説明

スリップ防止シートおよびその製造方法

【課題】 装置のコンタミネーションの原因となり得るゴム材質を用いることなく、最適な摩擦力を有し、耐久性に優れ、厚み精度が良好で、保形性がありターンテーブルへの貼り付けを容易にし、しかも製造が簡易で安価なスリップ防止シートを提供する。
【解決手段】 支持体の上に形成されたスリップ防止機構部は、支持体の一方の平面に島状に点在するように形成されたドット層を有し構成され、ドット層が非晶質性のポリエステル樹脂から形成されてなるように構成されている。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、CD、DVD等の記録ディスクが載置されるターンテーブルの載置面の上に貼り付けられ、記録ディスクを回転運動させる際のスリップや面振れを防止するために用いられるスリップ防止シートおよびその製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
文字、音声、画像等の情報を記録再生するための媒体であるCD、DVD等の記録ディスクが載置されるターンテーブルの載置面の上には、記録ディスクを回転運動させる際のスリップや面振れを防止するためにリング状のスリップ防止シートが固着されている。
【0003】
図3には、スリップ防止シートが貼り付けられるターンテーブルを備えるディスク駆動装置50の一例が示されている。
【0004】
ターンテーブル53の上に記録ディスク70が供給され載置されると、クランプ部材56が降下し、磁性体55と磁石57との間で発生する吸着力により、記録ディスク70がクランプ部材56により位置決めされ、記録ディスク70は、ターンテーブル53の上に固定載置されたスリップ防止シート10と、クランプ部材56とにより挟持された状態で固定されたまま、モーター54の回転駆動に伴い回転される。この時、スリップ防止シート10は、主に、記録ディスク70のスリップや面振れを防止するように作用する。
【0005】
本願発明のスリップ防止シートと、特に、関連する技術として、下記の特許文献1〜特許文献2を挙げることができる。
【0006】
特許文献1(特開2004−110868号公報)には、厚み精度、形状の保形性が良く、ターンテーブルへの貼着作業が容易で、取り付け不良がなく作業性に優れ、装置のコンタミネーションを防止できるスリップ防止シートを提供することを目的として、表面が粗面のウレタン樹脂からなる摩擦シートの裏面に、プラスチックフィルムからなる補強シートを積層させ、この補強シートに粘着剤層、離型紙を積層してなるスリップ防止シートの提案がなされている。しかしながら、この提案では、表面が粗面の摩擦シートを製造するに際し、粗面に加工された転写シートからの転写方法を利用しており、生産性がよいとはいえない。また、ウレタン樹脂からなる摩擦シートでは、必ずしても良好なスリップ防止機能を発揮できるとはいえない。
【0007】
また、特許文献2(特開平6−290537号公報)には、平面粗度が良く、摩擦係数の高いターンテーブルのスリップ防止機構を簡単な手段で提供することを目的とし、ターンテーブルのディスク載置面に液状のゴム又は熱可塑性樹脂剤を印刷または噴霧状として付着させ、加熱または乾燥させることによって硬化接着させてターンテーブル面に滑り止め被膜を形成するようにしてなる技術の開示がなされている。しかしながら、上記の方法では、ターンテーブルのディスク載置面に直接、滑り止め被膜を形成する加工を施さなければならず、生産性に難があるといえる。また、ターンテーブルと滑り止め被膜との接着性も十分とはいえず、耐久性に問題があるといえる。
【0008】
【特許文献1】特開2004−110868号公報
【特許文献2】特開平6−290537号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0009】
このような実状のもとに本発明は、創案されたものであり、その目的は、装置のコンタミネーションの原因となり得るゴム材質を用いることなく、最適な摩擦力を有し、耐久性に優れ、厚み精度が良好で、保形性がありターンテーブルへの貼り付けを容易にし、しかも製造が簡易で安価なスリップ防止シートおよびその製造方法を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0010】
このような課題を解決するために、本発明は、記録ディスクが載置されるターンテーブルの載置面に貼り付けて、記録ディスクが回転運動する際のスリップを防止するために用いられるスリップ防止シートであって、該スリップ防止シートは、支持体と、前記支持体の一方の平面に形成されたスリップ防止機構部と、前記支持体の他方の平面に形成された粘着層とを備え、前記スリップ防止機構部は、支持体の一方の平面に島状に点在するように形成されたドット層を有し構成され、当該ドット層が非晶質性のポリエステル樹脂から形成される。
【0011】
また、本発明の好ましい態様として、前記非晶質性のポリエステル樹脂は、ガラス転移温度Tgが8℃以下、酸価(Acid value)が2KOHmg/g以下の物性を備えてなるように構成される。
【0012】
また、本発明の好ましい態様として、前記支持体の一方の平面に島状に点在するよう形成されたドット層が、スクリーン印刷により形成された層であるように構成される。
【0013】
また、本発明の好ましい態様として、前記支持体が、ポリエステル系樹脂フィルムから構成されてなるように構成される。
【0014】
また、本発明の好ましい態様として、前記ポリエステル系樹脂フィルムが、ポリエチレンテレフタレート、ポリエチレンテレナフタレート、ポリブチレンテレフタレート、およびポリブチレンテレナフタレートから選択された1種であるように構成される。
【0015】
また、本発明の好ましい態様として、前記スリップ防止機構部を構成するドット層の厚さは、5〜50μmであるように構成される。
【0016】
また、本発明の好ましい態様として、前記粘着層の支持体側とは反対側に、離型紙が形成されてなるように構成される。
【0017】
本発明は、上記のスリップ防止シートの製造方法であって、該方法は、支持体の一方の平面の上にスリップ防止機構部をスクリーン印刷法で形成するスリップ防止機構部形成工程と、離型紙の上に粘着層を塗布して形成する粘着層形成工程と、前記支持体のスリップ防止機構部が形成されていない他方の平面と、前記粘着層の離型紙が形成されていない平面とを前記粘着層の粘着力を利用して貼り合わせる貼合わせ一体化工程と、を有してなるように構成される。
【0018】
本発明のディスク駆動装置は、上記のスリップ防止シートが固着されたターンテーブルを備えてなるように構成される。
【発明の効果】
【0019】
本発明のスリップ防止シートは、記録ディスクが載置されるターンテーブルの載置面に貼り付けて、記録ディスクが回転運動する際のスリップを防止するために用いられるものであり、該スリップ防止シートは、支持体と、前記支持体の一方の平面に形成されたスリップ防止機構部と、前記支持体の他方の平面に形成された粘着層とを備え、前記スリップ防止機構部は、支持体の一方の平面に島状に点在するように形成されたドット層を有し構成され、当該ドット層が非晶質性のポリエステル樹脂から形成されてなるように構成されているので、装置のコンタミネーションの原因となり得るゴム材質を用いることなく、最適な摩擦力を有し、耐久性に優れ、厚み精度が良好で、保形性がありターンテーブルへの貼り付けを容易にし、しかも製造が簡易で安価であるという極めて優れた効果が発現する。
【発明を実施するための最良の形態】
【0020】
以下、本発明を実施するための最良の形態について説明する。
まず、最初に本発明のスリップ防止シートが使用されるディスク駆動装置について説明する。
【0021】
ディスク駆動装置50に関する説明
図3には、本発明のスリップ防止シート10が貼り付けられたターンテーブル53を備えるディスク駆動装置50の一例が示されている。
【0022】
図3に示されるように、ディスク駆動装置50は、例えば、モーター52の上部から突出する駆動軸54にターンテーブル53が固着されており、モーター54の回転に伴いターンテーブル53が回転可能になっている。
【0023】
図3の例におけるターンテーブル53の載置面53aの上には、リング状に形成されたスリップ防止シート10が固着されており、ターンテーブル53の略中央部には磁性体55が同心円状に埋設されている。
【0024】
また、図3に示されるように、ターンテーブル53に対向するようにクランプ部材56が同心円状に配置されており、クランプ部材56には、磁性体55と対向する位置に磁石57が同心円状に埋設・配置されている。
【0025】
そして、ターンテーブル53の上に記録ディスク70が供給され載置されると、クランプ部材56が降下し、磁性体55と磁石57との間で発生する吸着力により、記録ディスク70がクランプ部材56とターンテーブル53との間に挟持される。厳密には、記録ディスク70は、ターンテーブル53の上に固定載置されたスリップ防止シート10と、クランプ部材56とにより挟持された状態で一時的に固定される。
【0026】
この状態でモーター54が回転駆動されることにより、記録ディスク70は回転される。この時、スリップ防止シート10は、記録ディスク70のスリップや面振れを防止するように作用する。
【0027】
なお、記録ディスク70は、例えば、情報記録のため、あるいは、情報の再生のために用いられるディスクであって、特に、その大きや、厚さ等は任意のものが使用され得る。
【0028】
スリップ防止シート10に関する説明
ついで、上記のディスク駆動装置50のターンテーブル53に固着されて使用されるスリップ防止シート10について詳細に説明する。
【0029】
スリップ防止シート10は、上述したように記録ディスク70が挟持された状態で、回転運動する際のスリップを防止するために用いられるものである。
【0030】
図1は、製造されたシート状物から、リング状に打抜かれた1つのスリップ防止シート10の状態を示す断面図であって、ターンテーブル53の載置面53aに貼り付け作業を行う前の状態を示す断面図である。
【0031】
図1に示されるように、スリップ防止シート10は、支持体12と、支持体12の一方の平面12aに形成されたスリップ防止機構部13と、支持体12の他方の平面12bに形成された粘着層11とを備えている。
【0032】
図1における粘着層11の下面11a(支持体12との接合面と反対側の面)には、離型紙14が形成されているが、ターンテーブル53の載置面53aに貼り付け作業を行う際には、離型紙14は剥がされて除去され、粘着層11の下面11aが、ターンテーブル53の載置面53aに接着されることにより固着される。
【0033】
なお、スリップ防止シート10のリング状の外径は、25〜35mm程度、内径は、17〜27mm程度とされる。
【0034】
スリップ防止機構部13
スリップ防止機構部13は、図1に示されるごとく支持体12の一方の平面12aの上に島状に点在するように形成された複数のドット層13(ドット)の形態を有し構成されている。このような島状に点在されるドット層13は、作業性および、厚さ精度の向上の観点からスクリーン印刷により形成することが好ましい。個々のドット層13の形状は、スリップ防止シート10の平面から見た形態(図1のA−A矢視形態)が、円形状や、三角形状、四角形状、五角形状、六角形状、八角形状、…多角形状のいずれであってもよい。通常は、円形状とすることが望ましい。
【0035】
また、ドット層13の断面形状は、図1に示されるように、ドット層13の中央部がやや盛り上がった頂部を有する形態であってもよいし、略フラットな平坦面を有するような形態であってもよい。通常は、前者の盛り上がった頂部を有する形態とすることが望ましい。
【0036】
また、島状に点在されるドット層13の配列は、正方形ピッチ配列、正方形ピッチ錯列配列(千鳥配列)、三角形ピッチ錯列配列(千鳥配列)等が好適例として挙げられる。
【0037】
このようなドット層13は、非晶質性のポリエステル樹脂から形成される。「非晶質性」とするのは、塗布印刷に適した塗料を作製することができ、特に、スクリーン印刷によるドット層13の形成を担保するためである。
【0038】
このような非晶質性のポリエステル樹脂は、ガラス転移温度Tgが8℃以下、特に−18〜7℃の範囲、酸価(Acid value)が、2KOHmg/g以下、特に、0.1〜1.9の物性を備えているものが好適に使用できる。ガラス転移温度Tgが8℃を超えると、適度な弾性が失われる傾向が生じてしまい、十分な摩擦力を得ることが困難となり、スリップ防止の機能が十分でないという不都合が生じる。また、ガラス転移温度Tgがあまりに低くなり過ぎると、塗膜の安定性に欠けるという不都合が生じる傾向がある。
【0039】
また、酸価(Acid value)が、2KOHmg/gを超えると、十分な摩擦力を得ることが困難となるという傾向が生じてしまう。
【0040】
このような非晶質性のポリエステル樹脂には、溶剤および硬化剤を加えることによって、スリップ防止機構部13形成のための塗料が作成される。
【0041】
溶剤としては、メチルエチルケトン、トルエン、ブチルセルソルブ、キシレン、シクロヘキサノン、酢酸エチル、イソホロン、プロピレングリコールモノメチルエーテルアセテート、ブチルセロソルブアセテート等の公知の種々の溶剤を用いることができる。硬化剤としては、イソシアネート化合物、メラミン化合物、エポキシ樹脂等を用いることができる。
【0042】
スリップ防止機構部13(ドット層13)は熱硬化により形成されるものであり、非晶質性の熱硬化性ポリエステル樹脂から構成されているともいえる。熱硬化によりドット層13が形成されることによりの耐久性は格段と向上する。
【0043】
熱硬化処理は、塗膜を形成し、当該塗膜を乾燥させた後に、例えば、120〜170℃の温度で、5分〜1時間程度の時間で処理される。
【0044】
ドット層13の厚さは、5〜50μm程度とされ、本発明における厚さ精度は、基準厚さに対して±10%の誤差範囲内に収まる。
【0045】
支持体12
支持体12は、ある程度の形態を維持できる板状のものであれば、特に、制限はないが、非晶質性のポリエステル樹脂からなるスリップ防止機構部13との接着部における耐久性(層間剥離等に対する耐久性)を考慮すれば、ポリエステル系樹脂フィルムから構成されることが好ましい。
【0046】
ポリエステル系樹脂フィルムとしては、例えば、ポリエチレンテレフタレート、ポリエチレンテレナフタレート、ポリブチレンテレフタレート、およびポリブチレンテレナフタレート等が挙げられる。
【0047】
このような支持体12の厚さは、50〜200μm程度とされる。また、スリップ防止シート10の全体の厚さは、用いる支持体11の厚さを調整することによって調整可能である。
【0048】
粘着層11
粘着層11は、支持体12との強固な接着を有するとともに、さらに、粘着層11の下面11aが、ターンテーブル53の載置面53aと強固に固着可能な材質から構成される。具体的には、アクリル系、シリコーン系、ゴム系(ブチルゴム)等の粘着層を例示することができる。
【0049】
このような粘着層11の厚さは、30〜70μm程度とされる。
【0050】
離型紙14
離型紙14は、粘着層11と適度な接着力を有するとともに、スリップ防止シート10をターンテーブル53の載置面53aに貼り付ける際には、粘着層11から容易に剥がれる材質から構成される。
【0051】
離型紙14の厚さは、通常、50〜150μm程度とされる。
【0052】
〔スリップ防止シートの製造方法の説明〕
上述してきたスリップ防止シートは、以下の好適な方法によって製造することができる。
【0053】
まず、図2の上方に示されるように、連続搬送される帯状の支持体12の一方の平面の上にスリップ防止機構部13(複数のドット層13)がスクリーン印刷法で形成される(スリップ防止機構部形成工程)。
【0054】
また、図2の下方に示されるように、連続搬送される離型紙14の上に粘着層11が塗布により塗設され、乾燥させられる(粘着層形成工程)。
【0055】
しかる後、連続搬送されながら、両者の積層体同士が接合される。すなわち、支持体12のスリップ防止機構部13が形成されていない他方の平面12bと、粘着層11の離型紙14が形成されていない平面11bとが、粘着層11の粘着力を利用して貼り合わされる(貼合わせ一体化工程)。貼合わせに際しては、通常、加圧操作が行われる。
【0056】
このようにして貼合わせ一体化工程の後の一体化積層物は、図1の全体図に示されるような個々のリング状のスリップ防止シートの形状に打抜かれ、離型紙14が付けられたスリップ防止シート10が完成する。
【0057】
ターンテーブル53の載置面53aにスリップ防止シートを貼り付ける作業を行う際には、離型紙14は剥がされ除去され、粘着層11の下面11aが、ターンテーブル53の載置面53aに接着される。
【実施例】
【0058】
以下、具体的な実施例を示し、本発明をさらに詳細に説明する。
(実験例1)
スリップ防止機構部13に相当する塗料を、下記の要領で準備した。
【0059】
塗料の配合
・下記表1に記載のベース樹脂 64重量部
・溶剤 36重量部
・硬化剤(イソシアネート化合物:コロネートL) 5重量部
【0060】
上記塗料を、厚さ75μmのポリエチレンテレフタレート(PET)のフィルムの上に、ドクターナイフで薄く塗布し、塗膜の乾燥後に150℃で10分、加熱硬化(架橋)させ、厚さ約30μmのスリップ防止機構部を形成し、表1に示されるような種々のサンプルを作成した。なお、サンプルは、63mm×63mmの大きさに打抜きカットした。
【0061】
これらの各サンプルについて、下記の要領で摩擦試験を行った。
(摩擦試験)
重さ202gの錘の底面と、表1に示されるサンプルを構成するPET面とを両面テープで貼り付けた。図4に示されるような装置を用い、下板であるSUS板と、サンプルを構成する塗膜面(スリップ防止機構部13に相当)との摩擦特性(最大摩擦力−静摩擦)を測定し、摩擦力(N)を求めた。サンプルを引き摺る試験速度は、50mm/minとした。錘の形状は、直方体で、底面のサイズは63mm×63mmとした。
結果を下記表1に示した。
【0062】
【表1】

【0063】
また、上記のサンプル1〜2に関して、実際の使用に近い形態のサンプルを作成し、ディスク駆動装置に実装して実験を行なった。すなわち、75μm厚さのポリエチレンテレフタレート(PET)のフィルムからなる支持体の上に、スクリーン印刷で、厚さ10μmのスリップ防止機構部13を形成し、支持体の裏面に厚さ50μmの粘着層を貼り付けたリング状のスリップ防止シート(外径28mm、内径20mm)を作製し、このものを、ターンテーブルの載置面に接着してディスク駆動装置に取り付けて、温度60℃、湿度90%RHの過酷な環境下で、2000時間連続駆動の耐久性試験を行ったところ、層間剥離等の異常は発生せず、極めて耐久性に優れることが確認できた。
【0064】
上記の結果より、本発明の効果は明らかである。すなわち、本発明のスリップ防止シートは、記録ディスクが載置されるターンテーブルの載置面に貼り付けて、記録ディスクが回転運動する際のスリップを防止するために用いられるものであり、該スリップ防止シートは、支持体と、前記支持体の一方の平面に形成されたスリップ防止機構部と、前記支持体の他方の平面に形成された粘着層とを備え、前記スリップ防止機構部は、支持体の一方の平面に島状に点在するように形成されたドット層を有し構成され、当該ドット層が非晶質性のポリエステル樹脂から形成されてなるように構成されているので、装置のコンタミネーションの原因となり得るゴム材質を用いることなく、最適な摩擦力を有し、耐久性に優れ、厚み精度が良好で、保形性がありターンテーブルへの貼り付けを容易にし、しかも製造が簡易で安価であるという極めて優れた効果が発現する。
【産業上の利用可能性】
【0065】
本発明は、ディスク駆動装置の産業に利用可能である。
【図面の簡単な説明】
【0066】
【図1】製造されたシート状物から、リング状に打抜かれた1つのスリップ防止シートの状態を示す断面図である。
【図2】スリップ防止シートの製造方法の一例を説明するための図面である。
【図3】本発明のスリップ防止シートが貼り付けられて固着されたターンテーブルを備えるディスク駆動装置の一例を示した半片断面図である。
【図4】摩擦試験を説明するための装置を概略図面である。
【符号の説明】
【0067】
10…スリップ防止シート
11…粘着層
12…支持体
13…スリップ防止機構部13(ドット層13)
14…離型紙
50…ディスク駆動装置

【特許請求の範囲】
【請求項1】
記録ディスクが載置されるターンテーブルの載置面に貼り付けて、記録ディスクが回転運動する際のスリップを防止するために用いられるスリップ防止シートであって、
該スリップ防止シートは、
支持体と、
前記支持体の一方の平面に形成されたスリップ防止機構部と、
前記支持体の他方の平面に形成された粘着層とを備え、
前記スリップ防止機構部は、支持体の一方の平面に島状に点在するように形成されたドット層を有し構成され、当該ドット層が非晶質性のポリエステル樹脂から形成されてなることを特徴とするスリップ防止シート。
【請求項2】
前記非晶質性のポリエステル樹脂は、ガラス転移温度Tgが8℃以下、酸価(Acid value)が2KOHmg/g以下の物性を備えてなる請求項1に記載のスリップ防止シート。
【請求項3】
前記支持体の一方の平面に島状に点在するよう形成されたドット層が、スクリーン印刷により形成された層である請求項1または請求項2に記載のスリップ防止シート。
【請求項4】
前記支持体が、ポリエステル系樹脂フィルムから構成されてなる請求項1ないし請求項3のいずれかに記載のスリップ防止シート。
【請求項5】
前記ポリエステル系樹脂フィルムが、ポリエチレンテレフタレート、ポリエチレンテレナフタレート、ポリブチレンテレフタレート、およびポリブチレンテレナフタレートから選択された1種である請求項4に記載のスリップ防止シート。
【請求項6】
前記スリップ防止機構部を構成するドット層の厚さは、5〜50μmである請求項1ないし請求項5のいずれかに記載のスリップ防止シート。
【請求項7】
前記粘着層の支持体側とは反対側に、離型紙が形成されてなる請求項1ないし請求項6のいずれかに記載のスリップ防止シート。
【請求項8】
請求項7に記載のスリップ防止シートの製造方法であって、
該方法は、
支持体の一方の平面の上にスリップ防止機構部をスクリーン印刷法で形成するスリップ防止機構部形成工程と、
離型紙の上に粘着層を塗布して形成する粘着層形成工程と、
前記支持体のスリップ防止機構部が形成されていない他方の平面と、前記粘着層の離型紙が形成されていない平面とを前記粘着層の粘着力を利用して貼り合わせる貼合わせ一体化工程と、
を有してなるスリップ防止シートの製造方法。
【請求項9】
請求項1ないし請求項6のいずれかに記載のスリップ防止シートが固着されたターンテーブルを備えてなることを特徴とするディスク駆動装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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