スペクトラム拡散信号検出方法および装置
【課題】 主情報信号と拡散符号との相関をできるだけ小さくして、スペクトラム拡散信号の検出を容易にする。
【解決手段】 主情報信号に、付加情報信号がスペクトラム拡散されたスペクトラム拡散信号が重畳された入力信号から、スペクトラム拡散信号を検出する。AGC回路51により、入力信号の、主として主情報信号の利得を制御して、主情報信号の変化を小さくする。スペクトラム拡散信号検出部52は、AGC回路51からの主情報信号の変化が小さくなった入力信号について、逆スペクトラム拡散を施して、スペクトラム拡散されている付加情報信号を検出する。
【解決手段】 主情報信号に、付加情報信号がスペクトラム拡散されたスペクトラム拡散信号が重畳された入力信号から、スペクトラム拡散信号を検出する。AGC回路51により、入力信号の、主として主情報信号の利得を制御して、主情報信号の変化を小さくする。スペクトラム拡散信号検出部52は、AGC回路51からの主情報信号の変化が小さくなった入力信号について、逆スペクトラム拡散を施して、スペクトラム拡散されている付加情報信号を検出する。
【発明の詳細な説明】
【0001】
【発明の属する技術分野】この発明は、例えば、映像信号などの主情報信号に、スペクトラム拡散されて重畳された付加情報信号のスペクトラム拡散信号を検出する方法および装置に関する。
【0002】
【従来の技術】デジタルVTRやMD(ミニディスク)記録再生装置などのデジタル情報記録装置が普及しており、さらには、記録機能を備えたDVD(デジタルビデオディスクあるいはデジタルバーサタイルディスク)装置も登場するようになってきている。これらのデジタル情報記録装置においては、主情報信号としてのデジタル映像信号やデジタルオーディオ信号、さらにはコンピュータ等用のデータに付随して、種々の付加情報信号が記録可能とされる。
【0003】図18は、付加情報信号をデジタル情報信号に付加して記録するようにする従来の記録装置の構成例を示すものである。この図18の例の記録装置は、デジタル情報信号Viが、入力端子11を通じて記録装置10に供給され、この記録装置10において付加情報信号がデジタル情報信号Viに付加されて記録媒体15に記録されるものである。
【0004】記録装置10では、付加部12において、付加情報発生部13からの付加情報信号がデジタル情報信号Viに付加される。この場合、この付加情報信号はデジタル信号であり、例えばデジタル情報信号のブロック単位のデータに付加されるヘッダ部や、その他のTOC(Table of Contents)のエリアなど、デジタル情報信号とは領域的に区別されるようなエリアに記録されるものとして、デジタル情報信号Viに対して付加される。
【0005】付加部12からの付加情報信号が付加されたデジタル情報信号は、書き込み部14により、テープやディスクなどの記録媒体15に記録される。この場合、デジタル情報信号について前述したように圧縮符号化が必要な場合には、書き込み部14において、その圧縮符号化の処理が行われるものである。
【0006】
【発明が解決しようとする課題】以上のように、従来の付加情報信号の記録システムの場合、付加情報信号はヘッダ部などのデジタル情報信号に直接的に重畳するのではなく、間接的な部分に付加するようにしている。このため、フィルタリングや改ざんにより、比較的容易に付加情報信号が欠落してしまい、記録装置や再生装置で、必要な付加情報信号が検出することが不可能になる場合を生じる。特に、付加情報信号として、不正な複製を防止するための制御情報や、著作権情報などが付加される場合、このような付加情報信号の欠落のため、当初の目的を達成できない状態を現出しまうことになる。
【0007】また、上述のような間接的な部分への付加情報信号の付加の場合には、デジタル情報信号をアナログ信号に変換したときには、主情報信号しか得られないため、付加情報信号は欠落してしまうことになる。このことは、付加情報信号として上述のような複製防止制御信号を重畳して、不正なデジタル情報信号の複製が防止できるような施策が施されていても、アナログ信号に変換されたときには、もはや複製防止施策は全く意味を成さなくなってしまう状態になることを意味している。
【0008】以上のような付加情報信号の欠落の問題点およびアナログ信号に変換したときの問題点を解決する付加情報信号の重畳方式として、本出願人は、先に、複製防止制御信号などの付加情報信号をスペクトラム拡散し、このスペクトラム拡散した付加情報信号を映像信号に重畳して、映像信号をデジタル記録あるいはアナログ記録する方式を提案している(特願平7−339959号参照)。
【0009】この方式においては、拡散符号として用いるPN(PseudorandomNoise)系列の符号(以下、PN符号という)を十分に早い周期で発生させて、これを付加情報信号に対して掛け合わせることによりスペクトラム拡散し、狭帯域、高レベルの複製防止制御信号などの付加情報信号を、映像信号や音声信号には影響を与えることのない広帯域、微小レベルの信号に変換させる。そして、このスペクトラム拡散された付加情報信号、すなわち、スペクトラム拡散信号をアナログ映像信号に重畳して記録媒体に記録するようにする。この場合、記録媒体に記録する映像信号は、アナログ、デジタルのどちらでも可能である。
【0010】この方式においては、複製防止制御信号などの付加情報信号は、スペクトラム拡散されて広帯域、微小レベルの信号として映像信号に重畳されるため、例えば違法に複製しようとする者が、重畳された複製防止制御信号を映像信号から取り除くことは難しい。
【0011】一方、逆スペクトラム拡散することにより重畳された複製防止制御信号などの付加情報信号を検出して、利用することは可能である。したがって、例えば、映像信号とともに複製防止制御信号を確実に記録装置側に提供することができると共に、この記録装置側において、この複製防止制御信号を検出し、検出した複製防止制御信号に応じた複製制御を確実に行うことができる。
【0012】ところで、上述のように、映像信号のような主情報信号に、付加情報信号をスペクトラム拡散して重畳する場合には、主情報信号からスペクトラム拡散信号を除去するわけではないので、前述もしたように、主情報信号の再生出力に影響を与えることのない微小レベルで、スペクトラム拡散信号を重畳する必要がある。
【0013】しかし、このように微小レベルでスペクトラム拡散信号を主情報信号に重畳したとき、主情報信号から確実にスペクトラム拡散信号を検出できることが重要である。
【0014】主情報信号にスペクトラム拡散信号が重畳された信号Siから、スペクトラム拡散信号を検出するときの逆スペクトラム拡散時の評価関数φは、φ=ΣSi・pi=Σ(Vi+ki・pi)pi=ΣVi・pi+Σki・pi・pi …(1)
となる。Viは映像信号などの主情報信号、piはPN符号などの拡散符号、kiは係数をそれぞれ示している。
【0015】この(1)式において、第1項目は、主情報信号と拡散符号との相関を表し、第2項目がスペクトラム拡散信号と拡散符号との相関を表すものである。この(1)式から、主情報信号と拡散信号との相関がなければ、スペクトラム拡散信号が容易に検出できることが分かる。
【0016】しかし、実際には、映像信号などの主情報信号と拡散符号とは無相関ではない。すなわち、もしも、主情報信号が変化のない平坦な信号であれば、拡散符号とは無相関となるが、一般的な主情報信号は、情報内容に応じて変化するものであるので、PN符号と無相関と言うことはできない。
【0017】このため、主情報信号の情報内容によっては、この主情報信号と拡散符号との相関のために、付加情報信号をスペクトラム拡散したスペクトラム拡散信号の検出が困難になるおそれがある。
【0018】この発明は、以上の点にかんがみ、主情報信号と拡散符号との相関を低く押さえて、スペクトラム拡散信号を確実に検出できるようにする方法および装置を提供することを目的とする。
【0019】
【課題を解決するための手段】上記課題を解決するため、請求項1の発明は、主情報信号に、付加情報信号がスペクトラム拡散されたスペクトラム拡散信号が重畳された入力信号から、前記スペクトラム拡散信号を検出する方法であって、前記入力信号の、主として前記主情報信号の利得を制御して、前記主情報信号の変化を小さくし、前記主情報信号の変化が小さくなった前記入力信号について、逆スペクトラム拡散を施して、前記スペクトラム拡散信号を検出するようにすることを特徴とするスペクトラム拡散信号検出方法を提供する。
【0020】この請求項1の発明においては、主情報信号は、利得制御により変化の小さい信号となる。これは、拡散符号との相関が小さくなることを意味している。したがって、この発明によれば、スペクトラム拡散された付加情報信号の検出が容易になる。
【0021】
【発明の実施の形態】以下、この発明によるスペクトラム拡散信号検出方法および装置の実施の形態を、図を参照しながら説明する。以下に説明する実施の形態は、主情報信号がデジタル映像信号であって、このデジタル映像信号に重畳付加された、例えば複製防止制御信号の付加情報信号をスペクトラム拡散したスペクトラム拡散信号を検出する場合である。また、この実施の形態においては、スペクトラム拡散信号が重畳された映像信号が、記録媒体例えばDVDディスクに記録されており、このDVDディスクからスペクトラム拡散信号が付加された映像信号を再生し、別の未記録のDVDディスクの記録する複製を行う場合として説明する。
【0022】[スペクトラム拡散信号の付加について]まず、この発明の実施の形態の説明する前に、記録媒体例えばDVDディスクへのスペクトラム拡散信号を重畳した映像信号の記録について説明する。
【0023】なお、以下の実施の形態では、スペクトラム拡散信号は、映像信号のうちの輝度信号Yに重畳され、色信号Cには、重畳しない。色信号Cにもスペクトラム拡散信号を重畳することも勿論可能である。しかし、映像信号の色信号の伝送には、例えば色差信号などの2つの位相軸の成分により行って、これら2軸の位相により色を再現するようにするため、スペクトラム拡散信号を色信号に重畳すると、微小レベルであっても、色相の変化となってしまうので、比較的目立ちやすく、色相変化に影響なくスペクトラム拡散信号を重畳することが困難である。このため、この実施の形態では、輝度信号にのみスペクトラム拡散信号を重畳するものとする。ただし、説明の簡単のため、以下の説明においては、輝度信号Yと色信号Cとを区別することなく、映像信号という表現を用いる。
【0024】図2は、例えば、制作会社等が用いる、DVDディスクへの映像信号の記録装置の一例を示すものである。この記録装置20の入力端子21を通じてデジタル映像信号Viが入力される。
【0025】この実施の形態の記録装置20は、重畳部22と、タイミング信号生成部23と、付加情報発生部24と、スペクトラム拡散信号生成部(以下、SS信号生成部と略記することにする)と、書き込み部26と、記録媒体としてのDVDディスク27とからなる。
【0026】再生装置10からのデジタル映像信号Viは、重畳部22とタイミング信号生成部23に供給される。
【0027】タイミング信号生成部23は、デジタル映像信号Viから検出される映像同期信号のタイミングに同期したタイミング信号を生成するもので、例えば図3に示すように、基準タイミング検出部231と、PLL回路232と、同期タイミング信号発生部233とを備えて構成することができる。
【0028】基準タイミング検出部231は、デジタル映像信号Viから、基準タイミング信号として映像同期タイミング信号DSを生成する。この実施の形態においては、基準タイミング信号として垂直同期信号VDを用いるもので、基準タイミング検出部231は、デジタル映像信号Viから垂直同期信号VD(図5(A)参照)のタイミングを示す信号DSを生成し、これをPLL回路232およびタイミング信号生成部233に供給する。
【0029】PLL回路232は、垂直同期信号VDのタイミングに同期したクロック信号CLKを生成する。このクロック信号CLKは、タイミング信号生成部233に供給されると共に、付加情報発生部24およびSS信号生成部25にも供給される。
【0030】タイミング信号生成部233は、垂直同期信号VDのタイミングに同期した信号DSとクロック信号CLKとに基づいて、拡散同期タイミング信号TM(図5(B)参照)を生成し、この拡散同期タイミング信号TMを付加情報発生部24およびSS信号生成部25に供給する。タイミング信号生成部233は、また、その他の必要な各種のタイミング信号を生成し、必要な部位に供給する。
【0031】付加情報発生部24は、映像信号Viに重畳しようとする付加情報信号FSを記憶する記憶部を備え、この記憶部に予め付加情報信号FSが格納されている。
【0032】この付加情報信号FSとしては、複製防止制御などの制御情報、デジタル映像信号に関連する情報例えば各フィールドを識別するためのタイムコード情報、著作権情報などの複製防止用信号などが例として挙げられる。著作権情報としては、例えば当該記録装置30を特定する装置番号が用いられる。この装置番号がデジタル映像信号Viに重畳して記録されていれば、複製された履歴を追跡することが容易にできるものである。この実施の形態では、付加情報信号FSとしては、前述したような複製防止制御信号が用いられ、この複製防止制御信号が記憶されている例えばROMが付加情報発生部24に設けられている。
【0033】付加情報発生部24では、これに供給される拡散同期タイミング信号TMとクロック信号CLKに同期して、読み出し信号を生成し、この読み出し信号によりデジタル映像信号Viに重畳する付加情報信号FSを出力し、SS信号生成部25に供給する。この場合、付加情報信号FSはクロックCLKにより付加情報信号列としてSS信号生成部25に供給される。
【0034】拡散同期タイミング信号TMは、付加情報信号FSのスペクトラム拡散に用いるPN符号列の同期タイミング信号であり、この実施の形態において、この拡散同期タイミング信号TMは、垂直同期信号VDに同期し、1垂直区間を1周期とする信号として生成されている。
【0035】SS信号生成部25は、拡散符号としてPN(Pseudorandom Noize;疑似ランダム雑音)符号列を生成し、このPN符号列を用いて付加情報発生部24からの付加情報信号FSをスペクトラム拡散する。
【0036】図4は、このSS信号生成部25の構成例を示す図である。この図4に示すように、SS信号生成部25は、PN符号列生成部251と、乗算器252とを備えている。
【0037】PN符号列生成部251には、クロック信号CLKと、イネーブル信号ENと、拡散同期タイミング信号(初期化信号)TMが供給される。イネーブル信号ENは、PN符号列生成部251を動作状態にするための信号であり、この実施の形態のおいては、記録装置30に電源が投入されることにより生成されて、PN符号列生成部251に供給される。
【0038】PN符号列生成部251は、イネーブル信号ENに応じて動作が可能な状態になる。そして、PN符号列生成部251は、拡散同期タイミング信号TMによりリセットされて、PN符号列をその先頭から生成するものであり、この実施の形態では、クロック信号CLKに同期してPN符号列PS(図5(C)参照)を発生する。
【0039】図6は、PN符号列生成部251の構成例を示す図である。この例のPN符号列生成部251は、例えば12段のシフトレジスタを構成する12個のDフリップフロップREG1〜REG12と、このシフトレジスタの適宜のタップ出力を演算するイクスクルーシブオア回路EX−OR1〜EX−OR3とからなっている。そして、図6に示すPN符号列生成部251は、上述したように、拡散同期タイミング信号TM、クロック信号CLK、イネーブル信号ENに基づいて、M系列のPN符号列PSを発生する。
【0040】このPN符号列生成部251で生成されたPN符号列PSは、乗算器252に供給される。一方、付加情報発生部24からの付加情報信号列FSが、この乗算器252に供給される。
【0041】乗算部252は、PN符号列生成部251からのPN符号列PSを用いて、付加情報信号FSをスペクトラム拡散する。この乗算部252からは、付加情報信号FSがスペクトラム拡散された信号であるスペクトラム拡散信号SFが得られる。
【0042】こうして、SS信号生成部25で生成されたスペクトラム拡散信号SFは、重畳部22に供給される。重畳部22は、デジタル映像信号Viに対して、このスペクトラム拡散信号を重畳する処理を行う。そして、このスペクトラム拡散信号が重畳されたデジタル映像信号を書き込み部26に供給する。
【0043】書き込み部26は、重畳部22からのスペクトラム拡散信号が重畳されたデジタル映像信号について、必要な圧縮符号化などの処理を行った後、記録媒体27に記録する。
【0044】この場合、前述もしたように、スペクトラム拡散信号は、映像信号をモニターに供給して映像を表示したときに、その映像を乱さない微小レベルでデジタル映像信号Viに対して重畳される。例えば、1画素分を8ビットで表現するようにする場合に、この8ビットサンプルのデジタル映像信号の最下位ビットやその次のビット目に、スペクトラム拡散信号を加算して重畳するようにする。
【0045】図7は、スペクトラム拡散信号と、映像信号との関係をスペクトルで示したものである。付加情報信号は、これに含まれる情報量は少なく、低ビットレートの信号であり、図7(a)に示されるように狭帯域の信号である。これにスペクトラム拡散を施すと、図7(b)に示すような広帯域幅の信号となる。このときに、スペクトラム拡散信号レベルは帯域の拡大比に反比例して小さくなる。
【0046】このスペクトラム拡散信号を、重畳部22で映像信号に重畳させるのであるが、この場合に、図7(c)に示すように、映像信号のダイナミックレンジより小さいレベルで、スペクトラム拡散信号を重畳させる。このように重畳することにより映像信号の劣化がほとんど生じないようにすることができる。したがって、スペクトラム拡散信号が重畳された映像信号がモニター受像機に供給されて、映像が再生された場合に、スペクトラム拡散信号の影響はほとんどなく、良好な再生映像が得られるものである。
【0047】しかし、後述するように、重畳されたスペクトラム拡散信号を検出するために、スペクトラム逆拡散を行うと、図7(d)に示すように、スペクトラム拡散信号が再び狭帯域の信号として復元される。十分な帯域拡散率を与えることにより、逆拡散後の付加情報信号の電力が情報信号を上回り、検出可能となる。
【0048】この場合、映像信号に重畳された付加情報信号は、映像信号と同一時間、同一周波数内に重畳されるため、周波数フィルタや単純な情報の置き換えでは削除および修正が不可能である。
【0049】したがって、必要な付加情報信号を映像信号などの情報信号に重畳して記録することにより、映像信号に付随して、付加情報信号を確実に伝送することができる。しかも、上述の実施の形態のように、映像信号などの情報信号に比べて低い信号電力でスペクトラム拡散された付加情報信号を情報信号に重畳するようにした場合には、情報信号の劣化を最小にすることができる。
【0050】したがって、付加情報信号として、例えば複製防止用信号を映像信号などの情報信号に重畳した場合には、複製防止用信号の改ざんや除去が上述のように困難であるので、不正な複製を確実に防止することができる複製防止制御が可能になる。
【0051】また、上述の構成においては、垂直同期信号を基準信号とした、垂直周期のPN符号列を用いてスペクトラム拡散を行うようにしたので、このスペクトラム拡散信号をデジタル映像信号から検出する場合に必要となる逆スペクトラム拡散用のPN符号列は、デジタル映像信号Viから検出した垂直同期信号に同期した信号に基づき容易に生成することができる。すなわち、例えばスライディング相関器などを用いた逆拡散のためのPN符号の同期制御は不要となる。このように、容易に逆拡散用のPN符号列を生成することができるので、逆スペクトラム拡散を迅速に実行し、迅速にスペクトラム拡散されて映像信号に重畳されている複製防止制御信号などの付加情報信号を検出することができる。
【0052】[スペクトラム拡散信号検出装置の実施の形態]図1は、この発明によるスペクトラム拡散信号検出装置を使用したデジタル映像信号の複製システムの構成を示すもので、再生装置部30と記録装置部40を備える。そして、再生装置部30で記録媒体27から再生されて得られるデジタル映像信号が記録装置部40に供給され、この記録装置部40において、デジタル映像信号に付加されているスペクトラム拡散信号である複製防止制御信号により、新たな記録媒体42へのデジタル映像信号の書き込み(記録)を制御するデジタル情報複製システムの構成とされたものである。
【0053】図1において、記録媒体27、この例ではDVDディスクには、前述したようにして、この例では、付加情報信号として複製防止制御信号がスペクトラム拡散されて重畳されたデジタル映像信号が記録されている。
【0054】この記録媒体27から抽出された情報は、読み出し部31によりデジタル情報に復元される。この場合、例えば情報信号が圧縮符号化されて記録されている場合には、この読み出し部31で、情報信号は伸長復号化される。そして、復元されたデジタル映像信号Siが記録装置部40に入力される。
【0055】記録装置部40では、これに入力されたデジタル映像信号Siは、書き込み部41およびスペクトラム拡散信号検出装置部50に供給される。スペクトラム拡散信号検出装置部50では、デジタル映像信号Siに重畳されているスペクトラム拡散信号を検出して、付加情報信号である複製防止制御信号を復元する。そして、復元した複製防止制御信号を書き込み制御部42に供給する。
【0056】書き込み制御部42は、複製防止制御信号の復元結果に基づいて書き込み部41を制御するための制御信号S42を生成し、これを書き込み部41に供給する。制御信号S42は、デジタル映像信号の記録媒体43の例としてのDVDディスクへの書き込みの許可あるいは禁止を制御するものである。
【0057】書き込み部41は、書き込み制御部42からの制御信号S42が、複製を許可するものであるときは、入力デジタル映像信号Siについて記録ための必要な処理、例えば圧縮符号化をを行って記録媒体43に書き込み、制御信号S42が、複製を禁止するものであるときは、入力デジタル映像信号Siを記録媒体43に書き込まないように制御する。
【0058】スペクトラム拡散信号検出装置部50は、この実施の形態では、AGC回路(自動利得制御回路)51と、スペクトラム拡散付加情報検出部(以下SS付加情報検出部という)52と、タイミング信号生成部53とからなる。なお、図において、SSはスペクトラム拡散の略である。
【0059】AGC回路51は、スペクトラム拡散された付加情報信号であるスペクトラム拡散信号の利得はできるだけ変えずに、主情報信号である映像信号の利得を制御して、映像信号のレベル変化(ばらつき)をできるだけ小さくするようにするものである。なお、前述もしたように、スペクトラム拡散信号が重畳されるのは、映像信号の輝度信号成分であり、このAGC回路51による利得制御は、輝度信号レベルに関するものである。このAGC回路の具体的構成例については、後述する。
【0060】SS付加情報検出部52は、このAGC回路51からの利得制御を受けた信号S51を受けて、逆スペクトラム拡散処理を行い、付加情報信号である複製防止制御信号S52を検出して復元し、書き込み制御部42に供給する。
【0061】この場合、信号51は、信号レベル変化が少なく、平坦なものに利得制御されているので、拡散符号であるPN符号との相関は小さくなる。したがって、この信号S51についてSS付加情報検出部52で逆拡散が行われると、映像信号の成分とPN符号との相関の影響が少なくなり、付加情報信号であるスペクトラム拡散された複製防止制御信号の検出が容易になる。
【0062】タイミング信号生成部53は、図2に示した記録時のタイミング信号生成部23とまったく同様の構成を有するもので、入力デジタル映像信号Siから垂直同期タイミング信号を抽出し、この垂直同期タイミング信号に基づいて、クロック信号CLKおよびPN符号の発生同期タイミング信号TMを生成する。そして、これらクロック信号CLKおよび同期タイミング信号TMを、SS付加情報検出部52に送る。
【0063】図8は、この実施の形態の記録装置部40のSS付加情報検出部52の構成を説明するためのブロック図である。図8に示すように、この例のSS付加情報検出部52は、供給されたデジタル信号S51からスペクトラム拡散された付加情報信号としての複製防止制御信号を検出するための逆拡散部521と、この逆拡散部521により検出された複製防止制御信号を元の複製防止制御信号に復元するデータ判定部522と、複製防止制御信号をスペクトラム拡散しているPN符号を検出するPN符号検出部523と、スペクトラム拡散付加情報検出制御部(以下、SS付加情報検出制御部と略称する)524とを備えている。
【0064】図8に示すように、PN符号検出部523は、PN符号発生部525を備えている。このPN符号発生部525は、図2のスペクトラム拡散信号生成部25のPN符号発生部251(図4)と、同様の構成を備え、PN符号列PSを発生する。SS付加情報検出制御部524は、このPN符号発生部525のPN符号PSの発生タイミングを制御する。
【0065】すなわち、SS付加情報検出制御部524は、タイミング信号生成部53からのクロック信号CLKおよび同期タイミング信号TMの供給を受けて、PN符号発生部525に対するリセット信号REやイネーブル信号等の制御信号を形成し、これをPN符号検出部524のPN符号発生部525に供給する。PN符号発生部525は、イネーブル信号により動作が可能な状態にされる。そして、リセット信号REに応じたタイミング毎に、クロック信号CLKに基づいて、PN符号列を生成する。
【0066】この実施の形態においてPN符号検出部524は、PN符号発生部525で生成したPN符号列と、入力デジタル信号S51との相関を求めることにより、複製防止制御信号をスペクトラム拡散しているPN符号列を検出する。
【0067】PN符号検出部523は、これにおいて生成したPN符号列と、複製防止制御信号をスペクトラム拡散しているPN符号列との相関を求めた結果を示す信号ScをSS付加情報検出制御部524に供給する。この信号Scは、上述のように、PN符号検出部524で、生成したPN符号列と、複製防止制御信号をスペクトラム拡散しているPN符号列との相関を求めた結果、相関が高ければ、レベルの高い信号となり、相関が低ければ、レベルの低い信号となる。
【0068】SS付加情報検出制御部524は、PN符号検出部523からの相関を求めた結果を示す信号Scが、予め決められたレベル以上の信号であるときには、複製防止制御信号をスペクトラム拡散しているPN符号列と、PN符号生成部525において生成したPN符号列との同期が合っている状態であって、複製防止制御信号をスペクトラム拡散しているPN符号列を検出したと判断する。その逆に、PN符号検出部523からの信号Scが、予め決められたレベル以下であれば、複製防止制御信号をスペクトラム拡散しているPN符号列と、PN符号検出部において生成したPN符号列との同期は合っていないと判断する。
【0069】そして、PN符号検出部523において、複製防止制御信号をスペクトラム拡散しているPN符号列が検出されないときには、SS付加情報検出制御部524からのリセット信号REによる制御を受けて、PN符号検出部523は、これより発生させるPN符号列の位相を調整し、前述の相関演算を行い、PN符号列の検出処理を繰り返す。
【0070】また、PN符号検出部523において、複製防止制御信号をスペクトラム拡散しているPN符号列が検出されたときには、SS付加情報検出制御部524は、PN符号検出部523の検出結果に応じて、逆拡散部521に制御信号CT1を送り、PN符号発生部525からのPN符号列PSによる逆スペクトラム拡散を実行させる。また、SS付加情報検出制御部524は、データ判定部522を制御する信号CT2を形成して、これをデータ判定部522に供給する。
【0071】逆拡散部521は、上述のようにして同期生成されたPN符号列PSを用いて、逆スペクトラム拡散を行い、広帯域、微小レベルの信号とされた複製防止制御信号を、元の狭帯域、高レベルの信号として、入力デジタル信号S51から検出する。検出された複製防止制御信号は、データ判定部522に供給される。
【0072】データ判定部242は、検出された複製防止制御信号を復元して、書き込み制御部42に供給する。すなわち、複製防止制御信号が指示する複製制御内容を判定し、その判定結果S52を書き込み制御部42に供給する。
【0073】[AGC回路51の第1の実施例]図9は、AGC回路51の第1の実施例を示すものである。この第1の実施例のAGC回路は、ローパスフィルタ511と、割り算演算器512とからなる。ローパスフィルタ511は、図7(C)に示したように、広帯域に重畳されているスペクトラム拡散信号の周波数成分はできるだけ含まずに、映像信号(輝度信号)の低域成分を抽出するためのものである。
【0074】すなわち、入力デジタル映像信号Siが、図10(A)に示すようなものであった場合、ローパスフィルタ511からは、図10(B)に示すような、その低域成分SLが得られる。なお、図10において、微小信号成分はスペクトラム拡散信号成分を示している。
【0075】この低域成分SLは、割り算演算器512に供給される。この割り算演算器512には、また、入力デジタル映像信号Siが供給されている。そして、この割り算演算器512からは、Si/SLなる演算結果の信号として、図10(C)に示すように、もともとの信号Siの変化が圧縮された状態に利得制御された信号S51が得られる。
【0076】このように信号レベル変化が少なく、平坦なものに利得制御された信号S51と、拡散符号であるPN符号との相関は小さくなる。したがって、この信号S51についてスペクトラム拡散付加情報検出部52で逆拡散が行われると、付加情報であるスペクトラム拡散された複製防止制御信号の検出が容易になる。
【0077】[AGC回路51の第2の実施例]図11は、AGC回路51の第2の実施例を示すもので、この例では、AGC回路51は、ビットシフト回路513で構成される。このビットシフト回路513は、入力デジタル映像信号Siの画素サンプルデータのMSB側のデジットが「0」であったとき、MSBが「1」になるまで、MSB側にビットシフトする回路である。
【0078】例えば、デジタル映像信号Siが1画素サンプル/8ビットの信号であった場合に、図12に示すような、MSB側から[00101010]となっているサンプルデータは、このビットシフト回路513を通ると、[10101000]となり、デジタル値の大きい値側に値がシフトする。すなわち、この例の場合には、デジタル値が逓倍されることになる。
【0079】この結果、例えば、入力デジタル信号Siが8ビット/サンプルのデジタル信号である場合には、アナログ信号レベルに対して図13(A)に示すようなデジタル値の変化をするが、ビットシフト回路513からの信号S51は、図13(B)に示すように、高レベル側に偏ることになるので、レベル変化が小さくなる。なお、図13において、微小信号成分はスペクトラム拡散信号成分を示している。
【0080】したがって、前述の例と同様に、レベル変化が少なく、平坦なものに利得制御された信号S51と、拡散符号であるPN符号との相関は小さくなり、この信号S51についてスペクトラム拡散付加情報検出部52で逆拡散が行われると、付加情報であるスペクトラム拡散された複製防止制御信号の検出が容易になる。しかも、この第2の実施例の場合には、ビットシフト回路だけの簡単な回路構成で、利得制御ができるというメリットもある。
【0081】なお、図14に示すように、ビットシフト回路513の出力に対して、その出力のMSB側から2ビット目が「0」の場合、その出力を1ビットLSB側にシフトした信号を足算することにより、デジタル映像信号Siの取り得るデジタル信号値を、図15(A)に示すような信号を、図15(B)に示すように、さらに広レベル側にシフトして、より小さいレベル変化範囲内に納めるようにすることもできる。
【0082】[他の実施の形態]図16は、この発明によるスペクトラム拡散信号の検出装置の他の実施の形態のブロック図を示すものである。
【0083】この実施の形態では、スペクトラム拡散信号検出装置部50は、ハイパスフィルタ54と、タイミング信号生成部53と、SS付加情報検出部52とからなる。すなわち、図1の実施の形態のAGC回路51に代えて、ハイパスフィルタ54が用いられる点が異なるだけで、他は図1とまったく同様である。
【0084】この場合、ハイパスフィルタ54は、前述のローパスフィルタ511と逆特性、すなわち、ローパスフィルタ511を通過する成分を除く周波数成分がすべて通過するような特性とされる。
【0085】読み出し部31からの信号Siが、このハイパスフィルタ54を通ると、その低域成分が除去されてSS付加情報検出部52に供給される。すなわち、映像信号の明暗の直流分はほとんど除去されることになる。例えば、読み出し部31からの信号Siが、図17(A)に示すような波形変化するものであった場合、ハイパスフィルタ54の出力S54は、図17(B)に示すように、直流分を含む低周波分が除去され、変動周波数が高い成分のみとなる。
【0086】したがって、ハイパスフィルタ54の出力信号S54は、レベル変化が小さいものとなり、拡散符号であるPN符号列との相関が小さくなるため、スペクトラム拡散された付加情報の検出が容易になる。
【0087】なお、以上は、主情報信号が映像信号の場合を例に説明したが、主情報信号は、比較的変動範囲の大きく利得制御可能な信号である場合には、この発明の対象となり得るもので、オーディオ信号やその他の情報信号も、この発明でいう主情報信号となり得るものであることは言うまでもない。
【0088】また、以上は主情報信号がデジタル信号の場合について説明したが、主情報信号はアナログ信号であっても、この発明でいう主情報信号となるものである。
【0089】また、付加情報は、以上の例のような複製防止制御信号に限られるものではなく、著作権情報や、その他、主情報信号と共に伝送したいものであって、容易に欠落して欲しくない情報であれば、どのような情報であってもよい。
【0090】また、以上は、スペクトラム拡散信号が重畳された情報信号が記録されたディスクからの再生信号からスペクトラム拡散信号を検出する場合について説明したが、地上波放送や衛星放送あるいはケーブルテレビ放送などの放送信号に、付加情報をスペクトラム拡散して伝送する場合に、当該放送信号からスペクトラム拡散信号を検出する場合にも、この発明は適用可能である。
【0091】また、スペクトラム拡散に用いる拡散符号としては、PN符号に限られるものではなく、例えばゴールド符号や、その他の拡散符号が用いることができる。
【0092】
【発明の効果】以上説明したように、この発明によれば、スペクトラム拡散された付加情報が重畳された信号について、その変化を小さくするように利得制御したことにより、スペクトラム拡散信号の検出が容易になる。このため、スペクトラム拡散信号を主情報信号に微小レベルで重畳することが容易になる。
【図面の簡単な説明】
【図1】この発明によるスペクトラム拡散信号検出装置の実施の形態を適用したシステムの例を示すブロック図である。
【図2】主情報信号にスペクトラム拡散信号を重畳して記録する記録システムを説明するための図である。
【図3】図2のシステムの一部のブロック図である。
【図4】図2のシステムの一部のブロック図である。
【図5】図2の記録システムの拡散同期のタイムチャートを示す図である。
【図6】PN符号発生部の一例を示す図である。
【図7】主情報信号への付加情報へのスペクトラム拡散を説明するための図である。
【図8】図1の実施の形態のスペクトラム拡散付加情報検出部の構成例を示す図である。
【図9】図1の実施の形態のAGC回路の第1の実施例を示す図である。
【図10】図9のAGC回路の実施例の動作を説明するための図である。
【図11】図1の実施の形態のAGC回路の第2の実施例を示す図である。
【図12】図12の実施例の動作を説明するための図である。
【図13】図12の実施例の動作を説明するための図である。
【図14】図12の実施例の変形例の動作を説明するための図である。
【図15】図12の実施例の変形例の動作を説明するための図である。
【図16】この発明によるスペクトラム拡散信号の検出装置の他の実施の形態のブロック図である。
【図17】図16の実施の形態を説明するための図である。
【図18】主情報信号に付加情報を付加する従来例を示す図である。
【符号の説明】
30…再生装置部、40…記録装置部、41…書き込み部、42…書き込み制御部、50…スペクトラム拡散信号検出装置部、51…AGC回路、52…スペクトラム拡散付加情報検出部、53…タイミング信号生成部、511…ローパスフィルタ、512…割り算演算器、513…ビットシフト回路
【0001】
【発明の属する技術分野】この発明は、例えば、映像信号などの主情報信号に、スペクトラム拡散されて重畳された付加情報信号のスペクトラム拡散信号を検出する方法および装置に関する。
【0002】
【従来の技術】デジタルVTRやMD(ミニディスク)記録再生装置などのデジタル情報記録装置が普及しており、さらには、記録機能を備えたDVD(デジタルビデオディスクあるいはデジタルバーサタイルディスク)装置も登場するようになってきている。これらのデジタル情報記録装置においては、主情報信号としてのデジタル映像信号やデジタルオーディオ信号、さらにはコンピュータ等用のデータに付随して、種々の付加情報信号が記録可能とされる。
【0003】図18は、付加情報信号をデジタル情報信号に付加して記録するようにする従来の記録装置の構成例を示すものである。この図18の例の記録装置は、デジタル情報信号Viが、入力端子11を通じて記録装置10に供給され、この記録装置10において付加情報信号がデジタル情報信号Viに付加されて記録媒体15に記録されるものである。
【0004】記録装置10では、付加部12において、付加情報発生部13からの付加情報信号がデジタル情報信号Viに付加される。この場合、この付加情報信号はデジタル信号であり、例えばデジタル情報信号のブロック単位のデータに付加されるヘッダ部や、その他のTOC(Table of Contents)のエリアなど、デジタル情報信号とは領域的に区別されるようなエリアに記録されるものとして、デジタル情報信号Viに対して付加される。
【0005】付加部12からの付加情報信号が付加されたデジタル情報信号は、書き込み部14により、テープやディスクなどの記録媒体15に記録される。この場合、デジタル情報信号について前述したように圧縮符号化が必要な場合には、書き込み部14において、その圧縮符号化の処理が行われるものである。
【0006】
【発明が解決しようとする課題】以上のように、従来の付加情報信号の記録システムの場合、付加情報信号はヘッダ部などのデジタル情報信号に直接的に重畳するのではなく、間接的な部分に付加するようにしている。このため、フィルタリングや改ざんにより、比較的容易に付加情報信号が欠落してしまい、記録装置や再生装置で、必要な付加情報信号が検出することが不可能になる場合を生じる。特に、付加情報信号として、不正な複製を防止するための制御情報や、著作権情報などが付加される場合、このような付加情報信号の欠落のため、当初の目的を達成できない状態を現出しまうことになる。
【0007】また、上述のような間接的な部分への付加情報信号の付加の場合には、デジタル情報信号をアナログ信号に変換したときには、主情報信号しか得られないため、付加情報信号は欠落してしまうことになる。このことは、付加情報信号として上述のような複製防止制御信号を重畳して、不正なデジタル情報信号の複製が防止できるような施策が施されていても、アナログ信号に変換されたときには、もはや複製防止施策は全く意味を成さなくなってしまう状態になることを意味している。
【0008】以上のような付加情報信号の欠落の問題点およびアナログ信号に変換したときの問題点を解決する付加情報信号の重畳方式として、本出願人は、先に、複製防止制御信号などの付加情報信号をスペクトラム拡散し、このスペクトラム拡散した付加情報信号を映像信号に重畳して、映像信号をデジタル記録あるいはアナログ記録する方式を提案している(特願平7−339959号参照)。
【0009】この方式においては、拡散符号として用いるPN(PseudorandomNoise)系列の符号(以下、PN符号という)を十分に早い周期で発生させて、これを付加情報信号に対して掛け合わせることによりスペクトラム拡散し、狭帯域、高レベルの複製防止制御信号などの付加情報信号を、映像信号や音声信号には影響を与えることのない広帯域、微小レベルの信号に変換させる。そして、このスペクトラム拡散された付加情報信号、すなわち、スペクトラム拡散信号をアナログ映像信号に重畳して記録媒体に記録するようにする。この場合、記録媒体に記録する映像信号は、アナログ、デジタルのどちらでも可能である。
【0010】この方式においては、複製防止制御信号などの付加情報信号は、スペクトラム拡散されて広帯域、微小レベルの信号として映像信号に重畳されるため、例えば違法に複製しようとする者が、重畳された複製防止制御信号を映像信号から取り除くことは難しい。
【0011】一方、逆スペクトラム拡散することにより重畳された複製防止制御信号などの付加情報信号を検出して、利用することは可能である。したがって、例えば、映像信号とともに複製防止制御信号を確実に記録装置側に提供することができると共に、この記録装置側において、この複製防止制御信号を検出し、検出した複製防止制御信号に応じた複製制御を確実に行うことができる。
【0012】ところで、上述のように、映像信号のような主情報信号に、付加情報信号をスペクトラム拡散して重畳する場合には、主情報信号からスペクトラム拡散信号を除去するわけではないので、前述もしたように、主情報信号の再生出力に影響を与えることのない微小レベルで、スペクトラム拡散信号を重畳する必要がある。
【0013】しかし、このように微小レベルでスペクトラム拡散信号を主情報信号に重畳したとき、主情報信号から確実にスペクトラム拡散信号を検出できることが重要である。
【0014】主情報信号にスペクトラム拡散信号が重畳された信号Siから、スペクトラム拡散信号を検出するときの逆スペクトラム拡散時の評価関数φは、φ=ΣSi・pi=Σ(Vi+ki・pi)pi=ΣVi・pi+Σki・pi・pi …(1)
となる。Viは映像信号などの主情報信号、piはPN符号などの拡散符号、kiは係数をそれぞれ示している。
【0015】この(1)式において、第1項目は、主情報信号と拡散符号との相関を表し、第2項目がスペクトラム拡散信号と拡散符号との相関を表すものである。この(1)式から、主情報信号と拡散信号との相関がなければ、スペクトラム拡散信号が容易に検出できることが分かる。
【0016】しかし、実際には、映像信号などの主情報信号と拡散符号とは無相関ではない。すなわち、もしも、主情報信号が変化のない平坦な信号であれば、拡散符号とは無相関となるが、一般的な主情報信号は、情報内容に応じて変化するものであるので、PN符号と無相関と言うことはできない。
【0017】このため、主情報信号の情報内容によっては、この主情報信号と拡散符号との相関のために、付加情報信号をスペクトラム拡散したスペクトラム拡散信号の検出が困難になるおそれがある。
【0018】この発明は、以上の点にかんがみ、主情報信号と拡散符号との相関を低く押さえて、スペクトラム拡散信号を確実に検出できるようにする方法および装置を提供することを目的とする。
【0019】
【課題を解決するための手段】上記課題を解決するため、請求項1の発明は、主情報信号に、付加情報信号がスペクトラム拡散されたスペクトラム拡散信号が重畳された入力信号から、前記スペクトラム拡散信号を検出する方法であって、前記入力信号の、主として前記主情報信号の利得を制御して、前記主情報信号の変化を小さくし、前記主情報信号の変化が小さくなった前記入力信号について、逆スペクトラム拡散を施して、前記スペクトラム拡散信号を検出するようにすることを特徴とするスペクトラム拡散信号検出方法を提供する。
【0020】この請求項1の発明においては、主情報信号は、利得制御により変化の小さい信号となる。これは、拡散符号との相関が小さくなることを意味している。したがって、この発明によれば、スペクトラム拡散された付加情報信号の検出が容易になる。
【0021】
【発明の実施の形態】以下、この発明によるスペクトラム拡散信号検出方法および装置の実施の形態を、図を参照しながら説明する。以下に説明する実施の形態は、主情報信号がデジタル映像信号であって、このデジタル映像信号に重畳付加された、例えば複製防止制御信号の付加情報信号をスペクトラム拡散したスペクトラム拡散信号を検出する場合である。また、この実施の形態においては、スペクトラム拡散信号が重畳された映像信号が、記録媒体例えばDVDディスクに記録されており、このDVDディスクからスペクトラム拡散信号が付加された映像信号を再生し、別の未記録のDVDディスクの記録する複製を行う場合として説明する。
【0022】[スペクトラム拡散信号の付加について]まず、この発明の実施の形態の説明する前に、記録媒体例えばDVDディスクへのスペクトラム拡散信号を重畳した映像信号の記録について説明する。
【0023】なお、以下の実施の形態では、スペクトラム拡散信号は、映像信号のうちの輝度信号Yに重畳され、色信号Cには、重畳しない。色信号Cにもスペクトラム拡散信号を重畳することも勿論可能である。しかし、映像信号の色信号の伝送には、例えば色差信号などの2つの位相軸の成分により行って、これら2軸の位相により色を再現するようにするため、スペクトラム拡散信号を色信号に重畳すると、微小レベルであっても、色相の変化となってしまうので、比較的目立ちやすく、色相変化に影響なくスペクトラム拡散信号を重畳することが困難である。このため、この実施の形態では、輝度信号にのみスペクトラム拡散信号を重畳するものとする。ただし、説明の簡単のため、以下の説明においては、輝度信号Yと色信号Cとを区別することなく、映像信号という表現を用いる。
【0024】図2は、例えば、制作会社等が用いる、DVDディスクへの映像信号の記録装置の一例を示すものである。この記録装置20の入力端子21を通じてデジタル映像信号Viが入力される。
【0025】この実施の形態の記録装置20は、重畳部22と、タイミング信号生成部23と、付加情報発生部24と、スペクトラム拡散信号生成部(以下、SS信号生成部と略記することにする)と、書き込み部26と、記録媒体としてのDVDディスク27とからなる。
【0026】再生装置10からのデジタル映像信号Viは、重畳部22とタイミング信号生成部23に供給される。
【0027】タイミング信号生成部23は、デジタル映像信号Viから検出される映像同期信号のタイミングに同期したタイミング信号を生成するもので、例えば図3に示すように、基準タイミング検出部231と、PLL回路232と、同期タイミング信号発生部233とを備えて構成することができる。
【0028】基準タイミング検出部231は、デジタル映像信号Viから、基準タイミング信号として映像同期タイミング信号DSを生成する。この実施の形態においては、基準タイミング信号として垂直同期信号VDを用いるもので、基準タイミング検出部231は、デジタル映像信号Viから垂直同期信号VD(図5(A)参照)のタイミングを示す信号DSを生成し、これをPLL回路232およびタイミング信号生成部233に供給する。
【0029】PLL回路232は、垂直同期信号VDのタイミングに同期したクロック信号CLKを生成する。このクロック信号CLKは、タイミング信号生成部233に供給されると共に、付加情報発生部24およびSS信号生成部25にも供給される。
【0030】タイミング信号生成部233は、垂直同期信号VDのタイミングに同期した信号DSとクロック信号CLKとに基づいて、拡散同期タイミング信号TM(図5(B)参照)を生成し、この拡散同期タイミング信号TMを付加情報発生部24およびSS信号生成部25に供給する。タイミング信号生成部233は、また、その他の必要な各種のタイミング信号を生成し、必要な部位に供給する。
【0031】付加情報発生部24は、映像信号Viに重畳しようとする付加情報信号FSを記憶する記憶部を備え、この記憶部に予め付加情報信号FSが格納されている。
【0032】この付加情報信号FSとしては、複製防止制御などの制御情報、デジタル映像信号に関連する情報例えば各フィールドを識別するためのタイムコード情報、著作権情報などの複製防止用信号などが例として挙げられる。著作権情報としては、例えば当該記録装置30を特定する装置番号が用いられる。この装置番号がデジタル映像信号Viに重畳して記録されていれば、複製された履歴を追跡することが容易にできるものである。この実施の形態では、付加情報信号FSとしては、前述したような複製防止制御信号が用いられ、この複製防止制御信号が記憶されている例えばROMが付加情報発生部24に設けられている。
【0033】付加情報発生部24では、これに供給される拡散同期タイミング信号TMとクロック信号CLKに同期して、読み出し信号を生成し、この読み出し信号によりデジタル映像信号Viに重畳する付加情報信号FSを出力し、SS信号生成部25に供給する。この場合、付加情報信号FSはクロックCLKにより付加情報信号列としてSS信号生成部25に供給される。
【0034】拡散同期タイミング信号TMは、付加情報信号FSのスペクトラム拡散に用いるPN符号列の同期タイミング信号であり、この実施の形態において、この拡散同期タイミング信号TMは、垂直同期信号VDに同期し、1垂直区間を1周期とする信号として生成されている。
【0035】SS信号生成部25は、拡散符号としてPN(Pseudorandom Noize;疑似ランダム雑音)符号列を生成し、このPN符号列を用いて付加情報発生部24からの付加情報信号FSをスペクトラム拡散する。
【0036】図4は、このSS信号生成部25の構成例を示す図である。この図4に示すように、SS信号生成部25は、PN符号列生成部251と、乗算器252とを備えている。
【0037】PN符号列生成部251には、クロック信号CLKと、イネーブル信号ENと、拡散同期タイミング信号(初期化信号)TMが供給される。イネーブル信号ENは、PN符号列生成部251を動作状態にするための信号であり、この実施の形態のおいては、記録装置30に電源が投入されることにより生成されて、PN符号列生成部251に供給される。
【0038】PN符号列生成部251は、イネーブル信号ENに応じて動作が可能な状態になる。そして、PN符号列生成部251は、拡散同期タイミング信号TMによりリセットされて、PN符号列をその先頭から生成するものであり、この実施の形態では、クロック信号CLKに同期してPN符号列PS(図5(C)参照)を発生する。
【0039】図6は、PN符号列生成部251の構成例を示す図である。この例のPN符号列生成部251は、例えば12段のシフトレジスタを構成する12個のDフリップフロップREG1〜REG12と、このシフトレジスタの適宜のタップ出力を演算するイクスクルーシブオア回路EX−OR1〜EX−OR3とからなっている。そして、図6に示すPN符号列生成部251は、上述したように、拡散同期タイミング信号TM、クロック信号CLK、イネーブル信号ENに基づいて、M系列のPN符号列PSを発生する。
【0040】このPN符号列生成部251で生成されたPN符号列PSは、乗算器252に供給される。一方、付加情報発生部24からの付加情報信号列FSが、この乗算器252に供給される。
【0041】乗算部252は、PN符号列生成部251からのPN符号列PSを用いて、付加情報信号FSをスペクトラム拡散する。この乗算部252からは、付加情報信号FSがスペクトラム拡散された信号であるスペクトラム拡散信号SFが得られる。
【0042】こうして、SS信号生成部25で生成されたスペクトラム拡散信号SFは、重畳部22に供給される。重畳部22は、デジタル映像信号Viに対して、このスペクトラム拡散信号を重畳する処理を行う。そして、このスペクトラム拡散信号が重畳されたデジタル映像信号を書き込み部26に供給する。
【0043】書き込み部26は、重畳部22からのスペクトラム拡散信号が重畳されたデジタル映像信号について、必要な圧縮符号化などの処理を行った後、記録媒体27に記録する。
【0044】この場合、前述もしたように、スペクトラム拡散信号は、映像信号をモニターに供給して映像を表示したときに、その映像を乱さない微小レベルでデジタル映像信号Viに対して重畳される。例えば、1画素分を8ビットで表現するようにする場合に、この8ビットサンプルのデジタル映像信号の最下位ビットやその次のビット目に、スペクトラム拡散信号を加算して重畳するようにする。
【0045】図7は、スペクトラム拡散信号と、映像信号との関係をスペクトルで示したものである。付加情報信号は、これに含まれる情報量は少なく、低ビットレートの信号であり、図7(a)に示されるように狭帯域の信号である。これにスペクトラム拡散を施すと、図7(b)に示すような広帯域幅の信号となる。このときに、スペクトラム拡散信号レベルは帯域の拡大比に反比例して小さくなる。
【0046】このスペクトラム拡散信号を、重畳部22で映像信号に重畳させるのであるが、この場合に、図7(c)に示すように、映像信号のダイナミックレンジより小さいレベルで、スペクトラム拡散信号を重畳させる。このように重畳することにより映像信号の劣化がほとんど生じないようにすることができる。したがって、スペクトラム拡散信号が重畳された映像信号がモニター受像機に供給されて、映像が再生された場合に、スペクトラム拡散信号の影響はほとんどなく、良好な再生映像が得られるものである。
【0047】しかし、後述するように、重畳されたスペクトラム拡散信号を検出するために、スペクトラム逆拡散を行うと、図7(d)に示すように、スペクトラム拡散信号が再び狭帯域の信号として復元される。十分な帯域拡散率を与えることにより、逆拡散後の付加情報信号の電力が情報信号を上回り、検出可能となる。
【0048】この場合、映像信号に重畳された付加情報信号は、映像信号と同一時間、同一周波数内に重畳されるため、周波数フィルタや単純な情報の置き換えでは削除および修正が不可能である。
【0049】したがって、必要な付加情報信号を映像信号などの情報信号に重畳して記録することにより、映像信号に付随して、付加情報信号を確実に伝送することができる。しかも、上述の実施の形態のように、映像信号などの情報信号に比べて低い信号電力でスペクトラム拡散された付加情報信号を情報信号に重畳するようにした場合には、情報信号の劣化を最小にすることができる。
【0050】したがって、付加情報信号として、例えば複製防止用信号を映像信号などの情報信号に重畳した場合には、複製防止用信号の改ざんや除去が上述のように困難であるので、不正な複製を確実に防止することができる複製防止制御が可能になる。
【0051】また、上述の構成においては、垂直同期信号を基準信号とした、垂直周期のPN符号列を用いてスペクトラム拡散を行うようにしたので、このスペクトラム拡散信号をデジタル映像信号から検出する場合に必要となる逆スペクトラム拡散用のPN符号列は、デジタル映像信号Viから検出した垂直同期信号に同期した信号に基づき容易に生成することができる。すなわち、例えばスライディング相関器などを用いた逆拡散のためのPN符号の同期制御は不要となる。このように、容易に逆拡散用のPN符号列を生成することができるので、逆スペクトラム拡散を迅速に実行し、迅速にスペクトラム拡散されて映像信号に重畳されている複製防止制御信号などの付加情報信号を検出することができる。
【0052】[スペクトラム拡散信号検出装置の実施の形態]図1は、この発明によるスペクトラム拡散信号検出装置を使用したデジタル映像信号の複製システムの構成を示すもので、再生装置部30と記録装置部40を備える。そして、再生装置部30で記録媒体27から再生されて得られるデジタル映像信号が記録装置部40に供給され、この記録装置部40において、デジタル映像信号に付加されているスペクトラム拡散信号である複製防止制御信号により、新たな記録媒体42へのデジタル映像信号の書き込み(記録)を制御するデジタル情報複製システムの構成とされたものである。
【0053】図1において、記録媒体27、この例ではDVDディスクには、前述したようにして、この例では、付加情報信号として複製防止制御信号がスペクトラム拡散されて重畳されたデジタル映像信号が記録されている。
【0054】この記録媒体27から抽出された情報は、読み出し部31によりデジタル情報に復元される。この場合、例えば情報信号が圧縮符号化されて記録されている場合には、この読み出し部31で、情報信号は伸長復号化される。そして、復元されたデジタル映像信号Siが記録装置部40に入力される。
【0055】記録装置部40では、これに入力されたデジタル映像信号Siは、書き込み部41およびスペクトラム拡散信号検出装置部50に供給される。スペクトラム拡散信号検出装置部50では、デジタル映像信号Siに重畳されているスペクトラム拡散信号を検出して、付加情報信号である複製防止制御信号を復元する。そして、復元した複製防止制御信号を書き込み制御部42に供給する。
【0056】書き込み制御部42は、複製防止制御信号の復元結果に基づいて書き込み部41を制御するための制御信号S42を生成し、これを書き込み部41に供給する。制御信号S42は、デジタル映像信号の記録媒体43の例としてのDVDディスクへの書き込みの許可あるいは禁止を制御するものである。
【0057】書き込み部41は、書き込み制御部42からの制御信号S42が、複製を許可するものであるときは、入力デジタル映像信号Siについて記録ための必要な処理、例えば圧縮符号化をを行って記録媒体43に書き込み、制御信号S42が、複製を禁止するものであるときは、入力デジタル映像信号Siを記録媒体43に書き込まないように制御する。
【0058】スペクトラム拡散信号検出装置部50は、この実施の形態では、AGC回路(自動利得制御回路)51と、スペクトラム拡散付加情報検出部(以下SS付加情報検出部という)52と、タイミング信号生成部53とからなる。なお、図において、SSはスペクトラム拡散の略である。
【0059】AGC回路51は、スペクトラム拡散された付加情報信号であるスペクトラム拡散信号の利得はできるだけ変えずに、主情報信号である映像信号の利得を制御して、映像信号のレベル変化(ばらつき)をできるだけ小さくするようにするものである。なお、前述もしたように、スペクトラム拡散信号が重畳されるのは、映像信号の輝度信号成分であり、このAGC回路51による利得制御は、輝度信号レベルに関するものである。このAGC回路の具体的構成例については、後述する。
【0060】SS付加情報検出部52は、このAGC回路51からの利得制御を受けた信号S51を受けて、逆スペクトラム拡散処理を行い、付加情報信号である複製防止制御信号S52を検出して復元し、書き込み制御部42に供給する。
【0061】この場合、信号51は、信号レベル変化が少なく、平坦なものに利得制御されているので、拡散符号であるPN符号との相関は小さくなる。したがって、この信号S51についてSS付加情報検出部52で逆拡散が行われると、映像信号の成分とPN符号との相関の影響が少なくなり、付加情報信号であるスペクトラム拡散された複製防止制御信号の検出が容易になる。
【0062】タイミング信号生成部53は、図2に示した記録時のタイミング信号生成部23とまったく同様の構成を有するもので、入力デジタル映像信号Siから垂直同期タイミング信号を抽出し、この垂直同期タイミング信号に基づいて、クロック信号CLKおよびPN符号の発生同期タイミング信号TMを生成する。そして、これらクロック信号CLKおよび同期タイミング信号TMを、SS付加情報検出部52に送る。
【0063】図8は、この実施の形態の記録装置部40のSS付加情報検出部52の構成を説明するためのブロック図である。図8に示すように、この例のSS付加情報検出部52は、供給されたデジタル信号S51からスペクトラム拡散された付加情報信号としての複製防止制御信号を検出するための逆拡散部521と、この逆拡散部521により検出された複製防止制御信号を元の複製防止制御信号に復元するデータ判定部522と、複製防止制御信号をスペクトラム拡散しているPN符号を検出するPN符号検出部523と、スペクトラム拡散付加情報検出制御部(以下、SS付加情報検出制御部と略称する)524とを備えている。
【0064】図8に示すように、PN符号検出部523は、PN符号発生部525を備えている。このPN符号発生部525は、図2のスペクトラム拡散信号生成部25のPN符号発生部251(図4)と、同様の構成を備え、PN符号列PSを発生する。SS付加情報検出制御部524は、このPN符号発生部525のPN符号PSの発生タイミングを制御する。
【0065】すなわち、SS付加情報検出制御部524は、タイミング信号生成部53からのクロック信号CLKおよび同期タイミング信号TMの供給を受けて、PN符号発生部525に対するリセット信号REやイネーブル信号等の制御信号を形成し、これをPN符号検出部524のPN符号発生部525に供給する。PN符号発生部525は、イネーブル信号により動作が可能な状態にされる。そして、リセット信号REに応じたタイミング毎に、クロック信号CLKに基づいて、PN符号列を生成する。
【0066】この実施の形態においてPN符号検出部524は、PN符号発生部525で生成したPN符号列と、入力デジタル信号S51との相関を求めることにより、複製防止制御信号をスペクトラム拡散しているPN符号列を検出する。
【0067】PN符号検出部523は、これにおいて生成したPN符号列と、複製防止制御信号をスペクトラム拡散しているPN符号列との相関を求めた結果を示す信号ScをSS付加情報検出制御部524に供給する。この信号Scは、上述のように、PN符号検出部524で、生成したPN符号列と、複製防止制御信号をスペクトラム拡散しているPN符号列との相関を求めた結果、相関が高ければ、レベルの高い信号となり、相関が低ければ、レベルの低い信号となる。
【0068】SS付加情報検出制御部524は、PN符号検出部523からの相関を求めた結果を示す信号Scが、予め決められたレベル以上の信号であるときには、複製防止制御信号をスペクトラム拡散しているPN符号列と、PN符号生成部525において生成したPN符号列との同期が合っている状態であって、複製防止制御信号をスペクトラム拡散しているPN符号列を検出したと判断する。その逆に、PN符号検出部523からの信号Scが、予め決められたレベル以下であれば、複製防止制御信号をスペクトラム拡散しているPN符号列と、PN符号検出部において生成したPN符号列との同期は合っていないと判断する。
【0069】そして、PN符号検出部523において、複製防止制御信号をスペクトラム拡散しているPN符号列が検出されないときには、SS付加情報検出制御部524からのリセット信号REによる制御を受けて、PN符号検出部523は、これより発生させるPN符号列の位相を調整し、前述の相関演算を行い、PN符号列の検出処理を繰り返す。
【0070】また、PN符号検出部523において、複製防止制御信号をスペクトラム拡散しているPN符号列が検出されたときには、SS付加情報検出制御部524は、PN符号検出部523の検出結果に応じて、逆拡散部521に制御信号CT1を送り、PN符号発生部525からのPN符号列PSによる逆スペクトラム拡散を実行させる。また、SS付加情報検出制御部524は、データ判定部522を制御する信号CT2を形成して、これをデータ判定部522に供給する。
【0071】逆拡散部521は、上述のようにして同期生成されたPN符号列PSを用いて、逆スペクトラム拡散を行い、広帯域、微小レベルの信号とされた複製防止制御信号を、元の狭帯域、高レベルの信号として、入力デジタル信号S51から検出する。検出された複製防止制御信号は、データ判定部522に供給される。
【0072】データ判定部242は、検出された複製防止制御信号を復元して、書き込み制御部42に供給する。すなわち、複製防止制御信号が指示する複製制御内容を判定し、その判定結果S52を書き込み制御部42に供給する。
【0073】[AGC回路51の第1の実施例]図9は、AGC回路51の第1の実施例を示すものである。この第1の実施例のAGC回路は、ローパスフィルタ511と、割り算演算器512とからなる。ローパスフィルタ511は、図7(C)に示したように、広帯域に重畳されているスペクトラム拡散信号の周波数成分はできるだけ含まずに、映像信号(輝度信号)の低域成分を抽出するためのものである。
【0074】すなわち、入力デジタル映像信号Siが、図10(A)に示すようなものであった場合、ローパスフィルタ511からは、図10(B)に示すような、その低域成分SLが得られる。なお、図10において、微小信号成分はスペクトラム拡散信号成分を示している。
【0075】この低域成分SLは、割り算演算器512に供給される。この割り算演算器512には、また、入力デジタル映像信号Siが供給されている。そして、この割り算演算器512からは、Si/SLなる演算結果の信号として、図10(C)に示すように、もともとの信号Siの変化が圧縮された状態に利得制御された信号S51が得られる。
【0076】このように信号レベル変化が少なく、平坦なものに利得制御された信号S51と、拡散符号であるPN符号との相関は小さくなる。したがって、この信号S51についてスペクトラム拡散付加情報検出部52で逆拡散が行われると、付加情報であるスペクトラム拡散された複製防止制御信号の検出が容易になる。
【0077】[AGC回路51の第2の実施例]図11は、AGC回路51の第2の実施例を示すもので、この例では、AGC回路51は、ビットシフト回路513で構成される。このビットシフト回路513は、入力デジタル映像信号Siの画素サンプルデータのMSB側のデジットが「0」であったとき、MSBが「1」になるまで、MSB側にビットシフトする回路である。
【0078】例えば、デジタル映像信号Siが1画素サンプル/8ビットの信号であった場合に、図12に示すような、MSB側から[00101010]となっているサンプルデータは、このビットシフト回路513を通ると、[10101000]となり、デジタル値の大きい値側に値がシフトする。すなわち、この例の場合には、デジタル値が逓倍されることになる。
【0079】この結果、例えば、入力デジタル信号Siが8ビット/サンプルのデジタル信号である場合には、アナログ信号レベルに対して図13(A)に示すようなデジタル値の変化をするが、ビットシフト回路513からの信号S51は、図13(B)に示すように、高レベル側に偏ることになるので、レベル変化が小さくなる。なお、図13において、微小信号成分はスペクトラム拡散信号成分を示している。
【0080】したがって、前述の例と同様に、レベル変化が少なく、平坦なものに利得制御された信号S51と、拡散符号であるPN符号との相関は小さくなり、この信号S51についてスペクトラム拡散付加情報検出部52で逆拡散が行われると、付加情報であるスペクトラム拡散された複製防止制御信号の検出が容易になる。しかも、この第2の実施例の場合には、ビットシフト回路だけの簡単な回路構成で、利得制御ができるというメリットもある。
【0081】なお、図14に示すように、ビットシフト回路513の出力に対して、その出力のMSB側から2ビット目が「0」の場合、その出力を1ビットLSB側にシフトした信号を足算することにより、デジタル映像信号Siの取り得るデジタル信号値を、図15(A)に示すような信号を、図15(B)に示すように、さらに広レベル側にシフトして、より小さいレベル変化範囲内に納めるようにすることもできる。
【0082】[他の実施の形態]図16は、この発明によるスペクトラム拡散信号の検出装置の他の実施の形態のブロック図を示すものである。
【0083】この実施の形態では、スペクトラム拡散信号検出装置部50は、ハイパスフィルタ54と、タイミング信号生成部53と、SS付加情報検出部52とからなる。すなわち、図1の実施の形態のAGC回路51に代えて、ハイパスフィルタ54が用いられる点が異なるだけで、他は図1とまったく同様である。
【0084】この場合、ハイパスフィルタ54は、前述のローパスフィルタ511と逆特性、すなわち、ローパスフィルタ511を通過する成分を除く周波数成分がすべて通過するような特性とされる。
【0085】読み出し部31からの信号Siが、このハイパスフィルタ54を通ると、その低域成分が除去されてSS付加情報検出部52に供給される。すなわち、映像信号の明暗の直流分はほとんど除去されることになる。例えば、読み出し部31からの信号Siが、図17(A)に示すような波形変化するものであった場合、ハイパスフィルタ54の出力S54は、図17(B)に示すように、直流分を含む低周波分が除去され、変動周波数が高い成分のみとなる。
【0086】したがって、ハイパスフィルタ54の出力信号S54は、レベル変化が小さいものとなり、拡散符号であるPN符号列との相関が小さくなるため、スペクトラム拡散された付加情報の検出が容易になる。
【0087】なお、以上は、主情報信号が映像信号の場合を例に説明したが、主情報信号は、比較的変動範囲の大きく利得制御可能な信号である場合には、この発明の対象となり得るもので、オーディオ信号やその他の情報信号も、この発明でいう主情報信号となり得るものであることは言うまでもない。
【0088】また、以上は主情報信号がデジタル信号の場合について説明したが、主情報信号はアナログ信号であっても、この発明でいう主情報信号となるものである。
【0089】また、付加情報は、以上の例のような複製防止制御信号に限られるものではなく、著作権情報や、その他、主情報信号と共に伝送したいものであって、容易に欠落して欲しくない情報であれば、どのような情報であってもよい。
【0090】また、以上は、スペクトラム拡散信号が重畳された情報信号が記録されたディスクからの再生信号からスペクトラム拡散信号を検出する場合について説明したが、地上波放送や衛星放送あるいはケーブルテレビ放送などの放送信号に、付加情報をスペクトラム拡散して伝送する場合に、当該放送信号からスペクトラム拡散信号を検出する場合にも、この発明は適用可能である。
【0091】また、スペクトラム拡散に用いる拡散符号としては、PN符号に限られるものではなく、例えばゴールド符号や、その他の拡散符号が用いることができる。
【0092】
【発明の効果】以上説明したように、この発明によれば、スペクトラム拡散された付加情報が重畳された信号について、その変化を小さくするように利得制御したことにより、スペクトラム拡散信号の検出が容易になる。このため、スペクトラム拡散信号を主情報信号に微小レベルで重畳することが容易になる。
【図面の簡単な説明】
【図1】この発明によるスペクトラム拡散信号検出装置の実施の形態を適用したシステムの例を示すブロック図である。
【図2】主情報信号にスペクトラム拡散信号を重畳して記録する記録システムを説明するための図である。
【図3】図2のシステムの一部のブロック図である。
【図4】図2のシステムの一部のブロック図である。
【図5】図2の記録システムの拡散同期のタイムチャートを示す図である。
【図6】PN符号発生部の一例を示す図である。
【図7】主情報信号への付加情報へのスペクトラム拡散を説明するための図である。
【図8】図1の実施の形態のスペクトラム拡散付加情報検出部の構成例を示す図である。
【図9】図1の実施の形態のAGC回路の第1の実施例を示す図である。
【図10】図9のAGC回路の実施例の動作を説明するための図である。
【図11】図1の実施の形態のAGC回路の第2の実施例を示す図である。
【図12】図12の実施例の動作を説明するための図である。
【図13】図12の実施例の動作を説明するための図である。
【図14】図12の実施例の変形例の動作を説明するための図である。
【図15】図12の実施例の変形例の動作を説明するための図である。
【図16】この発明によるスペクトラム拡散信号の検出装置の他の実施の形態のブロック図である。
【図17】図16の実施の形態を説明するための図である。
【図18】主情報信号に付加情報を付加する従来例を示す図である。
【符号の説明】
30…再生装置部、40…記録装置部、41…書き込み部、42…書き込み制御部、50…スペクトラム拡散信号検出装置部、51…AGC回路、52…スペクトラム拡散付加情報検出部、53…タイミング信号生成部、511…ローパスフィルタ、512…割り算演算器、513…ビットシフト回路
【特許請求の範囲】
【請求項1】主情報信号に、付加情報信号がスペクトラム拡散されたスペクトラム拡散信号が重畳された入力信号から、前記スペクトラム拡散信号を検出する方法であって、前記入力信号の、主として前記主情報信号の利得を制御して、前記主情報信号の変化を小さくし、前記主情報信号の変化が小さくなった前記入力信号について、逆スペクトラム拡散を施して、前記スペクトラム拡散信号を検出するようにすることを特徴とするスペクトラム拡散信号検出方法。
【請求項2】主情報信号に、付加情報信号がスペクトラム拡散されたスペクトラム拡散信号が重畳された入力信号から、前記スペクトラム拡散信号を検出する装置であって、前記入力信号の、主として前記主情報信号の利得を、前記主情報信号の変化を小さくするように制御する利得制御部と、前記利得制御部からの前記主情報信号の変化が小さくなった信号について、逆スペクトラム拡散を施して、前記スペクトラム拡散信号を検出するスペクトラム拡散信号検出部と、を備えることを特徴とするスペクトラム拡散信号検出装置。
【請求項3】前記利得制御部は、前記入力信号中の主として前記主情報信号の周波数成分を抽出するフィルタと、このフィルタからの信号により、前記入力信号を割り算演算する演算手段とからなることを特徴とする請求項2に記載のスペクトラム拡散信号検出装置。
【請求項4】前記入力信号は、デジタル信号であって、前記利得制御部は、各サンプルデータごとに、データを逓倍する方向にビットシフトする回路により構成されることを特徴とする請求項2に記載のスペクトラム拡散信号検出装置。
【請求項5】主情報信号に、付加情報信号がスペクトラム拡散されたスペクトラム拡散信号が重畳された入力信号から、前記スペクトラム拡散信号を検出する装置であって、前記入力信号の低周波分を除去するためのハイパスフィルタと、前記ハイパスフィルタからの信号について、逆スペクトラム拡散を施して、前記スペクトラム拡散信号を検出するスペクトラム拡散信号検出部と、を備えることを特徴とするスペクトラム拡散信号検出装置。
【請求項1】主情報信号に、付加情報信号がスペクトラム拡散されたスペクトラム拡散信号が重畳された入力信号から、前記スペクトラム拡散信号を検出する方法であって、前記入力信号の、主として前記主情報信号の利得を制御して、前記主情報信号の変化を小さくし、前記主情報信号の変化が小さくなった前記入力信号について、逆スペクトラム拡散を施して、前記スペクトラム拡散信号を検出するようにすることを特徴とするスペクトラム拡散信号検出方法。
【請求項2】主情報信号に、付加情報信号がスペクトラム拡散されたスペクトラム拡散信号が重畳された入力信号から、前記スペクトラム拡散信号を検出する装置であって、前記入力信号の、主として前記主情報信号の利得を、前記主情報信号の変化を小さくするように制御する利得制御部と、前記利得制御部からの前記主情報信号の変化が小さくなった信号について、逆スペクトラム拡散を施して、前記スペクトラム拡散信号を検出するスペクトラム拡散信号検出部と、を備えることを特徴とするスペクトラム拡散信号検出装置。
【請求項3】前記利得制御部は、前記入力信号中の主として前記主情報信号の周波数成分を抽出するフィルタと、このフィルタからの信号により、前記入力信号を割り算演算する演算手段とからなることを特徴とする請求項2に記載のスペクトラム拡散信号検出装置。
【請求項4】前記入力信号は、デジタル信号であって、前記利得制御部は、各サンプルデータごとに、データを逓倍する方向にビットシフトする回路により構成されることを特徴とする請求項2に記載のスペクトラム拡散信号検出装置。
【請求項5】主情報信号に、付加情報信号がスペクトラム拡散されたスペクトラム拡散信号が重畳された入力信号から、前記スペクトラム拡散信号を検出する装置であって、前記入力信号の低周波分を除去するためのハイパスフィルタと、前記ハイパスフィルタからの信号について、逆スペクトラム拡散を施して、前記スペクトラム拡散信号を検出するスペクトラム拡散信号検出部と、を備えることを特徴とするスペクトラム拡散信号検出装置。
【図1】
【図2】
【図3】
【図9】
【図11】
【図12】
【図4】
【図5】
【図6】
【図14】
【図18】
【図7】
【図8】
【図10】
【図13】
【図15】
【図16】
【図17】
【図2】
【図3】
【図9】
【図11】
【図12】
【図4】
【図5】
【図6】
【図14】
【図18】
【図7】
【図8】
【図10】
【図13】
【図15】
【図16】
【図17】
【公開番号】特開平11−88227
【公開日】平成11年(1999)3月30日
【国際特許分類】
【出願番号】特願平9−237276
【出願日】平成9年(1997)9月2日
【出願人】(000002185)ソニー株式会社 (34,172)
【公開日】平成11年(1999)3月30日
【国際特許分類】
【出願日】平成9年(1997)9月2日
【出願人】(000002185)ソニー株式会社 (34,172)
[ Back to top ]