説明

スプラウト用容器

【課題】 新芽野菜の嵩高となる根本部分と、新芽部分とを安定よく収容でき、嵩の低い茎状部分を隣接野菜どうしが長さ方向に相対移動しにくく安定よく落ち着かせ、容器内の包装状態において、内装野菜の見栄えをよくしておくことができる容器の提供。
【解決手段】
長方形状とした容器本体1と、同形同大に形成した蓋体2とからなり、容器本体1の底板12の長手方向下方の約5分の2乃至5分の1程度の部分が、深さ方向に深さの深い凹入部dに形成され、底板12の長手方向上方の約5分の1乃至5分の2程度の部分も、深さ方向に深さの深い凹入部eに形成され、下方の凹入部dから上方の凹入部eに至る間が、略均等深さか、上方の凹入部eから下方の凹入部dに至るにしたがって次第に深さが浅くなる傾斜状かの、深さの浅い凹入部fに形成され、蓋体2が、四周の側壁部21を除く略全面を略均一深さの透明な天板22を備えた凹入部に形成されている構成としたもの。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、合成樹脂製のシート素材を平面視形状で縦長の長方形状とした容器本体と、その上面を覆う同形同大に形成した蓋体とからなる容器であって、例えば、空心菜とか、貝割れ大根や貝割れブロッコリー・貝割れそば・貝割れレッドキャベツ等のような種子を密に播いて徒長させた発芽間もない未成長・未成熟の新芽野菜であって、殊に、直線状に伸びた茎状部を有する新芽野菜の包装に使用する容器に関するものである。本発明にあっては、このような直線状に伸びた茎状部を有する新芽野菜を総称して、単にスプラウトという。
【背景技術】
【0002】
例えば、一般に周知されている貝割れ大根のように、根の部分と双葉状の部分との間に直線状に伸びた茎状部を有する発芽野菜の包装容器としては、平面積に比して深さの深い深絞り形の樹脂成形容器に縦姿勢として収納されて販売されている。このことは市場を介して購入されているので一般にも知られている。このことは、周知のことであるが、敢えて記載すれば、次の特許文献1や2,3に見られるとおりである。
【特許文献1】特開2004−242575号公報
【特許文献2】特開2004−242576号公報
【特許文献3】特開平7−315384号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0003】
しかしながら、貝割れ大根のように、水耕栽培に適していて、隣接野菜どうしの根本の部分が用土代りのスポンジを媒体として一連の塊状に育成されているスプラウトにあっては、所定の大きさに切り取ったスポンジ部分を下にして容器に挿入したり、予め底にスポンジを入れた容器内で、種子から発芽生育させることが可能なスプラウト用の容器としては最適であるが、例えば、空心菜のように、所定の大きさ、例えば野菜丈を20cm程度にまで生育させた後、根本部分を洗い揃えてから包装し販売に供さなければならないスプラウトの包装容器としては、最適な容器とは言えない。
【0004】
そこで、本発明の容器は、平面視形状が縦長の長方形状とした皿形の容器本体と、その上面を覆う蓋体とからなる容器とし、嵩高となる根本部分と、新芽部分とを安定よく収容でき、嵩の低い茎状部分を隣接野菜どうしが長さ方向に相対移動しにくく安定よく落ち着かせるようにして包装することができるスプラウト用の容器を提供することを第1の目的とし、この容器内への包装状態において、内装野菜の見栄えをよくしておくことができる容器を提供することを第2の目的とするものである。
【課題を解決するための手段】
【0005】
この課題を解決するために講じた本発明にいうところのスプラウト用容器は、合成樹脂シート素材を用いて平面視形状を縦長の長方形状とした容器本体1と、その上面を覆う同形同大に形成した蓋体2とからなり、容器本体1が、底板12の長手方向下方の約5分の2乃至5分の1程度の部分が、深さ方向に深さの深い凹入部dに形成され、底板12の長手方向上方の約5分の1乃至5分の2程度の部分も、深さ方向に深さの深い凹入部eに形成され、下方の凹入部dから上方の凹入部eに至る間が、略均等深さか、上方の凹入部eから下方の凹入部dに至るにしたがって次第に深さが浅くなる傾斜状かの、深さの浅い凹入部fに形成され、蓋体2が、四周の側壁部21を除く略全面を略均一深さの透明な天板22を備えた凹入部に形成されている構成としたものである。
【0006】
また、請求項2に記載の構成は、蓋体2のみか、容器本体1と蓋体2との両体1,2かの下方部分の約5分の2乃至5分の1程度の部分が、内部透視不能または困難な程度に不透明に形成されている構成としたものである。
【0007】
更に、請求項3に記載の構成は、容器本体1と蓋体2との何れか一方または両体1,2を、両体1,2の嵌合状態で上方に向かって開口する空気流通孔を形成するための凹部15,25を、その上端部に備えている構成としたものである。
【発明の効果】
【0008】
以上の構成から明らかなように本発明は、容器本体を、その上下の所定幅部分をそれぞれ深さ方向に深さの深い凹入部に形成し、これら両部を繋ぐ中間部分を略均等深さに形成するか、上方の凹入部から下方の凹入部に至るにしたがって次第に深さが浅くなる傾斜状に形成するかの形状として、深さの浅い凹入部に形成してあるものとし、この上面を覆う蓋体を、透明な天板とした略均一深さの凹入部を備えているものとし、蓋体は略全面を略均一深さの透明な天板を備えた凹入部に形成してあるので、スプラウトの嵩の低い茎状部分を容器本体の中間部分に形成してある深さを浅くした部分に配置して、隣接野菜どうしの長さ方向への相対移動をしにくくして安定よく落ち着かせるようにし、嵩高となる根本部分と、先端側の新芽部分とを、容器の深い凹入部に安定よく収容できるようにしてあるので、容器内に収容した野菜が、輸送時に濫りに動いて姿勢が乱れて外観上の見栄えを損ねたり、野菜どうしが擦れ合って損傷するという不都合の発生を最小限に止めて、新鮮さを維持させておくことができるという顕著な効果を有するに至ったのである。
【0009】
また、請求項2に記載のように、少なくとも蓋体の下方約5分の2乃至5分の1程度の部分を内部透視不能または内部透視が困難な程度に不透明に形成してあるものとしておくことによって、透明な天板とした蓋体に収容させた野菜の新芽部分や茎状部分を外部から容易に視認できるものでありながら、購買意欲をそそらない根本の部分を覆って直ちには見えないようにしておくことによって、購買者は内部透視し易い中間部の茎部分と先端側の新芽部分との状態を確認して、気持ちよく購入することができるという効果を期待することができるのである。
【0010】
更に、請求項2に記載の、容器本体の下方部分に形成してある深さを深くしておくことによって、野菜の根本部分を収容させるようにした凹入部についても、内部透視不能または内部透視が困難な程度に不透明に形成してあるものとしておくことによって、より一層購買者に気持ちよく購入する購買意欲を増大させることができる効果がある。
【0011】
更には、請求項3に記載のように、容器本体と蓋体との何れか一方または両体を、両体の嵌合状態で上方に向かって開口する空気流通孔を形成するための凹部15,25を形成する凹部を、その上端部に備えているものとしておくことによって、内部に収容させた野菜がこの空気流通孔を形成するための凹部15,25を介して外部との空気流通が可能となり、鮮度の低下を和らげ、販売展示に際して縦姿勢で並べて展示したときや、殊に、夏期における高温による新鮮さの喪失を遅延させることができ、内装野菜の見栄えをよくしておくことができるという効果を期待することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0012】
本発明にかかるスプラウト用容器を実施するに当たっては、容器本体とその上面を覆う蓋体とを、合成樹脂シート素材を用いて別々に形成して相互に嵌合させるようにして実施してもよいが、これらの容器本体と蓋体とをそれぞれの一側において折り曲げヒンジ部を介して一体的に形成してあるものとして実施してもよい。
【実施例】
【0013】
以下本発明の実施例の詳細を実施例図面に基づいて説明する。図1は本発明の第1実施例を示す容器の斜視図であり、図2はその平面図、図3は同正面図、図4は同背面図、図5は同左側面図である。図6及び図7は、図2に記載したA−A線及びB−B線で切断した矢視方向の端面図である。なお、底面図と右側面図とは、他の図から明らかであると思われるので本実施例の説明のためには使用しない。
【0014】
該実施例に示した容器1は、空心菜の新芽を包装するのに適した構造とした樹脂シート製の容器である。ここにいう空心菜とは、現在のところ一般には馴染みの薄い野菜であるが、カルシウム、カリウム、鉄分を多く含み、β−カロチンも多く含んでいて、ビタミンAの効果が高いためか、また、新芽(スプラウト)の場合は、生のままでも、炒め物にしても、鍋物に入れても、くせがなく食することができるためか、健康野菜の一つとして急速に普及しつつある野菜である。
【0015】
この空心菜は、根の部分と先端のなた形の葉との間が、直線状に伸びる細長い茎状部になっていて、この茎状部が根の部分と葉の部分とに比して少し嵩が低くなる。該実施例に示した容器は、このように根と葉又は新芽部分との間がほぼ直線状に伸びる細長い茎状部となっている新芽野菜の包装に適した容器である。
【0016】
而して、該実施例に示した容器は、その成形用樹脂素材が限定されるものではないが、例えば、ポリエチレンテレフタレート(以下PETという)樹脂製のシート素材を用いて図1,2のように、平面視形状を縦長の長方形状とした容器本体1と、その上面を覆う同形同大に形成した蓋体2とからなり、これらの容器本体1と蓋体2とを、それぞれの一側において折り曲げ部3を介して一体的に形成してある。
【0017】
これらの内、容器本体1は、その底板12が、これらの両図1,2及び図6の端面図に見られるように、長手方向における下方の約4分の1程度の部分が、深さ方向に深さの深い凹入部dに形成され、長手方向における上方の約5分の1余りの部分も、深さ方向に深さの深い凹入部eに形成され、これら下方の凹入部dから上方の凹入部eに至る間の部分が、上方の凹入部eから下方の凹入部dに至るにしたがって次第に深さが浅くなる傾斜状の、平均して深さの浅い凹入部fに形成してある。更に、この底板12は、周壁11と底板12とが交差する底板12の四周に、外側即ち下面側に向かって突出する周溝13を備えている。また、前記周壁11は、深さ方向に縦長となる菱形の多数の補強用のリブ14を形成してある。
【0018】
また、該容器本体1は、周壁11の上面側に連なる四周を、図2において上面側に向かって突出する嵌合凸部16としてあり、その外周部にフランジ部17を形成してある。更に、該嵌合凸部16は、図2の上方部分の左右方向の中央部を、図1及び図4にみられるように、深さ方向に向かって凹入する弧状の凹部15を形成してある。
【0019】
蓋体2は、四周の側壁部21を除く略全面を略均一深さにした透明な天板22を備えた凹入部に形成されいて、容器本体1の場合と同様に、四周の側壁部21は、深さ方向に縦長となる菱形の多数のリブ24を形成してある。また、該実施例に示した容器の蓋体2における天板22の四隅部分には、四隅部分の形状に沿って外方に向かって突出する滑り止め凸部29を備えている。この凸部29によって、移送時等において容器どうしを上下に積み重ねたとき、上側容器が滑り落ちるのを防止できるようにしてある。
【0020】
また、該蓋体2は、周壁21の上面側に連なる四周を、少し低く形成した嵌合凹部26としてあり、容器本体1における前記嵌合凸部16を受け入れて、容器の全周面において互いに嵌合するように形成してある。また、該嵌合凹部26の外周部には周方向に向かって突出するフランジ部27を形成してあって、蓋体2を容器本体1に嵌合させたとき、フランジ部17,27どうしが互いに接触し合うようにしてある。更に、該フランジ部27は、図2の上方部分の左右方向の中央部を、図1及び図4にみられるように、深さ方向に向かって凹入する弧状の凹部25を形成してある。このことによって、蓋体2を容器本体1上に嵌合させたとき、容器本体1における前記弧状の凹部15と共同して容器の上方に外部と空気流通を行う空気流通孔を形成するようにしてある。また、該蓋体2の天板22には、長手方向の上半部分に複数の、図1,2にあっては、四つの空気流通用小穴28を形成してある。
【0021】
このような形状とした該実施例に示した空心菜用の容器の大きさは、内装空心菜の生長度によって必ずしも一定のものではないが、敢えて概寸を示すと、図2に示した容器本体1の長手方向の大きさは約250mm、横幅は約140mm、容器本体下方部分の凹入深さは約30mm、蓋体2における深さも約30mmとしてある。
【0022】
なお、前記実施例に示した容器本体1と蓋体2とには、その両体1,2の上方部分に、両体1,2の嵌合状態で上方に向かって開口する空気流通孔を形成するための凹部15,25を形成してあるものとして示したが、この凹部15,25は、容器本体1と蓋体2との何れか一方だけに形成してあるものとしてじっししてもよい。
【0023】
図8及び図9は、前記第1実施例に示した容器の別実施例としての第2、第3実施例の容器を示したもので、図8に示した容器は、蓋体2の天板22の下方部分hに内部透視不能または内部透視困難な程度に不透明に着色を施した容器を示し、図9に示した容器は、容器本体1と蓋体2との下方部分gの全体を不透明塗装を施して内部透視困難とした容器を示したものである。
【0024】
また、図10及び11は、第4実施例の容器を示したもので、該実施例の容器は、前記第1実施例に示した容器における縦長菱形の補強リブ14,24に変えて、縦棒状に形成した多数のリブ14,24を備えた構造とし、容器本体1は全体を透明のままとし、蓋体2の下方部分iの全体のみを不透明塗装を施して内部透視困難としてある容器を示したものである。なお、図10に示した容器本体1の底板12は、長手方向における上方の約5分の2に近い部分を、深さ方向に深さの深い凹入部eに形成してある。
【0025】
本発明は、これらのようにして実施することによって、内部に収容させてある野菜の根本部分を内部透視不能または内部透視が困難な程度に不透明に形成してあるものとしておくことによって、内装野菜を美しく見せ、購買者に気持ちよく購入する意欲を増大させることができるようにして実施することができるものである。
【0026】
以上本発明の代表的と思われる実施例について説明したが、本発明は必ずしもこれらの実施例に示した形状の容器のみに限定されるものではなく、本発明にいう前記の構成要件を備え、かつ、効果を有する範囲内において適宜の形状のものに改変して実施することができるものである。
【産業上の利用可能性】
【0027】
本発明にいうところのスプラウト用容器は、このように容器内に収容させた新芽野菜をその茎状部分を平行に揃えて乱れの少ない状態で消費者に提供することができるので、市場において大いに活用されると期待されるものである。
【図面の簡単な説明】
【0028】
【図1】本発明の第1実施例を示す容器の斜視図。
【図2】同容器の平面図。
【図3】同容器の正面図。
【図4】同容器の背面図。
【図5】同容器の左側面図。
【図6】図2記載のA−A線で切断した矢視方向の端面図。
【図7】図2記載のB−B線で切断した矢視方向の端面図。
【図8】第2実施例の容器を示した平面図。
【図9】第3実施例の容器を示した平面図。
【図10】第4実施例の容器を示した平面図。
【図11】同容器の左側面図。
【符号の説明】
【0029】
1 容器本体
12 底板
15、25 空気流通孔を形成するための凹部
2 蓋体
21 側壁部
22 天板
d 下方の凹入部
e 上方の凹入部
f 浅い凹入部

【特許請求の範囲】
【請求項1】
合成樹脂シート素材を用いて平面視形状を縦長の長方形状とした容器本体(1)と、その上面を覆う同形同大に形成した蓋体(2)とからなり、
容器本体(1)が、底板(12)の長手方向下方の約5分の2乃至5分の1程度の部分が、深さ方向に深さの深い凹入部(d)に形成され、底板(12)の長手方向上方の約5分の1乃至5分の2程度の部分も、深さ方向に深さの深い凹入部(e)に形成され、下方の凹入部(d)から上方の凹入部(e)に至る間が、略均等深さか、上方の凹入部(e)から下方の凹入部(d)に至るにしたがって次第に深さが浅くなる傾斜状かの、深さの浅い凹入部(f)に形成され、
蓋体(2)が、四周の側壁部(21)を除く略全面を略均一深さの透明な天板(22)を備えた凹入部に形成されているスプラウト用容器。
【請求項2】
蓋体(2)のみか、容器本体(1)と蓋体(2)との両体(1,2)かの下方部分の約5分の2乃至5分の1程度の部分が、内部透視不能または困難な程度に不透明に形成されている請求項1に記載のスプラウト用容器。
【請求項3】
容器本体(1)と蓋体(2)との何れか一方または両体(1,2)を、両体(1,2)の嵌合状態で上方に向かって開口する空気流通孔を形成するための凹部(15,25)を、その上端部に備えている請求項1または2に記載のスプラウト用容器。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【公開番号】特開2008−265767(P2008−265767A)
【公開日】平成20年11月6日(2008.11.6)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2007−107735(P2007−107735)
【出願日】平成19年4月17日(2007.4.17)
【出願人】(000124166)
【Fターム(参考)】