説明

スムージー様飲料調製用粉末飲料

【課題】
粉末飲料であって、低温の低脂肪分タンパク質含有飲食品を溶媒として、1分以内という非常に短時間で、簡便な手攪拌によって、スムージーのような適度な粘度と素材感を発現する飲料を提供する。
【解決手段】
粉末飲料として、キサンタンガム、ラムダカラギーナン、グアーガムからなる増粘剤、および加工澱粉を特定量配合することにより、特に、低温かつ低乳脂肪分の牛乳に対して短時間で素早く溶解して、スムージー様の物性と良好な食感、風味を兼ね備えた飲料を簡便に調製することができる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、牛乳やヨーグルト等のタンパク質含有飲食品に対して溶解させることにより、スムージーのような食感を発現する粉末飲料に関する。
【背景技術】
【0002】
スムージーは、凍らせた果物又は野菜をシャーベット状にした飲み物である。一般的には、凍らせた果物や野菜と、ヨーグルトや牛乳などの乳製品をミキサーにかけて調製される。
【0003】
スムージーの調製には、果物や野菜を凍結させる等の準備が必要となる。そこで、果実ピューレや果実ジュースを原料としたスムージーベースや、実際の果実を使用せずに牛乳に溶かしてまぜるだけで簡単にスムージーのような食感が得られる粉末飲料が市販されている。このような市販粉末飲料には、砂糖、粉末果汁、増粘剤、酸味料、香料、色素などが配合されている。
【0004】
前記した市販粉末飲料にも添加されている増粘剤は様々な種類や特性があるため、目的に応じて最適な組み合わせが検討されている。例えば、牛乳や濃厚流動食などのタンパク質を多く含有する液状組成物にとろみを付与できる増粘化剤として、ラムダカラギーナン及びキサンタンガムを含有する増粘化剤(特許文献1)や、分子の一部がイオタカラギーナンで置換されたカッパカラギーナンを含有する増粘化剤(特許文献2)などが知られている。
【0005】
一般的に、増粘剤は、タンパク質を豊富に含有する液状飲食品や、酸性の飲食品に対して粘度発現しにくいといわれている。また、増粘剤は、低温条件下や簡素な攪拌のみで早期に粘度を発現することは難しいとされている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【特許文献1】特開2008−5751号公報
【特許文献2】特開2008−86307号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
前記した市販粉末飲料は、実際の果実を使用しなくても適度な酸味と甘味を有しながら、牛乳に素早く溶解して独特の素材感を有する飲み口が得られるように配合設計されている。しかしながら、消費者が利用する場面は多様であるため、例えば、冷蔵庫から取り出した直後の冷たい牛乳を用いて飲料を調製した場合や、乳脂肪分が低い低脂肪乳や無脂肪乳を使用して飲料を調製した場合に、所望の物性が発現するまでに1分以上攪拌する必要があり、より一層の改善が求められていた。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明者らは鋭意検討した結果、粉末飲料において増粘剤としてキサンタンガム、ラムダカラギーナン、グアーガムを特定量配合することによって、低温や低脂肪分のタンパク質含有飲食品を用いて溶解した場合において、1分以内という短時間の簡単な攪拌によってスムージー様食感と良好な風味を有する飲料を調製できることを見出した。本発明はこの知見に基づくものであり、以下に記載の事項をその特徴とするものである。
【0009】
(1)タンパク質含有飲食品に溶解させることによりスムージー様飲料を調製する粉末飲料であって、(A)増粘剤として、(A1)キサンタンガム、(A2)ラムダカラギーナン、(A3)グアーガムを含有する、粉末飲料。
(2)(A1)キサンタンガム:0.5〜3.5重量%、(A2)ラムダカラギーナン:1〜7重量%、(A3)グアーガム:0.1〜0.7重量%を含有する、(1)に記載の粉末飲料。
(3)さらに(B)不溶性成分:3〜25重量%を含有する、(1)または(2)に記載の粉末飲料。
(4)(B)不溶性成分が、加工澱粉、結晶セルロース、及びココア粉末のいずれか一つ又は混合物である、(3)に記載の粉末飲料。
(5)タンパク質含有飲食品が牛乳、低脂肪乳、無脂肪乳、及びヨーグルトのいずれか一つ又は混合物である、(1)〜(4)のいずれか一つに記載の粉末飲料。
(6)タンパク質含有飲食品が1〜16℃である、(1)〜(5)のいずれか一つに記載の粉末飲料。
(7)さらに(C)酸味料 1〜3.5重量%を含有する、(1)〜(6)のいずれか一つに記載の粉末飲料。
(8)さらに(D)糖質:50〜90重量%を含有する、(1)〜(7)のいずれか一つに記載の粉末飲料。
【発明の効果】
【0010】
本発明の粉末飲料により、低温の低脂肪分タンパク質含有飲食品を溶媒として、1分以内という非常に短時間で、簡便な手攪拌によって、スムージーのような適度な粘度と素材感を発現する飲料を提供できる。また、増粘剤が粘度発現する上で通常障害となる酸味料を、嗜好性に応じて幅広い添加量で配合することが可能となる。酸味料の配合の自由度が高まることにより、多様なフルーツスムージータイプの粉末飲料の提供が可能となる。
【発明を実施するための形態】
【0011】
本発明の粉末飲料は、牛乳やヨーグルトなどのタンパク質含有飲食品に溶解させることによって、スムージー様飲料を調製する。本発明でいうスムージー様飲料とは、スムージーのようなとろりとした粘度を発現し、果実パルプのような素材感をもつ飲料をいう。
【0012】
本発明の粉末飲料には、(A)増粘剤として、(A1)キサンタンガム、(A2)ラムダカラギーナン、(A3)グアーガムを含有する。前記3成分が特定量配合されることにより、冷たい牛乳に素早く溶解して、早期に所望のスムージー様物性を発現する。さらに、脂肪分が少ない牛乳を用いてもスムージー様物性を有する飲料を調製することができる。
【0013】
キサンタンガムは、微生物Xanthomonas campestrisが産生する多糖類である。本発明の粉末飲料に用いる(A1)キサンタンガムとして、商業的に入手できる製品、例えば、ネオソフトXC(太陽化学株式会社)、サンエース[商標]NXG−C、サンエース[商標]NXG−S(三栄源エフ・エフ・アイ株式会社)、エコーガム[商標]F、エコーガム[商標]T(DSP五協フード&ケミカル株式会社)、SATIAXANE[商標]CX90、SATIAXANE[商標]CX91(ユニテックフーズ株式会社)、などが挙げられる。
【0014】
カラギーナンは紅藻類の細胞壁から抽出して得られる多糖類である。カラギーナンはイオタタイプ、カッパタイプ、ラムダタイプの3種類があるが、本発明ではラムダカラギーナンを使用する。商業的に入手できる(A2)ラムダカラギーナンの製品として、サンカラNo.1057(太陽化学株式会社)、SATIAGUM[商標]BDC20、SATIAGUM[商標]MM30(ユニテックフーズ株式会社)などが挙げられる。
【0015】
グアーガムは、グアープラントの種子から得られる多糖類である。本発明の粉末飲料に用いる(A3)グアーガムとして、商業的に入手できる製品、例えば、ネオソフトG(太陽化学株式会社)、ビストップ[商標]D−20、ビストップ[商標]D−2029(三栄源エフ・エフ・アイ株式会社)、VIDOGUM GHK175、VIDOCREM A(ユニテックフーズ株式会社)などが挙げられる。
【0016】
本発明の粉末飲料をタンパク質含有飲食品に溶解して好ましいスムージー様物性を得る上では、タンパク質含有飲食品に対して(A)増粘剤の添加量は、(A1)キサンタンガムを0.05〜0.4重量%、好ましくは0.1〜0.3重量%、(A2)ラムダカラギーナンを0.1〜0.8重量%、好ましくは0.2〜0.5重量%、(A3)グアーガムを0.01〜0.08重量%、好ましくは0.01〜0.04重量%である。
【0017】
ここで示した上限値を超えて増粘剤を添加すると、得られるスムージー様飲料の粘度発現は早くなるが、食感や風味に好ましくない影響が生じる。(A1)キサンタンガムや(A2)ラムダカラギーナンを過剰に添加した場合は、風味がやや低下し、食感は飲料にふさわしくないソース状のどろりとした状態となったり、ゼリーのようなゲル状となったりする。(A3)グアーガムを過剰に添加した場合は、スムージー様飲料は糸を引くような物性となり、好ましくない食感となる。また、増粘剤の添加量が下限値未満の場合は、スムージー様飲料として望ましい粘度の発現が得られ難い。
【0018】
本発明の粉末飲料における(A)増粘剤の配合量は、(A1)キサンタンガムを0.5〜3.5重量%、好ましくは1〜2.5重量%、(A2)ラムダカラギーナンを1〜7重量%、好ましくは2〜5重量%、(A3)グアーガムを0.1〜0.7重量%、好ましくは0.1〜0.4重量%である。
【0019】
本発明の粉末飲料は、(B)不溶性成分を含有することが好ましい。本発明の(B)不溶性成分とは、水に溶解し難い成分であり、主にスムージー様飲料において果実パルプのような素材感の表現に寄与する。本発明の粉末飲料に用いる(B)不溶性成分として、加工澱粉、結晶セルロース、ココア粉末などが挙げられるが、好ましくは、加工澱粉またはココア粉末が挙げられる。前記(B)不溶性成分は、単独あるいは併用して配合してもよい。ココアタイプのスムージー様飲料を調製するための粉末飲料としては、ココア粉末を用いることが好ましい。その他のフルーツタイプのスムージー様飲料を調製するための粉末飲料としては、加工澱粉を用いることが好ましい。本発明で用いることができる加工澱粉としては、化学的処理を施された澱粉が挙げられるが、特に、リン酸架橋処理された澱粉が好ましい。商業的に入手可能な前記加工澱粉としては、パインゴールドA20、パインゴールドVE(松谷化学株式会社)などが挙げられる。
【0020】
本発明の粉末飲料をタンパク質含有飲食品に溶解して好ましいスムージー様物性を得る上では、タンパク質含有飲食品に対して(B)不溶性成分の添加量は0.3〜3重量%、好ましくは0.4〜2.5重量%が好ましい。ここで示した上限値を超えて添加した場合、溶け残りが多く発生する。また、添加量が少ない場合はスムージー独特の果実パルプのような素材感が得られにくい。
【0021】
本発明の粉末飲料において、(B)不溶性成分の配合割合は3〜25重量%、好ましくは4〜23重量%である。
【0022】
本発明の粉末飲料をタンパク質含有飲食品に溶解した際に、スムージー様物性を発現する上で特に寄与する成分は、前記(A)増粘剤と(B)不溶性成分である。一般的に、スムージーは果実由来の酸味をイメージされるが、酸味が特に必要ではない風味の飲料を調製したい場合は、前記2成分に加えて風味形成に必要な成分を適宜選択して配合すればよい。
【0023】
例えば、ココア風味スムージー様飲料の場合は、(A)増粘剤と(B)ココア粉末を配合し、さらに、風味の形成に必要なカカオエキス、チョコレート粉末、糖質、色素、香料等を適宜選択して配合することにより、目的とする飲料を得ることができる。また、抹茶風味、コーヒー風味などの場合は、(A)増粘剤と(B)加工澱粉を配合し、さらに風味の形成に必要な抹茶粉末またはインスタントコーヒー末、糖質、色素、香料等を適宜選択して配合することにより、目的とする粉末飲料を得ることができる。
【0024】
本発明の粉末飲料は、(C)酸味料を含有することができる。酸味料としては、風味付けに有用なものであれば限定されないが、例えば、リンゴ酸、クエン酸、酒石酸、乳酸などの有機酸および有機酸塩類が挙げられる。好ましくは、リンゴ酸、クエン酸が挙げられる。
【0025】
本発明の粉末飲料において、(C)酸味料は、スムージー様飲料の主に風味に寄与する。本発明の粉末飲料において、(C)酸味料は1〜3.5重量%、好ましくは1.5〜2.5重量%である。本発明の粉末飲料をタンパク質含有飲食品に溶解して好ましいスムージー様物性と風味を得る上では、タンパク質含有飲食品に対して(C)酸味料の添加量は0.1〜0.4重量%、好ましくは0.15〜0.3重量%である。
【0026】
本発明の粉末飲料は、さらに(D)糖質を含有することができる。糖質は飲料の風味に寄与するだけでなく、製剤化を容易にする上でも特定量含まれることが好ましい。本発明の粉末飲料に使用できる糖質として、例えば、ショ糖、果糖、ブドウ糖、麦芽糖、乳糖、澱粉糖化物、還元澱粉水飴、トレハロースなどの糖類、エリスリトール、イソマルト、ラクチトール、マルチトール、マンニトール、ソルビトール、キシリトールなどの糖アルコール、およびこれらの混合物が挙げられる。
【0027】
本発明の粉末飲料において、(D)糖質は50〜90重量%であることが好ましい。(A)〜(C)成分、および以下に述べる(E)任意添加成分を除いた残部を糖質で置き換えることで、本発明の粉末飲料を製造することができる。
【0028】
本発明の粉末飲料には、前記成分以外に、必要に応じて通常の粉末飲料に配合される成分をスムージー様物性に影響しない範囲で適宜選択して配合することができる。前記した成分を本発明では(E)任意添加成分という。(E)任意添加成分として、例えば、果実エキス粉末、野菜エキス粉末、粉末果汁、酸化防止剤、香料、各種エステル類、無機酸類、無機酸塩類、無機塩類、色素、保存料、調味料、甘味料、栄養強化成分などの添加剤を単独、あるいは併用して配合しても良い。
【0029】
例えば、栄養強化成分として、ビタミン類やミネラル類などを配合することができる。具体的には、ビタミンA、ビタミンB群、ビタミンC、ビタミンD、ビタミンE、ピロリン酸第二鉄、カルシウム、マグネシウム、葉酸、ビオチン、CoQ10などが挙げられる。
【0030】
本発明の粉末飲料の製造方法は特に限定されないが、公知の方法で攪拌混合した後、流動層造粒、転動造粒、攪拌造粒など公知の方法で造粒することができる。
【0031】
本発明の粉末飲料は、牛乳をはじめとしたタンパク質含有飲食品に溶解させることでスムージー様飲料を調製することができる。本発明におけるタンパク質含有飲食品としては、牛乳、低脂肪乳、無脂肪乳、成分調整牛乳、特別牛乳、加工乳などを用いることができる。また、ヨーグルトなどの乳製品や、豆乳などの植物性タンパク質飲料を用いることもできる。特に好ましいものとして、牛乳、低脂肪乳、無脂肪乳、成分調整牛乳、ヨーグルトが、最も好ましいものとして、牛乳、低脂肪乳、無脂肪乳、ヨーグルトが挙げられる。なお、前記タンパク質含有飲食品は、単独あるいは併用してもよい。いずれのタンパク質含有飲食品においても、本発明の粉末飲料は、1〜16℃の低温度帯で所望の物性を発現し、好ましいスムージー様飲料を調製することができる。特に、従来困難であった1〜5℃の低温度帯のタンパク質含有飲食品に対しても、1分以内の手攪拌で所望の物性を発現できることが特徴である。
【0032】
また、本発明の粉末飲料は、脂肪分が少ないタンパク質含有飲食品、特に、乳脂肪分が少ない牛乳を用いても所望の物性を発現することができる。乳脂肪分の規格は乳等省令において定められているが、牛乳は3.0%以上、低脂肪牛乳は0.5%以上1.5%以下、無脂肪乳は0.5%未満とされている。すなわち、本発明の粉末飲料は、タンパク質含有飲食品が飲用乳の場合、乳脂肪分が3.0%以上の牛乳のみならず、乳脂肪分が3.0%未満の低脂肪乳、無脂肪乳に対しても好ましいスムージー様飲料を調製することができる。
【0033】
本発明の粉末飲料は、タンパク質含有飲食品に対して、例えば4〜20g/120ml、好ましくは10〜15g/120mlとして調製することができる。
【実施例】
【0034】
以下、実施例を挙げて本発明を具体的に説明するが、本発明はこれら実施例に限定されるものではない。
【0035】
試験例1:市販粉末飲料の粘度発現速度の改善検討
市販粉末飲料として「朝のとろ〜りスムージー(明治製菓株式会社製)」を用いて、増粘剤としてグアーガムを0〜1.0%添加し、低温の牛乳における粘度発現速度の向上効果を比較した。
【0036】
表1に記載した各粉末飲料13gに4℃の市販牛乳(明治おいしい牛乳[商標];乳脂肪分3.5%以上)120mlを加えて、スパーテルで1分間攪拌し、攪拌後の飲料を評価した。評価項目は、(1)粘度、(2)粘度発現速度、(3)食感、(4)風味、の4点とした。(1)粘度については、攪拌後に得られた飲料の外観を評価し、スムージーのようなとろりとした粘度が得られたら良好とした。(2)粘度発現速度については、粉末飲料を牛乳に添加した直後から1分間の攪拌終了までの間に粘度が上がる感触を評価し、1分以内にスムージー様の粘度に達したら良好とした。(3)食感および(4)風味については、攪拌後に得られた飲料を官能評価した。評価結果は、5;良好、4;やや良好、3;普通、2;やや好ましくない、1;好ましくない、の5段階とした。評価結果を表1に示した。
【0037】
【表1】

【0038】
注記(1):朝のとろ〜りスムージー(明治製菓株式会社)
【0039】
表1より、市販粉末飲料にグアーガムを添加することにより、低温の牛乳で短時間攪拌して得られるスムージー様飲料の粘度および粘度発現速度は上昇する傾向が見られた。特に、グアーガム0.3%を添加した試験例1bにおいては、粘度および粘度発現速度といったスムージー様物性が改善されただけでなく、食感および風味がともに良好である結果が得られた。しかしながら、食感および風味については、グアーガム1.0%添加した試験区で低下した。市販粉末飲料には、増粘剤としてキサンタンガム、カラギーナンが配合されている。したがって、キサンタンガム、カラギーナン、グアーガムを適切な比率で配合することにより、低温の牛乳で短時間攪拌した際のスムージー様物性の発現が改善される可能性が示唆された。
【0040】
実施例1:(A)増粘剤(キサンタンガム)の配合検討
表2に示す成分を混合して粉末飲料を調製した。各粉末飲料13gを5℃の市販牛乳(明治おいしい牛乳[商標];乳脂肪分3.5%以上)120mlに添加し、スパーテルで1分間攪拌し、攪拌後の飲料を評価した。評価は、試験例1と同様に行った。さらに、評価項目4点の結果をふまえて、スムージー様飲料としての好ましさについて総合的な評価を行った。評価結果を表3に示した。
【0041】
【表2】

【0042】
【表3】

【0043】
表3の結果より、(A1)キサンタンガムが0.5〜3.5重量%、特に1〜2.5重量%で配合された粉末飲料において、低温の牛乳で短時間攪拌した際に良好なスムージー様飲料が得られた。また、スムージー様飲料100ml中の(A1)キサンタンガム添加量としては、0.05〜0.4重量%、特に0.1〜0.3重量%で好ましい結果が得られた。
【0044】
実施例2:(A)増粘剤(ラムダカラギーナン)の配合検討
表4に示す成分を混合して粉末飲料を調製した。スムージー様飲料の調製および評価は、実施例1と同様に行った。評価結果を表5に示した。
【0045】
【表4】

【0046】
【表5】

【0047】
表5の結果より、(A2)ラムダカラギーナンが1〜7重量%、特に2〜5重量%で配合された粉末飲料において、低温の牛乳で短時間攪拌した際に良好なスムージー様飲料が得られた。また、スムージー様飲料100ml中の(A2)ラムダカラギーナン添加量としては、0.1〜0.8重量%、特に0.2〜0.5重量%で好ましい結果が得られた。
【0048】
実施例3:(A)増粘剤(グアーガム)の配合検討
表6に示す成分を混合して粉末飲料を調製した。スムージー様飲料の調製および評価は、実施例1と同様に行った。評価結果を表7に示した。
【0049】
【表6】

【0050】
【表7】

【0051】
表7の結果より、(A3)グアーガムが0.1〜0.7重量%、特に0.1〜0.4重量%で配合された粉末飲料において、低温の牛乳で短時間攪拌した際に良好なスムージー様飲料が得られた。また、スムージー様飲料100ml中の(A3)グアーガム添加量としては、0.01〜0.08重量%、特に0.01〜0.04重量%で好ましい結果が得られた。
【0052】
実施例4:(B)不溶性成分(加工澱粉)の配合検討
表8に示す成分を混合して粉末飲料を調製した。スムージー様飲料の調製および評価は、実施例1と同様に行った。評価結果を表9に示した。
【0053】
【表8】

【0054】
【表9】

【0055】
表9の結果より、(B)不溶性成分として、加工澱粉が3〜25重量%、特に4〜23重量%で配合された粉末飲料において、低温の牛乳で短時間攪拌した際に良好なスムージー様飲料が得られた。また、スムージー様飲料100ml中の(B)不溶性成分としての加工澱粉の添加量は、0.3〜3重量%、特に0.4〜2.5重量%で好ましい結果が得られた。
【0056】
実施例5:低温度の牛乳・低乳脂肪分牛乳を用いたスムージー様飲料の調製
実施例3の配合3a(グアーガム無添加)および配合3e(グアーガム0.4%添加)の粉末飲料を用いて、超低温の牛乳(1℃)、低脂肪乳(乳脂肪分1.5%)、無脂肪乳(乳脂肪分0.5%未満)に対するグアーガム添加の効果を比較検討した。各粉末飲料13gを表10に示したタンパク質含有飲食品120mlに添加し、スパーテルで1分間攪拌し、攪拌後の飲料を評価した。評価は、実施例1と同様に行った。評価結果を表10に示した。
【0057】
【表10】

【0058】
表10の結果より、粉末飲料にキサンタンガム、ラムダカラギーナン、グアーガムを配合することにより、1℃という低温の牛乳、および乳脂肪分1.5%以下の低乳脂肪分の牛乳を用いた場合においても、1分間という短時間で攪拌した際に好ましいスムージー様飲料が得られることが示された。
【0059】
実施例6:酸味料および増粘剤の配合検討
表11に示す成分を混合して粉末飲料を調製した。なお、酸味料は0〜5.0%まで、(A3)グアーガムは0%または0.4%として、残部を砂糖で調整した。各粉末飲料13gを5℃の市販牛乳(明治おいしい牛乳[商標];乳脂肪分3.5%以上)120mlに添加し、スパーテルで1分間攪拌し、攪拌後の飲料を評価した。評価は、風味を除いて実施例1と同様に行った。風味については、各酸味料配合区をまとめて評価した。評価結果を表12に示した。
【0060】
【表11】

【0061】
【表12】

【0062】
表12の結果より、粉末飲料に対する酸味料の配合量が増加するにしたがって、得られるスムージー様飲料の粘度および粘度発現速度は低下する傾向がみられる。しかしながら、グアーガムを配合した区は、酸味料を3.5%配合した場合においてもスムージー様物性を発現することが可能であった。酸味料の配合量が少ないほどスムージー様飲料の物性は良好であったが、酸味料を配合しない場合は甘さが非常に強く感じられるため風味のバランスが好ましくない評価となった。本発明の粉末飲料では、酸味料は1〜3.5重量%の範囲内で配合することによって、物性と風味が両立した好ましいスムージー様飲料が得られることが示唆された。
【0063】
実施例7:各種タンパク質飲食品を用いたスムージー様飲料の調製
実施例1の配合1cに示す成分を混合して粉末飲料を調製した。調製した粉末飲料13gをタンパク質含有飲食品(市販豆乳、ヨーグルト、4〜20℃の市販牛乳)各120mlに添加し、スパーテルで1分間攪拌し、攪拌後の飲料を評価した。評価は、実施例1と同様に行った。評価結果を表13に示した。
【0064】
【表13】

【0065】
表13の結果より、本発明の粉末飲料は、豆乳、ヨーグルトなどのタンパク質飲食品を用いても良好なスムージー様飲料を調製できることが示された。また、さまざまな温度帯の牛乳を用いても良好なスムージー様飲料を調製することが可能であった。より高温の牛乳を用いることでスムージー様物性の発現は容易となる傾向がみられたが、低温度の牛乳を用いる方がよりスムージーらしい好ましい飲料が得られた。
【0066】
実施例8:本発明の粉末飲料の各種配合例
表14に示す成分を混合して各粉末飲料を調製した。各粉末飲料を表14に記載した重量ではかりとり、5℃の市販牛乳(明治おいしい牛乳[商標];乳脂肪分3.5%以上)120mlに添加し、スパーテルで1分間攪拌し、攪拌後の飲料を評価したところ、いずれの配合例においても良好なスムージー様飲料を得ることができた。
【0067】
【表14】

【産業上の利用可能性】
【0068】
本発明は、低温度帯のさまざまな乳製品を溶媒として、1分以内という非常に短時間で、簡便な手攪拌によって、適度な粘度と良好な素材感を有するスムージー様飲料を調製できる粉末飲料を提供する。溶媒として使用する乳製品の脂肪分が少ない場合も、良好な物性を有する飲料を得ることができる。


【特許請求の範囲】
【請求項1】
タンパク質含有飲食品に溶解させることによりスムージー様飲料を調製する粉末飲料であって、(A)増粘剤として、(A1)キサンタンガム、(A2)ラムダカラギーナン、(A3)グアーガムを含有する、粉末飲料。
【請求項2】
(A1)キサンタンガム:0.5〜3.5重量%、(A2)ラムダカラギーナン:1〜7重量%、(A3)グアーガム:0.1〜0.7重量%を含有する、請求項1に記載の粉末飲料。
【請求項3】
さらに(B)不溶性成分:3〜25重量%を含有する、請求項1または2に記載の粉末飲料。
【請求項4】
(B)不溶性成分が、加工澱粉、結晶セルロース、及びココア粉末のいずれか一つ又は混合物である、請求項3に記載の粉末飲料。
【請求項5】
タンパク質含有飲食品が牛乳、低脂肪乳、無脂肪乳、及びヨーグルトのいずれか一つ又は混合物である、請求項1〜4のいずれか一項に記載の粉末飲料。
【請求項6】
タンパク質含有飲食品が1〜16℃である、請求項1〜5のいずれか一項に記載の粉末飲料。
【請求項7】
さらに(C)酸味料:1〜3.5重量%を含有する、請求項1〜6のいずれか一項に記載の粉末飲料。
【請求項8】
さらに(D)糖質:50〜90重量%を含有する、請求項1〜7のいずれか一項に記載の粉末飲料。

【公開番号】特開2012−115207(P2012−115207A)
【公開日】平成24年6月21日(2012.6.21)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−267942(P2010−267942)
【出願日】平成22年12月1日(2010.12.1)
【出願人】(000006138)株式会社明治 (265)
【Fターム(参考)】