説明

セグメント

【課題】特に中詰めコンクリートを充填する際に、フランジ部材間の荷重伝達性能を向上させ、ひいては所要の構造性能を発揮させることが可能なセグメントを提供する。
【解決手段】ウェブ部材51とフランジ部材52とを有する主桁を備えるセグメントにおいて、ウェブ部材51とフランジ部材52とは、圧延加工により一体的に形成され、ウェブ部材51とフランジ部材52間、又は互いに上下に対向するフランジ部材52間、を接続する接続部材3が設けられている。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、シールドトンネル内における覆工体等として用いられるセグメントに関し、特に主桁のウェブ部材とフランジ部材とが圧延加工により一体的に形成されたセグメントに関する。
【背景技術】
【0002】
地中トンネルを構築する方法として広く知られているシールド工法では、一般的に、構築される閉空間を保持する目的でセグメントが用いられている。このセグメントは、通常、トンネルの周方向及び軸方向に複数個連結され、地中に構築される閉空間を保持する覆工体であり、コンクリート製、鉄製又はこれらを組み合わせた合成構造型のものが知られている。また、鉄製セグメントには、鋼板を所定の寸法形状に切断した後、溶接等により組み立てられる鋼製セグメント、及び鋳型で成型する鋳鉄製セグメントがある。
【0003】
このようなセグメントの例としては、例えば特許文献1に示すように、両サイドの主桁の断面が、開口部をセグメント内側に有するC型形状の部材とした合成セグメントが開示されている。このC型形状の部材は、図15に示すように、ウェブ部材73の上下端にフランジ部材74を設けて構成されるものである。
【0004】
しかしながら、この当該特許文献1の開示技術では、あくまで中詰めコンクリート75を充填することを前提としているところ、特にフランジ部材74間の中詰めコンクリート75を介した図中矢印A方向の荷重伝達性が重要となる。特にセグメントの剛性、耐力の増加を目的にフランジ部材74の断面積を大きくした場合には、上下に向かい合うフランジ部材74間の荷重伝達部材としての中詰めコンクリート75の強度が不足してしまい、更には荷重伝達性能が低下してしまう。その結果、このような特許文献1の開示されている構成では、特にフランジ部材74の断面積を大きくした場合において、所要の構造性能を発揮することができなくなるという問題点があった。
【0005】
更に、このような中詰めコンクリート75の充填を前提としたセグメント構造においては、フランジ部材74と、中詰めコンクリート75とがトンネル周方向にずれてしまう場合もある。このようなずれが生じると、上述したフランジ部材74とウェブ部材73から構成される主桁と中詰めコンクリート75との一体性が損なわれ、セグメントの剛性、耐力が大幅に低下してしまうため、これを抑制する必要があった。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【特許文献1】特開2005−351035号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
そこで、本発明は、上述した問題点に鑑みて案出されたものであり、その目的とするところは、主桁のウェブ部材とフランジ部材とが圧延加工により構成するセグメントにおいて、特に中詰めコンクリートを充填する際に、フランジ部材間の荷重伝達性能を向上させ、ひいては所要の構造性能を発揮させることが可能なセグメントを提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明は、上述した問題点を解決するために、ウェブ部材とフランジ部材とを互いに圧延加工により一体的に形成した主桁におけるウェブ部材とフランジ部材間、又は互いに上
下に対向するフランジ部材間を接続部材により接続したセグメントである。
【0009】
即ち、第1の発明に係るセグメントは、1枚のウェブ部材と少なくとも1枚のフランジ部材とを有する少なくとも2対の主桁を備えるセグメントにおいて、上記ウェブ部材と上記フランジ部材とは、圧延加工により一体的に形成され、上記ウェブ部材と上記フランジ部材間、又は互いに上下に対向する上記フランジ部材間、を接続する接続部材が設けられていることを特徴とする。
【0010】
第2の発明に係るセグメントは、第1の発明において、上記接続部材は、上記トンネル周方向へ間隔をおいて複数設けられていることを特徴とする。
【0011】
第3の発明に係るセグメントは、第1の発明において、上記接続部材は、上記トンネル周方向へ連続して設けられ、少なくとも開口を有することを特徴とする。
【0012】
第4の発明に係るセグメントは、第1〜3のいずれか1の発明において、上記主桁と継手板とスキンプレートを備えた鋼殻の内側にコンクリートが充填・硬化されていることを特徴とする。
【0013】
第5の発明に係るセグメントは、第4の発明において、上記鋼殻の内側面にずれ止めが設けられていることを特徴とする。
【0014】
第6の発明に係るセグメントは、第5の発明において、上記ずれ止めは、互いにトンネル軸方向に対向する主桁間に取り付けられた棒状部材であることを特徴とする。
【0015】
第7の発明に係るセグメントは、第4〜6の発明において、上記中詰めコンクリート内にトンネル周方向に補強鉄筋が埋め込み配置されていることを特徴とする。
【発明の効果】
【0016】
本発明に係るセグメントは、ウェブ部材とフランジ部材とを互いに圧延加工により一体的に形成した主桁におけるウェブ部材とフランジ部材間、又は互いに上下に対向するフランジ部材間を接続部材により接続したセグメントである。
【0017】
このため、本発明を適用したセグメントでは、上述した接続部材を取り付けることにより、地山側からの荷重によってフランジ部材に発生するせん断応力の伝達経路を増やすことが可能となり、主桁における応力伝達性能を向上させ、セグメントの部材性能の向上が期待できる。加えて、上述の接続部材を設けることで、フランジ部材のトンネル法線方向への面外変形が抑制され、セグメントの部材性能が格段に向上する。
【0018】
また、本発明によれば、離散的に配置した接続部材とすることで接続部材の取り付け容易性が向上する。
【0019】
また、本発明によれば、連続した接続部材とすることで上述の応力伝達経路がさらに向上する。
【0020】
さらに、本発明によれば、鋼殻の内側にコンクリートが充填・硬化されることでセグメント部材の耐力および剛性が向上する。また、本発明によれば、フランジ部材並びにウェブ部材により囲まれる主桁の内側において充填・硬化された中詰めコンクリートを外部から拘束し、中詰めコンクリートの強度を向上させることが可能となる。このため、フランジ部材間の中詰めコンクリートによる荷重伝達性能を向上させることが可能となる。また、本発明によれば、上述の接続部材がトンネル周方向に間隔をおいて複数設けられている
、もしくは上述の接続部材がトンネル周方向に連続して設けられ、かつ開口を有することで、中詰めコンクリートの充填性が良好になり、セグメントの性能が向上する。また、本発明によれば、上述した接続部材を取り付けることにより、中詰めコンクリートと主桁の界面におけるトンネル周方向のずれの発生を防止し、主桁と中詰めコンクリートの一体性を高めることが可能となる。
【0021】
さらに、本発明によれば、鋼殻の内部にずれ止めを配置することで中詰めコンクリートと鋼殻との一体性が格段に向上し、セグメントの部材性能が一層、向上する。
【0022】
加えて、上述するずれ止めをトンネル軸方向に主桁間に取り付けることで、土水圧が作用した場合における中詰めコンクリートの抜け出し防止に効果を発揮する。
【0023】
また、本発明によれば、中詰めコンクリート内にトンネル周方向に補強鉄筋を埋め込み配置することで、セグメントのトンネル周方向の部材性能の向上が図られる。
【図面の簡単な説明】
【0024】
【図1】本発明を適用したセグメントの斜視図である。
【図2】本発明を適用したセグメントの断面図である。
【図3】(a)は、接続部材をトンネル周方向に対して略垂直方向に設けた図であり、(b)は、この接続部材を斜めに配設した図である。
【図4】接続部材をトンネル周方向へ連続して設けた状態を示す図である。
【図5】本発明を適用した鉄鋼製セグメントの効果について説明するための図である。
【図6】本発明を適用した鉄鋼製セグメントの効果について説明するための他の図である。
【図7】棒状の接続部材をフランジ部材間に設ける例を示す図である。
【図8】接続部材を棒状とする代わりに板状とした場合の例を示す図である。
【図9】板状の接続部材をフランジ部材とウェブ部材に接合した例を示す図である。
【図10】断面H形の主桁に対して接続部材を設ける例を示す図である。
【図11】断面L形の主桁に対して接続部材を設ける例を示す図である。
【図12】鋼殻の内側面にズレ止めを設けた例を示す図である。
【図13】鋼殻の内側面にズレ止めを設けた他の例を示す図である。
【図14】中詰めコンクリート内にトンネル周方向に補強鉄筋を埋め込み配置した例を示す図である。
【図15】従来技術の問題点について説明するための図である。
【発明を実施するための形態】
【0025】
以下、本発明の実施の形態として、シールドトンネル内における覆工体等として用いられるセグメントについて詳細に説明する。
【0026】
本発明を適用したセグメント1は、例えば図1に示すように、コンクリートが中詰めされた鉄鋼製セグメント100であり、一対の主桁5が平行に配設され、左右の主桁5の両端部間が継手板6で連結されており、主桁5と継手板6で組まれた矩形のセグメント枠の外端面にスキンプレート7が溶接されて、さらに左右の主桁5の間には、トンネル周方向に所定の間隔をあけて複数の補強用縦リブ16が配設され、その両端が溶接で固定されて鋼殻が形成されている。また、左右の主桁5それぞれについて、後述する接続部材3が設けられている。そして、この鉄鋼製セグメント100の内部には中詰めコンクリート4が充填される。
【0027】
継手板6は、トンネル周方向に隣接する他のセグメント1の継手板6と互いに当接させるための板であり、ピース間継手61が設けられている。このピース間継手61は、一方
が雄継手61aとされ、他方が雌継手61bとされ、それぞれ隣接する他のセグメント1における雌継手61b、雄継手61aと嵌合されることになる。なお、このピース間継手61の構成としてはいかなる周知の構成を用いてもよい。
【0028】
主桁5は、セグメントリングをトンネル軸方向に向けて接合するためのボルト孔59が開削されている。即ち、このボルト孔59には、トンネル軸方向に隣接する他のセグメントリングとの間で連結を行うための図示しないリング間継手が設けられる。また、この主桁5は、トンネル周方向に向けて円弧状に構成されている。図2は、セグメント1におけるトンネル周方向断面を示している。主桁5は、少なくともウェブ部材51とフランジ部材52とを有する。ちなみに、この図2の例では、ウェブ部材51の上端においてフランジ部材52aが、また下端においてフランジ部材52bが形成されて断面コ字状に構成した例を示している。このウェブ部材51とフランジ部材52とは、圧延加工により一体的に形成されている。
【0029】
また、この主桁5における上下に対向するフランジ部材52a、フランジ部材52b間には、接続部材3が設けられている。接続部材3は、鉄鋼製であり、その形状は、棒状で構成されていてもよいし、板状で構成されていてもよい。また、この接続部材3は、フランジ部材52a、フランジ部材52bに対して溶接により固着されている。ちなみに、この図1、2の例においては、この接続部材3を棒状に構成した場合を示している。接続部材3を棒状に構成することにより、鋼材の使用量を低減させることができるとともに、接続部材3の取り付け労力をより軽減させることが可能となる。
【0030】
また、この接続部材3は、例えば図3に示すように、トンネル周方向へ間隔をおいて複数設けられていてもよい。ちなみに、図3(a)は、接続部材4をトンネル周方向に対して略垂直方向に設けた例である。これに対して、図3(b)は、この接続部材4を斜めに配設した例である。この接続部材4を斜めに配設する例では、これをトンネル周方向に対して略垂直方向に設ける場合と比較して、接続部材の取付け角度を調整することが可能となり、接続部材の長さ精度管理がより容易となる。また、この接続部材3は、図4に示すようにトンネル周方向へ連続して設けられた板状として構成されていてもよい。かかる場合には、この接続部材3について、中詰めコンクリート4を充填させるための開口13が少なくとも形成されていることが必要になる。
【0031】
スキンプレート7は、トンネル地山側に設けられ、主として中詰めコンクリート4の外部への流出を防止するとともに、地中の水分が鋼殻内部に浸入するのを防止する役割を担う鉄製の薄板で構成されている。このスキンプレート7は、フランジ部材52aの上面において溶接により固着されてなる。
【0032】
次に、本発明を適用したセグメント1の製造方法について説明をする。
【0033】
先ず、主桁5を製造する。この主桁5の製造においては、圧延加工により、ウェブ部材51とフランジ部材52とを一体的に成型する。即ち、この主桁5におけるウェブ部材51とフランジ部材52を製造する過程において、ウェブ部材51とフランジ部材52との間で溶接する工程は伴わない。
【0034】
次に、この完成させた主桁5をそのコ字状の内側を対向させた上で継手板6を溶接により固定する。そして、主桁5と継手板6で組まれた矩形のセグメント枠の外端面にスキンプレート7を溶着させ、セグメント枠内には、中詰めコンクリート4を充填する。なお、接続部材3は、上記矩形のセグメント枠内に中詰めコンクリート4を充填する前であれば、いつフランジ部材52に溶接により固着してもよい。その結果、この互いに上下に対向するフランジ部材52a、フランジ部材52bの先端は、この接続部材3を介して接続さ
れることになる。これにより、本発明を適用したセグメント1の製造が終了することになる。
【0035】
以下、本発明を適用したセグメント1の効果について説明をする。本発明では、鋼殻内において中詰めコンクリート4を充填するが、上述した接続部材3を取り付けることにより、図5に示すようにフランジ部材52並びにウェブ部材51により囲まれる主桁5の内側58において充填された中詰めコンクリート4を、さらに接続部材3により外部から強固に拘束することが可能となる。一般にフランジを有するセグメントは地山側からの外力が負荷された場合において、特にフランジ部材52間の中詰めコンクリート75を介した図中矢印A方向の荷重伝達性が重要となるが、本発明を適用したセグメント1では、特にフランジ部材52について大断面フランジを採用した場合においても、内側58に充填された中詰めコンクリート4の拘束力を強化することにより、中詰めコンクリート4の強度を強化することができるので、中詰めコンクリート4の矢印A方向の荷重伝達性能を向上させることが可能となる。
【0036】
また、本発明によれば、接続部材3によりフランジ部材52a、52bのトンネル法線方向への面外変形が抑制され、セグメント1の部材性能を格段に向上させることが可能となる。
【0037】
更に、本発明によれば、フランジ部材52a、52b間の荷重伝達性能をより向上させることが可能となる。例えば、図6に示すように、地山側からの荷重は、フランジ部材52a、ウェブ部材51、フランジ部材52aの経路を経て伝達されていくとともに、フランジ部材52a、接続部材3、フランジ部材52bの経路を経て伝達されていくことになる。即ち、せん断応力の伝達経路を増やすことが可能となり、セグメント1における荷重伝達性能を向上させることが可能となる。
【0038】
また、本発明によれば、上述した接続部材3を取り付けることにより、中詰めコンクリート4と主桁5の界面におけるトンネル周方向のずれ発生を防止する機能を発揮させることが可能となる。その結果、中詰めコンクリート4と主桁5との一体性が強化され、セグメントの剛性、耐力を大幅に向上させることが可能となる。
【0039】
次に、本発明を適用したセグメント1の他の実施形態について説明をする。
【0040】
図7(a)は、棒状の接続部材3をフランジ部材52aの底面並びにフランジ部材52bの上面において上下に架設する構成を示している。このとき、棒状の接続部材3の上下端をフランジ部材52により溶接により固定することになる。その結果、中詰めコンクリート4の拘束力の強化、フランジ部材52間のせん断応力の伝達性能、主桁5と中詰めコンクリート4間のずれ発生防止性能の向上を実現することが可能となる。
【0041】
図7(b)は、棒状の接続部材3をフランジ部材52とウェブ部材51間に設ける例を示している。この場合、接続部材3は、両端がフランジ部材52aの底面とウェブ部材51に対して、又はフランジ部材52bの上面とウェブ部材51に対して、溶接により取り付けられることになる。このように、接続部材3をフランジ部材52間において設ける場合のみならず、ウェブ部材51とフランジ部材52間において設ける場合であっても、上述と同様の効果を奏することになる。
【0042】
図8は、接続部材3を棒状とする代わりに板状とした場合の例を示している。図8(a)は、かかる板状の接続部材3をウェブ部材51の近傍に設けた例であり、図8(b)は、板状の接続部材3をフランジ部材52の先端近傍に配設した例を示している。これらの接続部材3は、何れもフランジ部材52に対して溶接により取り付けられた例を示している。
これらの例では、接続部材が棒状部材である場合と比較して、中詰めコンクリート4をトンネル周方向からも拘束することができ、またフランジ部材52間におけるせん断応力の伝達性能をさらに向上させることが可能となる。また、図8(b)に示すように、フランジ部材52の先端近傍において接続部材3を設けた場合には、中詰めコンクリート4を外側からも拘束させることが可能となる。なお、この図8(b)において、接続部材3は、フランジ部材52aの底面、並びにフランジ部材52bの上面において溶接により固着されている場合に限定される場合に加えて、フランジ部材52の端面において溶接により固着されていてもよい。
【0043】
図9(a)は、板状に構成した接続部材3a、3bを、フランジ部材52aの底面とウェブ部材51、並びにフランジ部材52bの上面とウェブ部材51に対して溶接により固着させた例を示している。この例では、接続部材3a、3bを上下に分離して設けることから、せん断応力の伝達性能の向上の効果が薄くなる。しかしこの接続部材3a、3bを板状に構成することにより、トンネル周方向から中詰めコンクリート4を拘束することが可能となり、フランジ部材52間の中詰めコンクリート4を介した応力伝達性能をより向上させることが可能となる。
【0044】
図9(b)は、この板状に構成した接続部材3a、3bが配設された主桁5の斜視図を示している。接続部材3aは、トンネル軸方向に向けて間隔をおいて複数に亘り配設されている。このような板状の接続部材3a、3bを取り付ける場合には、取り付け容易性を向上させることが可能となる。
【0045】
図9(c)は、この接続部材3a、3bに加えて、更に棒状の接続部材3cを、フランジ部材52の先端において上下に架設させた例を示している。この接続部材3cは、棒状で構成されていてもよいし、板状に構成されていてもよい。この接続部材3cを別途設けることにより、フランジ部材52並びにウェブ部材51により囲まれる主桁5の内側において充填された中詰めコンクリート4を外部から拘束することができ、当該中詰めコンクリート4の強度を向上し、中詰めコンクリート4の矢印A方向の荷重伝達性能を向上させることが可能となる。ちなみに、この接続部材3cは、フランジ部材52の上下面において架設させるようにして設けられていてもよい。
【0046】
図10(a)は、主桁5について、断面H形となるようにフランジ部材52a、52b並びにウェブ部材51を構成した例を示している。このような主桁5の断面形状においても同様に、上述した接続部材3a、3bを、フランジ部材52aの底面とウェブ部材51、並びにフランジ部材52bの上面とウェブ部材51に対して溶接により固着させる。
【0047】
図10(b)は、上述した断面H形状の主桁5において、接続部材3a、3bに加え、更に接続部材3cをフランジ部材52a、52b間において配設した例を示している。この接続部材3cは、図11(b)に示すようにフランジ部材52の外側において架設されるものであってもよいし、内側において架設されるものであってもよい。この接続部材3cをフランジ部材52の外側に配置した場合には、せん断応力の伝達経路を増やすことができる。また、この接続部材3cをフランジ部材52の内側に配置した場合には、せん断応力の伝達経路の増大に加えて、中詰めコンクリート4を外部から拘束することが可能となる。
【0048】
図11(a)は、主桁5について、断面L形となるようにフランジ部材52b並びにウェブ部材51を圧延加工により構成した例を示している。このような主桁5の断面形状においても同様に、上述した接続部材3bを、フランジ部材52bの上面とウェブ部材51に対して溶接により固着させる。
【0049】
図11(b)は、主桁5について、断面逆L形となるようにフランジ部材52a並びにウェブ部材51を圧延加工により構成した例を示している。このような主桁5の断面形状においても同様に、上述した接続部材3aを、フランジ部材52aの底面とウェブ部材51に対して溶接により固着させる。
【0050】
なお、上述した図1〜11に示す形態は、何れの構成を自由に組み合わせて実現するようにしてもよい。また、上述した例では、あくまで中詰めコンクリート4が充填された形態を例にとり説明をしたが、これに限定されるものではなく、中詰めコンクリート4が充填されていない、鋼殻のみの鉄鋼製セグメント100として構成されていてもよいことは勿論である。
【0051】
図12(a)は、鋼殻の内側面にずれ止め36を設けた例を示している。ずれ止め51は、ジベルで構成されており、それぞれスキンプレート7や主桁5に溶着されている。このずれ止め36を設けることにより、鋼殻内に充填した中詰めコンクリート4がスキンプレート7や主桁5に対してずれてしまうのを防止することが可能となる。
【0052】
図12(b)は、ずれ止め36に加えて、更に上述した接続部材3aを、フランジ部材52aの底面とウェブ部材51に対して、また接続部材3bをフランジ部材52bの上面とウェブ部材51に対して溶接により固着させた例を示している。この形態では、ウェブ部材51又はフランジ部材52或いはスキンプレート7のセグメント内側面に、トンネル軸方向及び/又はトンネル半径方向に間隔をおいて複数または多数のずれ止め36を設けてもよいことを示している。また、この形態では、ずれ止め36として、頭付きスタッドの基端部が溶接により固定された場合を示している。接続部材3は、板状で構成されており、主桁5と中詰めコンクリート4とのずれ止めとしての機能も有する。
【0053】
このように接続部材3及びずれ止め36を設けることにより、中詰めコンクリート4のトンネル周方向あるいはトンネル半径方向のずれ止めを図り、主桁5或いは鋼殻若しくはセグメント1と中詰めコンクリート4との付着一体化をより一層高めた合成構造とすることが可能となる。
【0054】
図13は、鋼殻の内側にずれ止め37を設けた例を示している。このずれ止め37は、互いにトンネル軸方向に対向する主桁5間に取り付けられた棒状部材である。このずれ止め36を設けることにより、鋼殻内に充填した中詰めコンクリート4がスキンプレート7や主桁5に対してずれてしまうのを防止することが可能となる。ちなみに、これらずれ止め36、37は、上述した構成の何れに対しても適用することが可能となる。
【0055】
図14は、中詰めコンクリート4内においてトンネル周方向に延長する周方向補強鉄筋87を埋設して補強した例を示している。このような周方向補強鉄筋87を設けることにより、合成セグメントの剛性、耐力をさらに強化することが可能となる。
【符号の説明】
【0056】
1 セグメント
3 接続部材
4 中詰めコンクリート
5 主桁
6 継手板
7 スキンプレート
16 補強用縦リブ
36、37 ズレ止め
51 ウェブ部材
52 フランジ部材
59 ボルト孔
61 ピース間継手
100 鉄鋼製セグメント

【特許請求の範囲】
【請求項1】
1枚のウェブ部材と少なくとも1枚のフランジ部材とを有する少なくとも2対の主桁を備えるセグメントにおいて、
上記ウェブ部材と上記フランジ部材とは、圧延加工により一体的に形成され、
上記ウェブ部材と上記フランジ部材間、又は互いに上下に対向する上記フランジ部材間、を接続する接続部材が設けられていること
を特徴とするセグメント。
【請求項2】
上記接続部材は、上記トンネル周方向へ間隔をおいて複数設けられていること
を特徴とする請求項1記載のセグメント。
【請求項3】
上記接続部材は、上記トンネル周方向へ連続して設けられ、少なくとも開口を有すること
を特徴とする請求項1記載のセグメント。
【請求項4】
上記主桁と継手板とスキンプレートを備えた鋼殻の内側にコンクリートが充填・硬化されていること
を特徴とする請求項1〜3のいずれか1項に記載のセグメント。
【請求項5】
上記鋼殻の内側面にずれ止めが設けられていること
を特徴とする請求項4記載のセグメント。
【請求項6】
上記ずれ止めは、互いにトンネル軸方向に対向する主桁間に取り付けられた棒状部材であること
を特徴とする請求項5記載のセグメント。
【請求項7】
上記中詰めコンクリート内にトンネル周方向に向けて補強鉄筋が埋設されていること
を特徴とする請求項4〜6のいずれか1項に記載のセグメント。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【図13】
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【図14】
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【図15】
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【公開番号】特開2011−32675(P2011−32675A)
【公開日】平成23年2月17日(2011.2.17)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−177952(P2009−177952)
【出願日】平成21年7月30日(2009.7.30)
【出願人】(000006655)新日本製鐵株式会社 (6,474)
【Fターム(参考)】