説明

スルホネート基含有ポリイソシアネート及びポリアスパルテートを含む被覆組成物

【課題】従来技術で知られている系に比べて著しく早く硬化するが、同等の又はより長いポットライフを有する新規なポリウレア被覆製造用組成物を提供する。
【解決手段】A)スルホネート基含有ポリイソシアネート、及び
B)式I:


(式中、Xは、n価ポリアミンから第1級アミノ基を除去して得られるn価有機基を表し、R及びRは、同一又は異なって、反応条件下にイソシアネート基に対して不活性である有機基を表し、nは、少なくとも2の整数を表す。)
で示されるアミノ官能性ポリアスパルテートを含んでなる、ポリウレア被覆の製造用2成分被覆組成物。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、スルホネート変性ポリイソシアネート及びある種のアミノ官能性硬化剤に基づく新規な2成分被覆組成物に関する。
【背景技術】
【0002】
ポリウレタン又はポリウレアに基づく2成分被覆組成物(被覆系)は知られており、産業界において広く使用されている。2成分被覆組成物は、一般に、液体ポリイソシアネート成分及び液体イソシアネート反応性成分を含む。ポリイソシアネートとアミンとの反応により、強固に架橋されたポリウレア被膜が得られる。しかしながら、第1級アミン及びイソシアネートは、通常、急速に反応する。従って、多くの場合、そのような系のポットライフ又はゲル化時間は、たった数秒から数分である。それ故、このようなポリウレア被膜は、手で塗布することはできず、特別な噴霧装置を用いてのみ塗布することができる。しかし、そのような塗膜は非常に優れた物理的性質を有しており、従って、塗布の困難性にもかかわらず、非常に重要である。
【0003】
低粘度ブロックトアミン、例えばケチミン及びアルジミンが、反応性を制御するために使用される(Squiller, Wicks, Yeske, "High Solids Polyurethane Coatings" in Polymeric Materials Encyclopedia, J. C. Salamone 編, CRC Press 1996, 第5巻、DE-OS 1 520 139 又はDE-OS 3 308 418)。脱ブロック(加水分解)は、大気中の水分の作用により生じ、第1級アミンが放出される。
【0004】
ポリイソシアネートとアミンとの反応を禁止する別の方法は、立体障害第2級アミンを使用することである。EP-A 403 921 及びUS-A 5 126 170 は、ポリアスパルテートとポリイソシアネートとの反応によるポリウレア被膜の形成を開示している。ポリアスパルテートは、粘度が低く、他の第2級脂肪族アミンと比べてポリイソシアネートに対して小さい反応性を有している。分子構造に依存して、異なる反応性を有する種類が利用できる。従って、より長いポットライフ及び乾燥時間を有する無溶媒又は低溶媒被覆系、及び非常に短い乾燥時間及びより短いポットライフを有する被覆系の両方を製造することができる。
【0005】
実際、既に記載されたアルジミン及びケチミンは、しばしばポリアスパルテートと組み合わせられる。
【0006】
硬化剤として従来のポリイソシアネートを使用した場合のこれらの系の欠点は、短いポットライフで急速に乾燥するか、又は長いポットライフでゆっくり乾燥することである。
【特許文献1】DE-OS 1 520 139
【特許文献2】DE-OS 3 308 418
【特許文献3】EP-A 403 921
【特許文献4】US-A 5 126 170
【非特許文献1】Squiller, Wicks, Yeske, "High Solids Polyurethane Coatings" in Polymeric Materials Encyclopedia, J. C. Salamone 編, CRC Press 1996, 第5巻
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
本発明の目的は、従来技術で知られている系に比べて著しく早く硬化するが、同等の又はより長いポットライフを有する新規なポリウレア被覆製造用組成物を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0008】
驚くべきことに、上記目的は、スルホネート変性ポリイソシアネートを、ポリアスパルテート、又はポリアスパルテートとアルジミン又はケチミンとの混合物に基づくアミノ官能性硬化剤との反応体として使用することにより達成できることが見出された。
【0009】
即ち、本発明は、
A)スルホネート基含有ポリイソシアネート、及び
B)式I:
【化1】

(式中、
Xは、n価ポリアミンから第1級アミノ基を除去して得られるn価有機基を表し、
及びRは、同一又は異なって、反応条件下にイソシアネート基に対して不活性である有機基を表し、
nは、少なくとも2の整数を表す。)
で示されるアミノ官能性ポリアスパルテート
を含んでなる、ポリウレア被覆の製造用2成分被覆組成物に関する。
本発明はまた、このような被覆組成物から得られる被覆にも関する。
【発明の効果】
【0010】
本発明に従った組成物の顕著な利点は、この組成物が、2成分ポリウレタン被覆組成物のために知られている商業的手段を用いて加工及び塗布できることである。従って、特別な装置は必要でない。
【発明を実施するための最良の形態】
【0011】
ポリイソシアネートA)は、遊離NCO基に加えて、1つ又はそれ以上のスルホン酸又はスルホネート基を有する。このような変性ポリイソシアネートの製造は、WO 01/88006(米国特許第6,767,958号)に記載されている。
【0012】
ポリイソシアネートA)は、好ましくは少なくとも2の平均NCO官能価及び少なくとも140g/モルの分子量を有する有機ポリイソシアネートから調製される。特に適しているのは、(i)分子量140〜300g/モルの未変性有機ポリイソシアネート、(ii)分子量300〜1000g/モルのラッカーポリイソシアネート、及び(iii)1000g/モルを超える分子量Mnを有するウレタン基含有NCOプレポリマー、又は(i)〜(iii)の混合物である。
【0013】
ポリイソシアネート(i)の例には、1,4-ジイソシアナトブタン、1,6-ジイソシアナトヘキサン (HDI)、1,5-ジイソシアナト-2,2-ジメチルペンタン、2,2,4- 又は 2,4,4-トリメチル-1,6-ジイソシアナトヘキサン、1-イソシアナト-3,3,5-トリメチル-5-イソシアナトメチルシクロヘキサン (IPDI)、1-イソシアナト-1-メチル-4-(3)-イソシアナトメチルシクロヘキサン、ビス(4-イソシアナトシクロヘキシル)メタン、1,10-ジイソシアナトデカン、1,12-ジイソシアナトドデカン、1,3- 及び 1,4-シクロヘキサンジイソシアネート、キシリレンジイソシアネート異性体、トリイソシアナトノナン (TIN)、2,4-ジイソシアナトトルエン又はこれと2,6-ジイソシアナトトルエンとの混合物(好ましくは、35質量%までの2,6-ジイソシアナトトルエンとの混合物)、2,2'-、2,4'-及び4,4'-ジイソシアナトジフェニルメタン、ジフェニルメタン系からのポリイソシアネート混合物、又はこれらイソシアネートの混合物が包含される。
【0014】
ポリイソシアネート(ii)には、既知のラッカーポリイソシアネートが含まれる。本発明において、用語「ラッカーポリイソシアネート」は、モノマージイソシアネート、例えば上記(i)として例示したジイソシアネートの既知オリゴマー化反応により得られる化合物又はそれらの混合物を意味する。適当なオリゴマー化反応には、カルボジイミド化、二量化、三量化、ビウレット化、尿素形成、ウレタン化、アロファネート化及び/又はオキサジアジン基を形成する環化が含まれる。「オリゴマー化」に際しては、複数の上記反応が同時に又は連続して起こる。
【0015】
「ラッカーポリイソシアネート」(ii)は、好ましくは、ビウレットポリイソシアネート、イソシアヌレート基含有ポリイソシアネート、イソシアヌレート基及びウレトジオン基含有ポリイソシアネート混合物、ウレタン基及び/又はアロファネート基及び/又はオキサジアジン基含有ポリイソシアネート、若しくはモノマージイソシアネートから生成されるイソシアヌレート基及びアロファネート基及びオキサジアジン基含有ポリイソシアネート混合物である。このようなラッカーポリイソシアネートの製造は既知であり、例えばDE-A 1 595 273、DE-A 3 700 209 及び DE-A 3 900 053、又はEP-A-0 330 966、EP-A 0 259 233、EP-A 0-377 177、EP-A-0 496 208、EP-A-0 524 501、又はUS-A 4 385 171に記載されている。
【0016】
ポリイソシアネート(iii)には、上記(i)として記載したモノマージイソシアネート及び/又は上記(ii)として記載したラッカーポリイソシアネート並びに300g/モル以上の数平均分子量を有する有機ポリヒドロキシ化合物から調製される既知のウレタン基含有NCOプレポリマーが含まれる。ウレタン基含有ラッカーポリイソシアネート(ii)は、62〜300g/モルの分子量範囲の低分子量ポリオール、例えばエチレングリコール、プロピレングリコール、トリメチロールプロパン、グリセロール又はこれらアルコールの混合物から調製される。一方、NCOプレポリマー(iii)は、300g/モル超、好ましくは500g/モル以上、より好ましくは500〜8000g/モルの数平均分子量を有するポリヒドロキシ化合物から調製される。好ましいポリヒドロキシ化合物は、1分子につき2〜6個、好ましくは2〜3個のヒドロキシル基を有する化合物であり、エーテルポリオール、エステルポリオール、チオエーテルポリオール、カーボネートポリオール及びポリアクリレートポリオール並びにこれらポリオールの混合物を包含する。
【0017】
NCOプレポリマー(iii)又はこれとラッカーポリイソシアネート(ii)との混合物を調製するには、ジイソシアネート(i)又はラッカーポリイソシアネート(ii)と、高分子量ヒドロキシ化合物又はそれと低分子量ポリヒドロキシ化合物との混合物を、1.1:1〜40:1、好ましくは2:1〜25:1のNCO/OH当量比で、ウレタン基の形成を伴って、反応させる。蒸留性出発ジイソシアネートを過剰に使用した場合、所望により、反応の後に蒸留して除去し、モノマーを含まないNCOプレポリマーを得る。
【0018】
NCOプレポリマー(iii)を製造する場合、高分子量ポリオールを低分子量ポリオールと混合して使用することができ、そうすると、低分子量ウレタン基含有ラッカーポリイソシアネート(ii)と高分子量NCOプレポリマー(iii)との混合物を直接得ることができる。
【0019】
スルホネート変性ポリイソシアネート(A)を製造するために、原料ポリイソシアネート(i)、(ii)及び/又は(iii)を、所望により、2官能性ポリエーテルと反応させて部分的にNCO基をウレタン化し、次いで、少なくとも1個のイソシアネート反応性基(例えば、OH又はNH基)及び少なくとも1個のスルホン酸又はスルホネート基を有する化合物と反応させる。このようなイソシアネート反応性基は、好ましくは、2-(シクロヘキシルアミノ)エタンスルホン酸及び/又は3-(シクロヘキシルアミノ)プロパンスルホン酸である。ポリマーを生成した後、スルホン酸基を、塩基、好ましくは第3級アミンの添加により、完全に又は部分的に中和する。
【0020】
原料ポリイソシアネートは、好ましくは、ヘキサメチレンジイソシアネート、イソホロンジイソシアネート及び/又は4,4'-ジシクロヘキシルメタンジイソシアネートに基づく。
【0021】
得られるスルホネート変性ポリイソシアネートA)は、好ましくは、少なくとも1.8の平均イソシアネート官能価、4.0〜26.0質量%のイソシアネート基含量(NCO(分子量42)として計算)、及び0.1〜7.7質量%の結合スルホン酸/スルホネート基含量(SO3-(分子量80)として計算)を有する。
【0022】
ポリエーテル単位が含まれている場合、スルホネート変性ポリイソシアネートのポリエーテル鎖内に結合されたエチレンオキシド単位の含量(C2H2O(分子量44)として計算)は、0〜19.5質量%である。所望により含まれるポリエーテル鎖は、好ましくは、平均5〜35のエチレンオキシド単位を含む。
【0023】
スルホネート基は、好ましくは、第3級アミンからプロトン化により形成されたアンモニウムイオンを対イオンとして有する。スルホン酸基及びスルホネート基の合計の第3級アミン及び該アミンから誘導されたプロトン化アンモニウムイオンの合計に対する比は、好ましくは、0.2〜2.0である。
【0024】
第3級アミンの例には、モノアミン(例えば、トリメチルアミン、トリエチルアミン、トリプロピルアミン、トリブチルアミン、ジメチルシクロヘキシルアミン、N-メチルモルホリン、N-エチルモルホリン、N-メチルピペリジン又はN-エチルピペリジン;若しくは第3級ジアミン(例えば、1,3-ビス(ジメチルアミノ)プロパン、1,4-ビス(ジメチルアミノ)ブタン又はN,N'-ジメチルピペラジン)などが包含される。イソシアネート反応性基を有する第3級アミン、例えばアルカノールアミン(例えば、ジメチルエタノールアミン、メチルジエタノールアミン又はトリエタノールアミン)も適しているが、中和用アミンとしての好ましさは劣る。ジメチルシクロヘキシルアミンが好ましい。
【0025】
スルホネート変性ポリイソシアネートA)に加えて、非スルホネート変性ポリイソシアネートも、本発明の被覆組成物中に存在させることができる。そのようなスルホネート基不含有ポリイソシアネートは、好ましくは、スルホネート基含有ポリイソシアネートの調製に使用する原料イソシアネート(i)〜(iii)に相当する。
【0026】
スルホネート基不含有ポリイソシアネートを使用する場合、スルホネート基含有ポリイソシアネート対スルホネート基不含有ポリイソシアネートの質量比は、99:1〜10:90、好ましくは80:20〜20:80である。
【0027】
成分B)のポリアスパルテートの式(I)において、基Xは、好ましくは、下記の化合物から選択されるn価ポリアミンから得られる:1,2-ジアミノプロパン、1,4-ジアミノブタン、1,6-ジアミノヘキサン、2,5-ジアミノ-2,5-ジメチルヘキサン、2,2,4-及び/又は2,4,4-トリメチル-1,6-ジアミノヘキサン、1,11-ジアミノウンデカン、1,12-ジアミノドデカン、1-アミノ-3,3,5-トリメチル-5-アミノメチルシクロヘキサン、2,4-及び/又は2,6-ヘキサヒドロトルイレンジアミン、2,4'-及び/又は4,4'-ジアミノジシクロヘキシルメタン、3,3'-ジメチル-4,4'-ジアミノジシクロヘキシルメタン、2,4,4'-トリアミノ-5-メチルジシクロヘキシルメタン、並びに脂肪族的に結合した第1級アミノ基を含み、148〜6000g/モルの数平均分子量を有するポリエーテルポリアミン。
【0028】
より好ましくは、基Xは、1,4-ジアミノブタン、1,6-ジアミノヘキサン、2,2,4-及び/又は2,4,4-トリメチル-1,6-ジアミノヘキサン、1-アミノ-3,3,5-トリメチル-5-アミノメチルシクロヘキサン、4,4'-ジアミノジシクロヘキシルメタン又は3,3'-ジメチル-4,4'-ジアミノジシクロヘキシルメタンである。
【0029】
基R及びRを規定するのに使用する「反応条件下にイソシアネート基に対して不活性」という表現は、これらの基が、ツェレビチノフ活性水素(CH酸化合物;Roempp Chemie Lexikon, Georg Thieme Verlag Stuttgart 参照)、例えば、OH、NH又はSHを有していないことを意味する。
及びRは、相互に独立して、好ましくはC〜C10アルキル基、より好ましくはメチル基又はエチル基を表す。
【0030】
Xが2,4,4'-トリアミノ-5-メチルジシクロヘキシルメタンから得られる基である場合、R及びRは、好ましくはエチル基である。
【0031】
式(I)において、nは、好ましくは2〜6、より好ましくは2〜4の整数である。
【0032】
アミノ官能性ポリアスパルテートB)の調製は、式:
【化2】

で示される対応第1級ポリアミンを、式:
【化3】

で示されるマレイン酸エステル又はフマル酸エステルと反応させることにより、既知の方法で行うことができる。
【0033】
適当なポリアミンは、上記のジアミンである。適当なマレイン酸エステル又はフマル酸エステルは、マレイン酸ジメチル、マレイン酸ジエチル、マレイン酸ジブチル、及び対応するフマル酸エステルである。
【0034】
上記出発物質からのアミノ官能性ポリアスパルテートB)の調製は、好ましくは0〜100℃の温度範囲で行われる。出発物質は、各第1級アミノ基に対して少なくとも1個、好ましくは1個のオレフィン二重結合が存在するような量で使用する。過剰に使用した出発物質は、反応後に蒸留により除去することができる。反応は、適当な溶媒(例えば、メタノール、エタノール、プロパノール、ジオキサン又はこれらの混合物)の存在下又は不存在下に行うことができる。
【0035】
アミノ官能性ポリアスパルテートに加えて、本発明の被覆組成物は、1分子につき少なくとも2個の式:
【化4】

で示される構造単位を有する、112〜6500g/モルの分子量範囲Mnの化合物も含んでいてよい。
【0036】
このようなキャップされたアミノ基を有する化合物は、本発明ではポリアルジミン及びポリケチミンと称され、112〜6500g/モル、好ましくは140〜2500g/モル、より好ましくは140〜458g/モルの分子量Mnを有する。分子量を個々の元素の原子量の和として決定できない場合、分子量は、官能価及び官能基含量(例えば、加水分解後に存在する第1級アミノ基の測定により決定される)から計算でき、あるいは、より高分子量の化合物の場合には、分子量は、ポリスチレンを標準として使用するゲル浸透クロマトグラフィにより決定することができる。
【0037】
好ましいポリアルジミン及びポリケチミンには、式III:
【化5】

(式中、R及びRは、同一又は異なって、水素原子又は20個までの炭素原子を有する炭化水素基であるか、若しくは両者が炭素原子と一体となって5員又は6員脂肪族環を形成し、
は、場合により酸素原子及び/又は窒素原子を含む対応するポリアミンから第1級アミノ基を除去して得られる(m+1)価有機基を表し、
mは1〜3の整数である。)
で示される化合物を包含する。
【0038】
及びRは、相互に独立に、好ましくは、1〜8個の炭素原子を有するアルキル基である。
を与えるポリアミンは、好ましくは88〜2000g/モルの数平均分子量Mnを有する。
【0039】
全てのRが水素原子であり、全てのRが8個までの炭素原子を有する炭化水素基であり、mが1である式IIIの化合物が特に好ましい。
【0040】
ポリアルジミン及びポリケチミンの調製に使用できるアルデヒド及びケトンは、それぞれ式IV:
【化6】

に対応し、好ましくは、44〜128g/モル(アルデヒド)及び58〜198g/モル(ケトン)の分子量を有する。
【0041】
適当なアルデヒドには、アセトアルデヒド、プロピオンアルデヒド、n-ブチルアルデヒド、イソブチルアルデヒド、トリメチルアセトアルデヒド、2,2-ジメチルプロパナール、2-エチルヘキサナール、3-シクロヘキサン-1-カルボキサルデヒド、ヘキサナール、ヘプタナール、オクタナール、バレルアルデヒド、ベンズアルデヒド、テトラヒドロベンズアルデヒド、ヘキサヒドロベンズアルデヒド、プロパルギルアルデヒド、p-トルイルアルデヒド、フェニルエタナール、2-メチルペンタナール、3-メチルペンタナール、4-メチルペンタナール及びソルビンアルデヒドが包含される。好ましいアルデヒドは、n-ブチルアルデヒド、イソブチルアルデヒド、トリメチルアセトアルデヒド、2-エチルヘキサナール及びヘキサヒドロベンズアルデヒドである。
【0042】
適当なケトンには、アセトン、メチルエチルケトン、メチルプロピルケトン、メチルイソプロピルケトン、メチルブチルケトン、メチルイソブチルケトン、メチルt-ブチルケトン、メチルn-アミルケトン、メチルイソアミルケトン、メチルヘプチルケトン、メチルウンデシルケトン、ジエチルケトン、エチルブチルケトン、エチルアミルケトン、ジイソプロピルケトン、ジイソブチルケトン、シクロヘキサノン、シクロペンタノン、メチルシクロヘキサノン、イソホロン、5-メチル-3-ヘプタノン、1-フェニル-2-プロパノン、アセトフェノン、メチルノニルケトン、ジノニルケトン及び3,3,5-トリメチルシクロヘキサノンが包含される。好ましいケトンは、シクロペンタノン、シクロヘキサノン、メチルシクロペンタノン、メチルシクロヘキサノン、3,3,5-トリメチルシクロペンタノン、シクロブタノン、メチルシクロブタノン、アセトン、メチルエチルケトン及びメチルイソブチルケトンである。
【0043】
特別な性質を得るために、異なるケトン又はアセトンの混合物、更に、ケトンとアルデヒドの混合物も使用することができる。
【0044】
ポリアルジミン及びポリケチミンの調製に使用されるポリアミンは、少なくとも2個、好ましくは2個(m=1)の脂肪族的及び/又は脂環式結合第1級アミノ基を有する有機化合物である。芳香族的結合アミノ基を有するアミンを使用することも可能であるが、それほど好ましくはない。通常、ポリアミンは、60〜6000g/モル、好ましくは88〜2000g/モル、より好ましくは88〜238g/モルの数平均分子量を有する。ポリアルジミン及びポリケチミンの調製に適したポリアミンには、ポリアスパルテートB)の調製に関して記載した化合物が包含される。異なるポリアミンを、ポリアスパルテートB)の調製、並びにポリアルジミン及びポリケチミンの調製に使用することができる。
【0045】
ポリアルジミン及びポリケチミンの調製は、アミノ基対アルデヒド基又はケト基の化学量論比を1:1〜1:1.5に保ちながら出発成分を反応させることにより、既知の方法で行うことができる。所望により、反応を促進するために、触媒量の酸性物質、例えば、p-トルエンスルホン酸、塩化水素、硫酸又は塩化アルミニウムを用いることができる。
【0046】
この反応は、20〜180℃の温度範囲で行われる。反応は、場合により、共沸成分(例えば、トルエン、シクロヘキサン、オクタンなど)を用いて、計算量の反応水(第1級アミノ基1モルにつき水1モル)が除去されるまで、又は水が除去できなくなるまで、行うことができる。次いで、層を分離するか、あるいは、共沸成分及び存在する未反応成分を、蒸留により除去する。
【0047】
このようにして得られた生成物は、更に精製することなく、成分B)と共に使用することができる。
【0048】
ポリアルジミン及び/又はポリケチミンをアスパルテートと共に配合する場合、アスパルテートB)の任意に使用するポリアルジミン又はポリケチミンに対する質量比は、99:1〜5:95、好ましくは80:20〜20:80である。
【0049】
本発明の被覆組成物における遊離又はブロックトアミノ基の遊離NCO基に対する比は、好ましくは0.5:1〜1.5:1、より好ましくは1:1〜1.5:1である。
【0050】
本発明の2成分被覆(バインダー)組成物を製造するには、個々の成分を混合すればよい。
本発明の被覆組成物は、既知の方法、例えば噴霧、浸漬、流し塗り、ロール塗布、刷毛塗り又は注入などの方法により、適用又は塗布することができる。存在する溶媒を蒸発させた後、被覆組成物を、周囲条件下、又は高温、例えば40〜200℃の温度で、硬化させる。
【0051】
本発明の被覆組成物は、種々の基材、例えば金属、プラスチック、セラミック、ガラス、天然材料などに、また、必要なら前処理を行った基材に、塗布することができる。
【実施例】
【0052】
実施例において、全てのパーセント(%)は、特に記載しない限り、質量基準である。
【0053】
動的粘度は、回転粘度計(ViscoTesterTM 550、Thermo Haake GmbH, D-76227 Karlsruhe)を用いて、23℃で測定した。
ポットライフの指標として、流動時間を、DIN 53211に従って測定した。
ハーゼン色値は、DIN EN 1557に従って評価した。
乾燥速度は、DIN 53150, DIN EN ISO 1517に従って測定した。
ケーニッヒ振子硬度は、DIN 53157(60℃で10分間乾燥した後、室温で7日間貯蔵)に従って測定した。
【0054】
使用物質
SN:ソルベントナフサ(Solvesso 100, Exxon Mobil, 米国);50〜100℃の引火点を有する高沸点炭化水素
BA:酢酸ブチル
Baysilone OL 17:ポリエーテル変性ポリシロキサン系流動添加剤(Borchers GmbH, Langenfeld, ドイツ)
Tinuvin 292:光安定剤、立体障害アミン系HALS(Ciba Specialty Chemicals, Basel, スイス)
Tinuvin 384-2:光安定剤、ベンゾトリアゾール系UV吸収剤(Ciba Specialty Chemicals, Basel, スイス)
【0055】
ポリイソシアネート A1-I:DesmodurTM XP 2570、HDIから調製したスルホネート基含有脂肪族ポリイソシアネート、NCO含量20.6質量%、粘度(23℃)3500mPas(Bayer MaterialScience AG, Leverkusen, ドイツ)
ポリイソシアネート A1-II:DesmodurTM XP 2487/1、HDIから調製したスルホネート基含有脂肪族ポリイソシアネート、NCO含量20.9質量%、粘度(23℃)6900mPas(Bayer MaterialScience AG, Leverkusen, ドイツ)
ポリイソシアネート A2:DesmodurTM XP 2410、非対称HDI三量体、NCO含量23.7質量%、粘度(23℃)700mPas(Bayer MaterialScience AG, Leverkusen, ドイツ)
【0056】
ポリアスパルテート B1-I:Desmophen NH 1420、1モルの4,4'-ジアミノジシクロヘキシルメタンと2モルのマレイン酸ジエチルの付加により調製、当量277g、粘度1500mPa.s
ポリアスパルテート B1-II:Desmophen VPLS 2973、1モルの3,3'-ジメチル-4,4'-ジアミノジシクロヘキシルメタンと2モルの90%マレイン酸ジエチル(BA中)の付加により調製、当量323g、粘度150mPa.s
ポリアルジミン B2:Desmophen VPLS 2142、1モルの1-アミノ-3,3,5-トリメチル-5-アミノメチルシクロヘキサン(IPDA)と2モルのイソブチルアルデヒドの付加により調製、当量139g、粘度25mPa.s
【0057】
【表1】

【0058】
【表2】

【0059】
実施例1及び2の組成物は、比較実施例5の組成物と比べて、長いポットライフ(流動時間)でありながら急速に乾燥することを示している。比較実施例6の組成物は急速な乾燥と長いポットライフ(流動時間)を示しているが、成分Bは著しく黄変した。
【0060】
比較実施例7の組成物と比べて、実施例3及び4の組成物は、長いポットライフ(流動時間)でありながら急速に乾燥することを示している。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
A)スルホネート基含有ポリイソシアネート、及び
B)式I:
【化1】

(式中、
Xは、n価ポリアミンから第1級アミノ基を除去して得られるn価有機基を表し、
及びRは、同一又は異なって、反応条件下にイソシアネート基に対して不活性である有機基を表し、
nは、少なくとも2の整数を表す。)
で示されるアミノ官能性ポリアスパルテート
を含んでなる、ポリウレア被覆の製造用2成分被覆組成物。
【請求項2】
スルホネート基含有ポリイソシアネートA)は、少なくとも1.8の平均イソシアネート官能価、4.0〜26.0質量%のイソシアネート基含量(NCO(分子量42)として計算)、0.1〜7.7質量%の結合スルホン酸及びスルホネート基含量(SO3-(分子量80)として計算)、及びポリエーテル鎖内に結合されたエチレンオキシド単位0〜19.5質量%(C2H2O(分子量44)として計算)を有する請求項1に記載の2成分被覆組成物。
【請求項3】
スルホネート基含有ポリイソシアネートA)は、ヘキサメチレンジイソシアネート、イソホロンジイソシアネート及び/又は4,4'-ジシクロヘキシルメタンジイソシアネートから製造される請求項1又は2に記載の2成分被覆組成物。
【請求項4】
成分A)は、スルホネート基不含有ポリイソシアネートも含み、スルホネート基含有ポリイソシアネート対スルホネート基不含有ポリイソシアネートの質量比は80:20〜20:80である請求項1〜3のいずれかに記載の2成分被覆組成物。
【請求項5】
n価ポリアミンは、1,4-ジアミノブタン、1,6-ジアミノヘキサン、2,2,4-及び/又は2,4,4-トリメチル-1,6-ジアミノヘキサン、1-アミノ-3,3,5-トリメチル-5-アミノメチルシクロヘキサン、4,4'-ジアミノジソクロヘキシルメタン又は3,3'-ジメチル-4,4'-ジアミノジシクロヘキシルメタンを含む請求項1〜3のいずれかに記載の2成分被覆組成物。
【請求項6】
及びRは、同一であり、メチル又はエチルである請求項1〜3のいずれかに記載の2成分被覆組成物。
【請求項7】
被覆組成物が更に、ポリアルジミン及び/又はポリケチミンを含む請求項1〜6のいずれかに記載の2成分被覆組成物。
【請求項8】
被覆組成物が更に、式III:
【化2】

(式中、R及びRは、同一又は異なって、水素原子又は20個までの炭素原子を有する炭化水素基であるか、若しくは両者が炭素原子と一体となって5員又は6員脂肪族環を形成し、
は、場合により酸素原子及び/又は窒素原子を含む対応するポリアミンから第1級アミノ基を除去して得られる(m+1)価有機基を表し、
mは1〜3の整数である。)
で示されるポリアルジミン及び/又はポリケチミンを含む請求項1〜6のいずれかに記載の2成分被覆組成物。
【請求項9】
ポリアスパルテートB)対ポリアルジミン及び/又はポリケチミンの比は80:20〜20:80である請求項8に記載の2成分被覆組成物。
【請求項10】
遊離又はブロックトアミノ基対遊離NCO基の比は1:1〜1.5:1である請求項1に記載の2成分被覆組成物。
【請求項11】
請求項1〜10のいずれかに記載の2成分被覆組成物から得られる被覆。

【公開番号】特開2006−307224(P2006−307224A)
【公開日】平成18年11月9日(2006.11.9)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2006−125885(P2006−125885)
【出願日】平成18年4月28日(2006.4.28)
【出願人】(504037346)バイエル・マテリアルサイエンス・アクチェンゲゼルシャフト (728)
【氏名又は名称原語表記】Bayer MaterialScience AG
【Fターム(参考)】