説明

スルホネート官能性ポリエステルポリオール

スルホネート官能性ポリエステルポリオールが、不飽和ポリカルボン酸又はその誘導体、ポリオール、ラクトン及びスルホン化剤を含む反応体から得られる。不飽和ポリカルボン酸又はその誘導体は、スルホネート官能性を実質的に有さないため、淡色を有するスルホネート官能性ポリエステルポリオールを生成する。スルホネート官能性ポリエステルポリオールは、例えば水分散性ポリウレタン及び粒状材料用の分散剤として、例えば磁気記録媒体中に使用されるポリウレタンの製造に使用するのに適している。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明はポリエステルポリオールに関する。更に詳しくは、本発明はスルホネート官能性ポリエステルポリオール及びそれから製造されるポリウレタンに関する。
【背景技術】
【0002】
ポリエステルポリオールは、少なくとも2個のヒドロキシル基及び少なくとも2個のエステル基を含むポリマーである。ポリエステルポリオールは、典型的には、ポリウレタン及びポリエステルのような他のポリマーの製造において反応性中間体として使用される。更に、ポリエステルポリオールは、柔軟性及び他の性質を向上させるためにポリマー含有製品の配合において希釈剤として使用される。ポリエステルポリオールを用いて製造されたポリウレタンは、例えば繊維、被覆、エラストマー、フォーム(発泡体)、接着剤及びシーリング材の製造を含む種々の用途を有する。
【0003】
極性材料、例えば染料及び顔料用の分散剤として使用される水分散性ポリウレタン又はポリマーの製造のようないくつかの場合において、イオン官能性のポリエステルポリオールへの導入が有利なことがある。水分散性ポリウレタンの分野において、特許文献1は、スルホポリカルボン酸又はエステルをポリオールと反応させてスルホポリエステルポリオールを生成させ、次いで前記スルホポリエステルポリオールを低級脂肪族ラクトンを用いたエステル化反応によって連鎖延長することによって製造された連鎖延長スルホポリエステルポリオールを開示している。特許文献2には、ポリエステル及びポリアミド用のスルホネート含有陽イオン性染色性改質剤が記載されている。磁気記録媒体の分野において、特許文献3は、ポリウレタンが金属スルホネート基を有する熱可塑性ポリウレタン組成物を開示し、酸成分の一部として金属スルホネート基を有するジカルボン酸の使用によってポリエステルポリオールを製造するのが好ましいと教示している。金属スルホネート基を有するジカルボン酸は芳香族ジカルボン酸又は脂肪族ジカルボン酸であることができる。金属スルホネート基を有するジカルボン酸成分の例としては、5−スルホイソフタル酸ナトリウム、5−スルホイソフタル酸カリウム、2−スルホテレフタル酸ナトリウム及び2−スルホテレフタル酸カリウムが挙げられる。
【0004】
【特許文献1】米国特許第5,929,160号
【特許文献2】米国特許第6,312,805号
【特許文献3】米国特許第5,695,884号
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
酸をポリオールと反応させるのに必要な比較的高い温度は、生成物中に変色、即ち濃色を生じるおそれがあるので、ポリエステルポリオールの製造における5−スルホイソフタル酸のようなスルホン化酸の使用は問題を起こすおそれがある。濃色は、ポリエステルポリオールを被覆用に使用する場合には、特に美的理由から一般に望ましくない。更に、スルホネート官能性ジカルボン酸が芳香族である場合には、例えばスルホイソフタル酸の場合には、スルホネート基は柔軟性のないフタル酸部分への結合のために移動性が制限されることが多い。この制限された移動性は対応するポリウレタンの分散性に悪影響を与えるおそれがある。
【0006】
スルホネート官能性を有さないカルボン酸から製造することができる、改良されたスルホネート官能性ポリエステルポリオールが得られれば望ましいであろう。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明は、スルホネート官能性を実質的に含まない不飽和ポリカルボン酸若しくはその誘導体、ポリオール、ラクトン及びスルホン化剤を含む反応体から得られるスルホネート官能性ポリエステルポリオールを提供する。本発明は本発明のポリオールから製造されたポリウレタンを含む。
【0008】
本発明によれば、淡色を有するスルホネート官能性ポリエステルポリオールを提供できる。その結果、本発明のスルホネート官能性ポリエステルポリオールは、例えば組成物の性質を向上させるための添加剤若しくは反応性希釈剤として、又は淡色のポリウレタンの製造における反応性中間体として使用できる。本発明のポリウレタンの典型的な最終用途としては、例えば水分散性ポリウレタン、被覆(coating)、フォーム、繊維、シーリング材、接着剤並びに染料、顔料及び粒状材料、例えば磁気記録媒体に使用される磁性粒子のための分散剤が挙げられる。
【0009】
本発明は、また、不飽和ポリカルボン酸若しくはその誘導体をポリオールと反応させて、不飽和ポリオールを生成させ;前記不飽和ポリオールをスルホン化剤と反応させて、スルホネート官能性ポリオールを生成させ;そして、前記スルホネート官能性ポリオールをラクトンと反応させて、スルホネート官能性ポリエステルポリオールを生成する工程を含む、スルホネート官能性ポリエステルポリオールの製造方法を含む。有利なことに、本発明によれば、不飽和ポリオールが形成されるまではスルホネート官能性が取り込まれないので、不飽和ジカルボン酸若しくはその誘導体とポリオールとの反応は高温において、即ち反応を促進するのに充分に高い温度において、着色を起すことなく実施できる。次に、スルホネート官能性ポリオール中の着色を促進することなく、スルホン化を促進するの充分な比較的低い温度においてスルホン化を実施できる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0010】
本発明の方法は、不飽和ポリカルボン酸又はその誘導体、ポリオール、ラクトン及びスルホン化剤を含む反応体からスルホネート官能性ポリエステルポリオールを製造する。
【0011】
本発明に従って使用するのに適当な不飽和ポリカルボン酸又はその誘導体は有利には少なくとも2個のカルボキシル基及び約4〜約36個、好ましくは約4〜約8個の炭素原子を有する。不飽和カルボン酸は少なくとも1個、有利には1〜約4個のエチレン性不飽和結合を有する。本明細書中で使用するポリカルボン酸の「誘導体」という用語は、対応する無水物、エステル、半エステル、塩化カルボニル及びそれらの混合物を含む。ジカルボン酸が好ましい。好ましいジカルボン酸の例としては、例えばマレイン酸、フマル酸及びイタコン酸が挙げられる。特に好ましいエチレン性不飽和ジカルボン酸又はその誘導体は、マレイン酸又は無水マレイン酸である。スルホネート官能性ポリエステルポリオールの製造に使用する不飽和ポリカルボン酸の量は本発明には重要ではないが、スルホネート官能性ポリエステルポリオールの製造に使用する反応体の総重量に基づき約0.5〜約20重量%が有利である。不飽和ポリカルボン酸の量は、好ましくは不飽和ポリオールの製造に使用する不飽和ポリカルボン酸及びポリオールの総重量に基づき約20〜約80重量%である。不飽和ポリカルボン酸の混合物も使用できる。本発明に従って使用するのに適当ないくつかの不飽和ポリカルボン酸及びそれらの誘導体は市販されている。
【0012】
本発明によれば、不飽和ポリカルボン酸又はその誘導体は実質的にスルホネート官能性を有さない。本明細書中で使用する用語「スルホネート官能性」又は「スルホネート官能性の」は、−SO3M基(式中、Mは正電荷を持つ対イオン、例えばアンモニウムイオン又はアルカリ金属イオンである)を意味する。用語「スルホネート官能基」もまたスルホニル基、スルホ基、スルホネート基又はスルホン酸基又はその塩を意味する。本明細書中で使用する用語「実質的に含まない」とは、不飽和ポリカルボン酸モル当たり平均して0.1未満、好ましくは0.05未満、より好ましくは0.01未満のスルホネート基当量を意味する。即ち不飽和ポリカルボン酸出発原料中の分子の10%未満、好ましくは5%未満、より好ましくは1%未満がスルホネート官能性を有するものとする。
【0013】
本発明に従って使用するのに適当なポリオールは少なくとも2個のヒドロキシル基を有する。本発明の好ましい側面において、ポリオールは約2〜約40の炭素原子を有する。ポリオールは飽和されているのが好ましい。炭素数約2〜約12の脂肪族ジオールが好ましい。適当なポリオールの例としては、1,2−エチレングリコール、1,3−プロピレングリコール、1,2−プロピレングリコール、2,2−ジエチル−1,3−プロパンジオール、2,2−ジメチル−1,3−プロパンジオール、2−エチル−2−ブチル−1,3−プロパンジオール、2−エチル−2−イソブチル−1,3−プロパンジオール、1,3−ブタンジオール、1,4−ブタンジオール、1,5−ペンタンジオール、1,6−ヘキサンジオール、2,2,4−トリメチル−1,6−ヘキサンジオール、2,4−ジメチル−2−エチルヘキサン−1,3−ジオール、3−メチル−1,5−ペンタンジオール、1,2−シクロヘキサンジオール、1,3−シクロヘキサンジメタノール、1,4−シクロヘキサンジメタノール、p−キシレンジオール及び2,2,4,4−テトラメチル−1,3−シクロブタンジオールが挙げられる。特に好ましいポリオールは1,4−ブタンジオール及び1,6−ヘキサンジオールである。本発明の別の側面においてはポリエーテルグリコールをポリオールとして使用できる。好ましいポリエーテルグリコールの例としては、例えば数平均分子量が好ましくは約200〜約6000であるポリオキシエチレンポリオール、ポリオキシプロピレンポリオール及びポリ(オキシプロピレン−オキシエチレン)ポリオールが挙げられる。適当なポリエーテルグリコールは、例えばThe Dow Chemical CompanyからVORANOL(商標)ポリオール又はCARBOWAX(商標)ポリオールとして市販されている。ポリオールの混合物も使用できる。
【0014】
本発明のスルホネート官能性ポリエステルポリオールの製造に使用するポリオールの量は重要ではないが、スルホネート官能性ポリエステルポリオールの製造に使用する反応体の総重量に基づき約0.5〜約50重量%、好ましくは約2〜約40重量%であるのが有利である。より好ましいポリオールの量は不飽和ポリオールの製造に使用する不飽和ポリカルボン酸及びポリオールの総重量に基づき約20〜約80重量%である。本発明に従って使用するのに適当ないくつかのポリオールは市販されている。
【0015】
本発明に従って使用するのに適当なラクトンは約3〜20個の炭素原子を有するのが有利である。適当なラクトンの例としては以下のものが挙げられる。カプロラクトン;t−ブチルカプロラクトン;ζ−エナントラクトン;δ−バレロラクトン類;モノアルキル−δ−バレロラクトン類、例えばモノメチル−、モノエチル−及びモノヘキシル−δ−バレロラクトン類など;モノアルキル、ジアルキル及びトリアルキル−ε−カプロラクトン類、例えばモノメチル−、モノエチル−、モノヘキシル−、ジメチル−、ジ−n−ヘキシル、トリメチル−、トリエチル−ε−カプロラクトン類、5−ノニル−オキセパン−2−オンなど;4,4,6−若しくは4,6,6−トリメチル−オキセパン−2−オンなど;5−ヒドロキシメチル−オキセパン−2−オン;β−ラクトン類、例えばβ−プロピロラクトン;β−ブチロラクトン又はピバロラクトン;γ−ラクトン類、例えばγ−ブチロラクトン;ジラクトン類、例えばラクチド;ジラクチド類;グリコリド類、例えばテトラメチルグリコリド類など;ジオキサノン類、例えば1,4−ジオキサン−2−オン、1,5−ジオキセパンー2−オンなど。ラクトン類は光学的に純粋な異性体又は2種若しくはそれ以上の光学的に異なる異性体あるいは他の混合物であることができる。ε−カプロラクトン及びその誘導体、例えばメチル−ε−カプロラクトン及び他の、7員環ラクトン類が特に好ましい。本発明のスルホネート官能性ポリエステルポリオールに使用するラクトンの量は、スルホネート官能性ポリエステルポリオールの製造に使用する反応体の総重量に基づき、好ましくは約10〜約98.5重量%、より好ましくは約40〜約90重量%である。本発明に従って使用するいくつかのラクトン類は市販されている。
【0016】
本発明に従って使用するのに適当なスルホン化剤は不飽和ポリオールにスルホネート官能性を与えることができる任意の化合物であることができる。スルホン化剤は有機でも無機でもよい。好ましくは、スルホン化剤は硫黄原子に結合した酸素原子を有する無機化合物である。好ましくは、スルホン化剤は、1種若しくはそれ以上の亜硫酸水素塩又は1種若しくはそれ以上のピロ亜硫酸塩、あるいはそれらの混合物を含んでなる。好ましいスルホン化剤は亜硫酸水素アンモニウム及びアルカリ金属の亜硫酸水素塩並びにアルカリ金属のピロ亜硫酸塩である。より好ましいスルホン化剤は亜硫酸水素ナトリウム及びピロ亜硫酸ナトリウムである。他の好ましいスルホン化剤としては、亜硫酸水素リチウム、ピロ亜硫酸リチウム、亜硫酸水素カリウム、ピロ亜硫酸カリウム、亜硫酸水素アンモニウム及びピロ亜硫酸アンモニウムが挙げられる。無機塩、例えば水酸化ナトリウムのような他の物質も、スルホン化剤の反応性及びpHを制御するために場合によっては含ませることができる。本発明のスルホネート官能性ポリエステルポリオールを製造するのに使用するスルホン化剤の量は重要ではないが、不飽和ポリオール中の二重結合を全てスルホン化するの充分な量であるのが好ましい。有利には、この量は、スルホネート官能性ポリエステルポリオールの製造に使用する反応体の総量に基づき約0.5〜約20重量%、好ましくは約2〜約16重量%である。より好ましくは、スルホン化剤の量は、スルホネート官能性ポリオールの製造に使用する不飽和ポリカルボン酸、ポリオール及びスルホン化剤の総量に基づき約15〜約50重量%である。いくつかの適当なスルホン化剤は市販されている。
【0017】
本発明のスルホネート官能性ポリエステルポリオールの製造に使用する方法は、常用の装置を用いた回分法、連続法又は半連続法であることができ、その詳細は当業者には知られている。
【0018】
本発明の方法の第1工程は不飽和ポリオールを形成するのに充分な反応条件下で不飽和ポリカルボン酸又はその誘導体をポリオールと接触させることを含む。無水マレイン酸のような不飽和無水物の場合には、第1工程は2段階で起こる。第1段階において、無水物の開環が起こり、ポリオール、例えば1,6−ヘキサンジオールの1分子が結合して、無水物残基の一方の末端にエステルを、他方の末端に酸又はカルボキシレートを形成する。この第1段階は、比較的低温で、例えば約60〜約160℃又は所望ならばそれより高温において実施できる。好ましくは第1段階は溶媒の不存在下で且つ触媒、例えばブチル錫ヒドロキシドオキシドの存在下で実施する。第1工程の第2段階では、ポリオールのもう1つの分子が、無水物残基上に残っている酸基と縮合して、不飽和ポリオール上に第2のエステル基を形成する。第2段階は、典型的には、反応を完了させるのに比較的高温、例えば約160〜約240℃を必要とする。第2段階も、好ましくは、溶媒の不存在下で実施する。反応の第1工程の第1段階及び第2段階は、別々の工程で実施することもできるが、好ましくは同じ反応器中において共通の工程で実施する。
【0019】
この方法の第2工程においては、スルホネート官能性ポリオールを形成するのに充分な反応条件下において、不飽和ポリオールをスルホン化剤と接触させる。不飽和ポリオールのスルホン化は化学量論的にわずかに過剰のスルホン化剤を用いて実施するのが有利である。スルホン化は、水のような適当な溶媒中で実施するのが有利である。スルホン化工程の温度は有利には約10〜約120℃、好ましくは約25〜約100℃である。スルホン化はまた場合によっては、例えば反応媒体に空気を通すことによって又は過酸化水素、ベンゾイルペルオキシド若しくはt−ブチル水素ペルオキシドのような過酸化物によって助けることができる。好ましくは、水は、スルホン化完了後に、スルホネート官能性ポリオール反応生成物から除去する。場合によっては、その後の、生成物からの水の除去を増大させるために、水と共沸混合物を形成する1種又はそれ以上の溶媒の存在下において、例えばトルエンの存在下においてスルホン化を実施することもできるし、あるいはスルホン化反応の全て又は一部が起こった後に共沸混合物を添加することもできる。
【0020】
本発明の方法の第3工程においては、スルホネート官能性ポリエステルポリオールを生成させるのに充分な反応条件下において、スルホネート官能性ポリオールをラクトンと接触させる。有利には、この工程は(当業界では開環重合又は連鎖延長とも称する)は、約25〜約200℃、好ましくは約80〜約180℃の温度において触媒の存在下で実施する。スルホネート官能性ポリエステルポリオールの製造に使用することができる触媒の例は、ポリエステル製造の技術を有する者に知られたものであり、その例としては、ジブチル錫オキシド、酸化アンチモン、酸化錫、オクタン酸錫、有機錫アルカノエート、チタンアルコキシド、アルミニウムアルコキシド、アルミニウムオキシドアルコキシド、アルカリ金属塩又はマンガン、カドミウム、マグネシウム、亜鉛、コバルト、錫の塩などが挙げられる。反応は溶媒の不存在下で実施するのが有利である。スルホネート官能性ポリエステルポリオールの分子量は、スルホン化ポリオールに重合させるラクトン分子の数によって制御することができる。
【0021】
本発明の反応工程を実施する圧力は重要ではなく、有利には約0.1〜約3気圧(絶対)の範囲である。同様に、各工程に必要な時間も重要ではなく、有利には第1工程及び第2工程のそれぞれについては約0.5〜約20時間、第3工程については約2〜約100時間の範囲である。
【0022】
所望ならば、所望の性質を与えるために、追加の物質を用いて本発明のスルホネート官能性ポリエステルポリオールを製造できる。例えば他のポリオール開始剤、酸化防止剤、安定剤、酸捕捉剤、可塑剤、凝集溶剤、反応性希釈剤、顔料及び充填剤を使用できる。適当な反応条件、装置、反応体、添加剤及び触媒に関する更なる詳細は、当業者ならば容易に決定できる。
【0023】
好ましくは、本発明のスルホネート官能性ポリエステルポリオールは淡色を有する。有利には、白金コバルトスケール上の色は50番より低く、好ましくは25番より低く、より好ましくは15番より低い。本明細書中で使用する用語「色(color)」は、ASTM−D−1209に記載した方法に従って測定される色を意味する。特定の理論に結びつけるものではないが、色は高温へのスルホネートの暴露によって形成されると考えられる。本発明によれば、第1工程に使用する不飽和ポリカルボン酸又はその誘導体は実質的にスルホネート官能性を有さないので、高温へのスルホネート基の暴露を回避できる。従って、不飽和ポリカルボン酸又はその誘導体とポリオールとの反応が不飽和ポリオールの形成を促進するのに充分な高温で実施できると共に、スルホン化反応がスルホネート官能性ポリオールの形成を促進するのに有効な比較的低い温度で実施でき、それでも色の形成は回避できる。本発明によれば、不飽和ポリオールをスルホン化剤と反応させる反応工程の最大温度は、不飽和ポリカルボン酸又はその誘導体とポリオールとの反応を実施する最大温度より少なくとも約20℃低い、好ましくは少なくとも約30℃低いのが望ましい。
【0024】
本発明の一側面において、スルホネート官能性ポリエステルポリオールは式:
【0025】
【化1】

【0026】
[式中、R1は、炭素数約2〜約14の三価炭化水素基であり;
+は、正電荷を持つ対イオンであり;
xは約2〜約80であり;
nは約2〜約17であり;
2は炭素数約2〜約12の二価炭化水素基である]
で表すことができる。前記式で表されるスルホネート官能性ポリエステルポリオールは約50番より低い色を有するのが好ましい。
【0027】
好ましくはR1は炭素数が約2〜約8の脂肪族炭化水素基である。より好ましくはR1は炭素数約2〜約4のアルキル基である。好ましくはR2は炭素数約2〜約12の脂肪族炭化水素基である。より好ましくはR2は炭素数約4〜約6の脂肪族ジオールの残基である。好ましくはxは約2〜約40である。好ましくはnは3〜約6である。最も好ましくはnは5である。x及びnの値は平均値である。
【0028】
有利には、本発明のスルホネート官能性ポリエステルポリオールの分子量は約450〜約10,000グラム/モル(「g/モル」)である。好ましい分子量は約500〜約5,000g/モルである。本明細書中で使用する用語「分子量」は数平均分子量を意味する。数平均分子量の測定方法は当業者には知られており、例えば末端基分析(OH滴定)ゲル透過クロマトグラフィー又は高速液体クロマトグラフィーなどである。有利にはスルホネート当量は約250〜約5,000g/モルである。本発明の好ましい側面においてスルホネート官能性ポリエステルポリオールは1分子当り1スルホネート当量を有する。スルホネート当量は数平均分子量を分子当たりのスルホニル基平均数で割ることによって求めることができる。
【0029】
本発明のスルホネート官能性ポリエステルポリオールは種々の用途を有する。例えばスルホン化ポリエステルポリオールは、水性系への分散性、粒状材料、例えば顔料若しくは金属粒子の分散性、他の材料との相溶性又は減少した粘度のような性質を改良するために組成物中に添加剤として使用することができる。更に、スルホネート官能性ポリエステルポリオールは、柔軟性を向上させるために、種々の組成物及びポリマー、例えばアクリルポリマー及びポリエステル中に反応性希釈剤として使用することができる。本発明のスルホネート官能性ポリエステルポリオールの用途の別の例は、米国特許第6,312,805号に開示されたような、ポリエステル及びポリアミドに混和するための染色性改良剤である。
【0030】
本発明の好ましい一側面において、スルホネート官能性ポリエステルポリオールはポリウレタンの製造に使用する。広い意味において、本発明のポリウレタンはポリイソシアネートとスルホネート官能性ポリエステルポリオールとの反応生成物を含む。有利には、ポリイソシアネートは、分子当り約6〜約30個の炭素原子及び少なくとも2個のイソシアネート基を有する脂肪族、脂環式又は芳香族ジイソシアネートである。トルエン2,4−ジイソシアネート、トルエン2,6−ジイソシアネート、メタ−及びパラ−テトラメチルキシレンジイソシアネート、4−クロロフェニレン1,3−ジイソシアネート、ナフタレン1,5−ジイソシアネート、ヘキサメチレン1,6−ジイソシアネート、ヘキサメチレン1,5−ジイソシアネート、シクロヘキシレン1,4−ジイソシアネートテトラヒドロナフチレン1,5−ジイソシアネート、ジフェニルメタン2,4’−ジイソシアネート、ジフェニルメタン4,4’−ジイソシアネート、ジシクロヘキシルメタンジイソシアネート、イソホロンジイソシアネートはこのために適している。好ましいポリイソシアネートは、芳香族ジイソシアネート、例えばトルエン2,4−ジイソシアネート、トルエン2,6−ジイソシアネート及びそれらの混合物であり、例えばThe Dow Chemical Companyから商品名VORANATE*T−80、ISONATE*M−124及びISONATE M−125として入手できる。ポリイソシアネートの混合物も使用できる。ポリウレタン中に使用するポリイソシアネートの量は本発明に重要ではなく、有利にはポリウレタン106gあたり約100〜約10,000当量のウレタン基濃度に相当する。
【0031】
同様に、スルホネート官能性ポリエステルポリオールの量は重要ではなく、ポリウレタンの目的とする性質によって異なる。有利には、スルホネート官能性ポリエステルポリオールの量は、80g/モルの質量を有するスルホネート基に基づき(即ち対イオンの質量を除いて)約10〜約5,000、好ましくは約10〜約3,000当量/106g(ポリウレタン)のスルホネート基濃度を生じるように選択する。
【0032】
スルホネート官能性ポリエステルポリオールの他に、目的とする性質を与えるために、他のポリオールもポリウレタン中に混和することができる。性質は様々であることができ、その例としては、例えば延性、吸水性、引張強さ、モジュラス、耐摩耗性、最低膜形成温度及びガラス転移温度が挙げられる。長鎖ポリオールほど、延性が大きく且つガラス転移温度(Tg)が低い材料を生成する傾向があるのに対し、短鎖ポリオールほど、高いモジュラス及び高いTgをもたらす傾向がある。スルホネート官能性ポリエステルポリオールと異なる他のポリオールは、好ましくはポリエステルポリオール、ポリエーテルポリオール、ポリカーボネートポリオール、炭化水素ポリオール、これらのホモポリマーポリオールの製造に使用された少なくとも2種のモノマーから製造されたコポリマーポリオール及びこれらの混合物からなる群から選ばれる。ポリエステルポリオールは好ましくは主に末端ヒドロキシル基を有する線状ポリマー、好ましくは2個の末端ヒドロキシル基を有するものである。ポリエステルポリオールの酸価は、好ましくは約10より小さく、より好ましくは約3より小さい。ポリエステルポリオールは、炭素数が約4〜約15の、好ましくは約4〜約8の脂肪族若しくは芳香族ジカルボン酸をグリコールで、好ましくは炭素数約2〜約25のグリコールでエステル化することによって、又は炭素数約3〜約20のラクトンを重合することによって製造でき、その詳細は当業者には知られている。ラクトンを用いて製造されるポリエステルポリオールはまた当業界においてポリラクトンポリオールとも称する。ポリエーテルポリオールは好ましくは主に末端ヒドロキシル基を有する線状ポリマーであり、エーテル結合を含み且つ約600〜約4000,好ましくは約1000〜約2000の分子量を有する。適当なポリエーテルポリオールは、環状エーテル、例えばテトラヒドロフランを重合することによって、又はアルキレン基の炭素数が2〜4の1個若しくはそれ以上のアルキレンオキシドを、アルキレン基に結合した2個の活性水素原子を含む開始剤分子と反応させることによって容易に製造できる。アルキレンオキシドの例はエチレンオキシド、1,2−プロピレンオキシド、エピクロロヒドリン並びに1,2−及び2,3−ブチレンオキシドである。アルキレンオキシドは別々に交互に連続して又は混合物として使用できる。適当な開始剤分子の例は、水、グリコール類、例えばエチレングリコール、プロピレングリコール、1,4−ブタンジオール及び1,6−ヘキサンジオール、アミン類、例えばエチレンジアミン、ヘキサメチレンジアミン及び4,4’−ジアミノジフェニルメタン、並びにアミノアルコール類、例えばエタノールアミンである。開始剤の混合物も使用できる。ポリエーテルポリオールは単独で又は混合物として使用できる。ポリカーボネートポリオールは一般に環状カーボネートから環状カーボネートの開環によって又はジアルキルカーボネートと1種又はそれ以上のポリオールとのカルボニル交換反応(transcarbonylation)によって製造される以外は前記ポリエーテルポリオールと類似しており、このことは当業界でよく知られている。適当なカーボネートの例としては、エチレンカーボネート、1,2−プロピレンカーボネート、1,3−プロピレンカーボネート、1,4−ブチレンカーボネート、1,3−ブチレンカーボネート、ジメチルカーボネート、ジエチルカーボネート及び当業者に知られた他のカーボネートが挙げられる。ポリカーボネートポリオールの製造に有用なポリオールの例としては、他のポリオールとして使用するのに適当なポリオールとして以下に記載したポリオール及びポリエステルポリオールの製造に関して前述したポリオールが挙げられる。他のポリオールとして使用するのに好ましいポリオールの例としては以下のものが挙げられる。炭素数2〜18、好ましくは2〜10のジオール、例えば1,2−エタンジオール、1,3−プロパンジオール、1,4−ブタンジオール、1,5−ペンタンジオール、1,6−ヘキサンジオール、1,10−デカンジオール、2−メチル−1,3−プロパンジオール、2−メチル−2−ブチル−1,3−プロパンジオール、2,2−ジメチル−1,3−プロパン−ジオール、2,2−ジメチル−1,4−ブタンジオール、2−エチル−2−ブチル1,3−プロパンジオール、ネオペンチルグリコールヒドロキシピバレート、ジエチレングリコール、トリエチレングリコール及びメチルジエタノールアミン。ジオールは別々に又は混合物として使用できる。炭素数2〜15のジアミン、例えばエチレンジアミン、1,6−ヘキサメチレンジアミン、4,9−ジオキソドデカン−1,12−ジアミン又は4,4’−ジアミノ−ジフェニルメタンもまた使用できる。更に、例えば発泡ポリウレタンの製造が望ましい場合には、他のポリオールの代わりに、又は他のポリオールに加えて、水を使用できる。このような他のポリオールの量は、当業者ならば、ポリウレタンの目的とする性質に応じて決定できる。有利には、このような他のポリオールは、ポリウレタンの製造に使用する反応体の総重量に基づき約0〜35重量%の量で存在するものとする。ポリオールの混合物も使用できる。
【0033】
本発明のポリウレタンの製造方法は重要ではない。一般に、ポリウレタンは、多官能価ヒドロキシル含有又はアミノ含有化合物をポリイソシアネートと反応させることができる公知の重付加反応によって製造する。
【0034】
例えばバルク重合法においては、スルホネート官能性ポリエステルポリオール、他のポリオール(使用する場合)及びポリイソシアネートを速やかに混合し、コンベヤーベルト上で加熱して重合させる。溶融重合法においては、反応体は、一軸スクリュー押出機又は多軸スクリュー押出機によって混練しながら重合させる。前記重合法に供した後に得られるポリウレタンの分子量は、充分に高くないことが多い。従って、こうして得られたポリウレタンは、固相重合としても知られている硬化工程に更に供し、それによって所望の分子量を有する熱可塑性ポリウレタンを得ることができる。熱可塑性ポリウレタンの製造に好ましい成分混合比は、ポリイソシアネートのNCO基の割合が、スルホン化ポリステルポリオールのヒドロキシル基及び他のポリオールのヒドロキシル基を含む全OH基の数に基づき、好ましくは0.5〜1.5、より好ましくは0.8〜1.2となるように設定する。ポリウレタンの製造及び架橋反応に適当な触媒の例は、第三アミン、例えばトリエチルアミン、トリエチレンジアミン、N−メチル−ピリジン及びN−メチルモルホリン、金属塩、例えばオクタン酸錫、オクタン酸鉛及びステアリン酸亜鉛並びに有機金属化合物、例えばジブチル錫ジラウレートである。適当な触媒の量は触媒の活性によって決まる。典型的な触媒量は、ポリウレタン100重量部当り0.005〜0.3重量部、好ましくは0.01〜0.1重量部である。ポリウレタンの製造における触媒の素性及び使用方法は当業者にはよく知られている。
【0035】
本発明の好ましい一側面において、熱可塑性ポリウレタンは押出機中で溶媒の不存在下に製造する。1つのスクリュー又は2つの同時回転若しくは逆回転スクリューを装着した従来の押出機を使用できる。好ましい押出機は追加の混練エレメントを有する。適当な押出機としては、例えばWerner & Pfleiderer(Stuttgart,Germany)からのZKSシリーズの押出機が挙げられる。個々の成分は溶融された形態で又は固体の形態で、例えばフレークとして押出機に供給することができる。反応体は押出機の外側で又は押出機自体の中で混合することができる。異なるポリイソシアネートを使用する場合には、予備混合することができる。供給材料の型及び数並びに押出機中の滞留時間は、各場合に必要な反応条件、例えば成分の反応性、反応熱などによって異なる。反応温度は一般に約120〜約200℃であるが、これより高温又は低温も使用できる。温度は反応の間に変化させることができ、例えば押出機の1つの部分から他の部分へ有利な方法で増加させることができる。押出機から吐出される生成物は有利には、常法で回収及び粉砕する、例えば水中で粗砕してから乾燥させる。必要に応じて、次に約50〜約80℃において加熱を行うことができる。
【0036】
本発明のいくつかの側面、例えば熱可塑性ポリウレタンにおいて、本発明に従って製造されたポリウレタンは好ましくは従来の極性溶媒、例えばエーテル類、例えばテトラヒドロフラン若しくはジオキサン、ケトン類、例えばメチルエチルケトン若しくはシクロヘキサノン、エステル類、例えば酢酸エチル、アミド類、例えばジメチルホルムアミド又は炭化水素、例えばアルカン若しくは芳香族化合物あるいは溶媒の混合物中に可溶である。
【0037】
本発明のポリウレタンは、種々の用途、例えば被覆、接着剤、シーリング材、水性分散液、フォーム、繊維として、並びに粒状材料及び/又は極性材料用の分散剤として使用できる。粒状材料の類の例としては、金属及び金属酸化物、顔料、セラミック、ゼオライト及び分子篩が挙げられる。粒状であってもなくてもよい極性物質の例としては、染料、インク、着色剤、改質剤、安定剤、可塑剤及び反応性希釈剤が挙げられる。本発明のポリウレタンは、粒状物質の結合、安定化、相溶化若しくは分散を助けるのに、又は被覆若しくは他の物質との相溶性を向上させるために有用であり得る。
【0038】
本発明によれば、スルホネート官能性ポリエステルポリオールを用いて製造したポリウレタンは、磁気記録システムに使用される磁性粒子、特に微細磁性粒子を、例えばコンピュータデータ記憶テープ、オーディオテープ又はビデオテープ中に分散させるのに特に適当である。磁気記録システムに使用される磁性粒子は当業界においては金属顔料とも称される。市販物質に比べて、本発明のポリウレタンを用いて得られた磁性分散液は、より優れた流動性を有することができ、それから製造された磁性層はより高い光沢度を有することができる。更に、それらは、良好な分散作用及び急速な分散、分散液の良好な安定化、分散液の製造における低溶媒要件、分散液の流延時における良好な平滑化、磁性層の高顔料含量、磁針の優れた配向性及び磁性層の優れた機械的性質を高温でも提供できる。
【0039】
本発明のポリウレタンは磁性層を製造するための唯一の結合成分として使用することができるが、得られるバインダー総重量に基づき、約70重量%より少ない、好ましくは約40重量%より少ない量で少なくとも1種の更なるバインダー成分を添加するのが有利な場合が多い。
【0040】
好ましいコバインダーは、ビニルエステルのポリマーを加水分解し、次いで得られるビニルアルコールポリマーをホルムアルデヒドと反応させることによって製造されたポリビニルホルマールバインダーである。ポリビニルバインダーは少なくとも約65重量%の、特に少なくとも約80重量%のビニルホルマール基を含むのが好ましい。特に適当なポリビニルバインダーは、約5〜約13重量%のビニルアルコール基及び約80〜約88重量%のビニルホルマール基を含み、約1.2の密度及び約50〜120ミリパスカル(「mPa」)[1:1(容量)のフェノール/トルエン100ミリリットル(「ml」)中ポリビニルホルマール5gの溶液を用いて20℃において測定]の粘度を有する。
【0041】
ポリビニルホルマールバインダーの他に、例えば当業界において知られた方法で塩化ビニル及びジオールモノ(メタ)アクリレート又はジ(メタ)アクリレートの溶液共重合又は懸濁共重合によって製造することができる塩化ビニル/ジモノ−又はジ(メタ)アクリレートコポリマーも適当である。このために使用するのに好ましいジオールモノ−若しくはジアクリレート又は−メタクリレートは、アクリル酸若しくはメタクリル酸と対応するモル量の炭素数約2〜4の脂肪族ジオール、例えばエチレングリコール、1,4−ブタンジオール及び好ましくはプロパンジオールとのエステル化生成物であり、プロパンジオールは好ましくは約50〜約100重量%の1,3−プロパンジオール及び約0〜約50重量%の1,2−プロパンジオールを含む。コポリマーは、好ましくは約50〜約95重量%の塩化ビニル及び約5〜約50重量%のジオールアクリレート又はジオールメタクリレートを含む。特に適当なコポリマーは、好ましくは約70〜約90重量%の塩化ビニル及び約10〜約30重量%のジオールモノアクリレート又はジオールモノメタクリレートを含む。好ましいコポリマー、例えば塩化ビニル/プロパンジオールモノアクリレートコポリマーの、等容量部のテトラヒドロフランとジオキサンとの混合物中15%溶液は25℃において約30mPaの粘度を有する。
【0042】
更に、式:
【0043】
【化2】

【0044】
[式中、mは約100である]
の反復単位を有するフェノキシ樹脂を共バインダーとして使用できる。これらのポリマーは、Inchem Corporationから商品名Inchemrez(商標)として市販されている。
【0045】
セルロースエステルバインダーも、バインダー混合物中に使用するのに適当である。これらはセルロースと硝酸又は炭素数1〜4のカルボン酸とのエステル化生成物、例えばセルロースアセテート、セルローストリアセテート、セルロースアセトプロピオネート又はセルロースアセトブチレートである。
【0046】
使用できる典型的な磁性材料としては、得られる磁性層の性質に影響を与えるもの、例えばガンマ−酸化鉄(III)、微細マグネタイト、強磁性非ドープ又はドープ二酸化クロム、コバルト変性ガンマ−酸化鉄(III)、バリウムフェライト又は強磁性金属粒子が挙げられる。針状、特に樹状突起のないコバルト変性又は非変性ガンマ−酸化鉄(III)及び合金が好ましい。粒度は一般に0.01〜2ミクロメーター(「ミクロン」とも称する)、好ましくは0.02〜0.5ミクロンである。BET法[S.Brunauer,P.H.Emmett and E.Teller,J.Ann.Chem.Soc.,60,309(1938)]によって測定される比表面積は一般に、少なくとも40平方メーター/グラム(「m2/g」)、好ましくは50〜200m2/gである。
【0047】
磁性材料対バインダーの比は有利には、バインダー混合物の重量部当たり磁性材料約1〜約10,特に約3〜約6重量部である。本発明のポリウレタンの分散性の向上により、機械的弾性又は性能特性を低下させることなく、より小さい磁性粒子、例えば平均粒度が0.02〜0.05ミクロンであるものを、高い磁性材料濃度でも、例えば磁性層の総重量に基づき70〜90重量%でも磁性層中に有効に分散できることは特に有利である。
【0048】
更に、前記新規バインダー組成物はまた架橋剤、充填剤及び更なる添加剤、例えば潤沢剤(lubricant)、カーボンブラック又は非磁性無機若しくは有機粒状材料の任意の組合せを含むことができる。使用する潤沢剤は、例えば炭素数約10〜約20のカルボン酸、特にステアリン酸若しくはパルミチン酸又はカルボン酸の誘導体、例えばそれらの塩、エステル若しくはアミドあるいはそれらの2又はそれ以上の混合物であることができる。
【0049】
適当な非磁性無機粒状材料の例としては、カーボンブラック、グラファイト、金属、金属酸化物、金属炭酸塩、金属硫酸塩、金属窒化物、金属炭化物及び金属硫化物、より具体的にはTiO2(ルチル又はアナターゼ)、TiO3、酸化セリウム、酸化錫、酸化タングステン、酸化アンチモン、ZnO、ZrO2、SiO2、Cr23、α−Al23、β−Al23、γ−Al23、α−Fe23、ゲーサイト(goethite)、コランダム、窒化珪素、炭化チタン、酸化マグネシウム、窒化硼素、硫化モリブデン、酸化銅、MgCO3、CaCO3、BaCO3、SrCO3、BaSO4、炭化珪素及び炭化チタンが挙げられる。これらの化合物は別々に又は互いに組み合わさって存在することができ、形状及び大きさに制限はない。これらの化合物は純粋な形態で存在する必要はないが、他の化合物又は成分で表面処理することができる。有機充填剤、例えばポリエチレン又はポリプロピレンも使用できる。
【0050】
非磁性及び非着磁性基材は重要ではなく、その例としては常用の硬質又は軟質基材、特に、厚さが一般には4〜200ミクロン、特に6〜36ミクロンのポリエチレンテレフタレートような線状ポリエステルのフィルムが挙げられる。最近では、電子計算機及び計数機用の紙基材上への磁性層の使用が重要になり;ここでも本発明の結合剤が有利に使用できる。
【0051】
本発明のポリウレタンを用いた磁気記録媒体は当業者に知られた任意の方法で製造できる。例えば磁性顔料分散液は、分散装置、例えばチューブ状ボールミル又は撹拌ボールミル中で、磁性材料及びバインダーから、場合によっては潤沢剤及び分散剤を用いて製造できる。次いで、ポリイソシアネート架橋剤の混合及び場合によっては濾過後に、常用の被覆装置、例えばナイフコーターによって分散液を非磁性基材に適用する。磁気配向は、液体被覆混合物を基材上で乾燥させた後に実施するのが有利であり、この乾燥は約50〜約90℃において約10〜約200秒間の間に行うのが有利である。磁性層は常用の装置上で、必要ならば圧力を加えて約25〜約100℃、好ましくは約60〜約90℃において、熱ロールと磨きロールとの間に通すことによってカレンダー仕上げ及び圧縮することができる。架橋バインダーの場合には、架橋の完了前にカレンダー仕上げを実施するのが好ましい。これは非架橋の状態のヒドロキシル含有ポリマーは非常に可塑性であって、粘着性がないためである。磁性層の厚さは一般に約0.5〜約20ミクロン、好ましくは約1〜約10ミクロンである。磁気テープの製造の場合には、被覆フィルムは、通常の幅に縦方向に細長く切る。
【0052】
本発明の好ましい一側面において、磁気記録媒体に使用するポリウレタンは、ハードセグメントBとソフトセグメントAとが−A−B−A−B−A−の形態で交互にブロック構造を有する熱可塑性ブロックコポリウレタンである。熱可塑性ブロックコポリウレタンは、例えば構造A−B−A[式中、これらの個々のブロックは別個のミクロ相として存在する]を有することができる。熱可塑性ブロックコポリウレタンは、所定の温度又は所定の温度範囲内に軟化点又は軟化点範囲を有する。軟化点又は軟化点範囲より高温では、ポリウレタンは可塑的に変形可能であり、軟化点又は軟化転移範囲より低い温度に戻すと、ポリウレタンは、塑性状態で製造された形態を保ち、熱硬化性プラスチックと本質的に同様な挙動を示す。
【0053】
本発明によれば、ハードセグメント(B)は望ましくは少なくとも約20℃、好ましくは少なくとも約40℃、より好ましくは少なくとも約50℃超のガラス転移温度を有するのが望ましく、ハードセグメントに供給結合されるソフトセグメント(A)は約20℃より低いガラス転移温度を有する。
【0054】
本発明によれば、ポリウレタンはイオン性又は非イオン性の極性化合物と相互作用できる任意の官能基を含むアンカー基を有する。詳細には、アンカー基は、無機充填材の表面と、特に無機磁性又は着磁性粒子の表面と相互作用できるそのような官能基を意味するものと解する。本発明によれば、磁気記録媒体中に使用できる熱可塑性ブロックコポリウレタンはアンカー基として少なくとも1個のスルホネートを含む。少なくとも一部のスルホネート基がスルホネート官能性ポリエステルポリオールによって提供されるのが好ましい。アンカーとして働くことができる他の官能基としては、例えばカルボキシル基、他のスルホ基、ホスホン酸基、燐酸基又はこのような基の塩が挙げられる。
【0055】
本発明のポリウレタンは、1つ又はそれ以上のソフトセグメント(A)中にのみ若しくは1つ又はそれ以上のハードセグメント(B)中にのみ、又は1つもしくはそれ以上のソフトセグメント(A)及び1つもしくはそれ以上のハードセグメント(B)の両方にアンカー基を有することができる。ソフトセグメント(A)中のアンカー基の数はハードセグメント(B)中のアンカー基の数よりも多くすることができる。例えばハードセグメント(B)中のアンカー基の数に対するソフトセグメント(A)中のアンカー基の数の比は、約1000:1〜約100:1又はそれ以下、例えば約10:1〜約1.5:1であることができる。逆にソフトセグメント(A)中のアンカー基の数に対するハードセグメント(B)中のアンカー基の数の比は、同様に、約1000:1〜約100:1又はそれ以下、例えば約10:1〜約1.5:1であることができる。
【0056】
本発明の好ましい一側面において、熱可塑性ポリウレタンのハードセグメント(B)中に存在するアンカー基の数は、ソフトセグメント(A)中に存在するアンカー基の数よりも多い。本発明の好ましい一実施態様において、ポリウレタン中に存在するハードセグメント(B)の総数中の、存在するアンカー基の数は、ソフトセグメント(A)中のアンカー基の総数よりも少なくとも約5倍、好ましくは少なくとも約10倍大きい。本発明の更に好ましい側面において、前記新規熱可塑性ポリウレタンは、ソフトセグメント(A)中にほとんどアンカー基を有さない。
【0057】
本発明の好ましい一実施態様において、ソフトセグメント(A)は、約−50℃〜約20℃のガラス転移温度を有する。本発明の更に好ましい側面において、ソフトセグメント(A)のガラス転移温度は約−30℃〜約0℃である。熱可塑性ポリウレタンの望ましい機械的性質を保証するためには、ソフトセグメント(A)は望ましくは約500〜約25,000g/モルの分子量を有する。本発明の好ましい一側面において、ソフトセグメント(A)は約1000〜約10,000g/モル、より好ましくは約1000〜約7000g/モルの分子量を有する。
【実施例】
【0058】
本発明を以下の実施例に基づいて説明する。これらの実施例は、添付した「特許請求の範囲」の範囲を限定することを目的としない。特に断らない限り、全ての部及び百分率は重量に基づくものである。
【0059】
実施例1
不飽和ポリオールの製造
乾燥窒素のスパージ下において無水マレイン酸166.7g及び1,6−ヘキサンジオール401.8gを含む、水冷式蒸留凝縮器、熱電対及び機械的撹拌機を装着した4つ口ガラス反応器を、30分間にわたって155℃に加熱する。次いで、Elf Atochem North America,Inc.(Philadelphia,PA)によってFascat(商標)4100として販売されているブチル錫ヒドロキシドオキシド触媒0.227を反応器に添加する。30分間にわたって200℃まで徐々に昇温させ、合計32.37gの水を蒸留によって集める。
【0060】
実施例2
スルホネート官能性ポリオールの製造
実施例1の反応生成物を111℃まで冷却する。次いで、蒸留水420.25g中の無水亜硫酸水素ナトリウム(NaHSO3) 176.90gの透明な溶液を反応器に添加する。窒素スパージを中断し、混合物を80℃に加熱し、同温度に20時間保つ。次に、混合物の加熱を再開し、温度を徐々に167℃まで上昇させる。160℃より高温では、水が留去され、2時間後には393.44gの水が反応器上部から蒸留される。混合物の温度を150℃に低下し、真空下に置き、真空を徐々に8mmHgまで低下させる。15分後、水が更に11.0g蒸留する。混合物を125〜150℃において貯蔵容器に排出する。
【0061】
実施例3
スルホネート官能性ポリエステルポリオールの製造
実施例2からの反応生成物(639.2g)を5リットルの4つ口反応フラスコに入れ、それにε−カプロラクトン(The Dow Chemical CompanyからのTONE(商標)ECEQモノマー)2392.6gを添加する。混合物を45分間、乾燥窒素ブリードを用いて12mmHgの真空下で85℃において撹拌しながら加熱して、水分を除去する。混合物を30分間にわたって140℃に加熱し、ジブチル錫ジラウレート[Air Products and Chemicals,Inc.(Allentown,PA)からのDabco(商標)T−12]のTONE ECEQモノマー中1重量%溶液をシリンジによって添加する。カプロラクトンの消費を、反応全体を通してガスクロマトグラフィーによって追跡する。反応混合物を140℃において24時間加熱し、次いでオクタン酸第一錫触媒(Dabco T−9)0.0934gを添加する。加熱を更に45時間続ける。温度を徐々に160℃まで上昇させ、更に4時間加熱する。その時点で未反応カプロラクトン濃度(GC)は1.0重量%未満に低下している。生成物を冷却し、滴定によって特性決定をすると、酸価が0.50及びヒドロキシル価が52.1であることがわかる(2154g/モルの数平均分子量の計算値を示す)。プロトン及びC−13 NMR分析は、予測される化学構造と一致したピークを示す。ポリオールの多分散度(ゲル透過クロマトグラフィー「GPC」分析によって測定)は1.54である。
【0062】
実施例4
共沸溶剤の使用
この実施例は、水の除去を助けるために共沸溶剤を使用することを示す。第1工程(不飽和ジオールの製造)を、以下の原料を用いて実施例1の方法に従って行う。
【0063】
無水マレイン酸 402.3g
1,6−ヘキサンジオール 968.4g
Fascat 4100 0.549g
【0064】
第1工程からの反応混合物を82℃まで冷却し、無水亜硫酸水素ナトリウム(NaHSO3)425.1gの蒸留水1638g中の透明溶液を反応器に添加する。窒素スパージを中断し、混合物を80℃において7時間、次いで50℃において18時間加熱する。温度を3時間にわたって徐々に151℃まで上昇させる。その時点で、1570gの水が上部から蒸留する。この反応混合物にトルエン(317.6g)を添加し、Dean−Starkトラップ及び直立凝縮器をこの装置に加えて、共沸蒸留によって残りの水を全て回収する。混合物を116℃に加熱し、2時間にわたってDean−Starkトラップ中に水が更に42.8g回収される。温度を140℃に上昇させ、2時間の間に上部からトルエンを全て蒸留する。反応混合物を反応器から熱いまま排出し、冷却する。
【0065】
前記工程からの反応生成物(431.1g)を、5リットルの4つ口反応フラスコに入れ、これにε−カプロラクトン(TONE ECEQモノマー)584.07gを添加する。混合物を30分間、乾燥窒素ブリードを用いて20mmHgの真空下で80℃において撹拌しながら加熱して、全ての残留トルエン及び水分を除去する。混合物を20分間にわたって140℃に加熱し、オクタン酸第一錫触媒(Dabco T−9)のTONE ECEQモノマー中1重量%溶液をシリンジによって添加する。カプロラクトンの消費を、反応全体を通してガスクロマトグラフィーによって追跡する。反応混合物を140℃において20時間加熱し、1%オクタン酸第一錫触媒溶液を更に1.0g添加する。混合物を更に32時間加熱する。この時点で、不飽和カプロラクトン濃度(GC)は1.0重量%未満まで低下している。生成物を熱いまま反応器から排出し、冷却し、滴定によって特性決定をすると、酸価が0.71及びヒドロキシル価が103であることがわかる。プロトン及びC−13 NMR分析は、予測される化学構造と一致したピークを示すと共に、概算数平均分子量1105を示した。GPC分析によるポリオールの多分散度は1.82である。
【0066】
実施例5
スルホネート官能性ポリエステルポリオールの製造
最終スルホン化ポリエステルポリオールを製造するための反応を反応過程全体において160℃で実施すること、最初の触媒装填材料がジブチル錫ジラウレート触媒(Dabco T−12)のTONE ECEQモノマー中1重量%溶液3.05gであること、及び5.5時間後にオクタン酸第一錫触媒(Dabco T−9)のTONE ECEQモノマー中1重量%溶液3.05gの追加の触媒装填材料を添加することを除いては、実施例4の最後の工程の方法に従って、スルホン化ポリエステルポリオールを製造する。これらの変化によって、スルホネート官能性ポリエステルポリオールの製造に必要な全反応時間が25時間という比較的短時間になる。得られる生成物を滴定によって特性決定し、酸価が1.4及びヒドロキシル価が42.7であることがわかる。
【0067】
実施例6
スルホネート官能性ポリエステルポリオールの製造
以下の量の原料を最初の2工程に用いる以外は、実施例1〜3の方法に従って、スルホン化ポリエステルポリオールを製造する。
【0068】
無水マレイン酸 147.1g
1,6−ヘキサンジオール 354.5g
Fascat 4100 0.200g
亜硫酸水素ナトリウム 152.8g
水 365g
【0069】
第2工程からの生成物全てを第3工程に持ち越し、そこでε−カプロラクトン846.7gを用いる。この実施例においては、3工程で1つの触媒のみを、即ち、オクタン酸第一錫触媒(Dabco T−9)のTONE ECEQモノマー中1重量%溶液8.82gのみを用いる。触媒は、反応の始めに160℃に加熱した後に添加し、反応が完了するまで160℃の温度を保持する。これらの条件によって、反応時間が22時間という比較的短い時間となり、ヒドロキシル価83.5及び酸価0.69のスルホネート官能性ポリエステルポリオールが生成する。
【0070】
実施例7
スルホネート官能性ポリエステルポリオールの製造
トルエンを用いない以外は実施例4の方法に従って、スルホン化ポリエステルポリオールを製造する。代わりに、不飽和ジオール製造の間に、Fascat 4100触媒の添加後にExxon Mobil CorporationからのSolvesso(商標)100を200g添加して、水を除去する。Solvesso 100はその後、スルホン化ジオール製造工程の最後に水の除去後に減圧蒸留によって除去する。
【0071】
実施例8
チタンアルコキシド触媒を用いた全製造
(a)不飽和ポリオールの製造
乾燥窒素スパージ下において無水マレイン酸73.54g及び1,6−ヘキサンジオール194.39gを含む、熱電対、水冷式蒸留凝縮器及び機械的撹拌機を装着した4つ口ガラス反応器を30分間にわたって155℃に加熱し、次いでブチル錫ヒドロキシドオキシド触媒[Elf Atochem North America,Inc.(Philadelphia,PA)によってFascat(商標)4100として販売]0.100gを反応器に添加する。30分間にわたって徐々に200℃まで昇温させ、合計13.09gの水を2時間の間に蒸留によって回収する。反応混合物を100℃未満まで冷却し、酸価滴定によって分析し、酸価が0.188であることがわかる。
【0072】
(b)スルホネート官能性ポリオールの製造
無水亜硫酸水素ナトリウム(NaHSO3)74.75gの蒸留水182g中透明溶液を反応器に加える。窒素スパージを中断し、混合物を80℃において18時間加熱する。窒素スパージ及び混合物の加熱を再開し、温度を徐々に160℃まで上昇させる。水を2時間の間に留去し、水162gを回収する。混合物を150℃まで冷却し、部分真空下に置く。圧力を9mmHgまで徐々に低下させて、反応混合物を30分間更に乾燥させる。
【0073】
(c)スルホネート官能性ポリエステルポリオールの製造
反応混合物の温度を85℃に低下させ、これにε−カプロラクトン(TONE ECEQモノマー)432.43gを添加する。混合物を45分間、乾燥窒素ブリードを用いて12mmHgの真空下で撹拌して、水を除去する。混合物を30分間にわたって160℃まで加熱し、次いで新しく製造したチタンテトラブトキシド[E.I.DuPont de Nemours,Inc.(Wilmington,DE)からのTyzor(商標)TBT]のTONE ECEQモノマー中1重量%溶液2.25gをシリンジによって添加する。カプロラクトンの消費を、反応全体を通してガスクロマトグラフィーによって追跡する。反応混合物を160℃において5時間加熱する。その時点で、未反応カプロラクトン濃度(GC)は0.5重量%まで低下する。生成物を冷却し、滴定によって特定し、酸価が0.33及びヒドロキシル価が115であることがわかる(976g/モルの数平均分子量計算値を示す)。
【0074】
実施例9
スルホネート官能性ポリエステルポリオールの製造
この実施例は、カプロラクトンとの更なる反応によってより低分子量のスルホネート官能性ポリエステルポリオールから、より高分子量のスルホネート官能性ポリエステルポリオールを得る方法を示す。
【0075】
実施例4のスルホン化ポリエステルポリオール(170g)を3リットルのフラスコに入れ、ε−カプロラクトン(TONE ECEQモノマー)1530gを添加する。混合物を撹拌しながら乾燥窒素スパージ下で80℃において2時間加熱して、残留水分を除去する。次いで、混合物を140℃に加熱し、Fascat 4100触媒0.32gを容器に装填する。未反応カプロラクトンがガスクロマトグラフ分析によって1重量%未未満に減少するまで、混合物を加熱する。次いで、生成物を110℃まで冷却し、貯蔵容器中に排出する。生成物の分析は、ヒドロキシル価が9.85、酸価が0.59、含水量が0.25ppm、GPC多分散度が2.8及び80℃におけるBrookfield粘度(“#21スピンドル;1rpm)が88,000センチポアズであることを示す。これらのデータは、数平均分子量が約10,000(追加カプロラクトンの添加前の出発原料の数平均分子量の約10倍)の目的とするスルホン化ポリエステルポリマーの形成と一致している。
【0076】
実施例10
磁気媒体用ポリウレタンバインダーの製造
機械的撹拌機、熱電対及び凝縮器を装着した1.5リットルのガラス反応器に、トルエンジイソシアネート113.6g(0.65モル)、塩化ベンゾイル0.3g及びテトラヒドロフラン353.8gを装填する。反応器をN2雰囲気下で50℃に加熱する。加熱マントル及び熱電対(Model PT−100,Eurotherm Ltd.,Worthing,West Sussex,UK)を用いて、反応温度をJulabo LC1制御装置(Model Julabo LC1,Julabo Labortechnik GmbH,Seelbach,Germany)によって制御する。激しく撹拌しながら、実施例1〜3に従って製造したスルホネート官能性ポリエステルポリオール0.33モルを、TDI/THF混合物にゆっくりと添加する。混合物を4時間反応させる。添加及び熟成の間に、凝縮器を−5℃まで冷却する。熟成後、混合物を反応器から回収する(生成物A)。
【0077】
別のガラス反応器(前記と同様)中で、トリメチロールプロパン84.5g(0.65モル)及びジブチル錫ジラウレート0.3gをテトラヒドロフラン164.2g中に溶解させ、N2雰囲気下で50℃まで加熱する。激しく撹拌しながら、生成物Aをゆっくりと添加する。反応の間に頻繁に赤外線スペクトルを記録する。イソシアネート官能基(〜2270cm-1)に関する吸光度が中間赤外線スペクトル中にもはや存在しなくなるまで、反応を進行させる。全反応時間は約1時間である。この後、バインダー生成物(生成物B)をTHF中50%溶液として回収する。
【0078】
生成物Bは、エーテル臭(溶媒による)を有する、黄色〜茶色の液体である。これは、末端基分析(OH滴定)によって測定した分子量が1800g/モルであり、ヒドロキシル濃度が3.8重量%OHである。
【0079】
本発明の具体的な側面に関して説明したが、当業者ならば、添付した「特許請求の範囲」の範囲内に他の側面も含まれることが意味されることがわかるであろう。例えば各種類の反応体からの2つ又はそれ以上の種、例えば無水マレイン酸及びフマル酸、又は1,4−ブタンジオール若しくは1,6−ヘキサンジオールを用いてスルホネート官能性ポリエステルポリオールを製造することができる。本明細書中に引用した文献の教示は、引用することによって本明細書中に取り入れるものとする。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
(i)不飽和ポリカルボン酸又はその誘導体;(ii)ポリオール;(iii)ラクトン;及び(iv)スルホン化剤を含んでなる反応体から得られる、前記不飽和ポリカルボン酸又はその誘導体がスルホネート官能性を実質的に有さないことを特徴とするスルホネート官能性ポリエステルポリオール。
【請求項2】
約50番より低い色を有する請求項1に記載のスルホネート官能性ポリエステルポリオール。
【請求項3】
前記不飽和ポリカルボン酸又はその誘導体が分子当たり約0.1当量より小さいスルホネート官能基平均濃度を有する請求項1に記載のスルホネート官能性ポリエステルポリオール。
【請求項4】
前記不飽和ポリカルボン酸又はその誘導体がマレイン酸、フマル酸、イタコン酸、メサコン酸、シトラコン酸、ムコン酸、これらの酸の無水物及びそれらの任意の混合物からなる群から選ばれる請求項1に記載のスルホネート官能性ポリエステルポリオール。
【請求項5】
前記ラクトンがε−カプロラクトン又はメチルε−カプロラクトンである請求項1に記載のスルホネート官能性ポリエステルポリオール。
【請求項6】
ポリイソシアネート及び請求項1に記載のスルホネート官能性ポリエステルポリオールを含む反応体から得られたポリウレタン。
【請求項7】
式:
【化1】

[式中、R1は炭素数約2〜約14の三価炭化水素基であり;
+は正電荷を有する対イオンであり;
xは約2〜約80であり;
nは約2〜約17であり;
2は炭素数約2〜約12の二価炭化水素基である]
を有し、約50番より低い色を有することを特徴とするスルホネート官能性ポリエステルポリオール。
【請求項8】
約25番より低い色を有する請求項7に記載のスルホネート官能性ポリエステルポリオール。
【請求項9】
約450〜約10,000g/モルの分子量を有する請求項7に記載のスルホネート官能性ポリエステルポリオール。
【請求項10】
(a)スルホネート官能性を実質的に有さない不飽和ポリカルボン酸又はその誘導体をポリオールと反応させて不飽和ポリオールを生成せしめ;(b)前記不飽和ポリオールをスルホン化剤と反応させてスルホネート官能性ポリオールを生成せしめ;(c)前記スルホネート官能性ポリオールをラクトンと反応させてスルホネート官能性ポリエステルポリオールを生成せしめることを含んでなる淡色のスルホネート官能性ポリエステルポリオールの製造方法。
【特許請求の範囲】
【請求項1】
(i)マレイン酸、フマール酸、イタコン酸、メサコン酸、シトラコン酸、ムコン酸及び前記酸の無水物並びにこれらの任意の混合物からなる群から選ばれる不飽和ポリカルボン酸又はその誘導体;(ii)炭素数約2〜12の脂肪族ジオール;(iii)ラクトン;及び(iv)スルホン化剤を含んでなる反応体から得られる、前記不飽和ポリカルボン酸又はその誘導体がスルホネート官能性を実質的に有さないことを特徴とするスルホネート官能性ポリエステルポリオール。
【請求項2】
約50番より低い色を有する請求項1に記載のスルホネート官能性ポリエステルポリオール。
【請求項3】
前記不飽和ポリカルボン酸又はその誘導体が分子当たり約0.1当量より小さいスルホネート官能基平均濃度を有する請求項1に記載のスルホネート官能性ポリエステルポリオール。
【請求項4】
前記ラクトンがε−カプロラクトン又はメチルε−カプロラクトンである請求項1に記載のスルホネート官能性ポリエステルポリオール。
【請求項5】
ポリイソシアネート及び請求項1に記載のスルホネート官能性ポリエステルポリオールを含む反応体から得られたポリウレタン。
【請求項6】
式:
【化1】

[式中、R1は炭素数約2〜約8の三価脂肪族炭化水素基であり;
+は正電荷を有する対イオンであり;
xは約2〜約80であり;
nは約2〜約17であり;
2は炭素数約2〜約12の二価炭化水素基である]
を有し、約50番より低い色を有することを特徴とするスルホネート官能性ポリエステルポリオール。
【請求項7】
約25番より低い色を有する請求項6に記載のスルホネート官能性ポリエステルポリオール。
【請求項8】
約450〜約10,000g/モルの分子量を有する請求項6に記載のスルホネート官能性ポリエステルポリオール。
【請求項9】
(a)スルホネート官能性を実質的に有さない、マレイン酸、フマール酸、イタコン酸、メサコン酸、シトラコン酸、ムコン酸及び前記酸の無水物並びにこれらの任意の混合物からなる群から選ばれる不飽和ポリカルボン酸又はその誘導体をポリオールと反応させて不飽和ポリオールを生成せしめ;(b)前記不飽和ポリオールをスルホン化剤と反応させてスルホネート官能性ポリオールを生成せしめ;(c)前記スルホネート官能性ポリオールをラクトンと反応させてスルホネート官能性ポリエステルポリオールを生成せしめることを含んでなる淡色のスルホネート官能性ポリエステルポリオールの製造方法。

【公表番号】特表2006−509074(P2006−509074A)
【公表日】平成18年3月16日(2006.3.16)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2004−557355(P2004−557355)
【出願日】平成15年11月25日(2003.11.25)
【国際出願番号】PCT/US2003/037877
【国際公開番号】WO2004/050741
【国際公開日】平成16年6月17日(2004.6.17)
【出願人】(502141050)ダウ グローバル テクノロジーズ インコーポレイティド (1,383)
【Fターム(参考)】