説明

スペクトルコンセントレータの使用で効率が高められたソーラーモジュール

本明細書では、スペクトルコンセントレータを含むソーラーモジュールが説明される。一実施形態では、ソーラーモジュールは、1組の太陽電池セルと、この1組の太陽電池セルに光学的に結合されたスペクトルコンセントレータとを含む。スペクトルコンセントレータは、(1)入射太陽放射を収集し、(2)この入射太陽放射を実質的に単色の放出放射に変換し、さらに(3)この実質的に単色の放出放射を前記1組の太陽電池セルに伝えるように構成されている。

【発明の詳細な説明】
【関連出願の相互参照】
【0001】
[0001]この出願は、2007年6月22日に出願された米国特許仮出願第60/945,869号明細書及び2007年10月2日に出願された米国特許仮出願第60/977,067号明細書の優先権を主張し、これらの出願の開示は、その全体が参照により本明細書に組み込まれる。
【技術分野】
【0002】
[0002]本発明は、一般にソーラーモジュールに関する。より詳細には、本発明は、スペクトルコンセントレータ(spectral concentrator)を含むソーラーモジュールに関する。
【背景技術】
【0003】
[0003]ソーラーモジュールは、太陽放射からのエネルギーを電気に変換するように動作し、この電気は外部負荷に供給されて有用な仕事を行う。ソーラーモジュールは、一般に、1組の太陽電池(「PV」)セルを含み、これらの太陽電池セルは、並列、直列、又はこれらの組合せで接続されることがある。最も一般的な型のPVセルは、結晶シリコンに基づいたp−n接合デバイスである。他の型のPVセルは、非晶質シリコン、多結晶シリコン、ゲルマニウム、有機材料、及びガリウム砒素などのIII−V族半導体材料に基づくことがある。
【0004】
[0004]既存のソーラーモジュールの動作中に、入射太陽放射は、PVセルの表面より下に入り込み、PVセルの中で吸収される。太陽放射が表面より下に入り込む深さは、PVセルの吸収係数に依存することがある。シリコンに基づいたPVセルの場合、シリコンの吸収係数は太陽放射の波長で変わる。例えば、900nmの太陽放射に対して、シリコンは約100cm−1の吸収係数を有し、この太陽放射は、約100μmの深さまで入り込むことができる。それに比べて、450nmの太陽放射に対して、吸収係数は約10cm−1でより大きく、太陽放射は約1μmの深さまで入り込むことができる。PVセル内の特定の深さで、太陽放射の吸収は電子−正孔対の形をした電荷担体を生成する。電子は1つの電極を通ってPVセルから出るが、一方で、正孔は別の電極を通ってPVセルから出る。正味の効果は、入射太陽放射によって駆動されたPVセルを通り抜ける電流の流れである。全入射太陽放射を有用な電気エネルギーに変換できないことは、ソーラーモジュールの損失又は非能率を表す。
【0005】
[0005]現在のソーラーモジュールは、一般に、入射太陽放射を有用な電気エネルギーに効率よく変換する能力に関していくつかの技術的限界に苦しんでいる。1つの重要な損失メカニズムは、一般に、入射太陽スペクトルとPVセルの吸収スペクトルの間の不整合から派生している。シリコンに基づいたPVセルの場合、シリコンのバンドギャップエネルギーよりも大きなエネルギーを有する光子は、過剰エネルギーを有する光励起電子−正孔対の生成を引き起こすことがある。そのような過剰エネルギーは、一般に、電気エネルギーに変換されず、むしろ一般に、熱い電荷担体の緩和又は熱化を介して熱として失われる。この熱はPVセルの温度を上昇させることができ、結果として、電子−正孔対を生成する能力の点でPVセルの効率を低下させることがある。いくつかの例で、PVセルの効率は、温度が1度上昇するごとに約0.5%減少することがある。この熱化損失と共に、シリコンのバンドギャップエネルギーよりも小さなエネルギーを有する光子は一般に吸収されず、したがって一般に電気エネルギーへの変換に貢献しない。その結果として、シリコンのバンドギャップエネルギーに近い小さな範囲の入射太陽スペクトルが、有用な電気エネルギーに効率よく変換され得る。
【0006】
[0006]また、PVセルの接合設計に従って、電子−正孔対の電荷分離は、一般に空乏領域に限られ、この空乏領域は約1μmの厚さに限定されることがある。空乏領域から拡散長又はドリフト長よりも遠く離れたところで生成された電子−正孔対は、一般に電荷分離しないので、一般に、電気エネルギーへの変換に寄与しない。空乏領域は、一般に、PVセルの中でPVセルの表面より下の特定の深さのところに位置付けされる。入射太陽スペクトルにわたってシリコンの吸収係数が変化することは、PVセルの効率を低下させる妥協を、空乏領域の深さ及び他の特性に関して強制的に押し付けることがある。例えば、特定の深さの空乏領域が1つの波長の太陽放射には望ましいことがあるが、この同じ深さがより短い波長の太陽放射には望ましくないことがある。特に、より短い波長の太陽放射は、より少ない程度まで表面の下に入り込むことができるので、生成される電子−正孔対は、空乏領域から遠く離れすぎていて電流に貢献することができないことがある。
【0007】
[0007]本明細書で説明されるソーラーモジュール及び関連した方法を開発する必要が生じたのは、この背景に対抗してである。
【発明の概要】
【課題を解決するための手段】
【0008】
[0008]本発明の実施形態は、入射太陽放射の有用な電気エネルギーへの変換に関して高められた効率を有するソーラーモジュールに関する。一実施形態では、ソーラーモジュールは、1組の太陽電池セルと、この1組の太陽電池セルに光学的に結合されたスペクトルコンセントレータとを含む。スペクトルコンセントレータは、(1)入射太陽放射を収集し、(2)入射太陽放射を実質的に単色の放出放射に変換し、さらに(3)実質的に単色の放出放射を前記1組の太陽電池セルに伝えるように構成されている。
【0009】
[0009]本発明の他の態様及び実施形態も考えられる。上記の概要及び以下の詳細な説明は、本発明をどんな特定の実施形態にも限定する意図でなく、ただ本発明のいくつかの実施形態を説明する意図だけである。
【0010】
[0010]本発明のいくつかの実施形態の本質及び目的をより適切に理解するために、添付の図面に関連して行われる以下の詳細な説明を参照すべきである。
【図面の簡単な説明】
【0011】
【図1】本発明の様々な実施形態に従って実現されたソーラーモジュールを示す図である。
【図2】本発明の他の実施形態に従って実現されたソーラーモジュールを示す図である。
【図3】本発明の他の実施形態に従って実現されたソーラーモジュールを示す図である。
【図4】本発明の他の実施形態に従って実現されたルミネセンススタックの態様及び可能性のある損失メカニズムを示す図である。
【図5】本発明の様々な実施形態に従った、ソーラーモジュールの光学的、電気的、及び機械的構造に関係した特徴を示す図である。
【図6】本発明の様々な実施形態に従った、ソーラーモジュールの光学的、電気的、及び機械的構造に関係した特徴を示す図である。
【図7】本発明の様々な実施形態に従った、ソーラーモジュールの光学的、電気的、及び機械的構造に関係した特徴を示す図である。
【図8】本発明の実施形態に従ったUD−930の入射太陽スペクトルと測定された吸収及び発光スペクトルとを示す組合せ図である。
【発明を実施するための形態】
【0012】
概要
[0017]本発明の実施形態は、入射太陽放射の有用な電気エネルギーへの変換に関して高められた効率を有するソーラーモジュールに関する。いくつかの実施形態では、ソーラーモジュールは、スペクトルコンセントレータと、このスペクトルコンセントレータに光学的に結合された1組のPVセルとを含む。スペクトルコンセントレータは、(1)入射太陽放射を収集すること、(2)入射太陽放射を、PVセルのバンドギャップエネルギーに近い実質的に単色の放射に変換すること、及び(3)変換された放射をPVセルに伝えることを含めていくつかの動作を行うことができ、その変換された放射は有用な電気エネルギーに変換されることがある。入射太陽放射の広い範囲のエネルギーを、PVセルのバンドギャップエネルギーに合わされた狭帯域のエネルギーに変換することによって、効率の著しい改善を達成することができる。その上、PVセルの設計は、この狭帯域のエネルギーに基づいて最適化可能であり、又は、そうでなければ調整可能である。
【0013】
[0018]本明細書で説明されるように、ソーラーモジュールの効率のさらなる改善は、スペクトルコンセントレータの中に適切なルミネセンス材料を組み込むことによって、さらにスペクトルコンセントレータの設計において共振空洞効果を利用することによって達成することができる。また、本明細書では、ソーラーモジュールの光学的、電気的、及び機械的構造に関係した特有の特徴が説明される。これらの特徴には、二面又は両面照明を有する垂直接合PVセル並びに一体化ダイオード及び他の電気回路がある。これらの特徴は、低抵抗損失の電気接続及びPVセルに対する低熱負荷と共に、容易に組み立てられるソーラーモジュールに一体化することができる。
【0014】
定義
[0019]以下の定義は、本発明のいくつかの実施形態に関して説明される要素のいくつかに当てはまる。これらの定義は、同様に本明細書でさらに詳しく述べられることがある。
【0015】
[0020]本明細書で使用されるときに、「ある1つの(a、an)」及び「その(the)」は、背景が違った風に明確に指示しない限り、複数の指示対象を含む。したがって、例えば、ある1つのルミネセンス材料についての言及は、背景が違った風に明確に指示しない限り、複数のルミネセンス材料を含むことができる。
【0016】
[0021]本明細書で使用されるときに、「1組」という用語は、1つ又は複数の要素の集まりを意味する。したがって、例えば、層の1組は、単一の層又は複数の層を含むことができる。1組の要素は、その1組の構成要素と言われることがある。1組の要素は、同じであることがあり、又は違っていることがある。いくつかの例では、1組の要素は、1つ又は複数の共通の特性を共有することがある。
【0017】
[0022]本明細書で使用されるときに、「随意の」又は「随意に」という用語は、後で記述される事象又は状況が起こることがあり又は起こらないことがあること、及び、その記述はその事象又は状況が起こる場合と起こらない場合とを含むことを意味する。
【0018】
[0023]本明細書で使用されるときに、「紫外範囲」という用語は、約5ナノメートル(「nm」)から約400nmまでの波長の範囲を意味する。
【0019】
[0024]本明細書で使用されるときに、「可視範囲」という用語は、約400nmから約700nmまでの波長の範囲を意味する。
【0020】
[0025]本明細書で使用されるときに、「赤外範囲」という用語は、約700nmから約2ミリメートル(「mm」)までの波長の範囲を意味する。赤外範囲は、約700nmから約5マイクロメートル(「μm」)までの波長の範囲を意味する「近赤外範囲」と、約5μmから約30μmまでの波長の範囲を意味する「中間赤外範囲」と、約30μmから約2mmまでの波長の範囲を意味する「遠赤外範囲」とを含む。
【0021】
[0026]本明細書で使用されるときに、「反射」、「反射する」及び「反射性の」という用語は、光の「曲がり」又は「偏向」を意味し、「反射器」は、そのような曲がり又は偏向を引き起こすか誘起するか、又は、そうではなくてそのような曲がり又は偏向に関与する物体を意味する。光の曲がり又は偏向は、鏡面反射の場合などで実質的に単一方向であることがあり、又は、拡散反射又は散乱の場合などで複数方向であることがある。一般に、材料に入射する光と材料から反射される光は、同じか異なる波長を有することがある。
【0022】
[0027]本明細書で使用されるときに、「ルミネセンス」、「ルミネセンスを示す」及び「ルミネセンスの」という用語は、エネルギー励起に応答した光の放出を意味する。ルミネセンスは、原子又は分子の励起電子状態からの緩和に基づいて起こることがあり、例えば、化学ルミネセンス、エレクトロルミネセンス、フォトルミネセンス、熱ルミネセンス、摩擦ルミネセンス、及びこれらの組合せを含むことがある。例えば、蛍光と燐光を含むことができるフォトルミネセンスの場合には、励起電子状態は、光の吸収などの光励起に基づいて生成されることがある。一般に、材料に入射した光と材料によって放出された光とは、同じか違った波長を有することがある。
【0023】
[0028]フォトルミネセンスに関して本明細書で使用されるときに、「量子効率」という用語は、入力光子の数に対する出力光子の数の比を意味する。フォトルミネセンス材料の量子効率は、その材料の「内部量子効率」に関して特徴付けられることがあり、この内部量子効率は、フォトルミネセンス材料によって吸収される光子の数に対するフォトルミネセンス材料によって放出される光子の数の比を意味する。いくつか例では、フォトルミネセンス材料は、太陽放射にさらされる構造の中に含まれることがあり、その構造は、放出された光をPVセルの方へ向け、誘導し、又は伝播することができる。そのような例では、量子効率の他の特徴付けは、その構造の「外部量子効率」であることがあり、外部量子効率は、構造内のフォトルミネセンス材料によって吸収される太陽光子の数に対するPVセルに到達する光子の数の比を意味する。代わりに、構造の量子効率は、その構造の「総合外部量子効率」に関して特徴付けられることがあり、この総合外部量子効率は、構造に入射する太陽光子の数に対するPVセルに到達する光子の数の比を意味する。理解することができるように、構造の総合外部量子効率は、フォトルミネセンス材料に到達することができる入射太陽光子の割合を減少させる反射などの可能性のある損失を説明することができる。量子効率のさらに他の特徴付けは、「エネルギー量子効率」であることがあり、エネルギー量子効率では、上で述べられた様々な比が光子の数の比ではなくエネルギーの比によって表されることがある。ダウン−コンバージョンの場合には、すなわち、より高いエネルギーの光子が吸収されてより低いエネルギーの放出光子に変換される場合には、エネルギーをベースにした量子効率は、光子数をベースにした対応する量子効率よりも小さいことがある。
【0024】
[0029]本明細書で使用されるときに、「吸収スペクトル」という用語は、ある範囲の波長にわたって光の吸収を表現したものを意味する。いくつかの例では、吸収スペクトルは、材料に入射する光の波長の関数としての材料の吸光度(又は透過率)のプロットを意味することがある。
【0025】
[0030]本明細書で使用されるときに、「発光スペクトル」という用語は、ある範囲の波長にわたって光の放出を表現したものを意味する。いくつかの例では、発光スペクトルは、材料によって放出される光の強度を、放出された光の波長の関数としてプロットしたものを意味することがある。
【0026】
[0031]本明細書で使用されるときに、「励起スペクトル」という用語は、ある範囲の波長にわたった光の放出の別の表現を意味する。いくつかの例では、励起スペクトルは、材料によって放出される光の強度を、材料に入射する光の波長の関数としてプロットしたものを意味することがある。
【0027】
[0032]本明細書で使用されるときに、「半値全幅」又は「FWHM」という用語は、スペクトル幅の大きさを意味する。発光スペクトルの場合には、FWHMは、ピーク強度値の半分での発光スペクトルの幅を意味することがある。
【0028】
[0033]吸収スペクトル又は励起スペクトルに関して本明細書で使用されるときに、「実質的に一様な」という用語は、波長の変化に対して実質的に変化しないことを意味する。いくつかの例では、ある範囲の波長の範囲内で吸光度又は強度値が、10パーセント未満又は5パーセント未満など、平均強度値に対して20パーセント未満の標準偏差を示す場合に、スペクトルは、その範囲の波長にわたって実質的に一様であると言われることがある。
【0029】
[0034]発光スペクトルに関して本明細書で使用されるときに、「実質的に単色の」という用語は、波長の狭い範囲にわたった光の放出を意味する。いくつかの例では、スペクトル幅が、FWHMで100nm以下、FWHMで80nm以下、又はFWHMで50nm以下など、FWHMで120nm以下である場合には、発光スペクトルは実質的に単色であると言われることがある。
【0030】
[0035]本明細書で使用されるときに、「ナノメートル範囲」又は「nm範囲」という用語は、約1nmから約1μmまでの寸法の範囲を意味する。nm範囲は、約1nmから約10nmまでの寸法の範囲を意味する「下nm範囲」、約10nmから約100nmまでの寸法の範囲を意味する「中間nm範囲」、及び約100nmから約1μmまでの寸法の範囲を意味する「上nm範囲」を含む。
【0031】
[0036]本明細書で使用されるときに、「マイクロメートル範囲」又は「μm範囲」という用語は、約1μmから約1mmまでの寸法の範囲を意味する。μm範囲は、約1μmから約10μmまでの寸法の範囲を意味する「下μm範囲」、約10μmから約100μmまでの寸法の範囲を意味する「中間μm範囲」、及び約100μmから約1mmまでの寸法の範囲を意味する「上μm範囲」を含む。
【0032】
[0037]本明細書で使用されるときに、「サイズ」という用語は、物体の特徴的な寸法を意味する。球形の粒子の場合、粒子のサイズは、粒子の直径を意味することがある。非球形の粒子の場合、粒子のサイズは、粒子の様々な直交寸法の平均を意味することがある。したがって、例えば、回転楕円体である粒子のサイズは、粒子の長軸と短軸の平均を意味することがある。1組の粒子を特定のサイズを有すると言うとき、粒子はそのサイズを中心としたサイズの分布を有することがあると考えられる。したがって、本明細書で使用されるときに、1組の粒子のサイズは、平均のサイズ、中間のサイズ、又はピークのサイズなどの、サイズの分布の代表的なサイズを意味することがある。
【0033】
[0038]本明細書で使用されるときに、「ナノ粒子」という用語は、nm範囲のサイズを有する粒子を意味する。ナノ粒子は、箱状、立方体状、円柱状、平円盤状、球状、回転楕円体状、四面体状、三脚状、管状、ピラミッド状、又は任意の他の規則的な又は不規則な形などの様々な形のどれかであることがあり、さらに、様々な材料のどれかから形成されることがある。いくつかの例では、ナノ粒子は、第1の材料から形成されたコアを含むことがあり、このコアは、随意に、第2の材料から形成されたコーティング又はシェルによって囲繞されていることがある。第1の材料及び第2の材料は、同じか異なることがある。ナノ粒子の外形に依存して、ナノ粒子は、量子閉じ込めに関連したサイズ依存特性を示すことがある。しかし、ナノ粒子が量子閉じ込めに関連したサイズ依存特性を実質的に欠いていることがあり、又はそのようなサイズ依存特性を低い程度で示すことがあることも考えられる。
【0034】
[0039]本明細書で使用されるときに、「ドーパント」という用語は、添加物又は不純物として材料中に存在する化学的な存在物を意味する。いくつかの例では、材料中のドーパントの存在は、化学的、磁気的、電子的、又は光学的特性などの、材料の1組の特性を変えることがある。
【0035】
ソーラーモジュール
[0040]図1は、本発明の様々な実施形態に従って実現されたソーラーモジュール100、102、及び104を示す。
【0036】
[0041]図1に示されるように、ソーラーモジュール100はPVセル106を含み、このPVセル106は単結晶シリコンから形成されたp−n接合デバイスである。しかし、PVセル106は、また、他の適切な光活性材料から形成されることがある。図1に示されるように、PVセル106は、PVセル106の側面108に入射する放射を受け取り、吸収するように構成されている。とは言っても、PVセル106の他の表面もまた関与することがある。
【0037】
[0042]図示の実施形態では、ソーラーモジュール100はまたスペクトルコンセントレータ110を含み、スペクトルコンセントレータ110は、PVセル106の側面108に隣接する側面112を有するスラブとして形成されている。スペクトルコンセントレータ110は、太陽放射の比較的広い範囲のエネルギーを、PVセル106を形成するシリコン又は他の光活性材料のバンドギャップエネルギーに近い狭帯域のエネルギーに変換することによって、スペクトルコンセントレ−ション(spectral concentration)を行う。今度は、スペクトルコンセントレータ110から放出される狭帯域放射は、PVセル106の空乏領域の中で効率よく吸収されることがある。その放出される放射のエネルギーをPVセル106のバンドギャップエネルギーに合わせることによって、90パーセント以上の効率を含めて遥かに高い太陽エネルギー変換効率を達成することができる。
【0038】
[0043]ソーラーモジュール100の動作中に、入射太陽放射がスペクトルコンセントレータ110に当たり、スペクトルコンセントレータ110がこの太陽放射を吸収し、実質的に単色のエネルギー帯域の放射を放出する。特に、スペクトルコンセントレータ110は、PVセル106のバンドギャップエネルギーに近いバンドギャップエネルギーEgに対してダウンコンバージョンを行うように構成されている。バンドギャップエネルギーEg以上のエネルギーを有する太陽放射は吸収され、PVセル106のバンドギャップエネルギーに適合するより低いエネルギーを有する放出放射に変換される。このやり方で、熱化は、PVセル106の中ではなくスペクトルコンセントレータ110の中でほとんど起こることがある。スペクトルコンセントレータ110からの放出放射は、スペクトルコンセントレータ110の中で誘導されて、PVセル106の側面108の方へ向けられ、PVセル106がこの放出放射を吸収して電気に変換する。図示の実施形態では、PVセル106は、実質的に単色の放出放射に対して動作するように最適化されるが、入射太陽放射に対しても効率よく動作することができる。
【0039】
[0044]さらに図1を参照すると、ソーラーモジュール102はPVセル114を含み、PVセル114は結晶シリコンから形成されたp−n接合デバイスである。しかし、PVセル114は、また、他の適切な光活性材料から形成されることがある。図1に示されるように、PVセル114は、PVセル114の上面116に入射する放射を受け取り、吸収するように構成されている。とは言っても、PVセル114の他の表面も関与することがある。図示の実施形態では、ソーラーモジュール102は、また、スペクトルコンセントレータ118を含み、スペクトルコンセントレータ118は、PVセル114の上面116に隣接するコーティング、膜、又は層として形成されている。ソーラーモジュール102のある態様は、ソーラーモジュール100に関して上で説明されたのと同様なやり方で実現することができ、したがって、ここではこれ以上説明しない。
【0040】
[0045]ソーラーモジュール102の動作中に、入射太陽放射がスペクトルコンセントレータ118に当たり、スペクトルコンセントレータ118がこの太陽放射を吸収し、実質的に単色のエネルギー帯域の放射を放出する。特に、スペクトルコンセントレータ118は、PVセル114のバンドギャップエネルギーに近いバンドギャップエネルギーEgに対してダウンコンバージョンを行うように構成されている。バンドギャップエネルギーEg以上のエネルギーを有する太陽放射は吸収され、PVセル114のバンドギャップエネルギーに適合するより低いエネルギーを有する放出放射に変換される。このやり方で、熱化は、PVセル114の中ではなくスペクトルコンセントレータ118の中でほとんど起こることがある。スペクトルコンセントレータ118からの放出放射は、下向きにPVセル114の上面116に向けられ、PVセル114がこの放出放射を吸収して電気に変換する。図示の実施形態では、PVセル114は、実質的に単色の放出放射に対して動作するように最適化されるが、入射太陽放射に対しても効率よく動作することができる。
【0041】
[0046]図1に示されるように、ソーラーモジュール104は多接合デバイスであり、異なるバンドギャップエネルギーを有するそれぞれのPVセル122A、122B、及び122Cに光学的に結合されたスペクトルコンセントレータ120A、120B、及び120Cの複数の層を含んでいる。例えば、PVセル122A、122B、及び122Cは、III族材料、IV族材料、V族材料、又はこれらの組合せから形成されることがあり、その結果、バンドギャップエネルギーが約2.5eVから約1.3eVまでの範囲又は約2.5eVから約0.7eVまでの範囲にある。例えば、シリコンは約1.1eVのバンドギャップエネルギーを有し、ゲルマニウムは約0.7eVのバンドギャップエネルギーを有する。ソーラーモジュール104のある態様は、ソーラーモジュール100について上で説明されたのと同様なやり方で実現することができるので、ここではこれ以上説明しない。
【0042】
[0047]ソーラーモジュール104の動作中に、入射太陽放射がスペクトルコンセントレータ120Aに当たり、スペクトルコンセントレータ120Aは、PVセル122Aのバンドギャップエネルギーに近いバンドギャップエネルギーEgAに対してダウンコンバージョンを行うように構成されている。バンドギャップエネルギーEgA以上のエネルギーを有する太陽放射は吸収され、PVセル122Aの方へ誘導される実質的に単色の放出放射に変換され、PVセル122Aがこの放出放射を吸収して電気に変換する。バンドギャップエネルギーEgAよりも低いエネルギーを有する太陽放射はスペクトルコンセントレータ120Aを通過してスペクトルコンセントレータ120Bに当たり、スペクトルコンセントレータ120Bは、PVセル122Bのバンドギャップエネルギーに近いバンドギャップエネルギーEgBに対してダウンコンバージョンを行うように構成されている。バンドギャップエネルギーEgB以上の(且つバンドギャップエネルギーEgAよりも低い)エネルギーを有する太陽放射は吸収され、PVセル122Bの方へ誘導される実質的に単色の放出放射に変換され、PVセル122Bがこの放出放射を吸収して電気に変換する。バンドギャップエネルギーEgBよりも低いエネルギーを有する太陽放射はスペクトルコンセントレータ120Bを通過してスペクトルコンセントレータ120Cに当たり、スペクトルコンセントレータ120Cは、PVセル122Cのバンドギャップエネルギーに近いバンドギャップエネルギーEgCに対してダウンコンバージョンを行うように構成されている。バンドギャップエネルギーEgC以上の(且つバンドギャップエネルギーEgBよりも低い)エネルギーを有する太陽放射は吸収され、PVセル122Cの方へ誘導される実質的に単色の放出放射に変換され、PVセル122Cがこの放出放射を吸収して電気に変換する。図示の実施形態では、バンドギャップエネルギーEgA、EgB、及びEgCは次のように関係付けられている。EgA>EgB>EgC
【0043】
[0048]そのようなやり方で動作することによって、ソーラーモジュール104は、太陽スペクトル内の異なるエネルギー帯域を収集して電気に変換するようにして、ソーラースペクトルの高められた利用を実現する。3つの層が図1に示されているが、ソーラーモジュール104は、特定の実施に依存してもっと多くの又はもっと少ない層を含むことができる。いくつかの例では、太陽エネルギー変換効率は、1つのPVセルが使用されるときの約31パーセントの値から3つのPVセルが使用されるときの約50パーセントの値に、さらに実質的に無限の数のPVセルが使用されるときの約85パーセントの値に向けて高められることがある。
【0044】
[0049]スペクトルコンセントレ−ションの追加の態様及び利点は、本発明の他の実施形態に従って実現されたソーラーモジュール200を示す図2を参照して理解することができる。ソーラーモジュール200はPVセル202を含み、PVセル202は、結晶シリコンの薄いスライス又はストリップから形成されたp−n接合デバイスである。シリコンの薄いスライスを使用することで、シリコン消費の減少が可能になり、このことで、今度は、製造コストの低減が可能になる。シリコンウェーハに対して微細機械加工作業を行って非常に多くのシリコンスライスを形成することができ、シリコンスライスの各々をさらに処理して、PVセル202などのPVセルを形成することができる。PVセル202は、約300μm×約300μm×長さ数センチメートルの寸法又は約250μm×約250μm×長さ約3インチの寸法を有することがある。図2に示されるように、PVセル202は、PVセル202の側面204に入射する放射を受け取り吸収するように構成されている。とは言っても、PVセル202の他の表面も関与することがある。
【0045】
[0050]図示の実施形態では、ソーラーモジュール200はスペクトルコンセントレータ206を含み、スペクトルコンセントレータ206は、PVセル202の側面204に隣接する側面208を有するスラブとして形成されている。スペクトルコンセントレータ206は、太陽放射の比較的広い範囲のエネルギーを、PVセル202の吸収スペクトルに合った比較的狭い実質的に単色のエネルギー帯域に変換する1組のルミネセンス材料を含む。ソーラーモジュール200の動作中に、入射太陽放射がスペクトルコンセントレータ206の上面210に当たり、この入射太陽放射のある部分が上面210の下に入り込み、吸収されて実質的に単色の放出放射に変換される。この放出放射はスペクトルコンセントレータ206の中で横方向に誘導され、この放出放射のある部分がPVセル202の側面204に到達し、PVセル202がこの放出放射を吸収して電気に変換する。
【0046】
[0051]実際上、スペクトルコンセントレータ206は、(1)入射太陽放射を収集すること、(2)入射太陽放射を、PVセル202のバンドギャップエネルギーに近い実質的に単色の放出放射に変換すること、及び(3)放出放射をPVセル202に伝えることを含んだ1組の動作を行い、ここで、放出放射は有用な電気エネルギーに変換されることがある。スペクトルコンセントレータ206は、これらの収集、変換及び伝達動作のそれぞれの1つのために最適化された、又はそうでなければ調整された別個の構造を含むことができる。代わりに、これらの動作の中のいくつかは、共通構造の中で実現されることがある。スペクトルコンセントレータ206によって行われるこれらの動作は、以下でさらに説明される。
【0047】
[0052]収集は、放出放射への変換に備えて入射太陽放射を捕獲すること、又は途中で捕らえることを意味する。スペクトルコンセントレータ206の収集効率は、スペクトルコンセントレータ206内のルミネセンス材料の量及び分布に依存することがある。いくつかの例では、ルミネセンス材料は、入射太陽放射を途中で捕らえることができる1組のルミネセンス中心と見なされることがあり、一般により多くのルミネセンス中心が収集効率を高める。ルミネセンス中心の分布に依存して、入射太陽放射の収集は、スペクトルコンセントレータ206の全体にわたって分布したやり方で起こることがあり、又は、スペクトルコンセントレータ206の1つ又は複数の領域内で起こることがある。収集効率は、また、入射太陽放射がルミネセンス材料に到達できることを含めてスペクトルコンセントレータ206の他の態様に依存することがある。特に、収集効率は、一般に、入射太陽放射の反射を減少させるための反射防止コーティングなどによって、入射太陽放射をルミネセンス材料に適切に光学的に結合することによって改善される。
【0048】
[0053]変換は、入射太陽放射に応答して放射を放出することを意味し、そのような変換の効率は、吸収された太陽光子が放出される光子に変換される確率を意味する。スペクトルコンセントレータ206の変換効率は、内部量子効率を含めてルミネセンス材料のフォトルミネセンス特性に依存することがあるが、また、本明細書でさらに説明されるような共振空洞効果などによる局所的な光学環境とルミネセンス中心の相互作用にも依存することがある。ルミネセンス中心の分布に依存して、入射太陽放射の変換は、スペクトルコンセントレータ206の全体にわたって分布したやり方で起こることがあり、又は、スペクトルコンセントレータ206の1つ又は複数の領域内で起こることがある。また、使用される特定のルミネセンス材料に依存して、変換効率は、ルミネセンス材料によって吸収される入射太陽放射の波長に依存することがある。
【0049】
[0054]伝達は、PVセル202に向かっての放出放射の誘導又は伝播を意味し、そのような伝達の効率は、放出された光子がPVセル202に到達する確率を意味する。スペクトルコンセントレータ206の伝達効率は、放出スペクトルと吸収スペクトルの間の重なりの程度を含めてルミネセンス材料のフォトルミネセンス特性に依存することがあるが、また、本明細書でさらに説明されるような共振空洞効果などによる局所的な光学環境とルミネセンス中心の相互作用にも依存することがある。
【0050】
[0055]これらの動作を行うことによって、スペクトルコンセントレータ206は、いくつかの利点を実現する。特に、PVセル202の代わりに収集動作を行うことによって、スペクトルコンセントレータ206は、シリコン消費の著しい減少を可能にし、このことが、今度は、製造コストの著しい低減を可能にする。いくつかの例では、シリコン消費の量は、約10から約1000分の1に減少されることがある。また、スペクトルコンセントレータ206は、少なくとも2つの効果、すなわち(1)コンセントレ−ション効果及び(2)単色効果、に基づいて太陽エネルギー変換効率を高める。
【0051】
[0056]コンセントレ−ション効果に関して、スペクトルコンセントレータ206は、入射太陽放射の比較的広い範囲のエネルギーをPVセル202のバンドギャップエネルギーに近い狭帯域のエネルギーに変換することによって、スペクトルコンセントレ−ションを行う。入射太陽放射はスペクトルコンセントレータ206の上面210を介して収集され、放出放射はPVセル202の側面204の方へ誘導される。例えば、スペクトルコンセントレータ206の上面210の面積によって表されるような太陽放射収集面積は、例えば、PVセル202の側面204の面積によって表されるようなPVセル202の面積よりも著しく大きいことがある。結果として得られるPVセル202へのコンセントレ−ション係数は、約10から約100の範囲にあることがあり、さらに最高約1000以上であることがある。今度は、コンセントレ−ション係数は、ソーラーモジュール200の開放電圧すなわちVocを大きくすることができ、さらに、PVセル202に到達する放出放射のコンセントレ−ション係数の10ごとに約2パーセント(絶対的)又は10パーセント(相対的)の太陽エネルギー変換効率の向上をもたらすことができる。一般的な太陽放射エネルギー束は約100mWcm−2であり、いくつかの例では、収集、変換、及び伝達動作についてスペクトルコンセントレータ206を最適化することによって、最高10(又は、もっと大きい)のコンセントレ−ション係数が達成されることがある。
【0052】
[0057]単色効果に関して、スペクトルコンセントレータ206から放出される狭帯域放射は、PVセル202によって効率よく吸収されることがあり、PVセル202は、この狭帯域の放出放射で動作するように接合設計の点から最適化することができる。その上、放出放射のエネルギーをPVセル202のバンドギャップエネルギーに合わせることによって、熱化は、PVセル202の中ではなくスペクトルコンセントレータ206の中でほとんど起こることがある。
【0053】
[0058]次に注意は図3に向き、図3は、本発明の他の実施形態に従って実現されたソーラーモジュール300を示す。ソーラーモジュール300は、PVセルの複数の列302A、302B、及び302Cを含み、これらの列は、x方向に沿って約2cmから約10cmだけ互いに間隔をあけて配置されている。3つの列302A、302B、及び302Cが図3に示されているが、特定の実施に依存して、もっと多くの又はもっと少ない列が含まれることがある。図示の実施形態では、列302A、302B、及び302Cの各々は、直列に接続された複数のPVセルを含む。とは言っても、並列接続も考えられる。直列でのPVセルの接続は、出力電圧を大きくするのに役立つことができ、一方で、並列でのPVセルの接続は、出力電流を大きくするのに役立つことができる。列302Aなどの特定の列の中のPVセルはp−n接合デバイスであることがあり、PVセルのp−nの向きは、その列のy方向に沿って交互になることがある。図3に示されるように、列302A、302B、及び302Cの各々は、2面のあるものであり、したがって、2つの側面に入射する放射を受け取り吸収することができる。
【0054】
[0059]図示の実施形態では、ソーラーモジュール300は、また、スペクトルコンセントレータ304を含み、スペクトルコンセントレータ304は、スペクトルコンセントレータ304が収集、変換、及び伝達動作を行うことができるようにする複数の構造を含む。特に、スペクトルコンセントレータ304は基板306を含み、基板306は、光学的に透明又は半透明なガラス、重合体、又は他の適切な材料から形成されている。反射防止層308が、基板306の上面に形成されて入射太陽放射の反射を減少させている。図3に示されるように、スペクトルコンセントレータ304はまたルミネセンススタック310を含み、ルミネセンススタック310は、入射太陽放射を、PVセルの列302A、302B、及び302Cの吸収スペクトルに合った比較的狭い実質的に単色のエネルギー帯域に変換する1組のルミネセンス材料を含む。ルミネセンススタック310は接着層312と保護層314によってサンドイッチ状に挟まれており、これらの接着層312及び保護層314は、ルミネセンススタック310の上面及び底面にそれぞれ隣接している。接着層312は、光学的に透明又は半透明な重合体又は他の適切な接着材料から形成され、ルミネセンススタック310を基板306に結合するのに役立ち、さらにPVセルの列302A、302B、及び302Cに対するルミネセンススタック310の適切な光学的位置合せを実現するのに役立つ。いくつかの例では、接着層312は、また、PVセルの列302A、302B、及び302Cをスペクトルコンセントレータ304から熱的に分離し、したがって加熱の結果としての効率損失を減少させるのに役立つことができる。また、ルミネセンススタック310が基板306の底面に形成されるような具合に、ある実施のために、接着層312が省略可能であることも考えられる。図示の実施形態では、保護層314は、環境条件からルミネセンススタック310を保護するのに役立ち、重合体又は他の適切な材料から形成される。図3に示されないが、放射の伝達に関与しない、スペクトルコンセントレータ304の側端及び表面には、白色塗料又は他の適切な反射材料などのランベルト反射器が形成されることがある。
【0055】
[0060]さらに図3を参照すると、スペクトルコンセントレータ304は、PVセルの列302A、302B、及び302Cのそれぞれの1つを収容するために複数の溝316A、316B、及び316Cを含む。スペクトルコンセントレータ304の製造中に、基板306の上面及び底面に隣接して様々な層が形成されることがあり、基板306及びそれの底面に隣接する層のある部分が、溝316A、316B、及び316Cを形成するために除去されることがある。代わりに、溝316A、316B、及び316Cを形成するために、選択的なコーティング、パターニング、又は堆積技術が実施されることがある。
【0056】
[0061]ソーラーモジュール300の動作中に、入射太陽放射がスペクトルコンセントレータ304の上面に当たり、この入射太陽放射のある部分が基板306及び接着層312を通過し、ルミネセンススタック310に到達する。今度は、ルミネセンススタック310がこの太陽放射を吸収して実質的に単色の放出放射に変換する。この放出放射は、次に、ルミネセンススタック310の中で誘導され、この放出放射のある部分がPVセルの列302A、302B、及び302Cに到達し、PVセルのこれらの列がこの放出放射を吸収して電気に変換する。図3に関して理解できるように、放出放射の誘導は、PVセルの列302A、302B、及び302Cの各々が2つの側面から照らされるようなものであり、それによって太陽エネルギー変換効率を高める。
【0057】
[0062]図4は、本発明の他の実施形態に従って実現されたルミネセンススタック400の態様及び可能性のある損失メカニズムを示す。ルミネセンススタック400はルミネセンス層402を含み、ルミネセンス層402は1組のルミネセンス材料を含む。太陽放射に対して高い吸収係数を有するルミネセンス材料を選ぶことによって、ルミネセンス層402の厚さは、約0.1μmから約2μmまでの範囲、約0.2μmから約1μmまでの範囲、又は約0.2μmから約0.5μmまでの範囲などに減少されることがある。
【0058】
[0063]図4に示されるように、ルミネセンス層402は上部反射器404と下部反射器406によってサンドイッチ状に挟まれており、上部反射器404及び下部反射器406は、ルミネセンス層402の上面及び底面にそれぞれ隣接している。この対の反射器404及び406は、放出放射がPVセルの方へ誘導されるときにルミネセンススタック400から外へ出る放出放射の損失を減少させるのに役立つ。上部反射器404は、入射太陽放射の関連した波長が通過してルミネセンス層402に当たるようにしながら、放出波長全体にわたって全反射的である。下部反射器406は、実質的に全ての波長にわたって全反射的であり、したがって、2路太陽照射を可能にする。特に、ルミネセンス層402を通過する太陽放射のどの残り部分も下部反射器406に当たり、反射器406が太陽放射を反射する。反射された放射は上の方へ向けられてルミネセンス層402に当たり、ルミネセンス層402がこの反射放射を吸収して放出放射に変換することができる。
【0059】
[0064]図示の実施形態では、上部反射器404及び下部反射器406の各々は、複数の誘電体層を含む誘電体スタックとして実現され、誘電体層の数は4から8までの範囲など、2から10までの範囲にある。各誘電体層は、約0.1μmから約0.15μmまでの範囲など、約0.1μmから約0.2μmまでの範囲の厚さを有することができる。ある実施では、誘電体スタックは、異なる誘電体層から形成された交互になる層を含むことがある。上部反射器404及び下部反射器406を形成するために使用されることがある誘電体の例には、シリカ(例えば、SiO又はα−SiO)、アルミナ(例えば、Al)、TiO、SiO2−x、及び他の適切な薄膜誘電体材料がある。上部反射器404及び下部反射器406は、約5から約100までの範囲又は約5から約10までの範囲などの、最高10以上の許容誤差(Q値に関して)を有することができる。
【0060】
[0065]上部反射器404及び下部反射器406を形成する誘電体層の数に依存して、ルミネセンススタック400の全厚さは、約1μmから約2μmまでの範囲又は約1μmから約1.5μmまでの範囲など、約0.4μmから約4μmまでの範囲にあることがある。図4に単一ルミネセンス層402が示されているが、他の実施では複数のルミネセンス層が含まれることがあることは考えられる。これらの複数のルミネセンス層は、互い重なって形成されることがあり、又は複数の誘電体層の間の所々に入れられることがある。
【0061】
[0066]ルミネセンススタック400は、いくつかの製造技術のどれかに従って形成されることがある。例えば、ロールツーロール技術を使用して複数の誘電体層と共にルミネセンス材料を堆積させることができ、これらの誘電体層は連続して堆積されている。代わりに、様々な層は、基板上へ堆積されるのではなく、基板上に積層されることがある。例えば、ルミネセンススタック400は重合体膜から形成されることがあり、ルミネセンス材料が1つの組の膜の上にコーティングされ、それから完全なルミネセンススタック400を形成するように第2の組の膜が積層される。これらの膜は、紫外線適合重合体から形成されることがあり、さらに、屈折率を調整するために、TiOから形成されたものなどのナノ粒子が加えられることがある。これらの膜は、多層の形で押し出し成形され、次に積層されることがあり、又は、連続してコーティングされることがある。また、ルミネセンススタック400を形成するときこれらの膜の1つ又は複数に、ルミネセンス材料が加えられることがある。
【0062】
[0067]さらに他の例として、単一堆積ランでルミネセンススタック400を形成するために、原子層堆積(「ALD」)が使用されることがある。ALDは、一般に、表面上に交互の飽和化学反応を生成するように1組の化学薬品を使用し、結果として、一致性、一様性、再現性、及び厚さの精密な制御のような望ましい特徴を有する自己限定成長を生じさせる。ALDは、一般に、反応物を表面にガス相で連続して導入して連続した単分子層を形成することを含む。例えば、ALDは、CdS又はUD−930を堆積させるために使用されることがある(例えば、セシウムアセタート(又はホルメート)、カーボンテトラヨージド(又は、ヨードホルム)、メチレンヨージド(又は、メチルヨージド)を使用し、さらに塩化第一錫又は有機錫化合物と結合される)。ALDのある態様は、www.sciencedirect.comからオンラインで入手可能なNanu et al., "CuInS2-TiO2 HeterojunctionsSolar Cells Obtained by Atomic Layer Deposition," Thin Solid Films,Vol.431-432, pp.492-496 (2003)、Spiering et al., "Stability Behaviour of Cd-free Cu (In, Ga) Se2Solar Modules with In2S3 Buffer Layer Prepared by AtomicLayer Deposition," Thin Solid Films, Vol. 480-481, pp.195-198 (2005)、及びKlepper et al.,"Growth of Thin Films of Co3O4 by Atomic LayerDeposition," Thin Solid Films (2007)に説明されており、これらの文献の開示は、それらの全体が参照により本明細書に組み込まれる。
【0063】
[0068]さらに図4を参照すると、ルミネセンススタック400の動作が、「通常」動作の場合で示されている。「通常」動作の場合で、且つ共振空洞効果のない場合には、入射太陽放射はルミネセンス中心によって途中で捕らえられ、結果として生じた放射放出は実質的に等方性である。全内部反射角より上の方向に放出された放射は、ルミネセンススタック400の中にとどまり、ルミネセンススタック400に沿って横方向に誘導される。
【0064】
[0069]また、図4には、ルミネセンススタック400の動作中の可能性のある損失の事例が示されている。
(1)非発光再結合:これは、入射太陽放射がルミネセンス中心によって途中で捕らえられるが、放出放射につながらない例を意味する。非発光再結合損失は、高い内部量子効率を有するルミネセンス材料を選ぶことによって、また欠陥又は界面再結合サイトを減少させることによって、減少させることができる。
(2)残留損失円錐:全内部反射角よりも上の方向に放出された放射はルミネセンススタック400の中にとどまるが、全内部反射角より下の方向に放出された放射はルミネセンススタック400を出て行き、放出放射の損失円錐を画定する。全方向性又は等方性放出の場合の放出損失は、損失円錐による最高20パーセントであることがある。ルミネセンス層402の上又は下の誘電体層の数を増加すること、又はルミネセンス層402とそれの周囲の間の屈折率の差異を大きくすることで、損失円錐を小さくすることができる。さらに、本明細書でさらに説明されるように、放出放射の方向を制御し、したがってルミネセンススタック400を出て行く放出放射の部分を減少させるために、共振空洞効果を利用することができる。
(3)散乱:これは、放出放射が散乱中心に当たりルミネセンススタック400を出て行く例を意味する。散乱損失は、ルミネセンススタック400内の材料一様性を高めることによって、及び欠陥又は散乱サイトを減少させることによって、減少させることができる。
(4)自己吸収:ルミネセンススタック400の中にとどまる放出放射は、自己吸収損失を受けることがある。特に、放出放射は、吸収された放射よりも長波長であることがある。すなわち、放出放射はストークスシフトされている。ストークスシフトの大きさが比較的小さい場合には、放出スペクトルと吸収スペクトルの重なりがあることがあり、このことが自己吸収につながることがある。自己吸収損失は、大きなストークスシフトを有するルミネセンス材料を選ぶことによって減少させることができる。また、本明細書でさらに説明されるように、フォトルミネセンス特性を制御しルミネセンス材料の固有ストークスシフトを高めるために、共振空洞効果を利用することができる。
【0065】
[0070]ソーラーモジュールの光学的、電気的、及び機械的構造に関連した追加の特徴は、本発明の様々な実施形態に従って図5、図6、及び図7を参照して説明される。
【0066】
[0071]図5は、ルミネセンススタック504を含むスペクトルコンセントレータ502に対するPVセル500の2つの異なる向きを示す。1つの向きは、水平接合向きと呼ばれ、この向きでは、PVセル500の空乏領域は、スペクトルコンセントレータ502に垂直に入射する太陽放射に対して実質的に一直線に並べられているが、ルミネセンススタック504に沿って誘導される放出放射に対して実質的に垂直である。水平接合向きを有するPVセル500の場合には、一対の電極506及び508は、PVセル500によって生成される電荷担体を引き出すように、空乏領域のそれぞれの側に結合されている。図5に示されるように、電極506及び508は、両方とも、PVセル500の底面に隣接して位置付けされ、PVセル500から熱を放散するようにフィン構造を有している。
【0067】
[0072]PVセル500の他の向きは、垂直接合向きと呼ばれ、この向きでは、PVセル500の空乏領域は、スペクトルコンセントレータ502に垂直に入射する太陽放射に対して実質的に垂直であるが、ルミネセンススタック504に沿って誘導される放出放射に対して実質的に一直線に並べられている。垂直接合向きを有するPVセル500の場合には、一対の電極510及び512は、PVセル500によって生成される電荷担体を引き出すように空乏領域のそれぞれの側に結合されている。図5に示されるように、電極510はPVセル500の上面に隣接して位置付けされ、一方で、電極512はPVセル500の底面に隣接して位置付けされている。電極512は、PVセル500から熱を放散させるためにフィン構造を有している。PVセル500の垂直接合向きはいくつかの利点を実現することができる。特に、放出放射に対する空乏領域の配列は、空乏領域全体にわたって光励起の一様性を高め、太陽エネルギー変換効率を高めることができる。また、PVセル500に対する電極510及び512の位置付けは、空乏領域の光励起に関して可能性のある妨害を減少させることができる。さらに、電極510と512が互いに間隔をあけて配置されるようにすることによって、垂直接合向きは、改善された熱放散並びに外部回路への低損失伝導のために電極510及び512の少なくとも1つがより大きな断面積を有するようにすることができる。さらに、垂直接合向きは、PVセルのp−nの向きがその列に沿って1つのPVセルから次のPVセルへと互い違いになるように列の中でPVセルを接続することを容易にすることができる。
【0068】
[0073]改善された電気的動作のために、追加の電気回路をPVセルに一体化するために集積回路技術が使用されることがある。そのような追加の電気回路の例には、電圧ステップアップ回路、電圧制御回路、インバータ、直流(「DC」)−交流(「AC」)変換器、電圧調整器、バイパスダイオード、ブロッキングダイオード、分路ダイオード、及び他の電気保護及び電気処理回路がある。
【0069】
[0074]例えば、電圧ステップアップ回路は、電気接触及び伝導損失を減少させるためにPVセルに一体化されることがある。また、ソーラーモジュールからのより大きな出力電圧は、ACライン電圧のための外部インバータ及びインタフェース回路のより簡単でより低コストの実現につながることがある。外部インバータ及び関連したインタフェース回路は、全システムコストの最高約10パーセントから約20パーセントに相当することがあり、出力パワーの約10パーセントを消費することがある。したがって、ある実施では、DC−AC変換器及び電圧調整器がPVセルに一体化されることがあり、それによって外部インバータの必要性をなくす。他の例として、PVセルは、1日の間の太陽光パワーの変化する間に電池充電を行うために電圧制御回路を含むことができる。
【0070】
[0075]図6及び図7は、遮光及び欠陥に関連した問題に対処するためのダイオードの一体化を示す。特に、図6は、PVセル602を含んで直列接続されたPVセルの列600を示す。列600を通過する全出力電流は、直列接続されたPVセルのどれか1つによって引き起こされた電流の減少の影響を受けることがある。例えば、PVセル602が遮光又は欠陥の影響を受けた場合、全出力電流は著しい減少を受けることがあり、残りのPVセルによって生成された電流は、影響を受けたPVセル602の中で実質的に消費される。図示の実施形態では、ダイオード604が、影響を受けたPVセル602と並列に一体化され、残りのPVセルによって生成された電流のバイパスとして働くことができる。
【0071】
[0076]図7は、PVセルの並列接続された列702A、702B、702C、及び702Dのアレイ700を示し、列702A、702B、702C、及び702Dの各々は、直列に接続された複数のPVセルを含んでいる。列702A、702B、702C、及び702Dの各々の上端の出力電圧は、実質的に同じであることがあり、直列接続されたPVセルのどれか1つによって引き起こされた電圧の低下の影響を受けることがある。例えば、列702Bの中に含まれたPVセル704が遮光又は欠陥の影響を受けた場合、列702Bの出力電圧は著しい低下を受けることがあり、残りの列702A、702C、及び702Dによって生成されたパワーは、影響を受けた列702Bの中で実質的に消費されている。図示の実施形態では、ブロッキングダイオード706A、706B、706C、及び706Dが、列702A、702B、702C、及び702Dのそれぞれの1つと一体化されて、影響を受けた列702Bの中でのパワー消費を減少させるように働くことができる。
【0072】
ルミネセンス材料
[0077]本明細書で説明されたソーラーモジュールを形成するために、様々なルミネセンス材料が使用されることがある。例には、有機蛍光体、無機蛍光体及び燐光体、ナノ粒子、及び半導体材料がある。
【0073】
[0078]約900nmから約980nmまでの範囲に光学遷移を有する無機蛍光体は、シリコンに基づいたPVセルと共に使用するのに適していることがある。適切な発光波長を有する無機蛍光体は、関連する原子部分に基づいて選ばれることがある。例えば、遷移原子又は希土類原子からルミネセンスが得られる無機蛍光体が使用されることがある。無機蛍光体の他の例には、結晶中の欠陥状態からルミネセンスが得られる酸化物(又は、他のカルコゲニド)がある。
【0074】
[0079]シリコン又はゲルマニウムから形成されたナノ粒子などのナノ粒子は、スペクトルコンセントレ−ションのために有用であることがある。ナノ粒子は、真空蒸着などによって自己集合ナノ粒子として形成されることがあり、又はコロイド溶液中などで個別ナノ粒子として形成されることがある。ナノ粒子は、欠陥密度を一般に1ナノ粒子当たり1欠陥未満まで減少させることによって、フォトルミネセンスに対して高内部量子効率を有する状態で形成されることがある。その上、ナノ粒子の表面は、フォトルミネセンスを高めるように適切に終端されることがある。ナノ粒子の発光波長は、ナノ粒子のサイズに依存することがあり、又はナノ粒子のサイズによって制御されることがある。結果として得られるスペクトル幅が狭くなり、さらに、より小さなサイズのナノ粒子から放出された光の、より大きなサイズのナノ粒子による自己吸収が減少するように、サイズの狭い分布が望ましいことがある。
【0075】
[0080]PVセルのバンドギャップエネルギーに近く且つ僅かに大きいバンドギャップエネルギーを有する、インジウム燐すなわちInPなどの半導体材料が、また使用されることがある。特に、300Kで、約1.2eVから約1.4eVまでなどの約1.1eVから約1.5eVまでの範囲のバンドギャップエネルギーを有する半導体材料は、シリコンに基づいたPVセルのスペクトルコンセントレータとして適切であることがある。
【0076】
[0081]例えば、インジウム燐は、約1.35eVの直接許容バンドギャップエネルギー及び約10cm−1の吸収係数を有している。インジウム燐は、スパッタ堆積、金属有機化学気相成長(「MOCVD」)、有機金属化学気相成長(「OMCVD」)、大気中化学気相成長、ALD、分子ビームエピタキシ(「MBE」)成長などの様々なプロセスによって堆積されることがある。インジウム燐又は他の半導体材料は、単一層又は他の層が挟まれた複数層の膜として堆積されることがある。この他の層は、光学的目的及び効率目的のために、及び気密封止材としてシリカ及びアルミナなど化学的環境保護のために、含まれることがある。太陽スペクトルの光波長におけるインジウム燐又は他の半導体材料の吸収係数は、バンドギャップ端よりも大きなエネルギーで約10cm−1以上の範囲にあることがある。入射太陽放射の少なくとも約99%が吸収されるようにするために、数マイクロメートル以下などのマイクロメートル範囲の膜厚は、2以上の光学密度を有することがある。インジウム燐又は他の半導体材料は、また、多孔性マトリックスに堆積されることがあり、又は、ナノ粒子として堆積されることがある。例えば、インジウム燐は、ナノ粒子として形成され、光学的に安定な重合体のようなマトリックス又は無機ガラス中に分散されることがある。入射太陽放射の少なくとも約99%が吸収されるようにするために、吸収半導体材料の総量は、2以上の光学密度と同等であることがある。共振空洞構造を使用することによって、薄膜の形の半導体材料の効率のよい使用が可能になる。さらに、共振空洞構造は、放射マトリックスを修正することによって、所望の波長範囲に禁制光学遷移及び間接光学遷移を有する半導体材料をスペクトルコンセントレ−ションのために使用することができるようにする。また、より低いバンドギャップエネルギーの材料は、薄膜の状態かナノ粒子の形成によるかのいずれかで、量子閉じ込めによってルミネセンスを示すようにすることができる。
【0077】
[0082]ルミネセンス材料の新しい部類が、2007年3月21日に出願された「Luminescent Materials that Emit Light in the Visible Range or theNear Infrared Range」という名称の同時係属共有米国特許出願第11/689,381号明細書に開示されており、この出願の開示は、その全体が参照により本明細書に組み込まれる。ルミネセンス材料のこの部類には、次式に関連して表現できる半導体材料がある。
【0078】
[A][ドーパント] (I)
[0083]式(I)において、Aは、ナトリウム(例えば、Na(I)又はNa1+として)、カリウム(例えば、K(I)又はK1+として)、ルビジウム(例えば、Rb(I)又はRb1+として)、及びセシウム(例えば、Cs(I)又はCs1+として)などのIA族の元素と選ばれ、Bは、バナジウム(例えば、V(III)又はV+3として)などのVA族の元素、銅(例えば、Cu(I)又はCu+1として)、銀(例えば、Ag(I)又はAg+1として)、及び金(例えば、Au(I)又はAu+1として)などのIB族の元素、亜鉛(例えば、Zn(II)又はZn+2として)、カドミウム(例えば、Cd(II)又はCd+2として)、及び水銀(例えば、Hg(II)又はHg+2として)などのIIB族の元素、ガリウム(例えば、Ga(I)又はGa+1として)、インジウム(例えば、In(I)又はIn+1として)、及びタリウム(例えば、Tl(I)又はTl+1として)などのIIIB族の元素、ゲルマニウム(例えば、Ge(II)又はGe+2として、又はGe(IV)又はGe+4として)、錫(例えば、Sn(II)又はSn+2として、又はSn(IV)又はSn+4として)、及び鉛(例えば、Pb(II)又はPb+2として、又はPb(IV)又はPb+4として)などのIVB族の元素、及びビスマス(例えば、Bi(III)又はBi+3として)などのVB族の元素から選ばれ、さらにXは、フッ素(例えば、F−1として)、塩素(例えば、Cl−1として)、臭素(例えば、Br−1として)、及びヨウ素(例えば、I−1として)などのVIIB族の元素から選ばれる。さらに式(I)を参照して、aは、1から5までなどの、1から9までの範囲にあり得る整数であり、bは、1から3までなどの、1から5までの範囲にあり得る整数であり、さらに、xは、1から5までなどの、1から9までの範囲にあり得る整数である。いくつかの例では、aは1に等しいことがあり、xは1+2bに等しいことがある。また、a、b、及びxのうちの1つ又は複数がそれぞれの範囲内の分数値を有することがあることも考えられる。さらに、式(I)のXがより一般的にXX’x’X’’x’’と表され得ることが考えられ、ここでX、X’、及びX’’は、VIIB族の元素から独立に選ばれることがあり、さらに、x、x’、及びx’’の和は、1から5までなどの、1から9までの範囲にあることがある。式(I)の一般化されたものに関して、aは1に等しいことがあり、x、x’、及びx’’の和は1+2bに等しいことがある。式(I)で表されるルミネセンス材料に含まれるドーパントは、元素組成の点で、約1パーセントなどの、約5パーセント未満の量で存在することがあり、ルミネセンス材料を形成するために使用される原料から派生することがある。特に、ドーパントは陽イオン及び陰イオンを含むことがあり、これらのイオンは、ルミネセンス材料の微細構造中に分散された電子受容体/電子供与体対を形成する。
【0079】
[0084]式(I)で表されるいくつかのルミネセンス材料は、スペクトルコンセントレ−ションのために望ましい特性を有している。特に、このルミネセンス材料は、少なくとも約10パーセント、少なくとも約20パーセント、少なくとも約30パーセント、少なくとも約40パーセント、又は少なくとも約50パーセントなどの、約6パーセントよりも大きな、さらに最高で約90パーセント以上になることがある高い内部量子効率でフォトルミネセンスを示すことができる。また、そのルミネセンス材料は、FWHMで約100nm以下又は約80nm以下などの、FWHMで約120nm以下の狭いスペクトル幅を有するフォトルミネセンスを示すことがある。したがって、例えば、スペクトル幅は、FWHMで約50nmから約120nmまで、約50nmから約100nmまで、又は約50nmから約80nmまでなどの、FWHMで約20nmから約120nmまでの範囲にあることがある。
【0080】
[0085]その上、ルミネセンス材料は、使用される原料及び処理条件を調節することによって望ましいレベルに同調可能なバンドギャップエネルギーを有することがある。例えば、バンドギャップエネルギーはAと関連することがあり、増加するバンドギャップエネルギーの程度は、例えば、セシウム、ルビジウム、カリウム、及びナトリウムに対応している。他の例として、バンドギャップエネルギーはXと関連することがあり、増加するバンドギャップエネルギーの程度は、例えば、ヨウ素、臭素、塩素、及びフッ素に対応している。増加するバンドギャップエネルギーのこの程度は、減少するピーク発光波長の程度に相当することがある。したがって、例えば、ヨウ素を含むルミネセンス材料は、時には約900nmから約1μmまでの範囲のピーク発光波長を示すことがあるが、一方で、臭素又は塩素を含むルミネセンス材料は、時には約700nmから約800nmまでの範囲のピーク発光波長を示すことがある。バンドギャップエネルギーを同調させることによって、結果として得られるフォトルミネセンスは、可視範囲又は赤外範囲などの波長の望ましい範囲内にあるピーク発光波長を有することができる。いくつかの例では、ピーク発光波長は、約900nmから約1μmまで、約910nmから約1μmまで、約910nmから約980nmまで、又は約930nmから約980nmまでなどの近赤外範囲にあることがある。
【0081】
[0086]さらに、上で説明されたフォトルミネセンス特性は、励起波長の広い範囲にわたって比較的敏感でないことがある。実際、この異常な特性は、ルミネセンス材料の励起スペクトルに関連して理解することができ、この励起スペクトルは、紫外範囲、可視範囲、及び赤外範囲の部分を含む励起波長の範囲にわたって実質的に一様であることがある。いくつかの例では、励起スペクトルは、約200nmから約980nmまで、又は約200nmから約950nmまでなどの、約200nmから約1μmまでの励起波長の範囲にわたって実質的に一様であることがある。同様に、ルミネセンス材料の吸収スペクトルは、紫外範囲、可視範囲、及び赤外範囲の部分を含む励起波長の範囲にわたって実質的に一様であることがある。いくつかの例では、吸収スペクトルは、約200nmから約980nmまで、又は約200nmから約950nmまでなどの、約200nmから約1μmまでの励起波長の範囲にわたって実質的に一様であることがある。
【0082】
[0087]望ましい特性を有する2つの半導体材料がUD−700及びUD−930と呼ばれる。これらの材料の組成はCsSn1+2bと表される。UD−700の場合には、Xは臭素であり、UD−930の場合には、Xはヨウ素である。UD−700及びUD−930のスペクトル幅は狭く(例えば、FWHMで約50eV以下)、吸収スペクトルは、吸収端から遠紫外まで実質的に一様である。UD−700及びUD−930のフォトルミネセンス発光は、UD−700の場合には約700nm、UD−930の場合には約950nmの、これらの材料の吸収端までの広い範囲の波長の太陽放射によって刺激される。
【0083】
[0088]UD−930の望ましい特性は、図8を参照してさらに理解することができ、図8は、太陽スペクトルと、本発明の実施形態に従ったUD−930の測定された吸収及び発光スペクトルとの組み合わされた図を示す。特に、図8はAM1.5G太陽スペクトル((A)として参照される)を示し、AM1.5G太陽スペクトルは、地球の表面の入射太陽放射を表す標準太陽スペクトルである。AM1.5G太陽スペクトルは、大気吸収のために930nmの領域にギャップを有している。AM1.5G太陽スペクトル及びシリコンに基づいたPVセルの特性を考慮すると、UD−930の吸収スペクトル((B)として参照される)及び発光スペクトル((C)として参照される)が、この材料を、ルミネセンス層の中に組み込まれたときスペクトルコンセントレ−ションのために特に有効なものにしている。特に、UD−930のフォトルミネセンスは、実質的に、AM1.5G太陽スペクトルのギャップにあり、約950nmのピーク発光波長はこのギャップの中に入っている。今度は、このことで、放出放射を反射して逆にルミネセンス層の方へ戻すように同調された反射器を(例えば、ルミネセンス層の上又は下で)使用することが可能になり、反射器を通過してルミネセンス層に到達することができる入射太陽放射が著しく減少することはない。また、UD−930の吸収スペクトルは、実質的に一様で、約950nmの吸収端から実質的に全AM1.5G太陽スペクトルを通って紫外に延びている。その上、約950nm(又は約1.3eV)のピーク発光波長は、シリコンに基づいたPVセルの吸収端に合っており、スペクトル幅はFWHMで約50meV(又はFWHMで約37nm)である。シリコンの吸収係数は、発光波長のこの範囲で約10cm−1であり、さらに、PVセル内の接合は、放出放射を効率よく吸収しこの放射を電子−正孔対に変換するように設計することができる。その結果として、UD−930は、入射太陽放射の電気への高変換効率を可能にするためにシリコンに合わされた狭い範囲の波長を放出しながら、入射太陽放射から広い範囲の波長を広く吸収することができる。さらに、UD−930の吸収スペクトル及び発光スペクトルは小さい程度で重なり合い、それによって、そうでなければ減少した変換効率につながるであろう自己吸収の事実を減少させる。
【0084】
[0089]スペクトルコンセントレータとしてシリコンに適している他のルミネセンス材料には、Zn、CuO、CuO、CuInGaS、CuInGaSeなどがある。下の表Iは、本明細書で説明される用途に使用することができる様々な半導体材料を列挙する。
【表1】

【0085】
[0090]吸収及び発光特性は、一般に、間接光学遷移又は禁制光学遷移を有する半導体材料では、直接光学遷移を有するそんな材料に比べて数桁低い。しかし、放射マトリックスの修正によって、共振空洞効果は、吸収及び発光特性を高め、間接又は禁制光学遷移を有する半導体材料の使用を可能にすることができる。表Iを参照すると、CuOは、約1.4eVのバンドギャップエネルギーを有する間接バンドギャップ半導体材料であり、CuOは、約1.4eVの直接であるがスピン禁制のバンドギャップエネルギーを有している。どちらか又は両方を共振空洞構造の中に組み込むことによって、CuO及びCuOは、スペクトルコンセントレ−ションのために使用することができる。さらに表Iを参照して、Znは、約1.4eVの直接光学遷移よりも約50meV下の間接光学遷移を有している。空洞効果は、間接光学遷移をより高いエネルギーの直接光学繊維に結合することを可能にし、それによって、スペクトルコンセントレータとして使用するために、高められた吸収及び発光を実現する。
【0086】
[0091]上で指摘された特性のほかに、表Iに列挙された半導体材料は、一般に、約3よりも大きな屈折率を有する。例えば、InPは、約3.2の屈折率を有する。内部反射のために、ルミネセンススタック内の光の約18%未満が大気に出ることができる。いくつかの例では、ルミネセンススタックの表面に垂直な光は、大気に対して約25%のフレネル反射損失を有することがある。反射防止コーティングが、ルミネセンススタックからPVセルへの光の光学的結合を高めるために使用されることがある。
【0087】
[0092]ルミネセンススタック内での放出光の自己吸収を減少させるために、ルミネセンスは励起子放出を介して起こることができる。励起子は電子−正孔対に相当し、この電子−正孔対は光吸収の結果として形成されることがある。束縛又は自由励起子は、励起子結合エネルギーに等しいストークスシフトを有することがある。大抵の半導体材料は、約20meV未満の励起子結合エネルギーを有する。室温は約25meVであり、それで、一般にこれらの材料では室温で励起子は存在しない。CdTe及びHgTeなどのいくつかの半導体材料は、高い結合エネルギーの励起子を有し、室温で存在している。しかし、これらの半導体材料のいくつかは、有毒であるか、又は比較的高価であることがある。三ヨウ化ビスマスすなわちBiIなどの他の半導体材料は、室温で真性励起子を有し、本明細書で説明される用途に適していることがある。
【0088】
[0093]錫及び鉛ハロゲン化物などのある層状半導体材料は、有機構成要素で無機層を隔てることによって同調されたバンドギャップエネルギー及び励起子エネルギーを有することができる。例には、有機−無機量子井戸材料、110配向ペロブスカイトシートを含む導電性層状有機−無機ハロゲン化物、ハイブリッドヨウ化錫ペロブスカイト半導体材料、及びハロゲン化鉛ベースのペロブスカイト型結晶がある。これらの半導体材料のある態様は、Ema et al., "Huge Exchange Energy and Fine Structure ofExcitons in an Organic-Inorganic Quantum Well," Physical Review B, Vol.73, pp. 241310-1 to 241310-4 (2006)、Mitzi et al., "Conducting Layered Organic-Inorganic HalidesContaining 110-Oriented Perovskite Sheets," Science, Vol. 267, pp.1473-1476 (1995)、Kagan et al., "Organic-Inorganic Hybrid Materials asSemiconducting Channels in Thin-Film Field-Effect Transistors," Science,Vol. 286, pp. 945-947 (1999)、Mitzi, "Solution-processed Inorganic Semiconductors," J.Mater. Chem., Vol. 14, pp. 2355-2365 (2004)、Symonds et al., "Emission of HybridOrganic-Inorganic Exciton Plasmon Mixed States," Applied Physics Letters,Vol. 90, 091107 (2007)、Zoubi et al., "Polarization Mixing in Hybrid Organic-InorganicMicrocavities," Organic Electronics, vol. 8, pp. 127-135 (2007)、Knutson et al.,"Tuning the Bandgap in Hybrid Tin Iodide Perovskite Semiconductors UsingStructural Templating," Inorg. Chem., Vol. 44, pp. 4699-4705 (2005)、及びTanaka et al.,"Comparative Study on the Excitons in Lead-halide-based Perovskite-typecrystals CH3NH3PbBr3 CH3NH3PbI3,"Solid State Communications, Vol. 127, pp. 619-623 (2003)に説明されており、これらの文献の開示は、その全体が参照により本明細書に組み込まれる。
【0089】
[0094]また、硫化錫、セレン化錫、硫化チタン、及び表Iに列挙された他のものなどの他の層状材料は、層状材料と層状材料の間に他の材料を挿入することによって同調させることができる。同調されたバンドギャップエネルギー及び同調された励起子結合エネルギーを有する層状材料を作るために、ALDが使用されることがある。励起子をより高いエネルギーに同調させることで、自己吸収を減少させ、レイジングの確率を高めることができる。そのような材料処理の組合せは、同調された励起子ルミネセンス放出に基づいて低自己吸収ルミネセンス材料を開発するために使用することができる。この低自己吸収ルミネセンス材料が、さらに、弱結合型態か強結合型態かのどちらかで共振空洞構造と組み合わされて、低損失高量子効率ダウンコンバージョン構造を生成することができる。熱消光、すなわち温度の上昇に伴うルミネセンス強度の減少は、室温で約25meVであるボルツマン温度よりも大きな結合エネルギーを有する励起子を生成することによって軽減させるか、なくすことができる。ソーラー用途の場合、約35meVから約50meVまでの範囲の結合エネルギーが望ましいことがある。より大きな結合エネルギーは、吸収ギャップをもたらす、吸収端からのフォトルミネセンスのストークスシフトを引き起こすことがあり、それによって、より低い太陽エネルギー変換効率につながる。
【0090】
[0095]自己吸収を減少させる他の方法は、配向複屈折の使用によっている。特に、単結晶又は膜中の特定の方向で自己吸収を減少させる1つの方法は、複屈折材料を配向させることである。複屈折は、材料の2以上の異なる方向に沿った異なる屈折率を意味する。半導体材料などの複屈折材料は、異なる結晶軸に沿って2以上の異なるバンドギャップエネルギーを有する。結晶異方性が光スペクトルの可視領域にバンドギャップを有する場合、この材料は、複屈折ではなく二色性であると言われることがある。CuInSe2−x、Zn、及びCsSn1+x3+xのようなペロブスカイトなどの様々な複屈折半導体材料をスペクトルコンセントレータとして使用することができる。複屈折材料には2以上の吸収端すなわちバンドギャップエネルギーがあるので、結果として得られる膜は、PVセルの方へ向く方向に沿ってより高いバンドギャップエネルギー(すなわち、より短波長の吸収端)を有する配向状態で堆積されることがある。この場合、発光波長はこのより高エネルギーのバンドギャップよりも長いために、PVセルの方へ向く方向の放出光はより小さな吸光度を有することができる。共振空洞効果及びブラッグ反射器を使用することで、より高い自己吸収の他の方向の発光を抑制することができる。
【0091】
[0096]熱消光及び自己吸収は、また、材料特性を修正することによって減少させることができる。半導体材料の場合、吸収端は、温度及びある型のドーピングの増加と共に傾斜するようになることがある。この吸収端傾斜は、時には、増加された自己吸収につながることがあり、エリオットの式によって記述することができる。この吸収端傾斜を制御して熱消光及び自己吸収の事実を減少させるために、適切なドーピング及び界面又は表面改質が使用されることがある。半導体材料から形成されたナノ粒子の場合、ナノ粒子に形成されたコーティングが、「ブラッグオニオン(Bragg Onion)」技術によって半導体材料の発光特性を変えることができる。
【0092】
[0097]地球の表面の太陽スペクトルは、紫外から赤外までに及んでいる。紫外から約1.3eVまでの吸収される光子は、光子の総数の約49.7パーセント及び総エネルギーの約46.04パーセントである。100パーセント内部量子効率で吸収される光子について、約1.3eVの発光を有するルミネセンス材料は、約46パーセントの太陽エネルギー変換効率を生じることができる(1光子−1光子メカニズムの場合)。複数光子生成は、より高い太陽エネルギー変換効率を生じることができる。複数光子を放出する、シリコン量子ドットなどのシリコンナノ粒子は、本明細書で説明されるスペクトルコンセントレータとして使用されて、より高い変換効率を実現することができる。シリコンナノ粒子のある態様は、2007年7月24日にウェブ上で発表されたBeard et al., "Multiple Exciton Generation in Colloidal SiliconNanocrystals," Nano Lettersに説明されており、この開示は、その全体が参照により本明細書に組み込まれる。
【0093】
[0098]入射太陽放射の約2分の1は1.3eV(すなわち950nm)よりも低エネルギー、すなわち長波長であるので、アップコンバージョンによって変換効率が高められることがある。アップコンバージョンは、2つの光子が吸収されて1つの光子がより高いエネルギーで放出されるプロセスを含むことがある。希土類原子は、アップコンバージョンを受ける点で比較的効率がよいことがあり、比較的高強度での第2高調波生成(「SHG」)などの他のプロセスが、太陽エネルギー変換効率を高めるために使用されることがある。スペクトルコンセントレータで共振空洞効果を使用することで、アップコンバージョン及びSHGのような非直線プロセスを高めることができる。アップコンバージョンのある態様は、Sark et al., "Enhancing Solar Cell Efficiency by Using SpectralConverters," Solar Energy Materials & Solar Cells, Vol. 87, pp.395-409 (2005)、及びShalav et al., "Luminescent Layers for Enhanced Silicon SolarCell Performance: Up-conversion," Solar Energy Materials & SolarCells, Vol. 91, pp. 829-842 (2007)に説明されており、これらの文献の開示は、その全体が参照により本明細書に組み込まれる。
【0094】
共振空洞効果及び構造
[0099]ここで、空洞量子電気力学(「CQED」)と、スペクトルコンセントレ−ションのために有利に利用可能な共振空洞効果の形でのCQEDの具現とが説明される。例えば、空洞効果は、PVセルの方に向けて放出光の方向を制御しその結果PVセルに到達する放出光の部分を高めるために利用されることがある。その上、空洞効果は、共振光学モードに関連した特定の組の波長の発光を強め且つ抑制光学モードに関連した他の波長の発光を抑制することなどによって発光特性を修正するために利用されることがある。発光特性のこの修正は、発光スペクトルと吸収スペクトルの間の重なりを減少させることができ、さらに、自己吸収から生じる損失の減少をもたらすことができる。さらに、空洞効果は、間接光学遷移又は禁制光学遷移を有する半導体材料の使用を、それの吸収及び発光特性を高めることによって可能にすることができる。CQEDのある態様は、Yablonovitch, Physical Review Letters, Vol. 58, pp. 2059-2062 (1987)に説明されており、この文献の開示は、その全体が参照により本明細書に組み込まれる。
【0095】
[00100]CQEDに従って、ルミネセンス中心は、それの局所光学的環境と相互作用することができる。ルミネセンス中心は、光の放出を伴う任意の局在事象又は部分が可能である。ルミネセンス中心を囲繞する光学的環境は、ルミネセンス中心から放出される光の伝播並びにルミネセンス中心の内部自然発光特性に影響を及ぼすことができる。特に、光学的環境の中にルミネセンス中心を位置付けすることで、放出光の指向性(例えば、特定の範囲の方向における任意の特定の範囲の波長の強度)とルミネセンス中心の全スペクトル発光(全ての方向にわたって平均された、任意の特定の範囲の波長の強度)との両方を修正することができる。したがって、適切な光学的環境内にルミネセンス中心を適切に位置付けすることを使用して、特定の範囲の波長について発光が起こる方向の範囲を選ぶことができる。また、光学的環境を適切に選ぶことで、ある範囲の波長の全ての方向での発光を実質的に抑制することができる。いくつかの例では、ルミネセンス中心は、抑制された方向で放出された光子を再吸収することができ、又は、ルミネセンス中心は、抑制された方向での光子の放出が起こるのを防ぐように光学的環境と相互作用する。
【0096】
[00101]ルミネセンス中心及びそれの光学的環境の特性に依存して、一部の波長での発光を抑制することは、他の波長での発光を強めることになることがある。実際上、空洞効果は、固有のピーク発光波長を光学的環境によって修正されるような異なるピーク発光波長に「引っ張る」ことができる。波長のシフトは、ルミネセンス中心の固有発光分布に依存して、数100ナノメートル程度(例えば、約50nmから約100nm)であることがある。
【0097】
[00102]ある用途では、光学的環境内でのルミネセンス中心による光の放出は、フェルミの黄金律に関連して理解することができ、フェルミの黄金律は次式で表すことができる。
【数1】


フェルミの黄金律は、ルミネセンス中心による自然発光の率と光学的状態の局所密度の間の関係を表す。式(II)において、
【数2】


は、次式
【数3】


の位置にあるルミネセンス中心による周波数ωでの自然発光の率を表し、
【数4】


は、ルミネセンス中心の可能な最終及び初期(電子)量子状態であり、
【数5】


は、光学遷移要素(例えば、ダイポール又はクワドラポールモーメント)と許容電場の間の相互作用を表し、δはディラックのデルタ関数を表す。
【0098】
[00103]式(II)は、修正された形で表すことができ、この修正形では、許容電場は、周波数について積分することによって相互作用の項から分離される。この修正形は、次式で表される。
【数6】


式(III)に関連して理解することができるように、ルミネセンス中心による光の放出は、量子状態間の遷移マトリックスであり光学遷移要素を含む「原子」部分と、光学的状態の局所密度の原因でありNradと表される「場」部分と、を含むものと見なすことができる。Nradは、光学的環境内での様々な可能な発光を含むことができ、直交する方向に沿った可能な光学モードの点から見て考察することができる。これらの光学モードのいくつかは、Nradに対して高められた貢献をする共振光学モードであることがあるが、一方で、これらの光学モードの他のものは、Nradに対して減少した貢献をする抑制光学モードであることがある。式(III)を参照すると、「原子」部分及び「場」部分が、相俟って、ルミネセンス中心による自然発光の率を指定する。
【0099】
[00104]空洞効果がない場合には、放出光のコヒーレンス波長よりも十分に厚いルミネセンススタックを備えた構造が実現されることがある。この場合、光の放出は実質的に等方性であることがある。全内部反射角よりも上の方向の放出光はこの構造中にとどまるが、全内部反射角よりも下の方向の放出光は構造を出て行き、放出光の損失円錐を画定する。全方向発光の場合の発光損失は、損失円錐によって最高20%であることがある。構造中にとどまる放出光は、さらなる損失を受けることがある。特に、放出光は、吸収された光よりも長波長であることがある。すなわち、放出光はストークスシフトしている。ストークスシフトの程度が比較的小さい場合には、発光スペクトルと吸収スペクトルの重なりがあることがあり、この重なりは、自己吸収を引き起こし、PVセルに到達することができる放出光の部分を減少させることがある。また、放出光は、再吸収(自己吸収による)そして次に再発光を受けることがある。すなわち、放出光は、光子リサイクルにさらされる。各再発光事象は、関連した損失円錐のある状態で等方性であることがある。したがって、PVセルに到達する放出光は、全内部反射角よりも下の放出光の損失と一連の再吸収及び再発光事象とによって減少することがある。ルミネセンススタックの内部量子効率が100パーセント未満である場合には、各再吸収及び再発光事象は、さらなる関連した損失を与えることがある。
【0100】
[00105]CQEDの態様は、共振空洞効果を示す微細空洞又は共振空洞構造を形成するために使用されることがある。これらの共振空洞構造は、(1)PVセルの方への発光の方向制御、したがって損失円錐による発光損失の減少と、(2)発光スペクトルと吸収スペクトルの重なりを減少させ、したがって自己吸収を減少させることができるスペクトル引張りと、を含めていくつかの利点を実現することができる。
【0101】
[00106]共振空洞構造は、例えば、単一モード及び多モード導波路を含めた共振空洞導波路、光子結晶、ポラリトンレーザ、及びプラズモン構造として実現されることがある。例えば、共振空洞導波路は、ルミネセンス層の上面及び底面を一対の反射器(例えば、ブラッグ又は全反射器)によってサンドイッチ状に挟まれたルミネセンス層を含んだ全内部反射導波路として実現されることがある。この一対の反射器は、損失円錐を減少させ、したがって、放出光がPVセルの方へ誘導されるときに放出光の損失を減少させるのに役立つ。また、上側すなわち太陽側反射器が、入射太陽放射とルミネセンス層の間の高められた重なりのために実現されることがある。空洞効果の結果として、導波路は、PVセルの方へ向かう誘導方向での発光を可能にしながら、又は強めながら、非誘導方向での発光を抑制することができる。そのようなやり方で、ルミネセンス層の上面及び底面による放出光の損失の著しい減少が可能である。
【0102】
[00107]他の例として、共振空洞導波路は、反共振反射光導波路(「ARROW」)として実現されることがある。ARROWは、誘導に関して全内部反射ではなくファブリ−ペロ効果に基づき、いくつかの例では、より効率のよい構造であることがある。特に、ARROWは、高められたフォトルミネセンス及びPVセルへの低損失誘導を実現することができる。ARROWは、ある光学モードが低指数領域(例えば、非吸収材料)又は、実施に依存して、高指数領域に実質的にコンセントレ−ションされることを可能にすることができる。そのようなやり方で、光の実質的な伝播は非吸収材料中で行われることがあり、自己吸収が減少することがある。ARROW構造のある態様は、Huang et al., "The Modal Characteristics of ARROWstructures," Journal of Lightwave Technology, Vol. 10, No. 8, pp.1015-1022 (1992)、Litchinitser et al., "Application of an ARROW Model forDesigning Tunable Photonic Devices," Optics Express, Vol. 12, No. 8, pp.1540-1550 (2004)、及び Liu et al., "Characteristic Equations for Different ARROWStructures," Optical and Quantum Electronics, Vol. 31, pp. 1267-1276(1999)に説明されており、これらの文献の開示は、その全体が参照により本明細書に組み込まれる。
【0103】
[00108]光子結晶は、光の伝播、すなわち方向と放射周波数及び寿命との両方を制御するように実現されることがある。光子結晶は、一般に、実質的に周期的なやり方で配列された、異なる屈折率を有する2以上の材料の中間視的アレイとして実現される。可視及び近赤外範囲の光の場合、アレイ内の間隔は、数100ナノメートルからミクロンまでの範囲かそのくらいであることがある。アレイは、1次元、2次元、又は3次元に延びることがある。光子結晶の例には、ブラッグ反射器、2つの相対する誘電体干渉反射器によって形成された平面空洞、及び全反射ミラーに基づいたものがある。3次元光子結晶の例は、3次元ブラッグ格子に基づいたものである。
【0104】
[00109]共振空洞構造は、1次元、2次元、又は3次元の構造として実現されることがある。共振空洞構造に関連した固有次元の数は、その構造の量子閉じ込め次元の数に対応することがある。したがって、例えば、共振空洞構造は3次元に延びることがあるが、それらの次元の部分集合が、量子が閉じ込められるものであることがある。
【0105】
[00110]例えば、共振空洞導波路は、1次元閉じ込めを行うスラブ導波路として実現することができる。例には、全内部反射スラブ導波路、多層ミラー又は他の層を含む全内部反射スラブ導波路の発展したもの、及びスラブARROW構造がある。再吸収及び再発光の場合には、光の伝播は、光子密度の2次元拡散としてモデル化することができる。いくつかの例では、1次元閉じ込めは、例えば、より高次元の閉じ込めに比べてスペクトル引張りの減少をもたらすことがある。
【0106】
[00111]他の例として、共振空洞導波路は、2次元閉じ込めを行うように実現することができる。そのような閉じ込めを受ける光の伝播は、閉じ込めの程度に依存して、2次元光子拡散又は1次元光子拡散としてモデル化することができる。チャネル導波路、リッジ導波路、及びストリップ装荷型導波路を含めて、様々な型の横方向閉じ込めが実現されることがある。例えば、リッジ導波路は、上側又は太陽側反射器か底面反射器かのどちらかに平行なリッジをエッチングし、引っ掻き、又はプレスすることによってスラブ導波路に基づいて形成することができる。代わりに、又は一緒に、底面反射器を付ける前に、リッジがルミネセンス層に型押しされることがある。リッジ導波路は、また、コンフォーマルコーティングによって基板に形成されることもある。リッジ間隔は、放出光の約2波長から約10波長までの範囲にあることがある。スペクトル引張りが起こることがあるが、閉じ込めの程度及び個々の誘導下部構造間の結合に依存して時には減少することがある。他の例として、ストリップ装荷型導波路が、深さが約0.5μmから約100nm以下のくぼみ又は浅い溝を基板に形成することによって、全体的に平面の基板から形成されることがある。可撓性プラスチック基板をエンボス加工することなどの様々な技術が、くぼみを形成するために使用されることがある。ルミネセンス材料は、結果として得られる表面全体にコーティングされることがあり、その結果、平坦化によってストリップ装荷型導波路が形成されるようになる。結果として得られた導波路は、1ミリメートルの何分の1から数ミリメートルの結合長を有する結合モードを生成するのに十分なほど近接していることがある。
【0107】
[00112]共振空洞構造は、また、3次元閉じ込めも行うことができる。例えば、あるレベルの歪み又は欠陥を含む光子結晶が使用されることがある。歪みは、他の方向の発光を抑制しながら、PVセルの方へ向けた発光の方向制御を実現することができる。この方向制御は、光子結晶が1又は2次元で光を誘導するようにすることができる。歪みは、また、他の方向で実質的に全スペクトル範囲にわたって発光を抑制しながら、伝播方向に沿って発光のスペクトル引張りを引き起こすことができる。いくつかの例では、隣接する光子結晶との残留相互作用によってスペクトル引張りが達成されることがある。
【0108】
[00113]次に述べるものは、スラブ導波路について追加の実施の詳細を提供する。とは言っても、拡散又は分散ルミネセンス中心を含む他の共振空洞構造が同様に実現されることがある。
【0109】
[00114]スラブ導波路に含まれるルミネセンス材料は、1組のルミネセンス中心として表すことができる。吸収波長と発光波長の間の可能性のある重なりのために、導波路内の光の伝播は、光子拡散プロセスとしてモデル化することができる。より小さな重なりはより大きな光子拡散係数につながることがあるが、一方で、より大きな重なりはより小さな光子拡散係数につながることがある。異なるルミネセンス材料及び関連したルミネセンス中心が導波路中に含まれることがあり、これらの異なるルミネセンス材料は、異なる光子拡散特性を有していることがある。空洞効果を有する導波路の中にルミネセンス材料を位置付けすることによって、発光のスペクトルの方向を制御することができ、したがって光子拡散係数の方向に影響を及ぼすことができる。
【0110】
[00115]スラブ導波路の1つの実施は、ルミネセンス材料の単一の実質的に一様な層を含むことがある。PVセルに結合されないルミネセンス材料の端部又は表面は、その上に反射器を備えることができ、その結果、スラブ導波路は全内部反射スラブ導波路として動作することができる。反射器は、誘電体材料又は金属のコーティング、層、又は膜であることがある。ルミネセンス層は、周囲媒体よりも大きな屈折率を有することがあり、したがって、全内部反射角より上の方向の放出光をPVセルの方へ誘導することができる。
【0111】
[00116]スラブ導波路では、光学的状態の局所密度は、誘導光学モードと放射光学モードの両方を含むことがある。誘導光学モードはルミネセンス層に沿った光の伝播に影響することができるが、一方で、放射光学モードはルミネセンス層から外への光の伝播に影響することができる。ルミネセンス層と周囲媒体の間の指数の差異が小さい場合、光学的状態の局所密度は、自由空間の光学的状態の局所密度と僅かに異なることがあり、発光特性は低い程度で修正される。指数の差異を増加させることなどによって閉じ込めを大きくすることで、より大きな歪みを光学的状態の局所密度に導入して、方向制御を含めた発光特性の高められた修正をもたらすことができる。また、垂直共振から離れたところでルミネセンス層の厚さを調整することによって、放射光学モードを抑制することができる。この抑制は、PVセルの方へ向かう方向でルミネセンス層に沿った横方向発光の確率を高めながら、ルミネセンス層からの外への発光損失を減少させることができる。
【0112】
[00117]スラブ導波路の他の実施では、ルミネセンス層の相対する表面が反射器スタックでサンドイッチ状に挟まれている。反射器スタックは、誘電体材料又は金属の複数のコーティング、層、又は膜を含むことがあり、指数の差異の増加につれて同様なやり方で光学的状態の局所密度を歪ませることができる。「完全」全反射薄膜コーティングの場合には、垂直方向閉じ込めは実質的に絶対的であることがあり、放射光学モードは実質的に抑制されることがある。したがって、実質的に全ての発光が横方向に関して閉じ込められて、PVセルへの光の伝達の高められた確率を実現することができる。
【0113】
[00118]さらに他の実施には、依然として高い垂直方向閉じ込めを維持しながら、光のかなりの伝播をルミネセンス材料の外に持って動作する多スラブ又はARROW構造がある。発光波長全体にわたって全反射を維持しながら、太陽波長の比較的高い透過を維持することが望ましいことがある。
【0114】
[00119]垂直方向閉じ込めは、バルクルミネセンス材料の3次元光子拡散を2次元光子拡散に変えることができる。そのような閉じ込めの下での光子拡散係数は、ルミネセンス材料の吸収係数のような固有材料特性ではなく光学モード伝播係数の複素成分に基づいて決定されることがある。拡散の次元の数を減少させることで、光子拡散係数を大きくすることができ、このことは、ランダム化事象間のより長い伝播距離につながることがある。PVセルの方向などでの光子拡散係数のさらなる増加は、追加の伝播構造を含めることで達成することができる。例えば、ルミネセンス層の幅を調整することなどによる横方向閉じ込めは、横方向での光学的状態の局所密度を減少させることができる。上で説明された垂直方向閉じ込めの場合のように、横方向閉じ込めを強めることで、より大きな歪みを光学的状態の局所密度に導入して、方向制御を含む発光特性の高められた修正をもたらすことができる。その上、横方向閉じ込めを組み込むことは、また、ある程度のスペクトル引張りを行うことができる。
【0115】
[00120]共振空洞構造の性能は、低水準から高水準まで変化し得るその構造の質又はフィネスに関連して特徴付けることができる。レーザなどのある光学デバイスは、比較的高いフィネスを有して適切に動作することができる。スペクトルコンセントレータでは、効率の改善をもたらすには比較的低いフィネスで十分であることがあり、より高いフィネスは効率の余分な改善をもたらす。いくつかの例では、共振空洞構造中の放出光の高い強度は、誘導放出及びスペクトルホールバーニングにつながることがあり、このことは、PVセルに到達する放出光の量を増し効率のさらなる改善をもたらすことができる。
【0116】
[00121]共振空洞構造は、弱結合型態又は強結合型態で動作することができる。弱結合型態では、共振空洞構造は、ルミネセンス層の上面及び底面の一対の反射器によってサンドイッチ状に挟まれたルミネセンス層を含んだスラブ導波路として実現されることがある。この対の反射器は、損失円錐を小さくし、したがって、放出光がPVセルの方へ誘導されるときに放出光の損失を減少させるのに役立つ。空洞効果のために、導波路は発光波長及び強度を修正し、導波路中の励起状態の寿命を減少させることができる。強結合型態では、共振空洞構造は、基板上に形成されたポラリトンレーザとして実現されることがある。ポラリトンレーザは、実質的にゼロ損失及び最高約100パーセントの効率を有することがある。ポラリトンレーザは、また、時には、閾値のないゼロ閾値レーザと呼ばれ、レイジングは、ポラリトンと呼ばれる結合励起子−光子準粒子によって発生する。ポラリトンレーザのある態様は、Christopoulos et al., "Room-Temperature Polariton Lasing inSemiconductor Microcavities," Physica Review Letters, Vol. 98, pp.126405-1 to 126405-4, (2007)、Houdre et al., "Strong Coupling Regime in SemiconductorMicrocavities," C. R. Physique, Vol. 3, pp. 15-27, (2002)、及びKavokin,"Exciton-Polaritons in Microcavities: Present and Future," Appl.Phys. A, Vol. 89, pp. 241-246 (2007)に説明されており、これらの文献の開示は、その全体が参照により本明細書に組み込まれる。
【0117】
[00122]ルミネセンス材料の特性が、共振空洞構造の型、望ましい効果、及び結果として得られる効率を決定することができる。下の表IIは、本発明の実施形態に従った分類表を示す。
【表2】

【0118】
[00123]事例1では、ルミネセンス材料の内部量子効率は、特定の組の発光波長λ発光において100パーセントである。シリコンPVセルの場合には、λ発光は、約900nmから約1000nmまでの範囲にあることがある。ルミネセンス材料の固有ストークスシフトは約50meVである。このストークスシフトのために、λ発光は、自己吸収を減少させるようにルミネセンス材料の吸収端から十分に間隔をあけて配列されており、関連した吸収係数は約10−2cm−1未満である。共振空洞構造の、結果として得られる効率は、PVセルに到達する放出光の部分に相当することがある。事例1では、共振空洞構造は、発光の方向をPVセルの方へ制御して、結果として得られる効率を最高100パーセントに高めることができる。
【0119】
[00124]事例2では、ルミネセンス材料の内部量子効率は、特定の組の発光波長λ発光において100パーセント未満である。ルミネセンス材料の固有ストークスシフトは約50meVである。このストークスシフトのために、λ発光は、自己吸収を減少させるようにルミネセンス材料の吸収端から十分に間隔をあけて配列されており、関連した吸収係数は約10−2cm−1未満である。共振空洞構造の、結果として得られる効率は、100パーセント未満であることがあり、ルミネセンス材料の内部量子効率で上限が制限されることがある。事例2では、共振空洞構造は、発光の方向をPVセルの方へ制御して、結果として得られる効率を高めることができる。
【0120】
[00125]事例3では、ルミネセンス材料の内部量子効率は、特定の組の発光波長λ発光において100パーセントである。ルミネセンス材料の固有ストークスシフトは約50meV未満であり、その結果として、放出放射のあるレベルの自己吸収があり、関連した吸収係数は約10−1cm−1以上、最高約10cm−1である。100パーセントの効率であろうとも、自己吸収は光子リサイクルにつながることがあり、すなわち、放出された光子が吸収され再放出される。自己吸収のために、共振空洞構造の結果して得られる効率は100パーセント未満であることがある。事例3では、共振空洞構造は、発光の方向をPVセルの方へ制御して、結果として得られる効率を高めることができる。放出光子は、吸収係数に関係した拡散長で拡散を受けることがある。この拡散はブラウン拡散としてモデル化することができ、定常状態では、吸収するPVセルから拡散長の範囲内を除いて、発光の強度が共振空洞構造中で実質的に一様であることがある。いくつかの例では、発光の強度は、誘導放出及びレイジングを引き起こすのに十分であることがある。
【0121】
[00126]事例4では、ルミネセンス材料の内部量子効率は、特定の組の発光波長λ発光において100パーセント未満である。ルミネセンス材料の固有ストークスシフトは約50meV未満であり、その結果として、放出放射のあるレベルの自己吸収があり、関連した吸収係数は約10−1cm−1以上、最高約10cm−1である。自己吸収は光子リサイクルにつながることがあり、さらに、内部量子効率が100パーセント未満であるために、各吸収再放出サイクルは、PVセルに到達することができる放出光の部分の減少をもたらすことがある。自己吸収のために、共振空洞構造の結果して得られる効率は、100パーセント未満であることがあり、ルミネセンス材料の内部量子効率によって上限が制限されることがある。事例4では、共振空洞構造は、発光の方向をPVセルの方へ制御して、結果として得られる効率を高めることができる。その上、共振空洞構造は、発光波長を共振にシフトすることができ、このことは、スペクトル引張り及び自己吸収減少をもたらすことができる。ARROWは、事例4に使用することができる共振空洞構造の1つの型である。特に、ARROWは、強度が低指数領域にコンセントレ−ションした状態で光学モードが伝播できるようにし、それによって、自己吸収のレベルを減少させることができる。
【0122】
[00127]当業者は、本明細書で説明されたソーラーモジュールを開発することについて追加の説明を必要としないが、それにもかかわらず、以下の参考文献を調べることによって、PVセルの形成及び処理に関してある有用な指導を見出すことができる。2007年6月30日に発行された「Method of Making Thin Silicon Sheets for Solar Cells」という名称の米国特許第7,169,669号明細書、及び2005年12月8日に公開された「Semiconductor Processing」という名称の米国特許出願公開第2005/0272225号明細書。これらの文献の開示は、その全体が参照により本明細書に組み込まれる。当業者は、また、以下の参考文献を調べることによって、スペクトルコンセントレ−ションに関してある有用な指導を見出すことができる。1980年10月14日に発行された「Luminescent Solar Energy Concentrator Devices」という名称の米国特許第4,227,939号明細書及びA.H. Zewali, "Photon Trapping and Energy Transfer in Multiple-Dye PlasticMatrices: an Efficient Solar-Energy Concentrator," Optics Letters, Vol. 1,p. 73 (1977)。これらの文献の開示は、その全体が参照により本明細書に組み込まれる。また、当業者は、Barnham et al., "Quantum-dot Concentrator and ThermodynamicModel for the Global Redshift," Applied Physics Letters, Vol. 76, No. 9,pp. 1197-1199 (2000)を調べることによって、多接合ソーラーモジュールに関してある有用な指導を見出すことができる。この文献の開示は、その全体が参照により本明細書に組み込まれる。
【0123】
[00128]本発明は、本発明の特定の実施形態に関連して説明されたが、添付の特許請求の範囲によって定義されるような本発明の真の精神及び範囲から逸脱することなしに様々な変化が加えられることがあり、同等物が代用されることがあることは、当業者が理解すべきことである。その上、特定の状況、材料、物質の組成、方法、又はプロセスを本発明の目的、精神及び範囲に適合させるために、多くの修正が加えられることがある。全てのそのような修正は、本明細書に添付された特許請求の範囲内である意図である。特に、本明細書で開示された方法は、特定の順序で行われる特定の作業に関連して説明されたが、これらの作業は、本発明の教示から逸脱することなしに同等の方法を形成するために、組み合わされ、さらに分割され、又は再配列されることがあることは理解されるであろう。したがって、本明細書で具体的に示されない限り、作業の順序及びグループ化は、本発明の限定でない。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
1組の太陽電池セルと、
前記1組の太陽電池セルに光学的に結合されたスペクトルコンセントレータと
を備えるソーラーモジュールであって、
前記スペクトルコンセントレータが、
入射太陽放射を収集し、
前記入射太陽放射を実質的に単色の放出放射に変換し、さらに、
前記実質的に単色の放出放射を前記1組の太陽電池セルに伝える
ように構成されている、ソーラーモジュール。
【請求項2】
前記スペクトルコンセントレータが、
第1の表面及び第2の表面を有するルミネセンス層と、
前記第1の表面に隣接する第1の反射器と、
前記第2の表面に隣接する第2の反射器と、を含むルミネセンススタックを備える、請求項1に記載のソーラーモジュール。
【請求項3】
前記ルミネセンス層が、(a)少なくとも50パーセントの内部量子効率、(b)半値全幅が100nm以下のスペクトル幅、及び(c)近赤外範囲のピーク発光波長を有するフォトルミネセンスを示すルミネセンス材料を含む、請求項2に記載のソーラーモジュール。
【請求項4】
前記ルミネセンス層が、次式を有するルミネセンス材料を含み、
[A
式中、
AがIA族の元素から選ばれ、
BがVA族の元素から選ばれ、
XがVIIB族の元素から選ばれ、
aが1〜9の範囲にあり、
bが1〜5の範囲にあり、さらに、
xが1〜9の範囲にある、請求項2に記載のソーラーモジュール。
【請求項5】
前記ルミネセンス層が、InP、Zn、CuO、CuO、CuInGaS、及びCuInGaSeから選ばれたルミネセンス材料を含む、請求項2に記載のソーラーモジュール。
【請求項6】
前記第1の反射器及び前記第2の反射器の少なくとも一方が誘電体スタックを含む、請求項2に記載のソーラーモジュール。
【請求項7】
前記1組の太陽電池セルのうちの少なくとも1つが、前記スペクトルコンセントレータに対して垂直な接合の向きを有する、請求項1に記載のソーラーモジュール。
【請求項8】
前記1組の太陽電池セルのうちの少なくとも2つが、直列に接続されている、請求項1に記載のソーラーモジュール。
【請求項9】
前記スペクトルコンセントレータが、複数の溝を画定し、前記1組の太陽電池セルのうちの複数のものが前記溝の対応のものに配置されている、請求項1に記載のソーラーモジュール。
【請求項10】
前記スペクトルコンセントレータが、共振空洞構造を含む、請求項1に記載のソーラーモジュール。

【図1】
image rotate

【図2】
image rotate

【図3】
image rotate

【図4】
image rotate

【図5】
image rotate

【図6】
image rotate

【図7】
image rotate

【図8】
image rotate


【公表番号】特表2010−531067(P2010−531067A)
【公表日】平成22年9月16日(2010.9.16)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−513490(P2010−513490)
【出願日】平成20年6月23日(2008.6.23)
【国際出願番号】PCT/US2008/067928
【国際公開番号】WO2009/002943
【国際公開日】平成20年12月31日(2008.12.31)
【出願人】(505041911)ウルトラドッツ・インコーポレイテッド (5)
【氏名又は名称原語表記】UltraDots, Inc.
【Fターム(参考)】