説明

スピードスプレーヤ

【課題】原動機から動翼に至る前後の長さ寸法を短縮することができるスピードスプレーヤを提供する。
【解決手段】エンジン12の後側に動翼23が設けられ、エンジン12の回転動力が伝達される変速機35の出力軸45に動翼23が取り付けられているスピードスプレーヤにおいて、変速機35は、動翼23のハブ31内に設けられている。変速機35は、動翼23とともに送風機33を構成するファンケース21に固定されている。変速機35の入力軸36は、エンジン12の回転動力を伝達する出力軸14とユニバーサルジョント37により連結されている。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、スピードスプレーヤに関する。
【背景技術】
【0002】
通常、スピードスプレーヤにおいては、エンジンの後側に送風機が設けられ、エンジンの回転動力が伝達される変速機の出力軸に送風機の動翼が取り付けられている。
従来、このようなスピードスプレーヤでは、動翼の外部から変速機の出力軸が動翼に向かって延びており、この変速機の出力軸に動翼が固定されている(例えば、特許文献1参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開平8−257456号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかしながら、このような従来のスピードスプレーヤにあっては、変速機と動翼が前後に直列に配置しているので、原動機から動翼に至る前後の長さ寸法が長くなり、スピードスプレーヤの旋回半径が大きくなり、このためスピードスプレーヤが旋回する面積が狭い果樹園等における作業性が悪いという問題がある。
【0005】
本発明は、前記事情に鑑みて為されたもので、原動機から動翼に至る前後の長さ寸法を短縮することができるスピードスプレーヤを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
前記目的を達成するために、請求項1に記載のスピードスプレーヤは、
原動機(12)の後側に動翼(23)が設けられ、前記原動機(12)の回転動力が伝達される変速機(35)の出力軸(45)に前記動翼(23)が取り付けられているスピードスプレーヤにおいて、
前記変速機(35)は、前記動翼(23)のハブ(31)内に設けられていることを特徴とする。
【0007】
請求項1に記載の発明においては、原動機の後側に設けられる動翼を回転駆動する変速機が、動翼のハブ内に設けられているので、動翼のハブ内を有効利用できるとともに、原動機から動翼に至る前後の長さ寸法を短縮することができ、これによりスピードスプレーヤの旋回半径をでき、作業性を向上させることができる。
ここで、前記変速機は、減速機やギヤケース等を含むものである。
【0008】
また、請求項2に記載のスピードスプレーヤは、請求項1に記載の発明において、前記変速機(35)は、前記動翼(23)とともに送風機(33)を構成するファンケース(21)に固定されていることを特徴とする。
【0009】
請求項2に記載の発明においては、変速機が動翼とともに送風機を構成するファンケースに固定されているので、ファンケースとともに変速機を設置することができる。
【0010】
また、請求項3に記載のスピードスプレーヤは、請求項2に記載の発明において、前記変速機(35)の入力軸(36)は、前記原動機(12)の回転動力を伝達する出力軸(14)とユニバーサルジョント(37)により連結されていることを特徴とする。
【0011】
請求項3に記載の発明においては、変速機の入力軸が原動機の回転動力を伝達する出力軸とユニバーサルジョントにより連結されているので、変速機の入力軸とこの入力軸に回転動力を伝達する出力軸との位置合わせを緩和することができるため、ファンケースとともに変速機を設置する作業を容易にすることができる。
【0012】
なお、上記における括弧内の符号は、図面において対応する要素を便宜的に表記したものであり、したがって本発明は図面上の記載に限定されるものではない。これは、「特許請求の範囲」の記載についても同様である。
【発明の効果】
【0013】
本発明のスピードスプレーヤによれば、原動機の後側に設けられる動翼を回転駆動する変速機が、動翼のハブ内に設けられているので、動翼のハブ内を有効利用できるとともに、原動機から動翼に至る前後の長さ寸法を短縮することができるため、スピードスプレーヤの旋回半径をでき、作業性を向上させることができる。
【図面の簡単な説明】
【0014】
【図1】本発明の実施の形態に係るスピードスプレーヤを示す図であって、左側面図である。
【図2】同、一部部材を省略して示す縦断面図である。
【図3】同、送風機部を斜め後ろから見た分解斜視図である。
【発明を実施するための形態】
【0015】
以下、図面を参照しつつ、本発明の実施の形態について説明する。
図1に示すように、本発明の実施の形態に係るスピードスプレーヤは、四輪駆動および四輪操舵方式であり、前輪2と後輪3とにより支持されて自走可能な自走台車4を備えている。自走台車4には、スピードスプレーヤの前方から順に、作業者が乗り込んでスピードスプレーヤの運転操作を行う運転席部5と、薬液を貯蔵する薬液タンク6と、原動機を収容する原動機部7と、薬液を周囲へ噴霧する複数個のノズル8Aが配列されている噴頭部8と、最後部に設けられ、後方から吸い込んだ空気を噴頭部8へ吐出する送風機部9とが設けられている。
【0016】
図2に示すように、原動機部7には、エンジンカバー11に覆われたエンジン(原動機)12が設けられている。エンジン12は、自走台車4上にボルトにより取り付けられて設置されている。このエンジン12の後側には、分配機13がボルトにより取り付けられており、この分配機13は、噴頭部8内に突出している。分配機13には、自走台車4の前輪2および後輪3を回転駆動させるための走行用の出力軸(図示せず)と、送風機用の出力軸14が設けられている。
【0017】
噴頭部8には、送風機部から送られてくる空気を略半円状に開口した開口部に導くための導風板16が設けられている。図1に示すように、ノズル8Aは、開口部17に沿って配置されており、薬液タンク6内の薬液が、ポンプ(図示せず)によって吸水されて、各ノズル8Aに圧送され、各ノズル8Aから噴出される。各ノズル8Aから噴出された薬液は、送風機部9の送風機からの風により微細化されるとともに噴頭部8の開口部17から放射状に飛ばされるようになっている。なお、図2においては、ノズル8Aの図示が省略されている。
【0018】
図2および図3に示すように、送風機部9には、ファンケース(風胴)21とこのファンケース21内に設けられた静翼22および動翼23と、これらのファンケース21、静翼22および動翼23を覆う送風機カバー24とが設けられている。ファンケース21は、外側円筒部25と内側円筒部26とを備えた二重の円筒状に形成されている。
【0019】
このファンケース21は、外側円筒部25の左右下端部にそれぞれ溶接等により固定された左右の取付板(取付部)27がボルトにより走行台車4に固定されることにより、噴頭部8の後側に隣接して設置されている。内側円筒部26は、外側円筒部25の内側に、外側円筒部25と同軸に設けられている。内側円筒部26の軸方向の長さは、外側円筒部25の軸方向の長さの略半分程度に設定されており、その前端を外側円筒部26の前端に一致させて設けられている。この内側円筒部26と外側円筒部25との間に、複数枚の静翼22が放射状に設けられている。各静翼22の内周端および外周端がそれぞれ、内側円筒部26の外周面および外側円筒部25の内周面に溶接により固定されている。
【0020】
静翼22の後側の動翼23は、ファンケース21と同軸に設けられており、有底筒状のハブ31とこのハブ31の外周面に放射状に固定された複数枚の羽根32とを備えている。ハブ31の外周面とファンケース21の内側円筒部26の外周面とは、略一致しているとともに、近接している。ファンケース21、静翼22および動翼23により、後置静翼型の軸流式の送風機33が構成されている。
ハブ31は、開口部を前側にして配置され、その内側には、変速機(減速機)35が設置されている。この変速機35の入力軸36は、分配機13の送風機用の出力軸14と略一直線上に配置されており、そして出力軸14とユニバーサルジョイント(自在継ぎ手)37により連結されている。
【0021】
変速機35は、内側円筒部26の内側に設けられた固定板(固定部)41に取り付けられている。すなわち、内側円筒部26の内周面の後端部には、円板状の固定板41の外周端が溶接により固定されており、これにより固定板41が内側円筒部26の後側の開口部を塞ぐように、内側円筒部26の内側に固定されている。すなわち、固定板41は、動翼23のハブ31の開口部に対向しかつ接近した位置に位置している。この固定板41の外周側には周方向に間隔をあけて複数個(この例では3個)の切り欠き42が設けられており、これにより取り付け作業時等の視界確保等が図られている。固定板41の後側の面に、変速機35がボルト43により固定されている。変速機35の入力軸36は、固定板41に形成された開口部内に挿入され、固定板41から前方に突出しており、入力軸36の先端部にユニバーサルジョイント37が取り付けられている。
【0022】
変速機35の出力軸45は、後方に向けて突出しており、この出力軸45に動翼23が取り付けられている。すなわち、動翼23のハブ31の底部の中央部には、取付ボス46がボルト47により固定されており、この取付ボス46のスプラインに出力軸45の外周のスプラインが嵌入されるとともに、取付ボス46から後方に突出する出力軸45の先端部にナット49が螺合されることにより、出力軸45に動翼23が固定されている。
【0023】
送風機カバー24は、ファンケース21の外側円筒部25の外側を覆うように設けられている。送風機カバー24の前端部および後端部はそれぞれ、外側円筒部25の前端および後端よりも少し前側および後側に突出しており、これらの前端部および後端部の内側にはそれぞれ、ベルマウスが形成されている。送風機カバー24の後端には、吸入口カバー51が設置され、異物等に侵入を防いでいる。吸入口カバー51の中央部には、動翼23のハブ31の後側に隣接して配置されるハブカバー52が固定されている。
【0024】
このスピードスプレーヤにおいては、エンジン12の回転動力は、分配機12、ユニバーサルジョイント37および変速機35を介して動翼22に伝達され、動翼22が回転駆動される。この動翼22の回転により、後方から吸い込まれた空気は、静翼22で整流されて噴頭部8に送られる。
【0025】
このように構成されたスピードスプレーヤにあっては、エンジン12の後側に配置される動翼23を回転駆動する変速機35が、動翼23のハブ31内に配置されているので、動翼23のハブ31内を有効利用できるとともに、エンジン12から動翼23に至る前後の長さ寸法を短縮することができるため、スピードスプレーヤの旋回半径をでき、作業性を向上させることができる。
【0026】
また、動翼23とともに送風機33を構成するファンケース21の内側円筒部26の内側に固定板(固定部)41が設けられ、この固定板41に変速機35が固定されているので、ファンケース21とともに変速機35を設置することができ、組立性が向上する。
【0027】
また、変速機35の入力軸36がエンジン12の回転動力を伝達する出力軸14とユニバーサルジョント37により連結されているので、変速機35の入力軸36とこの入力軸36に回転動力を伝達する出力軸14との位置合わせを緩和することができるため、ファンケース21とともに変速機35を設置する作業を容易にすることができる。
【0028】
なお、上述の実施の形態では、ファンケース21に変速機35を固定するようにしたが、他の部材に変速機35を固定するようにしてもよい。
【0029】
また、上述の実施の形態では、空気が動翼23から静翼22を通って送られる後置静翼型の送風機33を用いたが、静翼と動翼の前後の配置が逆で、空気が静翼から動翼を通って送られる前置静翼型の送風機にも本発明を適用することができる。
【符号の説明】
【0030】
12 エンジン(原動機)
14 出力軸
21 ファンケース
23 動翼
31 ハブ
33 送風機
35 変速機
36 入力軸
37 ユニバーサルジョント
45 変速機の出力軸

【特許請求の範囲】
【請求項1】
原動機(12)の後側に動翼(23)が設けられ、前記原動機(12)の回転動力が伝達される変速機(35)の出力軸(45)に前記動翼(23)が取り付けられているスピードスプレーヤにおいて、
前記変速機(35)は、前記動翼(23)のハブ(31)内に設けられていることを特徴とするスピードスプレーヤ。
【請求項2】
前記変速機(35)は、前記動翼(23)とともに送風機(33)を構成するファンケース(21)に固定されていることを特徴とする請求項1に記載のスピードスプレーヤ。
【請求項3】
前記変速機(35)の入力軸(36)は、前記原動機(12)の回転動力を伝達する出力軸(14)とユニバーサルジョント(37)により連結されていることを特徴とする請求項2に記載のスピードスプレーヤ。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【公開番号】特開2012−81439(P2012−81439A)
【公開日】平成24年4月26日(2012.4.26)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−231275(P2010−231275)
【出願日】平成22年10月14日(2010.10.14)
【出願人】(510246024)株式会社M&Sテクノロジー (2)
【Fターム(参考)】