説明

スーパーオキシドアニオン分析用試薬

従来技術の問題点を解消し、高い検出感度、長波長領域での発光、タンパク質・脂質や糖鎖等の成分による発光に対する影響の低減化、水溶性の向上、高い精度での分析等の特性を有するスーパーオキシドアニオンを検出するためのスーパーオキシドアニオン分析用試薬とその製造法およびそれを用いたスーパーオキシドアニオンの分析方法を提供することを目的とする。シクロデキストリン分子にフルオレセイン分子およびイミダゾ[1,2−a]ピラジン−3(7H)−オン分子が共に共有結合した化合物によって、上記目的を達成することができる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
本発明は、スーパーオキシドアニオンの分析に関するものである。さらに詳しくは、本発明は、シクロデキストリン分子に、発光試薬(例えば、フルオレセイン分子およびイミダゾ[1,2−a]ピラジン−3(7H)−オン分子)が共に共有結合した化合物を有効成分として含有するスーパーオキシドアニオン分析用試薬とその製造法およびそれを用いたスーパーオキシドアニオンの分析方法に関するものである。
【背景技術】
スーパーオキシドアニオンは活性酸素の一種であり、生体での解毒活性をはじめとする生理活性作用を有している。一方、過剰なスーパーオキシドアニオンは正常な部位を破壊するため、癌化や老化を招く。このような機能を持つスーパーオキシドアニオンの生体での分析は重要であり、これまでに比色法、蛍光法、ESR法が用いられてきた。しかし、これらの方法は、感度が低いことに加え、被検体を破壊して分析するため好ましい分析法とはいえない。これに対し、近年になって開発されてきた発光法は、感度がよく、かつ被検体を非破壊的に分析することができる。
発光法に用いられる発光試薬としては、2−メチル−6−フェニルイミダゾ[1,2−a]ピラジン−3(7H)−オン(CLA:下図化合物A)、2−メチル−6−(4−メトキシフェニル)イミダゾ[1,2−a]ピラジン−3(7H)−オン(MCLA:下図化合物B)、3,7−ジヒドロ−6−[4−[2−[N’(5−フルオレセイニル)チオウレイド]−エトキシ]フェニル]−2−メチルイミダゾ[1,2−a]ピラジン−3(7H)−オン(FCLA:下図化合物C)が知られている(例えば東京化成工業株式会社/東京化成販売株式会社)。

CLAの最大発光波長は約380−410nmであり、MCLAの最大発光波長は約420−460nmであり、FCLAの最大発光波長は約520−540nmである。生体のスーパーオキシドアニオン分析では他の成分の影響が少ない方が望ましいことから、より長波長域での発光が望まれる。このため、長波長域の発光を示すFCLAがよいとされる。また、CLA、MCLA、およびFCLAのうち、発光強度はMCLAがもっとも強く、生体のスーパーオキシドアニオン分析では発光強度が高い方が望ましいことから、発光強度の点ではMCLAがよいとされる。従って、MCLAとFCLAの両化合物の良い特性を兼ね備えた、すなわち、高い発光強度を有し、かつ発光波長が長波長領域であるという特性を有した発光分析試薬の創製が望まれる。更に好ましくは、MCLAおよびFCLAよりも発光強度が高く、しかも、さらなる長波長領域(例えば、オレンジ色や赤色の発光)での発光を示す発光試薬が望まれる。また、CLA、MCLA、FCLAの発光は、生体中のタンパク質、脂質や糖鎖等の成分による影響を受けやすいため、スーパーオキシドアニオンの分析精度が低いと言う問題がある。また、CLA、MCLA、FCLAは水溶性が低いために、被検体系への注入が困難であり、加えて細胞表面等への吸着が生じ易く有効に作用できずに発光性能が低下するという問題がある。
本発明は、以上のとおりの事情に鑑みてなされたものであり、その目的は、従来技術の問題点を解消し、高い検出感度、長波長領域での発光、タンパク質・脂質や糖鎖等の成分による発光に対する影響の低減化、水溶性の向上、高い精度での分析等の特性を有するスーパーオキシドアニオンを検出するためのスーパーオキシドアニオン分析用試薬とその製造法およびそれを用いたスーパーオキシドアニオンの分析方法を提供することである。
【発明の開示】
本発明者は、鋭意研究の結果、上記の課題を解決するものとして、第一の発明は、第1図に示す化合物(13)及び(14)(但し、Mは5〜14の整数、nは0〜(M−1)の整数、R〜R、及びR〜R13は、HまたはC〜C20のアルキル基、アルケニル基、アルキニル基、フェニル基、ヒドロキシル基、アルキルヒドロキシル基、ベンジル基、アリール基、ハロゲン基、ニトロ基、シアノ基、スルホニル基、カルボニル基、アミノ基、ナフチル基、インドリル基のうちの一つであり、XおよびYは、0〜20の整数、Rは、0〜4個の置換度によるフェニル環である)を有効成分として含有することを特徴とするスーパーオキシドアニオン分析用試薬である。この化合物は、一つのシクロデキストリン分子内に、スーパーオキシドと反応する分子と、そこで生じたエネルギーを受け取って発光する分子との両分子を含むものであり、スーパーオキシドアニオンを良好に分析することができる。
なお、シクロデキストリンとは、D−グルコピラノースがα1→4結合した非還元性の環状オリゴ糖であり、グルコピラノース6分子、7分子、8分子からなるものをそれぞれα−、β−、γ−シクロデキストリンと称する。本発明のシクロデキストリンとしては、これらα〜γ−シクロデキストリンの他に、グルコピラノースが9分子〜15分子結合した環状性のオリゴ糖を用いることができるが、好ましくは、グルコピラノースが6分子〜8分子のα−、β−、γ−シクロデキストリンであり、更に好ましくはγ−シクロデキストリンである。
また、第二の発明は、少なくとも、シクロデキストリン分子にフルオレセイン分子およびイミダゾ[1,2−a]ピラジン−3(7H)−オン分子が共に共有結合した化合物を有効成分として含有することを特徴とするスーパーオキシドアニオン分析用試薬であり、その化合物は、第2図の式(15)及び(16)(ただし、Mは5〜7の整数、nは0〜(M−1)の整数である)で表されるシクロデキストリン分子にフルオレセイン分子およびイミダゾ[1,2−a]ピラジン−3(7H)−オン分子が共に共有結合した化合物であることが好ましい。このうち、好ましくは、M=7であるとき、すなわちγ−シクロデキストリン分子にフルオレセイン分子およびイミダゾ[1,2−a]ピラジン−3(7H)−オン分子が共に共有結合した化合物を有効成分として含有するスーパーオキシドアニオン分析用試薬である。
また、第三の発明は、シクロデキストリン分子にフルオレセイン分子およびイミダゾ[1,2−a]ピラジン−3(7H)−オン分子が共に共有結合した化合物(15)及び(16)の製造方法を提供する。
第四の発明は、前記のスーパーオキシドアニオン分析用試薬を検体溶液と接触させた後、発光強度を測定することを特徴とするスーパーオキシドアニオンの分析方法を提供する。
本発明によれば、スーパーオキシドアニオンの分析を簡便かつ精度高く行なうためのスーパーオキシドアニオン分析用試薬、及びその製造法さらには分析方法が提供される。この発明のスーパーオキシドアニオン分析用試薬は、水溶性であり、スーパーオキシドアニオンと反応して高い発光強度を示す。また、最大発光波長約530nmであることから、他成分の影響が少なく、効率的なスーパーオキシドアニオンの分析が可能となる。
【図面の簡単な説明】
第1図は、本発明に係る化合物(13)及び(14)を示す化学構造式である。
第2図は、本発明に係る化合物(15)及び(16)を示す化学構造式である。
また、第3図は、化合物(15)及び(16)において、M=7のときの化合物(1)及び(2)を製造する手順を説明したものである。
【発明を実施するための最良の形態】
発明者は、これまで、シクロデキストリンにMCLAを共有結合させた化合物の合成やその発光反応について報告している(例えば、Carbohydr.Rese.,306,177−187(1998).Luminescence,14,303−314(1999).特開平10−77286)。
発明者は、これらの知見をもとに鋭意研究を進めた結果、シクロデキストリン分子にスーパーオキシドアニオンと反応する分子(例えば、イミダゾ[1,2−a]ピラジン−3(7H)−オン分子、又はその誘導体)、およびその物質からのエネルギーを受け取って発光する分子(例えば、フルオレセイン分子、又はその誘導体)が共有結合した化合物を発光剤として用いることにより、検体中のスーパーオキシドアニオンを検出できることを見い出し、本発明に至ったものである。
本発明のスーパーオキシドアニオン分析用試薬は、少なくともシクロデキストリン分子にイミダゾ[1,2−a]ピラジン−3(7H)−オン分子およびフルオレセイン分子が共有結合した化合物を含有することを特徴とするものである。
具体的には、本発明のスーパーオキシドアニオン分析用試薬に用いられるシクロデキストリン分子にイミダゾ[1,2−a]ピラジン−3(7H)−オン分子およびフルオレセイン分子が共有結合した化合物は、図1の式(1)および(2)のものが好ましく例示される。
本発明のスーパーオキシドアニオン分析用試薬は、水溶性であり、スーパーオキシドアニオンと反応して最大発光波長が約530nmの緑色の発光を示し、かつ、MCLAおよびFCLAよりも高い発光強度を示し(FCLAの約100倍の発光強度)、さらには、タンパク質や脂質などの生体成分の影響を受けにくいため、有効成分として好ましい。
本発明においてスーパーオキシドアニオン分析用試薬の有効成分として使用されるシクロデキストリン分子にフルオレセイン分子およびイミダゾ[1,2−a]ピラジン−3(7H)−オン分子が共に共有結合した化合物は、以上のとおりのものであり、その製造法を提供する。例えば、第3図に示した以下の方法がある。既知の方法(例えば、特開平10−77303、Biosci.Biotech.Biochem.,1998、62,1249−1252)より合成されるモノ−2−O−トシル−γ−CDのアルカリ処理により得られた既知物質モノマンノエポキシ−γ−シクロデキストリン(Bull.Chem.Soc.Jpn.,1990,63,1409−1414)をピリジン中でm−ニトロベンゼンスルホニルクロリドと反応させ、6位水酸基にニトロベンゼンスルホニル基を結合させた新規化合物3および4を得る。本化合物には8個の異性体が存在するがこれら8個の異性体の分離を行なわず8個の異性体の混合物すなわち化合物3および4の混合物として以後の反応を進める。6−O−ニトロベンゼンスルホニル−γ−シクロデキストリン(3及び4)をDMF中、アジ化ナトリウムと反応させ、6位にアジド基を導入し新規化合物(5)および化合物(6)を合成する。次に接触水素添加によりアジド基を還元し新規化合物(7)および化合物(8)の混合体を得る。次に化合物(7)および化合物(8)の混合体をフルオレセインイソチオシアナートと反応させ、新規化合物(9)および化合物(10)の混合体を得る。続いて化合物(9)および化合物(10)の混合体をアンモニア水と反応させることによりエポキシを開環し、3位にアミノ基を導入した新規化合物(11)および化合物(12)の混合体を得る。続いて化合物(11)および化合物(12)の混合体をMCLA−COOHとアミド結合させ、目的とする新規化合物(1)および化合物(2)の混合体を得る。もちろんこれ以外の方法によって合成されるものであってもよく、上記例によって、限定されるものではない。
さらに、本発明のスーパーオキシドアニオン分析用試薬は、以上のとおりのシクロデキストリン分子にフルオレセイン分子およびイミダゾ[1,2−a]ピラジン−3(7H)−オン分子が共に共有結合した化合物を有効成分とするものであれば、その他の物質、例えば、溶剤、緩衝剤、安定剤、界面活性剤などを含有していてもよい。
そして、本発明は、以上の通りのスーパーオキシドアニオン分析用試薬を用いてスーパーオキシドアニオンを検出する方法をも提供する。すなわち、本発明のスーパーオキシドアニオン分析用試薬を検体溶液に添加、混合するなどして接触させ、シクロデキストリン分子にイミダゾ[1,2−a]ピラジン−3(7H)−オン分子およびフルオレセイン分子が共有結合した化合物によって発せられる光の強さを測定することによりスーパーオキシドアニオンを簡便に分析することが可能となるのである。
この時、添加するスーパーオキシドアニオン分析試薬の量等の分析条件は特に限定されない。具体的には、スーパーオキシドアニオン分析試薬の濃度は、分析系に影響を与えない程度であればよい。また、スーパーオキシドアニオン分析は、被検体に影響を与えない温度範囲で行なえばよい。例えば、一般に生体を被検体とし、水溶液中で分析を行なう場合には、約10−40℃の温度範囲が好ましく例示される。
本発明のスーパーオキシドアニオンの分析方法において用いられるスーパーオキシドアニオン分析試薬の有効成分であるシクロデキストリン分子にフルオレセイン分子およびイミダゾ[1,2−a]ピラジン−3(7H)−オン分子が共に共有結合した化合物は、水溶性であるため血液や血清、あるいは細胞培養液等にも溶解できる上、タンパク質や脂質、糖の存在においてもその発光反応に影響を与えない。また、発光波長は、最大波長約530nmであるため他成分の影響が小さい。さらに、発光強度がCLA,MCLA,FCLAに比べて非常に高い。従って、このようなシクロデキストリン分子にフルオレセイン分子およびイミダゾ[1,2−a]ピラジン−3(7H)−オン分子が共に共有結合した化合物は、従来のCLA,MCLA,FCLAなどのスーパーオキシドアニオン分析用試薬に比べ、高い精度でのスーパーオキシドアニオンの分析を可能とする。
以下、実施例を示し、この発明の実施の形態についてさらに詳しく説明する。もちろん、本発明は以下の例に限定されるものではなく、その要旨を変更しない範囲内で様々な態様で実施することが可能である。加えて、本発明の技術的範囲は、いわゆる均等の範囲にまで及ぶものである。
【実施例】
【実施例1】
KCl(ナカライテスク株式会社製)(0.2M)、EDTA(SIGMA社製)(0.1mM)、3−モルホリノプロパンスルホン酸(MOPS、ナカライテスク株式会社製)(20mM)を含む緩衝水溶液(pH7.2、0.5ml)に25℃でヒポキサンチン(和光純薬工業株式会社製)水溶液(0.3mM、0.5ml)、化合物(1)および化合物(2)の混合水溶液(2.5x10−5M、40μl)およびキサンチンオキシダーゼ(SIGMA社製)水溶液(0.37unit/ml、40μl)を加え、アロカルミネッセンスリーダーBL201(アロカ社製)を用いて発光強度を測定した。発光はキサンチンオキシダーゼ水溶液の添加後、すぐに最高強度を示した。比較のため化合物(1)および(2)の混合物の代わりにMCLA(東京化成工業株式会社製)およびFCLA(東京化成工業株式会社製)を用いて同様にして実験を行なった。得られた相対発光強度の結果を表1に示した。
【実施例2】
KCl(0.2M)、EDTA(0.1mM)、3−モルホリノプロパンスルホン酸(MOPS)(20mM)を含む緩衝水溶液(pH7.2、0.5ml)に25℃でヘキサデシルトリメチルアンモニウムブロミド(CTAB:ナカライテスク株式会社製)水溶液(0.5%、50μl)、ヒポキサンチン水溶液(0.3mM、0.5ml)、化合物(1)および化合物(2)の混合水溶液(2.5x10−5M、40μl)およびキサンチンオキシダーゼ水溶液(0.37unit/ml、40μl)を加え、アロカルミネッセンスリーダーBL201を用いて発光強度を測定した。発光はキサンチンオキシダーゼ水溶液の添加後、すぐに最高強度を示した。比較のため化合物(1)および(2)の混合物の代わりにMCLAおよびFCLAも同様にして実験を行なった。得られた相対発光強度の結果を表1に示した。
【実施例3】
KCl(0.2M)、EDTA(0.1mM)、アルブミンタンパク質(BSA:和光純薬工業株式会社製)(0.1%)、3−モルホリノプロパンスルホン酸(MOPS)(20mM)を含む緩衝水溶液(pH7.2、0.5ml)に25℃で、ヒポキサンチン水溶液(0.3mM、0.5ml)、化合物(1)および化合物(2)の混合水溶液(2.5x10−5M、40μl)およびキサンチンオキシダーゼ水溶液(0.37unit/ml、40μl)を加え、アロカルミネッセンスリーダーBL201を用いて発光強度を測定した。発光はキサンチンオキシダーゼ水溶液の添加後、すぐに最高強度を示した。比較のため化合物(1)および(2)の混合物の代わりにMCLAおよびFCLAも同様にして実験を行なった。得られた相対発光強度の結果を表1に示した。

以上の実施例1−3より、シクロデキストリン分子にフルオレセイン分子およびイミダゾ[1,2−a]ピラジン−3(7H)−オン分子が共に共有結合した化合物(1)および(2)の混合物は、MCLAおよびFCLAよりも高い発光強度を示すことが明かとなった。また、CTABは、MCLAやFCLAの発光強度を増強する効果があるが、シクロデキストリン分子にフルオレセイン分子およびイミダゾ[1,2−a]ピラジン−3(7H)−オン分子が共に共有結合した化合物(1)および(2)の混合物は、CTABの影響をあまり受けないことが確認された。また、BSAはMCLAやFCLAの発光強度を増減する効果があるが、シクロデキストリン分子にフルオレセイン分子およびイミダゾ[1,2−a]ピラジン−3(7H)−オン分子が共に共有結合した化合物(1)および(2)の混合物は、BSAの影響が小さいことが確認された。CTAB添加実験あるいはBSA添加実験の結果は、シクロデキストリン分子にフルオレセイン分子およびイミダゾ[1,2−a]ピラジン−3(7H)−オン分子が共に共有結合した化合物(1)および(2)の混合物は、タンパク質や脂質の影響を受けにくい発光をする発光試薬であることを示している。
【実施例4】
KCl(0.2M)、EDTA(0.1mM)、3−モルホリノプロパンスルホン酸(MOPS)(20mM)を含む緩衝水溶液(pH7.2、0.5ml)に25℃でCTAB水溶液(0.5%、50μl)、ヒポキサンチン水溶液(0.3mM、0.5ml)、化合物(1)および化合物(2)の混合水溶液(2.5x10−5M、40μl)およびキサンチンオキシダーゼ水溶液(0.37unit/ml、40μl)を加え、蛍光分光光度計FP750DS(日本分光株式会社製)を用いて発光スペクトルを測定した(ただし、励起光は使用しない)。発光スペクトルは最大発光波長約530nmを示した。
【実施例5】
モノ−6−O−ニトロベンゼンスルホニル−2,3−モノマンノエポキシγ−CD(3)および(4)の混合物の合成
次に、化合物(1)及び(2)の製造方法について説明する。なお、下記の説明において、化合物番号は、第3図中の符号による。
モノマンノエポキシ−γ−シクロデキストリン(0.500g、0.000391mol)をピリジン(10.0ml)に溶解し、m−ニトロベンゼンスルホニルクロリド(0.130g、0.000586mol)を加え−20℃で30分間攪拌した。ピリジンを減圧除去し、ODSカラムクロマトグラフィー(20×130mm、0% MeOH/HO→20% MeOH/HO)を行ない、化合物(3)および(4)の混合物(0.204g)を35%の収率で得た。混合物をH NMR(DMSOD6,40℃)にて測定したところ、δ3.2−3.9(majority,H of−cyclodextrin unit),4.4−4.5(2H,m,H−6),4.7−5.0(8H,m,H−1),8.00(1H,m,Ar−H),8.39(1H,m,Ar−H)and 8.61(2H,m,Ar−H)の結果を得た。
【実施例6】
モノ−6−アジド−2,3−モノマンノエポキシ−CD(5)および(6)の混合物の合成
化合物(3)および(4)の混合物(0.190g、0.000129mol)をDMF(3.80ml)に溶解し、アジ化ナトリウム(0.0250g、0.000384mol)を加え室温で20時間攪拌した。DMFを減圧除去し、ODSカラムクロマトグラフィー(20×130mm、0% MeOH/HO→15% MeOH/HO)を行ない、化合物(5)および(6)の混合物(0.165g)を97%の収率で得た。混合物をH NMR(DMSOD6,50℃)にて測定したところ、δ3.3−3.8(majority,H of−cyclodextrin unit)and 4.9−5.0(8H,m,H−1)の結果を得た。
【実施例7】
モノ−6−N−(5−フルオレセイニル)チオウレイド−2,3−モノマンノエポキシ−CD(9)および(10)の混合物の合成
化合物(5)および(6)の混合物(0.154g、0.000118mol)をメタノール:水=1:1(5.00ml)に溶かし、Pd−C(5wt.% on activated carbon)(0.100g)を加え水素雰囲気下、室温で15時間攪拌した。セライト及びメンブランフィルターを用いてPd−Cを濾別し、粗アミノ体(7)および(8)の混合体(0.172g)を得た。この粗アミノ体(0.150g、0.000117mol)をピリジン(3.00ml)に溶解し、FITC(0.0460g、0.000118mol)を加え室温で1時間攪拌した。ピリジンを減圧除去し、ODSカラムクロマトグラフィー(15×70mm、0% MeOH/HO(0.1%TFAを含む)→30% MeOH/HO(0.1% TFAを含む))を行ない、化合物(9)および(10)の混合物(0.121g)を70%の収率で得た。混合物をH NMR(DMSOD6,50℃)にて測定したところ、δ3.3−3.9(majority,H of−cyclodextrin unit),4.9−5.1(br.,H−1),6.63(4H,m,Ar−H),6.75(2H,s,Ar−H),7.18(1H,m,Ar−H),7.81(br.,Ar−H)and 8.34(br.,Ar−H)の結果を得た。
【実施例8】
モノ−6−N−(5−フルオレセイニル)チオウレイド−モノ−3−デオキシ−3−[[6−(4−メトキシフェニル)イミダゾ[1,2−a]ピラジン−3(7H)−オン−2−イル]プロピオニル]アミノ−−CD(1)および(2)の合成
化合物(9)および(10)の混合物(0.110g、0.0000659mol)を濃アンモニア水(2.20ml)に溶解し、37℃で3日間反応させた。反応液を濃縮し、粗アミノ体(11)および(12)の混合体(0.142g)を得た。この粗アミノ体(0.130g、0.0000771mol)ピリジン(2.60ml)に溶解し、既知化合物MCLA−COOH(Carbohydr.Rese.,1998,306,177−187)(0.0250g、0.0000797mol)、WSC(ナカライテスク株式会社製)(0.0440g、0.000229mol)を加えアルゴン雰囲気下、室温で4時間攪拌した。ピリジンを減圧除去し、ODSカラムクロマトグラフィー(20×90mm、0% MeOH/HO(0.1% TFAを含む)→、50% MeOH/HO(0.1%TFAを含む))を行なった。さらにHPLC(COSMOSIL Code No.379−76 Size20×250mm 5C−18−MS Type Waters流速6.0ml/min、30% MeOH/HO(0.1%TFAを含む)→50% MeOH/HO(0.1% TFAを含む)(60min))によって精製した。得られた化合物を少量のメタノールに溶解し、大量の酢酸エチルを加えパウダー化させることにより化合物(1)および(2)の混合物(0.0300g)を25%の収率で得た。混合物をH NMR(CDOD,20℃)にて測定したところ、δ2.7−3.2(m,CHCH),3.3−4.1(majority,H of−cyclodextrin unit),4.6−5.1(m,H−1),6.6−6.8(m,Ar−H),7.08(m,Ar−H),7.6−7.8(m,Ar−H and H of pyrazine)and 7.9−8.2(m,Ar−H and H of pyrazine)の結果を得た。また、UV(0.03M phosphate buffer,pH8.0)にて測定したところ、λmaxnm(ε):492(48000)の結果を得た。
【図1】

【図2】

【図3】


【特許請求の範囲】
【請求項1】
下記の化合物(13)及び(14):

(但し、Mは5〜14の整数、nは0〜(M−1)の整数、R〜R、及びR〜R13は、HまたはC〜C20のアルキル基、アルケニル基、アルキニル基、フェニル基、ヒドロキシル基、アルキルヒドロキシル基、ベンジル基、アリール基、ハロゲン基、ニトロ基、シアノ基、スルホニル基、カルボニル基、アミノ基、ナフチル基、インドリル基のうちの一つであり、XおよびYは、0〜20の整数、Rは、0〜4個の置換度によるフェニル環である)を有効成分として含有することを特徴とするスーパーオキシドアニオン分析用試薬。
【請求項2】
少なくとも、シクロデキストリン分子にフルオレセイン分子およびイミダゾ[1,2−a]ピラジン−3(7H)−オン分子が共に共有結合した化合物を有効成分として含有することを特徴とするスーパーオキシドアニオン分析用試薬。
【請求項3】
下記の化合物(15)及び(16):

(但し、Mは5〜14の整数、nは0〜(M−1)の整数である)にて示されるシクロデキストリン分子にフルオレセイン分子およびイミダゾ[1,2−a]ピラジン−3(7H)−オン分子が共に共有結合した化合物。
【請求項4】
シクロデキストリン分子にフルオレセイン分子およびイミダゾ[1,2−a]ピラジン−3(7H)−オン分子が共に共有結合した化合物を製造する方法であって、▲1▼モノマンノエポキシ−シクロデキストリンの水酸基にニトロベンゼンスルホニル基を結合させ、▲2▼その結果物である6−O−ニトロベンゼンスルホニル−シクロデキストリンの6位にアジド基を導入し、▲3▼このアジド基を還元し、▲4▼フルオレセインイソチオシアナートと反応させた後、▲4▼エポキシを開環し、3位にアミノ基を導入し、▲5▼この結果物とMCLA−COOHとをアミド結合させ、目的とする化合物を得ることを特徴とする製造方法。
【請求項5】
請求項1〜請求項3に記載の化合物を検体溶液と接触させた後、発光強度を測定することを特徴とするスーパーオキシドアニオンの分析方法。

【国際公開番号】WO2004/072649
【国際公開日】平成16年8月26日(2004.8.26)
【発行日】平成18年6月1日(2006.6.1)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2004−568194(P2004−568194)
【国際出願番号】PCT/JP2003/001617
【国際出願日】平成15年2月17日(2003.2.17)
【出願人】(502139714)株式会社三重ティーエルオー (1)
【Fターム(参考)】