説明

スポーツ用品

【課題】外側に形成した装飾模様の外観不良の発生を防止し、長期間にわたって優れた外観を維持することのできるスポーツ用品を提供すること。
【解決手段】本体部材12の外側に装飾模様14を形成したスポーツ用品10であって、装飾模様14は、部材本体12上に粘着剤層16と光輝性装飾層18と合成樹脂フィルム層20と伸縮調節層22とを積層して形成され、この伸縮調節層22は、合成樹脂フィルム層20の表面に沿って互いに直交する方向に沿う伸び率の差が、合成樹脂フィルム層20の表面に沿って互いに直交する方向に沿う伸び率の差よりも小さな層と、合成樹脂フィルム層20の表面に沿って互いに直交する方向に沿う2つの伸び率のうち、伸び率の小さい方向を、合成樹脂フィルム層20の表面に沿って互いに直交する方向に沿う2つの伸び率のうち、伸び率の大きい方向に沿わせて配向させた層との少なくとも1つの層を有するスポーツ用品。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、スポーツ用品に関し、特に、部材本体の外側に装飾模様を形成したスポーツ用品に関する。
【背景技術】
【0002】
一般に、釣りやスポーツに用いる各種用具の外観品質の向上のために、これらの用具の表面に装飾用シートを貼着することが知られている。
【0003】
このような装飾用シートには、合成樹脂製フィルムの一面に光輝性材料等の装飾層をコーティングして形成し、この装飾層の上に接着剤層及び離型性フィルムを積層して形成したものがある(例えば特許文献1参照)。
【0004】
このような装飾用シートは、離型性シートを分離した後に、各種用具の所要部位に粘着剤を介して貼着することにより、例えば極薄の光輝性装飾層を所要の用具の所要部位に直接形成する等の装飾加工工程を必要とせず、極めて簡単に外観品質の向上を図ることができる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開2007−70518号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
しかし、スポーツ用品は、外面形状が完全に平坦に形成されることはほとんど無く、曲面形状又は凹凸形状に形成されることが多い。このため、合成樹脂製フィルム上に例えば金属層を蒸着して光輝性装飾層を形成し、この上から接着剤層を積層した薄い装飾用シートの場合、スポーツ用品の曲面状又は凹凸形状の外面に貼着する際に、装飾層が外面形状に沿った滑らかな面状に展開しないことがある。例えば、装飾層の一部が部分的に重なり合い、一部に凹凸状態を形成し、更に、クラックが発生する等である。
【0007】
装飾層の一部に凹凸が形成される等、滑らかな面が形成されない場合には、光が乱反射し、光輝性が損なわれ、また、発生したクラックにより装飾外観が阻害される等の外観不良を引き起こす。特に、装飾用シートの貼着は、手作業を必要とし、どのように注意を払って丁寧な作業を行っても、外観不良を確実に防止することは困難である。特に目立った外観を形成する装飾用シートの光輝性部分にこのような外観不良が発生すると、スポーツ用品の全体の品質イメージを大きく損なうことになる。
【0008】
本発明は、このような事情に基づいてなされたもので、外側に形成した装飾模様の外観不良の発生を防止し、長期間にわたって優れた外観を維持することのできるスポーツ用品及びこれに用いる装飾用シートを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0009】
上記目的を達成する本発明によると、本体部材の外側に装飾模様を形成したスポーツ用品であって、前記装飾模様は、部材本体上に粘着剤層と光輝性装飾層と合成樹脂フィルム層と伸縮調節層とを積層して形成され、この伸縮調節層は、前記合成樹脂フィルム層の表面に沿って互いに直交する方向に沿う伸び率の差が、前記合成樹脂フィルム層の表面に沿って互いに直交する方向に沿う伸び率の差よりも小さな層と、前記合成樹脂フィルム層の表面に沿って互いに直交する方向に沿う2つの伸び率のうち、伸び率の小さい方向を、前記合成樹脂フィルム層の表面に沿って互いに直交する方向に沿う2つの伸び率のうち、伸び率の大きい方向に沿わせて配向させた層との少なくとも1つの層を有するスポーツ用品が提供される。
【0010】
前記部材本体は、強化繊維に合成樹脂を含浸した繊維強化樹脂材料を巻装した繊維強化樹脂製管状体で形成されるものであってもよい。
【0011】
前記伸縮調節層は、前記合成樹脂フィルム層の外側に配置されることが好ましい。
【0012】
また、前記伸縮調節層は、複数の層を有し、少なくとも1つの層が前記合成樹脂フィルム層に接して配置されるものであってもよい。
【0013】
前記粘着剤層は、前記合成樹脂フィルム層の厚さ以下の厚さを有することが好ましい。
【0014】
更に、本発明によれば、剥離用フィルムの上に、粘着剤層と光輝性装飾層と合成樹脂フィルム層と伸縮調節層とを有する模様形成層を形成し、前記伸縮調節層は、前記合成樹脂フィルム層の表面に沿って互いに直交する方向に沿う伸び率の差が、前記合成樹脂フィルム層の表面に沿って互いに直交する方向に沿う伸び率の差よりも小さな層と、前記合成樹脂フィルム層の表面に沿って互いに直交する方向に沿う2つの伸び率のうち、伸び率の小さい方向を、前記合成樹脂フィルム層の表面に沿って互いに直交する方向に沿う2つの伸び率のうち、伸び率の大きい方向に沿わせて配向させた層との少なくとも1つの層を有し、更に、前記模様形成層の上に保護フィルムを配置した装飾用シートが提供される。
【発明の効果】
【0015】
本発明のスポーツ用品によると、伸縮調節層が合成樹脂フィルム層の表面に沿って互いに直交する方向に沿う伸び率の差を小さくするため、光輝性装飾層及び粘着剤層の伸縮による装飾模様の凹凸、重なり、亀裂等の外観不良の発生を防止し、長期間にわたって優れた外観を維持することができる。
【0016】
部材本体が、強化繊維に合成樹脂を含浸した繊維強化樹脂材料を巻装した繊維強化樹脂製管状体で形成される場合には、管状体の軸方向と周方向とのそれぞれの延設方向で相違する外面形状に、外観不良の発生を防止した装飾模様を形成でき、管状体が撓り又は変形した場合でも、この装飾模様による外観を長期間にわたって維持することができる。
【0017】
伸縮調節層が合成樹脂フィルム層の外側に配置される場合には、合成樹脂フィルム層の伸縮を伸縮調節層で規制することで、光輝性装飾層に作用する外部の影響を少なくし、光輝性装飾層による外観不良を確実に防止することができる。
【0018】
伸縮調節層が複数の層を有し、少なくとも1つの層が合成樹脂フィルム層に接して配置される場合には、合成樹脂フィルム層の動きをより効率よく抑えることができ、更に、伸縮調節層による装飾模様の厚さの増大を防止することができる。
【0019】
粘着剤層が合成樹脂フィルム層の厚さ以下の厚さを有する場合には、相対的に粘着剤層の厚さを薄くすることで、装飾模様を形成する際の光輝性装飾層の動きを防止でき、光輝性装飾層による外観不良を確実に防止することができる。
【0020】
また、本発明の装飾用シートによると、剥離用フィルムを剥がしたときに、合成樹脂フィルムの伸縮を防止でき、貼着する部材の表面が曲面や凹凸形状に形成されている場合であっても、光輝性装飾層の外観を長期間にわたって維持することのできる装飾模様を簡単かつ容易に形成することができる。
【図面の簡単な説明】
【0021】
【図1】本発明の実施形態によるスポーツ用品の概略的な外観図。
【図2】図1に示すスポーツ用品の装飾模様を形成した部分の概略的な断面図。
【図3】図2の装飾模様を形成する装飾用シートの概略的な断面図。
【図4】他の実施形態による装飾用シートの概略的な断面図。
【発明を実施するための形態】
【0022】
図1及び図2は、本発明の好ましい実施形態にスポーツ用品10を示す。なお、本明細書中では、スポーツ用品は、平面状、円筒状又は曲面状の種々の外形形状を有し、例えばテニス用ラケット、バトミントン用ラケット、又は、ゴルフクラブのシャフト等の運動に用いる用具、及び、例えば釣竿、リール、ルアー、魚釣用友船、又は、クーラーボックス等の釣りに用いる用具等を含む。なお、このようなスポーツ用品以外にも、外観品質の向上が望まれる種々の用具であってもよく、特に、外面が円筒状に湾曲した部位に装飾模様を形成する用具として好適である。
【0023】
図1に示すスポーツ用品10は、例えばゴルフクラブのシャフトや釣竿に用いる管状体で形成された部材本体12を有する。この部材本体12は、例えば炭素繊維で形成した強化繊維にエポキシ樹脂等の合成樹脂を含浸した繊維強化樹脂材料であるプリプレグシートを、図示しない金属製の芯金の外周面に巻回して形成してある。このような芯金は、部材本体12よりも長く、部材本体12を形成する外周領域を、一端側が他端側より小径にした先細状の形成を有し、一端に配置した操作部を介して操作することができる。
【0024】
本実施形態では、部材本体12の基本的な曲げおよびねじり強度を確保した基本構造を形成するための本体層を、繊維強化プリプレグを巻回して形成し、更に、強度を向上し、安定化を図るために、所要部位に種々の繊維強化プリプレグを巻回することで補強層が形成される。
【0025】
部材本体12の本体層は、強化繊維を周方向、軸長方向又は傾斜方向の種々の方向に配向させた複数枚のプリプレグを巻回し、配向方向の異なる複数の繊維層から形成されている。これらのプリプレグは、芯金上に所要回数にわたって巻回するに必要な幅寸法で、長さ方向が部材本体12の全長にわたる大きさに予め裁断されている。これらのプリプレグは、1枚ずつ巻回してもよく、又は、予め複数枚のプリプレグを貼り合わせた状態で巻回してもよい。複数枚を張り合わせる場合には、互いに縫い合わせた状態とすることもできる。また、補強層を形成するプリプレグは、本体層の内周側、外周側又は本体層内の所要部位に巻回する。
【0026】
このように芯金に所要のプリプレグを巻回した後、これらのプリプレグを緊締テープで芯金上に締付け、常法、すなわち、加熱工程、冷却工程、脱芯、緊締テープの除去、研磨、塗装等の工程を経て、図1に示すような管状の部材本体12に形成される。
【0027】
部材本体12を例えばゴルフクラブのシャフトに用いる場合には、このようなプリプレグは、強化繊維を、炭素繊維の他、例えばガラス、ボロン、アラミド、アルミナ等の有機、無機繊維で形成することができ、含浸する合成樹脂についても、エポキシ樹脂等の熱硬化性合成樹脂の他、熱可塑性合成樹脂を用いることができる。また、プリプレグの樹脂含浸量は10〜50wt%(重量比で)であることが好ましく、特に、20〜40wt%程度に形成することが好ましい。これらの強化繊維の種類及び弾性率、合成樹脂の種類及び含浸量は、それぞれのプリプレグ毎に変化させることにより、必要とする特性を付与することができる。
【0028】
緊締テープを除去した後に形成される表面の凹凸は表面研磨工程で除去し、滑らかな円筒状外面に形成する。そして、塗装工程では、地色を目立たなくする下塗りをした上から所要の外観を与えるための上塗りが行われる。この上塗りは、塗装、印刷あるいはその組合せ等適宜の方法で行うことができる。
【0029】
このように上塗り塗装を施された形成されたスポーツ用品10の部材本体12に、図1の右方に示す大径の基端部の近くに配置した装飾模様14を形成する。この装飾模様14は、例えば文字、記号、絵柄等をで形成した複数の模様部14aを所要間隔で配置してあり、各模様部14aが光輝性のある独立した図柄を形成すると共に、全体として纏まりのある模様部を形成する。この装飾模様14は、外部から観察したときに、本体部材12の外面上で、各模様部14a及びその全体の纏まりのある模様部を目立たせた優れた外観を提供するものである。このような装飾模様14は、部材本体12上の適宜の位置に配置することができる。この装飾模様14を形成する模様部14aは1つだけでもよく、その大きさも位置及び種類に応じて適宜に設定することができる。
【0030】
本実施形態の装飾模様14を形成する各模様部14aは、部材本体12の例えば研磨仕上げ及び上塗りした滑らかな円筒状面で形成した外面上に、粘着剤層16と光輝性装飾層18と合成樹脂フィルム層20と伸縮調節層22とを順に積層して形成してあり、その全体を保護層26で覆ってある。
【0031】
この模様部14aは、後述する装飾用シート24(図3)を部材本体12の円筒状の外面上に貼着することにより形成したもので、粘着剤層16の硬化した粘着剤により、部材本体12に強固に一体化される。この模様部14aを覆う透明状の保護層26は、剥離するのを確実に防止し、模様部14a内に水分等の異物の進入するのを阻止する。この保護層26は、この模様部14aの部分を周部よりも僅かに外方に突出させて突部28を形成する。この保護層26は、透明状又は半透明状の樹脂材料で形成してあり、模様部14aの光輝性のある外観を目立たせることができるものであれば、無色に限らず、有色の樹脂であってもよい。
【0032】
模様部14aの光輝性装飾層18は、合成樹脂フィルム層20に例えばアルミニウム、クロム、ニッケル、スズ、チタン、銅等の所要の金属光沢を発色する金属を物理蒸着した金属蒸着層で形成することができる。優れた光輝感のある外観を形成するために、この金属蒸着層は、例えば3μm以下で、好ましくは、1μm以下、0.01〜0.1μm程度の範囲の厚さに形成することが好ましい。より薄い場合には、光輝性の外観が目立たなくなったり、光輝性が低下する。
【0033】
光輝性装飾層18を支える合成樹脂フィルム層20は、部材本体12の外面形状に追従してその外面形状と同じ外面形状を形成することのできる柔軟性を有する材料であれば適宜のものを用いることができる。このような柔軟性を付与するために、合成樹脂フィルム層20を形成する材料は、破断伸度が60%以上で、120%以上の高い伸度を有することが好ましい。
【0034】
また、合成樹脂フィルム層20が柔軟性を有するだけでなく、部材本体12の外面形状に密に接触可能とするために、常温下、略20%の伸度の範囲内で元の状態を復元することのできる高度の復元性を有することが好ましい。この伸度範囲内であれば、本体層の撓みに対して、合成樹脂フィルム20の外観が損なわれることがないためである。
【0035】
この合成樹脂フィルム層20を形成する材料は、例えばポリエチレン、ポリエステル、ポリウレタン、エポキシ等のプラスチックフィルムが好ましい。また、厚さは、成形性を考慮して1μm〜100μmの範囲のフィルム状に形成することが好ましい。このフィルム状の合成樹脂材料は、装飾模様14を形成する部材本体12の形状、使用条件、及び、必要とする伸縮量に合わせて、所要の伸度及び復元性を有するものを使用することができる。このような合成樹脂フィルム層20を光輝性装飾層18の外側に配置することにより、光輝性装飾層18を確実に保護し、長期間にわたって光輝性を維持することができる。
【0036】
なお、光輝性装飾層18を図2に示すように本体部材12に近い内側に配置する場合は、合成樹脂フィルム層20は、透明状又は半透明状の無色又は有色材料で形成し、これとは逆に、光輝性装飾層18を外側に配置する場合には不透明材料で形成してもよい。また、この合成樹脂フィルム層20には、上述の光輝性装飾層18を蒸着すると共に、例えばクリア層や着色層を例えば印刷し又は塗装してもよい。
【0037】
この合成樹脂フィルム層20の外側に配置された伸縮調節層22は、合成樹脂フィルム20の伸び率の差、すなわち、合成樹脂フィルム20の内側又は外側の表面に沿う平面内で互いに直交する方向の伸び率の差を打ち消してより小さくするものである。このように合成樹脂フィルム層20の伸び率が相違する場合には、その内部応力により、隣接する光輝性装飾層18及び粘着剤層18に不均等な力が作用することになるが、伸縮調節層22はその不均等な力が隣接する層に作用するのを防止する。したがって、伸縮調節層22は、合成樹脂フィルム層20の伸び率又は内部応力を整えてほどよくする調節作用、すなわち釣合いのとれるようにすることを主とした作用をなすものである。
【0038】
なお、本明細書でいう伸び率は、一定の張力を加えたときのこの力の方向に沿う元の長さに対する伸長後の長さの比率をいう。また、均一な厚みで、伸び率が同じフィルム材料の場合、伸び量が大きいほど単位長さに対して大きな力が作用している状態となるが、この伸び量が直交する方向で異なる状態のまま装飾模様を形成すると、装飾模様を部材本体に貼着するときに、直交する方向の伸び率の変化(差)となって表われる。
【0039】
このような合成樹脂フィルム層20の伸び率の差は、肉厚を薄くするために、その製造過程で展伸したり、皺の無い滑らかな平面状態に展開する際に、互いに直交する方向に沿って作用する力の大きさが異なること等で生じ、内部応力を形成することになる。そして、このような内部応力を有する材料を基材として形成した光輝性装飾層18が、合成樹脂フィルム層20内の互いに直交する方向に沿う伸び率の差の影響を受けるため、合成樹脂フィルム層20の互いに直交する方向、例えば部材本体12の軸線12aに沿う方向及び周方向における伸び率の差は、部材本体12に対する模様部14aの貼り付け作業や粘着剤層16の硬化等の製造過程におけるだけでなく、その後の使用状況・使用環境等の条件によっても、模様部14aの外観を阻害する凹凸、亀裂又はクラック発生の要因となるものである。
【0040】
本実施形態の伸縮調節層22は、例えばポリウレタンやエポキシ等の熱硬化性プラスチック材料で、その厚さを1μm〜40μm程度に形成してある。この伸縮調節層22の厚さは、合成樹脂フィルム層20の厚さよりも薄くすることにより、模様部14aを薄肉化、小形化することができる。通常は、突部28の高さを低くし、滑らかな外面形状とすることが表面の凹凸をなくし、平滑表面にして光の反射が均一化されることが光輝性をよくするために好ましいが、突部28の突出高さを高くし、この部位を立体化する場合には、この伸縮調節層22の厚さを厚くしてもよい。
【0041】
この伸縮調節層22は、フィルム状の部材で形成した後、合成樹脂フィルム層20に積層してもよく、合成樹脂フィルム層20の上にコーティングし又は印刷した層状に形成することも可能である。特に、この伸縮調節層22を合成樹脂フィルム層20よりも硬質の材料で形成する場合には、合成樹脂フィルム層20の伸縮の発生を効果的に押さえることができる。
【0042】
この伸縮調節層22は、隣接する合成樹脂フィルム層20の表面に平行な平面を仮想したときに、この平面内で互いに直交する方向に沿う伸び率の差が全くないか、又は、その差が合成樹脂フィルム層の表面に沿って互いに直交する方向に沿う伸び率の差よりも小さな層で形成することが好ましい。直交する方向における伸び率に差がある場合は、伸び率の小さい方向を、合成樹脂フィルム層20の表面に沿って互いに直交する方向に沿う2つの伸び率のうち、伸び率の大きい方向に沿わせて配向する。
【0043】
これにより、伸縮調節層22が合成樹脂フィルム層20の表面に沿って互いに直交する方向に沿う伸び率の差を小さくし、光輝性装飾層18及び粘着剤層16の伸縮による装飾模様の凹凸、重なり、亀裂等の外観不良の発生を防止し、長期間にわたって優れた外観を維持することができる。
【0044】
更に、後述する装飾用シートから剥離用フィルムを剥がし、部材本体12の外面に粘着剤層16を介して模様部14aを貼着する際、合成樹脂フィルム層20及び光輝性装飾層18の伸縮を防止する。これにより、所要位置に所要の形状に模様部14aを展開して簡単かつ正確に貼り合わせることができ、この模様部14aの外観不良の発生を防止し、長期間にわたって使用しても、その光輝性のある優れた外観を維持することができる。
【0045】
特に、合成樹脂フィルム層20及び伸縮調節層22が柔軟性に優れることにより、繊維強化樹脂で管状構造に形成し、軸方向と周方向とのそれぞれの延設方向で曲率が相違する外面形状に沿わせて貼着することができ、た部材本体12管状体の外観不良の発生を防止した装飾模様を形成できる。また、部材本体12が撓ったり変形しても、模様部14aがこれに追従することができ、長期間にわたって優れた外観を維持することができる。
【0046】
また、伸縮調節層22を合成樹脂フィルム層20の外側に隣接させて配置することにより、合成樹脂フィルム層22の伸縮を伸縮調節層で効率よく規制することができ、光輝性装飾層18に作用する外部の影響を少なくし、光輝性装飾層18による外観不良を確実に防止することができる。
【0047】
このような伸縮調節層22は、単一の層で形成することに代え、後述するように複数の層で形成してもよく、複数の層のうち、少なくとも1つの層が合成樹脂フィルム層20に接して配置される場合には、合成樹脂フィルム層20の動きをより効率よく抑えることができ、更に、伸縮調節層22による装飾模様の厚さの増大を防止することができる。
【0048】
図3は、このような模様部14aを形成する装飾用シート24を示す。
【0049】
この装飾用シート24は、光輝性装飾層18を蒸着した合成フィルム層20及び伸縮調節層22を積層した積層体30を、離型フィルム32に粘着剤層16を圧着した薄いシート状に形成してある。この粘着剤層16は、例えばポリエステル系、アクリル系、ポリウレタン系、エポキシ系等の熱硬化の特性を有する材料を離型フィルム32の全面に、例えば10μm〜30μm程度の一定の厚さで形成することが好ましい。これは、作業性をよくし、部材本体との密着性をよくするためである。
【0050】
積層体30は、光輝性装飾層18、合成フィルム層20及び伸縮調節層22を上述した材料及び寸法で形成してあり、伸縮調節層22側に圧着した保護フィルム(図示しない)でこのような積層体30を複数配置した状態の一体のユニットを形成する。一方、離型フィルム32は、はく離面側に粘着剤を所要の厚さに塗布してある。そして、積層体30の光輝性装飾面18と離型フィルム32の粘着剤を塗布した面とを重ね合わせて圧着することにより、一連の模様部14aを配置した装飾用シート24として完成する。各装飾用シート24には、装飾模様14を形成する一連の模様部14aを一体に形成することが好ましい。
【0051】
離型フィルム32は使用時に粘着剤層16から容易に分離することができる。このため、この離型フィルム32を装飾用シート24から剥がすと、粘着剤層16が光輝性装飾層18側に付着した状態となり、粘着剤層16と光輝性装飾層18と合成樹脂フィルム層20と伸縮調節層22とからなる模様部14aが保護フィルム上で粘着剤層16を外方に露出した状態で保持される。
【0052】
この装飾用シート24を用いて部材本体12に装飾模様14(図1)を形成する場合は、粘着剤層16を介して部材本体12の外面に模様部14aを貼着し、保護フィルムを取外す。この保護フィルムの取外しは模様部14aを部材本体12に貼着する前又は後のいずれでもよい。模様部14aが伸縮調節層22で伸び率を調節されていることにより、部材本体12の外面に曲面状態や凹凸があっても、元の形状を再現した状態で正確に貼着することができる。
【0053】
このように装飾用シート24を形成したことにより、剥離用フィルム32を剥がしたときに、合成樹脂フィルム20の伸縮を防止でき、貼着する部材本外12の表面が曲面や凹凸形状に形成されている場合であっても、装飾模様14を簡単かつ容易に形成することができ、光輝性装飾層18の外観を長期間にわたって維持することができる。
【0054】
特に、装着用シート24の粘着剤層16は、合成樹脂フィルム層20の厚さ以下に形成することにより、貼着作業をする際、光輝性装飾層18の動きを小さくすることができ、装飾模様14を形成する際の光輝性装飾層18の動きを防止でき、光輝性装飾層18による外観不良を確実に防止することができる。特に、光輝性装飾層18が粘着剤層16の外側に配置されることにより、粘着剤層16の厚さが不均等となっても、光輝性装飾層18が粘着剤層16を押えるように作用し、外観を損なうことは無い。
【0055】
また、図4に示すように、伸縮調節層22を例えば内層22aと外層22bとからなる2層構造等、複数の層で形成してもよい。この場合には、調節作用をより確実に行うことができる。更に、粘着剤層16と光輝性装飾層18との間に、伸縮調節層22cを設けてもよく、この場合には、光輝性装飾層18が部材本体12の表面状態、粘着剤層16の厚さのバラツキ、粘着剤層16の動きの影響を受けるのを防止することができる。装飾模様14を簡単かつ正確に形成することができる。
【0056】
なお、粘着剤層16と光輝性装飾層18との間に、伸縮調節層22cを配置する場合には、この伸縮調整層22cは不透明材料で形成してもよく、外側の伸縮調節層22a,22bの少なくとも一方を省略することもできる。
【0057】
このような模様部14aは、部材本体12に貼着した後、粘着剤層16を加熱、加圧する等で硬化させ、最後に透明状保護層26を形成することで部材本体12に一体的に形成することができる。
【符号の説明】
【0058】
10…スポーツ用品、12…部材本体、14…装飾模様、14a…模様部、16…粘着剤層、18…光輝性装飾層、20…合成樹脂フィルム層、22…伸縮調節層、24…装飾用シート。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
本体部材の外側に装飾模様を形成したスポーツ用品であって、
前記装飾模様は、部材本体上に粘着剤層と光輝性装飾層と合成樹脂フィルム層と伸縮調節層とを積層して形成され、この伸縮調節層は、前記合成樹脂フィルム層の表面に沿って互いに直交する方向に沿う伸び率の差が、前記合成樹脂フィルム層の表面に沿って互いに直交する方向に沿う伸び率の差よりも小さな層と、前記合成樹脂フィルム層の表面に沿って互いに直交する方向に沿う2つの伸び率のうち、伸び率の小さい方向を、前記合成樹脂フィルム層の表面に沿って互いに直交する方向に沿う2つの伸び率のうち、伸び率の大きい方向に沿わせて配向させた層との少なくとも1つの層を有することを特徴とするスポーツ用品。
【請求項2】
前記部材本体は、強化繊維に合成樹脂を含浸した繊維強化樹脂材料を巻装した繊維強化樹脂製管状体で形成されることを特徴とする請求項1に記載のスポーツ用品。
【請求項3】
前記伸縮調節層は、前記合成樹脂フィルム層の外側に配置されることを特徴とする請求項1又は2に記載のスポーツ用品。
【請求項4】
前記伸縮調節層は、複数の層を有し、少なくとも1つの層が前記合成樹脂フィルム層に接して配置されることを特徴とする請求項1から3のいずれか1つに記載のスポーツ用品。
【請求項5】
前記粘着剤層は、前記合成樹脂フィルム層の厚さ以下の厚さを有することを特徴とする請求項1から4のいずれか1つに記載のスポーツ用品。
【請求項6】
剥離用フィルムの上に、粘着剤層と光輝性装飾層と合成樹脂フィルム層と伸縮調節層とを有する模様形成層を形成し、前記伸縮調節層は、前記合成樹脂フィルム層の表面に沿って互いに直交する方向に沿う伸び率の差が、前記合成樹脂フィルム層の表面に沿って互いに直交する方向に沿う伸び率の差よりも小さな層と、前記合成樹脂フィルム層の表面に沿って互いに直交する方向に沿う2つの伸び率のうち、伸び率の小さい方向を、前記合成樹脂フィルム層の表面に沿って互いに直交する方向に沿う2つの伸び率のうち、伸び率の大きい方向に沿わせて配向させた層との少なくとも1つの層を有し、更に、前記模様形成層の上に保護フィルムを配置したことを特徴とする装飾用シート。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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