説明

スプレー塗装用プライマー組成物

【課題】スプレー塗装後のプライマー塗膜のレベリング性を向上させることにより、塗膜全体の密着性や強度を向上させ、ひいては塗膜全体の耐溶剤性などが向上した、スプレー塗装用プライマー組成物を提供する。
【解決手段】ポリウレタン樹脂(A)、及び有機溶剤(B)からなるスプレー塗装用プライマー組成物において、固形分が5〜15質量%であり、有機溶剤(B)が、沸点が130℃未満の有機溶剤(B1)、及び沸点が130〜180℃の有機溶剤(B2)からなり、(B1):(B2)=95〜50:5〜50(質量比)であることを特徴とするプライマー組成物により解決する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、スプレー塗装後の塗膜が優れたレベリング性を示す、スプレー塗装用プライマー組成物に関する。
【背景技術】
【0002】
近年、プラスチック成形品として、耐衝撃性、耐熱性、耐候性等の観点からナイロンやポリカーボネートが広く用いられている。このような成形品を塗装する場合、塗料のみでは十分な密着性を発揮できないため、プライマーをあらかじめ成形品の表面に塗布してから塗料を塗布する必要がある。
【0003】
ナイロンやポリカーボネートに用いられるプライマーとしては、ポリウレタン/エポキシの複合樹脂を用いたプライマーが挙げられる。例えば、特許文献1には、「ウレタンプレポリマーおよび/または熱可塑性ポリウレタンと、エポキシ樹脂と、ケトンまたはアルデヒドとアミンとから導かれるケチミン(C=N)結合を有するケチミン化合物と、溶剤とを含有するプライマー組成物」が提案されている。また、特許文献2には、「ウレタン−ウレア樹脂溶液からなるプライマー組成物」が提案されている。特許文献3には、「ポリエステル変性ウレタンポリオールおよびメラミン樹脂を必須とする樹脂成分、スルホン酸系触媒を必須とする硬化触媒、顔料および溶剤を含有するプライマー塗料」が示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2006−249223号公報
【特許文献2】特開昭62−129361号公報
【特許文献3】特開平10−273620号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
プライマーによる塗膜は、溶剤やガソリンなどと接触する場合があり、このため塗膜には十分な耐溶剤性が要求される。また、スプレー塗装により塗装する場合があり、スプレー塗装時の作業性が要求される。しかしながら、特許文献1や特許文献2に開示されている技術は、前記要求を全てクリヤーできていなかった。また、特許文献3の技術は、塗膜に強酸性の成分が残存することになるので、塗膜の耐加水分解性の問題がある。
【0006】
本発明は、以上の事情を鑑みてなされたものである。すなわち、本発明の目的は、スプレー塗装後のプライマー塗膜のレベリング性を向上させることにより、塗膜全体の密着性や強度を向上させ、ひいては塗膜全体の耐溶剤性などが向上した、スプレー塗装用プライマー組成物の提供を目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明は、高分子ポリオールと有機ポリイソシアネートを反応させて、イソシアネート基末端プレポリマーを製造し、その後低分子ジアミン及び低分子モノアミンにて鎖延長反応させて得られるポリウレタン樹脂(A)、及び有機溶剤(B)からなるスプレー塗装用プライマー組成物において、
固形分が5〜15質量%であり、
有機溶剤(B)が、沸点が130℃未満の有機溶剤(B1)、及び沸点が130〜180℃の有機溶剤(B2)からなり、(B1):(B2)=95〜50:5〜50(質量比)であることを特徴とするプライマー組成物である。
【発明の効果】
【0008】
本発明のプライマー組成物により、特にスプレーを用いたプライマー塗布の際のプライマー塗膜のレベリング性が良好であるため、それに伴い中塗り層や上塗り層の密着性が向上し、塗膜としての耐溶剤性や耐湿熱性が向上する。
【発明を実施するための形態】
【0009】
本発明のプライマー組成物の樹脂成分であるポリウレタン樹脂(A)は、高分子ポリオールと有機ポリイソシアネートを反応させて、イソシアネート基末端プレポリマーを製造し、その後低分子ジアミン及び低分子モノアミンにて鎖延長反応させて得られる。
【0010】
高分子ポリオールは、数平均分子量500〜5,000、好ましくは1,000〜3,000であり、イソシアネート基の反応基として水酸基を含有する化合物である。1分子中の水酸基数(平均官能基数)は1.9〜3が好ましい。高分子ポリオールとしては、ポリエステルポリオール、ポリエーテルポリオール、ポリカーボネートポリオール、ポリオレフィンポリオール等が挙げられる。これらは1種類又は2種類以上の混合物として使用できる。
【0011】
ポリエステルポリオールとしては、フタル酸、イソフタル酸、テレフタル酸、ナフタレンジカルボン酸、コハク酸、酒石酸、シュウ酸、マロン酸、グルタル酸、アジピン酸、ピメリン酸、スベリン酸、クルタコン酸、アゼライン酸、セバシン酸、コハク酸、アジピン酸、セバシン酸、アゼライン酸、1,4−シクロヘキシルジカルボン酸、α−ハイドロムコン酸、β−ハイドロムコン酸、α−ブチル−α−エチルグルタル酸、α,β−ジエチルサクシン酸、マレイン酸、フマル酸等のジカルボン酸・無水物・ジアルキルエステル等の1種類以上と、エチレングリコール、1,2−プロパンジオール、1,3−プロパンジオール、1,2−ブタンジオール、1,3−ブタンジオール、1,4−ブタンジオール、1,5−ペンタンジオール、1,6−ヘキサンジオール、1,8−オクタンジオール、1,9−ノナンジオール、3−メチル−1,5−ペンタンジオール、3,3−ジメチロールヘプタン、ジエチレングリコール、ジプロピレングリコール、ネオペンチルグリコール、ジエチレングリコール、ジプロピレングリコール、シクロヘキサン−1,4−ジオール、シクロヘキサン−1,4−ジメタノール、ダイマー酸ジオール、ビスフェノールAのエチレンオキサイドやプロピレンオキサイド付加物、ビス(β−ヒドロキシエチル)ベンゼン、キシリレングリコール、グリセリン、トリメチロールプロパン、ペンタエリスリトール等の分子量500以下の低分子ポリオール類の1種類以上との縮重合反応から得られるものが挙げられる。更に、ε−カプロラクトン、アルキル置換ε−カプロラクトン、δ−バレロラクトン、アルキル置換δ−バレロラクトン等の環状エステル(いわゆるラクトン)モノマーの開環重合から得られるラクトン系ポリエステルポリオール等がある。更に、低分子ポリオールの一部をヘキサメチレンジアミン、イソホロンジアミン、モノエタノールアミン等の低分子ポリアミンや低分子アミノアルコールを用いてもよい。この場合は、ポリエステル−アミドポリオールが得られることになる。
【0012】
ポリエーテルポリオールとしては、上記ポリエステルポリオールに用いられる低分子ポリオールを開始剤として、エチレンオキサイド、プロピレンオキサイド、テトラヒドロフラン等のエポキサイドや環状エーテルの単品又は混合物を開環付加させて得られるものが挙げられる。又は、開始剤にエポキサイドや環状エーテルの単品を付加させた後、別の種類のエポキサイドや環状エーテルを付加させたものが挙げられる。
【0013】
ポリカーボネートポリオールとしては、前述のポリエステルポリオール源の低分子ポリオール1種類以上と、エチレンカーボネート、ジエチルカーボネート等のジアルキレンカーボネートや、ジフェニルカーボネート等のジアリールカーボネートとの脱アルコール反応や脱フェノール反応から得られるものが挙げられる。
【0014】
ポリオレフィンポリオールとしては、水酸基を2個以上有するポリブタジエン、水素添加ポリブタジエン、ポリイソプレン、水素添加ポリイソプレン等が挙げられる。
【0015】
また、数平均分子量が500〜5,000で、かつ、1分子中に活性水素基を平均1個以上有するものであれば、ダイマー酸系ポリオール、水素添加ダイマー酸系ポリオールの他にエポキシ樹脂、ポリアミド樹脂、ポリエステル樹脂、アクリル樹脂、ロジン樹脂、尿素樹脂、メラミン樹脂、フェノール樹脂、クマロン樹脂、ポリビニルアルコール等の活性水素基含有樹脂を併用することができる。
【0016】
本発明においては、ナイロンへの密着性や各種耐久性を考慮すると、ポリエステルポリオールが好ましい。
【0017】
有機ポリイソシアネートとしては、2,4−トリレンジイソシアネート、2,6−トリレンジイソシアネート、4,4′−ジフェニルメタンジイソシアネート、2,4′−ジフェニルメタンジイソシアネート、2,2′−ジフェニルメタンジイソシアネート、1,5−ナフチレンジイソシアネート、1,4−ナフチレンジイソシアネート、p−フェニレンジイソシアネート、m−フェニレンジイソシアネート、o−キシリレンジイソシアネート、m−キシリレンジイソシアネート、p−キシリレンジイソシアネート、テトラメチルキシリレンジイソシアネート、4,4′−ジフェニルエーテルジイソシアネート、2−ニトロジフェニル−4,4′−ジイソシアネート、2,2′−ジフェニルプロパン−4,4′−ジイソシアネート、3,3′−ジメチルジフェニルメタン−4,4′−ジイソシアネート、4,4′−ジフェニルプロパンジイソシアネート、3,3′−ジメトキシジフェニル−4,4′−ジイソシアネート等の芳香族ジイソシアネート、テトラメチレンジイソシアネート、ヘキサメチレンジイソシアネート、2−メチル−1,5−ペンタンジイソシアネート、3−メチル−1,5−ペンタンジイソシアネート、リジンジイソシアネート等の脂肪族ジイソシアネート、イソホロンジイソシアネート、水素添加ジフェニルメタンジイソシアネート、水素添加トリレンジイソシアネート、水素添加キシリレンジイソシアネート、水素添加テトラメチルキシリレンジイソシアネート、シクロヘキシルジイソシアネート等の脂環族ジイソシアネートが挙げられる。また、これらのアダクト変性体、アロファネート変性体、ビウレット変性体、カルボジイミド変性体、ウレトンイミン変性体、ウレトジオン変性体、イソシアヌレート変性体等の変性ポリイソシアネートも使用できる。これらは1種類又は2種類以上の混合物として使用できる。
【0018】
本発明においては、耐候性を考慮すると、脂肪族ジイソシアネート、脂環族ジイソシアネート、及びこれらから誘導されるイソシアネート変性体が好ましい。
【0019】
低分子ジアミンは、分子量500以下であり、かつ、1分子中に1級又は2級アミノ基を2個有する化合物である。なお、イソシアネート基との反応性が1級又は2級アミノ基より小さい他の活性水素基(例えば、水酸基やメルカプト基など)を有してもよい。低分子ジアミンとしては、エチレンジアミン、ブチレンジアミン、ヘキサメチレンジアミン、イソホロンジアミン、ジシクロヘキシルジアミン、ジフェニルメタンジアミン、トリレンジアミン、キシリレンジアミン、2−ヒドロキシエチルエチレンジアミン、2−ヒドロキシエチルプロピレンジアミン、ジ−2−ヒドロキシエチルエチレンジアミン、ジ−2−ヒドロキシエチルプロピレンジアミン、2−ヒドロキシプロピルエチレンジアミン、ジ−2−ヒドロキシプロピルエチレンジアミン、2−ヒドロキシ−1,3−プロパンジアミン、2−メルカプト−1,3−プロパンジアミンなどが挙げられる。
【0020】
低分子モノアミンは、分子量500以下であり、かつ、1分子中に1級又は2級アミノ基を1個有する化合物である。なお、イソシアネート基との反応性が1級又は2級アミノ基より小さい他の活性水素基(例えば、水酸基やメルカプト基など)を有してもよい。低分子モノアミンとしては、エチルアミン、プロピルアミン、ジブチルアミン、モノエタノールアミン、ジエタノールアミン、N−メチルエタノールアミン、N−エチルエタノールアミン、N−n−ブチルエタノールアミン、N−t−ブチルエタノールアミン、ヒドロキシエチルピペラジン、N−(3−アミノプロピル)ジエタノールアミン、N−シクロヘキシルエタノールアミンなどが挙げられる。
【0021】
本発明に用いられるポリウレタン樹脂を製造手順は、、高分子ポリオール活性水素を持たないケトンやエステル、芳香族炭化水素等の溶剤で適宜希釈する。この混合溶液に有機ポリイソシアネートを添加し、必要に応じてウレタン化触媒を添加して、温度を30〜100℃の範囲にして数時間反応させて、イソシアネート基含有ウレタンプレポリマーの溶液を合成する。このときのイソシアネート基/水酸基のモル比は1.1〜2.5が好ましく、特に1.5〜2.0が好ましい。イソシアネート基/水酸基のモル比が1.1未満の場合は、得られるポリウレタン樹脂の耐久性が乏しくなる。2.5を越える場合は、溶剤への溶解性や密着性に乏しくなる。
【0022】
このようにして得られるイソシアネート基含有ウレタンプレポリマー溶液に、低分子ジアミンおよび/または低分子モノアミン、好ましくは低分子ジアミンと低分子モノアミンを加えて、例えば30〜50℃の温度範囲でイソシアネート基が消失するまで反応させることによって、目的のポリウレタン樹脂が得られる。
【0023】
このようにして得られるポリウレタン樹脂の数平均分子量は、10,000〜30,000であり、特に12,000〜28,000が好ましい。ポリウレタン樹脂の数平均分子量が10,000未満の場合は、強度が不十分であり、30,000を越える場合は、スプレー塗装が困難になる。また、ポリウレタン樹脂の1分子当たりの水酸基含有量(平均官能基数)は、3〜20が好ましい。この水酸基は、例えば、プライマー層にポリイソシアネート硬化剤が配合されなくても、中塗りや上塗りのいずれかでポリイソシアネート硬化剤が配合していれば、このポリイソシアネートとの反応確率が高いため、プライマー層が硬化することになる。
【0024】
ここで、本発明に用いられる有機溶剤は、沸点が130℃未満の有機溶剤(B1)、及び沸点が130〜180℃の有機溶剤(B2)からなり、(B1):(B2)=95〜50::5〜50(質量比)であることを特徴とする。(B2)が少なすぎる場合は、プライマー層のレベリング性が改善されないため、塗膜全体の耐溶剤性や耐湿熱性が低下の問題が起きやすい。また(B2)が多すぎる場合は、溶剤がプライマー層に長期間存在することなり、プライマー層の乾燥性の悪化、塗膜全体の強度低下や外観不良の問題が起きやすい。
【0025】
沸点が130℃未満の有機溶剤(B1)としては、トルエン、キシレン等の芳香族系溶剤、酢酸エチル、酢酸ブチル等のエステル系溶剤、アセトン、メチルエチルケトン等のケトン系溶剤が挙げられる。また、アミン延長反応時にはメタノール、エタノール、イソプロパノール等のアルコール系溶剤が存在してもよい。本発明では、トルエン、メチルエチルケトン、イソプロパノールの混合溶剤が好ましい。
【0026】
沸点が130〜180℃の有機溶剤(B2)としては、プロピレングリコールモノメチルエーテルアセテード(沸点:146℃)、シクロヘキサノン(沸点:156℃)、ダイアセトンアルコール(沸点:168℃)などが挙げられる。本発明ではシクロヘキサノンが好ましい。
【0027】
また、本発明のプライマー組成物は、必要に応じて顔料、染料、ブロッキング防止剤、分散安定剤、揺変剤、酸化防止剤、紫外線吸収剤、消泡剤、増粘剤、分散剤、界面活性剤、触媒、フィラー、滑剤、帯電防止剤、可塑剤等の各種添加剤を配合することができる。
【0028】
本発明のプライマー組成物は、自動車の(外装)部品に代表されるプラスチック成形品に対して好適に使用することができ、難接着性とされるナイロンからなる被着体に対して良好な密着性を発現する。
【実施例】
【0029】
次に、本発明の実施例及び比較例について詳細に説明するが、本発明はこれら実施例に限定されるものではない。特にことわりのない限り、実施例中の「部」及び「%」はそれぞれ「質量部」及び「質量%」を意味する。
【0030】
ポリウレタン樹脂溶液の製造
<合成例1>
撹拌機、温度計、アリーン冷却管、窒素ガス導入管を組んだ2リットルの4つ口フラスコに、ポリオール−1を205.9g、ポリオール−2を214.9g、トルエンを378g仕込み、均一に撹拌した。このポリオール溶液にIPDIを46.7g、HDIを35.3g、ウレタン化触媒としてDOTDLを0.05g加え、80℃にて4時間反応させてイソシアネート基含有ウレタンプレポリマー溶液を得た。このプレポリマー溶液に、MEKを504g加え均一にした後、更にIPAを378g、IPDAを29.7g、DEAを7.5g配合したアミン液を一気に加え、40℃にてイソシアネート基が消失するまで反応させて、ポリウレタン樹脂溶液PU−1を得た。PU−1の固形分は30wt%、粘度は180mPa・s(25℃)、ポリウレタン樹脂の数平均分子量は15,000であった。これらをまとめて表1に示す。
【0031】
<合成例2>
撹拌機、温度計、アリーン冷却管、窒素ガス導入管を組んだ2リットルの4つ口フラスコに、ポリオール−3を420.9g、トルエンを378g仕込み、均一に撹拌した。このポリオール溶液にIPDIを93.4g、ウレタン化触媒としてDOTDLを0.05g加え、80℃にて4時間反応させてイソシアネート基含有ウレタンプレポリマー溶液を得た。このプレポリマー溶液に、MEKを504g加え均一にした後、更にIPAを378g、A−EAを18.2g、DEAを7.5g配合したアミン液を一気に加え、40℃にてイソシアネート基が消失するまで反応させて、ポリウレタン樹脂溶液PU−2を得た。PU−2の固形分は30wt%、粘度は80mPa・s(25℃)、ポリウレタン樹脂の数平均分子量は15,000であった。これらをまとめて表1に示す。
【0032】
合成例1、合成例2、表1において
ポリオール−1:
エチレングリコールとアジピン酸から得られるポリエステルポリオール
数平均分子量=2,000
ポリオール−2:
1,4−ブタンジオールとアジピン酸から得られるポリエステルポリオール
数平均分子量=2,000
ポリオール−3:
下記に示す混合グリコールとアジピン酸から得られるポリエステルポリオール
数平均分子量=2,000
混合グリコール:エチレングリコール/1,4−ブタンジオール=1/1(モル比)
IPDI:
イソホロンジイソシアネート
HDI:
ヘキサメチレンジイソシアネート
IPDA:
イソホロンジアミン
A−EA:
2−ヒドロキシエチルエチレンジアミン
DEA:
ジエタノールアミン
ポリウレタン樹脂分子量測定条件
測定条件
・測定器:「HLC−8120」(東ソー(株)製)
・カラム:「Styragel HR2 DMF」(日本ウォーターズ(株)製)
粒径=5μm、サイズ=7.8mmID×30cm×4本
・キャリア:LiBr0.1%含有N,N−ジメチルホルムアミド(DMF)
・検出器:視差屈折
・サンプル:0.1%LiBr/DMF溶液
・検量線:ポリエチレングリコール
【0033】
【表1】

【0034】
プライマー組成物調製
実施例1〜4、比較例1〜5
表2に示す配合でプライマー組成物を調製した。
【0035】
実施例1〜4、比較例1〜5、表2において
混合溶剤:
トルエン/MEK/IPA=3/4/3(質量比)
DAA:
ダイアセトンアルコール
NMP:
N−メチルピロリドン
【0036】
ベース層形成用樹脂組成物の調製
プライマー組成物の塗膜に上塗りするベース層形成用樹脂組成物は、アクリル樹脂「アクリディックA−801−P」(DIC(株)製)100部に、酸化チタン20部とトルエン230部添加し、分散機中で10分間混練することにより調製した。
【0037】
トップ層形成用樹脂組成物の調製
ベース層形成用樹脂組成物の塗膜に上塗りするトップ層形成用樹脂組成物は、アクリル樹脂「アクリディックA−801−P」(DIC(株)製)100部に、ポリイソシアネート硬化剤「コロネートHX」(日本ポリウレタン工業(株)製)18部(NCO/OH=1/1:モル比)、トルエン110部添加し、分散機中で10分間混練することにより調製した。
※「コロネート」は日本ポリウレタン工業(株)の登録商標
【0038】
常温乾燥時間測定方法
6−ナイロン「ナイロン1022B」(宇部興産製)からなる被着体の表面をメタノール十分脱脂処理し、常温で乾燥させた。この被着体の表面に、調製したプライマー組成物をエアスプレーにより塗布し、タックがなくなるまでの時間を測定した。結果を表2に示す。
【0039】
光沢度測定方法
6−ナイロン「ナイロン1022B」(宇部興産製)からなる被着体の表面をメタノール十分脱脂処理し、常温で乾燥させた。この被着体の表面に、調製したプライマー組成物をエアスプレーにより塗布し、タックがなくなるまで乾燥させて、膜厚8μmの乾燥塗膜を形成させた後、ヘイズ−グロスリフレクトメーターを用いて、JIS Z8741に準じて光沢度を測定した。結果を表2に示す。
【0040】
その他評価用の試験片調製方法
6−ナイロン「ナイロン1022B」(宇部興産製)からなる被着体の表面をメタノール十分脱脂処理し、常温で乾燥させた。この被着体の表面に、調製したプライマー組成物をエアスプレーにより塗布し、常温で10分間乾燥させて、膜厚8μmの乾燥塗膜を形成させた。次いで、プライマー組成物による乾燥塗膜(プライマー層)上に、ベース層形成用樹脂組成物をエアスプレーにより塗布し、常温で10分間乾燥させて、膜厚10μmの乾燥塗膜を積層形成させた。次いで、ベース層形成用樹脂組成物による乾燥塗膜(ベース層)上に、トップ層形成用樹脂組成物をエアスプレーにより塗布し、常温で10分間乾燥させて、膜厚30μmの乾燥塗膜を積層形成させた。次いで、80℃の乾燥機中で30分間加熱処理を行い、その後、20℃×65%RHの雰囲気下で48時間の養生を行って試験片を調製した。
【0041】
塗膜外観評価方法
得られた試験片(プライマー/ベース/トップの積層形成された塗装サンプル)の外観を目視にして評価した。塗膜外観に異常がないものは「異常なし」、気泡が確認されたものは「気泡確認」とした。結果を表2に示す。
【0042】
常態密着性評価方法
得られた試験片(プライマー/ベース/トップの積層形成された塗装サンプル)の各々について、1mm方形の碁盤目(10×10)の切れ目を塗膜形成面に形成し、粘着テープによる剥離試験を行って、残留枚数を測定した。なお、試験片は、実施例1〜4及び比較例1〜4の各々について3個ずつ作成し、3個試験片における残留枚数の平均値を求めた。結果を表2に示す。
【0043】
耐溶剤性評価方法
得られた試験片(プライマー/ベース/トップの積層形成された塗装サンプル)の各々について、ガソリン/エタノール=9/1の混合溶剤(20℃)に浸漬し、試験片の縁から生じる塗膜の浮き(剥離)が、縁から2mm以上内側に到達するまでの時間(浸漬時間)を測定した。結果を表2に示す。
【0044】
耐湿熱性評価方法
得られた試験片(プライマー/ベース/トップの積層形成された塗装サンプル)の各々について、50℃×90%RHの雰囲気下で240時間経過させて、すぐに1mm方形の碁盤目(10×10)の切れ目を塗膜形成面に形成し、粘着テープによる剥離試験を行って、残留枚数を測定した。なお、試験片は、実施例1〜4及び比較例1〜4の各々について3個ずつ作成し、3個試験片における残留枚数の平均値を求めた。結果を表2に示す。
【0045】
【表2】

【0046】
表2に示されるように、実施例においては各試験とも良好な結果であった。一方、比較例1は、沸点が130〜180℃の有機溶剤を用いていないため、プライマー層のレベリング性が悪く(光沢度が低い)、そのためベース層やトップ層との密着が不十分なため、耐溶剤性や耐湿熱性が悪くなったと思われる。比較例2は沸点が180℃を超える有機溶剤を用いたため、この溶剤がプライマー層に残留して、ベース層やトップ層塗布後の塗膜外観の悪化や、耐溶剤性の低下となったものと思われる。比較例3は沸点が130〜180℃の有機溶剤の含有量が少なすぎたため、実施例1と同様にプライマー層のレベリング性が悪く、それに伴い塗膜物性を低下させたものと思われる。比較例4は、沸点が130〜180℃の有機溶剤の含有量が多すぎたため、比較例2と同様に、溶剤が塗膜に残留したため、ベース層やトップ層塗布後の塗膜外観の悪化や、耐溶剤性の低下となったものと思われる。



【特許請求の範囲】
【請求項1】
高分子ポリオールと有機ポリイソシアネートを反応させて、イソシアネート基末端プレポリマーを製造し、その後低分子ジアミン及び低分子モノアミンにて鎖延長反応させて得られるポリウレタン樹脂(A)、及び有機溶剤(B)からなるスプレー塗装用プライマー組成物において、
固形分が5〜15質量%であり、
有機溶剤(B)が、沸点が130℃未満の有機溶剤(B1)、及び沸点が130〜180℃の有機溶剤(B2)からなり、(B1):(B2)=95〜50:5〜50(質量比)であることを特徴とするプライマー組成物。


【公開番号】特開2010−215866(P2010−215866A)
【公開日】平成22年9月30日(2010.9.30)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−67094(P2009−67094)
【出願日】平成21年3月18日(2009.3.18)
【出願人】(000230135)日本ポリウレタン工業株式会社 (222)
【Fターム(参考)】