説明

スライサー

【課題】ワークと切削刃との間の熱伝達に起因する切削不良を防止する。
【解決手段】上流端に切削刃11が取り付けられた切削テーブル10と、切削テーブル10の上流側に隣接して配置された刃口テーブル12とを備えており、切削刃11には、切削刃の温度を調節可能な流体を流通させるための流路22が設けられている。流路22に流体(冷却水)を流通させることにより、切削刃11を、ワークの切削に好適な温度に設定することができるので、ワークと切削刃11との間の熱伝達に起因する切削不良を防止できる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、スライサーに関するものである。
【背景技術】
【0002】
特許文献1には、ワークが載置された状態で搬送されるようになっており、搬送方向における上流端に切削刃が取り付けられた切削テーブルと、同じくワークが載置された状態で搬送されるようになっており、切削テーブルの上流側に配置された刃口テーブルとを備えたスライサーについて記載されている。ワークを刃口テーブルから切削テーブルへ搬送すると、ワークの下面が切削刃によって薄くスライスされるように切削される。
【特許文献1】特開平8−155911号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0003】
この種のスライサーでは、合成樹脂からなるワークを切削する場合があるが、ワークがポリ塩化ビニルやウレタン樹脂のような熱軟化性のものである場合には、切削時に切削刃に生じる摩擦熱のためにワークが軟化して切削不良を来たことが懸念される。
本発明は上記のような事情に基づいて完成されたものであって、ワークと切削刃との間の熱伝達に起因する切削不良を防止することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0004】
上記の目的を達成するための手段として、請求項1の発明は、ワークが載置された状態で搬送されるようになっており、搬送方向における上流端に切削刃が取り付けられた切削テーブルと、ワークが載置された状態で搬送されるようになっており、前記切削テーブルの上流側に隣接して配置された刃口テーブルとを備えたスライサーにおいて、前記切削刃には、前記切削刃の温度を調節可能な流体を流通させるための流路が設けられているところに特徴を有する。
【0005】
請求項2の発明は、請求項1に記載のものにおいて、前記刃口テーブルの上方には、ワークを前記刃口テーブルの上面に押圧するための押圧部材が設けられており、前記刃口テーブルには、前記刃口テーブルの温度を調節可能な流体を流通させるための流路が設けられているところに特徴を有する。
【0006】
請求項3の発明は、請求項1または請求項2に記載のものにおいて、前記切削テーブルの上方には、ワークを前記切削テーブルの上面に押圧するための押圧部材が設けられており、前記切削テーブルには、前記切削テーブルの温度を調節可能な流体を流通させるための流路が設けられているところに特徴を有する。
【発明の効果】
【0007】
<請求項1の発明>
流路に流体を流通させることにより、切削刃を、ワークの切削に好適な温度に設定することができるので、ワークと切削刃との間の熱伝達に起因する切断不良を防止できる。
【0008】
<請求項2の発明>
ワークの下面と刃口テーブルの上面との間では、押圧部材の押圧力に起因する摩擦熱が発生するのであるが、刃口テーブルの流路に冷却水を流すことによって、ワークの温度上昇を抑制することができる。
【0009】
<請求項3の発明>
ワークの下面と切削テーブルの上面との間では、押圧部材の押圧力に起因する摩擦熱が発生するのであるが、切削テーブルの流路に冷却水を流すことによって、ワークの温度上昇を抑制することができる。このように、本発明では、刃口テーブルに戻る前からワークの温度上昇を抑制しているので、切断時におけるワークの温度上昇を確実に抑制して、良好な切削を行うことができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0010】
<実施形態1>
以下、本発明を具体化した実施形態1を図1乃至図10を参照して説明する。本実施形態のスライサーは、切削テーブル10と刃口テーブル12と押圧部材18とを備えて構成されている。図示しないワークは、押圧部材18によって上から押さえ付けられて、刃口テーブル12及び切削テーブル10の上面に載置され、刃口テーブル12から切削テーブル10へと摺動する過程で、ワークの下面が切削刃11によって薄くスライス状に切断されるようになっている。
【0011】
切削テーブル10は、金属製であって、水平に支持されている。切削テーブル10における切断時のワーク搬送方向上流側(図2及び図6における右側)の端縁は、搬送方向に対して斜めをなしており、この斜めの上流端縁には、金属製の細長い切削刃11が取り付けられている。刃口テーブル12は、金属製であって、水平に且つ切削テーブル10とほぼ同じ高さに支持されている。刃口テーブル12は、切断時のワーク搬送方向において切削テーブル10よりも上流側に配置され、刃口テーブル12における切断時のワーク搬送方向下流側の端縁は、搬送方向に対して斜め(切削テーブル10の上流側端縁と平行)をなしており、この斜めの下流端縁には、金属製の細長い刃口13が取り付けられている。
【0012】
切削テーブル10よりも下流側には、軸線を搬送方向と直角に向けた複数の搬送ローラ14と、隣り合う搬送ローラ14の間に設けた搬送方向と直角な方向に細長い金属製の補助テーブル15とから構成される下流側搬送路16が設けられている。また、刃口テーブル12よりも上流側には、軸線を搬送方向と直角に向けた複数の搬送ローラ14と、隣り合う搬送ローラ14の間に設けた搬送方向と直角な方向に細長い金属製の補助テーブル15とから構成される上流側搬送路17が設けられている。
【0013】
押圧部材18は、軸線を搬送方向と直角に向けた一対の駆動ローラ19の間に、無端状の押圧ベルト20を掛け回したものであり、一対の駆動ローラ19の間には、駆動ローラ19と平行であって、押圧ベルト20の下側の水平走行部の上面に接触する複数の押圧ローラ21が配置されている。駆動ローラ19を回転駆動させると、押圧ベルト20が一方向に回転し、押圧ベルト20の下面とワークの上面との間の摩擦により、ワークが、上流側搬送路17、刃口テーブル12、切削テーブル10、下流側搬送路16の順で搬送される。搬送されるワークは、刃口テーブル12から切削テーブル10に乗り移るときに、切削刃11によって下面を薄く切断されるようになっている。
【0014】
また、切断されたワークが下流側搬送路16に到達すると、押圧部材18の駆動ローラ19の駆動方向が正回転から逆回転に切り換わり、ワークが、切削テーブル10と刃口テーブル12を順に通って上流側搬送路17に戻される。その後、駆動ローラ19が正回転に切り換わって、再び、ワークの切断が行われる。このように、本実施形態では、ワークを切削刃11を跨いで往復移動させることにより、ワークの切断が繰り返して行われるようになっている。
【0015】
本実施形態では、押圧部材18によってワークが上流側搬送路17、刃口テーブル12、切削テーブル10、下流側搬送路16によって構成される搬送経路の上面に押し付けられるため、搬送経路の上面にはワークの下面との摩擦による熱が発生する。そのため、ワークが、ポリ塩化ビニルやウレタン樹脂のような熱軟化性の合成樹脂である場合には、ワークの下面が、搬送経路で発生した摩擦熱の伝達により温度上昇し、その結果、良好な切断が行われなくなることが懸念される。
【0016】
そこで、本実施形態では、搬送経路で発生した摩擦熱がワークに伝達されるのを抑制するための冷却手段が、切削刃11、切削テーブル10、刃口テーブル12、及び補助テーブル15に設けられている。以下、その冷却手段について説明する。
切削刃11の内部には、図3及び図4に示すように、その長さ方向(ワークの搬送方向と概ね直角な方向)に沿って延びる一対の孔状をなす流路22が形成されている。この流路22は、切削刃11を貫通した形態であって、その貫通方向と直角な断面形状は円形をなしている(図3を参照)。この流路22の一方の開口端にはホース等の図示しない供給路が接続され、他方の開口端にはホース等の図示しない排出路が接続されている。
【0017】
切削テーブル10の内部には、図5及び図6に示すように、ワークの搬送方向と直角に延びる一対の孔状をなす流路23が形成されている。この流路23は、切削テーブル10を貫通した形態であって、その貫通方向と直角な断面形状は円形をなしている(図5を参照)。この流路23の一方の開口端にはホース等の図示しない供給路が接続され、他方の開口端にはホース等の図示しない排出路が接続されている。また、切削テーブル10には、上記一対の流路23のうち上流側に位置する流路から分岐して切削テーブル10の上流端縁に開口する円形断面の流路24が形成されている。この流路24の上流端の開口には、ホース等の図示しない供給路又は排出路が接続されている。
【0018】
刃口テーブル12の内部には、図7及び図8に示すように、ワークの搬送方向と直角に延びる一対の孔状をなす流路25が形成されている。この流路25は、刃口テーブル12を貫通した形態であって、その貫通方向と直角な断面形状は円形をなしている(図7を参照)。この流路25の一方の開口端にはホース等の図示しない供給路が接続され、他方の開口端にはホース等の図示しない排出路が接続されている。また、刃口テーブル12には、上記一対の流路25のうち下流側に位置する流路25から分岐して刃口テーブル12の下流端縁に開口する円形断面の流路26が形成されている。この流路26の下流端の開口には、ホース等の図示しない供給路又は排出路が接続されている。
【0019】
補助テーブル15の内部には、図9及び図10に示すように、その長さ方向(ワークの搬送方向と概ね直角な方向)に沿って延びる孔状の流路27が形成されている。この流路27は、補助テーブル15を貫通した形態であって、その貫通方向と直角な断面形状は円形をなしている(図9を参照)。この流路27の一方の開口端にはホース等の図示しない供給路が接続され、他方の開口端にはホース等の図示しない排出路が接続されている。
【0020】
次に、本実施形態の作用を説明する。
ワークの切断を行う直前、及び切断を行っている間は、各流路22,23,24,25,26,27に、夫々、冷却水(本発明の構成要件である流体)が流される。冷却水を流すことにより、切削刃11、切削テーブル10、刃口テーブル12、補助テーブル15で生じた摩擦熱は、いずれも冷却水に奪われるので、ワークには殆ど伝達されることがなく、ワークの下面は比較的低い温度に保たれる。したがって、ワークの下面の温度が上昇することに起因する切断不良が回避される。
【0021】
本実施形態においては、切削刃11内に形成した流路22に冷却水を流通させることにより、切削刃11とワークをワークの切断に好適な温度に設定することができるので、ワークと切削刃11との間の熱伝達に起因する切断不良を防止できる。
また、本実施形態では、切断済みで切削テーブル10側へ移動したワークを、刃口テーブル12側へ戻して切断工程を繰り返すようになっているのであるが、切削テーブル10の流路23,24に冷却水を流すことによって、刃口テーブル12に戻る前からワークの温度上昇を抑制しているので、切断時におけるワークの温度上昇を確実に抑制して、良好な切削を行うことができる。
【0022】
<他の実施形態>
本発明は上記記述及び図面によって説明した実施形態に限定されるものではなく、例えば次のような実施態様も本発明の技術的範囲に含まれる。
(1)上記実施形態では冷却水を流すことによって切削刃に生じる摩擦熱がワークに伝達されることを抑制することで、良好な切削を行うようにしたが、本発明によれば、温水や水蒸気などの高温の流体を流すことによって切削刃の温度を上昇させ、切削刃からワークに熱を伝えてワークを暖めることによって、良好な切削を行うようにしてもよい。
(2)上記実施形態では切削刃の他に、切削テーブルと刃口テーブルと補助テーブルにも温度調節用の流体を流すようにしたが、本発明によれば、温度調節用の流体は切削刃のみに流してもよく、切削刃の他には、切削テーブルと刃口テーブルと補助テーブルのうちいずれか1つ又は2つのテーブルのみに温度調節用の流体を流すようにしてもよい。
(3)上記実施形態では温度調節用の流路を切削刃の内部に形成したが、本発明によれば、温度調節用の流路を切削刃の下面に沿って設けてもよい。
(4)上記実施形態では温度調節用の流路を切削テーブルの内部に形成したが、本発明によれば、温度調節用の流路を切削テーブルの下面に沿って設けてもよい。
(5)上記実施形態では温度調節用の流路を刃口テーブルの内部に形成したが、本発明によれば、温度調節用の流路を刃口テーブルの下面に沿って設けてもよい。
(6)上記実施形態では温度調節用の流路を補助テーブルの内部に形成したが、本発明によれば、温度調節用の流路を補助テーブルの下面に沿って設けてもよい。
【図面の簡単な説明】
【0023】
【図1】実施形態1の正面図
【図2】平面図
【図3】切削刃の拡大正面図
【図4】切削刃の一部切欠拡大平面図
【図5】切削テーブルの拡大正面図
【図6】切削テーブルの拡大平面図
【図7】刃口テーブルの拡大正面図
【図8】刃口テーブルの拡大平面図
【図9】補助テーブルの拡大正面図
【図10】補助テーブルの一部切欠拡大平面図
【符号の説明】
【0024】
10…切削テーブル
11…切削刃
12…刃口テーブル
18…押圧部材
22〜27…流路

【特許請求の範囲】
【請求項1】
ワークが載置された状態で搬送されるようになっており、搬送方向における上流端に切削刃が取り付けられた切削テーブルと、
ワークが載置された状態で搬送されるようになっており、前記切削テーブルの上流側に隣接して配置された刃口テーブルとを備えたスライサーにおいて、
前記切削刃には、前記切削刃の温度を調節可能な流体を流通させるための流路が設けられていることを特徴とするスライサー。
【請求項2】
前記刃口テーブルの上方には、ワークを前記刃口テーブルの上面に押圧するための押圧部材が設けられており、
前記刃口テーブルには、前記刃口テーブルの温度を調節可能な流体を流通させるための流路が設けられていることを特徴とする請求項1記載のスライサー。
【請求項3】
前記切削テーブルの上方には、ワークを前記切削テーブルの上面に押圧するための押圧部材が設けられており、
前記切削テーブルには、前記切削テーブルの温度を調節可能な流体を流通させるための流路が設けられていることを特徴とする請求項1又は請求項2記載のスライサー。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【公開番号】特開2008−229822(P2008−229822A)
【公開日】平成20年10月2日(2008.10.2)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2007−76898(P2007−76898)
【出願日】平成19年3月23日(2007.3.23)
【出願人】(000210377)アミテック株式会社 (7)
【Fターム(参考)】