説明

スライドステップ付きキャビネット

【課題】引き出したスライドステップのロックと解除が人の動作に合わせて自然に行なわれるスライドステップ付きキャビネットを提供する。
【解決手段】スライドステップ付きキャビネットの下部のキャビネットの格納部33にスライドステップ34が格納される。スライドステップ34の底部34dの下方に両側面34bの内側に沿ってスプリング36を介するキャスター37が保持枠38によって上下スライド可能に設けられる。自然状態では、スライドステップ34はスプリング36の力によって床面40から持上げられ、スライドステップ34の両側面34bの後方には一対のローラー43が設けられる。格納部33の両側面33bにスライドレール44が設けられ、このスライドレール44に沿ってローラー43が滑走する。スライドレール44は前面側において凹部を備え、この凹部から格納部33の後面33c側まで連続的に低くなる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、スライドステップ付きキャビネットに関し、スライドステップの使用時にスライドステップをキャビネットから容易に引き出して固定することができる技術に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、スライドステップが格納されたキャビネットからスライドステップを引き出す構成として特許文献1の内容が知られている。特許文献1によれば、図10(a)に示すように、スライドステップ1はシステムキッチンのキャビネット2の下部の格納部3から引出し可能に、固定レール12に収納された中間レール13と支持レール14で支持される。
【0003】
スライドステップ1は、前面パネル7と後面パネル10間に収納部を備え、上面に踏み板6が開閉自在に連結される。底面パネル11に複数のキャスター5が取付けられる。
【0004】
キャビネット2の高い位置に収納された食器を取り出すような場合、格納部3から引出されたスライドステップ1の状態をロック機構で保持して踏み板6を利用することができる。
【0005】
図10(b)に示すように、ロック機構は支持レール14の後端に固定される弾性を有する金属板等からなるロック用プレート20と、中間レール13の前端に形成される係合突起21を有し、ロック用プレート20には、係合開口22を形成する。
【0006】
支持レール14が中間レール13から引出されると、支持レール14に固定したロック用プレート20の係合開口22が中間レール13の係合突起21と係合しロックされる。
【0007】
図10(c)に示すように、支持レール14にスライド自在に取付けられたロック解除プレート24を備え、ロック解除プレート24は図示しないスプリングにより支持レール14の前面パネル7側に突出するように付勢されている。
【0008】
このため、図示しない作用部によってロック解除プレート24を押すことにより、ロック用プレート20の係合開口22と係合突起21の係合が解除されて、支持レール14と中間レール13とのロックが解除できる。
【特許文献1】特開2004−298433号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0009】
ところが、上記、スライドステップ1では、ロックを解除するためにロック解除プレート24を押す動作が必要があるので操作に手間が掛かるという問題があった。
【0010】
そこで、本発明は引き出したスライドステップに人が乗り降りする動作によって、スライドステップのロックと解除が自然に行なわれるスライドステップ付きキャビネットを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0011】
請求項1の発明は、キャビネットの格納部に外観が略直方体形状のスライドステップが出し入れ自在に格納されるスライドステップ付きキャビネットであって、前記スライドステップはスプリングを介するキャスターで床面に保持されるとともに、前記格納部の一対の側面に設けられるスライドレールに沿って滑走する一対のローラーを備え、前記レールは前記格納部の前面側に凹部を備え、この凹部から前記格納部の後面側に至って高さが連続的に低くなるように形成され、前記凹部は、前記スライドステップを引き出して前記スライドステップに人が乗ると前記スプリングを介して前記ローラーが下降して係止される凹部であることを特徴としている。
【0012】
請求項2の発明は、請求項1に記載のスライドステップ付きキャビネットであって、前記レールは前記凹部の前面側に前記ローラーを静止させる凸部を備えることを特徴としている。
【0013】
請求項3の発明は、請求項1又は請求項2に記載のスライドステップ付きキャビネットであって、前記レールは前記格納部の後面側に前記ローラーが乗越えて静止される第二の凸部を備えることを特徴としている。
【発明の効果】
【0014】
請求項1の発明によれば、前記スライドステップはスプリングを介するキャスターで床面に保持され、前記格納部の一対の側面に設けられるスライドレールに沿って滑走する一対のローラーを備え、前記レールは前記格納部の前面側に凹部を備え、この凹部から前記格納部の後面側に至って高さが連続的に低くなるように形成される。
【0015】
このため、前記スライドステップを引き出して前記スライドステップに人が乗ると、人の自重により前記スプリングが縮んで前記ローラーが下降し凹部内に自然に係止することができる。そして、前記スプリングが縮むことでキャスターは上昇して前記略直方体形状のスライドステップ内に収納され、前記スライドステップ自身が床面に保持されるので、前記スライドステップを安定して使用することができる。
【0016】
また、人が下りると前記スプリングが伸びて前記ローラーが上昇して前記ローラーは凹部から自然に離脱するので係止状態が解除できる。
【0017】
このように、スライドステップのロックと解除が人の動作に合わせて自然に行なわれるので、省力的で安価、且つ安全で確実なロック機構が得られる。
【0018】
請求項2の発明によれば、前記レールは前記凹部の前面側に前記ローラーを静止させる凸部を備えるので、前記スライドステップのローラーを引き出した際に凸部に当接するだけでローラーが自然に凹部の位置で停止できるので位置決めが簡単にできる。
【0019】
請求項3の発明によれば、前記レールは前記格納部の後面側に前記ローラーが乗越えて静止される第二の凸部を備えるので、前記スライドステップをキャビネットの格納部に格納した状態で、ローラーは第二の凸部を乗り越えて第二の凸部に安定して保持できる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0020】
以下に、本発明の実施形態を図1〜図9に基づいて説明する。
<スライドステップ付きキャビネットの構成>
【0021】
図1、図2、図3に示すように、本発明の実施形態におけるスライドステップ付きキャビネット30は上部に洗面設備31を備え、下部のキャビネット32の格納部33に外観が略直方体形状のスライドステップ34が出し入れ自在に格納される。いま、格納部33は水平視で両側面33bと後面33cから成るコ字状である。
【0022】
スライドステップ34は前面34aと両側面34bから成るコ字状の枠組みに、両側面34bにおける前面34aから略2/3の位置で後面34cが形成される。そして、前面34aに沿って設けられる別の前面35aと両側面34bと後面34cとで囲まれた領域の下部には底部34dが設けられて収納部35として使用される。
【0023】
底部34dの下方に四組のスプリング36を介するキャスター37が保持枠38によって上下スライド可能に設けられ、自然状態では、スライドステップ34はスプリング36の力によって床面40から隙間Qで持上げられている。
【0024】
収納部35の上部には人が乗るための踏み板41を備える。そしてスライドステップ34を格納部33から引き出した後に、踏み板41を後方から前方に持ち上げることにより開放して内部を利用することができる。
【0025】
なお、スライドステップ34の前面34aはキャビネット32の前面33aより後方にずれて設けられ、前面34aには出し入れ用の取っ手42が前面33aと面一に突設される。前面34aと取っ手42と前面33aは統一性を持たせるために同じ表面化粧材が用いられる。
【0026】
ここで、スライドステップ34の両側面34bの後方部には両側面34bの外側に突出して一対のローラー43が回転自在に設けられる。そして、格納部33の両側面33bの内側にスライドレール44を備えるスライドレール本体45が取付けられ、このスライドレール44に沿ってローラー43が滑走する。
【0027】
図4(a)、(b)、図5、図6に示すように、スライドレール本体45は長さL=400mmで、断面形状が底辺45bの幅W=22mm、側壁45cの高さH=45mmから成る略三角形状で、斜辺45dは階段状で中間に底辺45bに平行な二段の水平部45aと45eが形成される。
【0028】
そして、上段の水平部45aは幅W1=10mmで底辺の略中央部に対応する領域に形成され、この水平部45aがスライドレール44である。スライドレール44の上部側の壁45fの上端部はスライドレール44側に傾斜する斜面44gが設けられる。
【0029】
スライドレール44は前面側において凹部46を備え、この凹部46の後縁である位置P1から後面側の位置P2までの水平距離L1=300mmの領域で高さがH1=30mmからH2=18mmまで連続的に低くなるように形成される。
【0030】
凹部46は幅L2=24mm、深さH2=20mmのU字形で、凹部46の前面側にローラー43を静止させる第一の凸部47が高さH3=35mmでスライドレール本体45の先端部から幅L3=15mmで備える。
【0031】
さらに、位置P2から連続してローラー43が乗越えて静止するための第二の凸部48が設けられ、凸部48は高さH4=22mmでスライドレール本体45の後端部からL=30mmの位置である。
【0032】
スライドレール本体45はネジ等の固定具49によって格納部33の両側面33bに固定される。このとき固定具の頭がスライドレール本体45から突出しないように下段の水平部45eの幅が形成される。突起50は位置合わせの目的で形成され側面33bに形成された図示しない孔に挿入される。
<スライドステップ付きキャビネットの作用>
【0033】
図7に示すように、上記、スライドステップ34はスプリング36を介するキャスター37で床面40に保持されるとともに、スライドステップ34のローラー43がスライドレール44に沿って格納部33から引き出される。
【0034】
そして、ローラー43は第一の凸部47によって格納部33からの飛び出しが防止されるとともに、凹部46に容易に誘導されて挿入する。凹部46におけるローラー43の軸中心はスライドレールの位置P1の高さに略等しい位置となる。この状態で、踏み板41を持上げると、スライドステップ34の内容物の取り出しができる。
【0035】
図8に示すように、スライドステップ34の踏み板41に人が乗ると、スプリング36が収縮するのでキャスター37が床面40に接触する状態を保ちながら保持枠38内に収納され、人の自重はスライドステップ34の前面34a、両側面34b、後面34cによって床面40に保持される。
【0036】
このとき、ローラー43は下降して凹部46内に係止されるのでスライドステップ34は移動することがないので、人は安定してスライドステップ34を用いることができる。
【0037】
図9に示すように、スライドステップ34を格納部33から取り外す場合には、スライドステップ34の後端部を持ち上げることにより、ローラー43が第一の凸部47を乗り越えるので容易に取り外すことができる。
【0038】
以上、本発明の実施例を図面に基づいて説明したが、具体的な構成はこの実施例に限られるものではなく本発明の要旨を逸脱しない範囲の設計変更等があっても本発明に含まれる。
【0039】
たとえば、スライドステップ付きキャビネットは、一般家具、キッチン等の各種のキャビネットに設けられる格納部に適用することができる。
【0040】
位置合わせに支障がない場合には突起50は省略しても構わない。
【0041】
スライドステップ34の前面34a、両側面34b、後面34cの下部裏面に滑り防止パッキンを取付けると、スライドステップ34がさらに安定して床面40に接触するので踏み板41に人がより安定して乗ることができる。
【図面の簡単な説明】
【0042】
【図1】本発明の実施形態における、スライドステップ付きキャビネットの斜視図である。
【図2】本発明の実施形態における、図1のA−A一部透視側面図である。
【図3】本発明の実施形態における、図2のB−B断面図である。
【図4】本発明の実施形態における、(a)はスライドレール本体45の側面図、(b)は図4(a)におけるC−C矢視図である。
【図5】本発明の実施形態の、図4(a)におけるD−D断面図である。
【図6】本発明の実施形態の、図4(a)におけるE−E断面図である。
【図7】本発明の実施形態における、スライドステップ34を格納部33から引き出した状態を示す一部透視側面図である。
【図8】本発明の実施形態における、スライドステップ34を格納部33から引き出した状態で人がスライドステップ34に乗った状態を示す一部透視側面図である。
【図9】本発明の実施形態における、スライドステップ34を格納部33から取り外す状態を示す一部透視側面図である。
【図10】従来のスライドステップ1が格納されたキャビネットの、(a)は側面図、(b)は図10(a)におけるF−F断面図で支持レール14が中間レール13にロックされた状態、(c)はロック解除プレート24によって支持レール14が中間レール13からロック解除される状態である。
【符号の説明】
【0043】
30 スライドステップ付きキャビネット
32 キャビネット
33 格納部
33b 側面
33c 後面
34 スライドステップ
34b 側面
34d 底部
36 スプリング
37 キャスター
38 保持枠
40 床面
43 ローラー
44 スライドレール
46 凹部

【特許請求の範囲】
【請求項1】
キャビネットの格納部に外観が略直方体形状のスライドステップが出し入れ自在に格納されるスライドステップ付きキャビネットであって、
前記スライドステップはスプリングを介するキャスターで床面に保持されるとともに、前記格納部の一対の側面に設けられるスライドレールに沿って滑走する一対のローラーを備え、
前記レールは前記格納部の前面側に凹部を備え、この凹部から前記格納部の後面側に至って高さが連続的に低くなるように形成され、
前記凹部は、前記スライドステップを引き出して前記スライドステップに人が乗ると前記スプリングを介して前記ローラーが下降して係止される凹部であることを特徴とするスライドステップ付きキャビネット。
【請求項2】
請求項1に記載のスライドステップ付きキャビネットであって、前記レールは前記凹部の前面側に前記ローラーを静止させる凸部を備えることを特徴とするスライドステップ付きキャビネット。
【請求項3】
請求項1又は請求項2に記載のスライドステップ付きキャビネットであって、前記レールは前記格納部の後面側に前記ローラーが乗越えて静止される第二の凸部を備えることを特徴とするスライドステップ付きキャビネット。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【公開番号】特開2008−136614(P2008−136614A)
【公開日】平成20年6月19日(2008.6.19)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2006−324510(P2006−324510)
【出願日】平成18年11月30日(2006.11.30)
【出願人】(000005832)松下電工株式会社 (17,916)
【出願人】(000250144)余合住金産業株式会社 (28)
【Fターム(参考)】