説明

セグメント及び該セグメントを用いたトンネル構造体構築方法

【課題】
トンネル進行方向への耐荷重を増大させても、安価に製造出来、しかも、取扱作業性も良好で、他の方向への掘削を容易に開始出来るシールド用セグメント及び該シールド用セグメントを用いたトンネル構造体構築方法を提供する。
【解決手段】
セグメント12は、円弧版状に形成されて、単独では、シールドマシンによって、切削可能な樹脂複合材からなる外層部材15と、この外層部材15の内側面に沿って着脱可能に装着されて、立坑11の進行方向である鉛直方向への荷重を負担する金属製補強部材16とを有している。
二分割によって、小片化された補強プレート部材18,18は、重量及び長手方向寸法も約1/2であるので、容易に構築された立坑11から外部へ除去した後、この外層部材15のみとなった開口予定部14から、他の進行方向へ分岐された支管13の切削が開始される。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
この発明は、トンネル構造体の一部として、他の円弧版状のセグメントと順次接合されてトンネル壁面となるセグメント及び該セグメントを用いたトンネル構造体構築方法に関するものである。
【背景技術】
【0002】
従来、図6及び図7に示すようなセグメント構造及び該セグメント構造を用いたトンネル構造体構築方法が、知られている(例えば、特許文献1等参照)。
【0003】
まず、構成から説明すると、この従来のセグメントでは、トンネル構造体1を構築する際、掘削と同時に、複数の円弧版状のセグメント2,2を隣接配置される他の円弧版状のセグメント2,2間と順次接合して、外周方向に連設することによりトンネル壁面1aが構成される。
【0004】
このようなトンネル構造体1では、一部のセグメント3,3に比較的容易に切削可能なように、コンクリート層3a内に、周方向に連続するシース孔3b…が複数形成されていて、主なトンネル構造体1の進行方向とは異なる他の方向への支管若しくは立坑等の分岐トンネル構造体4の構築を開始出来るように構成されている。
【0005】
この分岐開始用に構成されたセグメント3には、補強用に、前記シース孔3b…内に各々PC鋼線6…が配筋されると共に、コンクリート層3a内側に、更に、スチール材からなる補強板材5…が設けられている。
【0006】
次に、この従来のセグメントの作用について説明する。
【0007】
このように構成された従来のセグメントでは、前記シース孔3b…内に補強用のPC鋼線6…が、緊張状態で埋設されて、隣接配置される他のセグメント3と共に、一体化されると共に、前記コンクリート層3a内側に、更に、周囲の地盤Gから内径方向へ向けて加わる土圧を受け止めるスチール材で構成された補強板材5…が装着される。
【0008】
そして、図示省略のシールドマシンによって、推進掘削されたトンネル構造体1の進行方向に従い、前記セグメント3…を内壁面に沿わせて並設することにより、横方向のシールドトンネルが構成される。
【0009】
前記トンネル構造体1の構築後、次に、このトンネル構造体1の進行方向Tとは異なる他の方向への支管若しくは立坑等の分岐トンネル構造体4が構築される。
【0010】
この際、前記分岐トンネル構造体4のうち、掘削を開始する分岐部の側壁面に該当する部分のセグメント3,3から、前記PC鋼線6…及び前記補強板材5を前記コンクリート層3a,3aから除去する。
【0011】
そして、前記トンネル構造体1内に配置したシールドマシンを再発進させて、これらのコンクリート層3a,3aと共に、地盤Gが、所望の分岐トンネル構造体4の進行方向へ掘削される。
【0012】
なお、前記セグメントとして、硬質ウレタン樹脂からなるプラスチック発泡体をガラス長繊維で補強した複合材を用いて構成したものも知られている(例えば、特許文献2等参照)。
【特許文献1】特許第3439839号公報(段落0010乃至0020、図1乃至図6)
【特許文献2】特開2004−36177号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0013】
しかしながら、このような従来のセグメントでは、埋設後の土圧を受け止めるため、補強用のPC鋼線6…及び、一定の受圧面積を有する補強板材5が、装着された状態で埋設されている。
【0014】
このため、他の方向への支管若しくは立坑等の分岐トンネル構造体4を構築する際、これらの補強用のPC鋼線6…及び、補強板材5を除去しなければならず、作業効率が良好であるとは言い難かった。
【0015】
特に、PC鋼線6…が、外層部を形成するセグメント3のコンクリート層3a内に挿通されている場合は、トンネル構造体1内側空間から除去作業を行うことが困難な場合もあった。
【0016】
また、前記セグメントとして、硬質ウレタン樹脂からなるプラスチック発泡体をガラス長繊維で補強した複合材が用いられているものでは、ガラス繊維の延設方向Hと、トンネル構造体1進行方向Tとが直交してしまう。
【0017】
このため、例えば、立坑を構築するため、前記セグメント2…を地表から地盤G内に向けて圧力を加えながら押し込む圧入工法等、トンネル進行方向へ荷重が加わる工法では、圧縮方向の荷重に耐えきれず、圧壊してしまう虞があった。
【0018】
また、このような圧縮方向への耐荷重を向上させるため、高強度のFRP素材を用いて、セグメントを構成することも考えられるが、このようなFRP素材は、高価で、製造コストが増大してしまうといった問題があった。
【0019】
更に、前記セグメントとして、樹脂複合材を用いる場合、立坑構築時に使用する掘削用のバケット等が、内側面に当接して、損傷を与える虞もあった。
【0020】
しかも、前記トンネル構造体1から、進行方向が異なる他の方向への支管若しくは立坑等の分岐トンネル構造体4を構築する掘削を開始する際、前記補強用のPC鋼線6…及び、補強板材5が、正面視略正方形形状に除去されると、図6中斜線で示す、円形の分岐トンネル構造体4の開口部の周縁部の強度が低下してしまうといった問題もあった。
【0021】
そこで、この発明は、トンネル進行方向への耐荷重を増大させても、安価に製造出来、しかも、取扱作業性も良好で、他の方向への掘削を容易に開始出来るセグメント及び該セグメントを用いたトンネル構造体構築方法を提供することを課題としている。
【課題を解決するための手段】
【0022】
上記目的を達成するために、請求項1に記載された発明は、地中に構築される隔壁の一部を構成するセグメントにおいて、前記セグメントは、板状に形成されて、単独では、切削可能な樹脂複合材からなる外層部材と、該外層部材の内側面に沿って着脱可能に装着されて、トンネル構造体の進行方向への荷重を負担する金属製補強部材とを有するセグメントを特長としている。
【0023】
また、請求項2に記載されたものは、前記金属製補強部材は、前記外層部材の延設方向に沿って複数枚に分割されて、連設されることにより、該外層部材の内壁面に装着される補強プレート部材からなる請求項1記載のセグメントを特長としている。
【0024】
更に、請求項3に記載されたものは、前記金属製補強部材には、周縁部に一体に形成されて内側に突設される周縁フランジ部と略同一高さで内向きに突設されて、延設方向を前記トンネル構造体の進行方向に一致させた複数のL字状補強リブ部が、周方向に所定間隔を置いて設けられると共に、並設される他のセグメントの該L字状補強リブ部と、前記トンネル構造体の進行方向で、一列となるように、前記外層部材に装着される請求項1又は2記載のセグメントを特長としている。
【0025】
そして、請求項4に記載されたものは、前記金属製補強部材は、前記トンネル構造体から構築される分岐トンネル構造体の開口部と略一致する形状を呈する除去部と、該開口部周縁を補強する補強リング部とに分割されて設けられている請求項1乃至3のうち、何れか一項記載のセグメントを特長としている。
【0026】
また、請求項5に記載されたものは、トンネル構造体の一部として、他の円弧版状のセグメントと順次接合されてトンネル壁面を構築するセグメントを用いたトンネル構造体構築方法において、前記セグメントには、前記外層部材の内側面に、前記金属製補強部材を予め装着して、前記トンネル構造体の進行方向へ押圧力を与えて、該外層部材を該金属製補強部材と共に、隣接配置される他のセグメントと連設しながら圧入埋設した後、前記外層部材の内側面から、前記金属製補強部材を取り外し、該外層部材のみとなった部分から他の進行方向へ、分岐されるトンネル構造体の切削を開始する請求項1乃至4のうち、何れか一項記載のセグメントを用いたトンネル構造体構築方法を特長としている。
【発明の効果】
【0027】
このように構成された本願発明の請求項1記載のものは、前記セグメントの外層部材の内側面に沿って、前記金属製補強部材を装着して、例えば、立坑を構築するため、該セグメントを、地表から地盤内に向けて圧力を加えながら押し込むと、前記地中に構築される隔壁の進行方向である鉛直方向への荷重が、前記金属製補強部材によって負担される。
【0028】
このため、前記外層部には、従来のような圧壊を発生させるような大きさの荷重が加わることが無いので、比較的安価な樹脂複合材を使用することが出来、製造コストの上昇を抑制出来る。
【0029】
また、前記金属製補強部材を、構築された隔壁の内部から取り外して除去するだけで、切削可能な樹脂複合材からなる外層部材が、露呈するので、前記トンネル構造体から、進行方向が異なる他の方向への支管若しくは立坑等の分岐トンネル構造体の構築を行う掘削が直ちに開始できる。
【0030】
また、請求項2に記載されたものは、外層部材の内壁面に装着される補強プレート部材が、前記外層部材の延設方向に沿って複数枚に分割されて、連設されることにより前記金属製補強部材となって、前記トンネル構造体の進行方向への荷重が負担される。
【0031】
このため、該補強プレートを個別に取り外せば、小片化された金属製補強部材として、容易に、トンネル構造体の外部への除去が出来、取扱作業性が良好である。
【0032】
更に、請求項3に記載されたものは、前記金属製補強部材に突設された複数のL字状リブ部材が、並設される他の前記トンネル構造体のL字状リブ部材と一列となるように配列されて、進行方向への押圧荷重を、最も進行方向前方に位置するセグメントの前記金属製補強部材に直接、伝達する。
【0033】
このため、前記外層部材に加わる押圧荷重を更に小さくすることが出来、圧縮方向の荷重及び荷重反力の影響を外層部材が殆ど受けることがない。
【0034】
そして、請求項4に記載されたものは、前記金属製補強部材が、前記トンネル構造体から構築される分岐トンネル構造体の開口部と略一致する形状を呈する除去部と、該開口部周縁を補強する補強リング部とに分割されているので、前記除去部を外して、取り除くことにより、前記分岐トンネル構造体の開口部と略同一形状の掘削可能な外層部材のみをトンネル構造体内部空間に露呈させることが出来る。
【0035】
このため、開口部周縁を別途補強したり、或いは、外層部の厚みを予め厚めに設定する必要が無くなり、更に、製造コストの増大を抑制出来る。しかも、該補強リング部をガイドとして用いれば、確実に、シールドマシンをトンネル構造体の進行方向と異なる方向へ再発進させることができる。
【0036】
また、請求項5に記載されたセグメント構造を用いたトンネル構造体構築方法では、前記セグメントの外層部材の内側面に、金属製補強部材が装着されているので、前記トンネル構造体の進行方向へ押圧力が与えられても、該押圧力や掘進反力で、前記外層部材を圧壊させる虞がない。
【0037】
このため、例えば、耐荷重性能が良好な高価な高強度のFRP素材を用いる必要が無く、安価に製造出来、しかも、前記金属製補強部材は、容易に取り外して除去できるので、取扱作業性も良好で、他の方向への掘削を容易に開始出来る。
【発明を実施するための最良の形態】
【0038】
次に、図面に基づいて、この発明を実施するための最良の実施の形態のシールド用セグメント及び該シールド用セグメントを用いたトンネル構造体構築方法を説明する。
【0039】
なお、前記従来例と同一乃至均等な部分については同一符号を付して説明する。
【0040】
図1乃至図5は、この発明の実施の形態のセグメントとしてのシールド用セグメント12等を説明するものである。
【0041】
まず、構成を説明すると、この発明の実施の形態のシールド用セグメント12等は、図1に示すように、地表から地盤内部方向へ向けて、周方向に複数の円弧版状のシールド用セグメント12,12を、他のセグメント12と環状を呈するように連結したものを、順次、積層接合しながら、トンネル構造体である立坑11の進行方向へ、ジャッキ等によって押圧力J,Jを加えつつ、埋設して、壁面を構築し、この壁面内側の土等を掘削して除去することにより、トンネル構造体内部に空間を構築するいわゆる圧入工法に用いられるものである。
【0042】
なお、図1では、理解を容易なものとするため、模式的に図中最も上部のシールド用セグメント12として、外層部材15の内側面に、着脱可能な金属製補強部材16,16を設けたものを図示しているが、後述する開口予定部14以外は、従来から、通常用いられているコンクリート製のシールド用セグメントであってもよい。
【0043】
即ち、この実施の形態では、更に、各シールド用セグメント12…等が、圧入されることにより構築された立坑11から、更に、立坑11の進行方向と約90度異なる水平方向へ向けて、支管13を分岐させて延設するため、この立坑11を構成するシールド用セグメント12…の一部に、図2又は図4に示すような正面視円形の開口予定部14が設けられるものである。
【0044】
まず、この開口予定部14を構成する各セグメント12の構成について詳述すると、このセグメント12は、図3に示すように、円弧版状に形成されて、単独では、シールドマシンによって、切削可能な樹脂複合材からなる外層部材15と、この外層部材15の内側面に沿って着脱可能に装着されて、立坑11の進行方向である鉛直方向への荷重を負担する金属製補強部材16とを有して主に構成されている。
【0045】
このうち、前記外層部材15は、ガラス長繊維が充填されたウレタン樹脂発泡体からなる湾曲形成された板材が、複数枚、エポキシ樹脂系接着材によって貼り合わせられて積層されると共に、両端部に、隣接配置される他の外層部材15との間の連結に用いる連結部17,17が設けられて、主に構成されている。
【0046】
これらの外層部材15の上,下端面には、図3に示すように、複数のピン嵌着用凹部15a…が一定間隔をおいて凹設形成されていて、図4に示すように、上下方向に隣接配置される他のシールド用セグメント12,12間が、これらの上,下端面に形成されたピン嵌着用凹部15a,15aに各々圧入される樹脂製ピン部材15b…によって連結されるように構成されている。
【0047】
また、前記金属製補強部材16は、前記外層部材15と上下方向幅寸法が略同一となると共に、この外層部材15の円弧延設方向に沿って、同様に円弧形状を呈するように形成されて、2枚に分割された左,右一対の補強プレート部材18,18が、上下方向に隣接配置されることにより、上,下に隣接配置されるものでは、異なる長さを有しているこれらの補強プレート部材18,18によって、前記立坑11から構築される支管13の開口部24と略一致する略円形形状を外周縁で形成する除去部19が構成されている。
【0048】
このうち、この実施の形態の各補強プレート部材18には、湾曲平面状を呈するプレート本体18aの周縁には、内側に向けて突設される周縁フランジ部18bと、左,右一対の補強プレート部材18,18間が、ボルト部材25,25及びナット部材26,26を用いて、着脱可能に連結する左,右連結フランジ部18c,18cと、上下方向に隣接する他の補強プレート部材18,18間を、ボルト部材25,25及びナット部材26,26を用いて、着脱可能に連結する上,下連結フランジ部18d,18eとが一体に設けられている。
【0049】
更に、この実施の形態の各補強プレート部材18には、図2及び図3に示すように、前記周縁フランジ部18b等と略同一高さで内向きに突設されて、延設方向を前記トンネル構造体11の進行方向である鉛直方向に一致させた複数のL字状補強リブ部21…が、周方向に所定間隔を置いて設けられている。
【0050】
このL字状補強リブ部21は、図3に示すように断面略L字型を呈していると共に、図2に示すように、前記上,下連結フランジ部18d,18e内側対向面間を連結するようにプレート本体18aの上下方向略全幅に渡り一体に形成されている。
【0051】
これらの各セグメント12に形成されたL字状補強リブ部21…は、上下方向に並設される他のセグメント12のL字状補強リブ部21…と、前記立坑11の進行方向である鉛直方向に沿って、一列となるように、前記外層部材15の内側に、各補強プレート部材18…が装着される。
【0052】
また、この実施の形態では、図2に示すように、前記左,右連結フランジ部18c,18cが、上下方向で隣接配置される他の補強プレート部材18,18の左,右連結フランジ部18c,18cと前記立坑11の進行方向である鉛直方向に沿って、一列となるように2枚が重合されて連結される位置が、開口予定部14の左右方向略中央部を縦に縦断して構成されている。
【0053】
そして、前記金属製補強部材16の複数の各補強プレート部材18,18…によって構成される除去部19の周囲には、図4に示すように、複数枚、上下方向に隣接配置されることにより、連設されて、開口部24周縁を補強する補強リング部材20…が設けられている。
【0054】
これらの補強リング部材20…は、図3及び図4に示すように、前記連結部17,17に対して、ボルト部材125,125及びナット部材126,126等が用いられて締結固定されている。
【0055】
これらの各補強リング部20…には、内側に、略円形形状の開口部24の外周縁を形成すると共に、シールドマシンを再発進させる際のガイドとして用いる補強リングフランジ20a…が、設けられている。
【0056】
この実施の形態では、前記略円形形状の開口部24外周縁を正面視略円形に構成するため、図2及び図3に示すように、配置される高さ位置によって、各補強リング部20,20の補強リングフランジ20a…の形状が異なるように構成されている。
【0057】
更に、この実施の形態では、前記補強リングフランジ20a…には、図3中白抜き矢印に示すように、左,右に分割された前記補強プレート部材18,18を前記外層部材15に並行に着脱可能とする一定の挿抜角度αが与えられていて、個別に、先の補強プレート18が装着されていても、後から装着される補強プレート18を容易に、所定位置に嵌着出来るように構成されている。
【0058】
そして、図5に示すように、前記補強プレート部材18…の各周縁フランジ部18b…と、この補強リングフランジ20a…との間が、ボルト部材25,25及びナット部材26,26によって連結されて、前記補強プレート部材18が、着脱自在となるように構成されている。
【0059】
次に、この実施の形態のシールド用セグメント構造及び該シールド用セグメント構造を用いたトンネル構造体構築方法の作用について説明する。
【0060】
このように構成された実施の形態のシールド用セグメント12では、予め金属製補強部材16を各セグメント12の外層部材15の内側面に装着するため、まず、図3に示すように、前記各セグメント12の外層部材15の左,右両端に位置する前記連結部17,17の内側面に、前記各補強リング部材20,20が、ボルト部材125,125及びナット部材126,126によって、締結固定される。
【0061】
また、この外層部材15の内側面には、前記補強リング部材20,20の補強リングフランジ部20a,20aの対向面間に位置するように、金属製補強部材18,18が予め装着される。
【0062】
すなわち、この金属製補強部材18の各周縁フランジ部18b…と、この補強リングフランジ20a…との間が、図5に示すように、ボルト部材25,25及びナット部材26,26によって連結される。
【0063】
また、前記金属製補強部材18,18間では、各左,右連結フランジ部18c,18c間が、図2又は図3に示すように、ボルト部材25,25及びナット部材26,26によって連結される。
【0064】
この際、前記補強リングフランジ20a…には、図3に示すように、一定の挿抜角度αが与えられていて、左,右に2分割された補強プレート部材18を、前記外層部材15と略平行にあてがって容易に装着できる。
【0065】
このように内側面に、補強プレート部材18,18及び補強リング部材20,20を有する金属製補強部材16が装着されたセグメント12に、他の水平方向に隣接配置されるセグメントを前記左,右端部に設けられた連結部17,17を介して環状に連結して、立坑11を構築する地盤G上面に載置する。
【0066】
そして、図1に示すように、前記立坑11の進行方向である鉛直下方へ向けて、ジャッキ等によって押圧力J,Jを加えつつ、壁面内側の土等を掘削して除去することにより、埋設する。
【0067】
このセグメント12…が下方に移動した後、更に、次の環状に連結されたセグメント12を、図4に示す樹脂製ピン部材15b…を用いて、前記外層部材15,15間で連結すると共に、図2に示すように、上,下連結フランジ部18d,18e間が、ボルト部材25,25及びナット部材26,26を用いて連結される。
【0068】
そして、前記立坑11の進行方向である鉛直下方へ向けて、ジャッキ等によって押圧力J,Jを加えつつ、壁面内側の土等を掘削して除去する工程を、順次繰り返す。
【0069】
このように、上方からセグメント12を、地表から地盤G内に向けて圧力を加えながら押し込むと、前記立坑11の進行方向である鉛直方向への荷重が、前記金属製補強部材16,16によって負担される。
【0070】
詳しくは、図1若しくは図2に示すように、前記金属製補強部材16等に突設された複数のL字状リブ部材21,21が、上下方向に並設される他の前記金属製補強部材16のL字状リブ部材21,21と一列となるように配列されて、進行方向への押圧荷重が、最も進行方向前方に位置するセグメント12の前記金属製補強部材16,16に直接、伝達される。
【0071】
このため、前記外層部材15,15に加わる押圧荷重が更に小さくすることが出来、圧縮方向の荷重及び荷重反力の影響を外層部材15,15が殆ど受けることがない。
【0072】
この実施の形態のL字状リブ部材21は、断面略L字状であるので、単板状のリブに比して、前記板状のプレート本体18aと共に、断面略コ字状又は略J字状の閉断面を有する中空柱状となって、上,下方向に一列に連設されて、あたかも貫通配置される通し柱材のような構成となり、トンネル進行方向への耐荷重性能を格段に向上させることができる。
【0073】
しかも、このL字状リブ部材21は、耐荷重性能を向上させつつ、内側面側端面の内径方向への突設量を減少させて、他のセグメント等の内側面位置と略面一とするように構成できるので、この点においても、立坑構築時に使用する掘削用のバケット等が、内側面に干渉する虞を減少させることができる。
【0074】
更に、この実施の形態では、図2に示すように、前記左,右連結フランジ部18c,18cが、板状部分を2枚重合させて、上下方向で隣接配置される他の補強プレート部材18,18の左,右連結フランジ部18c,18cと前記立坑11の進行方向である鉛直方向に沿って、一列となるように連結される。
【0075】
この一列となる部分が、開口予定部14の左右方向略中央部で、最も押圧力の耐荷重が必要な開口径の大きな部分を縦に縦断して構成されているので、効率よく荷重が負担されて、更に、開口予定部14に設けられた外層部材15を圧壊させる虞を減少させることができる。
【0076】
このため、前記外層部材15には、従来のような圧壊を発生させるような大きさの荷重が加わることが無いので、比較的安価な樹脂複合材を使用することが出来、製造コストの上昇を抑制出来る。
【0077】
前記開口予定部14が、目標深さに到達するまで、前記セグメント12の外層部材15が、これらの金属製補強部材16と共に、隣接配置される他のセグメントと連設しながら圧入埋設された後、前記外層部材15の内側面から、前記金属製補強部材16の補強プレート部材18,18が取り外される。
【0078】
この際、前記各ボルト部材25,25及びナット部材26,26間の螺合が各々解除されると共に、補強リングフランジ20a…に与えられた一定の挿抜角度αによって、前記二分割された前記補強プレート部材18,18が、図3中白抜き矢印に示すように、前記外層部材15から略平行に抜き出すことができる。
【0079】
このように、前記補強リングフランジ20a…に、一定の挿抜角度αが与えられているので、個別に前記補強プレート部材18を取り外して抜き出す事も容易に行えると共に、二分割によって、小片化された前記補強プレート部材18…は、重量及び長手方向寸法が分割されていないものに比して、約1/2であるので、各セグメント12等によって構成された立坑11の内側面に干渉して損傷を与える虞が減少して、容易に構築された立坑11から外部への除去が出来、取扱作業性が良好である。
【0080】
次に、この外層部材15のみとなった開口予定部14から、他の進行方向へ分岐された図1に示すような支管13の切削が開始される。
【0081】
この際、前記金属製補強部材16が、前記立坑11から再発進により、構築される支管13の開口部24と略一致する略円形形状を呈する除去部19と、この開口部24周縁を補強する補強リング部材20,20とに分割されているので、前記除去部19の補強プレート部材18,18のみを外して、取り除くことにより、前記支管13の開口部24と略同一形状の掘削可能な樹脂複合材からなる外層部材15,15のみを、立坑11の内部空間に露呈させることが出来る。
【0082】
このため、開口部24周縁を別途補強したり、或いは、外層部材15の厚みを予め厚めに設定する必要が無くなり、更に、製造コストの増大を抑制出来る。
【0083】
しかも、この補強リング部材20,20の補強リングフランジ20aをガイドとして用いれば、確実に、シールドマシンをトンネル構造体の進行方向と異なる支管13方向へ再発進させることができる。
【0084】
上述してきたように、この実施の形態シールド用セグメント構造を用いたトンネル構造体構築方法では、前記セグメント12の外層部材の内側面に、金属製補強部材が装着されているので、前記トンネル構造体の進行方向へ押圧力が与えられても、この押圧力や掘進反力で、前記外層部材15を圧壊させる虞がない。
【0085】
このため、例えば、耐荷重性能が良好な高価な高強度のFRP素材を用いる必要が無く、安価に製造出来、しかも、前記金属製補強部材16は、容易に取り外して除去できるので、取扱作業性も良好で、他の方向への掘削を容易に開始出来る。
【0086】
以上、図面を参照して、本発明の実施の形態を詳述してきたが、具体的な構成は、この実施の形態に限らず、本発明の要旨を逸脱しない程度の設計的変更は、本発明に含まれる。
【0087】
即ち、前記実施の形態のシールド用セグメントでは、周方向に複数の円弧版状のシールド用セグメント12,12を、他のセグメント12と環状を呈するように連結したものを示して説明してきたが、特にこれに限らず、例えば、平板形状、矩形版状、多角形版状のセグメント等、側面の円弧が、一定角度で屈曲されて形成されるセグメントで、立坑若しくはトンネル等の構造体の断面形状を断面矩形状等の多角形形状、楕円形形状若しくは長円形形状に構築するものであるならば、どのようなセグメントの形状であってもよい。
【0088】
更に、図1に示すように、模式的に図中最も上部のシールド用セグメント12として、外層部材15の内側面に、着脱可能な金属製補強部材16,16を設けたものを図示しているが、特にこれに限らず、前記開口予定部14以外は、従来から、通常用いられているコンクリート製のシールド用セグメントであってもよい。
【0089】
また、この実施の形態では、先に立坑11を圧入工法によって構築するものを示して説明してきたが、特にこれに限らず、横坑等を先にシールド工法によって構築するものに、前記シールド用セグメント12を用いても、トンネル進行方向に所定の荷重が加わる工法であれば良い。
【0090】
この際、前記開口予定部14に用いられる金属製補強部材16のように、補強プレート部材18と、補強リング部材20とによって構成されているものに限らず、外層部材15の内側面略全長を2枚以上の複数枚の金属製補強プレート部材18…で分割して構成する等、前記外層部材15の内側面に沿って着脱可能に装着されて、トンネル構造体の進行方向への荷重を負担する金属製補強部材であれば、どのような形状、数量及び材質であってもよい。
【0091】
また、この実施の形態では、圧入されることにより構築された立坑11から、更に、立坑11の進行方向と約90度異なる水平方向へ向けて、支管13が分岐されて延設されるように構成されているが、特にこれに限らず、例えば、約45度或いは約60度等、どのような角度で分岐される分岐トンネル構造体であってもよく、延設方向も水平に限らず、一定角度で傾斜していたり、湾曲していてもよく、形状、分岐数量、及び分岐トンネル構造体の材質が特に限定されるものではない。
【図面の簡単な説明】
【0092】
【図1】この発明の最良の実施の形態のシールド用セグメント構造及び該シールド用セグメント構造を用いたトンネル構造体構築方法で、全体の構成を模式的に示す一部透過斜視図である。
【図2】実施の形態のシールド用セグメントを用いたトンネル構造体で、図1中A−A線に沿った位置に相当する部分での立坑を内側面側から見た断面図である。
【図3】実施の形態のシールド用セグメントを用いたトンネル構造体で、図2中B−B線に沿った位置での補強プレート部材の着脱を説明する断面図である。
【図4】実施の形態のシールド用セグメントを用いたトンネル構造体で、図1中C矢視方向での開口予定部の構成を説明する一部透過正面図である。
【図5】実施の形態のシールド用セグメントで、金属製補強部材の補強プレート部材と、補強リング部材との連結構造を説明する拡大正面図である。
【図6】従来例のシールド用セグメントを用いたトンネル構造体の平面図である。
【図7】従来例のシールド用セグメントを用いたトンネル構造体を説明し、図6中E−E線に沿った位置での断面図である。
【符号の説明】
【0093】
11 立坑(トンネル構造体)
12 セグメント(シールド用セグメント)
13 支管(分岐トンネル構造体)
14 開口予定部
15 外層部材
16 金属製補強部材
18,18 補強プレート部材
19 除去部
20,20 補強リング部材(補強リング部)
21 L字状リブ部材
24 開口部13 地面

【特許請求の範囲】
【請求項1】
地中に構築される隔壁の一部を構成するセグメントにおいて、
前記セグメントは、板状に形成されて、単独では、切削可能な樹脂複合材からなる外層部材と、該外層部材の内側面に沿って着脱可能に装着されて、トンネル構造体の進行方向への荷重を負担する金属製補強部材とを有することを特長とするセグメント。
【請求項2】
前記金属製補強部材は、前記外層部材の延設方向に沿って複数枚に分割されて、連設されることにより、該外層部材の内壁面に装着される補強プレート部材からなることを特長とする請求項1記載のセグメント。
【請求項3】
前記金属製補強部材には、周縁部に一体に形成されて内側に突設される周縁フランジ部と略同一高さで内向きに突設されて、延設方向を前記トンネル構造体の進行方向に一致させた複数のL字状補強リブ部が、周方向に所定間隔を置いて設けられると共に、並設される他のセグメントの該L字状補強リブ部と、前記トンネル構造体の進行方向で、一列となるように、前記外層部材に装着されることを特長とする請求項1又は2記載のセグメント。
【請求項4】
前記金属製補強部材は、前記トンネル構造体から構築される分岐トンネル構造体の開口部と略一致する形状を呈する除去部と、該開口部周縁を補強する補強リング部とに分割されて設けられていることを特長とする請求項1乃至3のうち、何れか一項記載のセグメント。
【請求項5】
トンネル構造体の一部として、他の円弧版状のセグメントと順次接合されてトンネル壁面を構築するセグメントを用いたトンネル構造体構築方法において、前記セグメントには、前記外層部材の内側面に、前記金属製補強部材を予め装着して、前記トンネル構造体の進行方向へ押圧力を与えて、該外層部材を該金属製補強部材と共に、隣接配置される他のセグメントと連設しながら圧入埋設した後、前記外層部材の内側面から、前記金属製補強部材を取り外し、該外層部材のみとなった部分から他の進行方向へ、分岐されるトンネル構造体の切削を開始することを特長とする請求項1乃至4のうち、何れか一項記載のセグメントを用いたトンネル構造体構築方法。


【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【公開番号】特開2006−225929(P2006−225929A)
【公開日】平成18年8月31日(2006.8.31)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2005−39606(P2005−39606)
【出願日】平成17年2月16日(2005.2.16)
【出願人】(000002174)積水化学工業株式会社 (5,781)
【出願人】(000206211)大成建設株式会社 (1,602)
【出願人】(000148346)株式会社錢高組 (67)
【Fターム(参考)】