説明

スプロケット付きアイドラアセンブリ

機械(100)用のスプロケット付きアイドラ(117)は、略円形の断面を有するアイドラ(116)のまわりに半径方向に配置された複数の歯(120)を含む。複数の各歯は、実質的に一定の傾斜を有する少なくとも1つの歯面(120a)を含み、複数の歯の隣接する頂点間の距離は、アイドラによって係合可能な無限軌道リンク(112)の隣接するピン部材(113)の中心軸間距離の30%〜90%である。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示は、概略的には、機械駆動システム用のアイドラアセンブリに関し、より詳細には、機械のトラクション装置用のスプロケット付きアイドラアセンブリに関する。
【背景技術】
【0002】
無限軌道式の機械は通常、複数の連鎖リンクを有する無限軌道アセンブリを含み、各リンクは、地面係合トラクションパネルに連結される。隣接するリンクは、横方向に配置された無限軌道ピンを介して相互に連結されて、連続するチェーンを形成することができる。ブッシュは無限軌道ピンのまわりに配置することができ、無限軌道ピンの表面で回転可能な接触面を形成するように構成することができる。ブッシュは、スプロケット付き駆動ハブの一部と係合するように構成される。駆動モータがスプロケット付き駆動ハブを回転させると、スプロケット付き駆動ハブの歯は、ブッシュ間の空間と係合して、無限軌道リンクをハブの回転方向に移動させ、それによって機械を進ませる。
【0003】
従来の多くの無限軌道駆動式システムでは、無限軌道チェーンが無限軌道フレームのまわりに回転するときに、アイドルホイールの表面が、各リンクの上縁部(または「摩耗面」)と接触するように構成され、特に、リンクがアイドルホイールと地面との間で回転するときに、機械の重量のほとんどの部分が各リンクの上縁部にかかる。この接触により、アイドルホイールの表面とリンクの摩耗面との間に高い摩擦係数がもたらされる。その結果、アイドルホイールと摩耗面との間のスリップまたはずれにより、アイドルホイール/リンク接触面で大量の摩耗が生じることがある。この状態が続くのを放置しておくと、場合によっては、そのような摩耗がリンクの表面の溝に広がり、一般に「スカロッピング」と呼ばれる特有の摩耗パターンをもたらす。したがって、アイドラ/無限軌道リンクの摩耗に起因する修理および交換コストを削減するために、アイドラ/無限軌道リンク接触面の摩耗を低減する無限軌道アセンブリ設計が必要とされることがある。
【0004】
アイドラ/無限軌道リンクの摩耗を低減する少なくとも1つのシステムが、ヤマモトらによる(特許文献1)に記載されている。(特許文献1)は、複数のリンク部材を含む無限軌道アセンブリを開示しており、隣接するリンク部材は、横方向に伸びるピン部材を介して互いに連結され、ピン部材は、ピン部材のまわりに回転するように取り付けられたブッシュ部材を有する。無限軌道アセンブリはまた、第1および第2の端部部分を有するローラフレームを含み、第1および第2の端部部分は、無限軌道リンクの摩耗面との接触を減らすようにブッシュと係合するのに適した第1および第2のスプロケット付きアイドラを含む。各スプロケット間の接触面は、実質的に凹形(またはアーチ形)であり、リンクブッシュの形状および直径と実質的に一致する。
【0005】
’726特許のシステムは、アイドラと無限軌道リンクとの間の接触を減らすことができ、アイドラと無限軌道リンクとの接触部で、こすれによって生じるアイドラおよび無限軌道リンクの摩耗を大幅に低減するが、それでもなお、かなり大きい騒音および振動を発生させることがある。例えば、’726特許のスプロケット付きアイドラアセンブリは、形状が実質的に凹形である。したがって、’726特許のスプロケット付きアイドラは、主に、スプロケット歯間のギャップの根元でブッシュと係合するように設計されている。その結果、車両の重量のかかり方が平らな地形上よりも劇的に変化する起伏のある地形上を進む間、ブッシュは、大きな振動および騒音を発生させるのに十分な力でギャップの根元に接触することが多い。したがって、無限軌道式の機械に付随する騒音および振動をさらに低減するために、アイドラがブッシュと接触する力を弱める、または小さくするシステムがまだ必要である。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【特許文献1】米国特許第6,883,876号明細書
【発明の概要】
【課題を解決するための手段】
【0007】
一態様によれば、本開示は、無限軌道式機械用のアイドラを対象とし、このアイドラは、略円形の断面を有するアイドラのまわりに半径方向に配置された複数の歯を含む。複数の各歯は、実質的に一定の傾斜を有する少なくとも1つの歯面を含むことができ、複数の歯の隣接す頂点間の距離は、アイドラによって係合可能な無限軌道リンクの隣接するピン部材の中心軸間距離の30%〜90%である。
【0008】
別の態様によれば、本開示は、無限軌道式機械用の無限軌道アセンブリを対象とし、この無限軌道アセンブリは、複数のリンク部材および複数のピン部材を含み、各ピン部材は、隣接するリンク部材同士を連結して無限軌道チェーンを形成するように構成される。複数の各ピン部材は、その円筒状の表面のまわりに配置されたブッシュを含むことができる。無限軌道アセンブリはまた、複数の歯が表面のまわりに配置された少なくとも1つのアイドラを含むことができ、その少なくとも1つのアイドラは、ブッシュの一部と係合し、少なくとも1つのアイドラと、複数のリンク部材の表面との間の接触を実質的に制限するように構成され、複数の歯の1つまたは複数は、実質的に一定の傾斜を有する歯面を含む。
【0009】
別の態様によれば、本開示は、トルク出力を発生させる駆動機構と、駆動機構に動作可能に連結され、駆動機構で発生したトルク出力に応じて回転するように構成された駆動スプロケットとを含む無限軌道式機械を対象とする。無限軌道式機械はまた、複数のリンク部材および複数のピン部材を備える無限軌道アセンブリを含むことができ、各ピン部材は、隣接するリンク部材同士を連結して、無限軌道チェーンを形成するように構成される。複数の各ピン部材は、その円筒状表面のまわりに配置されたブッシュを含むことができる。無限軌道アセンブリはまた、複数の歯が表面のまわりに配置された少なくとも1つのアイドラを含むことができ、その少なくとも1つのアイドラは、ブッシュの一部と係合し、少なくとも1つのアイドラと、複数のリンク部材の表面との間の接触を実質的に制限するように構成され、複数の歯の1つまたは複数は、実質的に一定の傾斜を有する歯面を含む。
【図面の簡単な説明】
【0010】
【図1】開示する実施形態による例示的な無限軌道式機械を示している。
【図2】開示する実施形態による、図1の無限軌道式機械の無限軌道アセンブリの例示的な一部分を示している。
【図3】開示する実施形態による例示的なスプロケット付きアイドラ/無限軌道リンク接触部の詳細な側面図を示している。
【図4】図2に示す例示的な無限軌道アセンブリで使用する例示的なスプロケット付きアイドラの側面図を示している。
【図5】開示する実施形態による例示的なスプロケット付きアイドラの部分斜視図である。
【発明を実施するための形態】
【0011】
図1は、開示する実施形態による、開示する例示的な無限軌道式機械100を示している。無限軌道式機械100には、「連続する」無限軌道式トラクション装置を動作させることにより、駆動、推進、位置決め、および/または操縦される任意の機械を含めることができる。そのような機械には、例えば、無限軌道式トラクタ、スキッドステア、ブルドーザ、掘削機、バックホー、無限軌道ローダ、フロントショベル、または他の任意のタイプの無限軌道式機動性機械を含めることができる。無限軌道式機械100は、駆動機構101と、駆動ハブ103に取り付けられ、駆動機構101に連結された駆動スプロケット102と、駆動スプロケット102によって駆動機構101に動作可能に連結され、駆動機構101によって駆動された場合に、機械を進ませるように構成された無限軌道アセンブリ110とを含むことができる。
【0012】
駆動機構101は、トルク出力を発生させるように構成された1つまたは複数の構成要素を含むことができる。例えば、駆動機械101は、ガソリン、ディーゼル、天然ガス、または複合動力型のエンジンまたはタービンなどの任意で適切なタイプの内燃機関を含むことができる。代替案として、またはそれに加えて、駆動機構101には、電力源に電気的に接続され、電力出力からの電気エネルギの少なくとも一部を機械エネルギに変換するように構成された電気モータを含めることができる。さらに別の実施形態によれば、駆動機構は、油圧ポンプに流体連通され、ポンプによって加圧された流体をトルク出力に変換するように構成された油圧モータを含むことができる。
【0013】
駆動スプロケット102は、シャフト(図示せず)を介して駆動機構101に連結することができ、このシャフトは駆動機構に連結されて、駆動機構101で発生したトルクを駆動スプロケット102に伝える接続器を形成することができる。例えば、駆動スプロケット102は、シャフト(図示せず)に結合されたハブ103に固定する(例えば、溶接する、ボルト留めする、焼きばめするなど)ことができるので、駆動スプロケット102は、駆動機構101で発生したトルクに応じて回転する。一実施形態によれば、駆動スプロケット102は、駆動シャフトを介して駆動機構に直接連結することができる。あるいは、駆動スプロケット102は、(ギヤボックス、変速機などの)トルク変換器を介して駆動機構101に連結することができて、駆動スプロケット102の回転は、駆動機構101で発生したトルクに比例する。
【0014】
駆動スプロケット102は、無限軌道アセンブリ110の一部と係合するように構成された複数の歯104を含むことができるので、駆動スプロケットに加わる回転力は、無限軌道アセンブリ110に伝達される。駆動スプロケット102の歯104は、無限軌道アセンブリと係合してこれを回転させるのに適した任意の適切な大きさおよび形状とすることができる。一実施形態によれば、隣接する歯104の逃げ面は、無限軌道アセンブリ110の円筒状ブッシュ114と係合する略凹形状を形成することができる。
【0015】
無限軌道アセンブリ110は、機械100の駆動システムの地面係合部分である、「連続する」無限軌道を形成する複数の構成要素を含むことができる。トラックアセンブリ110は、とりわけ、複数のリンク部材112を有するチェーンアセンブリ111、ローラフレームアセンブリ115、スプロケット付きアイドラ117などの少なくとも1つのアイドラ、および複数のローラ118を含むことができる。上記の無限軌道アセンブリ110の構成要素は単なる例示であり、限定することを意図するものではない。したがって、無限軌道アセンブリ110は、追加した構成要素、および/または上記のものとは異なる構成要素を含むことができると考えられる。例えば、無限軌道アセンブリ110はまた、複数の無限軌道シュー119を含むことができ、この無限軌道シューは、各リンク部材112に固定されて、リンク部材112の保護用踏みつけカバーを形成する。
【0016】
チェーンアセンブリ111は、互いに連結されて、連続するチェーンの地面係合無限軌道を形成する複数のリンク部材112を含むことができる。例えば、リンク部材112a、112b、112cなどの隣接する(例えば、連続する)リンク部材は、複数のピン部材113を介して互いに連結することができ、各ピン部材は、ピン上に配置された回転可能なブッシュ114を有する。回転可能なブッシュ114は、駆動機構101によって駆動されるときに、チェーンアセンブリ111を駆動スプロケット102の回転方向に移動させることができる駆動スプロケット102と係合することができる。
【0017】
ローラフレームアセンブリ115は、機械100の重量の大部分を支持するための1つまたは複数のアクスル、および/または他の任意の適切な構造体を含むことができる。一実施形態によれば、ローラフレームアセンブリ115は、機械100の(例えば、駆動機構101、駆動スプロケット102、運転室などの)多くの構成要素を取り付け、固定することができる、機械100の主フレームまたはシャーシを含むことができる。図1は、単一のローラフレームアセンブリを含むとして無限軌道式機械100を示しているが、無限軌道式機械100は、複数のローラフレームアセンブリを含むことができると考えられる。一実施形態によれば、無限軌道式機械100は、機械100に付属する各無限軌道アセンブリ110に対して少なくとも1つのローラフレームアセンブリ115を含むことができる。
【0018】
ローラフレームアセンブリ115は、第1の部分115aおよび第2の部分115bを含むことができる。一実施形態によれば、第1の部分115aは、ローラフレームアセンブリ115の前端部を含むことができ、第2の部分115bは、ローラフレームアセンブリ115の後端部を含むことができる。ローラフレームアセンブリ115の第1の部分115aおよび第2の部分115bのそれぞれは、スプロケット付きアイドラ117などのアイドラをそれに取り付けるのに適したアイドラハブ116を含むことができる。
【0019】
ローラフレームアセンブリ115は、共同してプラットフォームを形成する複数のローラ118を受け入れるように構成することができ、ローラフレームアセンブリ115は、無限軌道式機械100の移動中に、プラットフォーム上で転がることができる。ローラ118には、チェーンアセンブリ111がローラフレームアセンブリ115のまわりを移動するときに、チェーンアセンブリ111と相互作用して、チェーンアセンブリ111を案内および位置決めするように構成することができる任意の適切なタイプの頑丈なホイールを含めることができる。ローラ118は、各ローラ118の一部が、実質的に、チェーンアセンブリ111の連鎖リンク部材112によって形成されたチャネル内でブッシュ112に乗って動くように、ローラフレームアセンブリ115の底部部分に取り付けることができる。
【0020】
説明したように、第1の部分115aおよび第2の部分115bのそれぞれは、スプロケット付きアイドラ117を取り付けることができるアイドラハブ116を含むことができる。スプロケット付きアイドラ117は、チェーンアセンブリ111をローラフレームアセンブリ115のまわりに案内し、チェーンアセンブリの位置を実質的に機械100の下に維持するために横方向に支持する機械的な接続器を形成することができる。例えば、図1に示すように、無限軌道式機械100が前進する場合、ローラフレームアセンブリの第1の部分115aに取り付けられたスプロケット付きアイドラ117は、駆動スプロケット102からチェーンアセンブリ111を受け取ることができ、チェーンアセンブリ111をローラ118と係合する位置に維持しながら、チェーンアセンブリ111をフロント部分115aのまわりに案内することができる。同様に、第2の部分115bに取り付けられたスプロケットアイドラ117は、ローラフレームアセンブリ111の下のローラ118からチェーンアセンブリ111を受け取ることができ、チェーンアセンブリ111を第2の部分115bのまわりに案内し、それによって、駆動スプロケット102が係合するチェーン位置を維持することができる。
【0021】
図1は、「高位置駆動」機械(すなわち、高架駆動システムおよび2つのアイドルホイールを有する機械)として示されているが、開示した実施形態によるアイドラ構成は、任意の無限軌道式機械に実装できると考えられる。例えば、スプロケット付きアイドラ117は、長円形無限軌道機械に採用することができ、駆動システムは、非駆動ホイール、この場合はスプロケット付きアイドラ117と一列に配置される。このように、スプロケット付きアイドラ117は、このアイドラ117が採用される機械に付属する駆動システムの大きさ、タイプ、および構成に関係なく、任意の無限軌道式機械に採用することができる。
【0022】
図2に示すように、スプロケット付きアイドラ117は、スプロケット付きアイドラ117の周縁部121のまわりに半径方向に配置された複数の歯120を含むことができる。複数の各歯120は、傾斜した複数の歯面120aを含むことができ、各歯面は、リンク部材112のブッシュ114と係合するランプタイプの面を形成するように構成されている。そのような傾斜面により、ブッシュ114が周縁部121と漸進的に係合することが可能になり、それによって、ブッシュ114と周縁部121との間の急な接触によって引き起こされることのある騒音および振動が低減される。
【0023】
複数の各歯120に付いている歯面120aは、ブッシュ114とスプロケット付きアイドラ117との間の接触によって引き起こされる車台の騒音および振動を低減するのに適した任意の傾斜値で設計および製造することができる。一実施形態によれば、各歯面120aは、一定の傾斜値(すなわち、歯面120aの全長に沿った単一の傾斜値)を有することができる。しかし、各歯面119aは、例えば、ブッシュが歯面の上側部分から、周縁部121に近い歯面の下側部分に移動するときに、歯面120aの接触面をより緩やかにするために、複数の傾斜値をもつように設計することができると考えられる。図3は、スプロケット付きアイドラ117の歯の構成のより詳細な図を提示している。
【0024】
図3は、歯120とチェーンアセンブリ111に付属するリンク部材112との間の接触部の拡大側面図を示している。図3の例示的な実施形態に示すように、各歯面120aは、実質的に一定の傾斜を有することができる。一定の傾斜と比較的緩やかな傾斜角とを歯面に付与することで、リンク部材112のブッシュ114は、歯面120aの下側部分に到達するときに、歯面120aと接触しなくなる前に周縁部121と接触することができる。そのように移行することで、ブッシュ(および対応する機械の重量のかかった部分)がアイドラと急に接触するのを防止することができ、それによって、そのような急な接触に伴うことが多い過剰な振動および騒音が制限される、または最小限にされる。これは、機械が起伏のある地形を移動するときに特に有利であり、そのような地形を移動中に、横方向に不均一に動く無限軌道の移動により、機械の車台が、機械の「跳ね」および「揺れ」に伴う騒音、振動、および摩耗をより起こしやすくなることがある。
【0025】
複数の各歯120は均等に離間することができ、周縁部121から半径方向に突出することができる。一実施形態によれば、複数の各歯120間の間隔は、以下のように定義することができる。
【0026】
【数1】

【0027】
上式で、d1は、スプロケット付きアイドラ117のピッチ(すなわち、歯の中心と、隣接する歯の中心との間の距離)を表し、d2は、リンク部材112のピッチ(すなわち、リンク部材112に取り付けられたブッシュ114の中心間距離)を表す。なお、式1は、例えば、ブッシュ114の円周、ブッシュ114間の距離、リンク部材112の大きさ、および無限軌道アセンブリ110のこの種の他の仕様に基づいて近似される。したがって、本開示の範囲から逸脱することなく、複数の各歯120の間の異なる間隔を採用することができると考えられる。したがって、式1は単なる例示であり、限定することを意図するものではない。
【0028】
例えば、式1の代替案として、またはそれに加えて、複数の各歯間の間隔は、無限軌道アセンブリ110に実装されるリンク部材の寸法に基づいて、実験によって導出することができる。例えば、図3に示すように、スプロケット付きアイドラ117のピッチは、リンク部材112がスプロケット歯の頂点上に中心を置かれた場合に、リンク部材112の各ブッシュ114が、リンク部材112の中心にあるスプロケット歯の両側に配置された歯面120aの傾斜部分でスプロケットアイドラ117と接触するように規定することができる。そのような間隔により、リンク部材112が歯面上で上下に回転できるようになり、これは、従来からのアーチ形タイプのアイドラアセンブリと比較した場合に、起伏のある地形上での移動に対する適応性を高めることができる。さらに、複数の各歯120の傾斜した歯面により、各ブッシュ114がより漸進的に周縁部121に着地することが可能になる。
【0029】
別の言い方をすれば、複数の各歯120間の間隔は、複数の歯の隣接する頂点間の距離が、アイドラによって係合可能な無限軌道リンクの隣接するピン部材の中心軸間距離に対する所定のしきい値内に収まるように規定することができる。一実施形態によれば、複数の各歯120間の間隔は、複数の歯の隣接する頂点間の距離が、アイドラによって係合可能な無限軌道リンクの隣接するピン部材の中心軸間距離の30%〜90%になるように規定することができる。別の実施形態によれば、複数の各歯120間の間隔は、複数の歯の隣接する頂点間の距離が、アイドラによって係合可能な無限軌道リンクの隣接するピン部材の中心軸間距離の60%〜70%になるように規定することができる。さらに別の実施形態では、複数の各歯120間の間隔は、複数の歯の隣接する頂点間の距離が、アイドラによって係合可能な無限軌道リンクの隣接するピン部材の中心軸間距離の約2/3になるように規定することができる。
【0030】
スプロケット付きアイドラ117は、単一の要素として製造できると考えられ、複数の各歯120は、単一部片の材料から一体で形成される。代替案として、また、図4および図5に示すように、スプロケット付きアイドラ117は、複数の部品から組み立てることができ、その各部品は、単独で製造しておくことができる。例えば、図4に示すように、スプロケット付きアイドラ117は、複数ある個々のスプロケット付き歯セグメント125を取り付けるための複数の穴124を有するアイドルホイール部分123を含むことができ、各セグメントは、アイドルホイール123に設けた穴124に対応する複数の穴を有する。したがって、各スプロケット歯セグメント125は、例えば、他の任意で適切な機械式固定装置であるナットおよびボルト、ねじ付き機械ボルト、リベットを含む固定装置128を使用して、アイドルホイール部分123に固定することができる。代替案として、またはこれに加えて、スプロケット付き歯セグメント125の1つまたは複数は、一時的または恒久的な溶接技術を用いてアイドルホイール123に固定することができる。
【0031】
1つの例示的な実施形態によれば、各スプロケット付き歯セグメント125は、アイドルホイール123に設けた対応する溝(図示せず)に嵌入するように設計されたフランジ125aを含むことができる。フランジ125aは、各スプロケット付き歯セグメント125の正確な位置合わせを確実にするように構成することができる。さらに、フランジ125aは、アイドルホイール123の溝内に正しく置かれて、固定された場合に、スプロケット付き歯セグメント125の横方向の動き、および/またはねじれを防止することができる。
【産業上の利用可能性】
【0032】
本明細書で開示および説明された実施形態による無限軌道アセンブリシステムは、無限軌道式機械の車台にかかわる振動、騒音、および摩耗を低減する問題解決手段を提供する。具体的には、本明細書で説明したスプロケット歯の傾斜した歯面構造および間隔により、チェーンアセンブリ111のリンク部材112が、機械の必要な負荷分散に基づいて回転することを可能にするシステムが得られる。それに対して、アーチ形ローラを利用する従来からの無限軌道アセンブリは、主に、連続する歯の逃げ面により形成された、急峻でいくぶん深い溝のために、歯面に沿って移動することができない。さらに、従来の凹凸のない(スプロケットの付いていない)アセンブリは、起伏のある地面上での負荷条件下で、より適応性のある動きを可能にするが、ブッシュ114のアイドラの周縁部への着地を緩やかなものにする、傾斜した接触面を持たない。
【0033】
開示した実施形態は、無限軌道式の建設車両または鉱業用車両に関連するとして説明および図示されているが、チェーンアセンブリとアイドルホイールとの間の急な接触によって発生する振動、騒音、および摩耗を低減するか、またはなくすことが有益であり得る任意の機械環境に適用可能である。具体的には、本明細書で説明したスプロケット付きアセンブリは、チェーンとアイドラの接触部でのこすれによって発生する不必要な振動、騒音、および摩耗を低減できるので、チェーン駆動式機械に係合し、これを支持および案内するのにアイドルプーリまたはアイドルホイールを利用する機械システムにおいて特に有益であり得る。
【0034】
ここに開示した、スプロケット付きアイドラを有する無限軌道アセンブリは、いくつかの利点を有することができる。例えば、本明細書で説明した無限軌道アセンブリは、傾斜した歯面を有するアイドラを提供し、この傾斜した歯面により、アイドラのまわりを移動しているブッシュは、負荷である重量が無限軌道全体に分散されるように、傾斜の長さ方向に沿って漸進的に移動することができるようになる。その結果として、ここに開示した無限軌道アセンブリは、無限軌道のブッシュが円周部(スプロケットの付いていないアイドラ)にこすれる、かつ/または衝突する、ならびに/あるいは一部の従来からのアイドラによって形成された、急峻なアーチ形歯面に沿ってこすれる、かつ/または衝突することに伴う振動、騒音、および摩耗を大幅に低減することができる。
【0035】
さらに、開示した実施形態による無限軌道アセンブリは、特に、起伏のある地形で従来の無限軌道アセンブリと比較した場合に、はるかに快適な乗り心地をオペレータにもたらす。例えば、本明細書で説明した無限軌道システムは、トラクション装置に加わる重量のかかり方がずれたときに、機械が歯面間で回転するのを可能にする、傾斜したランプ形状の歯を提供し、ブッシュおよびリンク部材は、移動に対するある種の適応性を持つことができて、周囲の地形との平衡点に達することができる。それに対して、例えば、アーチ形スプロケット付きアイドラなどの従来のスプロケット付きアイドラのほとんどは、ブッシュによる重量分散の自由を十分に与えず、このため、ブッシュと歯との間の接触部に不平衡な力が生じる。ブッシュが歯間から解放されると、これらの力は対抗するものがなくなり、無限軌道アセンブリに大きな振動および騒音が発生する。
【0036】
さらに、本明細書で開示した特定の実施形態は、複数のスプロケット付き歯セグメントを汎用性のあるアイドルホイールに取り付けることで、スプロケット付きアイドラを組み立てる問題解決策を開示している。共通のアイドルホイールを使用して、異なるスプロケット付きアイドラをカスタマイズ可能にすることで、異なる大きさおよびタイプの機械のそれぞれに対応した多数のスプロケット付きアイドラを生産し、在庫として備えることに伴う保管コスト、生産コスト、および在庫維持コストを大幅に削減することができる。例えば、製造されつつある各機械は、機械にとって必要なチェーンアセンブリのタイプおよび大きさに関係なく、同じアイドルホイールを装備することができる。製造後、次いで、機械は、適切な大きさの歯セグメントを用いてカスタマイズすることができ、この歯セグメントは、単一で一体構造のスプロケット付きアイドラよりもはるかに小さい専有面積を有し、保管コストが削減される。さらに、各機械に対して同じアイドルホイールを使用できるので、各機械に対して異なるアイドラを工業生産することに伴うコストを削減するか、またはなくすことができる。
【0037】
さらに、個々の歯セグメントの交換を可能にするアイドラアセンブリを提供することにより、修理コストを大幅に削減することができる。例えば、機械の運転中に、1つまたは複数の歯が摩耗するか、または損傷した場合、アイドラ全体を取り外して交換する必要はなく、摩耗または損傷した歯に関係のあるセグメントのみを交換すればよい。その結果として、修理に伴う材料コストを、アイドラアセンブリの完全交換に伴うコストではなく、損傷したセグメントに限定することができる。さらに、(アイドラの外縁部のほんの数本のボルトを外せばよい)個々の歯セグメントの交換は、(無限軌道アセンブリを取り外さなければならない)アイドラ全体の交換よりもはるかに短い時間で済ますことができるので、ここに開示したシステムは、機械の休止時間およびそれにかかわる生産コストを削減することができる。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
機械(100)用のスプロケット付きアイドラ(117)であって、
略円形断面を有するアイドラ(116)のまわりに半径方向に配置され、実質的に一定の傾斜を有する少なくとも1つの歯面(120a)をそれぞれが備える複数の歯(120)を含むスプロケット付きアイドラ(117)において、
複数の歯の隣接する頂点間の距離は、アイドラによって係合可能な無限軌道リンク(112)の隣接するピン部材(113)の中心軸間距離の30%〜90%である、アイドラ。
【請求項2】
複数の歯の隣接する頂点間の距離は、無限軌道リンクの隣接するピン部材の中心軸間距離の60%〜70%である、請求項1に記載のアイドラ。
【請求項3】
複数の歯の隣接する頂点間の距離は、無限軌道リンクの隣接するピン部材の中心軸間距離の約2/3である、請求項1に記載のアイドラ。
【請求項4】
複数の各歯は、略三角形の断面を有する、請求項1に記載のアイドラ。
【請求項5】
各ピン部材は、その円筒状の表面のまわりに配置されたブッシュ(114)を含み、複数の歯の隣接する頂点間の距離は、無限軌道リンクが第1の歯の中心上に中心を置かれた場合に、無限軌道リンクに付属するブッシュ(114)が、第1の歯に隣接する第2の歯面の傾斜面でアイドラに接触するように規定される、請求項1に記載のアイドラ。
【請求項6】
各ピン部材は、その円筒状の表面のまわりに配置されたブッシュ(114)を含み、複数の歯の隣接する頂点間の距離は、無限軌道リンクが第1の歯の中心上に中心を置かれた場合に、無限軌道リンクに付属するブッシュが、第1の歯の両側に配置された各歯面の傾斜面でアイドラに接触するように規定される、請求項1に記載のアイドラ。
【請求項7】
機械用の無限軌道アセンブリであって、
複数のリンク部材(112)と、
それぞれが、隣接するリンク部材同士を連結して、無限軌道チェーン(111)を形成し、それぞれが、その円筒状の表面のまわりに配置されたブッシュ(114)を備える複数のピン部材(113)と、
複数の歯が表面のまわりに配置された少なくとも1つのアイドラ(117)であって、ブッシュの一部と係合し、複数のリンク部材の表面との間の接触を実質的に制限するように構成された少なくとも1つのアイドラ(117)と、
を含み、
複数の歯の1つまたは複数は、実質的に一定の傾斜を有する歯面(120a)を含む、無限軌道アセンブリ。
【請求項8】
アイドラのピッチは、複数の各リンク部材のピッチ未満である、請求項7に記載の無限軌道アセンブリ。
【請求項9】
アイドラのピッチは、複数の各リンク部材のピッチの約2/3である、請求項7に記載の無限軌道アセンブリ。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【公表番号】特表2012−501272(P2012−501272A)
【公表日】平成24年1月19日(2012.1.19)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−525139(P2011−525139)
【出願日】平成21年8月25日(2009.8.25)
【国際出願番号】PCT/US2009/054880
【国際公開番号】WO2010/027781
【国際公開日】平成22年3月11日(2010.3.11)
【出願人】(391020193)キャタピラー インコーポレイテッド (296)
【氏名又は名称原語表記】CATERPILLAR INCORPORATED