説明

スプリンクラーヘッドのキャップのリサイクル方法

【課題】スプリンクラーヘッドの下部を覆い外的衝撃から保護するキャップをスプリンクラーの設置工事終了後に取り外し、回収し、再使用に供するリサイクル方法を提供する。
【解決手段】金属製、特にアルミ製のキャップの使用を前提としたリサイクル方法であって、現場に設置された、キャップが装着されたスプリンクラーヘッドから前記キャップを回収する回収工程S100と、前記回収工程において回収したキャップから再使用することができるキャップを選別する選別工程S200と、前記選別工程において選別されたキャップを再びスプリンクラーヘッドに装着する装着工程S400と、を有する。汚れや変形があってそのままリサイクルできないキャップを洗浄し再成形する再生工程S300を適宜備える。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、スプリンクラーヘッドを保護するキャップをスプリンクラーの設置工事終了後に取り外し、回収し、再使用に供するリサイクル方法に関する。
【背景技術】
【0002】
エコという言葉が社会の隅々にまで浸透し、省資源やゴミ削減などへの意識が高まっている。
そのため、さまざまな分野においてリサイクルのシステム・方法が実施されており、特許の観点からもこのようなシステム・方法に関する多数の特許出願がなされている。
これらの特許出願の例として、特許文献1の「リユースカップによる飲食品の提供方法」、特許文献2の「カーペットの再生方法と再生用カーペット、及び再生用カーペットのリサイクルシステム」、特許文献3の「ペットボトルのリサイクルシステム」などがある。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2008−197699号公報
【特許文献2】特開2002−010901号公報
【特許文献3】特開平09−267332号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
リサイクルは使用済みの物品を回収し、再度の使用を可能とするために洗浄等をするという過程は共通するとはいえ、当然のことながら対象物によってその手順も留意点も異なる。
たとえば、対象物が飲食物用容器の場合、回収後入念に洗浄・殺菌を行わなくてはならない(特許文献1)。対象物がカーペットの場合、洗浄を行った後、汚れの度合いが再使用に耐えうる程度であればそのまま再使用するが、そうでなければ表層とバッキング層とを分離しなくてはならない(特許文献2)。対象物がペットボトルの場合、回収時に減容させ、再生加工の際にはまず粉砕させなくてはならない(特許文献3)。
【0005】
本発明が対象とするスプリンクラーヘッドのキャップについては、次のようないくつかの固有の問題がある。第一にスプリンクラーの設置工事の際にキャップには必ずといってよいほど塗料などが付着してしまう。第二に従来のキャップは樹脂製が多いので、現場で施工後のスプリンクラーヘッドから取り外したキャップは損傷しているものが多く、これらは再使用には適さない。第三に、設置工事後こうしたキャップは大量に発生する。例えば小規模なグループホーム1軒の設置工事でも100個程度は出るといわれる。これほど大量に発生するのであれば、キャップ回収のコストも当然大きくなる。その結果、他の廃材と一緒に廃棄処分にされがちである。
ところで消防法施行令の改正により、自立避難が困難な人が入所する社会福祉施設は延べ面積が257平方メートル以上であればスプリンクラーの設置が義務づけられることになった。改正前は延べ面積が1000平方メートル以上であったことを考慮すると、スプリンクラーへの需要は今後大幅に増加する。これに伴い、スプリンクラーヘッドを保護するキャップの廃棄量も急増すると考えられ、環境面と廃棄コスト面からなんらかの対策が必要である。
本発明は、スプリンクラーヘッドのキャップに関するこれらの固有の問題点を考慮しつつ、効率的なリサイクルの方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
上記の目的を達成するために、請求項1に係る発明は、スプリンクラーヘッドの金属製キャップをリサイクルする方法であって、
現場に設置された、キャップが装着されたスプリンクラーヘッドから前記キャップを回収する回収工程と、前記回収工程において回収したキャップから再使用することができるキャップを選別する選別工程と、前記選別工程において選別されたキャップを再びスプリンクラーヘッドに装着する装着工程と、を有することを特徴とする。
【0007】
本請求項に係る発明の長所を述べる。第一に、現場で取り外したキャップが廃棄物とはならず環境重視という時代の要請に応えている。第二に、金属製なので樹脂製のキャップに比べて取り外し時の損傷が少なく再使用効率が良い。第三に、キャップを再使用することによりスプリンクラー設置の費用がトータルとして低減される。第四に、この分の廃棄物処理費用が発生しない。
【0008】
上記の目的を達成するために、請求項2に係る発明は、請求項1に記載のリサイクル方法であって、前記キャップがアルミ製であることを特徴とする。
アルミは、金属の中でも特に加工が容易である。そのため、キャップが取り外し時に損傷したとしても成形機にかけて容易に再使用可能に復元できる。
【0009】
上記の目的を達成するために、請求項3に係る発明は、請求項1または2のいずれかに記載のリサイクル方法であって、前記選別工程において選別されたキャップを洗浄し再成形する再生工程をさらに有することを特徴とする。
これにより、塗料などの付着や、へこみなどの変形が多少あっても再使用することができる。つまり本請求項に係る発明は、再使用効率のアップに資するものである。
【0010】
上記の目的を達成するために、請求項4に係る発明は、請求項1〜3のいずれか1に記載のリサイクル方法であって、前記回収工程において、回収したキャップを回収容器に段重ねして収容することを特徴とする。
キャップという付属品の特徴として、一箇所の現場で発生する廃棄量が大きいことが挙げられる。そのため、回収の容易さが何よりも重要である。回収箱を使用すればキャップの回収が容易となり、選別工程も簡略化され、リサイクルが促進される。
回収箱の縦、横、高さをキャップの大きさを考慮して決定するならば、キャップの個数をカウントしやすくなる。このカウントの容易さは副次的な効果をもたらす。現場からの回収率を上げるために回収したキャップの個数に応じて返金することが効果的であるが、このカウントの容易さは、この返金システムの導入に資する。
【発明の効果】
【0011】
キャップを従来の樹脂製から金属製に替えたので、再使用効率が向上する。
また回収したキャップの個数のカウントが容易になるような回収容器を設置業者に提供するので回収効率が向上する。回収の手間が軽減される結果、回収に協力する業者の増加が期待できる。
【図面の簡単な説明】
【0012】
【図1】本発明の実施形態に係るスプリンクラーヘッドのキャップのリサイクル方法の手順を示す図である。
【図2】本発明の実施形態に係るキャップの回収箱を例示する図である。
【発明を実施するための形態】
【0013】
以下、図面を参照しつつ、本発明の実施形態について説明するが、最初に、公知のスプリンクラーヘッドのキャップについて簡単に説明する。
【0014】
本発明のリサイクル対象となるキャップは、事務所、工場、駐車場等に設置されるスプリンクラー消火設備におけるスプリンクラーヘッドの下部全体を覆う有底筒状の付属品である。
ところでスプリンクラーヘッドは、火災時に発生する熱が一定の温度になると放水口が開放されるようになっている。スプリンクラーヘッドは、外的衝撃を受けると、火災発生時でなくても放水口が開放されてしまう。
そのため外的衝撃からスプリンクラーヘッドは保護されなくてはならないが、外的衝撃が生ずる場合の多くは輸送、スプリンクラーヘッドの取り付け工事、および取り付け後の内装工事において発生する。たとえば、製造工場からの輸送中のトラック内部でスプリンクラーヘッド同士がぶつかったり、現場での取付け作業中に床に落下させたり、天井の塗装工事で工具を接触させたりした場合である。
このような外的衝撃による放水口の開放を防止するために、出荷から輸送そして取付け工事中までの間、スプリンクラーヘッドにキャップを被せて保護している。
しかし、取り付け工事の完了後は、火災時に確実にスプリンクラーヘッドを作動させるために、キャップを取り外す必要がある。従来は、取り外されたキャップのほとんどが廃棄処分となっていた。
【0015】
本実施形態ではキャップは金属製、特にアルミ製を用いるものとする。
キャップは安価な樹脂で作られたものが多いが、樹脂製キャップは壊れやすく、へこみなどの変形があると復元が難しい。また、塗料が付着した場合、樹脂は塗料に使用される溶剤に弱く、変形のもととなるので、塗料を落として再使用することも難しい。
これに対し、金属製であれば、へこみなどの変形があっても金属の可塑性により成形機にかけて元の形状にすることができる。また、塗料が付着しても影響がない。金属の中でもアルミは加工が容易かつ軽量なので、本実施形態のキャップはアルミ製とする。
【0016】
次に図1を参照しつつ、本実施形態にかかるリサイクル方法の手順を説明する。
以下の説明では、スプリンクラーを設置し、設置後にキャップを取り外して使用済みキャップを回収に回す設置業者を「顧客A」とし、顧客Aから回収し、回収したキャップを再使用可能か否かの選別をし、可能であれば必要に応じて再生する業者を「リサイクル業者B」とし、リサイクル業者Bから納入を受けた再生済みキャップを自社のスプリンクラーヘッドに装着し顧客Aに納入する業者を「製造業者C」とする。
【0017】
本実施形態に係るリサイクル方法は、回収工程(S100)と、選別工程(S200)と、再生工程(S300)と、装着工程(S400)とを備える。
回収工程(S100)は、顧客Aがスプリンクラーヘッドから取り外したキャップをリサイクル業者Bが回収する工程である。
選別工程(S200)は、リサイクル業者Bがキャップの損傷を検査して再使用可能か選別する工程である。
再生工程(S300)は、リサイクル業者Bがキャップの汚れを洗浄し、かつ、損傷が回復可能であれば修復し、使用済みキャップを再使用可能にする工程である。
装着工程(S400)は、リサイクル業者Bによって納入された再使用可能なキャップを、製造業者Cがスプリンクラーヘッドに装着する工程である。
以下、各工程のそれぞれについて詳しく説明する。
【0018】
回収工程(S100)は、顧客Aによるスプリンクラーヘッドからの取り外し(S101)および回収箱への収容(S102)、リサイクル業者Bによる回収(S103)の各工程からなる。
顧客Aはスプリンクラー設備の設置業者であり、スプリンクラーを設置し内装工事が完了したならばキャップを取り外す(S101)。
顧客Aは、あらかじめリサイクル業者Bから提供された回収箱に取り外したキャップを段重ねにして収納する(S102)。この回収箱の一例を図2に示す。この例では、横に5個、縦に5個、上下に5個を収容できる。縦と横に仕切り板(図示せず)を設けるとさらに収容しやすい。
回収箱1の内部に収容可能なだけ収容したときのキャップ2の個数は125個である。このように個数を数えなくても所定の回収箱に入れるだけで容易に個数がわかる。一般的なビルの工事現場であれば数千個、小規模なグループホームでも100個程度という大量の使用済みキャップが出る。回収に協力してもらうためにはなんらかのインセンティブが必要である。本実施形態のシステムでは回収個数に応じてリサイクル業者Bが顧客Aに返金するようにしている。返金のためには個数の確定が必要であるが、顧客Aにとって多量のキャップをカウントすることはわずらわしいことである。そのため、本実施形態では回収箱を利用することにした。この回収箱の外側の面に、顧客Aを特定する情報や日時や現場の名称などを記入等させてもよい。なお、キャップ同士を段重ねにする場合は、キャップを段重ねに適するような形状にすることが望まれる。
使用済みのキャップは回収箱に入れたまま回収される(S103)。顧客Aがリサイクル業者Bに搬入してもよく、リサイクル業者Bが顧客Aの現場まで回収に訪れてもよい。
【0019】
選別工程(S200)は、外観検査(S201)、振り分け(S202)、返金額算出(S203)の各工程からなる。
リサイクル業者Bは、キャップの外観を目視等の手段で、汚れや変形の有無を検査し(S201)、破損あるいは復元不可能な変形のあるキャップは振り分け工程(S202)においてリサイクル対象から外される。ただし、金属製なので専門の廃棄業者に渡され、他の用途にリサイクルされうる。変形がないか、復元可能な程度の軽微な変形であればリサイクル対象として次の再生工程(S300)へ移される。
リサイクル業者Bは、回収したキャップの個数に基づいて返金額を算出する(S203)。回収したキャップの個数に1個当たりの返金額を乗じてもよいが、廃棄処分にする個数とリサイクルに回せる個数とを勘案して返金額を算出してもよい。具体的な算出方法はリサイクル業者Bが顧客Aと取り決めをしておけばよい。
【0020】
再生工程(S300)は、洗浄(S301)と、形状復元(S302)の各工程からなる。
キャップの役割の一つは、設置作業中にスプリンクラーヘッドを損傷や塗料の付着などから防ぐことにある。そのため、キャップ自体は輸送時や工事中に損傷を受けることもあるし、壁や天井などへ塗装を施す際に塗料が付着することもある。
そこで、リサイクル業者Bは使用済みキャップのホコリを落としたり、塗料を除去したりする(S301)。これにより、どのように汚れが付着した使用済みキャップであっても、再びキャップとして再使用が可能となる。
次に、リサイクル業者Bは形状に変形が見られるものは成形機で元形状に復元する(S302)。アルミ製なので容易に復元できる。洗浄と形状復元の過程で、再使用に耐えうるか適宜品質検査を行ってもよい。
選別工程(S200)における目視等の検査においてそのまま使用可能と判断されたキャップは、再生工程(S300)を省略し、ただちに装着工程(S400)に送ってもよい。
【0021】
装着工程(S400)は、リサイクル品の搬送(S401)と、スプリンクラーヘッドへの装着(S402)と、設置業者である顧客Aへの納入(S403)の各工程からなる。
リサイクル業者Bは製造業者Cへ再使用可能な状態となったキャップを搬送する(S401)。その際、空の回収箱も納入する。
製造業者Cはこれらのキャップをスプリンクラーヘッドに装着する(S402)。
キャップを装着されたスプリンクラーヘッドは製造業者Cから,空の回収箱とともに顧客Aへ納入される(S403)。このようにして使用済みのキャップは再び現場で用いられる。 つまり、キャップの回収、再生、再使用のサイクルが実現するわけである。この間、キャップの廃棄費用が最小限となり、顧客Aすなわち設置業者は回収に伴う返金を受けると同時にリサイクルのキャップを使用することで新品よりもコストダウンが図れる、というメリットを享受できる。キャップも含むスプリンクラー設備を提供する製造業者Cは、本発明のリサイクルシステムを後押しすることによって、環境問題を重視する企業というイメージを高めることができる。例えば企業のWebサイトの「環境方針」のページにこのことを謳うことが出来る。リサイクル業者Bは、本実施形態のリサイクルシステムにおいて中心的役割を果たすことにより、ビジネスチャンスを獲得できる。
【0022】
今回開示された実施形態はすべての点で例示である。本発明の範囲は上述した実施形態に基づいて制限されるものではなく、本発明の趣旨を逸脱しない範囲で種々の変形が考えられる。
【0023】
たとえば、回収箱の使用は必須ではなく、専用袋でもよい。回収された個数はリサイクル業者側で返金額の算出時にカウントすればよいからである。ただし、箱でも袋でも何でもよいが、使用済みキャップだけをまとまった個数入れるならば、リサイクル業者Bにとって運搬が容易となり経済的に行える。その結果、リサイクルコストも低減する。
【0024】
上記の実施形態の「顧客A」と「リサイクル業者B」と「製造業者C」の区分けはあくまで説明の便宜のためにすぎない。リサイクル業者Bは、顧客Aから使用済みキャップを回収して廻る回収業者B1と、回収業者B1から使用済みキャップを有償で受領し再使用可能に加工する再生業者B2に分けてもよい。あるいは回収業者B1を介さずに顧客Aが直接再生業者B2に使用済みキャップを持ち込んで引き取ってもらってもよい。リサイクル業者B(あるいは再生業者B2)と製造業者Cとは同一業者であってもよい。製造業者Cはスプリンクラー設備の製造元であって、新品のキャップも製造するが使用済みキャップからの再生も行うことが考えられるからである。
要は、使用済みキャップの回収→再生→再使用→回収というリサイクルシステムが成り立っているならば、誰がどのような工程にかかわってもよい。各工程の具体的な実施内容と実施のための手段等は、適宜変更可能である。
【産業上の利用可能性】
【0025】
消耗品として廃棄されていたスプリンクラーヘッドのキャップを再使用することにより、資源の有効利用やごみ削減という社会的ニーズに応えることができる。

【符号の説明】
【0026】
1:回収箱、2:スプリンクラーヘッドのキャップ

【特許請求の範囲】
【請求項1】
スプリンクラーヘッドの金属製キャップをリサイクルする方法であって、
現場に設置された、キャップが装着されたスプリンクラーヘッドから前記キャップを回収する回収工程と、
前記回収工程において回収したキャップから再使用することができるキャップを選別する選別工程と、
前記選別工程において選別されたキャップを再びスプリンクラーヘッドに装着する装着工程と、
を有することを特徴とする、スプリンクラーヘッドのキャップのリサイクル方法。
【請求項2】
前記キャップはアルミ製であることを特徴とする、請求項1に記載のスプリンクラーヘッドのキャップのリサイクル方法。
【請求項3】
前記選別工程において選別されたキャップを洗浄し再成形する再生工程をさらに有することを特徴とする、請求項1または2のいずれかに記載のスプリンクラーヘッドのキャップのリサイクル方法。
【請求項4】
前記回収工程において、回収したキャップを回収箱に段重ねして収容することを特徴とする請求項1〜3のいずれか1に記載のスプリンクラーヘッドのキャップのリサイクル方法。

【図1】
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【図2】
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