説明

セグメント継手

【課題】雄型継手の挿入力を小さくすることができ、しかも雌型継手から外れないようにした。
【解決手段】リング間継手1の雌型継手10は、回転可能に配置された一対の円形カム12A、12Bと、各円形カム12の外周部の接線方向に歯面を形成させた雌側歯部13と、雌側歯部13に隣接すると共に各円形カム12の外周より突出してなる押圧面を有する押圧突起14とを備えている。雄型継手20は、セグメント20Aの雄側接合面20aから突出してなり、各円形カム12の間に挿入可能とされ、雌側歯部13に噛合可能とされる雄側歯部22を形成した板状挿入部材21を備えている。板状挿入部材21を各円形カム12A、12Bの間に挿入したとき、雌側歯部13と雄側歯部22とが噛合する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、雄型継手と雌型継手によって接合するセグメント継手に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、シールドトンネルにおいて用いられるセグメント継手は、互いのセグメント接合面に予め連通孔を設けておき、セグメント同士を当接させた際、連通孔にボルトを挿通してナットにより締め付ける構造が多かった。しかし、このような継手構造は、連通孔の位置決めやボルトとナットの締め付け作業等に手間がかかるため、作業効率が悪いという現状があった。そこで、効率的に組み立て可能なピン構造によるセグメントの継手構造が提案されており、例えば特許文献1に開示されている。
特許文献1は、くびれ部を有するピンを備えた雄型継手と、雄型継手を挿入可能とする雌型継手とからなり、雄型継手を雌型継手に挿入したときに雄型継手のピンの周部(くびれ部)をバネの付勢力で押さえ付けるようにして係止してピンの軸方向の移動を規制するようにしたバネ部材を雌型継手に備えた継手構造である。
【特許文献1】特開2003−328693号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0003】
しかしながら、特許文献1に記載のセグメントの継手構造では、バネ部材の付勢力に抵抗してピンを挿入する必要があり、バネ部材の付勢力によってはピンの押し込み力(挿入力)が大きくなるという欠点があり、ピンを変形させてしまう可能性があった。
また、バネ部材によってピン周部を押さえ付ける構造であるため、その押さえ付けにずれが生じると所定のバネの付勢力をもって固定できないおそれがあった。そのため、セグメントに引抜き方向(ピンの挿入方向の反対方向)の力がかかると、ピンが抜けて外れるといった問題があった。
【0004】
本発明は、上述する問題点に鑑みてなされたもので、雄型継手の挿入力を小さくすることができ、しかも雌型継手から外れないようにしたセグメント継手を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0005】
上記目的を達成するため、本発明に係るセグメント継手では、雌型継手を接合面に有する一方のセグメントと、雄型継手を接合面に有する他方のセグメントの互いの接合面同士を当接させることにより、セグメント同士を接合させるセグメント継手であって、雌型継手は、所定の間隔をもってそれぞれが回転可能に配置された一対のカムと、一対のカムの少なくともどちらか一方の外周部の接線方向に歯面を形成させた雌側歯部と、雌側歯部に隣接すると共にカムの外周部より突出してなる押圧突起とを備え、雄型継手は、他方のセグメントの接合面から突出してなり、一対のカムの間に挿入可能とされ、雌側歯部に噛合可能とされる雄側歯部を形成した挿入部材を備え、挿入部材を一対のカムの間に挿入したとき、挿入部材によって押圧突起を押圧してカムを回転させ、雄側歯部に雌側歯部が噛合することを特徴としている。
本発明では、一対のカムの間に挿入される挿入部材は、両カムの押圧突起に当接し、さらに押し込むことで、両カムが挿入部材を挿入方向に送り出す方向(挿入時回転方向)に回転する。そして、さらに挿入部材が挿入されると、カムは、挿入部材の雄側歯部に対する接触面が押圧突起から雌側歯部に飛び移るように回転移動する。これにより、直線状の雌側歯部が挿入方向に歯面を向けた雄側歯部と略平行となる位置となり、雌側歯部と雄側歯部とが噛合した状態で係止され、挿入部材の挿入が完了する。そして、雄型継手と雌型継手とが係止状態となっているとき、カムの挿入時回転方向の反対方向への回転が規制され、ロックされた状態となる。すなわち、引抜き方向への挿入部材の移動が規制され、挿入部材が雌型継手から抜けることを防止することができる。
【0006】
また、本発明に係るセグメント継手では、カムは、押圧突起が一対のカム間に突出した状態を初期位置とし、挿入部材を挿入したときに、挿入部材で初期位置にある押圧突起を押圧してカムを回転させることが好ましい。
本発明では、挿入部材の挿入前においてカムを予め所定の回転角度となる初期位置に位置決めさせておき、挿入部材を挿入するときに、挿入部材の先端部で押圧突起を押し込むようにしてカムを回転させながら挿入部材を挿入方向に移動させることができる。
【0007】
また、本発明に係るセグメント継手では、カムの外周部には係止部が形成され、係止部に係止させてカムを初期位置に保持する回転規制部材が設けられていることが好ましい。
本発明では、係止部に回転規制部材が係止した状態のとき、カムを初期位置に位置決めさせることができ、挿入部材が挿入されて挿入時回転方向に回転力がカムに作用するときは、カムを挿入時回転方向に回転させることができる。
【0008】
また、本発明に係るセグメント継手では、押圧突起には接線方向をなす押圧面が形成され、押圧面と雌側歯部とが所定角度をもって交わっていることが好ましい。
本発明では、挿入部材が一対のカム間に挿入されたとき、カムは、挿入部材の雄側歯部に対する接触面が押圧突起の押圧面から雌側歯部に飛び移るように回転移動し、雌側歯部と挿入部材の雄側歯部とが噛合することができる。
【発明の効果】
【0009】
本発明のセグメント継手によれば、雄型継手の挿入部材は、挿入部材の挿入時に一対のカムが回転し、挿入抵抗を低減できる構成であることから、挿入力を小さくして挿入することができる。そのため、挿入部材の材料に無理な力を与えることがなく、変形を防止することができるという効果を奏する。
また、接合された雄型継手と雌型継手とは、直線状に歯面が形成された雌側歯部と雄側歯部とが噛合している状態であることから、各カムの回転がロックされて挿入方向と反対方向への挿入部材の移動が規制されるため、挿入部材が抜けて外れることを防ぐことができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0010】
以下、本発明に係るセグメント継手の実施の形態について、図1乃至図7に基づいて説明する。
図1は本発明の実施の形態によるリング間継手の構造を説明する側断面図、図2は図1に示すリング間継手のA−A線断面図、図3は雌型継手の収納ホルダーの斜視図、図4は円形カムの構造を説明する側面図、図5は円形カムと板状挿入部材の噛合状態を説明する図、図6(a)、(b)はリング間継手の接合時における接合工程を示す図、図7は接合完了時のリング間継手の状態を示す図である。
【0011】
図1に示すように、本実施の形態によるセグメントのリング間継手1(セグメント継手)は、リング方向(トンネル軸方向)に隣接配置されているセグメント10A、20A同士を接続するものである。セグメント10A、20Aは、シールドトンネルなどにおける円弧板状をなすコンクリート製セグメントなどであり、本実施の形態では符号10Aのセグメントが先行して組み立てられている。
ここで、他方のセグメント20Aを一方のセグメント10Aに接合する方向、或いは後述する雄型継手20(板状挿入部材21)を挿入させる方向を「挿入方向E」とし、挿入方向Eの反対方向を「引抜き方向F」として以下説明する。
【0012】
図1に示すように、リング間継手1は、一方のセグメント10Aの接合面(雌側接合面10a)に設けられた雌型継手10と、他方のセグメント20Aの接合面(雄側接合面20a)に設けられた雄型継手20とからなる。
そして、トンネルのリング方向に隣接配置されたこれらセグメント10A、20Aの雌側接合面10aと雄側接合面20aとを接合させることにより、リング間が一体に接続されて構築される。なお、周方向のセグメント同士の接続は、適宜な継手構造によって連結される。
【0013】
先ず雄型継手20の構成について説明しておく。
図1及び図2に示すように、雄型継手20は、雄側接合面20aから突出してなる板状の板状挿入部材21(挿入部材)を備えている。板状挿入部材21は、上下面21a、21bがセグメント20Aの厚さ方向に直交する方向に配置されている。そして、板状挿入部材21は、上面21a及び下面21bのそれぞれに挿入方向Eに歯面を形成させた雄側歯部22を有し、セグメント10A、20Aの接合時において後述する雌型継手10の円形カム12A、12B(カム)の間に挿入される構成となっている。
また、板状挿入部材21には、雄側接合面20aに接する位置に略箱形状の嵌合部23が設けられている。なお、板状挿入部材21は、接合面20a側の端部が埋設部24に接続され、埋設部24がセグメントコンクリートに埋設され、さらに埋設部24には適宜数のアンカー25が固着されている。
【0014】
次に、図1及び図2に示すように、雌型継手10は、中空部を有する略箱型形状の収納ホルダー11と、収納ホルダー11の内側に配置されている一対の円形カム12(12A、12B)と、各円形カム12A、12Bの外周部に設けられている雌側歯部13と、各円形カム12A、12Bの外周部より突出していて押圧面14aを有する押圧突起14とを具備している。
【0015】
図3に示すように、収納ホルダー11は、雄型継手20の板状挿入部材21を挿入可能とする挿入口11aを形成した開口端面11bを有し、その開口端面11bを接合面10a側に向けた状態でセグメントコンクリートに埋設されている。この挿入口11aには、リング間継手1の接合状態において雄型継手20の嵌合部23が嵌合される。さらに、収納ホルダー11の側面11c、11c(図2参照)には、所定箇所に鉄筋15、15、…が例えば溶接などの固着手段により固定されている。
【0016】
図1及び図2に示すように、各円形カム12A、12Bは、それぞれ略円筒形状をなし、そのカム回転軸12aがセグメントリングの略周方向(セグメント10Aの厚さ方向にほぼ直交する方向)に向けて配置されている。カム回転軸12aは、その両端部12b、12b(図2参照)が収納ホルダー11に回転可能に取り付けられている。
そして、一対の円形カム12A、12Bは、それぞれのカム回転軸12a、12aを平行にした状態で所定のカム間隔をもって配置されている。ここで、図4に示すように、このカム間隔は、両円形カム12における後述する押圧突起14、14の押圧面14a、14a同士が平行して対向する位置としたとき、これら押圧面14a、14a同士の間隔であって、雄型継手20の板状挿入部材21の板厚寸法Dより狭い間隔となっている。
【0017】
円形カム12は、板状挿入部材21が両円形カム12A、12B間に挿入されたとき、板状挿入部材21を挿入方向Eに送出する方向(図4に示す矢印G1方向であって、これを「挿入時回転方向」と以下統一して用いる)に回転する構成となっている。つまり、円形カム12A(図1の上側)は図1において時計回りに回転し、円形カム12B(図1の下側)は図1において反時計回りに回転する。
【0018】
ここで、図4は、説明上、収納ホルダー11やセグメント10A、20Bを省略している。
図4に示すように、雌側歯部13は、円形カム12において外周部の接線方向に歯面を形成させたラック形をなす平歯である(図5参照)。そして、雌側歯部13は、円形カム12の回転と共に、雌型継手10に挿入される板状挿入部材21の雄側歯部22、22に噛合して係止させる構成をなしている。
【0019】
押圧突起14は、円形カム12の外周部より径方向外側に突出し(図4参照)、上述した雌側歯部13の周方向で挿入時回転方向G1側に隣接して配設されている。さらに具体的に押圧突起14は、円形カム12の外周部の接線方向(本発明の他の接線方向に相当する)に平行する押圧面14aを有してなる。そして、押圧面14aと雌側歯部13とは、所定の角度をもって交わった状態となっている。
【0020】
次に、図4に示すように、円形カム12は、板状挿入部材21の挿入前において予め所定の回転角度(雌側歯部13及び押圧突起14の位置)となる位置(これを「初期位置T0」とする)に位置決めされている。
図5に示すように、この初期位置T0は、円形カム12A、12B間に突出した状態の位置、すなわち円形カム12A、12Bの押圧突起14の頂部14b、14bの位置が略対向するように配置される位置となる。さらに具体的には、両押圧突起14の押圧面14aの少なくとも一部が板状挿入部材21の挿入路に配置されると共に、雌側歯部13が挿入路外となる位置とされる。つまり、挿入される板状挿入部材21の先端部21cが押圧面14aのみに当接する位置(すなわち、雌側歯部13と雄側歯部22とが干渉しない位置)とされる。
【0021】
この押圧突起14は、円形カム12の回転角度が初期位置T0にあるとき、押圧面14aに板状挿入部材21の先端部21cを当接させて挿入方向Eに押し出すようにして押圧させることで、円形カム12A、12Bを挿入時回転方向G1に回転させる機能を有する。そして、図5に示すように、さらに円形カム12A、12Bが回転すると、押圧面14aが板状挿入部材21から外れ、雌側歯部13が雄側歯部22に噛合する構成となっている。
【0022】
また、図4に示すように、本雌型継手10には、両円形カム12A、12Bの位置を所定位置(初期位置T0)に位置合わせして固定しておくためのバネ部材16(回転規制部材)が設けられている。このバネ部材16は、平面視でくの字形状をなし、外側(屈曲角θが大きくなる方向)に付勢された状態となっている。
【0023】
さらに、各円形カム12A、12Bの周面の所定位置には、カム回転軸12aの軸方向に連続する溝状の係止凹部17(係止部)が形成されている。そして、各円形カム12A、12Bは、バネ部材16の係止端部16a、16aが各係止凹部17、17の係止端面17a、17aに引っ掛かるようにして係止される位置で初期位置T0となるように構成されている。すなわち、係止凹部17にバネ部材16が係止した状態のとき、各円形カム12A、12Bは挿入時回転方向G1の反対方向(矢印G2方向)への回転が規制されることになる。一方、板状挿入部材21が挿入されて初期位置T0から挿入時回転方向に回転力が作用するときは、バネ部材16の付勢力に逆らうことなく円形カム12A、12Bを挿入時回転方向G1に回転させることができる。
【0024】
次に、このような構成によるリング間継手1の作用について図面に基づいて説明する。
先ず、図1に示すように、リング間継手1によってセグメント10A、20Aを接合するとき、雄型継手20の板状挿入部材21が雌型継手10の一対の円形カム12A、12Bの間に入るように、雄側接合面20aを雌側接合面10aに対向させて、先行して配置されているセグメント10Aにセグメント20Aを位置合わせする。
そして、雄側接合面20aに雌側接合面10aを近付けながら板状挿入部材21を開口部11aに進入させ、さらに円形カム12A、12B同士の間(隙間S)に挿入する。
【0025】
図4、図6(a)に示すように、挿入された板状挿入部材21は、初期位置T0の円形カム12の押圧突起14の押圧面14aに当接し、さらに押し込むことで、両円形カム12A、12Bが板状挿入部材21を挿入方向Eに送り出す方向(挿入時回転方向G1)に回転する。このように、板状挿入部材21の挿入時に円形カム12が回転し、挿入抵抗を低減できる構成であり、板状挿入部材21の押し込み力(挿入力)を小さくして挿入することができる。
次いで、図6(b)に示すように、さらに板状挿入部材21が挿入方向Eに挿入されて円形カム12が挿入時回転方向G1に回転すると、押圧面14aと雄側歯部22とが互いに干渉した状態となり、円形カム12A、12Bを外側(矢印J方向)に押し出すようにして弾性変形させながら挿入される。なお、上述したように、このときの板状挿入部材21は、円形カム12の回転作用を利用できることから、大きな挿入力を必要としない構成となっている。
【0026】
さらに、板状挿入部材21が挿入されると、円形カム12A、12Bは、板状挿入部材21の雄側歯部22に対する接触面が押圧面14aから雌側歯部13に飛び移るように回転移動する。これにより、図7に示すように、直線状の雌側歯部13が挿入方向Eに歯面を向けた雄側歯部22と略平行となる位置となり、雌側歯部13と雄側歯部22とが噛合した状態で係止され、板状挿入部材21の挿入が完了する。
【0027】
このように、円形カム12A、12Bの位置が停止位置T1であるとき、直線状に歯面が形成された雌側歯部13と雄側歯部22とが噛合している状態であることから、両円形カム12A、12Bの回転が規制される。つまり、挿入時回転方向G1の反対方向G2への回転が規制され、ロックされた状態となる。すなわち、引抜き方向Fへの板状挿入部材21の移動も規制されることになるため、円形カム12に係合される板状挿入部材21が、雌型継手10から抜けることを防止することができる。
【0028】
本実施の形態によるセグメント継手では、雄型継手20の板状挿入部材21は、板状挿入部材21の挿入時に円形カム12が回転し、挿入抵抗を低減できる構成であることから、挿入力を小さくして挿入することができる。そのため、板状挿入部材21の材料に無理な力を与えることがなく、変形を防止することができるという効果を奏する。
また、接合された雄型継手20と雌型継手10とは、直線状に歯面が形成された雌側歯部13と雄側歯部22とが噛合している状態であることから、円形カム12A、12Bの回転がロックされて挿入方向と反対方向への板状挿入部材21の移動が規制されるため、板状挿入部材21が抜けて外れることを防ぐことができる。
【0029】
次に、本発明の実施の形態の第一〜第三変形例について、図8乃至図10などを基づいて説明するが、上述の実施の形態と同一又は同様な部材、部分には同一の符号を用いて説明を省略し、実施の形態と異なる構成について説明する。
図8は本実施の形態の第一変形例による円形カムの構造を説明する側面図であって、図4に対応する図である。
図8に示すように、第一変形例による雌型継手では、実施の形態のバネ部材16(図3参照)に代えてラチェット30、30(回転規制部材)を採用したものである。ラチェット30、30は、円形カム12の初期位置T0において係止凹部17の係止端面17aに係止する位置を固定端とし、挿入時回転方向G1と同じ方向(図8の矢印H方向)のみに回転軸30aを支点にして回転可能な構成となっている。すなわち、円形カム12A、12Bは、板状挿入部材21の挿入前において、実施の形態と同様に挿入時回転方向G1の反対方向(矢印G2方向)への回転が規制され、初期位置T0に位置決めされた状態となる。
【0030】
図9(a)、(b)は本実施の形態の第二変形例による円形カムの構造を説明する側面図である。
図9(a)、(b)に示すように、第二変形例による雌型継手では、第一変形例のラチェット30、30(図8参照)の他の形状のばね式ラチェット40(回転規制部材)を採用したものである。なお、図9では、一方の円形カム12のみを示している。ばね式ラチェット40は、円形カム12の係止凹部17A又は17Bのそれぞれの係止端面17aに係止する係止片41と、一端(固定端)を収納ホルダー11(図1参照)などに固定して他端に係止片41を取り付けた付勢部材42とからなる。係止片41は、付勢部材42によって円形カム12を外方から押し付ける方向(すなわち、矢印I方向)に付勢されている。係止片41が係止凹部17A、17Bに係止することで、円形カム12は挿入時回転方向G1の反対方向(矢印G2方向)への回転が規制されることになる。そして、係止凹部17Aに係止片41が係止しているとき、円形カム12は初期位置T0(図9(a)参照)に位置決めされた状態となる。さらに、図9(b)に示すように、本第二変形例では、板状挿入部材21が挿入された段階では、ばね式ラチェット40の係止片41が押圧突起14側の係止凹部17Bに係止される構成をなしている。
【0031】
次に、図10は本実施の形態の第三変形例による円形カムの構造を説明する側面図である。
図10に示すように、第三変形例による雌型継手では、円形カム12における回転軸12aとの取り付け部に長穴部12cを形成させたものである。この長穴部12cは、円形カム12が挿入時回転方向G1に回転するに従って回転軸12aが板状挿入部材21側(矢印K方向)に絞られるように形成されている。すなわち、図10に示す停止位置T1の時には、円形カム12の回転軸12aは長穴部12cに絞られた状態で係止されているため、円形カム12は挿入時回転方向G1の反対方向(矢印G2方向)への回転が規制されることになる。
【0032】
以上、本発明によるセグメント継手の実施の形態、第一乃至第三変形例について説明したが、本発明は上記の実施の形態、第一乃至第三変形例に限定されるものではなく、その趣旨を逸脱しない範囲で適宜変更可能である。
例えば、実施の形態、第一乃至第三変形例では雄型継手20に板状の板状挿入部材21を用いているが、これに限定されることはなく、例えば棒状(ピン状)の部材であってもよい。要は、一対のカムの間に挿入され、且つカムに設けられている雌側歯部に係合できるように雄側歯部が形成されていればよいのである。
また、本実施の形態、第一乃至第三変形例では、板状挿入部材21の上面21a及び下面12bの両方に雄側歯部22を形成させているが、これに限定されることはなく、上面21a及び下面12bの少なくともどちらか一方にあればよい。なお、どちらか一方に雄側歯部22がある場合、それに対応する側の円形カム12に雌側歯部13が設けられていればよいとされる。
【図面の簡単な説明】
【0033】
【図1】本発明の実施の形態によるリング間継手の構造を説明する側断面図である。
【図2】図1に示すリング間継手のA−A線断面図である。
【図3】雌型継手の収納ホルダーの斜視図である。
【図4】円形カムの構造を説明する側面図である。
【図5】円形カムと板状挿入部材の噛合状態を説明する図である。
【図6】(a)、(b)はリング間継手の接合時における接合工程を示す図である。
【図7】接合完了時のリング間継手の状態を示す図である。
【図8】本実施の形態の変形例による円形カムの構造を説明する側面図であって、図4に対応する図である。
【図9】(a)、(b)は本実施の形態の第二変形例による円形カムの構造を説明する側面図である。
【図10】本実施の形態の第三変形例による円形カムの構造を説明する側面図である。
【符号の説明】
【0034】
1 リング間継手
10A、20A セグメント
10a 雌側接合面
20a 雄側接合面
10 雌型継手
11 収納ホルダー
12、12A、12B 円形カム(カム)
13 雌側歯部
14 押圧突起
14a 押圧面
16 バネ部材(回転規制部材)
17 係止凹部(係止部)
20 雄型継手
21 板状挿入部材(挿入部材)
22 雄側歯部
30 ラチェット(回転規制部材)
40 ばね式ラチェット(回転規制部材)
T0 初期位置
T1 停止位置

【特許請求の範囲】
【請求項1】
雌型継手を接合面に有する一方のセグメントと、雄型継手を接合面に有する他方のセグメントの互いの接合面同士を当接させることにより、セグメント同士を接合させるセグメント継手であって、
前記雌型継手は、
所定の間隔をもってそれぞれが回転可能に配置された一対のカムと、
前記一対のカムの少なくともどちらか一方の外周部の接線方向に歯面を形成させた雌側歯部と、
前記雌側歯部に隣接すると共に前記カムの外周部より突出してなる押圧突起と、
を備え、
前記雄型継手は、前記他方のセグメントの接合面から突出してなり、前記一対のカムの間に挿入可能とされ、前記雌側歯部に噛合可能とされる雄側歯部を形成した挿入部材を備え、
前記挿入部材を前記一対のカムの間に挿入したとき、前記挿入部材によって前記押圧突起を押圧して前記カムを回転させ、前記雄側歯部に前記雌側歯部が噛合することを特徴とするセグメント継手。
【請求項2】
前記カムは、前記押圧突起が前記一対のカム間に突出した状態を初期位置とし、
前記挿入部材を挿入したときに、前記挿入部材で前記初期位置にある前記押圧突起を押圧して前記カムを回転させることを特徴とする請求項1に記載のセグメント継手。
【請求項3】
前記カムの外周部には係止部が形成され、前記係止部に係止させて前記カムを前記初期位置に保持する回転規制部材が設けられていることを特徴とする請求項2に記載のセグメント継手。
【請求項4】
前記押圧突起には接線方向をなす押圧面が形成され、該押圧面と前記雌側歯部とが所定角度をもって交わっていることを特徴とする請求項1乃至3のいずれかに記載のセグメント継手。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【公開番号】特開2008−106470(P2008−106470A)
【公開日】平成20年5月8日(2008.5.8)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2006−288666(P2006−288666)
【出願日】平成18年10月24日(2006.10.24)
【出願人】(000198307)石川島建材工業株式会社 (139)
【Fターム(参考)】