの振動スペースを確保するために外周部分12aが高くなるように構成されている。
【0052】
すなわち、本実施形態にかかるスピーカ1bは、フレームの内底面から磁気ギャップまでの高さがボイスコイル14及び引出し線14aの振動スペースを確保できる程度に構成されていることが好ましい。このため、引出し線をフレーム2に接着させるために、フレームに固定台18を設け、固定台18の上面に屈曲部14cを固定する。
【0053】
固定台18は、ボイスコイル14の振動を阻害しないように、ボイスコイル14の直下から外側位置にずらして設けられている。固定台18は、フレームと一体に構成されていてもよいし、フレームに別部材を設けるように構成されていてもよい。また、固定台18の高さ寸法は、ボイスコイル14の引出し線14a引き出し位置よりも低く構成されていることが好ましく、本変形例では、ボイスコイル14の下端よりも低く構成されている。
【0054】
本変形例によれば、ボイスコイル14の振動を阻害しない厚み寸法とすることができ、また、接着剤17による固定位置までの引出し線14aの長さを短くすることができるため、ボイスコイル14の振動に伴う引出し線14aの共振を防止することができる。
【0055】
図7は、他の変形例にかかるスピーカの構成を模式的に示す断面図である。図6に示すスピーカ1cは、フレーム2の磁石配置部7が外周部8に較べて低く構成されており、フレームの側壁6が磁気ギャップを構成するヨークとして機能するように構成されている。また、端子板13などは、外周部8に設けられ、ボイスコイル14の振動スペースを十分に確保しつつ、スピーカを薄型とすることができる。
【0056】
ボイスコイル14の引出し線14aは、ボイスコイルの上端側から引き出され、屈曲部14cの部分が外周部8上に粘着剤17により固定されている。本実施形態においては、引出し線14aをボイスコイルの上端側から引き出すことにより、引出し線14aのたわみ量を少なくし、ボイスコイル14の振動に伴う引出し線14aの共振を防止することができる。
【0057】
次に、図1のスピーカの組み立て工程について説明する。図1のスピーカ1の組み立ては、従来のスピーカの組み立てと同様に行うことができるが、ボイスコイル14の屈曲部14cを設ける工程が追加されている。
【0058】
まず、スピーカの組み立ての第1工程として、組立治具(図示なし)にフレーム2を挿入する(#1)。組立治具は、スピーカのフレームに応じて適宜構成することができるが、フレーム内に組み入れられる各種部材の位置決め及び仮保持できるように構成されていることが好ましい。
【0059】
次に、フレーム2に端子板13を貼り付ける(#2)。次にフレーム2にマグネット11及びポールピース12から構成される磁石部材を貼り付ける(#3)。マグネット11は、フレーム2の磁石配置部7に接着剤を用いて貼着される。次に、リード線3と端子板13とを接続する(#4)。
【0060】
ボイスコイル14を支持治具(図9参照)に装着し、ボイスコイルに屈曲部を作成する(#5)。図9にボイスコイルの支持具の模式的構成を示す。支持治具30は、ボイスコイルを保持する本体部31と、本体部31のボイスコイル支持面32上に設けられ、ボイスコイルを挿入して支持する環状の挿入溝33を備える。
【0061】
本体部31には、細い棒状の巻取り部34が設けられており、巻取り部34に引出し線14aを巻き付けることにより引出し線14aにループ状の屈曲部を作成する。引出し線14aの巻取り部34への巻取り回数は特に限定されるものではないが、少なくとも1回で十分である。
【0062】
支持治具30にボイスコイルを装着する工程では、スピーカ1への組み入れ時に下側になる方向を上側に向けてボイスコイル14を支持治具30に装着し、2本の引出し線14aを巻取り部34に巻き付けて屈曲部を作成する。ボイスコイル支持面32が下側となるように支持治具30を反転させ、フレーム内に挿入する(#6)。
【0063】
ボイスコイル14の引出し線14aを端子板13の引き回し線部13aまで引き回し、ボイスコイル14の引出し線14aを端子板13にスポット溶接し、引出し線14aと端子板13を半田付けする(#7)。さらに、コイル引出し線14aの余線をカットし、端子板13の半田付けを行なった部分の保護接着を行う。
【0064】
次いで、引出し線14aの屈曲部14cをフレーム2の底壁に粘着剤17を用いて固定する(#8)。粘着剤としてはダンプ剤を用い、細いノズルで屈曲部14cをフレーム底壁に押さえつつダンプ剤を吐出、塗布することで屈曲部14cの固定を行なう。
【0065】
次に、フレーム2にヨークプレート15を取り付ける(#9)。ヨークプレート15は、磁石挿入孔16内に、ボイスコイル14が挿入されるようにフレーム2の平坦部10に載置される。平坦部10の径はヨークプレート15の径とほぼ等しく構成されており、フレーム2のフレーム側壁6に沿わせてヨークプレート15を載置することで位置決めを行うことができる。
【0066】
振動板4をボイスコイル14とフレーム2に接着する(#10)。ボイスコイル14は、上記のように挿入部36a,36bの上面によって下支えされているため、振動板4との接着が容易となる。なお、接着のための接着剤は振動板4側に塗付される。
【0067】
以上の組立が終了すると、マグネット11の着磁を行なう(#11)。着磁工程による加熱により、複数箇所に塗布された接着剤の乾燥を一度に行うことができる。着磁工程後、組立治具からスピーカを取り外す。
【0068】
以上説明したように、本発明の実施形態にかかるスピーカによれば、フレーム内に各部材を位置決めされた状態で順次取り付けていくことにより製造することができるため、製造工程を簡略化することができる。特にボイスコイルからの引出し線の取り回しを容易にし、ボイスコイルと振動板との組み立てを容易かつ確実にすることができる。
【0069】
なお、本発明は上記実施形態に限定されるものではなく、その他種々の態様で実施可能である。
【産業上の利用可能性】
【0070】
本発明のスピーカは、比較的小型の電子機器に用いることができ、引出し線の破断を防止することができることから耐久性に優れた電子機器を提供することができる。
【符号の説明】
【0071】
1、1b、1c スピーカ
2 フレーム
3 リード線
4 振動板
5 底壁
6 側壁
7 磁石配置部
8 外周部
10 平坦部
11 マグネット
12 ポールピース
13 端子板
14 ボイスコイル
14a 引出し線
15 ヨークプレート
16 磁石挿入孔
17 粘着剤
18 固定台
【特許請求の範囲】
【請求項1】
円筒状の磁気ギャップを有する磁気回路と、前記磁気ギャップに収納したボイスコイルと、このボイスコイルを支持する振動板と、前記振動板を保持し前記磁気回路の一部が取付けられたフレームと、前記ボイスコイルの引出し線が、前記振動板に接触することなく引出され、中間位置に屈曲部が形成され、当該屈曲部が弾性粘着剤により前記フレームに接着されていることを特徴とするスピーカ。
【請求項2】
前記引出し線は、当該屈曲部の少なくとも一部を粘着剤内に埋設するように固定されていることを特徴とする、請求項1に記載のスピーカ。
【請求項3】
前記引出し線は、ボイスコイルの前記振動板から遠い側の端部から導出されることを特徴とする、請求項1又は2に記載のスピーカ。
【請求項4】
前記屈曲部は、前記引出し線の中間部に設けられた曲率が大きい部位で形成されていることを特徴とする、請求項1から3のいずれか1つに記載のスピーカ。
【請求項5】
前記屈曲部は、前記引出し線を環状に巻いて形成されていることを特徴とする、請求項4に記載のスピーカ。
【請求項6】
前記屈曲部は、前記引出し部をS字状に屈曲させて形成されていることを特徴とする、請求項4に記載のスピーカ。
【請求項7】
前記弾性粘着剤は、ダンプ剤で形成されていることを特徴とする、請求項1から6のいずれか1つに記載のスピーカ。
【請求項8】
前記引出し線は、前記フレーム内に設けられた端子板に接続されていることを特徴とする、請求項1から7のいずれか1つに記載のスピーカ。
【請求項1】
円筒状の磁気ギャップを有する磁気回路と、前記磁気ギャップに収納したボイスコイルと、このボイスコイルを支持する振動板と、前記振動板を保持し前記磁気回路の一部が取付けられたフレームと、前記ボイスコイルの引出し線が、前記振動板に接触することなく引出され、中間位置に屈曲部が形成され、当該屈曲部が弾性粘着剤により前記フレームに接着されていることを特徴とするスピーカ。
【請求項2】
前記引出し線は、当該屈曲部の少なくとも一部を粘着剤内に埋設するように固定されていることを特徴とする、請求項1に記載のスピーカ。
【請求項3】
前記引出し線は、ボイスコイルの前記振動板から遠い側の端部から導出されることを特徴とする、請求項1又は2に記載のスピーカ。
【請求項4】
前記屈曲部は、前記引出し線の中間部に設けられた曲率が大きい部位で形成されていることを特徴とする、請求項1から3のいずれか1つに記載のスピーカ。
【請求項5】
前記屈曲部は、前記引出し線を環状に巻いて形成されていることを特徴とする、請求項4に記載のスピーカ。
【請求項6】
前記屈曲部は、前記引出し部をS字状に屈曲させて形成されていることを特徴とする、請求項4に記載のスピーカ。
【請求項7】
前記弾性粘着剤は、ダンプ剤で形成されていることを特徴とする、請求項1から6のいずれか1つに記載のスピーカ。
【請求項8】
前記引出し線は、前記フレーム内に設けられた端子板に接続されていることを特徴とする、請求項1から7のいずれか1つに記載のスピーカ。
【図1】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【公開番号】特開2012−114530(P2012−114530A)
【公開日】平成24年6月14日(2012.6.14)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−259710(P2010−259710)
【出願日】平成22年11月22日(2010.11.22)
【特許番号】特許第4820916号(P4820916)
【特許公報発行日】平成23年11月24日(2011.11.24)
【出願人】(509290902)大和音響株式会社 (3)
【Fターム(参考)】
【公開日】平成24年6月14日(2012.6.14)
【国際特許分類】
【出願日】平成22年11月22日(2010.11.22)
【特許番号】特許第4820916号(P4820916)
【特許公報発行日】平成23年11月24日(2011.11.24)
【出願人】(509290902)大和音響株式会社 (3)
【Fターム(参考)】
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