説明

スリットを有するナノファイバー

【課題】本発明は、ワイピング性や吸着性および吸水性に優れ、かつワイピング対象物に対する攻撃性(スクラッチ性)が小さい研磨やワイピング用途に好適な布帛を得ることのできるナノファイバーを提供することにある。
【解決手段】繊維表面にスリットを有し、単繊維径が900nm以下であることを特徴とする、熱可塑性樹脂からなるナノファイバー。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、繊維表面にスリットを有するナノファイバーに関する。さらに詳しくは、ワイピング性や吸着性および吸水性に優れ、かつワイピング対象物に対する攻撃性(スクラッチ性)が小さい布帛を提供しうるナノファイバーに関するものである。
【背景技術】
【0002】
単繊維径が数マイクロメートルの極細繊維(マイクロファイバー)は、繊維束としての比表面積の大きさや空隙の大きさを背景とし、研磨布やワイピングクロスとして広く用いられてきた。これらマイクロファイバーを容易に製造する手法としては、易溶解性ポリマーからなる海成分中に難溶解性の島成分を含有する海島型複合繊維や、難溶解性のマイクロファイバーが易溶解性ポリマーで仕切られた割繊型複合繊維の利用が広く知られている(たとえば、特許文献1、2参照)。これらは一度、複合繊維として巻き取った後、溶解剤に複合繊維もしくは布帛製品を浸漬させることで易溶解性ポリマーを除去し、難溶解性のマイクロファイバーを得ることが可能となる技術である。
【0003】
近年では、さらに繊細な肌触りやソフト感を追求して単繊維径1マイクロメートル以下となる超極細繊維(ナノファイバー)が提案されている。ナノファイバーは繊維径のスケールダウンによる極限のソフト化のほか、単糸群の比表面積や空隙率の飛躍的な増加に起因するナノサイズ特有の効果も示唆されていることから、マイクロファイバー以上の展開可能性を秘めており、早期の研究・開発・安定的製造が求められている。
【0004】
ナノファイバーを製造する方法の一つとしては、エレクトロスピニング(ESP)法が提案されている。ESP法とは、樹脂を溶質として含有する溶液に電圧を印加しながら電界中に放出することでナノファイバーを取り出す製法(たとえば、特許文献3参照)であるが、放出されたナノファイバーは長繊維として採取することが難しいため、用途はフィルター等の不織布に限定されてしまうほか、繊維径や配置の制御も困難であることから、衣料用途には適さないという欠点があった。また、高電圧が必要であることや、溶媒が常に揮散した状態になることから、感電、中毒、引火といった危険が伴う問題もあった。
【0005】
その他の方法としては、ポリマーブレンド技術とポリマー溶解除去技術の組み合わせによる、バンドル状ナノファイバーの製造方法が提案されている(たとえば、特許文献4参照)。該特許文献4の技術により製造されるナノファイバー自体は短繊維ではあるが、集合体を成しているため長繊維として織物、編物のような布帛製品とすることも可能である。しかし、ナノファイバーおよび集合体の単糸径制御が困難であることや、短繊維の集合体であるゆえに強度が低く、フィブリル化や脱落により耐磨耗性が低く、布帛製品として実用的でないという問題があった。
【0006】
上記の技術で問題となっている耐久性、品質の劣位を克服し、織物、編物にまで適用しうる長繊維ナノファイバー開発の手段として、近年では海島型複合紡糸技術の深化が盛んに行われている。
【0007】
一例として、易溶解ポリマーとして5−ナトリウムスルホイソフタル酸とポリエチレングリコールの共重合ポリエステルを用い、さらに海島単糸中での島成分配置を規定することで生産性の高いナノファイバーの製造方法が提案されている(たとえば、特許文献5、6参照)。しかしながら、該特許文献5、6に代表される従来技術に例示されている海島型複合繊維はいずれも複合繊維の単糸繊度を大きくすることで、安定的に製造することを重視しているが、海島単糸繊度が大きい海島型複合繊維においては、海島単糸表面と芯部での島成分の溶解剤接触時間差が顕著になってしまうため、得られるナノファイバー単糸群および布帛製品は低強度かつ品質バラツキが大きなものとなってしまっていた。そのため衣料用途はおろか、常に外力に晒されるワイピング資材用途としての実用には不向きであり、さらに近年、一層の大容量化や高密度化が進む磁気記録媒体の研磨用途としても精度や安定性に欠けるものであった。
【0008】
以上のように、研磨や、ワイピング用途としての使用に耐えうる強度を有し、かつワイピング性や吸着性および吸水性に優れ、かつワイピング対象物に対する攻撃性(スクラッチ性)が小さい布帛を提供しうるナノファイバーが求められていた。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0009】
【特許文献1】特開2005−163234号公報(特許請求の範囲)
【特許文献2】特公昭48−28005号公報(特許請求の範囲)
【特許文献3】特開2007−303015号公報(特許請求の範囲)
【特許文献4】特開2004−162244号公報(特許請求の範囲)
【特許文献5】特開2007−100243号公報(特許請求の範囲)
【特許文献6】特開2007−100253号公報(特許請求の範囲)
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0010】
本発明の課題は、上記従来技術の課題を克服し、ワイピング性や吸着性および吸水性に優れ、かつワイピング対象物に対する攻撃性(スクラッチ性)が小さい研磨やワイピング用途に好適な布帛を得ることのできるナノファイバーを提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0011】
前記課題を解決するため、本発明は下記の構成からなる。すなわち、熱可塑性樹脂からなる単繊維径が900nm以下のナノファイバーであり、繊維表面にスリットを有することを特徴とするナノファイバーである。
【発明の効果】
【0012】
本発明によれば、ワイピング性や吸着性および吸水性に優れ、かつワイピング対象物に対する攻撃性(スクラッチ性)が小さい研磨やワイピング用途に好適な織物、編物、不織布などの布帛を提供しうるナノファイバーを得ることができる。
【発明を実施するための形態】
【0013】
本発明でいう熱可塑性樹脂としては、ポリエステル系、ポリアミド系、ポリオレフィン系、ポリビニルアルコール系等の樹脂が挙げられる。例えば、ポリエステル系樹脂としては、コハク酸、グルタル酸、アジピン酸、ピメリン酸、スベリン酸、セバシン酸、ドデカン二酸等の脂肪族ジカルボン酸、更にはテレフタル酸、イソフタル酸、2,6−ナフタレンジカルボン酸といった芳香族ジカルボン酸を主たる酸成分とし、エチレングリコール、トリメチレングリコール、テトラメチレングリコール、アルキレングリコール成分から選ばれた少なくとも一種のグリコールを主たるグリコール成分とするポリエステルのほか、ポリ乳酸も対象とする。さらに、上記以外の第3成分が共重合された共重合ポリエステルを使用することもできる。特に、5−ナトリウムスルホイソフタル酸やポリエチレングリコールなどを共重合成分としたポリエステルはアルカリ水溶液に対する溶解性や分解性が高いため、海成分ポリマーとして用いるのに好適である。
【0014】
また、ポリアミド系樹脂としては、6−アミノカプロン酸、11−アミノウンデカン酸、12−アミノドデカン酸、パラアミノメチル安息香酸などのアミノ酸やε−カプロラクタム、ω−ラウロラクタムなどのラクタムを主たる原料とするポリアミドのほか、コハク酸、グルタル酸、アジピン酸、セバシン酸、マロン酸、コハク酸、グルタル酸、ピメリン酸、スベリン酸、アゼライン酸、ウンデカン二酸、ドデカン二酸、テトラデカン二酸、ペンタデカン二酸、オクタデカン二酸等の脂肪族ジカルボン酸、またはテレフタル酸、イソフタル酸、ナフタレンジカルボン酸などの芳香族ジカルボン酸を主たる酸成分とし、テトラメチレンジアミン、ヘキサメチレンジアミン、1,5−ペンタンジアミン、2−メチルペンタメチレンジアミン、ノナメチレンジアミン、ウンデカメチレンジアミン、ドデカメチレンジアミン等をジアミン成分とする共重合ポリアミドも対象とする。さらに、上記以外の第3成分が共重合された変性ポリアミドを使用することもできる。
【0015】
ポリオレフィン系樹脂としては、ポリエチレン、ポリプロピレンを対象とし、さらにはポリスチレンも熱可塑性樹脂の対象となる。
【0016】
上記の熱可塑性樹脂には、酸化チタンなどの艶消し剤、難燃剤、滑剤、抗酸化剤、着色顔料等として、無機微粒子や有機化合物、カーボンブラックを必要に応じて添加することができる。
【0017】
本発明のナノファイバーの単繊維径は900nm以下であることが必要である。単繊維径が900nm以下のナノファイバーを布帛製品とすることで、既存のマイクロファイバー製品では成し得なかった低スクラッチ性が得られ、さらには比表面積増大に伴う高摩擦力や高ワイピング性、空隙率の増大に伴う吸着性および吸水性の向上が達成される。より優れた低スクラッチ性やワイピング効果を得るためには、単繊維径800nm以下であることが好ましく、かつナノファイバー単糸群のフィブリル化を抑制するためには50nm以上であることが好ましい。
【0018】
既存のナノファイバーでは成し得なかった吸着性、ワイピング性を付与するために、本発明のナノファイバーは表面にスリットを有していることが必要となる。このスリットは長軸方向がナノファイバーの繊維軸方向と同方向に形成されている。表面にスリットを有していることで、ナノファイバー単糸群の比表面積および空隙率が一層増加し吸着性が増加するほか、スリットの微細な凹凸構造は、高い研磨性や汚れの掻き出し効果を生む。スリット存在数の好ましい範囲は繊維軸外周方向に、平均で3〜30本/μmであり、より好ましくは5〜25本/μmである。スリット存在数を3本/μm以上とすることで、前述の吸着性や研磨性、汚れの掻き出し効果が得られ、30本/μm以下とすることで、フィブリル化が抑制され、強度の高いナノファイバーを得ることができる。このスリット存在数は後述する測定方法で算出される。
【0019】
本発明のナノファイバー表面に存在するスリットの形態として、(長軸方向の長さ/短軸方向の長さ)で表されるアスペクト比が50以上であることが好ましい。アスペクト比を50以上とすることで、ナノファイバー表面での毛管現象が効果的に発現するほか、ナノファイバーの長手方向に対して均一な研磨性や汚れの掻き出し効果を付与することができる。スリットのより好ましいアスペクト比は、100以上、さらに好ましくは200以上1000以下である。
【0020】
上記スリットのアスペクト比の基準となる短軸方向の長さ、すなわちスリット幅は、5〜50nmの範囲であることが好ましい。スリット幅が5nm以上あれば、汚れの掻き出し効果の発現が得られ、50nm以下とすることで毛管現象発現による吸水性を維持することができる。長軸方向の長さ、すなわちスリット長は特に規定されるものではなく、前述のアスペクト比を満たす値となるよう設計することが好ましい。スリットの長軸、短軸方向の長さの測定方法については後述する。
【0021】
スリットの形態を決定するパラメータとして、スリットの深さもナノファイバーの特性向上に関与している。スリットの深さを5〜100nmとすることで、ナノファイバー自体の強度を維持したまま表面に空隙を生じさせることができ、ワイピング性および吸着性を向上させることができる。深さの測定方法としては、繊維軸方向に対して直角な断面方向にナノファイバーを切断し、繊維軸方向と平行となる視点から電子顕微鏡により断面を観察し直接深さを測定する方法や、走査型プローブ顕微鏡により3次元的に観察する方法等を適用する。
【0022】
ナノファイバーにスリットを付与する手法としては、ポリマーブレンド技術の適用が挙げられる。ベースポリマーに対し、非相溶なブレンド成分ポリマーを混練し繊維状にすると、ベースポリマー中でブレンド成分ポリマーが筋を形成するように存在する。ベースポリマー表面に存在するブレンド成分を選択的に溶解させることで、繊維表面にスリットが作製される。ブレンド成分溶解処理後は、ベースポリマーの強度が低下することを加味し、ブレンド率は0.5〜20wt%の範囲とすることが好ましい。ブレンド率が0.5wt%以上であれば従来では得られなかったワイピング性、吸着性を付与するのに十分なスリットを形成することができ、20wt%以下であれば実用に十分な強度を有するナノファイバーとすることができる。さらに好ましいブレンド率は、2〜15wt%である。
【0023】
本発明のナノファイバーの製造方法として、海島型複合紡糸法を適用することが好ましい。海島型複合紡糸法を適用することで、ポリマーの口金からの単孔吐出量を多くすることができるため、紡糸ドラフトが小さくなり製糸性が安定する。海島型複合紡糸に用いる口金は、品質および操業安定的にナノファイバーを紡糸することが可能であれば、公知のいずれの内部構造のものであってもよい。
【0024】
本発明の海島型複合繊維は、溶解剤に対し易溶解性樹脂である海成分とブレンド成分、そして難溶解性樹脂の島成分からなり、上記ベースポリマーである難溶解性樹脂の島成分ポリマーに易溶解性の樹脂のブレンド成分ポリマーをあらかじめ混練しておき、このブレンド成分が混練された島成分と海成分とを海島型複合紡糸法により複合紡糸するものである。島成分と、海成分およびブレンド成分ポリマーは非相溶であり、脱海処理時の溶解速度差ができるだけ大きな組み合わせで製糸することが重要である。詳しくは、海成分およびブレンド成分の溶解速度を島成分に対して5〜300倍とする。ただし、島成分ポリマーが溶解剤に全く溶解しない場合はその限りではない。溶解速度差を5〜300倍とすることで、海成分の溶解除去がスムーズに実行され、海島単糸の表面/芯部での島成分溶解剤接触時間差が少なくなるため、繊維径バラツキが小さなナノファイバー単糸群を得ることができる。溶解速度差のより好ましい範囲は20〜280倍である。海成分とブレンド成分でそれぞれ好適な溶解剤が異なる場合には、2段階の溶解処理を行う必要があり、島成分ポリマーと非相溶かつ前記溶解速度差範囲を満たすのであれば、海成分とブレンド成分に同一ポリマーを使用することもできる。
【0025】
上記熱可塑性樹脂の組み合わせの一例を以下に列挙する。溶解剤が単一、例えばアルカリ水溶液の場合は、海成分およびブレンド成分が共重合ポリエステル樹脂かつ島成分がホモポリエステル樹脂、海成分が脂肪族ポリエステル樹脂かつ島成分がポリアミド系樹脂かつブレンド成分が共重合ポリエステル樹脂などである。異なる2種類の溶解剤、例えばトリクロロエチレンのような有機溶媒とアルカリ水溶液の場合は、海成分がポリスチレンかつ島成分がポリエステル系樹脂かつブレンド成分が共重合ポリエステルなどである。
【0026】
海、島、ブレンド各成分の組み合わせにより、スリットの個数や形状をコントロールすることができる。海成分とブレンド成分の親和性が高い、または島成分とブレンド成分の親和性が低いほど、繊維表面に露出するブレンド成分の数が多くなるほか、断面形状は繊維外周方向に対して平たい形状となるため、作られるスリットは溝が浅く、縁がなだらかな形状となる。一方、海成分とブレンド成分の親和性が低い、または島成分とブレンド成分の親和性が高いほど、繊維表面に露出するブレンド成分の数が少なくなるほか、断面形状が真円に近い形となるため、作られるスリットは溝が深く、縁の鋭い形状となる。
【0027】
本発明の海島型複合繊維の単糸繊度は1.5dtex以下であることが好ましい。単糸繊度を1.5dtex以下とすることで比表面積が大きくなり海成分溶解速度が速くなるとともに、海島単糸の表面/芯部での島成分の溶解剤接触時間差が少なくなるため、溶解後の島繊維径バラツキが小さく、高強度なナノファイバー単糸群を得ることができる。さらに繊維径バラツキが少なく、強度低下が少ないナノファイバー単糸群を得るためには、単糸繊度が1.0dtex以下であることが好ましく、かつ製糸安定性を保持するためには単糸繊度が0.3dtex以上であることが好ましい。
【0028】
本発明の海島型複合繊維における海島単糸中の島数は、30〜200島の範囲であることが好ましい。島数を30島以上にすると、島成分を隙間なく海成分中に配置させることが可能となるため、海島型複合繊維の形態安定性およびナノファイバーの生産性が高くなる。また、島数を200島以下とすることで、島成分融着欠点を回避させることが可能であり、さらに海成分溶解除去時に海島単糸の表面/芯部での溶解剤接触時間差が少なくなるため、繊維径バラツキが小さく、高強度なナノファイバー単糸群を得ることが可能となる。単糸中の島数のより好ましい範囲は、50〜180島であり、さらに好ましくは80〜150島である。
【0029】
本発明においては、海島型複合繊維の海/島複合比を10/90〜50/50の範囲にすることが好ましい。ここで言う複合比とは、両成分の体積比であり、それぞれ重量を比重で割ることで算出される。海成分を10%以上とすることで、島成分同士の融着を防ぐことができるため脱海性に優れ、高強度かつ高品質な布帛を得ることができる。また、海成分が50%以下であれば、海成分溶解除去時間を短縮することが可能であり、かつナノファイバー単糸群の生産性も高い。海/島複合比のより好ましい範囲は、15/85〜40/60である。
【0030】
次に、本発明のナノファイバーを得るための好ましい製造方法について述べる。
【0031】
ブレンド成分ポリマーを添加させる方法は、各ポリマーの重合工程完了直後から紡糸工程における溶融までの任意の段階でよいが、特に紡糸前に島成分ポリマーチップとブレンド成分チップとを所定の比率にてブレンドし、紡糸機内で溶融混合させる方法が微分散性の観点から好ましい。
【0032】
紡糸機は、スクリュープレッシャーメルター型溶融紡糸機やエクストルーダー型溶融紡糸機を用いることができる。ブレンド成分の微分散性の観点から、エクストルーダーがより好ましい。また、エクストルーダーのスクリューは、下記式で表される圧縮比
圧縮比=Hf(D−Hf)/Hm(D−Hm)
Hf:スクリュー供給部溝深さ(mm)
Hm:スクリュー溶融部溝深さ(mm)
D:スクリュー径(mm)
が2.0〜3.0の特性を満たすことが好ましい。2.0以上とすることで十分な背圧が加えられた状態で混練されるため微分散に効果的であり、3.0以下とすることで過剰混練や過剰剪断発熱を抑制することができる。
【0033】
海島型複合繊維は、吐出されたポリマーを未延伸糸として一旦巻き取った後に延伸する二工程法のほか、紡糸および延伸工程を連続して行う直接紡糸延伸法や高速製糸法など、いずれのプロセスにおいても製造できる。また、高速製糸法における紡糸速度の範囲は特に規定しないため、半延伸糸として巻き取った後に延伸する工程でもよい。さらに、必要に応じて仮撚りなどの糸加工を行うこともできる。
【0034】
ブレンド成分の伸長を促進するため、下記式で表される紡糸ドラフト
紡糸ドラフト=Vs/V0
Vs:紡糸速度(m/分)
V0:吐出線速度(m/分)
を150〜400の範囲にすることが好ましい。紡糸ドラフトを150以上とすることで、ブレンド成分の伸長が効果的に行われる。また、400以下とすることで操業安定的に海島型複合繊維を製糸できる。紡糸ドラフトのより好ましい範囲は、180〜300である。
【0035】
海島型複合繊維を操業性よく品質安定的に製糸するにあたり、吐出されたポリマーの冷却固化を厳密に制御する必要がある。細繊度化に伴い吐出ポリマー量を極少化すると、ポリマーの細化および冷却固化が吐出後すぐに開始されることとなるため、従来技術で想定される冷却方法では長手方向の糸斑の多い複合繊維しか得られない。また、固化した繊維による随伴気流が増大し、紡糸張力が大きくなるため、製糸性を改善する方法が必要となる。
【0036】
これらを解決する方法として、冷却開始点を口金吐出面から20〜120mmおよび口金吐出面から給油位置までの距離を1300mm以下にする。冷却開始点が20mm以上であれば冷却風による口金の面温度低下を抑制できるため、口金孔詰まりや複合異常、吐出斑といった問題を回避できる。また、冷却開始点を120mm以下とすることで、長手方向での糸斑の少ない高品質な海島型複合繊維を得ることができる。冷却開始点のより好ましい範囲は25〜90mmである。空冷装置は横吹き出しタイプでも製糸可能だが、繊維の長手方向糸斑を抑制するために、環状型吹き出しタイプを使用するのが好ましい。
【0037】
冷却風による口金面温度低下を抑制するため、冷却風の温度を管理したり、口金周辺部に加熱器を設置したり、紡糸温度を高く設定することで口金面温度を適正に保つ必要がある。紡糸温度を高融点側のポリマー融点よりも20〜50℃高めの設定とすることで、ポリマーの過度の劣化を抑制しながら安定的な製糸が可能となる。
【0038】
口金吐出面から給油位置までの距離を1300mm以下とすることで冷却風による糸条揺れ幅を抑え、繊維長手方向での糸斑を改善できるほか、糸条の収束に至るまでの随伴気流を抑制できるため紡糸張力を低減でき、毛羽や糸切れの少ない安定した製糸性が得やすい。海島複合繊維の紡糸工程における給油位置のより好ましい範囲は、1200mm以下である。
【0039】
二工程法で製糸する場合、ホットロール−ホットロール延伸や熱ピンを用いた延伸のほか、あらゆる公知の延伸方法を用いることができる。また、用途に応じて交絡や仮撚りを加えながら延伸してもよい。毛羽発生や両成分の剥離などの複合異常を抑制するために、延伸糸の残留伸度は20〜40%となるように延伸するのが好ましい。
【0040】
紡糸形態の具体例を以下に記載する。島成分チップに対し、ブレンド率0.5〜20.0wt%となるようにブレンドチップをあらかじめブレンドしておく。島成分ポリマー対比、溶解速度差が5〜300倍であるポリマーを海成分ポリマーに用い、海/島複合比10/90〜50/50となるように溶融する。このとき、ブレンド済みの島成分チップは圧縮比2.0〜3.0の特性を有するエクストルーダーにより混練・溶融し、紡糸温度を高融点側のポリマー融点よりも20〜50℃高めに設定する。溶融された両ポリマーは30〜200島の海島型複合紡糸用口金に流入させ、紡糸ドラフトが150〜400の範囲となるよう巻き取る。このとき、冷却開始点は口金吐出面から20〜120mm、給油位置を口金吐出面から1300mm以下とする。二工程法の場合、海島型複合繊維を一旦未延伸糸として巻き取り、得られた未延伸糸をホットロール−ホットロール延伸にて残留伸度20〜40%となるように延伸する。直接紡糸延伸法の場合は、海島型複合繊維を一旦巻き取ることなく、ホットローラー−ホットローラー間を介して延伸を行う。海島型複合繊維の残留伸度は20〜40%となるように設定するのが好ましい。高速製糸法の場合も、残留伸度20〜40%となるように巻取速度を設定して海島型複合繊維を巻き取る。
【実施例】
【0041】
以下実施例により本発明をさらに詳細に説明する。なお、実施例中の各特性値は次の方法を用いた。
【0042】
(1)固有粘度(IV)
定義式のηrは、純度98%以上のO−クロロフェノール(OCP)10mL中に試料ポリマーを0.8g溶かし、25℃の温度にてオストワルド粘度計を用いて相対粘度ηrを下記の式により求め、固有粘度(IV)を算出した。
【0043】
ηr=η/η0=(t×d)/(t0×d0)
固有粘度(IV)=0.0242ηr+0.2634
η:ポリマー溶液の粘度
η0:OCPの粘度
t:溶液の落下時間(秒)
d:溶液の密度(g/cm
t0:OCPの落下時間(秒)
d0:OCPの密度(g/cm)。
【0044】
(2)ポリアミドの相対粘度(ηr)
ポリアミド系樹脂については、98%濃硫酸100mL中に試料ポリマーを1g溶かし、25℃の温度にてオストワルド粘度計を用いて相対粘度ηrを下記の式により求めた。
【0045】
ηr=T1/T2
T1:溶液の落下時間(秒)
T2:濃硫酸の落下時間(秒) 。
【0046】
(3)メルトマスフローレート(MFR)
ポリスチレンのMFR(g/10分)は、JIS K 7210(1999)に従い測定した。
【0047】
(4)製糸安定性
各実施例についての製糸を行い、1千万m辺りの糸切れ回数から海島型複合繊維の製糸安定性を3段階評価した。
【0048】
○○:0.8回/千万m未満
○ :0.8回/千万m以上、2.0回/千万m未満
× :2.0回/千万m以上
(5)ナノファイバーの平均繊維径
海成分および表面に存在するブレンド成分溶解除去後のナノファイバー単糸群を走査型電子顕微鏡(SEM:日立社製S−3000N)にて観察した。ナノファイバー単糸群から50本をランダムに選出し、それら測定値から平均繊維径を算出した。
【0049】
(6)ナノファイバー表面のスリット存在密度
上記(5)項と同様、海成分および表面に存在するブレンド成分溶解除去後のナノファイバー単糸群を走査型電子顕微鏡により観察することで測定した。繊維軸方向に直角な断面方向にナノファイバー単糸群を切断し、繊維軸方向と平行となる視点から切断面を観察した。ナノファイバー外周に存在する凹部(スリット部)を直接計数し、下記式に入力した。
【0050】
スリット存在密度(本/μm)=n/(R・π)
n=ナノファイバー外周に存在する凹部の数(本)
R=ナノファイバーの単繊維径(μm)
ナノファイバー単糸群から10本のナノファイバー、さらに各ナノファイバー当たり5箇所をランダムに選出し、合計50箇所の平均値からスリット存在密度を算出した。
【0051】
(7)ナノファイバー表面のスリット幅および深さ測定およびアスペクト比の算出
上記(5)および(6)項と同様の方法により観察を行った。長軸方向の長さ、短軸方向の長さについては、ナノファイバー単糸群から10本のナノファイバー、さらに各ナノファイバー当たり5本のスリットをランダムに選出し、合計50本の平均値を算出した。深さについては、ナノファイバー単糸群から10本のナノファイバー、さらに各ナノファイバー当たり5箇所をランダムに切断し、合計50箇所の平均値を算出した。アスペクト比の算出方法および測定箇所は以下の通りである。
アスペクト比=(長軸方向の長さ/短軸方向の長さ)
長軸方向の長さ=(スリット長軸の頂点間距離)
短軸方向の長さ=(スリット長軸の頂点同士を結んだ直線上の中点部の幅)
(8)強度
海成分の複合比をパーセンテージ変換し、下記の式により算出された減量率の分だけ溶解除去処理した後、さらに規定混率の分だけブレンド成分を溶解処理したナノファイバー単糸群の強度について、JIS L 1013(2010)に従い、オリエンテック製テンシロンUCT−100にて測定した。
【0052】
減量率(%)=海成分複合比(%)×1.1
(9)ワイピング性
海島型複合繊維を用いて経密度100本/2.54cm、緯密度95本/2.54cmのゾッキ織物を作製し、95℃にて精練した。引き続き、溶解剤にて海成分およびブレンド成分を溶解除去し、染色工程を経て最終セットを行った。なお、減量率は上記(8)項と同一の式により算出した。約7cm×7cmにカットしたガラス板にシリコーンコンパウンド(東レダウコーニング製SC−554)を均一に塗布したものを拭取り試料とし、得られた布帛をローラーに巻きつけ、面圧を一定として試料上を一定速度でスライドさせることでシリコーンを拭取った。拭取り後のガラス板について検査者5人が目視および触感判定し、拭き残しがほとんどない(4点)、拭き残しが若干しかない(3点)、拭き残しが見られる(2点)、多くの拭き残しが見られる(1点)の4段階でワイピング性を評価して、各検査者の平均値にて下記の通り評価した。小数点第2位以下は四捨五入した。
【0053】
○○:3.5点以上
○ :3.5点未満2.7点以上
× :2.7点未満
(10)スクラッチ性
上記(9)項で準備した布帛を幅4cmのテープとし、ダイヤモンド砥粒スラリーを滴下したアルミニウム基板上を、走行速度5cm/分の条件で20秒間研磨した。研磨後の基板表面に関し、光学表面分析計を用いて深さ3nm以上の溝をスクラッチとした。基板5枚の両面についてスクラッチを計測し、その個数の平均値でスクラッチ性を3段階評価した。なお、スクラッチ性は値が小さいほうが優れている。
【0054】
○○:50点未満
○ :50点以上100点未満
× :100点以上
(11)吸水性
JIS L 1907(2010)に記載のバイレック法を準用し、布帛の吸水性を測定した。上記(9)項で準備した布帛を1cm×20cmにカットし、短辺の一端を保持した状態で他端2cmを20℃の蒸留水中に浸した。10分後の水の上昇距離から、布帛の吸水性を3段階評価した。
【0055】
○○:7.0cm以上
○ :7.0cm未満4.0cm以上
× :4.0cm未満
実施例1
島成分としてIV=0.71のポリエチレンテレフタレートと、海成分およびブレンド成分として5−ナトリウムスルホイソフタル酸7.3wt%を共重合成分として含むIV=0.55のアルカリ易溶解性ポリエチレンテレフタレートをそれぞれ調整した。両ポリマーのアルカリ水溶液に対する溶解速度の差は、40倍であった。紡糸前の段階において、ブレンド率7.0wt%となるようブレンド成分チップを島成分チップにブレンドすることで、あらかじめブレンド済み島成分チップを作製した。ブレンド済みの島成分チップと海成分チップをいずれもエクストルーダーを用いて290℃にて溶融後、ポンプによる計量を行い、紡糸温度290℃を保持したまま口金に流入させた。なお、島成分と海成分両ポリマーのアルカリ水溶液に対する溶解速度差は約40倍であり、複合比は海/島=30/70とした。島数127島、ホール数112の海島型複合用紡糸口金(島数×単糸数=14224)に流入させた各ポリマーは、口金内部で合流し、海成分ポリマー中に島成分ポリマーが包含された複合形態を形成し、口金から吐出された。口金から吐出された糸条は、空冷装置により冷却、油剤付与後、ワインダーにより1500m/分の速度で巻き取り、192dtex−112フィラメントの未延伸糸として巻き取った。このとき、冷却開始点は口金面から30mmに設定し、さらに給油位置を850mmとすることで長手糸斑の抑制と製糸性の安定を図った。このプロセスで得られた未延伸糸の顕微鏡観察では、島成分の融着は見られなかった。
【0056】
続いて、得られた未延伸糸を300m/分の速度で延伸装置に送糸し、延伸温度92℃、残留伸度20〜40%程度となるような倍率で延伸した後、130℃で熱セットし、紡糸、延伸工程を通じて製糸安定的に75dtex−112フィラメントの延伸糸を得た。得られた海島型複合繊維を80℃の1%水酸化ナトリウム水溶液に浸漬することで海成分を溶解除去した。得られたナノファイバー単糸群の平均繊維径は580nmであり、ナノファイバー表面に形成されたスリットの存在数は12本/μm、スリット幅は20nmかつアスペクト比は320、スリットの深さは25nmであった。評価結果を表1に示す。該ナノファイバー単糸群、ナノファイバー布帛は強度、ワイピング性、スクラッチ性、吸水性ともに優れており、製品として用いるのに十分な性能を有していた。
【0057】
実施例2
紡糸速度を1000m/分と変更した以外は、実施例1と同様の方法により、75dtex−112フィラメントの延伸糸を得た。実施例2で得られたナノファイバー単糸群、ナノファイバー布帛はスリットのアスペクト比が小さく、ワイピング性、吸水性において実施例1に一歩譲るものであったが、低ドラフトで紡糸できたため製糸安定性に優れ、スクラッチ性、強度ともに実施例1と同等のものが得られた。
【0058】
実施例3、4
ブレンド率を表1に示すように変更した以外は、実施例1と同様の方法により、75dtex−112フィラメントの延伸糸を得た。実施例3から得られたナノファイバー単糸群、ナノファイバー布帛は実施例1よりもスリット密度が小さく、ワイピング性、スクラッチ性、吸水性において一歩譲るものであったが、溶解時間を短縮できるため高強度のものが得られた。また実施例4においては、島成分と非相溶のブレンド成分が多くなったことから製糸安定性、強度の点で実施例1に一歩譲るものの、ワイピング性、スクラッチ性、吸水性は実施例1と同様に良好な特性であった。
【0059】
実施例5
複合比を海/島=60/40と変更した以外は、実施例1と同様の方法により、96dtex−112フィラメントの延伸糸を得た。実施例5から得られた海島型複合繊維は、実施例1よりも長時間の溶解時間を要するため、表面/芯部のナノファイバー繊維径バラツキが大きく、強度の点で実施例1に一歩譲るものの、製糸安定性およびナノファイバー布帛のワイピング性、スクラッチ性、吸水性はいずれも実施例1と同等に良好な特性であった。
【0060】
実施例6
海成分としてMFR=5.5g/10分のポリスチレン(東洋スチレン社製“トーヨースチロール”H−45)を用い、複合比を海/島=20/80、ブレンド率を5.0wt%に変更した以外は、実施例1と同様の方法により、66dtex−112フィラメントの延伸糸を得た。島成分とブレンド成分はトリクロロエチレンに不溶であることから、海成分溶解剤には25℃のトリクロロエチレン、ブレンド成分溶解剤には80℃の1%水酸化ナトリウム水溶液を使用した。実施例6から得られたナノファイバー単糸群、ナノファイバー布帛は、実施例1と同等に良好な特性であった。
【0061】
実施例7
海成分としてIV=0.59のポリ−L−乳酸、島成分としてηr=2.8のナイロン66を用いた以外は実施例1と同様の方法により、75dtex−112フィラメントの延伸糸を得た。アルカリ水溶液に対して島成分のナイロン66は不溶であることから、海成分とブレンド成分の溶解剤には80℃の1%水酸化ナトリウム水溶液を使用した。実施例7から得られたナノファイバー単糸群、ナノファイバー布帛はいずれも実施例1と同様に良好な特性であった。
【0062】
実施例8
ブレンド成分として、カプロラクタム単位45wt%とポリエチレングリコールジアンモニウムアジペート単位42wt%のブロック共重合体に、ドデシルベンゼンスルホン酸ナトリウム化合物を5wt%配合したポリエーテルエステルアミドを用いた以外は実施例1と同様の方法により、75dtex−112フィラメントの延伸糸を得た。実施例8のポリエーテルエステルアミドはアルカリ水溶液に対して可溶であり、アルカリ水溶液に対する島成分との溶解速度差は約30倍であることから、海成分とブレンド成分の溶解剤には80℃の1%水酸化ナトリウム水溶液を使用した。実施例8から得られたナノファイバー単糸群、ナノファイバー布帛はいずれも実施例1と同様に良好な特性であった。
【0063】
実施例9
ブレンド成分として実施例8に記載のポリエーテルエステルアミドを用い、複合比を海/島=20/80に変更した以外は実施例1と同様の方法により、110dtex−112フィラメントの延伸糸を得た。実施例9から得られたナノファイバー単糸群は、実施例1よりも単繊維径が大きく、ワイピング性、スクラッチ性、吸水性で一歩譲るものの、製糸安定的に複合繊維を得ることができた。
【0064】
比較例1
島数70島、ホール数9の海島型複合用紡糸口金(島数×海島単糸数=630)を用い、複合比を海/島=20/80、ブレンド成分を使用せずに紡糸した以外は実施例1と同様の方法にて、66dtex−9フィラメントの延伸糸を得た。評価結果を表2に示す。比較例1から得られた単糸群は単糸繊度が大きく、布帛のスクラッチ性が劣り、さらに繊維表面にスリットを有しないため、ワイピング性、吸水性も著しく劣る結果となった。
【0065】
比較例2
ブレンド成分を用いなかった以外は実施例1と同様の方法にて、75dtex−112フィラメントの延伸糸を得た。比較例2で得られたナノファイバー単糸群、ナノファイバー布帛は、繊維表面にスリットを有しないため、ワイピング性、吸水性で劣るものであった。
【0066】
比較例3
島数70島、ホール数9の海島型複合用紡糸口金(島数×海島単糸数=630)を用い、複合比を海/島=20/80、ブレンド率を2.0wt%に変更した以外は実施例1と同様の方法により、44dtex−9フィラメントの延伸糸を得た。比較例3で得られたナノファイバー単糸群およびナノファイバー布帛は、スクラッチ性が劣る結果となった。
【0067】
比較例4
海島型複合紡糸用ではないホール数144の口金を用い、実施例1に記載のIV=0.71のポリエチレンテレフタレートと5−ナトリウムスルホイソフタル酸7.3wt%を共重合成分として含むIV=0.55のアルカリ易溶解性ポリエチレンテレフタレート(ブレンド率1.5wt%)を直接口金から吐出するよう変更した以外は実施例1と同様の方法にて、56dtex−144フィラメントの延伸糸を得た。ブレンド成分溶解剤は80℃の1%水酸化ナトリウム水溶液を使用した。比較例4は、口金からの単孔吐出量が少量であるため、紡糸段階での糸切れが多発し、製糸性が著しく悪化したほか、得られた単糸群の単糸繊度が大きいため、布帛のワイピング性、スクラッチ性、吸水性いずれも劣る結果となった。
【0068】
【表1】

【0069】
【表2】


【特許請求の範囲】
【請求項1】
熱可塑性樹脂からなる単繊維径が900nm以下のナノファイバーであり、繊維表面にスリットを有することを特徴とするナノファイバー。
【請求項2】
繊維表面のスリットが、繊維軸方向に直角な繊維外周方向に、平均で3本/μm以上存在することを特徴とする、請求項1に記載のナノファイバー。
【請求項3】
繊維表面に存在するスリットにおいて、(長軸方向の長さ/短軸方向の長さ)で表されるアスペクト比が100以上であることを特徴とする、請求項1または請求項2に記載のナノファイバー。

【公開番号】特開2012−154012(P2012−154012A)
【公開日】平成24年8月16日(2012.8.16)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−16691(P2011−16691)
【出願日】平成23年1月28日(2011.1.28)
【出願人】(000003159)東レ株式会社 (7,677)
【Fターム(参考)】