セグメントの積み重ね用治具及びセグメントの設置方法
【課題】セグメントの変形や破損をまねくこと無くセグメントを段数多く積み重ねた状態で仮置きすることができる積み重ね用治具及びその積み重ね用治具を利用したセグメントの設置方法を提供する。
【解決手段】積み重ね用治具3は、地面と最下段のセグメント1との間に設置された第一の支持部材4と、上下に積み重ねられた複数のセグメント1の間に設置された第二の支持部材5とからなる。第一の支持部材4は、複数の第一の棒状部材4aが横並びに配置されるとともに、それらが連結材4bで連結されている。第二の支持部材5は、複数の第二の棒状部材5aが横並びに配置されるとともに、それらが連結材5bで連結されている。第二の棒状部材5aは、上下に積み重ねられたセグメント1間に、第一の棒状部材4aの略真上の位置に設置されている。
【解決手段】積み重ね用治具3は、地面と最下段のセグメント1との間に設置された第一の支持部材4と、上下に積み重ねられた複数のセグメント1の間に設置された第二の支持部材5とからなる。第一の支持部材4は、複数の第一の棒状部材4aが横並びに配置されるとともに、それらが連結材4bで連結されている。第二の支持部材5は、複数の第二の棒状部材5aが横並びに配置されるとともに、それらが連結材5bで連結されている。第二の棒状部材5aは、上下に積み重ねられたセグメント1間に、第一の棒状部材4aの略真上の位置に設置されている。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、セグメントの内面側を上方に向けて複数積み重ねて仮置きするための、積み重ね用治具及びセグメントの設置方法に関する。
【背景技術】
【0002】
環状の覆工体を構成する断面弧状のセグメント1が、工場に仮置きされる場合は、図11に示すように、縦置き状態で設置されるのが一般的である。そして、このように設置されたセグメント1を工場から工事現場へ出荷する際には、セグメント1の姿勢を縦置きからその内面側が上方になるように横置きに転換し、それ以降は、これらを複数積み重ねた状態で取り扱っていた。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0003】
しかしながら、セグメントを横置きに積み重ねる際、セグメント間に輪木と呼ばれる角材を適宜かませるだけで空間を確保しており、このまま段数を多く積み上げた状態で長時間放置すると、角材と接触している部分に過大な荷重が作用するので、時間の経過とともに、セグメントが変形したり、破損したりする恐れがあった。
【0004】
そこで、本発明は、上記のような従来の問題に鑑みなされたものであって、セグメントの変形や破損をまねくこと無くセグメントを段数多く積み重ねた状態で仮置きすることができる積み重ね用治具及びその積み重ね用治具を利用したセグメントの設置方法を提供することを目的とするものである。
【課題を解決するための手段】
【0005】
本発明は、環状の覆工体を構成する断面弧状のセグメントの複数個を、それらの内面側を上方に向けて平面上に積み重ねるための積み重ね用治具であって、
複数の第一の棒状部材が横並びに配置されるとともに、それらが連結材で連結され、前記平面と最下段の前記セグメントとの間に設置される第一の支持部材と、
複数の第二の棒状部材が横並びに配置されるとともに、それらが連結材で連結され、上下に隣接する前記セグメント間に設置される第二の支持部材とを備え、
前記第一の棒状部材の上面が前記セグメントの外面に沿った形状を有し又は当該形状に変形可能であり、かつ、前記第二の棒状部材の上面及び下面がそれぞれ前記セグメントの外面及び内面に沿った形状を有し又は当該形状に変形可能であることを特徴とする。
【0006】
本発明によれば、平面と最下段のセグメントとの間に第一の支持部材を設置し、上下に隣接するセグメント間に第二の支持部材を設置することにより、セグメントの荷重を複数の棒状部材で支持することになるため、セグメントに作用する荷重は分散し、荷重が一箇所に集中しないので、セグメントに変形や破損が生ずるのを防止できる。
【0007】
また、第一の棒状部材の上面は、セグメントの外面に沿った形状に形成され又は変形可能で、第二の棒状部材の内面及び外面は、それぞれセグメントの外面及び内面に沿った形状に形成され又は変形可能なので、セグメントに密着することができる。したがって、セグメントに接してもセグメントを傷つけない。
【0008】
また、第一の棒状部材及び第二の棒状部材はそれぞれ連結材で連結されているので、第一の支持部材及び複数の第二の支持部材を効率良く設置できる。
【0009】
本発明において、隣り合う前記第一の棒状部材又は第二の棒状部材の間の前記連結材の長さは、すべて同じであることとすれば、隣り合う第一の棒状部材又は第二の棒状部材の間隔を同じ長さにすることができる。なお、前記連結材は、ロープ又はワイヤーであることとすれば、ロープ又はワイヤーを折り曲げて第一の支持部材同士及び第二の支持部材同士をまとめることができるので、積み重ね用治具を保管するスペースが小さくてすむ。また、連結材はロープ又はワイヤーなので、平面及びセグメントの湾曲形状に沿って第一の支持部材及び第二の支持部材を変形させることができる。また、前記連結材は、可撓性を有する棒鋼であることとすれば、隣り合う第一の棒状部材同士及び第二の棒状部材同士の間隔を常に一定に保つことができる。また、連結材は湾曲可能な棒鋼なので、平面及びセグメントの湾曲形状に沿って第一の支持部材及び第二の支持部材を変形させることができる。
【0010】
また、本発明は、環状の覆工体を構成する断面弧状のセグメントの複数個を、それらの内面側を上方に向けて平面上に積み重ねた状態で仮置きする前記セグメントの設置方法において、
上面が前記セグメントの外面に沿った形状を有し又は当該形状に変形可能な複数の第一の棒状部材が横並びに配置されるとともに、それらが連結材で連結されてなる第一の支持部材を、前記平面上に設置し、
最下段の前記セグメントを、その内面側を上方に向けた状態で前記第一の支持部材上に設置した後、
上面及び下面がそれぞれ前記セグメントの外面及び内面に沿った形状を有し又は当該形状に変形可能な複数の第二の棒状部材が横並びに配置されるとともに、それらが連結材で連結されてなる第二の支持部材を、前記第二の棒状部材がそれぞれ前記第一の棒状部材の略真上に位置するように、設置済みの最上段の前記セグメントの内面の上に設置する工程と、別の前記セグメントを、その内面側を上方に向けた状態で、設置済みの最上段の前記第二の支持部材上に設置する工程と、を所定数の前記セグメントが積み重ねられるまで繰り返すことを特徴とする。
【0011】
本発明によれば、平面と最下段のセグメントとの間に第一の支持部材を設置し、上下に隣接するセグメント間に第二の支持部材を設置することにより、セグメントの荷重を複数の棒状部材で支持することになるため、セグメントに作用する荷重は分散し、荷重が一箇所に集中しない。さらに、第一の棒状部材の略真上に第二の棒状部材を設置することにより、セグメントを支持する位置を上下方向に揃えることができる。これにより、各セグメントを支持する位置と上方のセグメントの荷重が作用する載荷位置とが一致するので、セグメントに曲げモーメントが作用しなくなる。したがって、セグメントに変形や破損が生ずるのを防止できる。
【発明の効果】
【0012】
本発明によれば、セグメントの変形や破損をまねくこと無くセグメントを段数多く積み重ねた状態で仮置きすることができる。
【図面の簡単な説明】
【0013】
【図1】本発明の実施形態に係るセグメントの積層構造を示す図である。
【図2】図1のA−A矢視図である。
【図3】本実施形態に係る第一の支持部材を示す斜視図である。
【図4】本実施形態に係る第二の支持部材を示す斜視図である。
【図5】本実施形態に係るセグメントの設置手順を示す図である。
【図6】本実施形態に係るセグメントの設置手順を示す図である。
【図7】本実施形態に係るセグメントの設置手順を示す図である。
【図8】本実施形態に係るセグメントの搬送手順を示す図である。
【図9】本実施形態に係るセグメントの搬送手順を示す図である。
【図10】本実施形態に係るセグメントの搬送手順を示す図である。
【図11】工場内でのセグメントの保管状態を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0014】
以下、本発明の好ましい実施形態について図面を用いて詳細に説明する。
【0015】
図1は、本発明の実施形態に係るセグメント1の積層構造2を示す図であり、図2は、図1のA−A矢視図である。
【0016】
図1及び図2に示すように、環状の覆工体12(図示しない)を構成するセグメント1を積み重ねた積層構造2は、内面1a側を上方に向けて積み重ねられた複数の断面弧状のセグメント1と、上下に積み重ねられたセグメント1同士が接触しないようにセグメント1間等に設置される積み重ね用治具3とを備える。
積み重ね用治具3は、地面と最下段のセグメント1との間に設置された第一の支持部材4と、上下に積み重ねられた複数のセグメント1の間に設置された第二の支持部材5とから構成される。
【0017】
第一の支持部材4は、地面と最下段のセグメント1との間に、複数の第一の棒状部材4aが横並びに配置されるとともに、それらが連結材4bで連結されている。
第二の支持部材5は、上下に積み重ねられたセグメント1間に、複数の第二の棒状部材5aが横並びに配置されるとともに、それらが連結材5bで連結されている。第二の棒状部材5aは、積み重ねられたセグメント1間に、第一の棒状部材4aの略真上の位置に設置されている。
【0018】
図3及び図4は、それぞれ本実施形態に係る第一の支持部材4及び第二の支持部材5の斜視図である。
【0019】
図3及び図4に示すように、第一の支持部材4及び第二の支持部材5をそれぞれ構成する第一の棒状部材4a及び第二の棒状部材5aは、例えば、木材であり、セグメント1に密着するように作製されている。具体的には、第一の棒状部材4a(図3に示す)の上面4cは、セグメント1の外面1bの曲率と同一の弧状に形成されている。また、第二の棒状部材5a(図4に示す)は、断面弧状となるように形成され、この外面5d及び内面5cの曲率は、それぞれセグメント1の内面1a、外面1bの曲率と同一になるように弧状に形成されている。
【0020】
連結材4b、5bは、例えば、ナイロンロープからなり、第一の棒状部材4a及び第二の棒状部材5aをそれぞれ、例えば、5個ずつ連結した。連結材4b、5bの長さは、連結された第一の棒状部材4aのうち中央の棒状部材4Aの略真上に、連結された第二の棒状部材5aのうち中央の棒状部材5Aを配置すると、すべての第二の棒状部材5aは、それぞれ第一の棒状部材4aの略真上に配置されるように調整され、例えば、すべて同じ長さに揃えられる。
【0021】
以下に、本実施形態に係るセグメント1の設置方法を施工手順に従って説明する。
図5〜図7は、本実施形態に係るセグメント1の設置手順を示す図である。
【0022】
まず、図5に示すように、第一の支持部材4を地面上に設置する。そして、第一の支持部材4上にセグメント1を、内面1a側を上方に向けた状態で設置する。このとき、セグメント1の中央が概ね第一の棒状部材4Aの略真上になるように設置する。
次に、図6に示すように、第二の支持部材5をセグメント1の内面1a上に設置する。このとき、第二の棒状部材5Aが、第一の棒状部材4Aの略真上になるように設置する。これにより、すべての第二の棒状部材5aはそれぞれ第一の棒状部材4aの略真上に配置される。
次に、図7に示すように、新たなセグメント1を第二の支持部材5の上に設置する。
そして、第二の支持部材5をセグメント1の内面1a上に設置し、その上に新たなセグメント1を設置する作業を繰り返すことにより、所定数のセグメント1を積み重ねる。
【0023】
以下に、本実施形態に係るセグメント1の搬送方法を施工手順に従って説明する。
図8〜図10は、本実施形態に係るセグメント1の搬送手順を示す図である。
【0024】
まず、図8に示すように、上述した設置手順に従って、地上の仮置き場7に複数のセグメント1を積み重ねる。
次に、図9及び図10に示すように、クレーン8で所定の枚数のセグメント1を積み重ねた状態のまま、すなわち、第二の支持部材5をセグメント1間に挟持したまま吊り上げて、仮置き場7から立坑9内へセグメント1を移動させて、立坑9内の台車10に積み重ねる。このとき、台車10上には、新たな第一の支持部材4を設置しておいて、その上に積み重ねた状態のセグメント1を設置する。
最後に、台車10でセグメント1を積み重ねた状態のまま立坑9からトンネル11内の切羽近傍の覆工体12の構築場所へ搬送する。
【0025】
以上説明した本実施形態における積み重ね用治具3によれば、以下のような効果を得られる。
【0026】
(1)最下段のセグメント1と地面との間及び上下に積み重ねられたセグメント1間には、それぞれ第一の支持部材4、第二の支持部材5が設置されるので、セグメント1は地面や他のセグメント1と接触しない。また、セグメント1に作用する荷重を複数の第一の棒状部材4a及び第二の棒状部材5aで支持するため、セグメント1に作用する荷重は分散し、荷重が一箇所に集中しない。さらに、第一の棒状部材4aの略真上に第二の棒状部材5aを設置することにより、セグメント1を支持する位置を上下方向に揃えることとなる。これにより、各セグメント1を支持する位置と上方のセグメント1の荷重が作用する載荷位置とが一致するので、セグメント1に曲げモーメントが作用しなくなる。したがって、セグメント1に変形や破損が生ずるのを防止できる。
【0027】
(2)第一の棒状部材4aの上面4cは、セグメント1の外面1bに沿った形状に形成されているので、第一の支持部材4をセグメント1に密着させることができる。また、第二の棒状部材5aは、断面弧状で、その外面5d、内面5cの曲率は、それぞれセグメント1の内面1a、外面1bの曲率と同一になるように形成されているので、第二の支持部材5をセグメント1に密着させることができる。すなわち、これらは面的に接するので、セグメント1を支持したり、セグメント1間に挟持されてもセグメント1を傷つけない。
【0028】
(3)第一の棒状部材4a及び第二の棒状部材5aはそれぞれ連結材4b、5bで連結されているので、第一の支持部材4及び第二の支持部材5を効率良く設置できる。また、連結材4b、5bは、すべて同じ長さなので、隣り合う第一の棒状部材4a同士及び第二の棒状部材5a同士の間隔を同じにすることができる。
【0029】
(4)連結材4b、5bはロープなので、折りたたんで第一の棒状部材4a同士及び第二の棒状部材5a同士をまとめることができる。したがって、積み重ね用治具3を保管するスペースが小さくてすむ。また、地面やセグメント1の湾曲形状に沿って連結材4b、5bを変形させることができる。
【0030】
なお、本実施形態においては、連結材4b、5bとしてナイロンロープを用いた場合について説明したが、これに限定されるものではなく、可撓性を有する程度に細い棒鋼を用いてもよい。
【0031】
また、本実施形態においては、第一の棒状部材4aとして、その上面4cがセグメント1の外面1bに沿った形状を有する木材を用い、第二の棒状部材5aとして、その内面5c及び外面5dがそれぞれセグメント1の外面1b及び内面1aに沿った形状を有する木材を用いた場合について説明したが、これに限定されるものではなく、第一の棒状部材4a及び第二の棒状部材5aを、セグメント1の外面1b及び内面1aに沿うように変形可能なゴム板等の柔軟性部材で構成してもよい。
【符号の説明】
【0032】
1 セグメント
1a 内面
1b 外面
2 積層構造
3 積み重ね用治具
4 第一の支持部材
4a 第一の棒状部材
4b 連結材
4c 上面
5 第二の支持部材
5a 第二の棒状部材
5b 連結材
5c 内面
5d 外面
7 仮置き場
8 クレーン
9 立坑
10 台車
11 トンネル
12 覆工体
【技術分野】
【0001】
本発明は、セグメントの内面側を上方に向けて複数積み重ねて仮置きするための、積み重ね用治具及びセグメントの設置方法に関する。
【背景技術】
【0002】
環状の覆工体を構成する断面弧状のセグメント1が、工場に仮置きされる場合は、図11に示すように、縦置き状態で設置されるのが一般的である。そして、このように設置されたセグメント1を工場から工事現場へ出荷する際には、セグメント1の姿勢を縦置きからその内面側が上方になるように横置きに転換し、それ以降は、これらを複数積み重ねた状態で取り扱っていた。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0003】
しかしながら、セグメントを横置きに積み重ねる際、セグメント間に輪木と呼ばれる角材を適宜かませるだけで空間を確保しており、このまま段数を多く積み上げた状態で長時間放置すると、角材と接触している部分に過大な荷重が作用するので、時間の経過とともに、セグメントが変形したり、破損したりする恐れがあった。
【0004】
そこで、本発明は、上記のような従来の問題に鑑みなされたものであって、セグメントの変形や破損をまねくこと無くセグメントを段数多く積み重ねた状態で仮置きすることができる積み重ね用治具及びその積み重ね用治具を利用したセグメントの設置方法を提供することを目的とするものである。
【課題を解決するための手段】
【0005】
本発明は、環状の覆工体を構成する断面弧状のセグメントの複数個を、それらの内面側を上方に向けて平面上に積み重ねるための積み重ね用治具であって、
複数の第一の棒状部材が横並びに配置されるとともに、それらが連結材で連結され、前記平面と最下段の前記セグメントとの間に設置される第一の支持部材と、
複数の第二の棒状部材が横並びに配置されるとともに、それらが連結材で連結され、上下に隣接する前記セグメント間に設置される第二の支持部材とを備え、
前記第一の棒状部材の上面が前記セグメントの外面に沿った形状を有し又は当該形状に変形可能であり、かつ、前記第二の棒状部材の上面及び下面がそれぞれ前記セグメントの外面及び内面に沿った形状を有し又は当該形状に変形可能であることを特徴とする。
【0006】
本発明によれば、平面と最下段のセグメントとの間に第一の支持部材を設置し、上下に隣接するセグメント間に第二の支持部材を設置することにより、セグメントの荷重を複数の棒状部材で支持することになるため、セグメントに作用する荷重は分散し、荷重が一箇所に集中しないので、セグメントに変形や破損が生ずるのを防止できる。
【0007】
また、第一の棒状部材の上面は、セグメントの外面に沿った形状に形成され又は変形可能で、第二の棒状部材の内面及び外面は、それぞれセグメントの外面及び内面に沿った形状に形成され又は変形可能なので、セグメントに密着することができる。したがって、セグメントに接してもセグメントを傷つけない。
【0008】
また、第一の棒状部材及び第二の棒状部材はそれぞれ連結材で連結されているので、第一の支持部材及び複数の第二の支持部材を効率良く設置できる。
【0009】
本発明において、隣り合う前記第一の棒状部材又は第二の棒状部材の間の前記連結材の長さは、すべて同じであることとすれば、隣り合う第一の棒状部材又は第二の棒状部材の間隔を同じ長さにすることができる。なお、前記連結材は、ロープ又はワイヤーであることとすれば、ロープ又はワイヤーを折り曲げて第一の支持部材同士及び第二の支持部材同士をまとめることができるので、積み重ね用治具を保管するスペースが小さくてすむ。また、連結材はロープ又はワイヤーなので、平面及びセグメントの湾曲形状に沿って第一の支持部材及び第二の支持部材を変形させることができる。また、前記連結材は、可撓性を有する棒鋼であることとすれば、隣り合う第一の棒状部材同士及び第二の棒状部材同士の間隔を常に一定に保つことができる。また、連結材は湾曲可能な棒鋼なので、平面及びセグメントの湾曲形状に沿って第一の支持部材及び第二の支持部材を変形させることができる。
【0010】
また、本発明は、環状の覆工体を構成する断面弧状のセグメントの複数個を、それらの内面側を上方に向けて平面上に積み重ねた状態で仮置きする前記セグメントの設置方法において、
上面が前記セグメントの外面に沿った形状を有し又は当該形状に変形可能な複数の第一の棒状部材が横並びに配置されるとともに、それらが連結材で連結されてなる第一の支持部材を、前記平面上に設置し、
最下段の前記セグメントを、その内面側を上方に向けた状態で前記第一の支持部材上に設置した後、
上面及び下面がそれぞれ前記セグメントの外面及び内面に沿った形状を有し又は当該形状に変形可能な複数の第二の棒状部材が横並びに配置されるとともに、それらが連結材で連結されてなる第二の支持部材を、前記第二の棒状部材がそれぞれ前記第一の棒状部材の略真上に位置するように、設置済みの最上段の前記セグメントの内面の上に設置する工程と、別の前記セグメントを、その内面側を上方に向けた状態で、設置済みの最上段の前記第二の支持部材上に設置する工程と、を所定数の前記セグメントが積み重ねられるまで繰り返すことを特徴とする。
【0011】
本発明によれば、平面と最下段のセグメントとの間に第一の支持部材を設置し、上下に隣接するセグメント間に第二の支持部材を設置することにより、セグメントの荷重を複数の棒状部材で支持することになるため、セグメントに作用する荷重は分散し、荷重が一箇所に集中しない。さらに、第一の棒状部材の略真上に第二の棒状部材を設置することにより、セグメントを支持する位置を上下方向に揃えることができる。これにより、各セグメントを支持する位置と上方のセグメントの荷重が作用する載荷位置とが一致するので、セグメントに曲げモーメントが作用しなくなる。したがって、セグメントに変形や破損が生ずるのを防止できる。
【発明の効果】
【0012】
本発明によれば、セグメントの変形や破損をまねくこと無くセグメントを段数多く積み重ねた状態で仮置きすることができる。
【図面の簡単な説明】
【0013】
【図1】本発明の実施形態に係るセグメントの積層構造を示す図である。
【図2】図1のA−A矢視図である。
【図3】本実施形態に係る第一の支持部材を示す斜視図である。
【図4】本実施形態に係る第二の支持部材を示す斜視図である。
【図5】本実施形態に係るセグメントの設置手順を示す図である。
【図6】本実施形態に係るセグメントの設置手順を示す図である。
【図7】本実施形態に係るセグメントの設置手順を示す図である。
【図8】本実施形態に係るセグメントの搬送手順を示す図である。
【図9】本実施形態に係るセグメントの搬送手順を示す図である。
【図10】本実施形態に係るセグメントの搬送手順を示す図である。
【図11】工場内でのセグメントの保管状態を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0014】
以下、本発明の好ましい実施形態について図面を用いて詳細に説明する。
【0015】
図1は、本発明の実施形態に係るセグメント1の積層構造2を示す図であり、図2は、図1のA−A矢視図である。
【0016】
図1及び図2に示すように、環状の覆工体12(図示しない)を構成するセグメント1を積み重ねた積層構造2は、内面1a側を上方に向けて積み重ねられた複数の断面弧状のセグメント1と、上下に積み重ねられたセグメント1同士が接触しないようにセグメント1間等に設置される積み重ね用治具3とを備える。
積み重ね用治具3は、地面と最下段のセグメント1との間に設置された第一の支持部材4と、上下に積み重ねられた複数のセグメント1の間に設置された第二の支持部材5とから構成される。
【0017】
第一の支持部材4は、地面と最下段のセグメント1との間に、複数の第一の棒状部材4aが横並びに配置されるとともに、それらが連結材4bで連結されている。
第二の支持部材5は、上下に積み重ねられたセグメント1間に、複数の第二の棒状部材5aが横並びに配置されるとともに、それらが連結材5bで連結されている。第二の棒状部材5aは、積み重ねられたセグメント1間に、第一の棒状部材4aの略真上の位置に設置されている。
【0018】
図3及び図4は、それぞれ本実施形態に係る第一の支持部材4及び第二の支持部材5の斜視図である。
【0019】
図3及び図4に示すように、第一の支持部材4及び第二の支持部材5をそれぞれ構成する第一の棒状部材4a及び第二の棒状部材5aは、例えば、木材であり、セグメント1に密着するように作製されている。具体的には、第一の棒状部材4a(図3に示す)の上面4cは、セグメント1の外面1bの曲率と同一の弧状に形成されている。また、第二の棒状部材5a(図4に示す)は、断面弧状となるように形成され、この外面5d及び内面5cの曲率は、それぞれセグメント1の内面1a、外面1bの曲率と同一になるように弧状に形成されている。
【0020】
連結材4b、5bは、例えば、ナイロンロープからなり、第一の棒状部材4a及び第二の棒状部材5aをそれぞれ、例えば、5個ずつ連結した。連結材4b、5bの長さは、連結された第一の棒状部材4aのうち中央の棒状部材4Aの略真上に、連結された第二の棒状部材5aのうち中央の棒状部材5Aを配置すると、すべての第二の棒状部材5aは、それぞれ第一の棒状部材4aの略真上に配置されるように調整され、例えば、すべて同じ長さに揃えられる。
【0021】
以下に、本実施形態に係るセグメント1の設置方法を施工手順に従って説明する。
図5〜図7は、本実施形態に係るセグメント1の設置手順を示す図である。
【0022】
まず、図5に示すように、第一の支持部材4を地面上に設置する。そして、第一の支持部材4上にセグメント1を、内面1a側を上方に向けた状態で設置する。このとき、セグメント1の中央が概ね第一の棒状部材4Aの略真上になるように設置する。
次に、図6に示すように、第二の支持部材5をセグメント1の内面1a上に設置する。このとき、第二の棒状部材5Aが、第一の棒状部材4Aの略真上になるように設置する。これにより、すべての第二の棒状部材5aはそれぞれ第一の棒状部材4aの略真上に配置される。
次に、図7に示すように、新たなセグメント1を第二の支持部材5の上に設置する。
そして、第二の支持部材5をセグメント1の内面1a上に設置し、その上に新たなセグメント1を設置する作業を繰り返すことにより、所定数のセグメント1を積み重ねる。
【0023】
以下に、本実施形態に係るセグメント1の搬送方法を施工手順に従って説明する。
図8〜図10は、本実施形態に係るセグメント1の搬送手順を示す図である。
【0024】
まず、図8に示すように、上述した設置手順に従って、地上の仮置き場7に複数のセグメント1を積み重ねる。
次に、図9及び図10に示すように、クレーン8で所定の枚数のセグメント1を積み重ねた状態のまま、すなわち、第二の支持部材5をセグメント1間に挟持したまま吊り上げて、仮置き場7から立坑9内へセグメント1を移動させて、立坑9内の台車10に積み重ねる。このとき、台車10上には、新たな第一の支持部材4を設置しておいて、その上に積み重ねた状態のセグメント1を設置する。
最後に、台車10でセグメント1を積み重ねた状態のまま立坑9からトンネル11内の切羽近傍の覆工体12の構築場所へ搬送する。
【0025】
以上説明した本実施形態における積み重ね用治具3によれば、以下のような効果を得られる。
【0026】
(1)最下段のセグメント1と地面との間及び上下に積み重ねられたセグメント1間には、それぞれ第一の支持部材4、第二の支持部材5が設置されるので、セグメント1は地面や他のセグメント1と接触しない。また、セグメント1に作用する荷重を複数の第一の棒状部材4a及び第二の棒状部材5aで支持するため、セグメント1に作用する荷重は分散し、荷重が一箇所に集中しない。さらに、第一の棒状部材4aの略真上に第二の棒状部材5aを設置することにより、セグメント1を支持する位置を上下方向に揃えることとなる。これにより、各セグメント1を支持する位置と上方のセグメント1の荷重が作用する載荷位置とが一致するので、セグメント1に曲げモーメントが作用しなくなる。したがって、セグメント1に変形や破損が生ずるのを防止できる。
【0027】
(2)第一の棒状部材4aの上面4cは、セグメント1の外面1bに沿った形状に形成されているので、第一の支持部材4をセグメント1に密着させることができる。また、第二の棒状部材5aは、断面弧状で、その外面5d、内面5cの曲率は、それぞれセグメント1の内面1a、外面1bの曲率と同一になるように形成されているので、第二の支持部材5をセグメント1に密着させることができる。すなわち、これらは面的に接するので、セグメント1を支持したり、セグメント1間に挟持されてもセグメント1を傷つけない。
【0028】
(3)第一の棒状部材4a及び第二の棒状部材5aはそれぞれ連結材4b、5bで連結されているので、第一の支持部材4及び第二の支持部材5を効率良く設置できる。また、連結材4b、5bは、すべて同じ長さなので、隣り合う第一の棒状部材4a同士及び第二の棒状部材5a同士の間隔を同じにすることができる。
【0029】
(4)連結材4b、5bはロープなので、折りたたんで第一の棒状部材4a同士及び第二の棒状部材5a同士をまとめることができる。したがって、積み重ね用治具3を保管するスペースが小さくてすむ。また、地面やセグメント1の湾曲形状に沿って連結材4b、5bを変形させることができる。
【0030】
なお、本実施形態においては、連結材4b、5bとしてナイロンロープを用いた場合について説明したが、これに限定されるものではなく、可撓性を有する程度に細い棒鋼を用いてもよい。
【0031】
また、本実施形態においては、第一の棒状部材4aとして、その上面4cがセグメント1の外面1bに沿った形状を有する木材を用い、第二の棒状部材5aとして、その内面5c及び外面5dがそれぞれセグメント1の外面1b及び内面1aに沿った形状を有する木材を用いた場合について説明したが、これに限定されるものではなく、第一の棒状部材4a及び第二の棒状部材5aを、セグメント1の外面1b及び内面1aに沿うように変形可能なゴム板等の柔軟性部材で構成してもよい。
【符号の説明】
【0032】
1 セグメント
1a 内面
1b 外面
2 積層構造
3 積み重ね用治具
4 第一の支持部材
4a 第一の棒状部材
4b 連結材
4c 上面
5 第二の支持部材
5a 第二の棒状部材
5b 連結材
5c 内面
5d 外面
7 仮置き場
8 クレーン
9 立坑
10 台車
11 トンネル
12 覆工体
【特許請求の範囲】
【請求項1】
環状の覆工体を構成する断面弧状のセグメントの複数個を、それらの内面側を上方に向けて平面上に積み重ねるための積み重ね用治具であって、
複数の第一の棒状部材が横並びに配置されるとともに、それらが連結材で連結され、前記平面と最下段の前記セグメントとの間に設置される第一の支持部材と、
複数の第二の棒状部材が横並びに配置されるとともに、それらが連結材で連結され、上下に隣接する前記セグメント間に設置される第二の支持部材とを備え、
前記第一の棒状部材の上面が前記セグメントの外面に沿った形状を有し又は当該形状に変形可能であり、かつ、前記第二の棒状部材の上面及び下面がそれぞれ前記セグメントの外面及び内面に沿った形状を有し又は当該形状に変形可能であることを特徴とするセグメントの積み重ね用治具。
【請求項2】
隣り合う前記第一の棒状部材又は第二の棒状部材の間の前記連結材の長さは、すべて同じであることを特徴とする請求項1に記載の積み重ね用治具。
【請求項3】
環状の覆工体を構成する断面弧状のセグメントの複数個を、それらの内面側を上方に向けて平面上に積み重ねた状態で仮置きする前記セグメントの設置方法において、
上面が前記セグメントの外面に沿った形状を有し又は当該形状に変形可能な複数の第一の棒状部材が横並びに配置されるとともに、それらが連結材で連結されてなる第一の支持部材を、前記平面上に設置し、
最下段の前記セグメントを、その内面側を上方に向けた状態で前記第一の支持部材上に設置した後、
上面及び下面がそれぞれ前記セグメントの外面及び内面に沿った形状を有し又は当該形状に変形可能な複数の第二の棒状部材が横並びに配置されるとともに、それらが連結材で連結されてなる第二の支持部材を、前記第二の棒状部材がそれぞれ前記第一の棒状部材の略真上に位置するように、設置済みの最上段の前記セグメントの内面の上に設置する工程と、別の前記セグメントを、その内面側を上方に向けた状態で、設置済みの最上段の前記第二の支持部材上に設置する工程と、を所定数の前記セグメントが積み重ねられるまで繰り返すことを特徴とするセグメントの設置方法。
【請求項1】
環状の覆工体を構成する断面弧状のセグメントの複数個を、それらの内面側を上方に向けて平面上に積み重ねるための積み重ね用治具であって、
複数の第一の棒状部材が横並びに配置されるとともに、それらが連結材で連結され、前記平面と最下段の前記セグメントとの間に設置される第一の支持部材と、
複数の第二の棒状部材が横並びに配置されるとともに、それらが連結材で連結され、上下に隣接する前記セグメント間に設置される第二の支持部材とを備え、
前記第一の棒状部材の上面が前記セグメントの外面に沿った形状を有し又は当該形状に変形可能であり、かつ、前記第二の棒状部材の上面及び下面がそれぞれ前記セグメントの外面及び内面に沿った形状を有し又は当該形状に変形可能であることを特徴とするセグメントの積み重ね用治具。
【請求項2】
隣り合う前記第一の棒状部材又は第二の棒状部材の間の前記連結材の長さは、すべて同じであることを特徴とする請求項1に記載の積み重ね用治具。
【請求項3】
環状の覆工体を構成する断面弧状のセグメントの複数個を、それらの内面側を上方に向けて平面上に積み重ねた状態で仮置きする前記セグメントの設置方法において、
上面が前記セグメントの外面に沿った形状を有し又は当該形状に変形可能な複数の第一の棒状部材が横並びに配置されるとともに、それらが連結材で連結されてなる第一の支持部材を、前記平面上に設置し、
最下段の前記セグメントを、その内面側を上方に向けた状態で前記第一の支持部材上に設置した後、
上面及び下面がそれぞれ前記セグメントの外面及び内面に沿った形状を有し又は当該形状に変形可能な複数の第二の棒状部材が横並びに配置されるとともに、それらが連結材で連結されてなる第二の支持部材を、前記第二の棒状部材がそれぞれ前記第一の棒状部材の略真上に位置するように、設置済みの最上段の前記セグメントの内面の上に設置する工程と、別の前記セグメントを、その内面側を上方に向けた状態で、設置済みの最上段の前記第二の支持部材上に設置する工程と、を所定数の前記セグメントが積み重ねられるまで繰り返すことを特徴とするセグメントの設置方法。
【図1】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【公開番号】特開2010−189936(P2010−189936A)
【公開日】平成22年9月2日(2010.9.2)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−35703(P2009−35703)
【出願日】平成21年2月18日(2009.2.18)
【出願人】(000000549)株式会社大林組 (1,758)
【Fターム(参考)】
【公開日】平成22年9月2日(2010.9.2)
【国際特許分類】
【出願日】平成21年2月18日(2009.2.18)
【出願人】(000000549)株式会社大林組 (1,758)
【Fターム(参考)】
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