説明

スポイト

【課題】簡易な構成にもかかわらず簡易な操作で一定量の液体(検体)を採取する。
【解決手段】スポイト10は、一端に注出口15を有し、他端に操作部17を有したスポイト本体11を備え、操作部17に当該操作部17の操作量を規制するためのベースプレート部を設け、ベースプレート部20により操作部17の操作量を規制して一定化することにより、ひいては、吸入する液体量を一定化する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、スポイトに係り、特に血液、体液、尿などの検査対象の液体(検体)を所定量、採取するための使い捨て型のスポイトに関する。
【背景技術】
【0002】
従来、血液、体液、尿などの検査においては、検体を所定量だけ採取し、試薬などを混合させて検査を行っていた。
この場合において、検体の採取には、衛生管理上のため、あるいは、雑菌、異物などの混入をなくし検査の信頼性を向上させるために使い捨てスポイトが用いられていた(例えば、特許文献1参照)。
使い捨てスポイトは、透明で弾性変形可能な樹脂でできており、操作部を押圧してつぶした状態で注出口を検体である液体中に差し込み、操作部の押圧力を弱めて元の形状に戻すことにより、スポイト内に検体としての液体を吸入するようにされていた。
【特許文献1】特開平06−34498号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0003】
しかしながら、上記従来の使い捨てスポイトは、操作部の押圧状態に応じて、液体の吸入量が大きく変化し、一定量(例えば、数十マイクロリットル程度)の液体を採取する用途には適していなかった。
そこで本発明の目的は、簡易な構成にもかかわらず簡易な操作で一定量の液体(検体)を容易に採取することが可能な使い捨てのスポイトを提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0004】
上記課題を解決するため、スポイトは、一端に注出口を有し、他端に操作部を有したスポイト本体を備え、前記操作部に当該操作部の操作量を規制するための操作規制部を設けたことを特徴としている。
上記構成によれば、操作規制部は、操作部の操作量を規制することにより、ひいては、吸入する液体量を一定化することができる。
【0005】
この場合において、前記操作規制部は、前記操作部の押込方向に所定厚さを有し、前記押込方向に略垂直な操作規制面を備えているようにしてもよい。
また、前記スポイト本体は、前記注出口側に吸込量範囲を示すための目盛部が設けられているようにしてもよい。
さらに、前記操作部は、操作者の指の位置を所定位置とするための指位置規制部を備えているようにしてもよい。
【発明の効果】
【0006】
本発明によれば、簡易な操作で一定量の液体(検体)を容易に採取することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0007】
次に図面を参照して本発明の好適な実施の形態について説明する。
[1]第1実施形態
図1は、第1実施形態のスポイトの外観斜視図である。
図2は、第1実施形態のスポイトの正面図である。
図3は、第1実施形態のスポイトの側面図である。
第1実施形態のスポイト10は、大別すると、検体としての液体を収納するスポイト本体11と、スポイト10の取り扱いを容易にするための把持部12と、を備えている。
ここで、スポイト10の材質としては、透明性、弾性および形状復元性のある材料が用いられ、例えば、ポリエチレン、ポリプロピレン、ポリエステルなどの各種樹脂が用いられる。
スポイト本体11は、液体が導入されるととともに、採取した液体を注ぎ出すための注出口15と、採取した液体を収納するための液体収納部16と、液体を採取するためにオペレータが操作を行う操作部17と、採取量範囲をオペレータに視認させるための目盛部18と、を備えている。
【0008】
把持部12は、操作規制部として機能するベースプレート部20と、オペレータが当該把持部12をつまんだ際に滑らないようにするためにベースプレート部20から複数突設された滑り止め部21と、を備えている。
ベースプレート部20は、スポイト本体11の操作部17に沿って設けられており、このベースプレート部20の面20Aは、操作部の押込方向に略垂直な操作規制面として機能しており、オペレータが操作部17を指などで押圧操作した場合であっても、所定状態以上には、操作部17がつぶれないようになっている。また、ベースプレート部20は、操作部17の押込方向に所定厚さを有し、所定の固さを有している。この結果、スポイト本体11の操作部17をオペレータがつまんで押圧した場合に、操作部17の変形状態を一定とすることができ、検体の採取量がほぼ一定となるようにされている。
目盛部18は、検体の最小吸入量の目安を示す下限指示目盛部18Lと、検体の最大吸入量の目安を示す上限指示目盛部18Hと、を備えており、下限指示目盛部18Lおよび上限指示目盛部18Hで示される範囲内に、液体の液面が収まれば、所定量(例えば、10マイクロリットル)の液体が吸入されたと判別することができるようになっている。
【0009】
図4は、第1実施形態の液体採取時の操作説明図である。
次に液体採取時の操作について説明する。
この場合に、複数のスポイト10は、滅菌され、図示しない収納部材に把持部12を容易につまんで取り出すことが可能な状態で収納、保持されている。
そこで、オペレータは、図示しない収納部材に収納されているスポイト10の把持部12をつまむことにより取り出す。
続いてオペレータは、図4に破線で示すように、親指と人差し指とで操作部17をつまむ。
そして、操作部17を押圧して、変形させ、図4に実線で示すように、各指がベースプレートに当接するまで押し込む。
【0010】
この状態で、試験管(容器)TT内に収納されている検体となる血液などの液体L中に、少なくとも注出口15が採取操作中は、ずっと浸されているように差し込み、指による押圧力を徐々に弱くすると、操作部17の形状復元性により徐々に操作部17が元の形状に戻る。
これにより、注出口15から検体である液体がスポイト本体11の液体収納部16内に吸引され、収納されることとなる。本実施形態によれば、この状態で、収納された液体Lの量は適正範囲内となっているはずであるが、吸引が終了した段階で、オペレータは、念のため、収納された液体Lの量が適正であるかを確認することとなる。
すなわち、スポイト本体11の液体収納部16内の液体Lの液面LSが、目盛部18を構成する下限指示目盛部18Lと上限指示目盛部18Hとの間に位置しているか否かを確認する。
【0011】
図5は、収納した液体の量の確認の説明図である。
そして、オペレータは、図5(A)に示すように、スポイト本体11の液体収納部16内に採取した液体の液面が下限指示目盛部18Lと、上限指示目盛部18Hとの間に位置している場合には、採取した液体の量が適正範囲内であると判別する。
また、オペレータは、図5(B)に示すように、スポイト本体11の液体収納部16内に採取した液体Lの液面LSが下限指示目盛部18Lより下側にある場合には、吸入量不足として、再度採取を行い、収納された液体Lの量が適正であるかを再度確認することとなる。
また、オペレータは、図5(C)に示すように、スポイト本体11の液体収納部16内に採取した液体Lの液面LSが上限指示目盛部18Hより上側にある場合には、吸入量過多として、操作部17を加減しながら押圧して、注出口15から液体を注出し、再度液体の量が適正範囲内であるかを確認することとなる。
以上の説明のように、本第1実施形態によれば、簡易な構成にもかかわらず、簡易な操作で、所定量(適正量)の液体(検体)を採取できる。
【0012】
[2]第2実施形態
上記第1実施形態では、オペレータが操作部17を持つ位置については、特に規制されているわけではないので、一定量の液体を採取するための操作を行うには、ある程度の慣れが必要であった。これに対し、本第2実施形態は、オペレータが操作部17を持つ位置を規制することにより、常に一定の操作状態を実現するためのものである。
図6は、第2実施形態のスポイトの外観斜視図である。
図7は、第2実施形態のスポイトの正面図である。
図8は、第2実施形態のスポイトの側面図である。
図6ないし図8において、第1実施形態と同様の部分については、同一の符号を付すものとする。
【0013】
第2実施形態のスポイト10Aは、大別すると、検体としての液体を収納するスポイト本体11と、スポイト10Aの取り扱いを容易にするための把持部12と、オペレータの指の位置を所定位置に規制するための指位置規制部31と、を備えている。
スポイト本体11は、液体が導入されるととともに、採取した液体を注ぎ出すための注出口15と、採取した液体を収納するための液体収納部16と、液体を採取するためにオペレータが操作を行う操作部17と、採取量範囲をオペレータに視認させるための目盛部18と、を備えている。
把持部12は、操作規制部として機能するベースプレート部20と、オペレータが当該把持部12をつまんだ際に滑らないようにするためにベースプレート部20から複数突設された滑り止め部21と、を備えている。
ベースプレート部20の先端側には、指位置規制部31が設けられており、オペレータは、指先を指位置規制部31に押し当てるようにして、スポイト本体11の操作部17を把持することとなる。
【0014】
図9は、第2実施形態の液体採取時の操作説明図である。
次に液体採取時の操作について説明する。
まず、オペレータは、図9に破線で示すように、親指と人差し指とを、指位置規制部31に当接させた状態で操作部17をつまむ。
そして、操作部17を押圧して、変形させ、図9に実線で示すように、各指がベースプレート部20に当接するまで押し込む。
この状態で、試験管(容器)TT内に収納されている検体となる血液などの液体L中に、少なくとも注出口15が採取操作中は、ずっと浸されているように差し込み、指による押圧力を徐々に弱くすると、操作部17の形状復元性により徐々に操作部17が元の形状に戻る。
【0015】
これにより、注出口15から検体である液体がスポイト本体11の液体収納部16内に吸引され、収納されることとなる。
したがって、オペレータは、第1実施形態と同様の方法で、収納された液体Lの量が適正であるかを確認することとなる。
以上の説明のように本第2実施形態によれば、簡易な構成にもかかわらず、熟練を要することなく、簡易な操作で、所定量(適正量)の液体(検体)を採取できる。
【0016】
[3]実施形態の変形例
以上の実施形態においては、ベースプレート部20に突設された滑り止め部21を設けていたが、表面をざらつかせるなどして、滑りにくくすれば、必ずしも滑り止め部21の形状に限定されるものではない。さらには、ベースプレート部20の材質によっては、滑り止め部21を設ける必要もない。
【0017】
また、ベースプレート部20は、操作部の操作量を規制することができるものであれば、形状、厚さ、固さなどは任意に設定することが可能である。
また、目盛部18として、下限指示目盛部18Lおよび上限指示目盛部18Hの二つを設けていたが、使用目的に応じ、いずれか一方のみを設ける構成、あるいは、三つ以上の指示目盛部を設けるように構成することも可能である。
【0018】
また、上記第2実施形態において、指位置規制部31は、ベースプレート部20に対し、垂直な方向にまっすぐに延びた平面を有する形状としていたが、指の形状に合わせて丸みを持たせたり、棒状としたりすることも可能である。
【図面の簡単な説明】
【0019】
【図1】第1実施形態のスポイトの外観斜視図である。
【図2】第1実施形態のスポイトの正面図である。
【図3】第1実施形態のスポイトの側面図である。
【図4】第1実施形態の液体採取時の操作説明図である。
【図5】収納した液体の量の確認の説明図である。
【図6】第2実施形態のスポイトの外観斜視図である。
【図7】第2実施形態のスポイトの正面図である。
【図8】第2実施形態のスポイトの側面図である。
【図9】第2実施形態の液体採取時の操作説明図である。
【符号の説明】
【0020】
10、10A…スポイト、11…スポイト本体、12…把持部、15…注出口、16…液体収納部、17…操作部、18…目盛部、18H…上限指示目盛部、18L…下限指示目盛部、20…ベースプレート部、31…指位置規制部、L…液体、LS…液面。


【特許請求の範囲】
【請求項1】
一端に注出口を有し、他端に操作部を有したスポイト本体を備え、
前記操作部に当該操作部の操作量を規制するための操作規制部を設けたことを特徴とするスポイト。
【請求項2】
請求項1記載のスポイトにおいて、
前記操作規制部は、前記操作部の押込方向に所定厚さを有し、前記押込方向に略垂直な操作規制面を備えていることを特徴とするスポイト。
【請求項3】
請求項1または請求項2記載のスポイトにおいて、
前記スポイト本体は、前記注出口側に吸込量範囲を示すための目盛部が設けられていることを特徴とするスポイト。
【請求項4】
請求項1ないし請求項3のいずれかに記載のスポイトにおいて、
前記操作部は、操作者の指の位置を所定位置とするための指位置規制部を備えていることを特徴とするスポイト。


【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【公開番号】特開2008−2845(P2008−2845A)
【公開日】平成20年1月10日(2008.1.10)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2006−170332(P2006−170332)
【出願日】平成18年6月20日(2006.6.20)
【出願人】(506212743)有限会社オリジンサイエンス (2)
【Fターム(参考)】