説明

セグメント式固定子

【課題】相間絶縁紙を減らしコイルエンド部分の小型化が可能なセグメント式固定子を提供する。
【解決手段】セグメント式の固定子10において、第1セグメントSgに備えられ、スロット13から反リード側に突出する反リード部Sgcに形成される内周側にレーンチェンジされる第1レーンチェンジ部Sgeと、第1セグメントSgと同じスロット13に挿入される第2セグメントSgに備えられ反リード側に突出して外周側にレーンチェンジされる第2レーンチェンジ部Sge2とを有し、周方向に沿って一方向に曲げられる最外周に位置する第1リード部Sga1と、周方向に沿って他方向に曲げられる最内周に位置する第10リード部Sga10と、最外周と最内周以外のリード部Sgaであり、2本ずつペアで曲げられ、隣り合うペア同士は周方向に沿って逆方向に曲げられている第2リード部Sga2乃至第9リード部Sga9と、を有する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、セグメントコイルを用いたセグメント式固定子に関するものであり、詳しくはセグメントコイルの形状を工夫することでセグメント式固定子のコイルエンドに用いる相間絶縁紙の数を減らすことが可能な技術に関するものである。
【背景技術】
【0002】
近年、環境問題に鑑みて自動車に駆動用のモータを搭載するケースが多くなってきている。車載される駆動用のモータは、車両を動かす為に大出力でかつ車載されるために省スペースであることが望ましい。特にハイブリッド車はエンジンとモータをエンジンルームの中に納める必要があるため、小型化の要請が高い。モータの出力を向上させるためにはモータに用いるコイルの断面積を増やし、固定子の占積率を高める方法が模索されている。一方、モータの小型化に関しては様々なアプローチで小型化が検討されている。
【0003】
特許文献1には、セグメント式ステータ構造に関する技術が開示されている。固定子コアに、径方向の移動を規正する保持部を有したインシュレータを備えた上で、絶縁被覆されていないセグメントを挿入し、コイルエンド部分に円環状の相間絶縁紙を挿入して形成している。絶縁をインシュレータと相間絶縁紙によって確保し、被覆されていないセグメントを用いることで、リード側コイルエンドにおける溶接性を向上させることが可能となる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2006−166592号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかしながら、特許文献1の技術を適用してセグメント式固定子を形成するにあたっては、以下に説明する課題があると考えられる。
【0006】
特許文献1に記載の技術を用いた場合、固定子の絶縁性を相間絶縁紙及びインシュレータによって確保する必要があるため、それぞれに確実な絶縁性を確保するために相間絶縁紙及びインシュレータのコストが高くなってしまうと考えられる。また、スロットに挿入するセグメントの数が増えると、固定子の径方向に隣り合うセグメントの間に必ず相間絶縁紙を挟むという構成の場合、コイルエンドにおいて大きく幅を採る必要が出てくる他、固定子の軸方向へのセグメントの延長も検討する必要があり、固定子の小型化という目的に反する結果となってしまう。
【0007】
そこで、本発明はこのような課題を解決するために、相間絶縁紙を減らしコイルエンド部分の小型化が可能なセグメント式固定子を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
前記目的を達成するために、本発明の一態様によるセグメント式固定子は以下のような特徴を有する。
【0009】
(1)固定子コアの有するスロットに挿入したU字セグメントのリード側が捻られてコイルを形成するセグメント式固定子において、前記固定子コアの反リード側に設けられる前記U字セグメントのレーンチェンジ部は、前記U字セグメントのうち、第1セグメントに備えられ、前記スロットから前記固定子コアの反リード側に突出する反リード側突出部分に形成される、前記固定子コアの内周側にレーンチェンジする第1レーンチェンジ部と、前記第1セグメントと同じ前記スロットに挿入される第2セグメントに備えられ、前記固定子コアの反リード側に突出して前記固定子コアの外周側にレーンチェンジされる第2レーンチェンジ部と、を有し、前記第1セグメント又は前記第2セグメントの、前記固定子コアのリード側に突出するリード側端部は、前記固定子コアの周方向に沿って一方向に曲げられる、前記固定子コアの最外周に位置する最外周リード側端部と、前記固定子コアの周方向に沿って他方向に曲げられる、前記固定子コアの最内周に位置する最内周リード側端部と、前記最外周と前記最内周以外の前記リード側端部であり、2本ずつペアで曲げられ、隣り合う前記ペア同士は、前記固定子コアの周方向に沿って逆方向に曲げられている内側リード側端部と、を有することを特徴とする。
【発明の効果】
【0010】
このような特徴を有する本発明の一態様によるセグメント式固定子により、以下のような作用、効果が得られる。
【0011】
上記(1)に記載の態様により、固定子コアに挿入するU字セグメントのレーンチェンジ部が第1レーンチェンジ部と第2レーンチェンジ部の2種類タイプが用意され、リード側に突出するリード側端部の捻り方向を最外周と最内周以外を2本ずつペアで曲げることで、リード側及び反リード側に用いる相間絶縁紙を減らすことが可能である。これは、隣り合うU字セグメント同士で相を揃えることが可能になる為であり、基本的にペアとなるU字セグメント同士の間に相間絶縁紙を必要としない。このように、固定子のコイルエンドに用いる相間絶縁紙を削減することで、固定子のコストダウンに繋げることが可能となる。また課題でも示したが、相間絶縁紙の挿入枚数を減らすことができることで、固定子のコイルエンドの軸方向の高さと幅を抑えることが出来る。このため、固定子の小型化に貢献可能である。
【図面の簡単な説明】
【0012】
【図1】本実施形態の、固定子の斜視図である。
【図2】本実施形態の、固定子の反リード側の平面図である。
【図3】本実施形態の、セグメントの平面図である。
【図4】本実施形態の、半相分のセグメントコイルの斜視図である。
【図5】本実施形態の、1相分のセグメントコイルが固定子コアに挿入された様子を平面図である。
【図6】本実施形態の、セグメントコイルの反リード側のコイルエンドの拡大図である。
【図7】(a)本実施形態の、固定子コアの概略斜視図である。(b)本実施形態の、固定子コアにインシュレータを挿入した様子の概略斜視図である。(c)本実施形態の、セグメントの概略斜視図である。(d)本実施形態の、固定子コアにセグメントを挿入した様子の概略断面図である。(e)本実施形態の、固定子コアにセグメントを挿入し、セグメントの端部を溶接した様子の概略断面図である。
【図8】本実施形態の、固定子の反リード側に配置される相間絶縁紙の位置について説明する模式図である。
【図9】本実施形態の、固定子のリード側の部分拡大平面図である。
【図10】本実施形態の、固定子の反リード側の部分拡大図である。
【図11】本実施形態の、固定子のリード側に配置される相間絶縁紙の位置について説明する模式図である。
【図12】本実施形態の、固定子の結線を表す模式図である。
【図13】比較のために用意した、固定子の反リード側の拡大図である。
【図14】比較のために用意した、固定子のリード側の拡大図である。
【図15】比較のために用意した、固定子の反リード側の模式図である。
【図16】比較のために用意した、固定子のリード側の模式図である。
【図17】本実施形態の、固定子のリード側のコイルエンドの拡大斜視図である。
【発明を実施するための形態】
【0013】
まず、本発明の実施形態について、図面を用いて説明する。
【0014】
図1に、本実施形態の固定子10の斜視図を示す。図2に、固定子10の反リード側の平面図を示す。固定子10は、固定子コア11とコイル20を備えている。固定子コア11はプレス等の加工方法によって打ち抜き形成された電磁鋼板を積層して形成されている。固定子コア11には内周側にティース12が突出するように備えられており、隣り合うティース12の間にはスロット13が備えられている。したがってティース12及びスロット13は固定子コア11に対して放射線状に配置されることになる。
【0015】
本実施形態では固定子コア11の有するティース12は48本で、スロット13は48スロットとなっている。スロット13には、後述する図7に示される様な略コの字状に折り曲げられて形成されたインシュレータ25で隔てられ、セグメントSgが複数本ずつ挿入されている。インシュレータ25は絶縁性を有する樹脂製もしくは紙製で、固定子コア11とセグメントSgとの間の絶縁を確保している。また固定子コア11には外周側に凸となるリブ14が3カ所用意されており、このリブ14にボルト孔14aが用意されている。ボルト孔14aには図示しないボルトが通されて、図示しないカバーの取り付けや固定子コア11をトランスアクスルケースなどへの取り付け等に用いられる。
【0016】
コイル20は、セグメントSgを固定子コア11のスロット13に挿入した後、固定子コア11のコイルエンド側に突出した端部を接合することで円環状に形成されたものである。図3に、セグメントSgの平面図を示す。セグメントSgは、平角導体Dを略U字状にエッジワイズ曲げ加工して形成したものである。なお、実際にはセグメントSgは複数種類用意され、又、固定子コア11に挿入した後に捻られるので、図3ではあくまで説明のために簡略化して示している。セグメントSgは、開口側にリード部Sgaを備える。リード部Sgaは便宜上、第1リード部SgaAと第2リード部SgaBと呼び分けており、それぞれの先端は後述する接合部Sgfを形成する為に部分的に絶縁性の被覆が剥離されている。
【0017】
リード部Sgaと接続してスロット13内に配置されるスロット内導線部Sgbを備える。スロット内導線部Sgbは便宜上、第1スロット内導線部SgbAと第2スロット内導線部SgbBと呼び分けている。又、反リード部Sgcとして、斜辺部Sgdとレーンチェンジ部Sgeとを備えている。斜辺部Sgdも、便宜上、第1斜辺部SgdAと第2斜辺部SgdBと呼び分けている。固定子10はU相、V相、W相を有する3相のモータを形成する固定子10である。平角導体Dは矩形断面の導電率の高い銅等の金属製の線材が用いられており、その周囲に絶縁被覆が施されている。なお、セグメントSgは複数種類用意されており、細かい部分の形状が異なる。ただし、基本的には図3に示す形状と類似している。
【0018】
図4に、半相分のセグメントコイルSChの斜視図を示す。なお、図4のセグメントコイルSChは説明の都合で一部省略している。図5に、1相分のセグメントコイルSCが固定子コアに挿入された様子を平面図に示す。図4に示した半相分のセグメントコイルSChを6つ重ねることで、コイル20が形成される。セグメントコイルSCは、図3に示すセグメントSgのリード部Sgaを捻ることで一続きのコイルとして形成される。図5では、U相第1コイルSChU1とU相第2コイルSChU2とが隣り合うスロット13に挿入されている。U相第1コイルSChU1とU相第2コイルSChU2とがコイルエンドにおいて図示しないバスバで結合され、1相分のU相コイルSCUが形成される。
【0019】
図6に、セグメントコイルSChの反リード側のコイルエンドの拡大図を示す。便宜的にスロット13に挿入されているスロット内導線部Sgbを固定子コア11の外周側から、第1スロット内導線部Sgb1、第2スロット内導線部Sgb2、第3スロット内導線部Sgb3……、第10スロット内導線部Sgb10としている。よって第10スロット内導線部Sgb10が固定子コア11のスロット13の最内周に配置される。そして、第1スロット内導線部Sgb1から伸びた反リード部Sgcのレーンチェンジ部Sgeを第1レーンチェンジ部Sge1とし、その他のレーンチェンジ部Sgeについてもスロット内導線部Sgbに対応させて番号が振られている。
【0020】
セグメントコイルSChの反リード側は、図4乃至図6に示される様にレーンチェンジ部Sgeが千鳥に配置される。具体的には、第1スロット内導線部Sgb1と斜辺部Sgdを介して接続される第1レーンチェンジ部Sge1が図6の左側から固定子コア11の内周側にレーンチェンジされているのに対し、第1レーンチェンジ部Sge1に隣接して配置される第2レーンチェンジ部Sge2は図6左側から固定子コア11の外周側にレーンチェンジされている。結果として、第1レーンチェンジ部Sge1と第2レーンチェンジ部Sge2とは固定子コア11の径方向に向かい合うような形状となる。
【0021】
同様にして、第2レーンチェンジ部Sge2の内周側に配置される第5レーンチェンジ部Sge5は図6の右方向から固定子コア11の内周側にレーンチェンジされている。また、第6レーンチェンジ部Sge6は固定子コア11の外周側に、第9レーンチェンジ部Sge9は固定子コア11の内周側に、第10レーンチェンジ部Sge10は固定子コア11の外周側にレーンチェンジする。
【0022】
一方の、第3スロット内導線部Sgb3と斜辺部Sgdを介して接続される第3レーンチェンジ部Sge3が図6の左側から外周側にレーンチェンジされているのに対し、第3レーンチェンジ部Sge3に隣接して配置される第4レーンチェンジ部Sge4は図6左側から固定子コア11の内周側にレーンチェンジされている。同様に、第7レーンチェンジ部Sge7は固定子コア11の外周側に、第8レーンチェンジ部Sge8は固定子コア11の内周側にレーンチェンジする。すなわち、固定子コア11の径方向に隣り合うレーンチェンジ部は、径方向に異なる方向にレーンチェンジするように千鳥に配置される。
【0023】
また、図6中央側のレーンチェンジ部Sgeが6つ配置される六線部UAでは、斜辺部Sgdも、Sgd1、Sgd2、Sgd5、Sgd6、Sgd9、Sgd10の6本あり、図6右側のレーンチェンジ部Sgeが4つ配置される四線部分UBでは、斜辺部SgdもSgd3,Sgd4,Sgd7、Sgd8の4本ある。セグメントコイルSChはこの六線部UAと四線部分UBとが交互に形成されてなる。
【0024】
このようにセグメントSgが配置されるコイル20は、実際には固定子コア11にセグメントSgが挿入されることで形成される。次に、セグメントSgを固定子コア11に挿入される手順について説明する。図7に、固定子コア11にセグメントSgを挿入する工程を単純化した模式図を示す。図7(a)は、固定子コア11の概略斜視図であり、図7(b)は、固定子コア11にインシュレータ25を挿入した様子の概略斜視図であり、図7(c)は、セグメントSgの概略斜視図であり、図7(d)は、固定子コア11にセグメントSgを挿入した様子の概略断面図であり、図7(e)は、固定子コア11にセグメントSgを挿入し、セグメントSgの端部を溶接した様子の概略断面図である。なお、図7に示す固定子コア11は説明のために簡略化してあり、スロット13の数等詳細部分が異なる。また、セグメントSgの形状も省略している。また、セグメントSgを挿入するスロット13の位置関係も実際とは異なる。
【0025】
セグメントSgは、固定子コア11に対して、図7(a)〜(d)に示すような手順で挿入される。すなわち、固定子コア11の反リード側となる方向から、セグメントSgの有する第1リード部Sga1及び第2リード部Sga2をスロット13に対して挿入し、図7(d)に示すような状態とする。この際には、図7(b)に示されるようにインシュレータ25がスロット13に挿入されているものとする。固定子コア11にセグメントSgが挿入された後、セグメントSgのリード部Sgaに捻りを加える。リード部Sgaに捻りを加えることで図4に示されるセグメントコイルSChが6つ組み合わさったコイル20が、固定子コア11に挿入された状態で形成される。この結果、固定子10の反リード側が、図2に示される様な状態になる。なお、この際に相間絶縁紙26は所定の位置に配置されているものとする。図7(e)で第1リード部SgaAと第2リード部SgaBとが溶接されて接合部Sgfを形成する。なお、この接合ルールに関しては後述する。
【0026】
図8に、固定子10の反リード側に配置される相間絶縁紙26の位置について説明する模式図を示す。なお、図8は説明のため1相分だけを抽出し模式的な結線を示している。図10に、固定子10の反リード側の部分拡大図を示す。相間絶縁紙26は、外周側から反リード側第1相間絶縁紙26A1、反リード側第2相間絶縁紙26A2、反リード側第3相間絶縁紙26A3、反リード側第4相間絶縁紙26A4、反リード側第5相間絶縁紙26A5、反リード側第6相間絶縁紙26A6が用いられる。
【0027】
そして、前述のように1つのスロット13に納められるスロット内導線部Sgbを外周側から第1スロット内導線部Sgb1乃至第10スロット内導線部Sgb10と定義すると、反リード側第1相間絶縁紙26A1は、第1レーンチェンジ部Sge1の下に配置される。反リード側第2相間絶縁紙26A2は、第2スロット内導線部Sgb2と第3スロット内導線部Sgb3との間に配置される。反リード側第3相間絶縁紙26A3は、第4スロット内導線部Sgb4と第5スロット内導線部Sgb5との間に配置される。反リード側第4相間絶縁紙26A4は、第6スロット内導線部Sgb6と第7スロット内導線部Sgb7との間に配置される。反リード側第5相間絶縁紙26A5は、第8スロット内導線部Sgb8と第9スロット内導線部Sgb9との間に配置される。そして、反リード側第6相間絶縁紙26A6は、第10レーンチェンジ部Sge10の下に配置される。
【0028】
そして、固定子10の反リード側にはセグメントSgの反リード部Sgcが配置される。反リード部Sgcは図6に示すように六線部UA及び四線部分UBが存在するため、図10に示すように六線部UAが重ねられる部分と四線部分UBが重ねられる部分が混在することになる。そして、U1相、U2相、V1相、V2相、W1相、W2相の順にセグメントSgが図2に示すような円筒状に配置される。なお、図10には便宜上異なる相を網掛けで塗り分けてある。U1相及びU2相は白抜きで示し、V1相及びV2相は薄い網掛けを、W1相及びW2相は濃い網掛けをして示している。
【0029】
図9に、固定子10のリード側に配置される相間絶縁紙の位置について説明する模式図を示す。矢印はリード部Sgaの曲げ方向を示している。前述したように固定子10のリード側ではリード部Sgaが捻られるが、捻られる前に相間絶縁紙26が配置される必要がある。図11に、固定子10のリード側の部分拡大平面図を示す。なお、図9は説明のために1相分だけを抽出し模式的な結線を示している。
【0030】
相間絶縁紙26は外周側からリード側第1相間絶縁紙26B1、リード側第2相間絶縁紙26B2、リード側第3相間絶縁紙26B3、リード側第4相間絶縁紙26B4、及びリード側第5相間絶縁紙26B5の5枚の相間絶縁紙26が配置される。なお、図11には便宜上異なる相を網掛けで塗り分けてある。U1相及びU2相は白抜きで示し、V1相及びV2相は薄い網掛けを、W1相及びW2相は濃い網掛けをして示している。また、リード部Sgaに関しても、説明のために固定子10の外周方向から第1リード部Sga1、第2リード部Sga2、……第10リード部Sga10としている。
【0031】
相間絶縁紙26の配置される位置は、図9に示す通り、第1スロット内導線部Sgb1と第2スロット内導線部Sgb2との間にリード側第1相間絶縁紙26B1が配置され、第3スロット内導線部Sgb3と第4スロット内導線部Sgb4との間にリード側第2相間絶縁紙26B2が配置され、第5スロット内導線部Sgb5と第6スロット内導線部Sgb6との間にリード側第3相間絶縁紙26B3が配置され、第7スロット内導線部Sgb7と第8スロット内導線部Sgb8との間にリード側第4相間絶縁紙26B4が配置され、第9スロット内導線部Sgb9と第10スロット内導線部Sgb10との間にリード側第5相間絶縁紙26B5が配置される。
【0032】
その後、図9に示される様に、第1スロット内導線部Sgb1に接続されるリード部Sgaは図9の右側に、第2スロット内導線部Sgb2及び第3スロット内導線部Sgb3にそれぞれ接続されるリード部Sgaは図9左側に、第4スロット内導線部Sgb4及び第5スロット内導線部Sgb5にそれぞれ接続されるリード部Sgaは図9右側に、第6スロット内導線部Sgb6及び第7スロット内導線部Sgb7にそれぞれ接続されるリード部Sgaは図9左側に、第8スロット内導線部Sgb8及び第9スロット内導線部Sgb9にそれぞれ接続されるリード部Sgaは図9右側に、第10スロット内導線部Sgb10に接続されるリード部Sgaは図9左側に、治具を用いて捻られる。
【0033】
リード部Sgaを捻った後に、図示しないバスバで結合することで、図1に示すような固定子10が形成される。図12に、固定子10の結線を表す模式図を示す。図12には、1相分の結線を示しており、スロット13に配置されるスロット内導線部Sgbの番号が、接続される順番となっている。すなわち、1番から順に81番まで接続されて、1相分のセグメントコイルSCが形成されることになる。縦の欄はスロット13の外周側から番号を振ったスロット内導線部Sgbの順番が示してある。なお、説明のため、右端のスロットと左端のスロットは2スロット分重複させて記載している。すなわち、22スロットと23スロットが左右の端部に描かれている。また、スロット同士を繋ぐ破線が反リード部Sgcを示し、実線がリード部Sgaを示す。リード部Sgaは中央で溶接されている様子を示し、反リード部Sgcはレーンチェンジ部Sgeによってレーンチェンジされている。
【0034】
本実施形態のセグメントを用いた固定子10は上記構成であるので、以下に説明する作用及び効果を奏する。
【0035】
本実施形態の固定子10によって、固定子10に用いる相間絶縁紙26の枚数を減らすことができる。固定子コア11の有するスロット13に挿入したセグメントSgのリード側が捻られてコイル20を形成するセグメント式の固定子10において、固定子コア11の反リード側に設けられるセグメントSgのレーンチェンジ部は、セグメントSgのうち、第1のセグメントSgに備えられ、スロット13から固定子コア11の反リード側に突出する反リード部Sgcに形成される、固定子コア11の内周側にレーンチェンジする第1レーンチェンジ部Sgeと、第1のセグメントSgと同じスロット13に挿入される第2セグメントSgに備えられ、固定子コア11の反リード側に突出して固定子コア11の外周側にレーンチェンジされる第2レーンチェンジ部Sge2と、を有する。
【0036】
また、第1セグメントSg又は第2セグメントSgの、固定子コア11のリード側に突出するリード部Sgaは、固定子コア11の周方向に沿って一方向に曲げられる、固定子コア11の最外周に位置する第1リード部Sga1と、固定子コア11の周方向に沿って他方向に曲げられる、固定子コア11の最内周に位置する第10リード部Sga10と、最外周と最内周以外のリード部Sgaであり、2本ずつペアで曲げられ、隣り合うペア同士は、固定子コア11の周方向に沿って逆方向に曲げられている第2リード部Sga2乃至第9リード部Sga9と、を有するものである。
【0037】
したがって、固定子コア11に挿入するセグメントSgのレーンチェンジ部が第1レーンチェンジ部Sge1と第2レーンチェンジ部Sge2の2種類タイプが用意され、リード側に突出するリード側端部の捻り方向を最外周と最内周以外を2本ずつペアで曲げることで、リード側及び反リード側に用いる相間絶縁紙26を減らす事が可能である。
【0038】
図13に、比較のために用意した固定子100の反リード側の拡大図を示す。図14に、固定子100のリード側の拡大図を示す。図15に、固定子100の反リード側の模式図を示す。図8に対応するものである。図16に、固定子100のリード側の模式図を示す。図11に対応するものである。図14及び図15に示す固定子100は、同図に示すようにリード側に相間絶縁紙26が9枚必要であり、反リード側には相間絶縁紙26を11枚必要とする。一方、本実施形態の固定子10では、リード側に5枚、反リード側に6枚の相間絶縁紙26を必要とするため、比較のために用意した固定子100と比べると相間絶縁紙26を削減することが可能となる。
【0039】
これは、隣り合うセグメントSg同士で相を揃えることが可能になる為である。まず、固定子10のリード側についての説明を行う。図11に示す、固定子10の周方向に隣り合うU1相及びU2相は同相であるので、間に相関絶縁を必要としない。一方、周方向に隣り合うU2相とV2相は異相である。この為、相関絶縁を必要とする。ただし、固定子10の径方向に相間絶縁紙26を配置すれば良く、周方向及び軸方向には相間絶縁紙26のような絶縁紙を配置する必要はない。
【0040】
図17に、本実施形態の固定子のリード側のコイルエンドの拡大斜視図を示す。図17に示すように、リード部SgaがSgbに対して斜めに角度がつくように捻られる結果、固定子10の周方向に隣り合うリード部Sga同士の間に空間Sが設けられ、絶縁性が保たれるためである。ただし、固定子の径方向に隣り合うリード部Sga同士は、スロット13内における占積率を高めるためにSgbが密着して配置される結果、距離が近くなるために、例えばU2相のリード部SgaとV1相のリード部Sgaとが隣り合う部分で、絶縁性が保てなくなる虞があり、相間絶縁紙26を必要とする。
【0041】
そして、図9に示す通り、隣り合う第1リード部Sga1と第2リード部Sga2、第3リード部Sga3と第4リード部Sga4、第5リード部Sga5と第6リード部Sga6、第7リード部Sga7と第8リード部Sga8、第9リード部Sga9と第10リード部Sga10のそれぞれの間に、相間絶縁紙26が配置される。一方、隣り合う第2リード部Sga2と第3リード部Sga3、第4リード部Sga4と第5リード部Sga5、第6リード部Sga6と第7リード部Sga7、第8リード部Sga8と第9リード部Sga9はそれぞれ同相同士となるので相間絶縁紙26を必要としない。このため、結果的に固定子10のリード側には5枚の相間絶縁紙26で足りることになる。これは、図9に示されるように、隣り合う第2リード部Sga2と第3リード部Sga3、第4リード部Sga4と第5リード部Sga5、第6リード部Sga6と第7リード部Sga7、第8リード部Sga8と第9リード部Sga9がペアとなり、それぞれ同一方向に捻られている為である。
【0042】
一方、図15に示すように、固定子100の径方向に隣り合うリード部Sga同士が逆方向に捻られるタイプの固定子100では、隣り合うリード部Sga同士で相が異なるため、本実施形態とは異なり、レーンチェンジ部Sgeの下に6組とセグメントSgの組間5カ所に5枚の、合計11枚の相間絶縁紙26を必要とすることになる。
【0043】
次に固定子10の反リード側について説明する。図8に示すように、本実施形態の固定子10は、レーンチェンジ部Sgeが向かい合うようにセグメントSgが配置される。この為、同相のセグメントSgが同じスロット13から隣り合う状態に配置されることになる。例えば、第3スロット内導線部Sgb3と第4スロット内導線部Sgb4とはスロット113aに隣り合うように配置されている。従って、第3スロット内導線部Sgb3と第4スロット内導線部Sgb4の間には相間絶縁紙26を配置する必要がない。
【0044】
一方、図10に示すように第3スロット内導線部Sgb3及び第4スロット内導線部Sgb4の隣には、他相の第3スロット内導線部Sgb3及び第4スロット内導線部Sgb4が配置されることになるので、例えば、U2相の隣にはV1相のセグメントSgが配置される。このため、径方向に隣り合う斜辺部Sgd同士で相間の絶縁を必要とする。従って、反リード側第1相間絶縁紙26A1乃至反リード側第6相間絶縁紙26A6の6枚の相間絶縁紙26を必要とする。
【0045】
このように、固定子10の最外周と最内周以外の周方向に隣り合うセグメントSgがペアとなるため、ペア同士の間には相間絶縁紙26を必要とせず、従って相間絶縁紙26の枚数を削減することが出来る。具体的には、図8に示す通り、固定子10の反リード側には4枚の相間絶縁紙26を必要とすることになる。一方で、図15に示される固定子100の場合、レーンチェンジ部Sgeが整列するように配置されているので、図15に示す通り相間絶縁紙26を11枚必要とする。これは、図13に示すように周方向に隣り合う斜辺部Sgd同士で相が違うからであり、例えばU2相とV1相とでは、固定子100の径方向に斜辺部Sgdが交互に配置される構成となっている。つまり、反リード側においても、固定子100に比べて本実施形態の固定子10は相間絶縁紙26の枚数を減らすことが可能となっている。
【0046】
したがって、相間絶縁紙26の使用枚数を、リード側及び反リード側において減らす事ができ、単純に相間絶縁紙26の使用枚数が減った分だけのコストダウンが可能になる他、課題でも示したが、相間絶縁紙26の挿入枚数を減らすことができることで、固定子10のコイルエンドの軸方向の高さと幅を抑えることが出来る。これは、相間絶縁紙26の挿入枚数が増えることは、固定子10の径方向の幅を必要とする為である。したがって、固定子10に用いるセグメントSgの数が増える、すなわち固定子10を用いたモータの出力を増やすためにコイル20のターン数を増やす結果、固定子10の径方向の幅をより必要とする結果となる。
【0047】
これは固定子10のスロット13に対するセグメントSgの占積率を高める必要があるため、セグメントSg同士は密着させてスロット13内にスロット内導線部Sgbを配置する一方で、相間絶縁紙26を所定のセグメントSgの間に挟む必要があり、相間絶縁紙26の幅の分だけ、セグメントSgを固定子10の内周側か外周側にオフセットさせる必要があることを意味する。しかしながら、内周側にオフセットさせるには図示しないロータとの関係上限界があるため、固定子10の外周側にオフセットさせて行かざるを得ず、必然的に固定子10の外径を大きくする方向にスペースを必要とするためである。
【0048】
また、このことは固定子10の軸方向の高さを必要とする結果に繋がる。セグメントSgを固定子10の内周側或いは外周側にオフセットさせるためには、セグメントSgの長さをオフセットさせるために多少なりとも長くする必要があることを意味し、セグメントSgの厚みもゼロではないため、オフセットさせるのに必要な距離を固定子10の軸方向に稼ぐ必要があるためである。つまり相間絶縁紙26の枚数が増えることは、固定子10の大型化を助長する結果となり、逆に本実施形態のように、相間絶縁紙26の枚数を減らすことが可能となることで、固定子10の小型化に貢献することができる。
【0049】
以上、本実施形態に則して発明を説明したが、この発明は前記実施形態に限定されるものではなく、発明の趣旨を逸脱することのない範囲で構成の一部を適宜変更することにより実施することもできる。
【0050】
例えば、本実施形態の固定子10は、ティース12の数が48の一体型の固定子コアを用いているが、ティース12及びスロット13の数は設計事項であってこれに限定されるものではない。また、実施形態の中で示した材質も、適宜同等の機能を持つものに置き換えることを制限しない。また、セグメントSgの形状等についても、設計事項の範囲内で変更することを妨げない。
【符号の説明】
【0051】
10 固定子
11 固定子コア
12 ティース
13 スロット
14 リブ
20 コイル
25 インシュレータ
26 相間絶縁紙
100 固定子
113a スロット
SC セグメントコイル
Sg セグメント
Sga リード部
Sgb スロット内導線部
Sgc 反リード部
Sgd 斜辺部
Sge レーンチェンジ部

【特許請求の範囲】
【請求項1】
固定子コアの有するスロットに挿入したU字セグメントのリード側が捻られてコイルを形成するセグメント式固定子において、
前記固定子コアの反リード側に設けられる前記U字セグメントのレーンチェンジ部は、
前記U字セグメントのうち、第1セグメントに備えられ、前記スロットから前記固定子コアの反リード側に突出する反リード側突出部分に形成される、前記固定子コアの内周側にレーンチェンジされる第1レーンチェンジ部と、
前記第1セグメントと同じ前記スロットに挿入される第2セグメントに備えられ、前記固定子コアの反リード側に突出して前記固定子コアの外周側にレーンチェンジされる第2レーンチェンジ部と、
を有し、
前記第1セグメント又は前記第2セグメントの、前記固定子コアのリード側に突出するリード側端部は、
前記固定子コアの周方向に沿って一方向に曲げられる、前記固定子コアの最外周に位置する最外周リード側端部と、
前記固定子コアの周方向に沿って他方向に曲げられる、前記固定子コアの最内周に位置する最内周リード側端部と、
前記最外周と前記最内周以外の前記リード側端部であり、2本ずつペアで曲げられ、隣り合う前記ペア同士は、前記固定子コアの周方向に沿って逆方向に曲げられている内側リード側端部と、
を有することを特徴とするセグメント式固定子。


【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【図13】
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【図14】
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【図15】
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【図16】
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【図17】
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【公開番号】特開2013−5559(P2013−5559A)
【公開日】平成25年1月7日(2013.1.7)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−133358(P2011−133358)
【出願日】平成23年6月15日(2011.6.15)
【出願人】(000003207)トヨタ自動車株式会社 (59,920)
【Fターム(参考)】