説明

スライム処理装置及びスライム処理方法

【課題】 杭孔の底部に堆積したスライムを効率よく地上に排出させる。
【解決手段】 杭孔25内の底部27に堆積したスライム35を泥水36と共に吸い込むポンプ2を備えたスライム処理装置2であって、ポンプ2に、ポンプ2の周囲を囲むようにフード15を設ける。フード15は、外面が杭孔25の底部27の内面に合致した形状に形成される。フード15の内面側に対応する部分のスライム35を吸い込んで排出させるので、スライム35が杭孔25内の広範囲に拡散することはなく、杭孔25の底部27に堆積したスライム35を効率良く吸い上げて地上に排出させることができる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、スライム処理装置及びスライム処理方法に関し、特に、杭孔の底部に堆積したスライムを処理するのに有効なスライム処理装置及びスライム処理方法に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、場所打ち杭や壁杭を構築する場合、杭孔の底部に堆積したスライムが構築する場所打杭や壁杭の品質に影響を与えるため、各種のスライム処理装置を用いて、杭孔の底部に堆積したスライムを地上に排出させることが行われている。
【0003】
例えば、特許文献1に記載のスライム処理装置は、ウインチのワイヤにスライムを吸い込むポンプ(渦巻きポンプ)を吊り下げたものであって、ウインチを操作してワイヤを繰り出すことにより、ポンプを削孔した杭孔の底部に配置し、ポンプを作動させて杭孔の底部に堆積したスライムを泥水と共に吸い込んで地上に排出させることにより、杭孔の底部に堆積したスライムを処理するように構成したものである。
【0004】
この場合、ポンプの上下部には、吸引口とインペラとがそれぞれ設けられるとともに、下部には、複数の噴射ノズルが設けられ、上側のインペラの作動により、杭孔内のスライムを含む泥水を上側の吸引口から吸い込み、各噴射ノズルから杭孔の内周面に向けて噴射させることにより、杭孔の底部に堆積しているスライムを攪乱させている。また、下側のインペラの作動により、スライムを攪乱させた状態の泥水を下側の吸引口から吸い込み、吐出口に接続される排水パイプを介して地上に排出させている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開2000−120067号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
ところで、上記のような構成のスライム処理装置にあっては、大断面の杭孔(例えば、軸部:3.0m×6.5m、拡底部:4.5m×8mの杭孔)の底部に堆積したスライムの処理に適用した場合には、杭孔の底部に堆積したスライムが広範囲に拡散してしまうため、スライムの処理に時間と手間がかかり、非常に効率の悪い作業になってしまう。
【0007】
本発明は、上記のような従来の問題に鑑みなされたものであって、大断面の杭孔の底部に堆積したスライムを効率良く処理できるスライム処理装置及びスライム処理方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
上記のような課題を解決するために、本発明は、以下のような手段を採用している。
すなわち、本発明は、杭孔内の底部に堆積したスライムを泥水と共に吸い込むポンプを備えたスライム処理装置であって、前記ポンプに、該ポンプの周囲を囲むようにフードを設けたことを特徴とする。
【0009】
本発明のスライム処理装置によれば、ポンプの作動により、フードの内側に対応する杭孔の底部の部分に堆積したスライムを泥水と共に吸い込むことができるので、杭孔内の広範囲にスライムが拡散するようなことはなく、杭孔の底部に堆積したスライムを効率良く吸い込んで地上に排出させることができる。
【0010】
また、本発明において、前記フードは、外面が前記杭孔の底部の内面に合致した形状に形成されていることとしてもよい。
【0011】
本発明のスライム処理装置によれば、フードは、杭孔の底部の内面に合致した形状に形成されているので、拡底部を有する杭孔の底部に堆積したスライムの処理に適用した場合にも、杭孔の底部に堆積したスライムを効率良く吸い込んで地上に排出させることができる。
【0012】
さらに、本発明において、前記ポンプには、前記杭内の底部に堆積したスライムを泥水と共に吸い込む吸込口と、該吸込口から吸い込んだ泥水の一部を前記杭孔の底部に向けて噴射させる噴射口とを有し、少なくとも前記吸込口及び前記噴射口の周囲を囲むように、前記フードを設けたこととしてもよい。
【0013】
本発明のスライム処理装置によれば、ポンプの吸込口から吸い込んだ泥水の一部を、噴射口から杭孔の底部に向けて噴射させることができるので、杭孔の底部に堆積したスライムを泥水中に攪乱させながら、スライムを含む泥水を吸い込んで地上に排出させることができ、杭孔の底部に堆積したスライムを効率良く処理することができる。
【0014】
さらに、本発明において、前記ポンプには、環状の噴射管が設けられ、該噴射管の複数箇所に前記噴射口が設けられていることとしてもよい。
【0015】
本発明のスライム処理装置によれば、ポンプの吸込口から吸い込んだ泥水の一部を噴射管に導き、噴射管の各噴射口から杭孔の底部に向けて噴射させ、杭孔の底部に堆積したスライムを攪乱させることができる。この場合、噴射管は、環状に形成され、この環状の噴射管の複数箇所に噴射口が設けられているので、フードの内側に対応する杭孔の底部に堆積したスライムを効率良く攪乱させることができる。
【0016】
さらに、本発明において、前記噴射口は、下向き或いは斜め下向きに設けられていることとしてもよい。
【0017】
本発明のスライム処理装置によれば、噴射口は、下向き或いは斜め下向きに設けられているので、攪乱させたスライムをフードの内側の部分で対流させることができるので、杭孔の底部に堆積したスライムを泥水と共に効率良く吸い込んで地上に排出させることができる。
【0018】
さらに、本発明において、前記杭孔は、大断面の杭孔であることとしてもよい。
【0019】
本発明のスライム処理装置によれば、大断面の杭孔に適用した場合にも、杭孔の底部に堆積したスライムが広範囲に拡散するようなことはなく、杭孔の底部に堆積したスライムを効率良く吸い込んで地上に排出させることができる。
【0020】
さらに、本発明は、請求項1に記載のスライム処理装置を用いたスライム処理方法であって、前記ポンプを作動させて、前記フードの内側に対応する杭孔の底部に堆積しているスライムを泥水と共に吸い込んで地上に排出させることを特徴とする。
【0021】
本発明のスライム処理方法によれば、ポンプの作動により、フードの内側に対応する杭孔の底部の部分に堆積したスライムを泥水と共に吸い込むことができるので、杭孔内の広範囲にスライムが拡散するようなことはなく、杭孔の底部に堆積したスライムを効率良く吸い込んで地上に排出させることができる。
【発明の効果】
【0022】
以上、説明したように、本発明のスライム処理装置及びスライム処理方法によれば、杭孔の底部に堆積したスライムを効率良く処理することができる。また、拡底杭の杭孔の底部に堆積したスライムも効率良く処理することができる。さらに、大断面の杭孔に適用した場合にも、杭孔の底部に堆積したスライムを効率良く処理することができる。
【図面の簡単な説明】
【0023】
【図1】本発明によるスライム処理装置の一実施の形態を示した概略図である。
【図2】図1のスライム処理装置の下面図である。
【図3】スライム処置装置の噴射管の一例を示した断面図である。
【図4】スライム処理装置の噴射管の他の例を示した断面図である。
【図5】スライム処理装置の変形例を示した概略図である。
【図6】本発明によるスライム処理装置が適用される杭の一例を示した斜視図である。
【図7】図6の断面図である。
【図8】本発明によるスライム処理装置によるスライムの処理手順を示した説明図である。
【図9】本発明によるスライム処理装置によるスライムの処理過程を示した説明図である。
【図10】本発明によるスライム処理装置によるスライム処理過程を示した説明図であって、各運転モードによるポンプの運転時間と泥水の比重(密度)との関係を示した説明図である。
【図11】杭孔の底部におけるポンプの移動手順を示した説明図である。
【図12】図11の各位置におけるスライムの吸い込み状況を示した説明図である。
【図13】本発明によるスライム処理装置が適用される杭の他の例を示した断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0024】
以下、図面を参照しながら本発明の実施の形態について説明する。
図1〜図3には、本発明によるスライム処理装置の一実施の形態が示されている。本実施の形態のスライム処理装置1は、例えば、場所打ち杭や壁杭を構築する場合に、杭孔の底部に堆積したスライムを地上に排出させて処理するのに有効なものである。
【0025】
すなわち、本実施の形態のスライム処理装置1は、例えば、図1及び図2に示すように、杭孔25の底部27に堆積したスライム35を杭孔25内の泥水36と共に吸い込んで地上に排出させるポンプ2と、ポンプ2の周囲を囲むように設けられるフード15と、ポンプ2を昇降させるウインチ21(図8参照)とを備えている。
【0026】
ポンプ2は、例えば、水中サンドポンプであって、杭孔25の底部27に堆積したスライム35を泥水36と共に吸い込んで地上に排出させる機能と、吸い込んだ泥水36の一部を杭孔25の底部27に向けて噴射させる機能とを備えたポンプ本体3と、ポンプ本体3を駆動させるモータ11とを備えている。
【0027】
ポンプ本体3は、ケーシング4と、ケーシング4内の上下に回転可能に設けられるインペラ5及び攪拌羽根6と、ケーシング4のインペラ5の外周に対応する部分に設けられる吐出口7と、ケーシング4のインペラ5と攪拌羽根6との間に対応する部分に設けられる複数の吸込口8とを備え、インペラ5及び攪拌羽根6がポンプ本体3の上部に設けられるモータ11の回転軸に連結されている。
【0028】
モータ11を作動させて、インペラ5及び攪拌羽根6を回転させることにより、ポンプ本体3の下方の杭孔25の底部27に堆積したスライム35が攪拌され、この攪拌されたスライム35が泥水36と共に吸込口8からケーシング4内に吸い込まれ、吐出口7から揚泥ホース12を通じて地上に排出され、地上に設置した回収タンク20(図9参照)内に回収される。
なお、杭孔25の底部に堆積したスライム35は、後述する噴射口10から噴射される泥水36の圧力によっても攪乱される。
【0029】
ポンプ本体3のインペラ5の上方のケーシング4の外側の部分には、ケーシング4の周囲を囲むように環状の噴射管9が設けられ、この噴射管9内に吸込口8からポンプ本体3のケーシング4内に吸い込まれた泥水36の一部が導かれる。
【0030】
噴射管9の下面側には、周方向に所定の間隔ごとに複数箇所に噴射口10が設けられ、各噴射口10を介して噴射管9に導かれた泥水36が下方に向けて噴射される。噴射管9としては、例えば、図3及び図4に示すように、円形断面の丸管、角形断面の角管を用いることができる。
【0031】
各噴射口10は、鉛直方向を向くように、噴射管9の下面側に設けるのが好ましいが、鉛直方向に対して所定の角度で傾斜するように設けてもよい。また、噴射管9は、ポンプ本体3のケーシング4の外側に1本に限らず、2本以上設けて、各噴射管9の下面側にそれぞれ複数の噴射口10を設けるように構成してもよい。
【0032】
なお、環状の噴射管9の代わりに、図5に示すように、ポンプ本体3のケーシング4の外側に放射状に複数の直線状の噴射管9を設け、各噴射管9の先端に下向きに噴射口10を設けるように構成してもよい。
【0033】
ポンプ2は、吸込口8からスライム35を泥水36と共に吸い込み、吐出口7から揚泥ホース12を通じて地上に排出させる吸い込みモード、又は吸込口8からスライム35を泥水36と共に吸い込み、吐出口7から揚泥ホース12を通じて地上に排出させるとともに、吸込口8から吸い込んだ泥水36の一部を噴射管9に導き、この泥水36を噴射管9の各噴射口10から杭孔25の底部27に向けて噴射させる吸い込み・攪乱モードの何れか一方の運転モードを選択可能に構成されている。
【0034】
フード15は、スライム35を処理する対象の杭孔25の内面形状に応じた形状に形成される。本実施の形態においては、図6及び図7に示すように、長円形断面(めがね形状)の大断面の拡底杭24(例えば、軸部24a:3.0m×6.5m、拡底部24b:4.5m×8.0m、掘削深さ:GL−31.7m〜45.0mの拡底杭)の杭孔25の底部27に堆積したスライム35の処理に適用させるために、略円錐形状に形成されている。
なお、ここで、大断面の拡底杭とは、拡底部の長さが4000mm以上、幅が2500mm以上、かつ、断面積が16m以上のものを意味する。
【0035】
具体的には、図1に示すように、上端がポンプ2の上端に取り付けられる円錐台形状の本体部16と、本体部16の下端に一体に設けられる円筒状の立ち上がり部17とからなる、上端が閉塞され、下端が開口された略円錐形状に形成されている。
【0036】
この場合、立ち上がり部17の下端がポンプ本体3の下端と同一面上に位置するように、フード15の高さ、及びポンプ2への取付位置が設定されている。これにより、ポンプ2を杭孔25の底部27に着底させた場合に、フード15の下端を杭孔25の底部27に当接させることができるので、フード15の内側の部分のみのスライム35をポンプ2で吸い込むことができる。
【0037】
立ち上がり部17は、杭孔25の拡底部28の立ち上がり部29よりも同一又はやや低く形成され、これにより、拡底部28の立ち上がり部29にフード15の立ち上がり部17を沿わせることができ、拡底部28の立ち上がり部29に沿う部分に堆積しているスライム35も取り残すことなく吸い込むことができる。
【0038】
フード15の閉塞された上端には、フード15内外を貫通する孔、溝、隙間等からなる開口(図示せず)が設けられ、この開口を介してフード15内の泥水36をフード15の上方に排出させることができ、ポンプ2を杭孔25内にスムーズに降下させることができる。
【0039】
そして、上記のように構成した本実施の形態のスライム処理装置1によって拡底杭の杭孔25の底部27に堆積したスライム35を処理するには、例えば、図8(a)に示すように、アースドリル機30により、左右の軸部26及び拡底部28の掘削を行い、図8(b)に示すように、水平多軸式又はバケット式の掘削機31により、中抜き掘削及び底ざらいを行い、図8(c)に示すように、アースドリル機30により、センター部の拡底部28の掘削、底ざらいを行うことにより、大断面の拡底杭の杭孔25を形成する。
【0040】
そして、図8(d)に示すように、本実施の形態のスライム処理装置1を杭孔25の開口縁部に設置し、ウインチ21を操作して、ウインチ21からワイヤ22を繰り出すことにより、ワイヤ22の先端に取り付けたポンプ2を杭孔25内を降下させて底部27に着底させる。
【0041】
そして、ポンプ2を作動させることにより、フード15の内側に対応する部分の杭孔25の底部27に堆積しているスライム35を泥水36と共に吸込口8から吸い込み、図9に示すように、吐出口7から揚泥ホース12を介して地上に排出させ、地上の回収タンク20内に回収する。
【0042】
この場合、ポンプ2を、吸い込みモードと、吸い込み・攪乱モードとに交互に切り換えながら運転し、フード15の内側の杭孔25の底部27に堆積しているスライム35を吸い込んで地上に排出させて処理する。
【0043】
具体的には、図10に示すように、まず、ポンプ2の運転モードを吸い込みモードにセットし、ポンプ2を作動させて、吸込口8からスライム35と共に泥水36を吸い込み、揚泥ホース12を通じてスライム35を含む泥水36を地上に設置した回収タンク20内に回収する。
【0044】
この際、図9に示すように、揚泥ホース12を通じて地上に排出させた泥水36の比重或いは密度を計測器37により逐一測定することにより、泥水36に含まれるスライム35(主として砂分)の量を逐一測定し、このモードによる運転を泥水36の比重或いは密度が所定の値まで上昇し、下降に転じた後に所定の値に達するまで続ける(図10(ア))。
【0045】
次に、ポンプ2を一旦停止させて、運転モードを吸い込み・攪乱モードに切り換え、ポンプ2を作動させて、吸込口8からスライム35と共に泥水36を吸い込み、揚泥ホース12を通じてスライム35を含む泥水36を地上に設置した回収タンク20内に回収するとともに、吸込口8から吸い込んだ泥水36の一部を噴射管9に導き、噴射管9の各噴射口10から杭孔25の底部27に向けて噴射させ、杭孔25の底部27に堆積しているスライム35を攪乱させて、フード15の内側の全体に拡散させる。
【0046】
この際、図9に示すように、揚泥ホース12を通じて地上に排出させた泥水36の比重或いは密度を計測器37により逐一測定することにより、泥水36に含まれるスライム35(主として砂分)の量を逐一測定し、このモードによる運転を泥水36の比重或いは密度が所定の値まで上昇するまで続ける(図10(イ))。
【0047】
次に、ポンプ2を一旦停止させて、運転モードを吸い込みモードに切り換え、ポンプ2を作動させて、吸込口8からスライム35と共に泥水36を吸い込み、揚泥ホース12を通じてスライム35を含む泥水36を地上に設置した回収タンク20内に回収する。
【0048】
この際、図9に示すように、揚泥ホース12を通じて回収した泥水36の比重を或いは密度を計測器37により逐一測定することにより、泥水36に含まれるスライム35(主として砂分)の量を逐一測定し、このモードによる運転を泥水36の比重或いは密度が所定の値まで下降するまで続ける(図10(ウ))。
【0049】
そして、同様に、吸い込み・攪乱モード(図10(エ))、吸い込みモード(図10(オ))、吸い込み・攪乱モード(図10(カ))吸い込みモード(図10(キ))によりポンプ2を運転し、これらのモードによるポンプ2の運転を計測器37で泥水36の比重或いは密度を逐一測定しながら交互に行い、これらのモードによるポンプ2の運転を泥水36の比重或いは密度に変化が見られなくなるまで続け、泥水36の比重或いは密度に変化が見られなくなった時点をスライム35の排出が完了したものとし、ポンプの各モードによる運転を停止させる。
【0050】
そして、同様のスライム35の処理作業を、図11及び図12に示すように、ポンプ2を、杭孔25の底部27の内面に沿って右周り又は左回りに図11中(a)〜(g)のように移動させながら、かつフード15を所定量ずつラップさせながら、図12(a)〜(f)に示すように、フード15の内側に対応する杭孔25の底部27の部分のスライム35を吸い込んで地上に排出させることにより、杭孔25の底部27に堆積しているスライム35の全量を取り残すことなく、地上に排出させて回収タンク20内に回収することができる。
【0051】
上記のように構成した本実施の形態のスライム処理装置1にあっては、ポンプ2の周囲を囲むようにフード15を設けて、フード15の内側に対応する杭孔25の底部27に堆積したスライム35を吸い込んで地上に排出させることを、ポンプ2を杭孔25の底部27の内面に沿って移動させながら、かつ、フード15を所定量ずつラップさせながら行うように構成したので、フードなしのポンプでスライムを吸い込んで地上に排出させる従来のスラム処理装置のように、スライム35が杭孔25の底部27の広範囲に拡散するようなことはない。従って、大断面の拡底杭の杭孔25に適用した場合にも、杭孔25の底部27に堆積したスライム35の全量を効率良く吸い込んで地上に排出させて回収することができる。
【0052】
また、ポンプ2は、スライム35を泥水36と共に吸い込む吸い込みモードと、スライム35を泥水36と共に吸い込むとともに、吸い込んだ泥水36の一部を杭孔35の底部37に向けて噴射させて、底部37に堆積しているスライム35を攪乱させる吸い込み・攪乱モードとに切り換え可能に構成されているので、吸い込みモードと吸い込み・攪乱モードとを交互に繰り返し、このモードをスライム35に含まれる砂分の比重或いは密度が変化しなくなるまで続けることにより、杭孔25の底部27に堆積したスライム35の全量を取り残すことなく、確実に吸い込んで地上に排出させることができる。
【0053】
さらに、泥水36を噴射させる噴射管9の噴射口10は、噴射管9に下向き或いは斜め下向きに設けられているので、フード15の内側に対応する杭孔25の底部27に堆積しているスライム35を効率良く攪乱させて、フード15の内側で対流させることができるので、スライム35をフード15の内側の泥水36中の全体に効率良く拡散させることができ、杭孔25の底部27に堆積しているスライム35を効率良く吸い込んで地上に排出させることができる。
【0054】
なお、前記の説明においては、大断面の拡底杭の杭孔25の内面形状に合わせて、フードを略円錐形状に形成したが、杭孔25の内面形状に応じて、略角錐形状、円筒状、角筒状等の形状に形成してもよい。
【0055】
また、大断面の拡底杭の杭孔25に限らず、大断面の壁杭の杭孔や、その他の一般的な杭の杭孔の底部に堆積したスライムの処理に適用してもよいものであり、その場合にも、同様の作用効果を奏する。
【0056】
さらに、前記の説明においては、本発明のスライム処理装置を長円形断面(めがね形状)の拡底杭の杭孔に適用したが、図13(a)に示すような長円形断面(トラック形状)、図13(b)に示すような長円形断面(団子形状)、図13(c)に示すような長方形断面、図13(d)に示すような長方形断面の中央部が外方に膨らんだ形状等、各種の断面形状の拡底杭の杭孔に適用してもよい。
【符号の説明】
【0057】
1 スライム処理装置
2 ポンプ
3 ポンプ本体
4 ケーシング
5 インペラ
6 攪拌羽根
7 吐出口
8 吸込口
9 噴射管
10 噴射口
11 モータ
12 揚泥ホース
15 フード
16 本体部
17 立ち上がり部(フードの立ち上がり部)
20 回収タンク
21 ウインチ
22 ワイヤ
24 拡底杭
24a 軸部
24b 拡底部
25 杭孔
26 軸部
27 底部
28 拡底部
29 立ち上がり部(拡底部の立ち上がり部)
30 アースドリル機
31 掘削機
35 スライム
36 泥水
37 計測器

【特許請求の範囲】
【請求項1】
杭孔内の底部に堆積したスライムを泥水と共に吸い込むポンプを備えたスライム処理装置であって、
前記ポンプに、該ポンプの周囲を囲むようにフードを設けたことを特徴とするスライム処理装置。
【請求項2】
前記フードは、外面が前記杭孔の底部の内面に合致した形状に形成されていることを特徴とする請求項1に記載のスライム処理装置。
【請求項3】
前記ポンプは、前記杭内の底部に堆積したスライムを泥水と共に吸い込む吸込口と、該吸込口から吸い込んだ泥水の一部を前記杭孔の底部に向けて噴射させる噴射口とを有し、少なくとも前記吸込口及び前記噴射口の周囲を囲むように、前記フードを設けたことを特徴とする請求項1又は2に記載のスライム処理装置。
【請求項4】
前記ポンプには、環状の噴射管が設けられ、該噴射管の複数箇所に前記噴射口が設けられていることを特徴とする請求項3に記載のスライム処理装置。
【請求項5】
前記噴射口は、下向き或いは斜め下向きに設けられていることを特徴とする請求項3又は4に記載のスライム処理装置。
【請求項6】
前記杭孔は、大断面の杭孔であることを特徴とする請求項1〜5の何れか1項に記載のスライム処理装置。
【請求項7】
請求項1に記載のスライム処理装置を用いたスライム処理方法であって、
前記ポンプを作動させて、前記フードの内側に対応する杭孔の底部に堆積しているスライムを泥水と共に吸い込んで地上に排出させることを特徴とするスライム処理方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図13】
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【図11】
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【図12】
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【公開番号】特開2012−219584(P2012−219584A)
【公開日】平成24年11月12日(2012.11.12)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−89489(P2011−89489)
【出願日】平成23年4月13日(2011.4.13)
【出願人】(000000549)株式会社大林組 (1,758)
【Fターム(参考)】