説明

スポンジ状成形体

【課題】 施工作業性、耐久性が良好で、且つ可撓性、防火性の優れたスポンジ状成形体の提供。
【解決手段】 水性ウレタンプレポリマーからなる軟質ウレタンフォームに、特定量の亜リン酸アルミニウムおよび無機充填剤を含有させた酸素指数が40以上の難燃性を有したスポンジ状成形体で、このスポンジ状成形体は、火災発生時に不燃性の堅固なスポンジ層を形成するとともに、長時間高温下にさらされても、そのスポンジ層が脆化しにくく、その残渣が充分な形状保持性を有する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、スポンジ状成形体に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、難燃性スポンジ材にはポリウレタンフォームに有機リン系難燃剤、ハロゲン化合物、水酸化アルミニウムや三酸化アンチモン等の難燃剤が配合されるハロゲン系難燃性スポンジ材や、ノンハロゲン系難燃性スポンジ材と呼ばれるポリウレタン中にリン系難燃剤を添加(例えば特許文献1参照)するものや、メラミン樹脂と水酸化アルミニウムを添加(例えば特許文献2参照)するものがある。
【0003】
これらの難燃性スポンジ材は、それ自身は難燃性を発現するものの直火に長時間さらされると溶融、熱分解して形状を保持することはできなかった。
【0004】
【特許文献1】特開平10−147707号公報(第2頁:請求項1〜2)
【特許文献2】特開平07−292055号公報(第2頁:請求項1〜4)
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
本発明は、防火壁の貫通口の隙間などに用いられ、火災が発生した際に延焼を防止するとともに、貫通部材を支えるクッション性、防音・防振性、軽量化が要求される部位に使用される、スポンジ状成形体を提供することを課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明は、水性ウレタンプレポリマーから得られる軟質ウレタンフォーム、亜リン酸アルミニウム及び無機充填剤からなり、酸素指数が40以上であるスポンジ状成形体である。さらに本発明は、水性ウレタンプレポリマーから得られる軟質ウレタンフォームが100質量部、亜リン酸アルミニウムが10〜150質量部及び無機充填剤が10〜150質量部からなるスポンジ状成形体であり、無機充填剤が水酸化アルミニウムであるスポンジ状成形体である。またこの成形体は切削加工品である。
【発明の効果】
【0007】
本発明のスポンジ状成形体は、火災時に不燃性の堅固なスポンジ層を形成するとともに、長時間高温下にさらされても、そのスポンジ層が脆弱化しにくく、優れた防火性能を有する。
【発明を実施するための最良の形態】
【0008】
本発明のスポンジ状成形体は、水性ウレタンプレポリマーから得られる軟質ウレタンフォーム、亜リン酸アルミニウム及び無機充填剤を含むものである。
【0009】
本発明で用いられる軟質ウレタンフォームには、一液タイプの水性ウレタンプレポリマーから得られる軟質ウレタンフォームである。水性ウレタンプレポリマーとしては、公知のもの又は市販品を使用できる。
【0010】
本発明のスポンジ状成形体は、形崩れ防止のための形状安定化剤として亜リン酸アルミニウムを含む。本発明で用いられる亜リン酸アルミニウムは、分散性の観点から平均粒径はレーザー回折法の測定値で1〜100μmが好ましい。
【0011】
亜リン酸アルミニウムの含有量は、特に制限されるものではなく、水性ウレタンプレポリマーから得られる軟質ウレタンフォームの種類や所望の発泡倍率等によって適宜設定することが出来るが、水性ウレタンプレポリマーから得られる軟質ウレタンフォーム100質量部に対して10〜150質量部が好ましい。10質量部より少ないと得られるスポンジ状成形体の形状安定化性能が不十分で150質量部を超えると得られるスポンジ状成形体の硬度が高くなり可撓性が低下する傾向がある。
【0012】
本発明では、防火性をより向上させるために無機充填剤を用いる。無機充填剤としては、例えば、シリカ、珪藻土、アルミナ、酸化亜鉛、酸化チタン、酸化マグネシウム、酸化鉄、水酸化マグネシウム、水酸化アルミニウム、ホウ酸亜鉛、ホウ酸ナトリウム、炭酸カルシウム、炭酸マグネシウム、炭酸亜鉛、炭酸バリウム、ハイドロタルサイト、硫酸カルシウム、硫酸バリウム、ケイ酸カルシウム、タルク、クレー、マイカ、ベントナイト、活性白土、セピオライト、ガラス繊維、ガラスビーズ、窒化アルミニウム、窒化ホウ素、カーボンブラック、グラファイト等が挙げられる。これらは単独で使用してもよく、また2種以上を併用しても良い。これらの中では、水酸化アルミニウムや水酸化マグネシウムは、加熱時の脱水反応による吸熱反応で温度上昇が抑えられるという点で好ましい。中でも水酸化アルミニウムが特に好ましい。また、分散性の観点からこれらの充填剤の平均粒径は、レーザー回折法の測定値で1〜50μmが好ましい。
【0013】
無機充填剤の含有量は、特に制限されるものではなく、水性ウレタンプレポリマーから得られる軟質ウレタンフォームの種類や所望の発泡倍率等によって適宜設定することができるが、水性ウレタンプレポリマーから得られる軟質ウレタンフォーム100質量部に対して10〜150質量部が好ましい。150質量部を超えて使用すると、スポンジ状成形体の硬度が高くなって可撓性が劣り、切削加工性が悪くなる場合がある。
【0014】
本発明のスポンジ状成形体は、酸素指数40以上であることを特徴とする。酸素指数が40未満では、火災時の防火性が不十分で、形崩れ防止性も劣る。酸素指数の調整は亜リン酸アルミニウム及び無機充填剤の配合量によって調整できる。
【0015】
本発明のスポンジ状成形体の調整方法は、特に限定されるものではないが、まず亜リン酸アルミニウム、無機充填剤に水を加えてスラリー状にした後、そのスラリーに水性ウレタンプレポリマーを添加し、発泡が開始するまで攪拌混合を続け、次いで所定の形状を有する型に注入して発泡成形させ、更に約50℃で養生して含有水分を蒸発させて得るのが好ましい。養生時間は、スポンジ状成形体である発泡成形体の大きさや養生温度に応じて適宜設定すればよい。
【0016】
亜リン酸アルミニウム及び無機充填剤の配合比は上記のとおりで用途や目的によって適宜設定できるが、スラリー中のそれらの合計量は、通常は20〜90質量%であり、好ましくは50〜70質量%である。固形分が20質量%未満の場合には、火災時に不燃性の堅固なスポンジ層が得られないおそれがある。また90質量%を超える場合は、スラリーの粘度が上昇し、性能が安定したスポンジ状成形体が得られなくなることがある。
【0017】
また、スラリーには、必要に応じて他の添加剤、例えば、界面活性剤、架橋剤、整泡剤、触媒、発泡剤、難燃剤、安定剤、紫外線吸収剤、酸化防止剤、顔料、フィラー等を配合することもできる。これらの添加剤は、スラリー調整時に同時あるいは順次配合した後、公知の攪拌機等で均一に混合するのが好ましい。
【0018】
本発明のスポンジ状成形体は、その弾性、柔軟性、断熱性、耐火性、防振性、防音性等の特性が要求される様々な分野に利用でき、使用部位も特に制限されず、防火性が要求される箇所に幅広く用いることができる。
【0019】
本発明のスポンジ状成形体から得られる切削加工品はコンピューター制御の工作機械のうちNCフライス盤やマシニングセンタ等による機械加工、のこぎり等を使用する手加工で加工される。
【0020】
本発明のスポンジ状成形体から得られる切削加工品は、防火壁、床スラブ等の防火区画体に設けられた貫通口を通る電源ケーブルや通信ケーブル、パイプ等と防火壁の隙間に挿入する他、施工部分に適合する形状に成形した切削加工品を装着して用いることが出来る。また、防振・防音化のため建物の勘合部に装着して用いることが出来、これらは粘着剤や接着剤で貼り付けるか、ボルトや釘などで固定して用いられる。
【実施例】
【0021】
以下、本発明を実施例及び比較例により具体的に説明するが、これらの実施例は本発明を限定するものでない。なお、以下の説明における部及び%は質量基準に基づく。
【0022】
表1〜表2に示す配合量で、亜リン酸アルミニウム、無機充填剤の混合物に水を加えてスラリーを調整した。このスラリーに水性ウレタンプレポリマーを加えて攪拌混合し、寸法12cm×12cm×17cmの型に注入して発泡成形させ、型と共にオーブン中100℃で1時間で養生した後、脱型した。得られた発泡硬化体をさらにオーブン中50℃で2日間養生することにより水分を蒸発させてスポンジ状成形体を得た。
【0023】
実施例において使用した材料は、それぞれ以下に示したものである。
(1) 水性ウレタンプレポリマー:(三井化学(株)製、「EGH−401」)
(2) ホウ酸:(BORAX(株)製)
(3) 亜リン酸アルミニウム:(太平化学産業(株)製、「APA―100」)
(4)無機充填剤:水酸化アルミニウム(日本軽金属(株)製、「B53」)
【0024】
「実施例1〜3」「比較例1〜4」
実施例及び比較例において下記の各特性を評価し、表1〜表2にまとめた。
各特性の測定方法を以下に示す。
スラリー状態:亜リン酸アルミニウム、無機充填剤および水のスラリーの状態を調べ、流動可能な状態を「良」、パサパサした状態で流動しないものを「不可」と評価した。
表面硬度:発泡成形体にC型ゴム硬度計(高分子計器(株)製)を当てた直後の硬度計の指示を読み取ることにより測定した。
形状保持性:発泡成形体を300℃で保持された雰囲気内に0.5時間放置し膨張させた後、その膨張体の硬さを手指感触により調べた。スポンジ状成形体が硬くしっかりしているものを「優」、形状を保持できているものを「良」、形状をなんとか保持しているものを「可」、形状保持性の無いもの又は溶融したものを「不可」とした。
酸素指数:JIS K7201に準じて燃焼性試験装置(スガ試験機(株)製、ON−1D型)を用いて測定した。
耐久性:スポンジ状成形体から5cm角の試験片を切り出し、100℃のギヤーオーブン中に5日間加熱処理した後、室温で1日間放置しスポンジの加水分解状況を観察した。
手指感触で弾性に変化の無いものを「良」、加水分解が起こり、弾性が失われたものを「不可」とした。
【0025】
【表1】

【0026】
【表2】


【特許請求の範囲】
【請求項1】
水性ウレタンプレポリマーから得られる軟質ウレタンフォーム、亜リン酸アルミニウム及び無機充填剤からなり、酸素指数が40以上であるスポンジ状成形体。
【請求項2】
水性ウレタンプレポリマーから得られる軟質ウレタンフォームが100質量部、亜リン酸アルミニウムが10〜150質量部及び無機充填剤が10〜150質量部である請求項1に記載のスポンジ状成形体。
【請求項3】
無機充填剤が水酸化アルミニウムであることを特徴とする請求項1または請求項2に記載したスポンジ状成形体。
【請求項4】
スポンジ状成形体が切削加工品である請求項1〜請求項3のいずれか1項に記載のスポンジ状成形体。


【公開番号】特開2006−257118(P2006−257118A)
【公開日】平成18年9月28日(2006.9.28)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2005−72416(P2005−72416)
【出願日】平成17年3月15日(2005.3.15)
【出願人】(000003296)電気化学工業株式会社 (1,539)
【出願人】(591129771)シー・アール・ケイ株式会社 (31)
【Fターム(参考)】