説明

ズームノイズ検査方法

【課題】検査時間の増大が抑制され、かつ信頼性の高いズームノイズ検査方法を提供する。
【解決手段】摺動部11と、摺動部11上の第1設定点111から第2設定点112まで摺動部11に接しながらスライドする接点部12とを備えるスイッチブロック1を検査対象とするズームノイズ検査方法であって、検査入力電圧が印加された接点部12を第1設定点111から第2設定点112まで摺動部上をスライドさせながら、第1設定点111における第1検査出力電圧及び第2設定点112における第2検査出力電圧をそれぞれ連続して測定するステップと、同時刻に測定された第1検査出力電圧と第2検査出力電圧の電圧和を検査入力電圧と比較して、スイッチブロック1にズームノイズが発生しているか否かを判定するステップとを含む。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ズームノイズ検査方法に係り、特にデジタル家電製品のスイッチブロックのズームノイズ検査方法に関する。
【背景技術】
【0002】
撮像レンズの設定を調整するズーム機能が搭載されたデジタルスチールカメラやデジタルビデオカメラ等のデジタル家電が製品化されている。撮像レンズのズーム操作に使用されるズームスイッチには、カーボン抵抗等からなる摺動部上で金属ばね等からなる接点部をスライドさせることにより変化する出力電圧を利用したスイッチブロック等が採用されている。このスイッチブロックを操作することにより、接点部が摺動部上をスライドして電圧降下量が調整され、ズーム制御用信号として出力電圧が設定される。そして、設定された出力電圧に応じてズーム量が調整される。
【0003】
上記のようなスイッチブロックを使用したズームスイッチでは、ズーム操作に応じて摺動部上を接点部がスライドする際に出力電圧が滑らかに変化することが必要である。これは、摺動部上での接点部のスライド動作によって出力電圧にノイズが発生した場合、このノイズによってズーム機構が誤動作するおそれがあるためである(例えば、特許文献1参照。)。このため、ズーム機能を作動させるためにスイッチブロックを操作する際にノイズが出力電圧に発生するか否かが検査される。このスイッチブロックを操作する際に出力電圧に発生するノイズを、以下において「ズームノイズ」という。
【0004】
従来のズームノイズ検出方法では、テレ(TELE)端からワイド(WIDE)端までスイッチブロックを操作しながら出力電圧を測定する。そして、一連の出力電圧測定後に出力電圧データを解析することによって、出力電圧の変異量等に基づきズームノイズの発生を検出していた。なお、「TELE端」では撮像レンズが最大望遠焦点距離に設定され、「WIDE端」では最大広角焦点距離に設定される。
【特許文献1】特開2007−178795号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかしながら、上記のズームノイズ検査方法では、検査者がスイッチブロックを操作する速度が速すぎて出力電圧の解析が間に合わず、本来良品であるスイッチブロックの測定データがノイズの発生している測定データと誤判定される場合がある。このため、良品が不良品として扱われてしまい、検査の信頼性が低下するという問題があった。更に、検査結果の正確さが検査者のスキルに依存し、再検査が必要になって検査時間が増大するという問題も生じていた。
【0006】
上記問題点を鑑み、本発明は、検査時間の増大が抑制され、かつ信頼性の高いズームノイズ検査方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明の一態様によれば、摺動部と、摺動部上の第1設定点から第2設定点まで摺動部に接しながらスライドする接点部とを備えるスイッチブロックを検査対象とするズームノイズ検査方法であって、(イ)検査入力電圧が印加された接点部を第1設定点から第2設定点まで摺動部上をスライドさせながら、第1設定点における第1検査出力電圧及び第2設定点における第2検査出力電圧をそれぞれ連続して測定するステップと、(ロ)同時刻に測定された第1検査出力電圧と第2検査出力電圧の電圧和を検査入力電圧と比較して、スイッチブロックにズームノイズが発生しているか否かを判定するステップとを含むズームノイズ検査方法が提供される。
【発明の効果】
【0008】
本発明によれば、検査時間の増大が抑制され、かつ信頼性の高いズームノイズ検査方法を提供できる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0009】
次に、図面を参照して、本発明の実施の形態を説明する。以下の図面の記載において、同一又は類似の部分には同一又は類似の符号を付している。ただし、図面は模式的なものであることに留意すべきであり、具体的な回路や寸法等は以下の説明を参酌して判断すべきものである。又、図面相互間においても互いの寸法の関係や比率が異なる部分が含まれていることはもちろんである。
【0010】
又、以下に示す実施の形態は、この発明の技術的思想を具体化するための装置や方法を例示するものであって、この発明の技術的思想は、構成部品の材質、形状、構造、配置等を下記のものに特定するものでない。この発明の技術的思想は、特許請求の範囲において、種々の変更を加えることができる。
【0011】
本発明の実施の形態に係るズームノイズ検査方法は、図1に示すように、摺動部11と、摺動部11上の第1設定点111から第2設定点112まで摺動部11に接しながらスライドする接点部12とを備えるスイッチブロック1を検査対象とするズームノイズ検査方法である。スイッチブロック1の摺動部11には、炭素皮膜抵抗(カーボン抵抗)等の皮膜抵抗が採用可能である。また、接点部12には、金属ばね等が採用可能である。
【0012】
本発明の実施の形態に係るズームノイズ検査方法を説明する前に、スイッチブロック1について説明する。図1に示すスイッチブロック1では、接点部12の一方の端部である第1端部121が摺動部11表面に接し、他方の端部である第2端部122が電圧出力部20の表面に接する。電圧出力部20には、例えば金属皮膜等が採用可能である。そして、第1端部121が第1設定点111から第2設定点112まで摺動部11上をスライドするのに伴って、第2端部122が電圧出力部20上をスライドする。摺動部11及び電圧出力部20に皮膜抵抗等を使用することにより、スイッチブロック1をメンブレンスイッチ(シートスイッチ)にすることが可能である。
【0013】
スイッチブロック1は、デジタル家電に搭載されるズームスイッチ等に採用可能である。スイッチブロック1をズームスイッチとして機能させる場合には、例えば、第1設定点111と第2設定点112のいずれか一方にズーム機構を制御するための制御電圧VCNTが印加され、他方が接地される。そして、第1端部121の摺動部11上の位置に応じて制御電圧VCNTを抵抗分割した出力電圧VOUTが、ズーム設定端子201からズーム制御用信号として出力される。図1に示した例では、摺動部11の両端部がそれぞれ第1設定点111と第2設定点112である。第1設定点111は第1設定端子101と電気的に接続し、第2設定点112は第2設定端子102と電気的に接続する。
【0014】
例えば、図2(a)、図2(b)に示すように、第2設定端子102を介して第2設定点112に制御電圧VCNT(例えば2.8V)が印加され、第1設定端子101を介して第1設定点111が接地される。ここで、接点部12の第1端部121が第1設定点111に接している場合が、ズーム位置がTELE端である場合に対応する。つまり、出力電圧VOUTが最小である状態が、ズーム設定が最大望遠焦点距離である状態に対応する。一方、接点部12の第1端部121が第2設定点112に接している場合が、ズーム位置がWIDE端である場合に対応する。つまり、出力電圧VOUTが最大である状態が、ズーム設定が最大広角焦点距離である状態に対応する。
【0015】
具体的には、図2(a)に示すように、接点部12の第1端部121が第1設定点111に接している状態では、出力電圧VOUTは0Vである。一方、図2(b)に示すように、接点部12の第1端部121が第2設定点112に接している状態では、出力電圧VOUTは制御電圧VCNTである。TELE端からWIDE端までズーム操作することに対応して、第1設定点111から第2設定点112まで第1端部121が摺動部11上をスライドする。そして、第1端部121の摺動部11上の位置に対応した出力電圧VOUTがズーム設定端子201から出力される。このように設定された出力電圧VOUTに応じてズーム量が調整される。図3に、TELE端からWIDE端までズーム操作した場合の出力電圧VOUTの例を示す。図3の横軸は、TELE端からWIDE端までのズーム位置Pである。
【0016】
以下に、図1に示したスイッチブロック1を検査対象とする本発明の実施の形態に係るズームノイズ検査方法を説明する。
【0017】
先ず、ズーム設定端子201を介して電圧出力部20にズームノイズ検査用の検査入力電圧VINが印加される。検査入力電圧VINは、スイッチブロック1を製品として使用する場合にズーム機構を制御するための制御電圧VCNTの最大電圧程度であることが望ましい。電圧出力部20に接点部12の第2端部122が接触しているため、接点部12に検査入力電圧VINが印加される。
【0018】
次に、検査入力電圧VINが印加された接点部12を第1設定点111から第2設定点112まで摺動部11上をスライドさせながら、第1設定端子101及び第2設定端子102を介して、第1設定点111での第1検査出力電圧V1OUT及び第2設定点112での第2検査出力電圧V2OUTをそれぞれ連続して測定する。測定結果を図4に示す。図4の縦軸は、同時刻に測定された第1検査出力電圧V1OUTと第2検査出力電圧V2OUTの和(以下において、「検査出力電圧和VS」という。)である。図4の横軸は、第1検査出力電圧V1OUTと第2検査出力電圧V2OUTを測定した各時点における摺動部11上の接点部12の位置に対応するズーム位置Pである。つまり、図4に示すズーム位置Pは、TELE端からWIDE端までのいずれかの位置である。
【0019】
スイッチブロック1にズームノイズが発生していない場合には、ズーム位置Pにかかわらず検査出力電圧和VSは一定であり、検査入力電圧VINと等しい。このため、同時刻に測定された第1検査出力電圧V1OUTと第2検査出力電圧V2OUTとの検査出力電圧和VSを検査入力電圧VINと比較することにより、TELE端からWIDE端までのいずれかのズーム位置Pでスイッチブロック1にズームノイズが発生したか否かを判定できる。つまり、各ズーム位置Pにおける検査出力電圧和VSのそれぞれについて検査入力電圧VINと比較し、検査出力電圧和VSと検査入力電圧VINとの差が一定値以上であれば、そのズーム位置Pでズームノイズが発生したと判断される。
【0020】
例えば、図4に示すようにズーム位置Pが位置Zの時にズームノイズが発生すると、検査出力電圧和VSが変動する。このとき、検査出力電圧和VSと検査入力電圧VINとの差である変位量dVが基準値VSTより大きい場合に、スイッチブロック1にズームノイズが発生していると判断する。ズームノイズが発生していると判断されたスイッチブロック1を不良品と判定することにより、ズーム機能に不具合がある製品の出荷を防止できる。基準値VSTは、例えば、ズームノイズの発生によりズーム機能が誤動作しない大きさに予め設定される。
【0021】
ここで、関連技術によるズームノイズ検査方法の例を説明する。関連技術では、例えば図5に示すように、製品の実使用時と同様に、第2設定点112に検査入力電圧VINが印加され、第1設定点111が接地される。そして、接点部12の第1端部121を第1設定点111から第2設定点112まで摺動部11上をスライドさせて、電圧出力部20における検査出力電圧VMESを測定する。このため、ズームをTELE端からWIDE端まで作動させると、検査出力電圧VMESは0Vから検査入力電圧VINまでリニアに増大する。
【0022】
上記の関連技術による検査出力電圧VMESの測定結果を図6に示す。図6の横軸は、TELE端からWIDE端までのズーム位置Pである。図6の縦軸は、検査出力電圧VMESである。図6に示すように、ズームノイズが発生すると検査出力電圧VMESは滑らかに変化しない。このため、TELE端からWIDE端までにおける一連の検査出力電圧の測定が終了した後、検査出力電圧VMESのピーク−ピーク間の変異量Vp1を算出する。そして、変位量Vp1が一定値以上の場合に、ズームノイズが発生したと判定する。
【0023】
或いは、図7に示すように、検査出力電圧VMESを順次2次近似曲線にてシミュレーションしながら、この2次近似曲線のベース曲線Bcからのシミュレーション値SMESの変位量Vp2が一定値以上の場合にズームノイズが発生していると判定する関連技術も採用されている。
【0024】
しかしながら、上記のような関連技術では、測定データの取り込みや解析処理速度が30〜50ms程度であるために、素早いズーム操作にデータ処理が追従できずに良品を不良品と誤判定してしまう可能性がある。つまり、検査者がズーム動作させる操作スピードを速くすると解析処理が追随できずに、良・不良判定の信頼性が低下する場合がある。このため、ズームノイズ検査の結果が検査者のスキルに依存する等の欠点がある。また、再検査のために検査時間が増大するという問題もある。
【0025】
一方、本発明の実施の形態に係るズームノイズ検査方法では、ズームノイズが発生していない場合は、第1検査出力電圧V1OUTと第2検査出力電圧V2OUTとの検査出力電圧和VSがズーム位置にかかわらず一定である。このため、ズーム位置をTELE端からWIDE端まで素早く移動させても、検査出力電圧和VSの変位量dVをリアルタイムに観測することにより、ズームノイズの発生の有無を容易に、かつ高精度に確認できる。
【0026】
図8に、関連技術と本発明の実施の形態に係るズームノイズ検査方法とによるスイッチブロックの良・不良判定を実施した結果を比較した表を示す。図8において、機種Aは小型ズーム単体、機種Bは小型ズーム組込みスイッチブロック、機種Cは縦型ズーム組込みスイッチブロックの検査結果である。機種A、B、Cについてそれぞれ検査を100回実施し、不良と判定した回数を図8に示した。図8に示すように、関連技術では100回の検査のうち9回〜22回程度の不良判定がなされている。これに対して、本発明の実施の形態に係るズームノイズ検査方法によれば、機種A、B、Cのいずれにおいても、100回の検査で不良と判定された回数は0回である。上記のように、関連技術では良品を不良品と誤判定する可能性が高い。一方、本発明の実施の形態に係るズームノイズ検査方法によれば、高精度にズームノイズを検出できる。このため、再検査を実施する必要もない。
【0027】
以上に説明したように、本発明の実施の形態に係るズームノイズ検査方法では、検査結果が検査者のスキルに依存せず、また、測定終了後の出力電圧の解析時間が短縮される。その結果、検査時間の増大が抑制され、信頼性の高いズームノイズ検査方法を実現することができる。
【0028】
(その他の実施の形態)
上記のように、本発明は実施の形態によって記載したが、この開示の一部をなす論述及び図面はこの発明を限定するものであると理解すべきではない。この開示から当業者には様々な代替実施の形態、実施例及び運用技術が明らかとなろう。
【0029】
例えば、既に述べた実施の形態の説明においては、摺動部11はカーボン抵抗以外の金属皮膜抵抗等であってもよい。また、スイッチブロック1が、電圧出力部20を有さず、接点部12の第2端部122からズーム制御用信号を直接出力する構造であってもよい。
【0030】
このように、本発明はここでは記載していない様々な実施の形態等を含むことは勿論である。したがって、本発明の技術的範囲は上記の説明から妥当な特許請求の範囲に係る発明特定事項によってのみ定められるものである。
【図面の簡単な説明】
【0031】
【図1】本発明の実施の形態に係るズームノイズ検査方法の検査対象のスイッチブロックの構成を示す模式図である。
【図2】図1に示したスイッチブロックの設定例を示す模式図である。
【図3】図1に示したスイッチブロックのズーム位置と出力電圧との関係を示すグラフである。
【図4】本発明の実施の形態に係るズームノイズ検査方法によって得られる検査出力電圧和とズーム位置との関係を示すグラフである。
【図5】関連技術によるズームノイズ検査方法を説明するための模式図である。
【図6】関連技術によるズームノイズ検査方法によって得られる検査出力電圧とズーム位置との関係を示すグラフである。
【図7】関連技術によるズームノイズ検査方法によって得られる検査出力電圧のシミュレーション値とズーム位置との関係を示すグラフである。
【図8】本発明の実施の形態に係るズームノイズ検査方法と関連技術によるズームノイズ検査によるスイッチブロックの良・不良判定結果を示す表である。
【符号の説明】
【0032】
1…スイッチブロック
11…摺動部
12…接点部
20…電圧出力部
101…第1設定端子
102…第2設定端子
111…第1設定点
112…第2設定点
121…第1端部
122…第2端部
201…ズーム設定端子

【特許請求の範囲】
【請求項1】
摺動部と、前記摺動部上の第1設定点から第2設定点まで前記摺動部に接しながらスライドする接点部とを備えるスイッチブロックを検査対象とするズームノイズ検査方法であって、
検査入力電圧が印加された前記接点部を前記第1設定点から前記第2設定点まで前記摺動部上をスライドさせながら、前記第1設定点における第1検査出力電圧及び前記第2設定点における第2検査出力電圧をそれぞれ連続して測定するステップと、
同時刻に測定された前記第1検査出力電圧と前記第2検査出力電圧の電圧和を前記検査入力電圧と比較して、前記スイッチブロックにズームノイズが発生しているか否かを判定するステップと
を含むことを特徴とするズームノイズ検査方法。
【請求項2】
前記電圧和と前記検査入力電圧との差が基準値より大きい場合に、前記スイッチブロックにズームノイズが発生していると判定することを特徴とする請求項1に記載のズームノイズ検査方法。
【請求項3】
前記摺動部が炭素皮膜抵抗であることを特徴とする請求項1又は2に記載のズームノイズ検査方法。
【請求項4】
前記接点部が、一端が前記摺動部に接する金属ばねであることを特徴とする請求項1乃至3のいずれか1項に記載のズームノイズ検査方法。
【請求項5】
前記接点部の他端が金属皮膜に接することを特徴とする請求項4に記載のズームノイズ検査方法。

【図1】
image rotate

【図2】
image rotate

【図3】
image rotate

【図4】
image rotate

【図5】
image rotate

【図6】
image rotate

【図7】
image rotate

【図8】
image rotate